( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ
- 473 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 01:57:35.12 ID:2vP2DMzC0
- ('A`) 「今日は嵐のような一日だったな……」
力なく肩を落とすドクオは、心底疲れているのかそんなことを言った
嵐のような一日、と言われ、今日あったことを振り返ってみる
朝。四階まで行きたくないと、ドクオがごねる
学校。机と結婚する、とドクオが奇声を上げる。体育館行きたくない、とドクオがシャウトする
集会後。ドクオがショボンをレイプしたかのような惨状が繰り広げられる
放課後。ドクオ主催、転入生七不思議案内(ポロリはなかった)で、ツンが大激怒
( ^ω^) 「…………」
不思議だ
どれもこれも、トラブルと言えばドクオが発端のような気がしてならない
('A`) 「ん? どうした?」
( ^ω^) 「ん、なんでもないお。今日はほんとに大変だったお」
言ってどうにかなるものでなし、ブーンは黙ってドクオに頷いた
二人は揃って家路につこうとしていた
途中、階段の踊り場で眠っているショボンを見つけしたのだが、
(´ ω `) 「いや……いやぁ……!! ぼ、僕の心臓は、きっと羽より軽いです……!」
どうも今回はエジプトの冥界にお邪魔しているようだ
とても楽しげに、いつも通りだったので、放置することにした
この学校ではよくあることなので、いちいち関わっていたら、疲れるばかりだ
- 486 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 02:18:41.11 ID:2vP2DMzC0
- そう言えば、と思い出したように、ブーンはドクオに向き直る
( ^ω^) 「なんでドクオは、あそこまでやったんだお?」
ドクオはツンに対して、どうでもいい、と言っていた
だがその割に、ドクオはむしろ主導的にツンの素顔を暴こうとしていた節がある
ショボンの不安を解消するため、とは言っていたが、結果がこうでは意味がない
('A`) 「……んー、あー……なんつーのかなー……」
難しい顔をして、ほほを掻く
言葉を捜している、というよりも、言うべきかどうか迷っている、という感じだ
('A`) 「ん、なんかな、むかついた、ってのが正直なとこだとおもう」
( ^ω^) 「むかついたって……なんか、珍しいお?」
自分でもそう思う、と言って、ドクオは頭をかきむしった
ドクオは粗野な外見と言動ではあるものの、他人に対して悪い感情を抱かない部分がある
根がやさしいとか、お人よしとかではなく、ただ単純に他人に無関心なのがその要因ではあるものの、
そのドクオが、こうもはっきり他人をむかつくなどと言うのは、滅多にないことなのだ
('A`) 「寝不足ってのもあるんだろうけどよ……どういうわけか、あの時な……」
あの時、というのは、校内案内を言いつけられた直後、ツンが地を出した時のことだろう
('A`) 「一瞬、あいつの顔がよ、クーに似てるって……思ったんだよな……」
(;^ω^) 「え? ……そう、かお?」
言われて、思い返してみるのだが……ブーンにはとてもそうは思えなかった
- 488 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 02:28:15.62 ID:2vP2DMzC0
- 迷うように言ったことを即座に否定され、
ドクオは、いや、そうじゃないんだよな、と、また言葉を捜すように沈黙する
('A`) 「顔のつくりとか、そういうじゃねんだよな……こう、ふいんきって言うのか?」
疑問系で聞かれても、答えようがない。あと雰囲気な、雰囲気
('A`) 「あー、うまく言えない。なんだこれ?」
(;^ω^) 「いや、聞かれても」
助け舟を期待していたわけでもないだろうに、ドクオは顔をしかめる
