( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです

1:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:16:09.85 ID:CNvvzHtf0
アウターブーン…

それは現実世界の外側にある世界

その世界では現実を超えたあらゆる事が起きる…

このスレを開けばアウターブーンの世界を知る事ができるだろう

ただし「想像力」のない人間には何も見えないだろうが…



4:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:18:14.28 ID:CNvvzHtf0

第一話
「ザ・ワールドウォッチ」

その日は朝から憂鬱な日だった。目を覚ましたらカーチャンがいない。朝飯もない。完璧な遅刻。
だるいだけの学校が終わっても、家で待っているのは週末締め切りのレポートだけ。

それでもいつものように、名前のない歌を口ずさめば、世界は別の色で現れる。

( ^ω^)「ぶんぶぶ〜ん♪」

なんの取り柄もない自分には、アニメのヒーローが輝いて見えた。
強靭な肉体と強力な魔法で悪を倒す勇者。
そして彼らは特殊能力を駆使する。
自分にも類まれな能力があったら冒険の世界が開けるんだろうか?



6:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:19:35.84 ID:CNvvzHtf0
最近の彼らは重い過去を持つ傾向がある。
両親がモンスターに殺されたり、恋人を失っていたり。

それでも、ヒーローには仲間がいる。
暗く湿った洞窟や不気味な神殿。
そこを旅するときは決して一人じゃない。
それなら。胸を躍らすような冒険が待っているのなら、何が犠牲になろうともOKじゃないか。
少なくともそれは今の自分の人生より、はるかに魅力的なはずだ。

( ^ω^)「…お? こんなところに時計が落ちてるお…。」

自分にも類まれな能力があったら冒険の世界が開けるんだろうか?
そう。世界の「時」を止めてしまうような――



8:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:20:33.29 ID:CNvvzHtf0

川゚−゚)「こんにちわ皆さん。アウターブーンの案内人、クーだ。」

川゚−゚)「ある男が見つけたのはアウターブーン製の時計。」

川゚ー゚)「果たして彼にその時計を使いこなす事が出来るだろうか…。」



10:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:23:19.32 ID:CNvvzHtf0

( ^ω^)「うはwwwwwテラキタナスwwwww」

( ^ω^)「ブーンはこんなかっこ悪いデザインの時計には興味ないお!!早く帰ってVIPするお!!」

川゚ー゚)「ちょwwwwwwwww」



13:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:25:44.86 ID:CNvvzHtf0

第二話
「竜玉」

これはひどい。
またやってしまった。
あの男の言い方は少し誇大広告なんじゃないか。

('A`)「ま〜たくだらないモン買っちまったな…。」

すっかり冷め切ったコーヒーを後悔と一緒に飲み干す。
ドクオの部屋にたどり着いたばかりの「超多機能包丁」は、早くもクーリングオフの危機にさらされていた。



15:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:26:51.49 ID:CNvvzHtf0

('A`)「なぁ包丁くん。なんで俺は通販なんかにはまったんだ?」

返事はかえってこない。
いくら超多機能とはいえ、ドクオの問いに答えられるような人工知能は備わっていないようだ。
ジャ○ネットもそこまで期待されてるとは思っていない。

ピンポーン

生活必需品しかない簡素な部屋に、来訪を告げる電子音が響いた。



16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:28:30.40 ID:CNvvzHtf0

川゚−゚)「はんこを頼む。」
('A`)「ああ、はいはい…よっと。」
川゚ー゚)「ありがとう。では失礼する。」

えらく冷めた人だな。
ってかあの口調はどうなんだ??
最近の社会人ってのは言葉遣いってものを教えないのか。

('A`)「ったく。 …なんだコレ?こんなの注文したっけな〜。」

飾りつけもなんもない。
会社名も入ってなければ、宛名もない。
とても簡素な箱だった。

真っ黒という点を除いては。



17:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:30:57.84 ID:CNvvzHtf0

('A`)「…おいおい、勢いではんこ押しちゃったよ。サギとかじゃないだろうな…。」

蓋を開けてみる。
中には黒い発泡スチロール。
中央の、コブシ大の黒い石を守っている。

途端、寒気がした。
パンドラの箱。
曰く、開けてはいけないもの。



20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:33:23.99 ID:CNvvzHtf0

('A`)「…? なんかあるぞ。「竜玉 Made in ナメック」??」

笑い飛ばして石をつまみあげる。
黒い。ただひたすらに黒い。
滑らかな曲面に自分の歪んだ顔が…映らない。
ドクオは黒に引きずり込まれる錯覚を覚え、それを投げ飛ばした。

