( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ

112 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/12(水) 22:53:23.90 ID:J5VhoIVA0
( ^ω^) 「ぼくは……どうなんだろう……」

目を閉じて、クーの顔を思い浮かべる
やわらかで長くて、綺麗な黒髪。日焼けなんか少しもしていない白い肌
滅多なことでは崩さない、理知的な横顔。時々自分に向けてくれる、穏やかな微笑み……

(;^ω^)  「っ!!」

そこまで思い出したところで、ブーンは目を見開いた
自分の体に起きた異変に気づき、驚く
いつの間にか、額には汗が浮かび、胸に手をやると心臓はバクバクと鼓動を早めていた

立ち止まり、深呼吸をして、突然の動揺を鎮める
自分は……おかしい。どうして、クーの、いつも見ているクーのことを思い返すだけで……ポム

川゚-゚) 「おい、ブーン」
( ;゚ω゚) 「ずわぁっっ!!?」

背後から完全な不意打ちで肩を叩かれ、飛び上がった
後ろ向きに飛び上がったブーンは、そのままバク転に失敗した人のように、後頭部から落下

―――ゴギッ!!

なんか鈍い音がした

川゚-゚) 「お……おい?」
( ;゚ω゚) 「……(へんじがない。ただのしかばねのようだ)」
川゚-゚) 「し、しっかりしろ……誰にやられたっ!?」

うん、まあ、強いていうなら君かな



117 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/12(水) 23:21:34.74 ID:J5VhoIVA0
こぶのできた頭にペットボトルをあて、ついでに何故か吹き出た鼻血をティッシュで止める

川゚-゚) 「あとで病院に行ったほうがいいぞ。何せ頭だ」
(;^ω^) 「うう……そうするお」

軽く満身創痍なブーンを気遣うように、クーはブーンのかばんを持ってくれた
おかげで少し落ち着き、そこでふと気づいた
クーの顔に、うっすら汗が浮かんでいる。息も微妙に荒いようだ
もしかすると、と思い、訊いてみる

( ^ω^) 「走ってきたのかお?」
川゚-゚) 「ん? ああ、少しな。追いつけるかも、と思ってな」

こうして実際に追いつけたわけだが。そう言うクーの表情はどこか明るかった

川゚-゚) 「それよりもだ、うまく生物教師と話がついてな……」
( ^ω^) 「同じクラスになれそうなのかお?」
川゚-゚) 「ああ。まあ少し苦労はしたが……」

クーはいつもどおりの無表情のまま、職員室での出来事を逐一ブーンに話した
すでに決定していた合同授業のクラス割りを密かに焼却し、PC内のデータも破損させた事
運悪くクラス割りのメモを持っていた生物教師を、吊るした上で穏便な話し合いをした事
淡々とそれらのことを話すクーの横顔を眺めながら、ブーンは相槌を打ち、
 
川゚-゚)  「……いや、しかし、教師は頭が固いとは思わないか?」
( ^ω^)  「あ……うん、そうかもしれないお……」
川゚-゚) 「…………で、だな」

しかし、気の利いた返事を返すことは……しなかった



119 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/12(水) 23:46:04.01 ID:J5VhoIVA0
川゚-゚)  「…………」
( ^ω^) 「…………」

クーが職員室での出来事を話し終えると、二人はまた無言で歩き続けた
沈黙は、どこか重苦しく、居心地が悪い
仲のいいカップルの持つ暖かな静寂とは違い、二人の間に横たわる沈黙は、そう言った種類のものだった

川゚-゚)  「…………」
( ^ω^) 「…………」

結局、家につくまでその沈黙は続いてしまった
いつもの事だが、ブーンは後悔し、沈みこむ

なぜ、自分はクーの話に相槌を打つことしかできないのか
なぜ、自分はクーのように話題を持ちかけ、会話をはじめようとできないのか
……むしろこれが一番重要だが、なぜ、自分はクーの行いを咎めることができないのか

川゚-゚)  「じゃあ、また」
( ^ω^) 「うん、また、だお」

お互いに手を振り、重たい気分のままブーンは家に入ろうと、
門を開けると、クーの声が背中にぶつかった

川゚-゚)  「ブーン!」
( ^ω^) 「え……?」
川゚ー゚)  「来年も、何かと迷惑をかけるかもしれんが、よろしくな」
( ^ω^) 「あ……うん、こちらこそだお!!」