ブーンにではなく、うまく思ったことを口に出せない自分に対し、苛立っているのか、
何度も指で額をたたき、うまい言い方をひねり出そうとするのだが、
('A`) 「……やっぱあれだ、俺、ちょっと寝たほうがいいわ」
結局、説明することをあきらめたドクオは、それっきりその話題を振ってはこなかった
- 531 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 13:09:43.40 ID:cGxz41/i0
- 川゚-゚) 「ん、遅かったな」
( ^ω^) 「あれ、クー?」
げた箱には、幼馴染の姿があった
ブーンたちが校内案内をはじめたのは、すでに放課後
ショボンの回復を待つなり、説教を食らうなりしていて、一時間以上はかかっているはずだ
部活動も今日は軒並み休みなので、学校にいる生徒はほとんどいない時刻だというのに、クーはいた
( ^ω^) 「待ってたのかお?」
川゚-゚) 「ああ、放課後に、と約束しただろう?」
待ちつかれた様子も見せずに、クーはさも当然のように言い、
寄りかかっていたげた箱から体を起こすと、無表情にブーン見ると、
川゚-゚) 「今日は一時間ほど待った」
(;^ω^) 「あう……」
抑揚のない声で告げた
前もあったが、やはりこの幼馴染の顔と声は……怒っているようにしか見えない
やはりここは土下座だろうか? と、おたおたしていると、
川゚ー゚) 「ふっ……気にするな、それだけ今日は面白い話が聞けるのだろう?」
( ^ω^) 「あ……うん、今日は大変だったんだお?」
やっぱり、と思う
いつもいつも、クーのこういう物の言い方には焦らされるが、
それ以上に、クーの微笑は自分を安心させてくれる
時々しか見られないのは、少し、残念だが
- 537 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 13:46:34.24 ID:cGxz41/i0
- 川゚-゚) 「それで、今日は何があったんだ?」
( ^ω^) 「今日はほんとに疲れたお……」
事務的な感じで尋ねるクーに、ブーンは大げさに肩を落としてみせる
久しく自分から話を振ることがなかったが、クーと話すとき、ブーンはいつもそうしている
クーが無表情に淡々と話すせいか、それを補うようにブーンはオーバーにリアクションをする
はたから見ていれば、うんざりしている女に話し掛ける、テンション高い男と言った感じなのだが、
二人にとっては、それなりに楽しいひと時だ
('A`) 「……あー、わるい、ちょっといいか?」
靴を履き、帰ろうとした時、ドクオが上履きのまま、そう言った
('A`) 「俺、今日は工房に寄ってくことにするからよ、お前ら二人で帰ってくんね?」
( ^ω^) 「? 眠いんじゃなかったのかお? 一緒に早く帰ったほうがいいお?」
さっきも寝たほうがいいと言っていたし、朝のあの惨状を思えば、このまま学校に残るのはどうかと思う
だが、ドクオは苦笑を浮かべ、二人を見やり、
('A`) 「はぁ……気ぃ使ってんだよw 俺は工房で寝るから、先行っててくれ」
( ^ω^) 「???」
含み笑いをしながら、よくわからないことを言った
- 538 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 13:47:15.96 ID:cGxz41/i0
- ドクオの言っている事はいまいち理解できないが、異論をはさむようなことでもない
できれば一緒に帰りたい、と思いつつ、ブーンはドクオの言葉に従った
クーと二人で校舎から出る寸前、
川゚-゚) 「ドクオ」
('A`) 「ん?」
クーはくるっと振り向き、ドクオの方を向くと、会釈した
川゚-゚) 「感謝する」
('A`) 「……へ、俺はただ工房に篭りたかっただけだぜ? 気にすんなよ」
川゚-゚) 「ああ、気にはしない。だが、養生しろよ」
( ^ω^) 「……?」
