( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ

774 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 03:37:30.59 ID:obZIkUlq0
普段、物静かに無表情を貫いているので、無口と誤解されがちだが、クーはしゃべるのが好きな方なのだ
より正確にいえば、ブーンに何かを伝えるのが、と言った方がいいのかもしれない
なので、ブーンが聞き手に回っている間は、クーが自主的に黙るということ皆無なわけで……
結局、クーの愚痴なのか現状報告なのか、よくわからないしゃべりは、学校につくまで続いた

川゚-゚) 「ん? もう着いたのか」
(;^ω^) 「まあ、結構しゃべってたから、ついて当然だお」
川゚-゚) 「楽しい時間は早くすぎるものだな」
(´・ω・`) 「う、うん、そうだね……」

一人溜め込んだものを出し切ったかのように、しゃきっとしているクーに反比例して、
それを聞かされ続けた二人は、朝からつかれきったように背中を丸めていた
まあ、学校に着くまで、30分弱はあるはずなのだが、
そのほとんどの間、話を聞かされれば、疲れて当然とも言えるのだが

川゚-゚) 「どうした? 寝不足か? 教室は四階だぞ、朝ぐらいは元気を出せ」

スタスタと歩くクーに遅れながら、二人は後をついて行く
普段以上に口数の多い、というか、多すぎるクーに、
ショボンはブーンが何かしたのか、と思い、聞いてみた

(´・ω・`) 「なんか……昨日あったの?」
(;^ω^) 「普通に話ししながら帰っただけだお……?」

七不思議を案内する約束をしたぐらいなのだが、これは関係ない、と思う
今日のクーはどこかいつもと違う
そんなことを考えながら、ブーンは首を傾げるのだった



845 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 14:01:41.57 ID:obZIkUlq0
教室の手前、クーと別れる前に、ブーンは何気なく聞いてみた

( ^ω^) 「今日はクー、いっぱい喋ってたお?」
川゚-゚) 「…………」

本当に、何の気なしに、特に意味もなく、ブーンはそう言った
だが、クーはその言葉を聞くと、ビクッ、と身体を揺らしたかと思うと……斜めに傾いた

( ;゚ω゚) 「ふぉっ!? く、クー」

ぶっちゃけると、直立の姿勢のまま、倒れそうになった
慌ててブーンが、がしっ、とその身体を支えるが、クーは力が入らないのか、全体重をブーンに預け、

川 - ) 「すまない……退屈、だったか……」

クーが言っているのは、今朝の話のことだろう。だが、それが今の状態とつながらず、困惑する
ブーンがそのまま黙っていると、クーはぽつぽつと口を開いた

川 - ) 「昨日……いろいろな話を聞かせてもらっただろう?
     私は、それがとても楽しくて、それで、自分も同じことをしたら楽しんでくれるかな、
     そう思って、できる限り、昨日のことを話してみたんだが……すまない、つまらない話をした」
( ^ω^) 「クー……」
川 - ) 「すまない……私は、お前と違って、話をするのが、下手、みたいだ……」

たったそれだけのことで、と、ブーンは思わなかった
クーが感じているショックは、いつも自分が不安に思うことと、まさに一緒で
自分とクーが違ったのは、それを実際に言うか言わないか、そんなところだけで、
根っこの部分では、同じことを考えている、そのことを理解した



853 : ちょい修正 ◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 14:27:55.23 ID:obZIkUlq0
クーが、どんな気持ちで、今朝の愚痴だかなんだか、よくわからないことをしゃべっていたのか
それが実は、こんな不器用な方法で、自分を楽しませようとしてくれていたのだと思うと……

( ^ω^) 「そんなことないお?」
川゚-゚) 「……ブーン?」

昨日と同じセリフを、昨日とは違い、どこも作らずに、ブーンは微笑んだ

( ^ω^) 「クーが、自分のクラスで、案外平気そうだってわかって、うれしかったおw
      こっちのクラスは、変な人ばかりだから、余計に安心できたおw」

正直な感想だった。
つまらない点ばかりをあげていたから、もしかするとクーは、自分のクラスが嫌いなのかと思ったが、
そうではなく、ただ単にこっちのクラスが羨ましい、と聞いたとき、自分は、確かに安心した