かすかに笑ったクーの声が、少しだけ、ブーンの心を軽くしてくれた
だからブーンも、満面の笑みで、それに応えた



122 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 00:07:52.50 ID:qRJjS1f90
居間にいたカーチャンに挨拶もせず、ブーンは自分の部屋に戻った
後ろ手で、カギを閉め、制服のままどうっとベッドに倒れ、幼馴染の名前をつぶやいてみる

( ^ω^) 「………クー」

右手に握っていたペットボトルを、顔の横に置き、眺める
頭を打った自分のために、クーがくれた物だ
毒々しい色合いの下地に『ドクターペッパー』と書かれているが、そんなのはどうでもいい

( ^ω^) 「……クー」

もう一度、名前を呼んでみる
やっぱりだった。クーの名前を口に出し、その姿を思い出すと、胸が高鳴る
小学校の時は、こんなことなかった
中学の時は、少しだけ、名前で呼ぶのが気恥ずかしかった
高校に入ってから……自分は、おかしくなった

( ^ω^) 「いや……変わったのは、クーの方だお……」

昔は感じなかった色気だとか、そういうのが自分にもわかるぐらい、増した気がする
いや、だから、って言うわけじゃなく、そういうことを抜きにしても……
そこまで考えたところで、急にさっきのクーの笑顔が浮かんだ
見慣れた、見慣れているはずの、かすかな笑顔。でも、それが何だか、すごくきれいに見えて……

( ^ω^) 「……やっぱり、僕は……」

ぐちゃぐちゃになり始めた思考の末、つい、口に出しそうになった言葉を飲み込む
誰も聞いちゃいない、聞こえるはずもない
それでも、一度言ってしまえば、もう戻れない気がして……引っ込めた
もう、寝よう。それで、夕飯前に起きればいいや……



134 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 00:49:11.86 ID:qRJjS1f90
('A`) 「うぉっす……」

今日から二年生になるというのに、ドクオは相変わらず眠そうだった

川゚-゚) 「うむ、おはよう。今日も15時間寝たのか?」
(´・ω・`) 「……今日もって……いつもそんなに寝てるの?」
('A`) 「黙れ馬鹿。……いや、今日は完徹二日目……ねみぃ……」

本当に限界が近いのか、ドクオは半分目を閉じたまま歩いている
何もそこまでして起きていなくても、と言ったところ

('A`) 「なんかな……寝よう、って思うと一気に目が冴えてくるんだよな……」
( ^ω^) 「気持ちはわかるけど、寝なきゃだめだおw」
('A`) 「……お前って時々無理なことを当然のように言うよな……」
(´・ω・`) 「いや、ドクオの方が無茶だってばw」
('A`) 「黙れ馬鹿」

ショボンに返すときだけ、口調がはっきりとしているのはなぜだろう
もしかすると、すでに脊髄反射だけで返事をしているのかもしれない

(´・ω・`) 「馬鹿じゃないよー?」

律儀に返すこいつもこいつだが、

('A`) 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「馬鹿じゃないよー?」
('A`) 「黙れ馬鹿」

半分ロボットと化したドクオと馬鹿のやりとりは、学校に着くまで延々と続いた



141 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 01:10:36.99 ID:qRJjS1f90
校門前に張り出された教室案内を見ると、どうやら二年生は四階……最上階のようだ
そのことを伝えると、ドクオはまるでこの世の終わりのような顔をした

('A`) 「四階……すまない、俺は……どうやらここまでのようだ……」
(;^ω^) 「ちょwwwwおまwwww」
(´・ω・`) 「四階なんてすぐじゃない。そのぐらい頑張ろうよ」
('A`) 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「馬鹿じゃないよー?」
以下省略