二人のやりとりの意味がわからず、ブーンが首を傾げると、
川゚-゚) 「さ、帰ろうか。ドクオの心遣い、無にするわけにもいかんしな」
( ;゚ω゚) 「ゴヒュッ!?」
クーはその首根っこを掴み、引きずるように学校を後にした
二人が学校を出て行くのを見届けたドクオは、工房に向かう階段で、ため息を漏らした
('A`) 「……俺、何やってんだろうな」
つぶやいても、答える人間はここにいない
('A`) 「はww ……どっちがお人よしだよ……ったく、人のこと言えねっつの」
自嘲は、誰にも聞かれることなく、無人の校舎に溶けていった
- 543 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 14:15:03.18 ID:cGxz41/i0
- ( ^ω^) 「ドクオ……どうしたんだろう……」
本当なら、今も一緒に歩いているはずの友人を思い、ブーンはうつむく
いつものメンバーが、一人でも欠けていると、何か物足りない気にさせられるのだ
川゚-゚) 「確かに、あいつがいないと、何か足らない気はするが……」
( ^ω^) 「あ、クーもかお? だったら、」
あの時、一緒に帰ろうと言ってくれればいいのに、
その言葉を続ける前に、クーが声をかぶせてきた
川゚-゚) 「私と、二人っきりは……いやか?」
( ^ω^) 「え……!?」
その声音は、平坦ではなく、どこか不安げな色を持っていた
表情こそ変わらないものの、少し下を向くクーの顔は、たまらなくブーンも不安にさせ、
何か言わなきゃいけない、と、思わせられた
( ^ω^) 「そんなわけないお?」
川゚-゚) 「本当、か?」
焦ってどもりそうになるのを、必死で抑えながら、ブーンは続ける
( ^ω^) 「もちろんだお。今日はクーに話したいことがいっぱいあるんだお!」
川゚-゚) 「……そうか。うん、私も、楽しみだ」
楽しげにはしゃいで見せるブーンに、クーは安堵するように、何度も頷いた
その、クーの自分に言い聞かせるような姿を見ていると、ブーンはまた、不安になる
自分は、どうして、クーにこんな顔をさせるようなことしか、言えないんだろうか、と
ドクオではないが、少しだけ、自分に嫌気がするような、そんな気がした
- 545 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 14:30:01.59 ID:cGxz41/i0
- ( ^ω^) 「……で、クラス中がとんでもない大騒ぎだったんだおw」
川゚-゚) 「なるほど、あの騒音はそういうことだったのか」
今日の出来事を、オーバーな身振りつきで話すブーンと、
それを仕事か何かの報告を受けるように、相槌を打つクー
元々、表情に乏しいクーと、思ったことをそのまま顔に出すブーンとの会話は、
どこかチグハグではあるものの、それをどちらも気にしていない、不思議なものだった
( ^ω^) 「しかも、先生、その後に校内案内まで僕らにさせたんだお……」
川゚-゚) 「だから、今日は遅かったのか」
淡々と、確認作業のような返事しかしないクーの態度は、普通の男ならば不安になるだろう
もしかすると、自分はとんでもなくつまらないことを喋っていて、興味なんかないんじゃないのか
だが、ブーンにはそういった不安は欠片もない
長い付き合いの中で、クーがそう言うしゃべり方しかできないことを知ってもいるし、
もし、本当につまらないと思っているなら、クーは返事もしないはずだからだ
( ^ω^) 「で、ドクオが七不思議もついでに教えようって言うから、余計に……」
川゚-゚) 「道理でショボンの姿がないわけだ」
クーが時折言葉をはさむのは、こっちの話をちゃんと聞いてくれている証拠で、
こっちの話をもっと聞きたい、だから、話しやすいように続きを促す、そんな心配りでもある
- 547 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 14:37:41.30 ID:cGxz41/i0
