( ^ω^)川゚-゚)ξ゚-゚)ξ'A`)´・ω・`)

88: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:12:39.42 ID:hPlbBpwE0
ブーンの帰った部屋で、クーは一人、両手を見つめていた
震えが止まらない、両手を

川゚-゚) 「……」

吐息が、漏れる
懸命に、握りこもうとするけれど、手は言う事を聞いてくれない
中途半端に猫の手を作るだけで、握り拳と言うには程遠い

川゚-゚) 「私は……馬鹿か?」

手に力が入らないのは、筋肉を酷使しすぎたせいだ
抱きとめるとき、どれだけの力で、
ブーンの服を握り締めていたのか、今更ながらに、思い知る

右手で、前髪を巻き込んで、顔を覆う
崩れそうになる顔を、留めようとするように

川゚-゚) 「……なんで」

誰も見ている者なんていない。それに、そんなことをしなくても、
普段使われていない表情は、歪むことはないのだ
それでも、いつもの顔を、意識して、保とうとする

川゚-゚) 「ブーンの、為だから……な」

言い聞かせるように、呟いて、ベッドに倒れこんだ
未だ、ブーンの残り香のあるベッドに



89: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:13:54.37 ID:hPlbBpwE0
強い光が、瞼の上から眼を焼いた
眠気の残る頭を振り、目をあけると、窓から朝日が昇っていた

('A`) 「……ん」

ここは、何処だろうか。一瞬だけ考え、太陽から察する

('A`) 「学校、だよな……?」

山の中原、VIP高校から見る太陽は、さえぎる物が何も無い
まっすぐな緋色は、夜の藍色と混じりあって、淡い紫で空を彩っていた

('A`) 「つーことは、何か? 俺、朝まで寝てたってか?」

冗談っぽく言ってみるが、正直、笑えなかった
何をそこまで思いつめてたんだか、と、溜息が漏れる

('A`) 「べつに、いつも通りだっつーのになぁ……」

一度寝て、頭の温度は冷え切っていた
何も悩む必要なんてない。クーとブーンのセットは、もうとっくの昔に見慣れている
ツンとの面倒事も、今日から、少しはおさまるだろう
なら、自分もいつも通りに戻ろう、馬鹿な事を考えるのをやめて

('A`) 「あー……一度帰っかな」

時刻はよくわからないが、家まで一往復するぐらいの時間はあるだろう
なんなら、そのまま家で寝直すのもアリだ



90: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:14:24.49 ID:hPlbBpwE0
どうするかは、家についてから考えるとして、
今は、誰かに見つかる前に、とっとと帰った方がいいだろう
美術室用の、箱馬から立ち上がると、肩から何かが落ちた

('A`) 「ん?」

眠る前に、何かを羽織っていた覚えはないのだが
いぶかしみ、見てみると、落ちたのは見覚えのある制服

('A`) 「って、俺のか、これ?」

そこら中にかぎ裂きのある、悪い意味で特徴的な制服は、見間違えようが無い
羽織った覚えは、本当に無いが、大方、
寝る前に自分で被って、忘れていたのだろう、と結論する

('A`) 「……どんだけ寝ぼけてたんだ、俺」

その前に学校で朝まで寝てる時点で、問題あるが
呆れながらも、徐々にいつものペースが戻ってくるのを実感した
これなら、ブーン達に会うまでには、何とかなる。そう思うと、足取りも軽くなった
拾った制服を肩に担ぎ、ドアを開ける。と、

先生 「よう。早いな?」
('A`) 「げ……」

よりによってな人物が、やたらとニヤニヤしながら、そこに立っていた



91: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:14:52.80 ID:hPlbBpwE0
よりによって、というのは、単に苦手な人物、という意味ではない
いくらVIP高校がフリーダムとは言え、無断で校内で夜明かしたとあっては、
下手をすれば、停学でもおかしくない