うわ言のように「黙れ馬鹿」を繰り返すドクオを四階まで運び、教室の前に捨てる
春だし、風邪をひくことはないだろう

川゚-゚) 「あほ三人組は一組で、私は二組……か」

クラスの前で、クーが寂しげにそう呟く……というか、あほ三人組ってなんだ
あえてそこには触れずに、ブーンはことさらに元気な声で、クーに言った

( ^ω^) 「クー、また放課後、だお!」
川゚-゚) 「ふむ……そう、だな。うん、また放課後にな、ブーン」

突然大声で言われたためか一瞬ビクっと肩を揺らしたが、クーはいつもの調子で応えてくれた
クーが手を振り、教室の中に入るのを見届けてから、ブーンはぽつりとつぶやく

( ^ω^) 「大丈夫……だお」

誰に対して、何が大丈夫と言いたかったのか
それはブーン本人にも、わからなかった



145 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 01:25:51.92 ID:qRJjS1f90
ブーンとショボンが、引きずるようにしてドクオを教室に放り込むと
ドクオは歓喜の涙を流さんばかりの勢いで、手近にあった机にすがりついた

('A`) 「おお……おお……!! 机……机といすがある……ここは楽園か……?」

もう俺机と結婚する! などと叫んでいる辺り、ドクオはかなり危険な状態のようだ
そこまで限界が近いなら保健室にでも行けばいいものを

(´・ω・`) 「多分教室だと思う」
('A`) 「黙れ馬鹿」
以下省略

もうお約束となったやり取りを5回ほど行った後、
ドクオはずるずると這いながら、席に座った

('A`) 「あの、もう……あれだよな? 俺もう、ここで寝ちゃっていいよな?」

座席表を完全に無視して座っているのだから、いいわけはないのだが
いや、それ以前に、もうひとつ問題がある……
いうべきかどうか、ブーンは少しだけ考えてから、
早めに知ったほうがダメージが少ないだろうと判断し、言うことにした

( ^ω^) 「ていうか……この後全校集会だから、体育館に移動だお?」
('A`) 「え?」

ピキッ、とドクオの周りの空気だけが一瞬固まり、次の瞬間

('A`) 「ノォォォォォォォオオオオオオオオッッ!!」

魂の入ったシャウトが校舎を揺らした



147 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 01:54:24.41 ID:qRJjS1f90
全校集会は滞りなく終わった
ドクオが終始「黙れ馬鹿」「机と子供二人と幸せな家庭が見える」などの妄言を言っていたことと、
それに触発された校長が、挨拶で「ファッキン! てめぇら全員腐ったみかんだ!」などと暴言を吐いたことを除けば、
特に問題はなかったと言えよう

川゚-゚) 「あの校長はいつもあんな感じだな」
( ^ω^) 「多分、仕事に疲れてるんだお」

放課後に、と言ったものの、隣のクラスなのだ
教室に向かうときや、休み時間ぐらいは一緒にいられると、今更気がついた
それよりも、とクーはドクオを指差した

川゚-゚) 「さっき、こいつのシャウトが聞こえたが、いったい何があったんだ?」
( ^ω^) 「ああ、あれは……」

思い出し笑いをしながら、ブーンはさっきの事を話し始めた
いつもの……というか、去年まではそこにクーも混じっていた、
他愛のない日常を説明するのは、どこか新鮮な感じがする
それはクーも同じだったのか、相槌を打ちながら、多分、楽しそうにしていた

川゚-゚) 「……ふむ、こういうのも、いいかもしれないな」

ブーンが一通り話し終えると、クーは神妙な顔をしてそう言った
何が、と問い掛ける前に、クーは、言葉が足らなかったな、と苦笑した



151 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 02:16:22.00 ID:qRJjS1f90
川゚-゚) 「いつもな、お前たちが起こす奇行を私は間近で見ているわけだろう?」

日常をいきなり奇行呼ばわりされた
いや、それよりもクーの日常の方がよっぽど……と思うが、言ってしまうと命が危ない。控えた

川゚-゚) 「……何か言いたそうだな?」
(;^ω^) 「え、エスパーっ!? い、いや、な、何でもないお?」

まあいいか、そう言うとクーは何事もなかったように続けた

川゚-゚) 「一緒にそういうのを体感できる、それが一番だと思っていたんだ、私は」
( ^ω^) 「今は違うのかお?」
川゚-゚) 「ああ、少しだがな」

歩調を速め、ブーンの少し前をクーは歩く

川゚-゚) 「……正直、別のクラスになるのは嫌で仕方なかったんだが……」

突然、振り向き、その勢いでクーの髪がふわりとたなびいた
顔にかかった髪が横に流れたとき、クーは軽く口の端を吊り上げ、笑い

川゚ー゚) 「こうして、お前が私の知らない日常を話してくれるのなら……それもいいかな、と思うんだ」
( ^ω^) 「…………クー」

何て言うか……クーは、本当に、ひどいと思う……こんな不意打ちは、卑怯すぎる
もう、戻れなくてもいいんじゃないかって……一瞬でも思わされてしまった



177 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 12:42:28.89 ID:qRJjS1f90
川゚-゚) 「それじゃあ、また放課後」
( ^ω^) 「うん、まただお!」