●「いてっ!!」

ドクオは自分の聴覚を疑わなかった。

石が、今確かに、喋った。

('A`)「…はぁ?」


川゚−゚)「アウターブーンへの入り口はどこにでもある。彼もまた、異界への扉を開けてしまったようだ。」



21:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:35:24.10 ID:CNvvzHtf0

●「なにすんだよ!!いてえじゃねえか!!」

怒鳴り散らす黒い石にドクオは背を向けた。

●「ちょっ、シカトかよ!!おーい!!」
('A`)「…。」

数分後、部屋にはコーヒーの匂いが立ち込めた。
ドクオは台所からマグカップを二つ、お盆に載せて運んできた。

('A`)「砂糖は?」
●「あ、ふたつお願いします。って飲めねーよバカ!!」
('A`)「へぇ、随分人間くさく喋るんだな。」
●「いやいやいや、お前驚かないのか?石が喋ってるのなんて初めて見ただろ??」
('A`)「ああ、まぁ初めてだけど…。」



22:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:38:14.26 ID:CNvvzHtf0

黒い石はたじろいだ。
予想もしない反応。
最近のガキはここまで冷めているのか?
ゲームと現実の区別がつかないのか?

ドクオは落ち着き払った様子でタバコに火を点けた。
中学の頃からずっと相棒はセブンスター。浮気はしない。
深く、肺に満たした煙を黒い石に吹きかける。

●「ぶわ!!なにすんだバカ!!」
('A`)「俺なりに気持ちを落ち着けてんだよ。」

ドクオは口の端を吊り上げた。

('A`)「で、何ができるんだお前。」



23:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:39:51.48 ID:CNvvzHtf0

「3つ、願い事を叶えてやる」
実にシンプルな説明だった。
あまりに現実離れした馬鹿げた回答に、メーカーや製造元を聞く気もなかった。
しかしこの非現実をすんなり受け止めている自分がいる。

気が狂った?
いや俺は正常だ。
狂ってるのは俺を取り巻く世界だけ―――



24:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:53:24.66 ID:CNvvzHtf0

('A`)「いつも考えてたんだ。なぜ漫画や物語の世界ではこういうチャンスで馬鹿を見るのかって。」
●「?」
('A`)「願い事の回数を無制限にしろ。それが一つ目の願いだ。」
●「…それは出来ない。」

黒い玉は頭から否定した自分の答えに、ドクオが食って掛かるかと思った。
しかし、「やっぱりな」とだけ言ってドクオは押し黙った。



25:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/23(火) 23:58:29.88 ID:CNvvzHtf0

金が欲しいと願う。
事故で死んで慰謝料やら保険金やら口座に振り込まれる。
(金はだめだ)

物を燃やす能力を願う。
「物に触れただけで燃やせるじゃないか」と、火達磨にされる。
ゲームのキャラの様な能力を手に入れたいと願う。
TVの画面に閉じ込められる。
(超能力なんて手に入れてもなぁ)

世界を統べる王になりたいと願う。
俺の世界。この部屋限定、小さな冠の王になる。
(別に権力には興味ないしな)

死んだ家族の蘇生を願う。
B級映画よろしく、ゾンビが墓から這い出てくる。
(今更出てきてもらっても困る)

