( ^ω^)川゜-゜)ξ゚-゚)ξ

277 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 00:22:18.20 ID:GxreatKA0
ドクオは、ブーンがはっきりとそう言ったことに、顔をしかめた

('A`) 「……なんだ? お前、あいつのことがそんなに気になるのか?」

一瞬、ドクオの顔に凄みが走った

('A`) 「いや、お前がお人よしなのはいいけどな……あんま八方美人なのはよ、関心しねぇな」

それは、暗にクーだけを見ていろ、とでも言われたようなものだった
ドクオが普段ひた隠しにしている攻撃性をぶつけられ、ブーンは怯んだ
しかし、それでも自分を曲げずに、まっすぐにドクオと向き合い、言葉をぶつける

( ^ω^) 「そんなんじゃないお。ただ、ツンのあの顔を見てると、すごく気分が悪いんだお。
      本当に、居心地が悪くなるんだお。だから、なんとかしたい、それだけだお」
('A`) 「…………」

にらみつけるでも、すごむでもなく、ただ冷ややかな目でブーンを見ていたドクオだったが、
いつまで経っても、ブーンの目に見える真剣な色合いが、消えない。そのことにフッと息を吐き、

('A`) 「悪い、お前は、そういう奴だよなw あー、いかん、これ関係はどうにも熱くなる……」

照れ笑いを浮かべ、謝った
ドクオの顔が和らぐのを見て、ブーンもまた息を吐き、そして思った

どうして、ドクオは自分とクーのことになると、こうも真剣に怒ってくれるのだろうか……

直接聞こうとも思えず、聞いてもはぐらかされるだろう、そう思い、口にはしなかった



282 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 00:46:19.44 ID:GxreatKA0
(´・ω・`) 「でも、具体的に何するのさ?」

険悪な空気が漂いかけていた中、ずっと発言のタイミングを図っていたショボンが口を開く
言われてみれば、どうすればどっちが素顔でどっちが違う顔なのか、判断する方法がわからない
だが、ドクオは自信ありげに笑い、こう言った

('A`) 「くくく……何のための校内案内だ? この学校にゃあるじゃねぇか……
     それ向きの『七不思議』がよぉ……」
(;^ω^)(´・ω・`) 「な、『七不思議』!?」

安っぽい悪役じみた笑いをするドクオとは対照的に、二人は驚愕に目を見開いた
思わず、ただ事ではない様子で、ショボンがドクオに(小声で)つめよる

(´・ω・`) 「ま、待ってよ! 普通に校内案内するだけでいいじゃない?
      下手したら、速攻でまた転校したくなるよ? 徐々に慣れていかないとあれは……」
('A`) 「だからこそ、よ……そのぐらいのインパクトがなきゃ、仮面なんてな剥がれないぜ?」

流石に、ブーンもこれは賛同するかどうか迷った
この学校の場合、『七不思議』という単語が持つ意味合いは、普通の学校とは異なる
むしろ『七異常』とでも言うべきそれは、入学して一年が経つ彼らにとっても異常なものだ
もし、なんの気構えのない素人がそれに触れたとするならば……

( ^ω^) 「……やってみても、いいんじゃないのかお?」
(´・ω・`) 「ブーンまで……!」
('A`) 「よし、それじゃ決まりだ。校内『七不思議』案内を、これより開始する!」

ドクオの宣誓に、ショボンは絶望からか膝から崩れ落ちてしまった



288 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 01:03:42.16 ID:GxreatKA0
ガララっ、と音楽室の戸を開け、三人組はツンの元へと行く
ツンは音楽室によほど感心したのか、興味深げにいろいろと見ていた

ξ゚-゚)ξ 「あ、ごめんなさい。待たせちゃったかも……」
('A`) 「いや、そうでもない。むしろ俺らの方が待たせたぐらいだろ?」

なんでもないように装いながら、ドクオは素っ気無く言う
だが、口の端が微妙に上がっているのだけは隠しきれていない

ξ゚-゚)ξ 「あの……なにか?」

ドクオの表情に感づいたのか、ツンが顔を曇らせた
不安と不快が入り混じったその表情は、教室を出たときに見せた物に近い気がする
そう思ったのはブーンだけだったのか、二人はさして気にもせず、話題を切り出した