手を振るクーに、表情はない
しかし、感情をあまり表に出さない彼女の性格をよく理解しているブーンには、
今クーが何を考えているのかわかる

( ^ω^) 「なんだか、ワクワクしてるみたいだお」

昔から、そうだ
何か新しいことを、やったことがないことを見つけると、彼女は楽しそうにする
そんなクーの姿を見ると、自分もワクワクさせられるのを感じながら、ブーンは教室に戻ると、
そこには二つの死体が転がっていた

('A`) 「…………」
(´・ω・`) 「…………」

どちらも、よく見知った顔だ
小柄なほうの死体は傷一つなく、どこか満足げな表情で、机に突っ伏していた
もう一つの死体はぼろぼろで、制服がところどころやぶけ、レイプされた直後と言った様相だ

(;^ω^) 「……数分目を離した内に何が……」

クーとそれほど長く立ち話をしていたとは思えないが
と、クラス全員から注がれる視線に気がつく

『お前、これの飼い主だろ? なんとかしてくれ……』

無言なのに、視線はそう雄弁に語っている。が
ブーンは周囲に何も聞かず、何も見なかったことにした。世の中、知らないほうが幸せなこともあるのだ



185 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 13:16:33.75 ID:qRJjS1f90
担任が入ってくる頃には、二人とも自分の席に座っていた
ドクオはそのまま眠ってしまったが、そっちの方が迷惑はかからないので、いい
ショボンは机に顔を押し当て、ウッウッとうめくように泣いているが……よくある事だ、無視しよう

先生 「おーす、全員いるなー?」

担任も、まったく二人を気にしていない様子で、適当にクラス全体を見回した
空いてる席がないことを確認……いや、ひとつだけあることを確認して、頷く

先生 「うし、全員いるな」
( ^ω^) 「あれ? 先生、席がひとつ空いてるお?」
先生 「ああ、今日から転入生がくるからな」

そういえばドクオがそんなことを言っていた気がする。忘れていたが

先生 「あー、男ども、喜べ。女だ。女が来るぞ」
(;^ω^) 「ちょwwww先生、いくらなんでもその言い草は……」
男子全員 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」
( ;゚ω゚) 「えっ!? なにその団結力!?」
男子全員 「お・ん・な! お・ん・な!」

駄目だ。この学校は馬鹿しかいない
その中に自分も含まれているのだが、そんなことは棚に上げ、ブーンは頭を抱える

先生 「よーし、お前ら落ち着けー。第一印象は何より大事だからな、クールにきめろ?」
男子全員 「サー・イェッサー!」

生徒どころか教師までもどこかおかしい
これならクーに話すことも尽きないだろうなぁ、と、ブーンは無理やりポジティブに考えていた



188 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 13:34:21.53 ID:qRJjS1f90
荒ぶる熱気がおさまるまで、五分ほど必要とした
その五分の中で、鏡を持っているものは髪型をチェックし、無いものはガラスでそれを行う
皆、試験の時ですら見せたことない真剣さで、自分の容姿を確かめていた

ブーンは異様な熱気についていけず、両隣のドクオとショボンに視線を向けると、
こちらもついていけないのか、はたまたついていくだけの体力がないのか、 机に突っ伏していた

