( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ
- 524 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 18:46:43.27 ID:Gff7efKy0
- 午後の授業は、それなりに平穏だった
屍ーズはツンの一喝もあり、おとなしく、ショボン懐柔に専念していた
まあ、特筆すべき点があるとするなら、五時間目の音楽の時間、
音楽教師 「みんな、ちゃんと席についてるかな?」
ξ゚听)ξ 「!? べ、ベートーベン……?」
ベートーベン 「ん? 転入生なのに、よく、僕のあだ名知ってるね?」
まさか在任中だとは知らなかったツンが、一人仰天していたぐらいだ
そう言えば、昔いた、と過去形で説明がされていた気もするので、無理もない
追記すると、ベートーベンは普段は温厚な、いい先生です
ベートーベン 「はーい、二人一組になってー」
屍ーズ 「ぎゃああああああああああああああ!!!」
('A`) 「お前ら仲いいんじゃなかったのかよ」
まあ、そんなこんなは無視して、時刻は放課後に移る……
- 530 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 18:53:52.67 ID:Gff7efKy0
- ('A`) 「今日ちょっと工房に寄ってかね?」
ホームルームが終わり、担任の姿が消えるのを待ってから、ドクオがそう言った
( ^ω^) 「? なんでだお?」
('A`) 「昨日ドッグタグ作ってよ、うちで手直ししたから、工房で焼成しようと思ってな」
(´・ω・`) 「うわ、ホント? 見たい見たい!!」
今日ドクオが遅刻したのは、それが原因なのだろうか。だとすると、かなり力が入っている
ブーンは見ていないが、ショボンの反応から見ても、面白そうだ
むしろショボンそのものが面白いという説もある
( ^ω^) 「うん! 僕も見たいお……!?」
いそいそとドクオについていく準備をしようとするブーンだったが、
肩を不意に叩かれ、言葉と一緒に動作も止まった
何か、こう、肩に置かれた手が、何というか……力強く、むしろ痛い
川 - ) 「ブーン、今、帰りか……?」
(;^ω^) 「!! う、うん、そう、だお……?」
後ろを、振り向けないぐらい、強い気を感じる
だが、背後の不審人物は、ブーンの声を聞くと、ふっ、と力を緩めた
川゚-゚) 「なんだ、無事そうじゃないか……」
(;^ω^) 「うん無事だお……って、クーこそどうしたんだお?」
見ると、クーの制服はところどころ汚れたような跡があり、
加えてかばんの他に、なぜか山菜の入ったビニール袋を下げている
- 534 : ちょい修正 ◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 18:55:38.55 ID:Gff7efKy0
- 川゚-゚) 「いやな? 昼休みに、ブーンの姿が見えなかったのでな」
それと、山菜とクーの制服がぼろぼろな理由がつながらないのだが
クーはそれで全部説明した、というかんじで、自己完結したのか、息を吐いた
川゚-゚) 「それで、昼休みはどこに行っていたんだ? 校舎裏ではなかったみたいだが」
(;^ω^) 「なんで、校舎裏?」
川゚-゚) 「春だし、山菜があるだろう」
しまった、これ以上は何を聞いても会話が成立しない
手早く、聞かれたことに答えるのが吉と見た
( ^ω^) 「今日は、学食行ってたお?」
川゚-゚) 「学食? 行ったが、お前の姿は見なかったと思う……入れ違ったか?」
( ^ω^) 「ああ、今日は個室で食べてたんだお」
ショボンとドクオの方に視線をやり、同意を求める
ちなみに、ツンはもうすでに教室にいないので、同意の求めようがない
川゚-゚) 「なんだ、それなら私も誘ってくれればいいではないか」
( ^ω^) 「今日は、ツンが一緒に居たから……」
('A`) 「あ! ばか……」
と、ドクオが言うが、一度出た言葉は、引っ込まない
ブーンも、しまったと思ったが、もう遅かった
川゚-゚) 「ツンとは……あの、転入生か?」
(;^ω^) 「あうあう……」
どうしよう、これはネックハンギングツリーフラグかもしれない
- 541 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 19:01:45.20 ID:Gff7efKy0
- と、ブーンが軽くこの世にさよならをする決心をした時
川゚-゚) 「……なんだ、まだ校内案内は終わってなかったのか?」
(;^ω^) 「へ?」
一瞬、何かを考えるような間があってから、
拍子抜けするぐらい、あっさりとクーはそう納得した
川゚-゚) 「まあ七不思議まで案内していたら、学食までは回らないか」
(;^ω^) 「あ、あの……怒らないのかお?」
川゚-゚) 「? 怒られるようなことでもしたのか?」
キョトンとするクーに、ブーンもなんだか拍子抜けしてしまった
いや、拍子抜け、というよりも、どこか物足らないような……
川゚-゚) 「お前はマゾか?」
(;^ω^) 「ま、またかおっ!? エスパーっ!?」
川゚-゚) 「単にお前が顔に出しすぎるだけだ。まあ、それはいいが……」
と、クーは山菜をブーンに手渡し、
川゚-゚) 「これのおかげで、今日は昼食をとり損ねた」
意味がわかりません
川゚-゚) 「この埋め合わせは、来週の七不思議案内で返してもらうぞ?