だめだ。いざとなったら何も思い浮かばない。
というよりも自分の無欲さに驚いた。
世の中がもっと面白くなること。
何も、思いつかない。



27:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:00:20.50 ID:LJMRckPX0

ピンポーン

本日二度目の来訪を告げるチャイムがドクオの思考を中断させた。
黒い石が忠告する。

●「俺の声はお前にしか聞こえてないからな。」
('A`)「意外と優しいんだな。」

俺にしか認識できない非現実を人に話しても、基地外扱いされて終わりだ。
けだるい午後の来訪者はブーンとショボン。
今日は日曜日。大学生の二人も暇を持て余しているのだろう。

( ^ω^)「おいすーwwwwwww」
(´・ω・`)「ドクオー。お邪魔するよー。」



28:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:01:30.54 ID:LJMRckPX0

ドクオは二人を追い返した。
フリーターのドクオは基本的にいつも家にいる。
バイトで家を開ける時も勝手に出入りすることを許されている。
かなり珍しい友人の行動に二人はただならぬ空気を感じた。

(´・ω・`)「なんかあったのかな。心配だねブーン」
( ^ω^)「邪魔しちゃダメだお。」
(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「きっと新しいエロゲ買ったんだお!!邪魔せず早く終わらせて貸してもらうおwwwww」
(´・ω・`)「…。」



29:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:02:35.93 ID:LJMRckPX0

('A`)「あの二人の、ウチを訪ねて追い返された記憶を消してみてくれ。」

唐突に言い放った。黒い石はとまどいながらも願いを聞き入れた。

●「…おやすい御用だ。」

ピンポーン



30:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:04:47.20 ID:LJMRckPX0

('A`)「悪い、今ちょっと立て込んでるんだ。また今度。」

二人を追い返し、部屋に戻りまたセブンスターに火を点けた。
ドクオの頭がけだるく満たされる。

('A`)「(どうやら本当に力はあるらしいな)」
●「さぁ二つ目の願いは?」

どこかwktkしているような声。願いの一つは消化された。



31:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:11:55.82 ID:LJMRckPX0

('A`)「…あんた、いつからその姿なんだ?」
●「!?」
('A`)「あんたも元は人間だろう?三つ目の願いを叶えたなれの果てだ。」

ドクオは質問する口調で言ったが、既に確信めいていた。

('A`)「三つ目の願いを叶えた人間はまたどこかの誰かの願いを叶えに行く。反吐が出るシステムだ。」
●「…!!」

表情が読み取れなくても、沈黙が質問の正否と焦りを表していた。
「なぜわかったかって?」
前置きして、煙を吐き出す。

('A`)「あんた随分人間くさいしな。それにこういうのは使い古されたありがちな展開だ。」



32:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:13:18.08 ID:LJMRckPX0

('A`)「二つ目まで叶えさせてあんたを捨てる。」

黒い石はうなだれた。実際にうなだれた首や体があるわけではないが、しょげたイメージが伝わってくる。

('A`)「とまぁ普通の人間ならそうするかもしれんが…。」
('A`)「石っころになるのも悪くない。」
●「…何!?」

つまらないんだよ。この世界は。何をしても結果が読める。自信過剰なわけじゃない。
世界的大スターに、大富豪に、首相になったところで待っているのは「退屈」だ。
…ヒーローに憧れるあいつの気持ちも分かる。
非現実に直面して、体の中で血が踊り狂った。胸の鼓動を感じた。
生きてるって実感できた。
こんな気分は久々だった。



33:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:14:52.43 ID:LJMRckPX0

●「さっき訪ねてきたやつらは?あいつらも退屈なのか?」
('A`)「…いや…あいつらは…。」

ブーンとショボンの姿を思い浮かべる。
いつも陽気に駆け回り自分とは正反対のブーン。
どこか自信なさげでとても繊細なショボン。

二人とも自分にはないものを持っている。
(自分が持ってないものなんて、それこそ世の中に溢れていそうだが)

あいつらと過ごすのは、退屈じゃない。



34:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:23:05.76 ID:LJMRckPX0

●「…俺からは質問されない限りルールを話す事ができない。」
('A`)「?」

●「お前なら見つけられるはずだ。連鎖を終わらす鉄槌を。」

●「くそったれな世界をぶち壊すのは異世界の力じゃない。」

●「いつだってお前自身の力だ。」

('A`)「…生意気だな。まぁいいだろう。」

('A`)「二つ目の願いは――」



36:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 00:29:02.86 ID:LJMRckPX0