川゚-゚) 「……ふむ、安心、か。それでは意味がない。楽しいと言わせない限り、私は納得できないぞ」

わざとらしいぐらい、平坦な口調で言うクーは、
しかし、さっきまでの不安を顔に出すことはなかった

( ^ω^) 「じゃあ、今日の放課後の話、楽しみにしてるお」
川゚-゚) 「ああ、私もおかしなことが起きるよう、努力する」
(;^ω^) 「ちょwwwwww」

クーが小さくガッツポーズをして、決意表明をしてくれることを、うれしく思いながら、
だが、ブーンは心の片隅で、自己嫌悪した

クーは、こうやって前に進みだそうとしてくれているのに、自分は……
いいや、自分もこうして、クーと一緒に話せるようになったではないか、
そう自己弁護する自分ですら、ブーンは嫌いになっていく気がした



919 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 23:00:48.66 ID:obZIkUlq0
川゚-゚) 「うむ、もう大丈夫だ、心配をかけたな」

さっきまでの憔悴ぶりもどこへやら、しゃきっと立ち上がると、
クーはきびきびした動作で、教室へ入り、こちらを振り返ることなく、

川゚-゚) 「それじゃあ、また放課後」
( ^ω^) 「うん……また、だお」

ブーンはその背中に、声色だけでも平静を保とうとしながら、手を振った
軽い音を立て、二組の戸が閉じるのを待ってから、ため息をつく
自己嫌悪なんて、いまさらなのだが、このところ特にそれを感じることが多い

( ^ω^) 「僕は……どう、したいんだお……」

クラスが違ってから、クーは積極的に自分と楽しい時間を過ごそうと、腐心してくれている
だというのに、自分はそんなクーとは対照的に、
何を望んでいるのか、クーとどうありたいのか、自分のことなのに、わからないでいる

( ^ω^) 「ドクオが怒るのも、無理ないお……」

ドクオがもどかしく感じるのも、わからないではない
しかし、発破をかけられたところで、目指す先が見えない自分は、
前に進むことも、できないでいるのだ



5 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 23:38:47.26 ID:obZIkUlq0
昨日は本当に疲れた
教室のいすに座ると、ショボンはかばんを枕にして机に突っ伏した

(´・ω・`) 「なんであの人は教師になれたんだろう……」

教員採用試験だかなんだかは、そんなに基準が甘いのだろうか
どちらかと言うと、どうして今も教師でいられるのか、という事が疑問ではあるが

しょっちゅう男子生徒に暴力沙汰を起こしているはずなのに、
体罰が問題となっているこのご時世に、教育委員会に訴えるものは一人もいない
ベートーベン云々よりも、よほどこっちの方が七不思議だ

(´・ω・`) 「あ、いたた……」

暴力沙汰で思い出したが、今日は体中が痛い
ベートーベン式侵入者撃退光線銃(ただの電気銃・スタンガン)を食らっただけなのに、
全身に打ち身があるのはどういうことだろう

(´・ω・`) 「……またクーさんあたりに吊るされたのかな?」

この前ネックハンギングツリーを食らった時も、こんな風に記憶が混乱していた気がする
だとしたら、今回は吊るされて、気絶したあとに何かあったのかもしれない

(´・ω・`) 「あれ? 昨日はクーさんに吊るされるようなことしたっけ?」

思い返してみるが、心当たりはない
というか、いつだって心当たりもないのに、自分は三途の川を見ている気がする
前に進むことも、できないでいるのだ



20 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/16(日) 23:59:01.32 ID:obZIkUlq0
(´・ω・`) 「? あれー? なんでだろう?」