今日は用事があるみたいだし、私は先に帰るとするよ」
(;^ω^) 「え? あ、ちょ、クー!?」
そう言って、クーはブーンを待つこともなく、先に帰ってしまった
- 560 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 20:33:00.14 ID:Gff7efKy0
- ( ^ω^) 「……」
去っていくクーの後ろ姿を見送りながら、ブーンは所在なげに手だけを伸ばす
伸ばしたところで、一歩も足が動いていないのだ、クーに届くはずもない
無駄なことはやめよう、と、手をひっこめ……ドゲシッ!!
( ;゚ω゚) 「ふぉもぅってゅっ!?」
('A`) 「なーにやってんだ、お前は?」
蹴られた。男の子の切ない部分を蹴られた。変な声が出てるし
うずくまるブーンに、ドクオはさらに蹴りをもう一発
( ;゚ω゚) 「あ、あきまへんお、ほんま、これはあきまへんお……!」
('A`) 「なんだそのインチキ関西弁は?」
ぷるぷると震え、声も出ない様子のブーンに、ドクオはかまわない
('A`) 「なんか、クーに言いたいんだろ? ここでうずくまってないで、追いかけろよ」
だれのせいでうずくまっていると思ってるのだろう
('A`) 「アクセの焼成なら、今度お前の分も作ってやるから、心配すんな?」
( ;゚ω゚) 「………(プルプルプルプル)」
('A`) 「ブーン?」
(´・ω・`) 「あ、あの、ドクオ……今は無理だと思うよ?」
ドクオにしては珍しく、本当にやさしげに言ってくれている所、すまないが、
ちょっと回復にはしばらくかかりそうだ
- 561 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 20:33:40.26 ID:Gff7efKy0
- 結論から言うと、ブーンが男の子として復帰するのに、10分を要した
(;^ω^) 「そ、それじゃあ、僕は先に帰るお!」
二人に手を振り、股間を抑えつつ、ブーンは走っていった
('A`) 「ったく、世話が焼けるやつらだ」
(´・ω・`) 「うん、でもドクオの蹴りが無ければ、もっと早かったよね」
('A`) 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「どっちかって言うと、今回はドクオの方が馬鹿じゃない?」
それもそうか、とドクオは返さず、教室を出る
ショボンと二人で工房に向かいながら、話す内容は、あの二人のことだ
(´・ω・`) 「珍しいよね、クーさんがブーンより先に帰ろうとするなんて……」
('A`) 「まぁな。だけど、まったく無いってもんでもねぇだろ?」
(´・ω・`) 「そうだけどさ、」
ショボンの言いたいことはわかる
クーがブーンより先に帰る時―大体、何か用事がある時なのだが、
そういう時、クーは必ずブーンに何かしら断りを入れるのが普通だった
('A`) 「今日は、本当に急な用事ができたんじゃねぇの?」
(´・ω・`) 「用事って、何さ?」
('A`) 「……例えば、ほら、あの山菜とかか?」
特に思いつかず、適当に言ってみたが、山菜はブーンに手渡していた気がする
そうなると、あれは理由にならないので、間違っているのは自分でもわかるのだが、
(´・ω・`) 「山菜で急用って……どんなことなんだろう?」
- 562 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 20:34:02.47 ID:Gff7efKy0
- ショボンは馬鹿なので、本気で山菜関連の用事を想像しているみたいだが、
ドクオは今、クーの用事の内容など、どうでもいいと思っていた
('A`) 「これがいい薬になると、いいんだけどな……」
(´・ω・`) 「え? 山菜が?」
それはもういい
('A`) 「そうじゃなくってよ、ブーンはクーといつも一緒にいただろ?」
(´・ω・`) 「そうだね、あれで付き合ってないんだから、不思議だよね」