〜数日後〜

相変わらず質素な部屋。
ブーンが食い散らかした菓子屑が、唯一生活感を匂わせている。
変わった事といえば、一人、住人が増えたことだ。

( ゚∀゚)「なぁなぁドクオ!!」

( ゚∀゚)「三つ目の願いさ、俺に決めさせてもらってもいいか?」
('A`)「? いいけどもうあの力は失われたんじゃねえのか。」

( ゚∀゚)「三つ目の願いは、さ。」



―――俺と、友達になってくれ。



川゚−゚)「異界からの届け物。アウターブーンショッピングは皆様のご利用をお待ちしている。」

川゚ー゚)「ただしクーリングオフは通用しないのであしからず。」



44:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:24:24.72 ID:LJMRckPX0

第三話
「喰」

もうだめだ。部屋からは出られない。
お腹が痛い。トイレにも行けない。
なんでこんなことになったの?
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで



45:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:25:00.67 ID:LJMRckPX0

部屋の隅でうずくまる。冷や汗が頬を伝う。
机の上にはあの忌々しい「アレ」がいる。
もうその中身を見る気にはなれない。

扉を叩く音がする。

どこか遠い音に聞こえる。

扉を叩く音がする。

「おいこの馬鹿野郎!!ドア開けろっつってんだろ!!」

―――ドクオだ



47:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:25:30.21 ID:LJMRckPX0

急いで鍵に手をかける。手元が震えてうまくいかない。

「ドアから離れてろよ!!」

???
それじゃ鍵を外せな

頭の中でけたたましい音が響いた。
ドクオがドアを蹴破ったみたいだ。
外れたドアが鼻面に直撃して、頭の上で星が飛ぶ。

('A`)「…足がいてえ。」

ドクオ。それはウチのドアだよ…。

(;^ω^)「ショボン!!大丈夫かお!?」



48:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:28:01.28 ID:LJMRckPX0

ドクオ。

ブーン。

見慣れた顔がそこにある。安心して腰が抜けた。
へにゃへにゃと座り込む。
頬を伝うのは汗だけじゃないみたいだ。

(´;ω;`)「ううっ、ひっぐ…う、ふぅ…。」
( ^ω^)「きめえwwwwwwww」
(´;ω;`)「ひど、いよぅ…っぐ…。」
('A`)「落ち着けショボン。きもいのは仕方ない。」

(´;ω;`)「ふ、二人して、ひどい…。」
('A`)「いいから。…何があったんだ?」

ドクオが僕をなだめて、事情を聞いてくる。
それよりトイレに行きたかった。



49:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:29:09.56 ID:LJMRckPX0

部屋からは出ないと駄々をこねる僕に、簡易トイレが用意された。
皆には外に出てもらう。ペットボトルはあっという間に黄色い液体で満たされた。

( ^ω^)「もう入ってもいいかおー?」

小声で返事をし、二人が部屋に入ってくる。
いつもうんこちんこで騒ぐブーンは、部屋で用を足す僕を笑わなかった。
二人はいつだって僕の味方だ。
中学から三人はずっと一緒。
また僕はしょっぱい海に溺れた。



50:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:34:25.88 ID:LJMRckPX0

(;^ω^)「ちょ、なんで泣くんだお!泣くなお!」
('A`)「おばさんも心配してるぞ。ほら。飯もすっかり冷めちまってる。」

ドクオは部屋の前に置いてあったお盆を持ってきた。
湯気こそたってないが、おいしそうなご飯。
作ってくれたお母さんの顔が頭に浮かぶ。
涙が止まらなかった。



51:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:37:16.47 ID:LJMRckPX0

今度は二人とも無言で僕を待つ。
ドクオがポケットからタバコを取り出す。
僕の部屋は禁煙なのに、何故かドクオ専用の灰皿がある。
じっとしてるのが苦手なブーンも、隣にちょこんと座って僕の口が開くのを待ってる。