( ^ω^) 「まあ、僕らにはあんまり関係ない話だお……」

自分は、クーのことで頭がいっぱいだし、この二人は恋愛よりも馬鹿騒ぎを愛する性質だ
今も祭りと言えば祭りだが、いまいちモチベーションが上がらないのだろう

先生 「よし、全員準備はいいな? クールにきめたか?」
男子全員 「サー・イェッサ!」

男子が身なりを整え終わったのを見計らい、担任は軍人のような顔でそう言うと、
その表情を少し、曇らせた

先生 「実はな、先生……お前たちに黙っていたことがある、すまない」
男子全員 「サー・なんでしょうか・サー!」
先生 「うむ。お前らが一連の馬鹿騒ぎをしている時……すでに転入生は廊下で待機していたんだ」
男子全員 「…………」

つまり

先生 「お前らの普段の姿は、すでに先方に伝わっている。無駄な努力ご苦労」

なんとも言えない沈黙が、教室を数瞬、支配し……暴動が発生した

男子全員 「ふっざけんなああああああああああああああああッッ!!」



193 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 13:59:50.34 ID:qRJjS1f90
担任が男子全員を叩きのめすのに、それほど時間はかからなかった

先生 「よーし、入って来い」

屍の山に腰を下ろし、廊下で待っていたのだろう転入生に、先生が言った
カララっと軽い音をたて、安っぽい教室の戸が開き、入ってきたのは、

ξ゚-゚)ξ 「失礼します」
( ^ω^) 「………!」
屍達 「……おお……!!」

美少女だった。クーを見慣れているブーンですら、言葉をなくすぐらいの
いや、クーとはそもそもタイプが違うのだから、引き合いに出すべきではないだろう

ξ゚-゚)ξ 「今日から、このクラスに通うことになりました……」

軽くウェーブのかかった髪は明るい色で、それでいて痛んだ様子がないのは脱色ではないからのだろう
ほっそりとしているもののどこか柔らかい印象の顔は、どこか子供っぽくも見える
そして、身を包んでいる制服は……まあ、うん、スカートが短い

屍A 「あ……も少し、も少しで、中が見える……! 見えそうだ……!!」
屍B 「ちょっ!? おま、ちょ、場所変われ!! 俺も見たい!」

屍達もそれに気づき、ゾンビのごとくナイスな位置を手に入れようと移動するが、

―――グジャッ

屍達 「ぉヴぇッ!?」

あえなく担任に踏み潰されてしまった。合掌



196 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 14:19:51.84 ID:qRJjS1f90
先生 「えーと、だ。見ての通り、馬鹿ばかりだが、女子はまともだ、安心してくれ」

あまり安心できないことを担任が言うと、ツンは微笑みで返した

ξ゚-゚)ξ 「はいw 楽しそうなクラスですねw」

笑顔は、完璧だとでも言うのだろうか、非の打ち所がないぐらい柔らかなものだった
しかし、

( ^ω^) 「…………」

なぜか、ブーンはその笑顔が……気に入らなかった
何が、と聞かれても答えようがない。なんだかいやな感じがする、としか言えない
そんな感想を抱いたのは、ブーンだけで、

屍達 「いい……すごく……いい……これは春が来たかもわからんね」
先生 「はいはい、夢見るなー。これは現実だぞーエロゲ脳はほどほどになー」

その他大勢の屍たちは皆、一様に顔をだらしなく緩ませていた
その溶けかけた屍を踏み越えつつ、担任はツンに近寄ると、肩を叩き、

先生 「今日はこれから校内を案内させるから、そいつについて歩いてくれ」
ξ゚-゚)ξ 「あ、はい。誰が案内してくれるんですか?」
先生 「無論、そこで何の反応も示していない、あほ三人だ」

……………………

( ^ω^)('A`)(´・ω・`) 「はぁっ!?」 

わけのわからないことを、さも当然のようにおっしゃった



198 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 14:32:58.90 ID:qRJjS1f90
突然の指名に、死んだように寝ていた二人も飛び起き、抗議する

('A`) 「先生! 当たり前のように何言ってやがるんですか!? 馬鹿って言っていいですか!?」
先生 「言ってもいいが、今学期の国語がなぜか1か2になるぞ?」
(´・ω・`) 「お、横暴だよ!」
('A`)・先生 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「え? ダブルで?」

この二人に任せては埒があかない

( ^ω^) 「先生、普通になんで僕たちなんですかお?」
先生 「お前は、ここでくたばっている獣達に案内させる気か? 流石に危ないだろ」
('A`) 「だったら女子にでも任せときゃいいんじゃねぇの?」