机で寝ている姿勢のまま、器用に首を傾げる
考えても考えても、理由は見つからないのだが、と、煮詰まり始めていると、
教室の戸が開く音がした

これまた首だけを動かして、音がした方向を見ると、入ってきたのはブーンだった
今朝も昨日のようにクーと話していたのだろう。と、そこで思いつく

(´・ω・`) 「本人に聞いてみれば早いよね」

被害者の自分が加害者に、それを直で聞くというのは気が引けるが、
間にブーンがいれば問題ない、遠慮なく聞ける
身体が痛いので、寝たまま失礼、と心の中で謝りつつ、

(´・ω・`) 「ねー、ブーン、ちょっと聞きたいんだけど……」

口を開いたとき、今度は背後の扉が開く音がした
どう考えても、そっちをそのまま見るのは無理なのだが、
それでもショボンが身体をよじろうとする
だが、骨か筋がいかれる前に、入ってきた人間を知ることはできた

屍リーダー 「!! (小声で)諸君、第一次戦闘配備! 装備を整えよ!」
屍達 「(小声で)サー・イェッサー!」
女子 「ツンさん、おはよー」
ξ゚-゚)ξ 「おはようw」

後方で繰り広げられる、微妙なやりとりを聞きながら、ショボンは思った
そういえば、昨日はあれからどうなったんだろう……
あまりいい結果は想像できないが、自業自得か、とため息をつく



54 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 00:36:00.80 ID:J+YdGjn30
当然だが、ツンの顔は昨日見せていた地の顔などではなく、教室の時と同じ、
よそ行き用と言った感じのすました笑顔を浮かべていた

屍達 「いやぁツンさん! 今日もいい朝ですねっ!」

その笑顔にひきつけられる蛾のごとく、屍達はツンに群がり、
多分、本人達は一番イカスと思っているであろう表情で、さわやかに挨拶。しかも一斉に
自分では気がついていないだろうが、その、なんというか、
複数の男性が、揃いも揃って似たような顔をしているのは、ぶっちゃけキモかった

ξ゚-゚)ξ 「えっと、その、席にかばんを置きたいんですけど……w」

―――ズザザッ!!

遠慮がちにつぶやかれた言葉に、群がっていた屍達はモーゼの十戒のごとく、真っ二つに割れた
全員が全員、腰を九十度に曲げ、片手を胸の前に置くという、ホストのようなポーズで、だ
制服が黒の学ランというのも、ホストっぽさを際立たせ、一瞬、ここはホストクラブか、と見まがうほどだ

ξ゚-゚)ξ 「ふふwありがとう」
屍達 「いえ、男として当然です!」

事前に打ち合わせをしていたのか、10名を超える男どもは、声を揃えた
気持ちが悪いぐらい統制のとれた動きに、つい漏らしてしまう

(´・ω・`) 「……なにこの団結力?」
ξ゚-゚)ξ 「……」

と、その呟きが聞こえたのか、ツンはこちらを一瞬だけ見ると、
ひどく冷めた顔をして、つい、と、そっぽを向いてしまった



59 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 00:55:11.34 ID:J+YdGjn30
顔の区別もつかないぐらい、同じように見える屍たちの中から、一人が前に出た
さっき号令をかけていたのも、多分この男だろう、仮に屍リーダーと命名してみる

屍リーダー 「いや、そう言えばツンさん、昨日の学校案内はどうでした?」

胡散臭いぐらいに白い歯を輝かせた笑みに、ツンは少し怯んだかのように見えたが、
すぐに持ち直し、ええ、と、表情を曇らせた

ξ゚-゚)ξ 「あそこの二人と……ドクオくん? に、案内してもらったんですけど……」
屍リーダー 「ああ、あのあほ三人組」

お前らに言われたくはない

ξ゚-゚)ξ 「……いきなり、七不思議とか言うものを見せられて……その、あたし……」
屍達 「…………!」

そこで言葉を区切り、何も言わずにうつむくツンに、屍達が一気に騒然とした

屍A 「おい、お前ら、つり橋効果って……知ってるか?」
屍B 「あの、極度のストレス状態における心身の高揚を、恋愛感情と混同する、あれか?」
屍A 「そうだ……つまり、やつらはそれを狙っていたんだよっ!!」
屍達 「な、何だってー!?」

昔の漫画のようなリアクションを決め、これも統制のとれた動きで驚く屍達
満足するまでそのポーズで固まっていると、やり遂げたような笑顔を浮かべ……
ブーンとショボンの周りに集結し、厳かに告げた