('A`) 「そういや、よく学校の怪談ってのがあるだろ? うちにも似たようなのがあるんだよ」
ξ゚-゚)ξ 「怪談? 夜中に目だけが動くベートーベンとか、そういうの?」

なんだそんなことか、と、傍目から見てもはっきりわかるほど、ツンは安堵した
ドクオの含み笑いに、それ以上の何かを想像していたのだろうが、肩透かしをくらったみたいだ
だが、その想像はある意味正しい

(´・ω・`) 「うん、そんな感じ。もちろん、この音楽室にもあってね……興味、ある?」

うんざりと、そんな話はしたくないと言うオーラを全身で放ちながらショボンが続いた
できれば、そこで聞きたくない、と言って欲しかったのだろう
だが、それはむしろ逆効果だった

ξ゚-゚)ξ 「そんなに怖いんですか? わぁ、ちょっと聞いてみたいかもw」



294 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 01:25:23.26 ID:GxreatKA0
どうしてこう女というのは怖い話が好きなのだろう
自分にはまったく理解できない感覚に、ショボンは項垂れていた

(´・ω・`) 「これ……確実に僕ら嫌われない? 何か本末転倒な気がするんだけど……」
( ^ω^) 「どっちかって言うと、この学校自体が嫌いになりそうだお」
(´・ω・`) 「駄目じゃないそれ?」
('A`) 「おい、馬鹿ども。こっち手伝えって」

いつもどおりのブーンとしょげ返っているショボンに、妙に生き生きとしたドクオが声をかける
ここ、音楽室の七不思議は、いくつかの条件を揃えないと、発動しないことになっているのだ
ドクオは今、その条件を整えるのに奔走していた

ξ゚-゚)ξ 「あの……これから何をするんです?」

話を聞くだけだと思っていたツンは、ドクオの行動にまた不信気な顔をする
が、ドクオはそれを笑い飛ばすだけで、まったく意に介さない

('A`) 「『音楽室のベートーベン』は、教師が帰った後、いたずらをする生徒を襲う……」

そう言って、ガチャっ、と音楽準備室の鍵を閉める
こうすることで、放課後、教職員が帰った状態を再現するのだ
続いて、カーテンを閉め、教室全体を暗くし、放課後の電気が消えた教室と同じ明度にする
これで、準備は完了だ

('A`) 「よし、これで後は……スピーカーにいたずらをするだけだな……」

ドクオはチラリとツンの方を見るが、話を聞くのと体験するのとでは、意味が違う
当然、ツンはスピーカーにいたずらするどころか、近寄ることさえ嫌がっていた
こうなっては、三人組のうち、誰かがスピーカーにいたずらをしなければならないのだが……



296 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 01:34:49.53 ID:GxreatKA0
(´・ω・`) 「ど、ドクオ。いくらなんでもツンさんにそんなことさせられないって……」
('A`) 「うし、それじゃショボンがいたずら係に決定な」
(´・ω・`) 「なんでっ!?」

気を利かしたつもりのせりふが、仇になってしまった
すでに回りは言い出しっぺがやるべき、という空気になっている
唯一止めてくれそうなツンでさえ、これから起こる事態には興味があるのか、止めようとしない

(´・ω・`) 「うう……なんでこんなことに……」

なし崩し的に、ショボンはスピーカーの前に立たされてしまった
ほかの三人は、教室の壁に張り付き、万が一にもとばっちりがこないよう、
安全を確保した上で、ことの成り行きを見守っている

(´・ω・`) 「お父さん……お母さん……僕をノーと言えない日本人に育てたこと、恨みます……!」

まず、間違いなく見当違いな恨み言をつぶやき、ショボンは意を決してスピーカーに手をかけた

(´・ω・`) 「来るなら来いやぁ、ベートーベンッッ!!」

カパっとスピーカーのカバーは開き、その内部構造をあらわにした。直後だった



299 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 01:49:32.30 ID:GxreatKA0
―――ミィィゥンッ! ミィィゥンッ! ミィィゥンッ!! ……