二人をすぐに呼びたかった。
助けを求めたかった。
お母さんと同じ位信頼してる二人。
大好きな二人だから呼べなかった。

でも…でも二人は扉を蹴破ってまで助けに来てくれた。
全部話さなきゃ。二人なら僕を助けてくれるかもしれない。



54:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:00:44.85 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「古本かぁ。」

あの日僕は近所のフリマ会場に来ていた。
大きな公園で、規模は結構でかい。

(´・ω・`)「お、ジャンプがある。これ何年前のだろ??」
川゚−゚)「立ち読みはやめてくれよ。」

古本バザーを開いていた女の人はどこか神秘的で綺麗な人だった。
これだけ出展してる雑踏の中で、なぜだか僕の足はここで止まったんだ。

「アレ」に呼ばれていたのかもしれない。



55:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:01:16.16 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「なにこれ?表紙になんもないけど。」

くすんだ緑色の本が目に留まった。
百科事典みたいなぶ厚さ。
紐で何十に縛られた本。
それは厳重に封印されているかのように見えた。

(´・ω・`)「…へんなの。あの、コレとコレください。」
川゚ー゚)「毎度あり。」

ジャンプと「本」と、あと何点かの収穫を手に、僕は家に帰った。



56:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:02:00.18 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「なにこれ?表紙になんもないけど。」

くすんだ緑色の本が目に留まった。
百科事典みたいなぶ厚さ。
紐で何十に縛られた本。
それは厳重に封印されているかのように見えた。

(´・ω・`)「…へんなの。あの、コレとコレください。」
川゚ー゚)「毎度あり。」

ジャンプと「本」と、あと何点かの収穫を手に、僕は家に帰った。



58:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:02:54.64 ID:LJMRckPX0

ベッドの上でジャンプを読みながらくつろいでた。

(´・ω・`)「すごいな〜この時代のジャンプは正に黄金時代だよな〜。」
(´・ω・`)「るろ剣ナツカシスwwwww」

あっという間に読み終えたジャンプを放り投げた僕は、急にあの「本」が気になってきた。
少しの期待と、少しの不安と。
生唾を飲み込み、「封印」を解く。

(´・ω・`)「…!!」



59:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:03:17.65 ID:LJMRckPX0

○月×日

フリマデ、ヘンナホンヲカウ。



60:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:04:49.19 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「…やられた。」

バーボンか。
食らってる人はいつもこんな気分なのか。
100円のときめき。
100円分の価値はあったよね。
良しとしよう。

そうだ、ブーン達にこのジャンプ見せてあげよう。
机に置いてある携帯を取りに、ベッドから起き上がった。
おろろ?
足がしびれてる。力が入らない。

僕は無様にベッドから転げ落ちた。



65:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:31:22.43 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「いたたた…ん?」

転んだ拍子で開かれたページが目に入る。

○月×日

ベッドカラコロゲオチル

一目見たとき、意味がわからなかった。
いや転げ落ちるって言われても…先に言ってよ。
僕の突っ込みも意味がわからない。



66:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:32:01.16 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「いたたた…ん?」

転んだ拍子で開かれたページが目に入る。

○月×日

ベッドカラコロゲオチル

一目見たとき、意味がわからなかった。
いや転げ落ちるって言われても…先に言ってよ。
僕の突っ込みも意味がわからない。



69:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:41:44.54 ID:LJMRckPX0

急に背筋が冷たくなった。
なんで!?さっきまでは…!!
慌てて周りを見渡す。
誰もいない。
この部屋には僕しかいない。

(´・ω・`)「こここれ、今の僕の事…!?」

金縛りにあったように動けなかった。
変な体勢で「本」をにらみ続ける。
首が痛い。何も起こらない。寒気は止まらない…。



70:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:42:55.01 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「ド、ドクオ…!!」

友人の顔が思い浮かぶ。
いつもけだるそうな顔。
怖いものなんて何もないと語る口。
世の中に対して何か悟りでも開いてるような目。
だからこそ、頼りになる。



70:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:42:55.01 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「ド、ドクオ…!!」