先生 「ほう……げ?」

更にまずいことに、とっさにでたうめきが、第一印象を悪化させた模様

('A`) 「いや……その、朝早いんですね、先生も」
先生 「いやいや、お前ほどじゃあないよ。なにせ……昨日から登校してたんだもんな?」
('A`) 「!」

バレている。とっさに話題を変えようとしたが、もうバレていた
というか、それならさっさとそう言えばいいものを……と、
歯噛みをするが、これ以上罪状を増やしても仕方が無い、抵抗を諦める

('A`) 「はぁ……わかったよ、で?」
先生 「で? って、言われてもな」
('A`) 「あん? あんたな、さすがに趣味が悪……」
先生 「いいから、とっとと帰れっつってんだよ」
('A`) 「………………………………は?」

そんなことは一言も言ってなかった気がするのだが



92: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:15:55.57 ID:hPlbBpwE0
いや、問題はそこではない
ドクオが言えた義理ではないが、教師として黙認はどうかと思う
かと言って自分から処分を要求するほど、Mっ気もない

('A`) 「……。んじゃ、まぁ帰るけどよ……」

何か釈然としない物を感じるが、あの教師のすることだ、気にしても仕方ない
と、後ろから、大あくびが聞こえた

先生 「あー、言っとくけどな、」

眠たげな声を、聞くでもなく、歩く

先生 「今回はロマンスに免じて、許してやるだけだからなー」

……何をわけのわからない事を
やたらと楽しそうに、寝ぼけた声で寝ぼけた事をのたまっているが、
要は、次はないぞ、と言いたいんだろう。だが、何故そこにロマンスが入るのか

('A`) 「何が言いたいんだか……」

人の事を言えないが、アレも相当に寝ぼけているらしい



93: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 01:16:45.02 ID:hPlbBpwE0
職員室に戻って、まっすぐに自分の机に向かい、早足の速度で突っ伏した
もう既に眠気は全開
目を閉じれば、きっといい夢が見られることだろう

先生 「あー……やっと帰ったか、あのあほは」

ぼへぇっと、机の上に広がるのが気持ちいい
脱力できることが、ここまで有り難いと思うのは、もう年だからだろうか
この年になるともう、徹夜をしようと思っても、なかなか出来ないものだ

先生 「ま、たまには、いいか」

全身の疲労感は、相当辛い。が、それ以上に教師として、いや、乙女としての満足感があった
……まさか、あんな美味しい場面にめぐり合えるとは思わなかった
眠りにつく前に、にやけてしまいそうな記憶を反芻する
これで、今から見る夢の内容は、とても充実するだろう

先生 「くふ……くふふふ……」

眠るのが楽しみなのは、疲れと徹夜のハイテンションだけではない

……さて、眠りますか

瞼を閉じて、すぅっと落ちていく感覚に身を任せ、もう若くない教師は、夢の世界に旅立っていった



114: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 04:41:51.67 ID:hPlbBpwE0
校門を出て、少し歩いた所で、タバコが吸いたくなった
考えてみれば、昨日の放課後から、軽く十二時間以上、ニコチンを摂取していない
それを抜きにしても、朝の一服はもう習慣になっているのだ。と

('A`) 「あ……?」

ポケットから出てきたのは、よれよれになったソフトボックス
何本か抜き出してみるが、どれも真ん中辺りからボッキリと折れてしまっていた

('A`) 「そういや、昨日握り潰したんだっけか……」

思い出し、後悔した
あの時は、もう二度と吸うまいと思っていた
だが、辞めようと思うときははいつもそうだ、捨ててから結局、また買ってしまう

('A`) 「……」

幸いにして、この時間なら、人通りも多くないし、自販機も動いている
買えるかどうかなら、まず間違いなく、買えるだろう

('A`) 「なら……買うか、いつも通り」

いつも通りの自分なら、迷わず買う
言い訳じみた考え方だが、ここで吸わなかったら……何か、違ってしまう
そんな考えが、ドクオの背中を押した



115: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 04:43:09.74 ID:hPlbBpwE0
自動販売機に、小銭を数枚叩き込み、ボタンに指を乗せ……

「こら! そこの高校生!」
('A`) 「!?」

声に驚き、反射的にボタンから指を離す
振り向くと、声の主は校門のすぐ傍にいた
一瞬、あの担任が出てきたのかと思ったが、違った

ξ゚-゚)ξ 「はぁ……まったく、朝っぱらから何やってるの?」
('A`) 「なんだ……お前か」

ほっ、と安堵する。教師でないなら、何も問題は無い

――ピッ! ……ガシャン!