耳をつんざくようなサイレンが聞こえたかと思うと、今度は赤い光が教室を照らした
教室を舞っているほこりで見える、光の道をたどると……壁にかけてあるベートーベンの目が、光っていた
なんか豆球っぽい感じの光が、サーチライトのようにショボンに降り注いでいる

ξ゚-゚)ξ 「え? え? 七不思議って、こういう……あれ? え? え?」

戸惑うツンを無視して、なおもベートーベンの目は光り、サイレンは鳴り響き、
そして変化は第二段階に移行する

―――パカッ『オンガクシツ ヲ アラス ノ ハ ダレ ダ !?』

ξ;゚听)ξ 「えええええええええええええええええええええっ!?」

驚くのも無理はない。何せベートーベンの口が、くるみ割り人形のように開き、そこから声がするのだ
しかも、だれがどう聞いても合成音にしか聞こえない、ロボチックな声が
目からもれる赤い光は、正確に逃げ惑うショボンを捉え、次の瞬間

―――バシュッ! ミィィィィィバリバリバリバリバリバリバリバリバリッッッ!!!!
(´゚ω゚`) 「ミギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

ガスガンを撃つような音がしたかと思った時には、すさまじい横向きの稲妻が目を焼き、
ショボンに突き刺さると、恐ろしい音とともに、黒焦げにする勢いで感電させた

―――五分後

教室の電気をつけたドクオたちが目撃したのは、横たわる、
ボロボロの制服を焦がしたなんか黒い物体だった



304 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 02:10:14.91 ID:GxreatKA0
ξ;゚听)ξ 「…………ナニコレ……?」
('A`) 「あーwwwつまりだな、こういうことなんだよwwww」

半ば放心状態のツンに、ドクオが説明した内容を要約すると、こういうことだ

昔、ベートーベンというあだ名で呼ばれていた音楽教師が大事にしていたスピーカー
それを、その教師を嫌っていた生徒が嫌がらせに壊してしまった
激怒した音楽教師は、以降このようなことをするものが出ないよう、怪談を作り上げた
怪談だけでは物足らないので、ついでだから、電気銃とか合成音とかを悪ふざけで組み込んでみたところ
このような、立派というか、あほというか、微妙な防犯装置が完成したのだった

ξ;゚听)ξ 「……馬鹿?」

怪談の全容を聞いたツンがもらしたのは、その一言だけだった
ドクオはいかにも不満そうな顔で一瞥

('A`) 「過激でありながら、命を奪う心配のない非殺傷兵器を平気で学校に
     組み込んだ、勇敢な音楽教師の心意気。どうしてそれがわからない?」
ξ#゚听)ξ 「出来れば一生わかりたくないわっ!」

もう、表情がどうのと気も使えないほど狼狽しているのか、ツンは怒鳴り散らしていた
こっちが素顔、と言われれば納得出来そうなのだが、むしろ、

(;^ω^) 「……あんなの見せられて、まともでいられる人間のほうがどうかしてるお……」

賛成しておいてなんだが、この企画、どうにも本末転倒な気がしてきた

(´ ω `) 「ああ……やめて……せっかく積んだ石の塔を……壊さないで……!!」



310 :ちょい修正 ◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 02:32:10.06 ID:GxreatKA0
ショボンが回復するのを待っていると、ツンもそれなりに回復していた

ξ゚-゚)ξ 「えっと……なんか、想像してたのと違って、びっくりしちゃったw」

汗を浮かべながら、無理に笑顔をつくるツンは、どこか健気にも見える
だが、そのことに触れるものは一人としていない
三人とも、怒鳴り散らしていたツンの様子を話題にすることはなく、次のスポットへと向かうことにした

しかし、その内心は皆違っていた

( ^ω^) (流石に、さっきのアレはきついお……ちょっとかわいそうだお……)

('A`) (あんだけわめいときながら、まだ続けるかねぇ……ま、気が済むまで付き合ってやるか)