友人の顔が思い浮かぶ。
いつもけだるそうな顔。
怖いものなんて何もないと語る口。
世の中に対して何か悟りでも開いてるような目。
だからこそ、頼りになる。



18:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:09:14.65 ID:o7sIifTt0

恐る恐る本を手に取り、机の上の携帯と交換する。
開いたページはそのまま。

(´・ω・`)「ドクオ…!!早く出て…!!」

呼び出し音がやけにでかく聞こえる。


('A`)『あいよ』
(´・ω・`)「ドク…っつ!?」

突然足の裏に激痛が走った。びっくりして携帯を落とす。

(´・ω・`)「痛いっ!?ななななに!?」

足の裏にはぞっとするほど大量の画鋲。
歩いていない。立っていただけなのに。
思わず机上の本に目を落とす。



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:09:40.26 ID:o7sIifTt0

○月×日

ヘヤデガビョウヲフム



20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:10:09.49 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「も、もういやだ…」

捨てなきゃ。この「本」にはきっとお化けが取り付いてる。
もうコレと一緒にいたくない。
早く捨ててしまいたい。



21:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:11:12.59 ID:o7sIifTt0

○月×日

ホンヲナゲステヨウト、マドヲアケ

アヤマッテテンラクスル

(´・ω・`)「……!!」

さっきまでと、違う……!?



22:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:11:59.27 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクト


僕の体は凍りついた。



23:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:12:14.50 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクトチュウ

クルマニハネラ


目の前で、少しずつ文字が浮かび上がっていく。



24:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:12:29.04 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクトチュウ

クルマニハネラレテ

クビガトブ


(´・ω・`)「…ああ…ああああ…!!」



25:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:13:36.29 ID:o7sIifTt0

僕は夢中で部屋を飛び出した。恐怖で頭がいっぱいだった。
どこをどう走ったか分からない。
気づいたらドクオの家に向かう道にいた。
ドクオの部屋に駆け込みたかったけど、
あの「本」に書いてある事が現実になったら……。

途中で道を引き返した。ドクオに会ったら
「阿保らしい。そういうのは絶対仕掛けがあんだよ」
と言って、笑い飛ばしてくれるだろう。
でも、もし…。

すぐ後ろで甲高い音が聞こえた。ドラマとかで主役が事故に遭う時に聞くあの音。

さっきまで僕がいた場所に、車が突っ込んでいた。
運転席には誰も乗っていなかった。



27:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:16:48.92 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「それから部屋に戻ってきたんだ」
(;^ω^)「こ、この本かお?」

○月×日

ゲンカンデゴウトウニメダマヲクリヌカレル

○月×日

カイダンヲフミハズシテアタマガワレル

○月×日

ヘヤノマエノユカガヌケテリョウアシヲモガレル

(lli^ω^)「……」



28:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:18:21.35 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「もう、もう部屋からも出られなくなったんだよ」
('A`)「……」

