( ^ω^)川゚-゚)ξ゚-゚)ξ'A`)´・ω・`)

3 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/06(土) 23:59:16.58 ID:ikOBVmok0
逡巡は一瞬だった
引きずり込まれるとか、後悔とか、そういうのはどうでもいい
先のことより、今、やらなきゃいけないことを、やりたい

( ^ω^) 「…………ツン、」

そして、ブーンは一歩を踏み出そうとした時、

ξ )ξ 「……用がそれだけなら、もう話し掛けないでよっ!」

目を隠したままのツンがブーンより先に言った
被せられたツンの声にブーンの声はかき消され、ツンの耳には届くことは無く

(;^ω^) 「ちょ……! ツン!」

逃げるように、駆け出したツンに押しのけられ、ブーンはバランスを崩す
階段の半ばで、元より足場が悪かったこともあり、背中から階段の角に落下

( ;゚ω゚) 「うぐっ!?」

肺から空気が漏れる苦しさと、背骨を割られるような痛みに負け、ブーンはその場にうずくまる
呼吸もままならない痛みの中、視線だけでツンの背中を追うが……無駄だった
ツンは振り返ることなく、階段を駆け下り、踊り場を曲がるともう影も見えない

(;^ω^) 「ツン……待って……!」

声は届かず、空しく硬い校舎の壁に反響するばかり
聞こえても、待つはずがないのはわかっているのだが



5 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/06(土) 23:59:39.66 ID:ikOBVmok0
今日の自分は、どうかしている
一人で戻ってきたショボンに、ことの次第を聞いて、つくづくそう思った

('A`) (読めてたオチじゃねぇか)

ショボンとツンが、昨日の続きをやることはなんとなくわかっていた
そんな場面をブーンが見たら、どう思う
事情も説明せずに、口喧嘩しているだろうふたりの様子を見に行ってくれ、と言ったら、どうする

('A`) (ツンを追いかけるに決まってんだよな)

くしゃくしゃと、髪を握りつぶすように頭をかく

('A`) (俺は……何がしたいんだよ)

おせっかいなブーンは、相手が好きだとか嫌いだとかじゃなく、困っている人間をほっとけない
今のツンは困っている、というか、妙な意地を張ろうともがいている
そんなやつが目の前にいたら……ほっとけるわけがない

('A`) 「クーのやつ……悲しむよな」

歯噛みする
自分は、そんな顔を見たいと思っているのか。いいや、そんなわけがない
ただ、ただ、自分は、ブーンのあの顔が、気に入らなかっただけなんだ

('A`) 「……くそ、情けねぇ」

この前、ブーンに言われた言葉を思い出す
嫉妬しているのか、と言われ、否定した、きっぱりと否定した
なのに今の自分はどうだ、嫉妬していると言われて、当然じゃないのか



6 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 00:00:02.76 ID:ikOBVmok0
ξ゚-゚)ξ 「…………」

一人戻ってきたツンは、無言で自分の席に座った
そこに真っ先に突っ込んでいくだろう屍達は、ショボンの時もそうだったが、
議論に夢中になって気づいていない

('A`) 「あほかよ、あいつら」

どうでもいいことをつぶやき、ツンの方を見る
いつもの顔で、すましているのだが、こちらを一度も見ようとしない
ブーンが一緒にいない事と、今のツンのあの態度

そこから導かれる結論に、ため息

ブーンはツンに、何もしてやれなかったのだろう
追いかけて、何を話したのか。推測も出来ないが、結果がこれならするだけ無駄だ
ツンが変わらず、つまらない顔をしているのなら、ブーンはどうする
それでも懲りずに力になりたいと思うだろう、クーの事を考える暇もなく、一生懸命に

('A`) 「……俺の、せいだよな」

一時の感情で、自分は馬鹿な事を考えた
ブーンはクーの事だけを見ていればいい、見ていてやって欲しいと思っていたのに、
くだらない嫉妬から、それ以外の余計なことを考えさせようとした

('A`) 「…………」

ポケットに手を突っ込み、タバコの箱を握る
左手は無意識にライターを探し始めていた
どうしてか、今はたまらなくタバコが吸いたかった



7 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 00:00:39.90 ID:Aa2Kqake0
('A`) 「……っ」

取り出す寸前で、手が止まった。ここは学校で、しかも教室の中だ
しかし、欲求にブレーキをかけたのは、それだけではない
タバコを吸うと、いろんなことがどうでもよくなる
すっきりする、と言うと少し違うが、ぼうっとするような心地よい脱力感は、悩みを消す
今、自分は、思考することに疲れ、タバコに逃避しようとしていたのだと、気づく