('A`) 「きっと、一緒にいるのに、お互い慣れちまったんじゃねぇの?」
倦怠期、というわけではないが、それが当たり前にように感じ、
付き合い始めたころのありがたみがなくなっていく、というのは、ありふれた話だ
('A`) 「クーはどうか知らんが、ブーンにはこういう状況が、いい発破になるんじゃね?」
(´・ω・`) 「そうだと、いいね……でも、」
ドクオは、恋愛ってのはつくづく駆け引きなんだな、と考えていると、
ショボンは急に立ち止まり、不安げな表情で、ドクオの顔を盗み見るようにした
('A`) 「? なんだよ?」
(´・ω・`) 「ドクオは、それでいいの?」
ぽつ、と遠慮がちに言われた言葉に、ドクオも立ち止まった
('A`) 「何がだよ? 俺は、あいつらが早めにくっつくといい、って思ってるぜ?」
(´・ω・`) 「そう……なら、いいよ。僕も同じ意見だしね」
そう言うショボンは、どこか釈然としない雰囲気を、遠慮なく匂わしていた
- 563 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/19(水) 20:34:52.23 ID:Gff7efKy0
- そんな話をしている内に、二人は工房に着いていた
本来、職員室になければならないはずのカギを、ドクオがポケットから取り出す
美術教師に許可をもらい、合鍵を作らせてもらっているのだ
('A`) 「んー、いつ来てもいい匂いだなぁ」
(´・ω・`) 「この匂いがいいって……歯が溶けちゃうよ?」
こういう突っ込みはもっともだろう
何せ、美術準備室であるここ、工房は油彩用のシンナーの匂いがするのだ
正直、あまり気持ちがいい匂いではない
('A`) 「とりあえず、窓開けろ。ラリるぞ?」
(´・ω・`) 「言われなくても開けるよ。あ、ドア閉めないで、風が通らないから」
ショボンの指示に従い、ドアをあけっぱのまま、ドクオは棚をごそごそと探す
今日探すのは、リューターではなく、これも自費で購入した電子炉だ
自宅にはガスコンロがあるので、普段は使わないが、
ここにコンロを持ち込むわけにもいかないので、わざわざ買った品だ
('A`) 「よっしゃ、んじゃはじめっかな?」
(´・ω・`) 「わーぱちぱちぱちぃ!」
こういう事を素でやるあたり、ショボンは侮れない
かばんから白いドッグタグを取り出し、電子炉のコンセントをさし、準備完了
- 606 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/20(木) 01:36:59.76 ID:PJHOhapP0
- さて、焼成をはじめるか、とドクオが腰を下ろした時
ξ゚听)ξ('A`) 「あ」
突然、美術室の方から入ってきたツンに驚き、まぬけな声が出た
それはツンも同じだったらしく、似たような声を漏らしている
ドクオの姿を認めると、ツンは呆けた顔を引き締め、苦々しく不機嫌な顔をする
ξ゚听)ξ 「……なんであんたたちがここにいるのよ? これも七不思議?」
ハン、と鼻を鳴らすあたり、よほどその事が気に食わないのだろう
確かに、美術準備室に、芸術とは無縁そうなこの二人がいるのはおかしいが、
それはツンの方も同じではないか
('A`) 「こっちのセリフだっつの。お前こそ何だってここにいる?」
聞くと、どうやらドクオとは本気で口を利きたくないのか、
黙ってツンは親指で自分の背後を指した
ここからではよく見えないので移動すると、そこにはキャンパスがあった
机の上に置かれたパレットを見る限り、
('A`) 「油彩、か?」
ξ゚听)ξ 「そ。あたしは、ちゃんと説明したわよ?」
なるほど、美術室にいた理由はそれで説明がつく
だが、逆に、それは美術室にいた理由にはならない
('A`) 「いや待て。この学校にゃ美術部はないぞ?」
- 607 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/20(木) 01:37:19.89 ID:PJHOhapP0