(´・ω・`) (うん。石を積むコツは、大体つかんだよ。次はきっと完成させられると思う……)

次に、四人が向かった先は、理科実験室だった



319 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 02:51:19.95 ID:GxreatKA0
校舎の北側に位置する理科実験室は、春だというのにひんやりとしていた
日の光などさすわけもないほの暗い教室と、飾られた人体模型や骨格標本が不気味さをさらに演出している

ξ゚-゚)ξ 「……ここも、やっぱり何かあるの?」

肩を抱き、不安なのかそれとも単純に怖いのか、ツンはしきりに辺りを見回していた

('A`) 「ああ、もちろんだ」
ξ゚-゚)ξ 「やっぱり……」

音楽室のインパクトが未だに後をひいているのか、がっくりと肩を落とす
そんなに嫌なら、もう帰るなり先生に泣きつくなりすればいいのに、
ツンはそれでも律儀についてきていた

( ^ω^) 「大丈夫だお。さっきみたいなのばっかりってわけじゃないお」
(´・ω・`) 「うん、そうだよ。僕もそうそう三途の川は見たくないしね」

二人で励ますが、その言葉をツンは信用していないのか、それともまるで励ませていないのか、

ξ゚-゚)ξ 「……今度は、危なくないですよね?」

じとっとした目で、恨みがましく言われてしまった
危ないかどうかで言えば、ここは危なくない。それは断言できる
なので、断言してみた

( ^ω^) 「うん、ここは大丈夫だお!」
ξ゚听)ξ 「うそっぽい」
(;^ω^) 「…………」

一刀両断だった



320 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 03:08:21.12 ID:GxreatKA0
('A`) 「ま、ここにあるのは『うめく人体模型』ぐらいだから、そう危なくはないわな」
ξ゚-゚)ξ 「ほんとに?」

しつこいぐらい、ツンは何度も何度も確認をしてくる
どうやら三人組の信用は、もはや落ちるとこまで落ちきってしまったようだ
無理もないが

(´・ω・`) 「日の落ちた校舎を歩いていると、理科室から人体模型のうめきが聞こえる、って話しだよ」
ξ゚-゚)ξ 「うめくだけ? 本当にうめくだけ?」
(;^ω^) 「なんか怪談の怖がり方じゃない感じがするお」
ξ;゚听)ξ 「あ、あんなの見た後なんだから、仕方ないじゃない」

至極もっともな意見だった
ツンの怖がりようが流石に気の毒になり(一番気の毒なのは自分だと気づいていない)、
ショボンさっさとネタばらしをしようとしたのだが、

ξ゚-゚)ξ 「あ、待って」
(´・ω・`) 「え?」

人体模型に向かう途中で、ツンに止められた

ξ゚-゚)ξ 「どうせ、あれですよね? 夜中にどこかの部屋の声が反響して、
     模型がうめくように聞こえる。そういうオチなんですよね?」

得意そうな顔で、ツンは自分の推理を言った
確かに、ありそうな話ではあるのだが、それはハズレだ
答えるより、実際に見たほうが早いだろうと、ショボンは人体模型に近寄り、手をかける



322 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 03:21:55.64 ID:GxreatKA0
無造作に、内臓のひとつ――多分、肺か心臓だと思う――をつかみ、引っこ抜く。と、

人体模型 『ぎゃあ』
ξ;゚听)ξ 「!?」

人体模型から、悲鳴が聞こえた
ショボンは抗議するような声を無視、次々に内臓を抜いていく

人体模型 『ぎゃあ』『痛いよう』『ひ、ひい……』『も、もう、ゆるし……ひぎぃ』
ξ;゚听)ξ 「あ、あ、あわわわわわわわわ………」

腰を抜かさんばかりに、震えるツンも無視して、ショボンはとうとう内臓を全部抜き取った
人体模型は、そこでようやく声を止め、しばらくの間を待ってから

人体模型 『……かえして……ぼくの内臓……かえして……ウウ、ウウ、ウウウ……』
ξ;゚听)ξ 「ひ、っひぃぃぃッ……!!」

うめき始めた。それはもう、地獄の底から手を伸ばさんばかりの、苦しみに満ちたうめき声
ガクガクと振るえ、もう立っているのがやっとのようなツンの横を、ドクオがすり抜け、