('A`) 「…………」

浮かんだ顔は、クー。決まってブーンの隣にある、無機質な顔
感動と言う物を知らないと言わんばかりに、表情が無い癖に、ブーンの行動にはいちいち反応する
そんなクーの隣を、ブーンが離れたら……と、そこで頭を振る

('A`) 「何、考えてんだよ……俺は」

吐き捨て、ポケットの中で、タバコを握りつぶす
まだ10本以上残っていたらしく、手ごたえは硬い。少し勿体無いとも思ったが、全部どうでもいい
開き直るように、心中でそう独白した

('A`) 「ブーンにゃ、手におえそうもないし、な」

言い訳するように呟き、視線をツンに向ける
いつもと同じようでいて、どこか沈んで見えるのは気のせいだろうか

('A`) 「……俺もおせっかい焼くとするか」

仕方ない、とでも言いたげに、皮肉っぽい笑いを浮かべる。だが、ドクオは気づいていない
自分が、そう思い、行動することで、クーの事を頭から追い出そうとしているという事に



19 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 01:19:37.14 ID:Aa2Kqake0
先生 「うーす、おはよう」
屍A 「だから、ここはきっぱりショボン懐柔策に移ってだな?」
屍B 「今回のような強攻策に出られたらどうするっ!? 俺はあいつと仲良くできる自信がない」
先生 「…………」

教室に入ってくるなりシカトされた
さらりと挨拶を無視された担任は、ちょっとだけ寂しそうに沈黙した後、屍達を薙ぎ払った。一撃で

先生 「……出席とるぞ。ん? 内藤はどうした?」

軽く訴えられそうな事をしたのにもかかわらず、いつも通りの作業をこなす担任は、
ブーンの席を見てから、両隣に位置するドクオとショボンに尋ねた
ドクオはショボンを見ると、首を横に振った。ショボンはツンの方を見たが、

ξ゚-゚)ξ 「…………」

無視される
そもそもブーンの席を見ようともしていないし、担任の質問にも答えるつもりもなさそうだ

(´・ω・`) 「あ……来てるはずです、ちょっと探してきま」
(;^ω^) 「お、遅れましたお……」
(´・ω・`) 「ブーン、どうしたのさっ!?」

ショボンが立ち上がるのと、ほぼ同時
腰を抑えながら入って来たブーンは、頭を下げ、それからツンの方を見ようと、

先生 「手ぶらで重役出勤か、偉くなったもんだな」
(;^ω^) 「え? いや、これは……って、ちょっ!?」バギッ!!

なぎ倒された。一撃で



20 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 01:20:31.13 ID:Aa2Kqake0
先生 「えー、言い訳はあるか?」
(´・ω・`) 「先生、なぎ倒した後にそれ聞きますかっ!?」
先生 「黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「え? 単独で?」

もはやテンプレとかしたショボンへの対応を無視して、ブーンは視線を一度落としてから、

( ^ω^) 「えーと……ちょっとトイレ行ってましたお」
ξ゚-゚)ξ 「! ………」
先生 「ん、座ってよし」

なんてことない嘘に、ツンがブーンを見る
だが、それも一瞬で、すぐにまた窓の方に向き直った
ツンのその反応に、予想していたとはいえ、肩は落ちるし、ため息ももれる。と、

(´・ω・`) 「ブーン……結局、何があったの? こんなに遅れるなんて」
(;^ω^) 「え? あ、その……」

気落ちするブーンを心配するように言われ、言葉に窮する
なんと言ったらいいものか
そうブーンが視線を上に下にめぐらしていると、ドクオがその肩を叩いた

('A`) 「言わなくてもいい」
( ^ω^) 「ドクオ?」
('A`) 「おつかれ」
( ^ω^) 「…………」

それだけ言って、ドクオはいすに寄りかかるように、船漕ぎを再開した
どこか冷ややかなものを含んだドクオの言葉は、普段のそれ
今、ドクオが何を考えているのかわからない。そのことに、不安をぬぐえなかった



21 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 01:21:36.39 ID:Aa2Kqake0
(´・ω・`) 「? どういうこと? ねぇねぇ、ドクオ、どういうこと?」

シリアスにブーンが悩んでいるというのに、ショボンは脳天気な声で袖を引っ張ってきた
ブーンが遅れた原因が自分にあると思っているショボンは、よほど気になるのか、しきりに聞いてくる