- 久しぶりのクーとのそんな会話を、ブーンはここまで、調子よく続けていた
が、校内案内のところに差し掛かると、急に歯切れが悪くなった
( ^ω^) 「えと、その転入生が……あー、うーん……」
川゚-゚) 「ん? どうした?」
うっかりツンの地の部分のことを話しそうになり、慌てて言いよどむ
本人から、許さない、とまで言われていることを、話していいものだろうか
いや、相手がクーなら、これ以上の人間に知られることもない
喋ってしまってもいいような気はしたのだが……
( ^ω^) 「……いや、七不思議案内で、すっごいびっくりしてたんだお」
結局、ブーンはツンに言われた通り、話すのを止めていた
ブーンの不自然に短いその説明に、クーは一瞬、怪訝な顔をするが、
それほど気にしなかったのか、うん、と頷き
川゚-゚) 「……まあ、この学校の七不思議じゃ、仕方ないか」
と、転入生に同情するように、つぶやいただけだった
- 555 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 14:58:07.19 ID:cGxz41/i0
- そこでブーンの話せる内容は終わってしまった
聞かれたことに答えるだけ、と言えばそれまでのことだったので、
今までのように、何を話せばいいのか迷うこともなく、トントンと進められたが、
これ以上はちょっと話しようがない。しかし、それはクーにもわかっていた
川゚-゚) 「そうか、七不思議か……」
( ^ω^) 「? 七不思議が、どうかしたかお?」
いいことを思いついた、みたいに、クーはブーンの方を向くと、突然肩をつかんだ
(;^ω^) 「ふぉっ!?」
川゚-゚) 「なあ、ブーン。今度私にも、七不思議案内してくれないか?」
(;^ω^) 「フォオッ!?」
クーのいきなりな提案に、
もう、肩をつかまれたことに驚けばいいのか、そっちに驚けばいいのかわからず、
ブーンは混乱し、どこぞの芸人みたいな奇声を上げた
( ^ω^) 「で、でも、クーは七不思議は大体知ってるお?」
クーもこの学校に通って一年になる
七不思議ぐらい、先輩やら同級生やら伝いで大体どんなものか、知らないはずがない
川゚-゚) 「……いや、そうなんだが……」
クーにしては珍しく、言葉を濁すように口をもごもごとさせる
それでもブーンが何も言わないでいると、クーは思い切ったのか、はっきりと言った
川゚-゚) 「その……転入生とやらは、お前に案内してもらったのだろう?
なのに、私は案内してもらっていないというのが……何か、こう、ずるいと思う」
- 562 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 15:08:35.04 ID:cGxz41/i0
- (;^ω^) 「…………ええと」
何というか、その、うん、ブーンはひどく困った
いつもいつも無表情に抑揚もなく、生まれはどこのロボットワールドですか、
と聞きたくなるほどのクーが、照れるように、そんなことを言うのだ
これで慌てない男はいないんじゃないかと思う。ていうか、クーの方がずるいと思う
と、ブーンの心が軽く海外出張していると、クーは気にせず大きく頷き、
川゚-゚) 「うむ、では来週ぐらいに案内をしてくれ」
(;^ω^) 「え? それ確定かお?」
川゚-゚) 「? すまない、何か都合があったか?」
( ^ω^) 「いや、そういうわけじゃ……」
川゚-゚) 「なら、問題ないな。うむ、よかった」
胸をなでおろすクーは、どうやら、「事情を話したのだからもうそれでいい」と思っているらしい
恐ろしいまでにブーンの意思は無視しているのだが、
(;^ω^) 「うう……わかったお。でも、音楽室は勘弁だお?」
川゚-゚) 「む……それは残念だな。まあ、仕方ないか」
お前もOKするなよ