―――ポクン

軽く、人体模型の頭をたたくと、それっきり人体模型は沈黙した
まるでドクオが除霊でもしたかのように、あっさりと異様な叫びは収まったのだ
声も出ないのか、ツンは視線だけで、ドクオにそのことを問うと、

('A`) 「これは、かのベートーベン先生がお造りになった、喋る人体模型、
    『ウラミ ハラサデ オクベキ カ 二号』だ。内臓を抜くといちいち悲鳴をあげるのがチャームポイントだ」
ξ#゚听)ξ 「またベートーベンッ!? いったい何なのその教師はっ!?」



325 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 03:39:42.73 ID:GxreatKA0
今度こそ心霊現象だと思い、あれほど怖がったのに、その種明かしが、またベートーベン
そのくだらなさにツンはぷりぷりと怒っていた

ξ#゚听)ξ 「なに? なんなのこの学校? 七不思議は全部ベートーベン?
       どうせ次なんか『歩く初代校長像』あたりがベートーベン作なんじゃないのっ!?」
('A`) 「!! な……なんでわかった……? ベートーベン作、
     『自走式校長像・あゆむくん』をなんで知ってるんだっ!?」
ξ#゚听)ξ 「いいかげん想像つくわよっ!! 全部ベートーベンじゃないの!?」

地団太を踏みながら、キィー! とわめくツンに、ショボンが恐る恐る近寄り、
でもね、と、びくびくしながら前置きした

(´・ω・`) 「あ、あのね? この話の怖いところは、
      『なんで誰もいないはずの理科室で、人体模型の内臓が外れたか?』ってところで……」
ξ#゚听)ξ 「そんなのどうでもいいでしょっ!? むしろこの人体模型の制作意図の方が、
      よっぽど『不思議』だし、ベートーベンの存在自体が、超常現象じゃないのっ!?」

なかなかうまいことを言う

( ^ω^)(´・ω・`)('A`) 「あっはっはっはっはっはっはwwwwwwwwww」

三人組はそろってそのことを称えるように笑うと……

ξ#゚听)ξ 「なっ……! 何、三人とも笑ってんのよっ!? 笑うなァァァァァァアアッッ!!」

とんでもない勢いで怒られた



420 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 23:27:26.54 ID:GxreatKA0
この世には、シュールな状況というものが存在する
例えば、そう、今のこの三人が置かれている状況なんかがいい見本だろう

ξ#゚听)ξ 「なに? これはあれ? 校内案内に見せかけたお化け屋敷めぐり? 罰ゲーム?」
(;^ω^) 「いや……えと、その……」
ξ#゚听)ξ 「むしろこの学校自体が、学校に見せかけたベートーベン博物館なの?」
('A`) 「ま、まあ、全部が全部ベートーベンってわけじゃ……」
ξ#゚听)ξ 「口答えしないっ!」

―――ズバーンッ!!

(´・ω・`) 「なんでぼくがゲフゥっ!?」

ドシャっ、と崩れ落ちるショボンを打ったのは、
ベートーベン作、骨格標本『ウラミ ハラタサデ オクベキ カ』一号の大腿骨だ

ξ#゚听)ξ 「あたしは今怒ってるの! 怒られてる自覚を持ちなさい!」
(;^ω^)(´・ω・`)('A`) 「すんませんでした……」
 
今三人は、理科室の床に正座をさせられ、
ただ一人いすに座ったツンから、お説教のようなものを受けていた
しかも体罰はありの方向で
まさか高校生にもなって、こんな怒られ方をするなんて、想像もしていなかった

今、ツンは猛烈に激怒していた
悪ふざけの塊と言うべき七不思議を体験させられた、というのも原因の一つなのだが、
それよりも、今、自分が怒っている、怒らせられた、ということに、激しく怒っていた



422 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 23:46:05.27 ID:GxreatKA0
ξ゚听)ξ 「まったく……あー、なんか怒鳴ったらのど渇いてきちゃった……」
( ^ω^)(´・ω・`)('A`) 「…………」
ξ#゚听)ξ 「何してんのよっ? のど渇いたって言ってるんだから、なんか持ってきなさいっ!」

ガンっ! と、リノリウム張りの床が揺れる勢いで、床をたたく。大腿骨で
インパクトの瞬間、ミシミシッ、と骨が軋んだような気がしたが……

ξ#゚听)ξ 「早くっ!!」

―――バギャッ!!