- ドクオの言うとおり、この学校に美術部はない
昔、というほどでもないが、それでもドクオたちが入学する前に、廃部になっている
廃部の理由は、部員数が足らなくなったから、と聞いた覚えがあった
ξ゚听)ξ 「そうなの? それは知らなかったわ」
致命的な矛盾を突いたつもりだったが、ツンは本当にそれを知らなかったようだ
ξ゚听)ξ 「でも、先生に絵が描きたいって言ったら、キャンパスの場所教えてくれたわよ?」
('A`) 「あー……あいつか」
ドクオに工房のカギをくれた教師の顔を思い出す
あれは、密かに美術部の復活を願っている節があり、
ドクオの工房使用を黙認したのも、そこから美術部が新たに発足するのを狙ったらしい
大方、ツンに美術部の有無を教えなかったのも、
絵が描きたいというツンが美術部を作るのでは、と考えたのかもしれない
まったく、大人は卑怯だ
ξ゚听)ξ 「それで? あんたはなんでここにいるのよ?」
('A`) 「どうでもいいだろ? 俺はここ借りて、アクセ作ってんだよ」
ほら、と、作りかけのドッグタグを見せてみる
ツンは、おもしろくもなさそうにそれを眺め、
う、と一瞬うめいたかと思うと、ドクオをにらみつけ、
ξ゚听)ξ 「似合わない趣味ね」
一刀両断に斬って捨てた
- 734 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/21(金) 00:19:24.21 ID:M1ef5+5A0
- もうドクオの作品など見ようともせず、ツンは馬鹿にするように鼻で笑う
そのあんまりな仕草に、顔をゆがめたのは、ドクオ……ではなく、ショボンだった
(´・ω・`) 「ちょ、ツンさん? いくらなんでも、そんな言い方はないよ」
ξ゚听)ξ 「え……? ショ、ショボン、くん……?」
今まで感じていた、ツンへの申し訳なさ、それを上回る勢いで、ショボンは静かに怒っていた
ドクオならともかく、小心者を絵に描いたようなショボン、その怒りに驚き、ツンはわずかに身を引く
が、一歩後ろに行くだけで留まり、やせ我慢するように、表情は変えなかった
(´・ω・`) 「ドクオが僕にって作ってくれたんだよ? なのに、そんな言い方……ひどいよ」
自分は、あれを貰えると聞いて、本当に嬉しかった。それを貶されるなんて……
怒っているはずのショボンの眼には、うっすらと涙がにじんでいた
そんなショボンの顔を、真正面から見てしまったツンは、うっ、とさっきのようにうめき、
ξ )ξ 「……う、うるさい!」
ξ#゚听)ξ 「あたしが、何をどう思おうと勝手じゃない!? そんなこと知らないわよっ!!」
癇癪を起こした子供のように、わめいた
あまりの剣幕に、一瞬ショボンもたじろいだが、すぐに持ち直すと、
(´・ω・`) 「だ、だからって、言って良い事と悪いことがあるよ!?」
ξ#゚听)ξ 「うっさい、うっさい! もともと、ドクオが先に吹っかけたんじゃないっ!?
ただあんた達がここにいるのが不思議だっただけなのに、どうでもいいだろって!」
(´・ω・`) 「う……でも! それとこのドッグタグとは関係ないことでしょ!?
どうしてこんなカッコいい物を、そんな風にけなすのさ? 絶対、おかしいもん!」
もう、これは子供の喧嘩だ
とてもじゃないが、十代の半ばを過ぎた高校生同士の口論とは、思えない
- 735 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/21(金) 00:20:03.96 ID:M1ef5+5A0
- その後は、双方ともに、同じようなことを繰り返すばかりだった
ξ#゚听)ξ 「だから、言ってるでしょっ!? あたしが何をどう思おうと関係ないって!」
(´・ω・`) 「だって、絶対これカッコいいもん! 僕、これ大好きだもん!!」
幼稚園児がオモチャのロボットを品評しているかのようなやりとりが続く中、
本来、その真っ只中にいなければならないはずの、ドクオは……
―――チュィィィィィィィィ………!!