('A`) 「本人が言わないんなら、無理に聞く必要はねぇだろ? つか、黙れ馬鹿」
(´・ω・`) 「え? ここで? ていうか、自分だけわかったような顔しないでよ?」
(;^ω^) 「ショボン……そろそろ、黙ったほうがいいお」

今度はブーンがそんな事を言う
言いたくないなら、それはそれで構わないが、こうやってごまかされるのは好きじゃない

(´・ω・`) 「ブーンまで……でもね、何があったかは聞かないけど、遅れた理由ぐらいは……っ!?」

ショボンがブーンに矢継ぎ早に聞いていると、何かがショボンの目の前を掠めた
ビシュッ! と、鋭い風きりの音が鳴ったかと思うと、後方で何かが砕ける音が続く

(´・ω・`) 「い、今のは………」

油の切れたドアのように、鈍い動きで首を動かす
後ろの黒板にぶつかったものの正体は……白のチョーク
それを投げた人間は、言うまでもない

先生 「……いい度胸だな?」
(´・ω・`) 「すいませんでした……」

今日は何かと思い通りに進んでいない担任は、かなり凶暴なご様子
ブーンの警告に、いまさらながらに気づいたが、もう遅かった

―――追記。ショボンは今日も三途の川を日帰りで行ってきたらしい



36 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 05:30:12.25 ID:Aa2Kqake0
(´ ω `) 「ああ……! イナゴがっ! イナゴがぁぁぁぁっっ!!」
数学教師 「誰かそこの馬鹿を殴って起こせ。気絶させてもかまわん」

どうもショボンはユダヤ教の地獄に出向いている模様

('A`) 「悪いけど、今日は俺ちょっと用事あるから残るわ」
( ^ω^) 「え?」

放課後、突然にそう言われ、思わず、聞き返してしまう
今日一日、ドクオの行動はどこかおかしかった

朝はもう言うまでもなくだが、休み時間も、一人自分の席でぼんやりと過ごし、
昼休みは、いつもなら一緒に食事をとるはずなのに、
ここでもドクオは一人で、購買で買ったパンで済ませていた
授業中、奇声を上げることも居眠りすることもない、と、ここまでくれば誰でもおかしいと思うだろう
その極め付けが今、説明なく、ドクオがこういうことを言うなんて、絶対におかしい

('A`) 「先、帰っててくれ」
(;^ω^) 「ちょ、何の用事なんだお?」

ブーンがドクオに駆け寄ろうとすると、

('A`) 「お、クーがもうそろそろ来るっぽいぞ」

隣のクラスでは、全員がいすを前後に動かすあわただしい音が聞こえた
HRが終わったら、ドクオの言うとおり、クーはきっとすぐに来るはず
ブーンの意識がそれた時、ドクオは既にその場にいなかった



37 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 05:31:12.60 ID:Aa2Kqake0
放課後、ツンは美術室にいた。正直、絵を描くような気分ではなかったが、
昨日、ドクオにああ言ったこともあって、なんとなく、来ないといけない気がしたのだ
事実、ここにドクオの姿はなかった

ξ゚-゚)ξ 「えと……絵の具は、っと」

買ったばかりの絵の具セットを、かばんから取り出す
初心者用の安い絵の具だが、ツンはこの絵の具が気に入っている
たった12本しかないが、それで十分だ
かのルノアールは、絵の具を6種類しか使わなかったという話もある
絵の具の種類の多さが、絵のすばらしさには直結しないという、いい例だ

ξ゚-゚)ξ 「べつに、評価を求めてるわけじゃないんだけどね……」

パレットナイフに語りかけるように、独り言
所詮、趣味の域を出ない創作活動だ
世界に名だたる有名画家と比較するのは、お門違いもいいところ
評価が高いとか低いとか、関係ない、好きか嫌いかで、いいじゃないか
そこまで考えたところで、手が止まった

ξ゚-゚)ξ 「評価なんて、関係ないのに……ね」

自分は、本心からそう思っている
なのに、昨日―――今朝もそうだったが、自分は何であんなことを言ってしまったのだろう

ξ゚-゚)ξ 「ううん、あたしはそんなこと、言ってない……似合わないって、言っただけじゃない」

自分の言葉にうなづくが、それで納得出来るはずもない
結局、言ってはいないのだから
自分が、あのアクセを見て、好きなのか、嫌いなのか、と



38 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 05:32:14.11 ID:Aa2Kqake0
天井を仰ぎ見てから、美術室全体に視線をまわす