そんなこんなで、来週はクーと一緒に七不思議めぐりをすることになってしまった……
- 647 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 23:22:24.12 ID:cGxz41/i0
- 校舎二階に、ドクオの工房はある
工房、とドクオとその周りの人間は呼んでいるが、正式な名前は美術準備室だ
美術室の隣にある、倉庫のような狭苦しい部屋を教師黙認の元、ドクオは使っていた
('A`) 「……さ、やるか」
さっきまでは尋常じゃなかった眠気も、今は感じない。ここに来ると気分が引き締まる気がする
元々教師用に置かれている小さい木製の机の前に座り、机の上に放置された白い塊と向き合う
薄く延ばされた、紙粘土のような白い塊は、銀粉粘土だった
特にシルバーアクセをつける趣味は持っていないのだが、なぜか作るほうは滅法気に入ってしまい、
こうして暇を見つけては、この工房にこもり、作品作りを続けている
('A`) 「リューターはどこやったっけっかな……」
いや、正確に言うなら、暇を見つけて、というのは間違いだ
自分の金で買い、ここに置かせてもらっている工具を棚から引っ張り出し、コンセントをさす
二、三度、空回りさせ、どこも壊れていないことを確認
続いて、素材である銀粉粘土の乾き具合を確認……これも良好だ
本来は、水などでやわらかくした粘土を整形し、それから模様などをつけるのだが、
今、作っているのはドッグタグ。すでに長方形に切り取られた粘土に、模様を施すだけでいい
まあ、ドッグタグ自体、銀粉粘土で作るものではないのだが、所詮趣味の範囲だ、誰も文句は言うまい
('A`) 「うし、今日はそうだな……龍でも彫るか」
リューターのスィッチを入れ、回転させる
ショボンあたりなら、歯医者を思い出すと言いそうなところだが、自分はこの音が好きだ
高速回転する機械の音を聞いていると、一緒に自分の雑念も巻き込んでくれる。そんな気がする
ドクオは、この音を聞き、考え事をするために、この工房で作品を作りに来るのだ
- 670 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/15(土) 23:48:28.04 ID:cGxz41/i0
- 白い粉を撒き散らしながら、リューターが粘土を削る
デザインや絵の勉強なんかしていないから、自分流に、好き勝手に、リューターを操る
龍もリアルなのは無理だから、直線的にディフォルメした物を、頭の中でイメージする
一度完成形が頭に浮かべば、あとは単調な作業だ。考える余裕が多少はできる
('A`) 「…………」
今日、自分がツンに感じたあれはなんだったんだろうか
さっきクーと会って、顔を見たが、ぜんぜん似てなんかいない
だが、あの時の顔を見て、あの口調を聞いた瞬間、確かに自分はツンにクーの影を見ていた
('A`) 「っと、削りすぎたかな?」
力を入れすぎたのか、リューターは思いのほか深く粘土を削ってしまっていた
裏側が透けて見える……とまでは言わないが、焼成の最中に割れてしまうかもしれない
まあ、それならそれで、そういうデザインだと言い張ればいいか、と、考えることにした
('A`) 「…………」
頭のなかで二人の顔を並べてみる。クーはひとつだが、ツンは表と地、両方を浮かべる
何度思い返しても、二人の間に、共通点らしきものは見当たらない。強いていえば、美少女ぐらいだ
だが、自分がそんなくだらない所で、あの二人を同じくくりにするとは、思えない
('A`) 「……なんだっつーんだろうねぇ……」
自嘲気味に呟き、そしてそのままため息を吐く。ため息の原因は、
ツンのこともあるのだが、それよりも、クーのことだった
今まで、自分はどんなことがあっても冷静でいられる、そんな自信があった
だが、そんな上っ面の仮面は、クーに関することだと、いとも簡単に剥がれ落ちてしまう