('A`) 「あー、やっぱなぁ、ブーンのやつにアクセとか、あわねぇよなぁ……」
二人のやりとりなど、見えていないかのよう、我関せずを決め込み、
ごりごりと頭を掻きながら、ショボンのとは別の作品を制作中だった
と、独り言が聞こえたのか、二人はキッ! とドクオの方を向いた
(´・ω・`) 「ドクオも何か言ってやりなよ!? 自分のことじゃない!」
ξ#゚听)ξ 「ふん! 何言われたって、あたしは曲がんないからねっ!?」
睨み合い、むぐぐ、と唸りあう二人に、ドクオはどうしたもんか、と、曖昧な笑みを浮かべた
('A`) 「……とりあえず、お前ら落ち着け?」
(´・ω・`)ξ#゚听)ξ 「落ち着いてる!」
すごい嘘つきが誕生した。しかも複数で
- 736 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/21(金) 00:21:08.30 ID:M1ef5+5A0
- ドクオは、ショボンの肩に手をおくと、その肩を揉みながら、笑った
('A`) 「お前もよ、何そんなに熱くなってんだよ? らしくねぇって」
(´・ω・`) 「だって、だってさ? 僕、あれ、すっごく好きなんだよ?」
(´;ω;`) 「だから……なんか、悔しくって……」
ξ゚听)ξ 「!? ちょ……泣くこと、無いじゃない……」
まさか、たかがこれしきのことで泣かれるなんて、思うはずもない
慌て、言葉が尻すぼみになるツンを他所に、ドクオは頷いた
('A`) 「ああ、そうだな。でもよ、人の好みってのはあるしな、俺は気にしてない」
(´・ω・`) 「で、でも、」
なおも言い募ろうとするショボンに、ドクオは言葉を重ねる
('A`) 「それに、俺はどうもあいつから嫌われてるみたいだし、しゃーねーだろ?」
ξ゚-゚)ξ 「…………」
ちらり、と、特に感情をこめず、かといって無表情ではない視線でツンを見ると、
自分の方を見るドクオに、肯定も否定もできずに、ツンはただ黙った
('A`) 「ま、俺の作品が下手なのは、言い訳しようもないってのもあるんだがな」
(´・ω・`) 「そんなことな……」
ξ - )ξ 「誰も、そんなことは言ってないわよ……」
(´・ω・`) 「え……?」
セリフを乗っ取られたショボンが、ツンの方を見ると、
ξ#゚听)ξ 「あたしは、似合わない趣味、って言っただけだって言ってるのっ!!」
- 737 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/21(金) 00:22:41.98 ID:M1ef5+5A0
- ξ#゚听)ξ 「ああもう、なんか絵を描く気分じゃなくなったじゃないっ!?」
自分勝手なことを怒鳴るツンに、何を返せるというわけもなく、二人は黙った
ξ゚听)ξ 「フン、今日はもう帰るわ」
言うが早いか、ツンは帰り支度をすばやく整えると、
キャンバスをそのままにして、美術室を出ようとした
('A`) 「おい、ちゃんと片せよ?」
ξ゚听)ξ 「別にいいでしょ? まだ何も描いてないんだから。それに、明日もまた来るつもりよ」
だからと言って、明日は美術の授業でここも使うはずなのだが、
あえてそこには突っ込まないことにした
ツンはそこで思い出したかのように、立ち止まり、ドクオの方を見ることもなく、
ξ゚听)ξ 「いい? 明日は、あたしがここを使うから、あんたたちは、いないでよね?