ドクオは何か考え込むように腕を組んで壁に寄りかかっている。
灰皿のタバコは気づけばいっぱいになっていた。

(;^ω^)「!! 消しゴム!!こんなの消しゴムで消しちゃえば…!!」
(´・ω・`)「消えないんだ。燃やそうとしてもダメだった」



29:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:18:55.09 ID:o7sIifTt0

(´;ω;`)「僕は、僕の人生はその「本」に食べられちゃったんだよ!!
(´;ω;`)「ねぇどうしようドクオ!!もうダメなの!?この部屋でずっと過ごすしか…」

('A`)「あれ?ないな…どこだ?」
(´;ω;`)「ド、ドクオ…聞いてるの??」

(;^ω^)「…ショ、ショボン…」
(´;ω;`)「うう…いやだよこんなの…ずっと…部屋から出られないなんて…」

(;^ω^)「ショボン!!」
(´;ω;`)「……?」



30:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:19:24.08 ID:o7sIifTt0

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



31:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:20:56.82 ID:o7sIifTt0

(´;ω;`)「うそ…うそだ…」
(;^ω^)「うう…!!」

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



33:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:21:26.66 ID:o7sIifTt0

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



34:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:22:04.99 ID:o7sIifTt0

あっという間にページが埋め尽くされる。
勝手にページがめくれ、次々と死の宣告が羅列されていく。

(´;ω;`)「あああ…あああああああああああ!!!!」
(;^ω^)「ショボン!!おち、おちつくくお!!」

('A`)「あった」
(;^ω^)「ドクオなにしてるお!!ショボンが…!!」
('A`)「ブーン!!最後のページを開け!!」
(;^ω^)「!?」



35:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:22:24.33 ID:o7sIifTt0

血が抜けていく感覚。
視界が白いカーテンがかかる。
頭が重い。
こんな簡単に幕が下りるのか。
もうだめ
なにも考えら

('A`)「ページに書いてあることは実行してもらわないとな」

(´;ω;`)「……あれ??」

目の前に広がる景色は花畑でもなく川でもなく、見慣れたドクオとブーンの顔。
口の端を吊り上げたニヒルな笑み。
心配そうに覗き込む優しい眼差し。



36:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:23:02.89 ID:o7sIifTt0

('A`)「ちゃんとカタカナで書いたぜ?」

ドクオは太い油性マジックを放り投げる。
それを合図に「本」から火が立ち上る。


('A`)「ショボンハ、ホンヲカウマエノジョウタイデ、イキカエル」

('A`)「コレイコウ、ナニモカキコメズニ、ホンハショウメツスルってか」

(;^ω^)「ドクオ!!コレ……!!」

('A`)「ああ、その前にもう一つ。ショボンなりに怖い目に合わされたみたいだからな。慰謝料くらいバチはあたらんだろ」

燃え尽きた本の灰の中から、分厚い紙の束が顔を出した。



37:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:23:19.27 ID:o7sIifTt0

川゚−゚)「確定している不幸は避けようがなく、理不尽なもの」

川゚−゚)「皆さんの家には怪しい骨董品が埃を被っていたりしないだろうか?」

川゚−゚)「もしかしたらそこには、アウターブーンの品物が混じっているかもしれない」



48:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:40:07.73 ID:o7sIifTt0

第四話
「不思議なぬこの実」

<ヽ`∀´>「はぁ……はぁ……」
(;・∀・)「(ち、痴漢だ……!!)」

通学の電車の中。
ぎゅうぎゅうに押しつぶされる僕の視界に、
こっそりお尻をまさぐる手が見えた。

<ヽ`∀´>「はぁ……はぁ……」
川゚−゚)「……」

被害者は…すごい綺麗な女の人。周りは誰も気づいてないみたい。
痴漢の現場なんて初めての遭遇だ。
女の人もきっと怖くて文句が言えないんだ。
こ、ここは、僕が、やめさせないと……!!



49:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:42:01.57 ID:o7sIifTt0

(;・∀・)「や、やめろょ…」

つい小声になってしまった。
独り言みたいで恥ずかしい。

川゚−゚)「……」
( ・∀・)「(え…?)」

僕が意を決して大声を出そうとした時、女の人が呟くのが聞こえた。
「下手くそ」
とか言ったような……?



50:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:50:25.86 ID:o7sIifTt0

<ヽ`∀´>「あひぃ!!」

女の人が後ろ手に男の股間をぎゅって、握ったように見えた。
途端、男は悲鳴を上げてその場に座り込んだ。
周りの人もびっくりして男と距離を取ろうとする。

<ヽ`∀´>「あふっ!!あふっ!!」

男の股間がみるみる黒いシミを作っていく。
おもらし?
……若干白いような……?
それになんだかイカ臭い。

(;・∀・)「(えええええええ!?あれってまさか!?)」

いやいやいや。あんなに出ないでしょ。
それとも世の中にはああいう人もいるの?
少なくとも僕はあんなに……



51:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:59:33.28 ID:o7sIifTt0

川゚ー゚)