気のせいじゃなかった。むしろ砕けた。というか、握りつぶされた
二人が驚愕し、呆気にとられている中、いち早く反応したのは、ショボンだった

(´・ω・`) 「は、はい! ただいま!!」

脱兎のごとく理科室を抜け出し、
おそらくは、一階の自販機のところまで行くのだろう、ショボンは走っていく
呆然とショボンを見送っていた二人は、そこでようやく気がついた

(;^ω^)('A`) (あ……あの野郎、うまいこと逃げやがった……!)



425 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 23:47:47.83 ID:GxreatKA0
と、歯軋りしたのもつかの間……

(´・ω・`) 「あれっ!? うわああああああああああああああああああ!!!」

―――スカッ……ゴン! ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ドンッ!!

何か……遠い方で、誰かが階段を転げ落ちるような音と、ショボンの聞きなれた悲鳴が聞こえた
この場合、天罰覿面、と言うのかも知れないが、

ξ゚听)ξ 「……フン、お茶はしばらく来ないみたいね?」
(;^ω^)('A`) 「えええええええええええええええええ??」
ξ゚听)ξ 「なに?」
(;^ω^)('A`) 「…………」

ツン……怖い子……!
二人は、ショボンに同情すると同時に、これから自分たちに起きるであろう惨劇に、身を震わせる
ツンは戦慄している二人を、冷え切った目でにらみ付けると、

ξ゚听)ξ 「……で、戻ってこない人間のことは置いとくけど、」

まるでショボンは死んでしまったかのようだ

ξ゚听)ξ 「あんたたち……なんのつもり?」

これもまた、冷たい声で、尋ねてきた
怒りが極限まで達すると、かえって人は冷静になる。そんな話を思い出させられる
ここで、下手な弁明をすれば、それこそ命がないかもしれない



427 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/14(金) 23:55:29.88 ID:GxreatKA0
('A`) 「いや、別にそういうんじゃなくってよ、ただ俺たちは校内案内を……」

極力、平静を装い、ドクオがうそとは言わないまでも、思惑を隠した説明をしようとした

( ^ω^) 「…………」

ブーンにしてみれば、このままドクオに任せてしまっても、それはそれで良かった
ドクオは自分とは違い、こういった言い訳や弁論の場で、ポカをやるような人間ではない
多分、自分が何かいうよりも、確実に丸くこの場をおさめてくれるだろう。だが、

―――スッ……

( ^ω^) 「…………」
('A`) 「お……? んだよ、ブーン……」

ブーンは、無言でドクオの前に手を伸ばし、言葉をとめさせる
なぜか、ここはドクオのように、ごまかそうとしてはいけない、そんな気がした



435 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 00:11:23.93 ID:2vP2DMzC0
ξ゚听)ξ 「なによ? なんか言い訳があるんじゃないの? 釈明ぐらいしなさいよ」