ξ゚听)ξ 「ちょッ!? ま、待ちなさいよ!」
('A`) 「……なんだよ?」
ξ゚听)ξ 「なんだよ、じゃないでしょ? 何か、こう……ほら、もっと、言う事があるでしょ!?」
('A`) 「あ……?」

数秒、間を置いて

('A`) 「ああ……。おはよう、早いんだな」
ξ゚听)ξ 「え? あ、うん……お、おはよう」
('A`) 「じゃ。俺は、今帰りなんで」
ξ゚听)ξ 「うん……って、違うわよッ!」
('A`) 「……朝からテンションたけーな、おい」
ξ#゚听)ξ 「だ・れ・の・せ・い・よ・!?」



116: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/29(土) 04:44:10.03 ID:hPlbBpwE0
……どうして、この男はこうなんだろうか。こんなはずじゃなかったのに

豪快に出鼻をくじかれたツンは、頭を抱えたい気持ちで一杯だった
普通なら、もう少し焦るとか、慌てるとかする場面だったと思う
というか、慌てさせるつもりだったのだ
タバコを買うとは思わなかったけれど、それ以前の問題で

ξ#゚听)ξ 「アンタね……!」
('A`) 「……なんなんだよ?」

醒めた返しに、怒鳴りつけるのを、寸前で堪えた
冷静に、冷静に考えれば、ここはまだ、怒る場面ではない
ひとまず、穏便に行こうと、よそいきの顔を作る

ξ゚-゚)ξ 「ねぇ、今、何時かわかる?」
('A`) 「時計も持ってねぇの?」
ξ#゚-゚)ξ 「……ッ! そうじゃなくて、かくにんしろ、って、言ってるのね?」

早くもメッキがはげかけているが、まだ続けるのだろうか

('A`) 「んー……六時ちょいだな」
ξ゚-゚)ξ 「そう! で? 何か、あるでしょ?」
('A`) 「眠い。あと、タバコ吸いたい」
ξ#゚-゚)ξ 「あんたのことじゃなくて、ね? それ以外で、例えば、あたしとかで、ね?」
('A`) 「眠くね? タバコ吸う?」
ξ#゚听)ξ 「あんたワザとやってんでしょ!?」

終了。ツンのよそいきメッキは、ドクオの前では一レス分ももたなかった



227: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 00:25:55.91 ID:EWZ50dke0
怒鳴り声に、ドクオは耳を痛そうにおさえた
そこまで、金切り声を上げたというわけでもないのに、いちいち大げさで、憎たらしい
もう一度、何か言ってやりたくなる。と、

('A`) 「わかったわかった。……で? 何やってんだ、こんな時間に?」
ξ゚-゚)ξ 「え?」

ダルそうな気配は、すっ、と消え、代わりに、にやにやとした笑顔が浮かべるドクオ
……初めから、そう言えばいいのに
不意打ち気味に聞かれ、咄嗟に返せなかったが、返事はもう用意してある

ξ゚听)ξ 『別に? ただ、昨日の続きをしたいから、早く来ただけ』
ξ゚-゚)ξ 「え……えっと……」

……え? 何で?

言おうと思っていたセリフは、口に出そうとすると、舌がもつれて、どもる
頭に身体が、ついてこない。使い慣れた自分の口が、他人の物のような感覚に、戸惑う

ξ゚听)ξ 『……ていうか、あんたこそ何やってるの? こんな朝早くから』
ξ゚-゚)ξ 「て、言うか……その……」

……そ、そうじゃないでしょ!? しっかりしなさいよ!