ξ゚-゚)ξ 「だれも、いない……よね」

当然だが、美術室には自分以外、誰もいない
誰もいないなら、今は正直に感想を言ってもいいのではないだろうか
いや、聞く人間がいないなら、それこそ言っても意味がない

ξ゚-゚)ξ 「……はじめようかな」

キャンバスも、絵の具も、パレットも、ナイフも、全部準備はできている
じっとして、考えていても煮詰まるばかりだ
自分は、手を動かして、何かしている方が、ずっと考えがまとまるタイプだ
だったら絵を描きながら考えればいい、と、結論した

ホワイトのチューブを、パレット中央に多めに出す
普通は端っこの方に、少しづつ出して使うのだが、今は地塗りの段階だ、気にしない
少量をナイフで掬うように取り、キャンバスに塗りつけていく
粘性の高い油絵の具は、水彩よりも大きな手ごたえを、手にダイレクトに伝えてくる

力を込めながら考えるのは……あの三人のことだった

ξ゚-゚)ξ 「ホント、イライラする」

言葉にすることで、それがあたかも真実のように思えてくる

おどおどとしているようで、妙に頑固で意地っ張りなショボン
まるっきり成長していない子供のようなのに、いやに老成したドクオ
何がしたいのか、さっぱりわからない上に、恩着せがましいブーン
どいつもこいつも……腹が立つ、と、思う



39 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 05:32:39.56 ID:Aa2Kqake0
押し付けるように、絵の具をキャンバスに塗りながら、思考は続く

どいつもこいつも、本当に気に食わない
神経を逆撫でされるような感覚が、気に食わない

ξ゚-゚)ξ 「フン……」

感情はそのまま、エネルギーに変換されるような気がした
怒りで沸いたエネルギーで、ナイフはパレットとキャンバスを行き来させる
感情をエネルギーにしているからだろうか、
手に伝わる反動と共に、真っ白な布キャンバスが別の白に染まっていくのを見ていると、
頭の熱が、徐々に引いていくのがわかる

ξ゚-゚)ξ 「なんで、気に食わないんだろう……」

自分の感情なのに、理解できない
いや、これは理解できないのではなく、困惑しているのかもしれない
今、自分があの三人に感じている物は……怒りではないのかもしれないということに

今までも、数え切れない人間を嫌ってきた
相手が自分に悪意を持っていたりとか、理由はさまざまだが、どれもこれも似たような不快感を覚えた
だが、あの三人を見ていて浮かぶ、この感情は、それらとは絶対に違う
そこまで理解は及ぶのに、それでもやはり、その正体はわからないままだ

疑問が呼び水となって、更なる疑問が頭に浮かぶ

ξ゚-゚)ξ 「なんで、あたしは泣いちゃったりしたんだろう……」

自分でも、自覚していない間にこぼれた涙
あの時、悲しかったとか、怒っていたとか、そんなことはなかったはずなのに……



40 :◆3mfWSeVk8Q :2006/05/07(日) 05:33:21.17 ID:Aa2Kqake0
と、今までスムーズに絵の具を取っていたナイフに、硬い手ごたえが帰ってきた
パレットを見ると、いつのまにか白絵の具は無くなりかけている

ξ゚-゚)ξ 「あちゃ……ミスったかな」

キャンバスを見れば、あと少しで塗り終わるところだ
新しく絵の具を出すべきか、それともパレットについた残りをかき集めてなんとかするか
一旦思考を中断して、考えていると、誰かが教室のドアをノックする音が聞こえた
用務員のおじさんか先生かが、カギをかけるとかで来たのだろうか

ξ゚-゚)ξ 「あれ……? もう、そんな時間?」

時計を見ると、完全下校時間にはまだ大分ある
だとすると、いったい何の用なのだろうか
とりあえず、返事をしないとまずいのは確かだ

ξ゚-゚)ξ 「はーい、何かー?」

いすに座ったまま返事を返す。と、ちゃんと向こうの人間にも聞こえたのか、ドアが開いた
角度的に、顔は見えないが、服ぐらいなら見える
どうやら入ってきたのは、教師ではないらしい、制服のズボンがその証拠だ

転入して間もないツンには、クラスメート以外、たずねてくる人間に心当たりはない
美術室に、忘れ物でもしたのかな、と考えていた頭は、次の瞬間処理落ち限界の衝撃を受けた

('A`) 「よお、やってるか?」
ξ゚听)ξ 「ちょ………っ!?」

学校の中だというのにくわえタバコをした、痩せ型のシルエットは、見間違えようがない
今日、ここには来ない筈の、ドクオだった



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