屍リーダー 「……ただいまより、軍事裁判を開廷する。被告人をここに」
屍達 「サー・イェッサー!」
( ^ω^)(´・ω・`) 「えええええええええええええええ!!!!」



66 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 01:16:50.35 ID:J+YdGjn30
多勢に無勢という言葉がある
どれだけ強い人間がいたところで、十倍二十倍の人数に囲まれては、勝ち目はない
加えて、囲まれた人間が、運動部でもなんでもない帰宅部となれば、結果は言うまでもなく、
二人は速攻で縄跳び(高校なのになぜか常備されている)で、縛られ、教室の片隅に転がされた

(;^ω^) 「……何この急展開?」
(´・ω・`) 「べ、弁護士をよべー……い、いや、なんでもないです……」
屍リーダー 「軍事裁判にそんなものが存在するとでも? ……て、痛っ!!」

ピシィ、と教鞭(多分、数学教師のやつ)で自分の手を叩き、大げさに痛がる屍リーダー
自分たちは、こんな頭が弱いやつらに、拘束されたかと思うと、情けなくなってくる

屍リーダー 「くくく……ドクオが来るまで、そこで首を洗っているんだなぁ……くくく」
(´・ω・`) 「両腕縛られて、どうやって洗えと?」
(;^ω^) 「い、いや、ショボン。それより、どうにかしないとやばいお……」

確かに、おつむがいい感じに茹だった人間に突っ込んでいる暇はない
だが、現状やれることは、そのぐらいだというのも、事実だ
女子は男子の奇行には慣れきっているのか、遠巻きに見ているだけだし、
唯一、こいつらの暴走を止められるツンも、あさっての方向を向いてハミングしている始末

ξ゚-゚)ξ 「あ、ウグイス。もう春なのねぇ……」
(´・ω・`) 「いや、それメジロ……」
ξ#゚听)ξ 「むっ?」
(´・ω・`) 「なんでもないです……」

やばい。ここでツンの機嫌を損ねると、本格的に命がない。下手な突っ込みは命取りだ
自分は三途の川ぐらいなら、日帰りで何度も行っているが、ブーンは危ないかもしれない
どうにかして、この場を潜り抜けないと……



73 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 01:38:26.73 ID:J+YdGjn30
屍リーダー 「……くそ、ドクオはまだなのか?」

そう言って、苛立たしげに、教鞭で壁(手を叩くと痛いと学習した)を叩く
ドクオがいつ来るのか、それはこの場では誰にもわからないことだった
ブーンやショボンも、特に連絡は受けていないし、ドクオは何せ不規則な生活をしている
一時間目を余裕で過ぎた辺りや、昼休みに学校に来ることもあるぐらいなのだ
そのことに、屍リーダーは、密かに焦っていた

屍リーダー 「くっ……もうすぐやつが来てしまう……!」

やつ。それは言うまでもない、このクラスの担任だ
昨日、すでにぼこぼこにのされた経験をもつ、屍達とって、天敵ともいうべき、強敵
あれで一応は、まがりなりにも、形の上では教師なのだ
この惨状を見られたとき、自分たちを待っている運命は……死だ

だが、いくら焦ったところで、ドクオは来ないし、時間も過ぎてゆく
そうこうする内に、本格的にやつを警戒しないとまずい時刻になってしまった
くっ、と悔しげに息を漏らすと、屍リーダーは、危険とも言える策に出ることにした

屍リーダー 「仕方ない。被告人を、独房までお連れしろ!」
屍A 「はっ! 独房といいますと?」
屍リーダー 「……掃除ロッカーと言えば、わかるな? 丁重に痛めつけた上で、監禁しろっ!」

暴れられれば、一気に自分たちの行いがばれる心配がある、危険な隠し場所
しかし、だったら暴れられないよう、体力を奪ってしまえばいい、それだけのことだ
自分で考えておきながら、なんと悪魔のような策なのだろう、と身震いする、屍リーダーであった



79 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 02:21:57.87 ID:J+YdGjn30
しかし、屍リーダーは気づいていなかった
ショボンはずっと、この時を待っていたということに……