- 689 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 00:11:24.34 ID:obZIkUlq0
- クーの顔を思い浮かべそうになり、ドクオは慌ててそれを打ち消す
違う、自分はそんなことを考えちゃいない
何かをごまかすように、言い聞かせ、別のことを考えようと、友人の顔を新たに浮かべる
('A`) 「……そういや、ブーンはうまくやってんのかねぇ」
雑念交じりに友人の顔を思い出すには、この音は邪魔だ
リューターを止め、いったん作業を中断し、あごに手を当てて考える
('A`) 「あいつはなぁ……どうにもお人よしっつーか、がきっつーかなぁ……」
普通、中学の終わりぐらい―――大体、高校受験を考えるあたりだろうか、
そのぐらいになると、それまで持っていた純粋な何かはなりを潜め、
心のどこかで数字を追い求めるような、悪い意味で大人な部分が顔を出しはじめる
ドクオも高校に入る直前に、そんな風に変わってしまった友人を、何人も見た
結局、今、そいつらとは繋がりもなく、友人と呼べるのはブーンやショボンぐらいのものだ
だが、ショボンもブーンも、そんなところは欠片も見られなかった
中学生ぐらいまでしか持てない、本当の意味での子供っぽさ
言い換えれば、ただ成長していない、ということなのかも知れないが、それでもいいと思う
自分にとって、彼らが保っているその部分は、輝かしく見えるぐらい、羨ましい長所なのだ
だが、
('A`) 「だからつってなぁ……も少し大人な恋愛は、できないもんかねぇ……」
根っこの部分では純粋でい続けて欲しいのだが、せめてその辺りぐらいは要領よくやってほしい
ドクオは、自分で考えておきながら、わがままなもんだ、と苦笑した
- 695 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 00:39:39.04 ID:obZIkUlq0
- ('A`) 「……なんかだめっぽそう」
ブーンとクーがどんな会話をしているか、試しに想像してみたところ、
考えるまでもない結論に到着してしまった
現場にいない自分があれこれ考えても仕方ない、そう割り切り、ドクオは作業を再開した
(´・ω・`) 「あ、音がすると思ったら」
('A`) 「お、ショボン、目ぇ覚めたのか?」
ノックもなしに入ってきたショボンにそう返し、時計を見ると、
さっきショボンが階段落ちをかましてから、一時間たっていることを知った
(´・ω・`) 「なんか体中が痛いんだけど……」
('A`) 「そうか、生きてる証拠だな。我慢しろ」
(´・ω・`) 「……そういう言い方って、ひどい」
ショボーンと肩を落とし、落ち込むショボンに、自業自得だ、と言おうとして、
('A`) 「……おい馬鹿」
(´・ω・`) 「死人に鞭ですか? 日暮れて道遠しってやつですか?」
またもや肩を落とすショボンの顔を見て、そこで、思い返してみる
('A`) 「……そういや、ツンのやつも、こんな顔してたっけか」
(´・ω・`) 「ツンさん? ツンさんって僕みたいな顔だっけ?」
('A`) 「よし、黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「馬鹿じゃないよー?」
いつものやり取りだが、それ以上ドクオは返さない。そのとき、ドクオは、
今日、自分が感じたあの感覚、その正体に気がついた
- 697 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 00:48:47.83 ID:obZIkUlq0
- ('A`) 「あいつは、こいつらと同じ顔、してたんだな……」
ツンがあの時見せたあの顔は、今のショボンと同じように、
なんの飾りもなく、ただ自分の気持ちを素直に出した、そんな顔のように見え、
それが、いつも自分の気持ちをストレートに言う、クーと重なったように思えたのだ
わかってみれば、単純なことだった
どうして、自分はそれに苛立ちを覚えたのか?