ドクオがもっともな反論をするが、担任は眉根をよせ、ため息混じりに返す

先生 「ふぅ……いいか、ドクオ? 転入生を同性が案内したって、何のロマンスもないだろ?」
(´・ω・`) 「やっぱり馬鹿って呼んでいいですか?」
('A`)・先生 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「なにこれ新手のいじめ?」

独特の倫理観で動いている教師に、これ以上は何を言っても無駄かも知れない
なおも抗議を続けようとする二人に視線をやり、首を横に振る。あきらめろ、と

('A`) 「……ま、女子からも文句は出てないみたいだしな」
(´・ω・`) 「屍達には、任せられないしね……」
( ^ω^) 「引き受けますお……」

しぶしぶ、という感じを隠そうともせず、三人はうなづいた



202 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 15:05:27.11 ID:qRJjS1f90
先生 「いいかー? 保健室には案内しなくていいぞー? 三人がかりはマニアックだしな」
('A`) 「だったら頼むなっ! お前本当に教師かっ!? セクハラで訴えられて死ねっ!」
(´・ω・`) 「……ドクオ、何言っても無駄っぽいからやめようよ」

教室を出るまで、いやに時間がかかった気がする
それもこれも、あの殺戮系セクハラ教師のせいだ
だが、流石に本人(担任ではなくツン)の前で文句を言うのもはばかられる
不満を押し殺しながら、三人はツンを連れ、校舎を練り歩くことにした
 
('A`) 「で、どっから案内するよ?」

そう言えば、どういう順番で回るかまだ決めていなかった
こういう時は、案内される本人が決めたほうがいいだろう

( ^ω^) 「とりあえず、どこか見たい場所はある………?」

後ろを歩くツンに振り向くと、その顔はさっきまでのものと、微妙に違っていた

ξ゚听)ξ 「とりあえず、授業で使うところだけ教えてくれればいいわ」
(´・ω・`) 「え? あ、ああ、うん、そうだね……」

それどころか、口調も違う
今までやさしげで柔らかな雰囲気だったのに、今はどこか突き放したような、刺がある
ショボンがあまりの変化に怯えるほど、その違いは歴然だった

('A`) 「……んじゃ、音楽室とかその辺から回るか」
ξ゚听)ξ 「ん、よろしくね」

ドクオは、その変化に特に何もいわず、ただ言われたことをやるだけ、
といった感じで、事務的に先を歩いた



259 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 23:20:48.21 ID:qRJjS1f90
ドクオは変化に気づいているのかいないのか、何も言わない
ショボンはバリバリに気づいてはいるものの、怖くて言えない
だがブーンは、馬鹿正直に疑問を口に出していた

( ^ω^) 「なんか教室の時と感じが違うお?」
ξ゚-゚)ξ 「え?」

聞こえるかどうかぐらいの小さな声に、ピク、と肩を震わせる
横にいたショボンは、大げさなぐらいにおろおろとし、
前を行くドクオも、背中越しでよくはわからないが、アチャーといった感じに肩をすくめる

( ^ω^) 「? なんかまずいこと言ったかお?」

確かに、あれだけ大げさな変化を見せられれば、聞きたくもなるのだが……空気を読め
おそらく、ブーン以外の三人は三人ともがそう思っただろう
ちょっとした沈黙が流れ……最初にそれを破ったのはツンだった

ξ゚-゚)ξ 「あ、ごめんなさい。ちょっと疲れてるのかなw」

舌をちろりと見せながら、取り繕うかのように、だが、そうは見えないぐらい、整った笑みでそう言った
ブーンはその仕草に首を傾げ、ドクオも胡散臭そうに目を潜めたが、

(´・ω・`) 「あ! そうなんだ? うん、やっぱり転校したてだと、気疲れしちゃうよねぇw」

ショボンだけはさっきの空気を吹き飛ばすように、まっとうな反応を返していた



261 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 23:35:38.87 ID:qRJjS1f90
音楽室の手前まで、ツンはずっと教室にいたときの表情を崩さなかった
そのことが、どうにもブーンには気持ちが悪かった

( ^ω^) (なんだか……うーん、なんなんだお?)