(´・ω・`) 「う、うわあああああああやめてやめてやめてやめてええええええ!!」
屍A 「く、声がもれたら面倒だ! 黙らせろ! 何人かこっちを手伝え!」
屍B 「こ、こら、暴れるなっ! もう何人かこっちに来てくれ! ガムテガムテ!」

この段になるまで無抵抗を貫いていたショボンの、思わぬ反抗に、屍たちは焦った
実際問題、彼らは学生であり、軍人ではない。当たり前だが
どちらかと言えば、リーダーに抜擢された、アレの趣味に付き合うような形でこんなことをしているが、
できる事なら警察沙汰は避けたいところなのだ

当然、本気で気絶させようなんてことは、欠片も思っていない
適当にガムテでしばればいい、そのぐらいで済ませようとしているのに、
その心遣いがわかっていないのか、ショボンは大きく暴れているのだ
結果、傷つけないよう、動きを抑えるのに、リーダー以外の人材は、すべて投入することになる

ξ゚-゚)ξ (ちょっとこれは予想外って言うか……)

ツンは、まさかここまでの事態に発展するとは思ってもいなかった
この学校で異常なのは、ベートーベンぐらいだ、と高をくくっていたのだが、
何というか、教師が教師なら生徒も生徒というか、この熱気までは想定できていなかった

せいぜいが、このクラスの男子の何割かから、白い目で見られ、
居たたまれないようなきまずさを味あわせるだけ、のつもりが、下手をすれば警察沙汰だ

ξ゚-゚)ξ (ちょっと、やりすぎちゃったかな……?)

まあ、やりすぎなのは屍リーダーだけなのだが



80 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 02:22:29.26 ID:J+YdGjn30
ξ゚-゚)ξ (う、ううん。あいつらが悪いんだから!)

一瞬、屍達の凶行を止めようか、と思ったが、それを打ち消すように頭を振る

ξ゚-゚)ξ (あたしが、どれだけ怖い目にあったか……)

昨日の音楽室や理科室での出来事を思い出す
場所さえ教えてくれればそれでいいのに、珍妙極まりない七不思議を体験させられ、
そこで、ついうっかり出してしまった、自分の地の顔
この学校では、絶対に出さないよう、一生懸命抑えてきた、自分の素顔を暴かれたのだ
それが、調子に乗ってうっかり、と言うならまだ許せる
だが、あのブーンとか言うへちゃむくれは、それをわざとやった、と、のたまったのだ

ξ゚-゚)ξ (そうよ……絶対に、許さないんだから……!!)

少し行き過ぎとも言える決心を新たに、拳を握り締める。が

ξ゚-゚)ξ (あの、ショボンとかいう子には……悪いことしちゃったかな)

思い返してみれば、彼はドクオとか言う、あの不良を止めようとさえしてくれていた
それどころか、自分の身代わりになるように、ベートーベンの攻撃をその身に受けている
最終的には階段から転げ落ち、気絶までしているのだ、もうこれ以上は必要ない気もする

そう思うと、決心が一気に揺らぎそうになるのが、自分でもわかる
と、そのツンの前に、ここまで指揮をする以外、何もしていない男がやって来た



81 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/17(月) 02:23:42.69 ID:J+YdGjn30
ここまでの軍隊調に統制のとれた動きで、忘れられているかもしれないが、
屍達の目的はひとつ、ツンに気に入られることなのだ
当然、隙あれば、ツンに取り入ろうと動くのは、ある意味わかりきったことだ

屍リーダー 「ツンさん、昨日は本当にごめん」
ξ゚-゚)ξ 「え、えと、その……何がです?」

何の前ふりもなく、芝居がかった仕草でそう言われても、反応のしようがない
だが、屍リーダーはそんなツンの戸惑いを無視するように、笑顔を浮かべ、

屍リーダー 「もし、よろしければ、今日にでも僕がまた、改めて校内案内を……」

と、ツンの肩に手をおこうとした、まさにその時

(;^ω^) 「あれっ!? リーダーがツンを口説いてるおっ!!」
屍達 「なにぃっ!?」

それまでショボンにかかりっきりだった屍達は、ブーンの叫び声に反応し、ゾンビのごとく振り向く
視界に入っているのは、ツンと異様なまでに接近したリーダー……いや、ライバルの姿があった
ショボンのことなど、もはやどうでもいい。屍は一瞬でリーダーを囲むと、機械のように告げた