決まっている、大好きな友人達のする表情を、あいつは押し隠すようにして、否定した
まるで、そんな表情は生きていく上で邪魔なだけだ、そう言われたように感じたのだ
('A`) 「あー、そりゃむかつくわなぁ……」
だから、そんな重っ苦しい仮面をはいで、素直になれ、そう言いたくなったんだ
単純すぎる結論に、今まで悩んでいた自分が馬鹿らしくなり、ドクオは大笑いした
(´・ω・`) 「ド……ドクオ?」
そんな内心など、知る由もないショボンには、
ドクオが寝不足のテンションでおかしくなったようにしか見えない
本気で心配するように、おずおずと手を差し伸べるが、ドクオはそれを払いのけ、
('A`) 「いやwww悩んでたんだけどよ、思いのほか簡単に片付いてなwなんか笑えたwww」
(´・ω・`) 「悩んでたって、またそのアクセサリー?」
ショボンが見当違いに、作りかけのアクセを指差すが、否定するのも面倒だ
ああ、そうだ、そう言って、ドクオはまた、思いっきり笑った
- 720 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 01:09:07.46 ID:obZIkUlq0
- (´・ω・`) 「ふーん……よくわかんないけど、良かったね? 僕にも見せてよ」
他のやつが言ったとしても、社交辞令にしか聞こえないその言葉は、
ショボンが言うと、よくわかりもしないのに、だけどドクオにいいことがあって嬉しい
そんな感情がもろに伝わってくる
('A`) 「おお、かまわんかまわん。好きに見ればいいw」
そのことが、たまらなくうれしくて、ドクオはこう付け加えていた
('A`) 「よし、お前のおかげで完成したんだしな、出来たらお前にやるよ」
(´・ω・`) 「本当に!? いいの? うっわぁ高そうだけど、本当にいいのかなぁ」
確か材料費だけで2千円ぐらいはした気がするが……
まあ、そのぐらいは気前よく、くれてやろう、頷く
('A`) 「OK、お前用に、ちょっとカスタムすっから、首んとこつけてみ?」
(´・ω・`) 「こうかな?」
シャツをはだけ、押し当てるように龍の首飾りをショボンが身につける
が、どうにも角張った形が、ショボンのイメージに合わない
角を丸くして、少しやわらかい印象に仕上げたほうがいいかもしれない
('A`) 「ふむ……ちょっと手直しするから、待ってろよ?」
(´・ω・`) 「うん! あ、これ沈み彫りみたいだけど、龍の部分、黒くできないかな?」
('A`) 「おお、いぶし液で黒くすんのかw クールだな、やってみるか?」
(´・ω・`) 「やったー!!」
大げさに喜び、ぴょんぴょんと飛び跳ねるショボンは、馬鹿というか子供そのものだった
ここまで喜んでくれるなら、作り概があると言うものだ、ドクオはそう思い、微笑をするのだった
- 740 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 01:35:33.94 ID:obZIkUlq0
- と、ドクオがアクセを手にとり、修正作業を開始しようとした、その時
―――ガララッ
先生 「うーす、お前らー、そろそろ学校閉めるぞー……って、おい……」
('A`) 「うげ……」
(´・ω・`) 「あ、すみません、すぐ帰り……先生?」
なんの前触れもなく入ってきた担任は、どういうわけか、微妙な表情をしていた
言葉で表現するとなると、難しいのだが、あえて何かに例えるとするならば、
教室で抱き合っているクラスメイトを発見してしまった気まずさ……だろうか?
('A`)(´・ω・`) 「????」
なんでそんな顔をしているのか、いまいち理解できない
どういうことだろう、と、お互いの顔を見合わせて……気づいてしまった
ドクオ・ショボンの胸元に手をやり、アクセ回収中
ショボン・シャツを閉じようとしている最中
これは、見方を変えると、こうなるかもしれない
ドクオ・ショボンの胸を(以下省略)
ショボン・抵抗しようとするが、なぜか顔は笑顔
そして、極めつけは、担任が手に持っている文庫本
手で隠れて全部は見えないが、タイトル部分に「マリア様」の文字が……
('A`) 「ちょっとまてええええええええええええええええっっっ!!!!」
(´・ω・`) 「先生っ!! 激しい! 激しすぎる誤解ですっ! マンガ脳はほどほどにっ!!」
- 741 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 01:36:03.93 ID:obZIkUlq0
- 先生 「ん、その……あー、わかってる。先生は全部わかってるぞ?」