気持ちが悪い、というか、しっくりこない、というか、うまく言葉にはできない違和感
ツンの顔見ていると、どういうわけかもどかしい気分にさせられるのだ
具体的にどこがどうとも言えないその感覚は、ブーンにはたまらなく居心地が悪く感じられた

('A`) 「うぃ、ここが音楽室。俺らの教室からじゃ一番近い移動教室がここな」
ξ゚-゚)ξ 「へぇ……けっこう大きくてちゃんとしてるんですね……

よければ中も見てみろよ。ドクオに促されるまま、ツンは一人で音楽室へと入っていった
ツンが中に入ったのを確認すると、ドクオは両手を持ち上げ、自分の方に倒す
『全員集合!』のハンドサインだ

('A`) 「で、だ……お前らはどう見る?」

音楽室に声が通らないよう、細心の注意を払い、小声で耳打ちされた

(´・ω・`) 「ど……どうもこうも、疲れてただけでしょ? ほら、やっぱり見知らぬ人の中じゃ……」
('A`) 「黙れ馬鹿。お前もおかしいと思ってんだろ?」
(´・ω・`) 「うぐ……」

これには反論できないのか、ショボンはいつものやり取りにもっていけず、小さくなる
ブーンも心境的にはショボンの意見に賛成したい部分もあったのだが、
ずっと感じている嫌な気分が、それを許さなかった

( ^ω^) 「なんか、変な感じはするお……」



268 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/13(木) 23:56:11.48 ID:qRJjS1f90
だろ? とドクオは視線をよこした

('A`) 「なんつーか猫かぶってるっつーか、作ってるっつーか、そんな感じだよな」
(´・ω・`) 「……でも、本当に疲れてて、情緒不安定なだけかも」
( ^ω^) 「うーん……疲れてるようには見えなかったお?」
 
ショボンもそこには同意なのか、煮え切らない、曖昧な頷きをする
そんなショボンの態度に、話がこじれそうな匂いを嗅ぎ取ったドクオは、きっぱりと言い切った

('A`) 「ぶっちゃけ、俺はどうでもいんだよ。あいつがどんな性格の奴だろうとよ、
     あいつと関わんなきゃいいだけなんだしな。どっちが素なのかなんてどうでもいい」

付け加えるように、ブーンもだけどな、と言い
でもな、と、ショボンの方を見てから嘆息した

('A`) 「お前はそういうの結構気にする方だろ?」
(´・ω・`) 「……うん、なんか、不安……かな」
( ^ω^) 「ショボン……」

言われて、確かに、と思う
ショボンはただの馬鹿のように見えて、周囲の視線を気にする性質なのだ
妙な部分で頭が回る分、常に誰かに迷惑をかけていないか、そういうことを気にしてしまう

(´・ω・`) 「もうね……なにか気に障ることでもしちゃったのかなって……すっごい気になる」

肩を落とし、指折り数えているのは、今日自分がやったことの中で心当たりを検索しているのだろう
断言できるのは、ショボンがやったことでツンの気分を害すようなことは何もないということで、
だが、そう言ったところでショボンの気持ちは晴れないだろうということも、断言できた



274 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 00:09:38.61 ID:GxreatKA0
('A`) 「気にすんな、お前はどう考えたって悪かねぇよ」

励ますようにショボンの肩をドクオが叩く
ともかく、だ、と前置きをして、ドクオは真剣な顔をする

('A`) 「少なくとも、俺らのせいであいつが妙に態度が悪くなった、
     そこだけは違うってこと、はっきりさせといた方が、気分いいだろ?」

ドクオの言葉はもっともで、ショボンも熱心に首を縦に振っている
だが、ブーンは少しだけドクオと違う意見を持っていた

( ^ω^) 「僕は……」
('A`) 「ん? なんだ、それもどうでもいいか? 気持ちはわかるけどよ、ショボンがな……」
( ^ω^) 「いや、そうじゃないお」

そう、そうじゃない。そうじゃないんだ
ドクオとショボンは、ツンの態度が教室と違うことを、気にしている
だが、ブーンはそうではなく、

( ^ω^) 「僕は、むしろ何で教室ではあんな顔をしていたのか、気になるんだお……」

その疑問は、ドクオ達の抱くツンの表面的な部分ではなく、もっと深い
ツンの内面そのものが気になる、そういった種類の疑問だった



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