屍A 「規則の第一条を読み上げろ」
屍B 「『抜け駆けは、邪魔者を排除するまで一切禁止とする』!!」
屍A 「『違反したものは……即刻、敵とみなす』!!」
屍リーダー 「まて……お前たち、落ち着け? 俺は、お前らの仲間……!!」

この期に及んで、誰も彼のことを仲間だと、ましてやリーダーなどとは思っていなかった

屍達 「チッキショォォォォォォォォオオオッッッ!!! ふっざけんなあああああああ!!」



178 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 00:16:54.07 ID:bqw/8BHT0
屍A 「くっそ、てめ……はっ!? 待てよ、もしかしたら……!」
屍B 「どうした!? 何か思うところでもあるのか!?」
屍A 「こいつは、ツンさんに接近した……もしかしたら、まだ残り香があるかもしれん……」
屍達 「な、なんだってー!?」

ふんふんふんふんふんふんふん!!(リーダーの匂いを嗅いでいる)

屍元リーダー 「あ、あ、あ、ああああ……や、やめ……僕、ぼくぅぅっぅぅぅぅぅっっっ!!」

屍B 「……くそ、だめだ! こいつ何かすっぱい匂いしかしやがらねぇっ!! ゲロ以下だ!」
屍A 「ふっ……甘いな? 俺は既に脳内補完でこれをツンさんの匂いに変換したっ!
    もうこれだけでご飯三杯は軽いねっ! ふんふんふんっ! ツンさんの匂いがするー!!」

…………………(屍達が沈黙している)

屍C 「お、お前……踏み込んじゃいけない領域を、ついに……!!」
屍A 「嫌なら、お前はそこにいろ。俺は、お前らのたどり着けない所へ……行く!」
屍達 「ま、負けてたまるかァァァァァァァァァアアアアア!!」

ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん!!(すごい勢いで嗅いでいる)

屍元リーダー 「あ………ああ……!! な、なんか、目覚めそう……!!」
屍達 「……なんか俺ら間違ってんじゃね?」

(´・ω・`) 「………………………あ」

すいません、あまりにショッキングすぎる光景に、地の文入れることができませんでした
もうね、予想外とかそういう話じゃないんです
とうの本人であるツンさんの前で何やってんだこいつら
あほ三人組をどうこうする前に、彼らがこれから先、ツンの目に止まることはないだろう。合掌



207 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 00:42:17.20 ID:bqw/8BHT0
だいぶおかしくなってしまったクラスメイトを尻目に、
二人は這いずりながら教室の外へエスケープする
奴らは言うまでもないが、ツンでさえもぽかんとしているので、誰に止められることなく退出できた

(´・ω・`) 「ふう……危なかったね?」
(;^ω^) 「ショボンのアイデアのおかげで助かったお」

二人でほっと胸をなでおろし、汗をぬぐった
ブーンはともかく、ショボンは自分たちが無事でいられるだろうと、どこかで解っていた
異常なぐらい盛り上がっているとはいえ、彼らのことはこの一年でよく知っている
その場のノリで、羽目をはずし過ぎるのは確かだが、それで犯罪に走るような連中ではない
だったら、いつも自分が被っているあれやこれの被害に比べて、そんなに危険なはずはないのだ

屍B 「お、おお……ツンさんって、意外にワイルドな体臭してるなあ、あはははははwww」
屍元リーダー 「だ、だめぇ……そんなとこ嗅いじゃだめー………ああ……!!」
(´・ω・`) 「…………」

いや、なんだか予想外の方向で犯罪者になりつつはあるが
むしろ病院に行ったほうがいいかもしれない

(´・ω・`) 「まあ、これからも気をつけたほうがいいかもね……」

昨日、自分たちはツンに、決定的なぐらい、嫌われてしまっている
今のツンになら、あの屍達を操ることぐらい、わけがないだろう
と、ショボンがこれからのことを思い、肩を落としていると、