ドクオだけかと思ったら、ショボンくんまで……あんたたちがいたら集中できないわ」
今日はゆずるわ、と捨て台詞を残すと、振り返ることなく、ツンは帰っていった
- 814 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/21(金) 20:59:11.13 ID:M1ef5+5A0
- (´・ω・`) 「なにあれっ!? ひどいよ!」
完全に戸が閉まってから、ショボンはプンスカと表現したくなる怒り方をした
もう閉まっている戸を指差し、空いた片手を上下にブンガブンガと振りながら、
('A`) 「どうでもいいけど、昼間は謝ってたのに、すげぇ言い様だなw」
(´・ω・`) 「う……ツンさんは、クラスとかで大変かもだけど、これは関係ないもん」
わかったからほっぺた膨らますな、よりいっそうお子様に見えちまう、と
ドクオは苦笑した
(´・ω・`) 「ていうか、ドクオはなんとも思わないの?」
どちらかと言えば、自分がここまで怒るのも筋違いで、ドクオが怒るべき話題だと思う
そう言うと、ドクオはケタケタ笑い、ショボンの頭をなでた
(´・ω・`) 「うわっ、なにすんのさ?」
('A`) 「んー? お前は馬鹿だな、っておもってなw」
(´・ω・`) 「馬鹿じゃないよー?」
一人エキサイトするショボンとは反比例して、ドクオは落ち着いていた
どうして、ドクオはこうも冷静なのか、とショボンが疑問に思うぐらいだ
あんなこと言われたら、怒って当然なのに……
('A`) 「ま、これで懲りてくれりゃ、一番なんだがな。あいつも大変だってこったろ?」
(´・ω・`) 「うー? でも、そこは今関係ないんじゃないの?」
ドクオの言う事はよくわからない
でも、ドクオがいいと言うなら、それでいいのかも、と思うショボンであった
- 851 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:55:09.81 ID:+b2v2Mar0
- 場所は変わり、そのときブーンは走っていた
(;^ω^) 「クーはどこ行ったんだお……?」
学校までの道は、ブーンもクーと一緒だ
家まで全力で走れば、その途中、どこかで鉢合わせるはずだった
しかし、10分の遅れが響いたのか、ブーンが家に着くまで、クーの姿を見ることはなかった
(;^ω^) 「もう家に着いちゃったのかお」
10分ぐらいの差で、自分が追いつけないとは思えないが、
現に今会えていないのだから、そうとしか考えられない
なら、クーの家に行って、それから……
( ^ω^) 「いや、どっかで追い抜いちゃったかもしれないお!」
きびすを返し、ブーンはまた学校へと走り出す
追い抜いた、と口では言っているが、それはない、とブーンも気づいている
だが、クーの家に行く、その選択肢を選ぶことが躊躇われた
家にまで行って、自分は何を言うのだろう?
昼、ツンと昼食をとったこと、その釈明か?
それとも、そのせいで、クーが昼食を食べ損ねた、謝罪か?
どれも、違う気がした
何を言ったらいいのか、わからない自分が、クーの家に行って、どうするのか
ブーンが足を止めた理由は、それだった
- 852 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:55:35.62 ID:+b2v2Mar0
- 結局、クーに会えば、自分は何か言わなければならない
何かを、言わなければならない
そう思って、ブーンは学校から走り出したはずだった
だが、その言葉が見つからない
見つからない言葉を、走りながら捜す
( ^ω^) 「…………」
自分は、クーが先に帰ると言ったとき、どう思ったか
―――うまく、言葉にできないが、嫌だった
何が嫌だったのだろうか
―――クーが、何も言わずに……いや、何も自分に聞かずに、帰ったのが、嫌だった
自分は、クーに何を言いたくて、走っているのか
―――…………
思考は、そこで止まった
同様に、足も学校に着く前に止まり、誰に言うでもなく、ブーンはつぶやいた
( ^ω^) 「一度、着替えに家に帰ったほうがいいお」
時刻は、もうすぐ夕飯時になろうとしている
制服のままうろつくのは、あまりいいとは思えない
だから、と、言い訳をするようにして、ブーンは元来た道を戻っていった
- 853 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:56:19.68 ID:+b2v2Mar0
- ( ^ω^) 「……ただいまーだお。あれ?」
家に着き、靴を脱ぎながらただいまを言うが、カーチャンから返事がない
足元を見てみれば、靴がなかった
( ^ω^) 「買い物にでも行ったのかお?」
いつもなら、家でテレビでも見ている時間帯
なのに、外出するなんて珍しいこともあるものだ
と、居間に行くと、テーブルの上に書置きが残っていることに気がつく
カーチャンはブーンが留守のときに家を出ると、必ず、何かしらの書置きを残してくれるのだが、
( ^ω^) 「あれ? メモ帳じゃないお?」
紙のサイズは、ルーズリーフぐらい、多分、レポート用紙だろう
裏返してみると、そこには文字の羅列がぎっしりと書かれ、まるで手紙のようだ
(;^ω^) 「カーチャン、今北産業でたのむお……」
三行以上は、正直読む気もしないのだが、それだけ複雑な事情が書かれているのかもしれない
そう思うと、読む気がしないなんて、言っていられない
少しばかり、緊張しながら、ブーンは手紙を読んだ
『前略、息子へ
春の息吹が感じられる昨今、風邪などはおひきになられていないでしょうか』
なんか時候の挨拶から始まっていた
誰かよその人への手紙かと思ったが、息子へ、と書いてあるし、自分当てなのは間違いない
同居してるお、と突っ込みたいのをこらえ、ブーンは手紙を読み進もうとして、気づいた
どうも紙の半ばまでは、こんな、どうでもいい内容が書かれているようだ
- 854 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:56:52.04 ID:+b2v2Mar0
- 『さて、時候の挨拶はこのぐらいにして、本題は別にあります』
斜め読みで時候の挨拶を飛ばし、その本題とやらに目を落とす
『カーチャン、今日はちょっと外食してきます。家にある食材は好きに使っていいです。
主婦にも休日は必要だと思います カーチャンより』
やたらめったら長かったが、本文は三行足らずで終わっている
これなら、素直にメモ帳で済ませてくれれば、緊張も……いやまて外食?