ξ゚听)ξ 『まさか、あのまま学校で寝てたとか? バっカじゃない?』
ξ゚-゚)ξ 「………ぁぅ」

叱咤してみても、寝不足の身体は、何故か言う事を聞いてくれなかった
その理由は、ドクオが、笑ってくれたことが、嬉しすぎたからだ……とは、ツンは気づいていない



231: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 00:33:57.21 ID:EWZ50dke0
地塗りの作業は、それほど時間のかかるものではない
何も考えずに、絵の具を塗りつければいいだけなのだから、時間をかけるほうが難しい
その後、乾燥するまで時間がかかるだけで、キャンバスを置いておけば、それでいい

ξ゚-゚)ξ 「ふう……」

ドクオが、隣に行ってから、ものの三十分とかからず、片付けまで終えてしまった
工房からは、時折の中断を挟むものの、リューターの音はまだ聞こえていた

ξ゚-゚)ξ 「……どうしよう、かな」

頼んだわけではない。勝手に帰って、文句を言われる筋合いはない
でも、そんなことは、したくない
なら、一声かけてから、とも思うが……行きづらい

ξ゚-゚)ξ 「なんか……それじゃあ」

――一緒に帰る?
まるで、そう言いに行くように思えて、どうしても足が動いてくれない

ξ゚-゚)ξ 「別に、そういうつもりじゃ、ないし……あ、そうだ」

どうせ、校門が閉まるまで、まだ時間はある
その間、デッサンでもして、時間を潰そう

ξ゚-゚)ξ 「うん……じ、時間も、もったいないしね」

言い訳のように、独り言を言いながら、ツンはスケッチブックに鉛筆を走らせた



234: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 00:38:46.40 ID:EWZ50dke0
――コチ、コチ、コチ……

時計のリズムに揺られながら、スケッチブックをめくっていく
一枚、二枚、三枚と、次々めくられていくうちに、内容はデッサンから、
ただの落書きへと変わって行った

――筆のすべりがいい

なんとなく、なんとなく、思いつくままに、黒鉛をこすりつけ、頭に浮かんだ像を、形にしていく
いつもなら、一つ一つの線をもっと大事に、丁寧に描くのだけれど、
今は、そんなことを考えずに、ただただ鉛筆を走らせた

――調子、いいのかな?

勢いだけで、絵を描いていく
荒い曲線が、何本も重なり、とても綺麗とは言えないが、躍動感のある絵が、次々と描きあがる
そうしているうちに、いつしか下校のチャイムが鳴った

ξ゚-゚)ξ 「うそ、もうそんな時間?」

とは言うものの、手元を見れば、
落書きで埋め尽くされたスケッチブックが、過ぎた時間の長さを示していた

ξ゚-゚)ξ 「そう言えば……」

ドクオは、もう帰ってしまっただろうか
リューターの音は聞こえないけれど……



236: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 00:41:05.88 ID:EWZ50dke0
ξ゚-゚)ξ 「……ドクオ?」

控えめに、声をかけてみると――返事はない
軽く、ノックをしてみると――やはり、返事はない

ξ゚-゚)ξ 「なんだ……」

リューターの音も気にならなくなるほど、熱中していて言える事ではない
自分も、ドクオがどうしているか、気にかけていなかったということだ
だから、何も、落胆なんてする理由はない、ないのに……

ξ゚-゚)ξ 「なに、やってたんだろ」

何のために、今まで、絵を描いていたのか
ドクオがここにいないせいで、意味が、わからなくなる

ξ゚-゚)ξ 「アイツは……なに、してたんだろ」

何のために、さっき、ドクオは残っていたんだろう
今、ここにいないのなら、意味が、わからない
自分の作品を作るために……当たり前の可能性を、考えたくなかった
もし、そうだったなら、自分の意味を、否定されてしまうような気がして……
そっ、とドアノブに手をかけた



238: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 00:45:00.17 ID:EWZ50dke0
――カチャリッ