( ^ω^) 「でも、ツンさんも大変だお。屍達に囲まれてたら、ずっとあの顔しなきゃいけないお?」
(´・ω・`) 「ブーン……あははwそうだねw」

こんな状況だというのに首謀者の心配をするブーンに、思わず笑みがこぼれてしまった



213 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 01:07:01.04 ID:bqw/8BHT0
先生 「えー、先生は、不純異性交遊も不純同性交友も止めませんが、少し落ち着け」

屍達を軽くしばきたおした担任は、そう言ってショボンの方を見た。なぜだろう
ショボンはショボンで、ぱたっ、と机に倒れてしまうし、意味がわからない
それは置いといて、その日の授業は、奇妙な構図が続いた

例えば一時間目―数学

数学教師 「はい、この問題わかる人ー」
屍B 「はい、俺、行きます!」
屍A 「いや、むしろ俺が行きます!」
屍C 「逆に俺が行きますよ!?」
数学教師 「よーし、それじゃ、全員前に出ろ」
屍A・B・C 「……………わかりません」
数学教師 「お前ら授業なめてんだろ? ショボン、お前やれ」

カリカリカリ

(´・ω・`) 「できました」
数学教師 「よし、正解。お前らーショボンを少しは見習えよ? 顔以外は」
(´・ω・`) 「何かうらみでもあるんですか?」

一時間目だけ、具体的に書いたが、それ以降の時間も全部似たりよったりだった
屍達が、ツンにいいところを見せようと、無駄な努力で前に出るものの、
頭の弱い彼らだ、問題を解けるはずもなく、時間短縮のために指名されたショボンがそれを解く

屍達から見れば、自分たちが失点を重ねる中、ショボンがそれを拾い、点数を稼ぐ
ショボン自身は気づいていないが、クラスの男子は、ショボンに激しく嫉妬していたのだった



219 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 01:26:42.91 ID:bqw/8BHT0
その間、屍達なんぞは当然見ちゃいないツンは、窓の外を眺めながら、考えていた

ξ゚-゚)ξ (やっぱり、ショボンくんには、悪いことしちゃったかなー)

今朝も思ったことだが、授業を見ていて、より強くそう思う
昨日のことは許せそうもないのだが、あれの首謀者は、ブーンかドクオのどちらかだ
ショボンは授業中もまじめだし、頭もいい
とてもではないが、あんな馬鹿げたことを企画するほど、非常識には見えない

ξ゚-゚)ξ (何より、すっごい気が小さそうだしね……)

黒板の前に立ったショボンを見ていると、目があった
しかし、ショボンはすぐに視線をはずし、こっちと目が合わないよう、振り向きもしない
ツンを嫌っている、というよりは、怖がっているような感じだ

その様子を見て、はぁ、と、ツンはため息をつく

ξ゚-゚)ξ (昨日のことは言いそうにないけど……あれじゃ、いつばれるかわかったもんじゃないわ)

自分は今、清楚で可憐な美少女なのだ。自分で言うのはどうかと思うが、さほど間違いではない
そんな自分を見て、いちいちショボンが怯える、というのは、おかしい
小さな違和感しか周りに与えないだろうが、どんな小さな芽でも、積んでおくに越したことはない

ξ゚-゚)ξ (よし、昼休みにでも、彼にだけは謝って、印象を良くしとかないとね)

理屈を捏ねながら、ツンは昼休みを待った



230 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 02:07:30.28 ID:bqw/8BHT0
( ^ω^) 「ショボン、学食行かないかお?」
(´・ω・`) 「そうだね、僕はお弁当だけど、付き合うよw」

昼休み、いつもならドクオが言うセリフをブーンが言う
結局、ドクオは昼休みになっても登校していなかった
珍しい事ではないが、今日はサボるつもりなのかもしれない

( ^ω^) 「うん、早く行くお! 僕、もうはらぺこだお!」
(´・ω・`) 「そうだね、下手すると売切れちゃうかもしれないし……」
ξ゚-゚)ξ 「あ、ちょっといい?」

教室を出ようとしたところで、遠慮がちな声が、二人にかけられた
その瞬間、気のせいではなく、ピシ、と、確かに空気が割れるような音がした
しかし、ツンはそのことに気がついていないのか、はにかみながら続ける

ξ゚-゚)ξ 「学食に行くなら、ご一緒させてもらって……いいかな? お弁当忘れちゃってw」

―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!