苛立たしげに、大腿骨で肩を叩く
が、ブーンはそれを視線の中に入れようともせずに、ただうつむいた

( ^ω^) 「僕は……気になってたんだお。教室と、違う顔をしていたツンが……」

教室の時の違和感を思い出す。ツンのあの顔を見ていると……どうにもむしゃくしゃする

( ^ω^) 「何て言うか……その、教室では、すっごくつまんなそうに笑ってるのが、嫌だったんだお」

口にすることで、今まで自分が感じていたことがどんどんクリアに、鮮明になっていく
そうだ、自分は、あの顔が、そういう風に見えたんだ

( ^ω^) 「みんながいないとこで、今ここで、ツンがしてる顔の方が……素顔に見えて、
      教室では、なんか無理してるみたいに、見えたんだお。だから、」

自分が初めて知ったとき、思いっきり笑い転げた、この学校のおかしすぎる七不思議

( ^ω^) 「それを見て、普通に、心の底から笑って欲しいって、思ったんだお」

ブーンが、ドクオの企画に乗った理由は、それだった
ショボンにとっては、学校を嫌いになるんじゃないかと危惧した、異常な七不思議
ドクオにとっては、猫をかぶったお嬢様の皮をはぐための、劇薬
だが、ブーンにとってそれは、大好きな学校の、大好きなおもしろさだったのだ

うそをひとつも交えずに、正直な気持ちを語ったブーンは、ツンの顔を見ようと顔を上げた



439 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 00:22:59.88 ID:2vP2DMzC0
が、

―――ガンッ!!

( ;゚ω゚) 「ふぉっ!?」
ξ゚听)ξ 「……何それ?」

殴られた。上げようとした頭を、上から抑えるつけるように、骨でぶん殴られた
痛みにうずくまり、うめき声をもらすブーンに構わず、ツンは絶対零度の声で続けた

ξ゚听)ξ 「あたしが、どこでどんな顔をしてたって、別にいいじゃない?
     そんな理由でこんなことしたの? ……だったら、言わせてもらうけど、不愉快だわ」

立ち上がり、半ばで砕けた骨を床に投げ捨て、ほこりを払うようにスカートをたたく

ξ゚听)ξ 「自分勝手なおせっかいで、こんなことしないでよね?」

無表情にそう言うと、ツンは教室を出ようと、戸の前まで歩き、そこで振り返った

ξ゚听)ξ 「あと、今日のあたしのこと、ほかの人に言ったら……許さないから」

じゃね、と、こちらを一瞥もしないで、ツンは教室を出て行く
ツンの足音が遠ざかるの待ってから、ドクオはブーンを抱き起こした
表情は、苦虫を噛み潰したような、渋面だった

('A`) 「……お前な、だからお人よしはたいがいにしとけって言ったんだよ」

ため息をつくドクオは、しかし、どこかしょうがないと思ったのか、苦笑を浮かべる
その顔を見ていると、ブーンは不思議と安心できたのだった
彼が、こうやって笑ってくれる時……それは、自分のやったことが間違いではない、と言ってくれる時だけだから



445 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 00:39:34.52 ID:2vP2DMzC0
( ^ω^) 「も、もう大丈夫だお」
('A`) 「そっか。でも頭だからな……あの馬鹿、力加減してねぇみたいだし、病院行っとけよ?」

そう言えば昨日も頭を打ったような気がする。病院には行ってないが
さすがに二日続けて、となると、病院に行ったほうがいいのかもしれない

('A`) 「なーんか予想以上にあいつの本性が暴けたって感じだな」

おかげでこっちはひどい被害を受けた
ブーンは沈みそうになる気分を盛り返すように、元気に言った

( ^ω^) 「でも、これでショボンのせいで機嫌が悪くなったんじゃないってことは、わかったお!」
('A`) 「ま、その結果確実に俺らは嫌われたわけなんだがな」

無駄だった。ドクオのもっともな言い分に、余計に沈んでしまった
やっぱり、さっき思ったとおり、この企画は本末転倒だったようだ

ひとしきり落ち込み、二人が帰ろうとした、その時
ガラッと、理科室の戸が開き、そこから入ってきたのは……ツンだった
なぜか顔を真っ赤にして俯き、しばらく迷うように頭を上下させてから、叫ぶように言った

ξ゚听)ξ 「い、移動教室の場所! それ聞かないと、帰れないじゃないっ!」
(;^ω^)('A`) 「……………」
ξ゚听)ξ 「そ、それだけ聞いたら、二度と話し掛けないでよねっ!?」

あんだけクールに怖さを演出して帰っていったのに……この再登場とは
二人はなんだかなぁという気分になりながら、とりあえず、移動教室の場所を説明した



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