ξ゚-゚)ξ 「え?」

開く筈がないと思っていた、ドアが、開いた
恐る恐る、引き寄せれば、ドアは見た目よりもずいぶん軽く、動く
試すような気持ちで、開いたドアの隙間から、見えたのは、

('A`) 「……zzz……zzz」

粉まみれになりながら、机に倒れ付す、ドクオだった

ξ゚-゚)ξ 「ドク……オ? ドクオ?」

声に反応することなく、規則的に上下する背中

ξ゚-゚)ξ 「……寝てるの?」

眠っているのなら、答えるわけもないのに、尋ねる
当然返事は、返らない。けれど、ドクオは、確かにここにいる

ξ゚-゚)ξ 「……」

――待ちつかれたのかな
違うかもしれない
――それとも、ただ居眠りしたいだけだったのかな
違うかもしれない……でも、

どっちでもいいと、思った



244: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 01:05:13.66 ID:EWZ50dke0
何か、途端に寂しく思えた
ドクオを今起こしても、どんな顔をすればいいのか、わからない
でも、風邪をひかれても、それは嫌だった。考えあぐねたすえ、

ξ゚-゚)ξ 「……んしょ、と」

ドクオの背中に制服をかけ、窓を閉める
別に、感謝されたいとか、どう思って欲しいとか、そんなことを考えたわけではない
どちらかといえば、罪滅ぼしに近い……つもりだった

先生 「……おーい、そろそろ閉めるぞー?」
ξ゚听)ξ 「えっ!?」

工房の隣、美術室の方から、担任の声が聞こえた途端
顔が、熱くなっていくのを、感じた

ξ゚听)ξ 「か、かばんかばん……!」

考えるよりも先に、かばんを引っつかみ、
そしてそのまま、工房から逃げるように、飛び出した

やるべきことはやったはずなのに、
最低限の義務を果たしたのに、満足感は少しも無く、
その先を邪魔されたという苛立ちが、胸の中でささくれ立っていた



247: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 01:08:06.47 ID:EWZ50dke0
廊下を走りながら、考える。自分の行動が、理解できない
逃げ出す必要なんて、欠片もない。担任に、挨拶をして、帰ってしまえば良かった
ドクオのことも、何も言わずに、担任に任せてしまえば良かった
なのに、逃げ出したのは……

ξ゚听)ξ 「……っ!」

頭を振り、否定する。何も、あの後の事なんて、考えていなかった、と
事実、何も考えていなかった
ただ、自分でも気がつかないぐらい、かすかに……期待をしていた
目を覚まして、隣にいる自分に向かって……礼をいう、ドクオを

ξ゚听)ξ 「だったら……言えば、いいじゃない」

期待だけして、何もしないで、誰かが何かしてくれるのを待つ
そんなのは、自分らしくない
だから、何もしなかったから、自分は何も、期待なんかしなかった

ムチャな論理で、無理やり、納得しようとする
だが、それで誤魔化せるのは、理性だけで
感情は、誤魔化されてはくれなかった







281: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 03:24:03.03 ID:EWZ50dke0
家に帰ってからも、ツンは眠れず、朝を迎えた
眠れない夜の間、ずっと考え、出した結論は、

ξ゚-゚)ξ 「昨日は、何も無かった。何も無かったの」

昨日、自分は、ドクオに何もしていない
制服の事なんて、何も知らないし、工房にだって入っていない
ドクオが一人で、工房で作業していて、勝手に眠り込んだだけ
たまたま、隣の美術室で、自分も作業していたけれど、何にも関係ない

一晩かけて、そう、言い聞かせた

ξ゚-゚)ξ 「よしっ」

気持ちがゆらいでしまわないうちに、家を出る
早めに学校に着きさえすれば、後はドクオを待つだけで済む
六時前に家を出るのは……なんとなく、だ

ξ゚-゚)ξ 「会ったら、笑ってやろ」

気がついたらいなかったと、言ってきたら、絶対に笑い飛ばしてやろう



282: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 03:26:04.00 ID:EWZ50dke0
――寝起きのまま、寝ぼけていてくれたら、こんな気持ちにはならなかった
――あいつらと違って、お前はどうでもいいって顔をしていてくれれば、良かったのに