(;^ω^) 「……外食かおっ!? 僕の夕飯はどうなるお!?」
言うまでもないが、ブーンは料理を作るということが、まるで出来ない
思わず、上ずった声で言ってしまったが、すぐに思い直す
あのカーチャンのこと、冷蔵庫には作り置きのお惣菜が……
(;^ω^) 「ないおっ!? ぜ、全部食材のままだおっ!?」
おかしい、絶対におかしい。今朝の残りとか、パンとか絶対にあるはずなのに
まあ、無い物は無いのだから、仕方ない、カーチャンがお昼に使ったのだろう
(;^ω^) 「……しょうがないお、今日はおかしで夕飯済ませるお」
夕飯がポテトチップスというのは味気ないが、背に腹は変えられない
戸棚を開き、お菓子入れの缶を取り出して、ふたを開けると、中にはまた紙切れが一枚だけ
『ジャンクなお菓子で夕飯済ませるのは、カーチャンどうかと思います カーチャンより』
(;^ω^) 「しょ、処分されてるおっ!? なんでだお!? なんかのバツゲームかおっ!?」
やばい、カーチャンが何を考えているのか、まったく読めない
- 855 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:57:35.53 ID:+b2v2Mar0
- 夕飯を一食抜いたところで、飢え死にすることはない
そう悟りを開き、というか諦め、ブーンはおとなしく着替える事にした
( ^ω^) 「腹、減ったお……」
一瞬、クーもこんな感じだったのか、と思った
そして考える
自分がクーに言いたいのは、こういうことじゃないのか、と
( ^ω^) 「いや、そんなわけ、ないお」
あの時、自分が思った感情は、クーを思って、なんてかっこいいものじゃない
もっと、自分勝手で、利己的な何かだった
だが、その正体はわからない
( ^ω^) 「…………」
なんだろう、あの時、いや、クーにツンとのことを言った後、
自分は、確かにガッカリしていた
どうして、自分はがっかりしたのだろうか
自分は、クーにどんなリアクションを期待していたのだろうか
- 856 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:57:56.07 ID:+b2v2Mar0
- と、ブーンが物思いにふけっていると、
―――ピンポーン
来客を告げるチャイムが鳴った
(;^ω^) 「うおっ? あ、ハーイ、今でますおー!」
着替えの途中だったが、待たせるわけにもいかない
適当なシャツを着て、玄関に向かい、無用心にも来客が誰なのか確認せず、ドアを開けた
と、そこに立っていたのは……
川゚-゚) 「邪魔するぞ」
( ^ω^) 「え……クー!?」
制服姿のまま、買い物袋を下げた、クーがいた
- 857 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/22(土) 00:58:23.49 ID:+b2v2Mar0
- ちょっと待とう
いや、言い直す、ちょっと待ってください
川゚-゚) 「ブーン、しょうゆはどこにある?」
(;^ω^) 「あ、右の戸棚のとこだお」
現状が、よく把握できない
目の前のこの光景は、事実なんでしょうか
川゚-゚) 「ふむ……中華なべを借りるぞ?」
(;^ω^) 「うん、かまわないお……」
Q:どうしてクーは、うちの台所でエプロンをつけているんでせう?
A:夕飯をつくるためだと思われ
おお、なんと明確な答えだろう
料理をするためには台所に立たなければならないし、エプロンも必要だ
いちいち尤もな完璧すぎる答えが、あっさり出てしまった
( ^ω^) 「いや、そこじゃなくって」
そうだった、問題はそこではなかった。いや、エプロンも個人的には重大な問題なのだが、
クーがうちで料理をしている、そのことが問題なのだ
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