不穏な効果音を背負い、幽鬼のごとく立ち上がる、無数の屍達
その瞳に宿す光は尋常のものでなく、白目どころか瞳孔までも怒りに赤く染め上げ、二人を見る
しかし、ツンはぶっちゃけ屍達などどうでもよく、さらにとどめの一言を吐いた

ξ゚-゚)ξ 「ちょっとショボンくんと、話したいこともあるし……」

それは決定打だった
屍達に、もはや人の心など期待できない
半開きになった口からは、黄色い呼気が漏れ、質量を伴うかのような気配は、
二人ではなく、ショボンただ一人へと向けられ……



237 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 02:31:22.59 ID:bqw/8BHT0
―――ババッ!!

屍B 「!!」

飛び掛ろうとした屍を、横に伸ばされた右腕が止めていた
その腕の主は……同じく、屍たる者であった

屍B 「貴様……どうして邪魔をする? 我等はいつかその日が来るまでは、友と誓ったであろう?」
屍A 「無論、裏切るつもりなど、毛頭もない」
屍B 「ならば……何故だ? 貴君は、彼奴が邪魔ではないのかっ!?」

声を荒げ、目の前の屍もろともショボンを打ち倒そうと息巻くBにAは、静かに言った

屍A 「よく考えろ……今、やつを武力で排除して、何が残る?」
屍C 「……どういうことだ?」
屍A 「ツン嬢の目の前で、お前は自分の荒々しい部分を曝け出していいのか、と聞いている」
屍達 「!!」

その言葉は、全員が予想もしていない一言だった

屍A 「諸君らは、今朝の一件をお忘れか? 怒りに身を任せたところで、何も得るものはない……」
屍C 「……むしろ、我等はツン嬢の信頼を失ったばかりだ」

沈痛な表情でうつむく伴に、Aは理解を示すように、頷いた

屍A 「我等の評価は、もはや地に落ちたと考えていい。さらに評価を落とす行動は、賛成できない」
屍B 「……なら、ならば、どうしろと言う!? ただ指をくわえて見ていろと言うのかっ!?」
屍A 「そうは言っていない。私は、ただ時を待て、と提案しているだけだ」

時? 屍達は揃って首を傾げた



238 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/18(火) 02:31:56.13 ID:bqw/8BHT0
屍A 「左様……」
屍B 「その時とは、一体何時のことだ? まさか貴様……怖気づいたか?」
屍A 「それ以上の罵言は……その首と交換になるぞ……?」
屍C 「もったいぶるのも、そのぐらいにしてくれ。その時とは、何時だ?」

二人の間に、不穏な空気が流れ始め、
その緊張に耐え切れなくなった三人目の言葉に、Aは鷹揚に頷くと、厳かに告げた

屍A 「ショボンが、ツン嬢と仲良くなる、その時だ」
屍達 「!! ち、血迷ったかっ!?」

屍達の間に、裏切り者を始末せねば、という意思が湧き出るのを感じ取り、Aは言葉を重ねた

屍A 「我等が単独で、ツン嬢と仲良くなるのは、もはや不可能。違うか?」
屍達 「…………」
屍A 「幸いな事に、あの朴訥なショボンだ。奴であれば、我等が出し抜くことも出来よう
    ならば掛け橋として利用できる、その時まで、泳がせておくのも、上策とは言えないか?」

聞かされれば、もっともなその意見。だが、半分近い屍達は、首を縦に振らなかった

屍B 「……お前の言うことも、理解は出来る。だがな……理屈ではないのだよ」

今日、授業中に受けた、数々の屈辱(自業自得とも言う)
その怒りが、彼の中では、収まっていなかったのだ

屍A 「どうしても、やるのか……私は、手助けしないぞ……?」
屍B 「ああ、お前は……俺の骨を、拾ってくれ。さらばだ、伴よ……!!」

そう笑って、半分になった屍達は、死地へと赴いて行った



戻る次のページ