言葉が出ないのは、何故か胸の奥に、ドクオの笑顔が、詰まってしまったから
口を開けば、用意された誤魔化しのセリフは遮られて、
とてもではないが、声にならないでいると、ドクオは肩を縦に揺らせた

('A`) 「く、くくく……w ああ、なるほどな?w」
ξ゚听)ξ 「な、なによ……?」
('A`) 「いや。わりぃ、って思ってよ」

悪いと思って、何故笑うのか、と、怒る以前に、悪いと思う意味もわからない
いぶかしみ、首をかしげる。すると、ドクオはなにやら訳知り顔で、何度も頷いた
まるで、何もかもを、見透かしているように

('A`) 「まぁ、アレだよな、そりゃ言えねぇよな……」
ξ゚-゚)ξ 「なっ……なんなのよ?」

そして、やたらと優しい笑顔で

('A`) 「ツン……お前も、学校で一晩明かしたんだな?」
ξ゚听)ξ 「………」

なんか、見当はずれなことを言った



287: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 03:43:03.19 ID:EWZ50dke0
しかし、ツンが、絶句したのは、そこではなかった

('A`) 「アレが妙な事言ってたけど、そういう事か……」

んなわけねっつのに、と、疲れた笑いをして、同意を求めてくるが、
ツンは、直前のセリフを反芻していた
……今、ドクオは……
返事を待たずにドクオは、独り言のように続ける

('A`) 「つか、逆に退学もんだろ、なぁ?」
ξ゚听)ξ 「…………」

下を向き、ツンはドクオに顔が見えないよう、静かに……笑った

('A`) 「? どうし……」
ξ#゚听)ξ 「……一緒に、するなッ!」

―――ギュオンッ!

('A`) 「グボッ!?」

コークスクリュー気味に放たれた、右のアッパーは、ドクオのみぞおちを貫いた
どしゃり、と、膝から崩れ落ちるドクオを、物理的に見下ろし

ξ#゚听)ξ 「ドクオじゃあるまいし、そんなわけないでしょ?」

吐き捨てるように、いや、マジでつば吐き捨てながら言ったツンは、
恐ろしいことに、笑っていた



291: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/30(日) 03:55:52.91 ID:EWZ50dke0
さっき、ドクオはたしかに呼んだ。ツンの名前を

……今まで、お前としか、呼ばれなかったけれど

ブーンやショボンと同じように、名前で、呼んでくれた
きっと、ドクオにとっては、些細なことなのだろうが、
言われた側のツンは、そうは思わなかった

……ちゃんと、名前で呼んでくれた

友人に絡む、その他大勢の一人ではなく、
人物の一人として、名前を呼んでくれた
その瞬間、何か、色々な物が吹き飛んだ

……あたしも、友達、なのかな

ドクオが、そうやって、向き合ってくれるなら、
もう、取り繕うのは、止めよう、と、思った
顔を会わせて、さようならの関係じゃないのなら、
ちゃんと向き合おう……友達として

('A`) 「まて……おれが、何をした…………?」

だが、友情確認を拳で行うのは止めたほうがいいと思う



400: ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/31(月) 00:52:23.76 ID:krBM4eMw0
('A`) 「……」

――自宅に帰ったドクオは、結局眠る事無く、無意味にタバコを吹かし


ξ゚-゚)ξ 「ふ、ぁ〜……っ」

――教室に入ったツンは、自分の席で安らかに眠り


川゚-゚) 「行くぞ、ブーン」

――迎えに行ったクーは、そっとブーンの横に立ち


( ^ω^) 「うん! カーチャン、行ってくるお!」

――家を出たブーンは、逸る気持ちを抑え


四人は四人ともに、何かしらの思いを秘め
今日という日が、はじまる



401: 小ネタ ◆3mfWSeVk8Q :2007/12/31(月) 00:54:06.97 ID:krBM4eMw0
(´・ω・`)  「…………ぼくは?」

別に忘れたわけじゃないから心配すんな



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