何一つわかっていない
特にそのにやけた眼が、何もわかっていない
('A`) 「あんた何にもわかっちゃいないっ! 汚れてる! これだから大人はいやなんだっ!!」
(´・ω・`) 「ていうか、あんた仕事中に何読んでるんですかっ!?」
先生 「いや、同姓じゃロマンスがない、って言ったがな……こういうのもありかな、と」
('A`)(´・ω・`) 「と、じゃなあああああああああああああああああいぃぃぃっっ!!」
だめだ。何がだめってこの教師の倫理観が一番だめだが、そいつに見られたのがいけない
よりによって、よりすぐりの人材がここに誕生してしまった
(´・ω・`) 「やっぱり成績無視して、馬鹿って呼んでいいですかっ!?」
('A`)・先生 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「どっ、ドクオっ!?」
('A`) 「い、いや、間違えた! 黙るな! もっとだ、もっと言え!!」
ドクオあたりは、この辺で気づくべきだったのかもしれない
先生 「……ええとだな、保健室の先生は、そういう悩みも受け付けてるらしいぞ?」
この教師に、スィッチの入った馬鹿に、何を言っても無駄だと言うことに……
('A`) 「話をきけえええええええええええええええええっっっ!!」
(´・ω・`) 「ぼくはそんなキャラじゃなああああああああああいっっっっ!!!」
……結局、口先だけではあるが、担任の理解を得るのに、三時間をようした
しかし、なぜか翌日、男性教諭陣の二人を見る目は……生温かった
- 764 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 03:05:32.83 ID:obZIkUlq0
- 翌日。いつものメンツが集まったとき、なぜかドクオはその場にいなかった
誰に言うでもなく、ブーンがそのことをぽつりと呟くと、
( ^ω^) 「あれ? ドクオは?」
(´・ω・`) 「! た、多分、寝坊じゃないかな?」
川゚-゚) 「ああ、昨日は徹夜続きだったみたいだしな。無理もない」
うんうんと頷くクーの反応はいいとして、何故かショボンは挙動不審だった
何かあったのかもしれないが……ショボンとドクオのことだ
何があっても不思議はない。とりあえず触れないでおこう
三人での登校中、二人は話題に困っていた
ブーンは昨日、話せることは全部話してしまっていたし、
ショボンはツンの話をすれば、ぼろが出そうな気がする
ほかの話題も違った意味でぼろが出そうで、口を開きにくい
が、クーはそうではなかった
川゚-゚) 「何かそっちのクラスは、楽しそうだな?」
(;^ω^) 「楽しいというか……わりととんでもないお」
川゚-゚) 「ふむ。それは贅沢な悩みだ」
ぴしゃりとブーンの悩みを一刀両断にしたかと思うと、堰を切ったかのようにしゃべり始めた
- 768 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 03:18:51.23 ID:obZIkUlq0
- 川゚-゚) 「うちのクラスには、当然だが転入生というものがいない。これはつまらない」
そう言って、指をひとつ折る
川゚-゚) 「担任の教師が新任で、あまりクラスをまとめる力がない。これはつまらない」
またひとつ折る
川゚-゚) 「これが一番重要だが、お前たちがいない。これはひどくつまらない」
また指を折る
クーは真剣な顔で、いかに自分のクラスがつまらないか、面白みに欠けるかを列挙していく
時折、ブーンやショボンが反論をすると、
(;^ω^) 「でも、クラスの男子は、みんな異様にテンションが高いお?」
川゚-゚) 「いいことだ。ベクトルがどうあれ、活気があるのは楽しいと思わないか?」
(´・ω・`) 「でも、うちの担任は……すっごい偏ってて、苦労してるよ?」
川゚-゚) 「何をしていいかわからず、おろおろする新任教師よりはましだと思う」
いちいち頷きながら、ばったばったと一刀両断に否定していくのだった
かと言って、自分のクラスが嫌いなのか、と問えば、
川゚-゚) 「いや、皆、平凡ではあるが、それなりにいいやつばかりだ。教師もこれからだな」
とのこと
無表情につらつらとクラスのつまらない点をあげる割に、不満はないらしい
本人にとっては、ただ事実を言っているだけのつもりなのだろうが、
聞いてる二人は、結局クーが何を言いたいのか図れず、困惑するしかなかった
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