女の人がこっち見てる!!
うわ、緊張、やっぱすごい綺麗…。

女の人の笑顔に心奪われていると、ドアが開いて周りが波のようにうねりだした。
僕は波にのまれてホームに強制移動させられる。

川゚ー゚)「きみ」
(;・∀・)「へ?」

女の人に腕をつかまれて人気のないとこまで引っ張られた。
何がなんだがわからない僕に、女の人はまたあの笑顔で話しかける。



52:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:00:57.87 ID:o7sIifTt0

川゚ー゚)「さっき私のことを助けようとしてくれていたろう?」
(;・∀・)「え? いや、そんな……」

川゚ー゚)「ありがとう」
(;・∀・)「さ、さっきあの男に何をしたんでしか??」

ちょっと噛んじゃった。
僕の質問は聞こえていないかのように怪しく微笑んだ後、
正面からピタリと体をくっつけてきた。

(;・∀・)「!!!?!?!?!?!?」
川゚ー゚)「きみも、興奮してしまったのかな……??」



56:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:07:24.62 ID:o7sIifTt0

耳元で囁かれ、体がビクって痙攣する。
イイニオイがする。
そ、それに胸があたって……
着やせするタイプってヤツ??

川゚ー゚)「まだ中学生か? 意外と大きいんだな……」

僕の股間は学生ズボン越しでもはっきりわかるくらいパンパンに膨らんでいた。
それを細い指でなぞる。

(;・∀・)「ちょ、ちょ、やめ、なに!?」



59:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:12:33.74 ID:o7sIifTt0

川゚ー゚)「フフ、すまない。おふざけがすぎたようだ」

ゆっくりと、女の人が離れていく。
後ろ髪を引かれる思いがした。

川゚ー゚)「それとも続けた方がよかったか?私はかまわないぞ……」

(;・∀・)「〜〜〜っ!!」

川゚ー゚)「待て!!」

動転して走り去ろうとした僕の腕を再び掴み、学生服のポケットに手を突っ込む。



60:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:13:02.13 ID:o7sIifTt0

川゚ー゚)「これはほんのお礼だ。まぁ頼まれていたモノでもあるんだが……」
(;・∀・)「え?」

振り向いた先には、もう女の人の姿はなかった。

ポケットの中には見たことのない不思議な木の実。
まだ残る胸の感触。
お化けとは思えないリアルないやらしさ。
こんなの誰にも話せない。
だって誰も信じないでしょ?



62:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:18:36.38 ID:o7sIifTt0

('A`)「ふ〜ん」

思わず興味なさげな返事をしてしまった。
従兄弟のモララーはすねたようにうつむく。
急に「相談したいコトがある」なんて訪ねてきたらコレか。
いや、まぁ嘘を言うような奴じゃないんだが……。

( ・∀・)「だから嘘じゃないって!!」

うん。まぁそうだろうな。
……第一、俺も最近変な体験してるしな。

( ゚∀゚)「おっぱい…(たっちまった……)」

目の前の新しい同居人はちょっと前まで「玉」だった、なんてのも誰も信じまい。
それにその女……多分同じ女なんじゃないだろうか。



63:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:20:10.39 ID:o7sIifTt0

('A`)「……なぁ。そのゲージはなんだ?」
( ・∀・)「ああ、コレも見てもらおうと思って」

そう言ってモララーは小型のゲージからぬこをとりだす。
新しいペットを見せられても興味ないんだが。

  木
(=・ω・)「にゃ!」

('A`)「……」
( ゚∀゚)「……」
( ・∀・)「……」



64:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:20:52.25 ID:o7sIifTt0

('A`)「……頭のコレ、何?」
( ・∀・)「やっぱりドクオ兄ちゃん見えるの!?」

('A`)「…モララー。動物虐待はよくないぞ。」
(;・∀・)「ち、違うよ!!最初っから生えてたんだって!!」
( ゚∀゚)「最初から?どっかで拾ってきたの?」

(;・∀・)「ううん。あの木の実を植えたら、ぬこが生えてきたんだ」

ジョルジュも俺も、うまくリアクションできなかった。
モララーは慌てて詳しい説明をする。

(;・∀・)「ぬこが生えてきたっていうか…最初は普通に芽が出たんだ。
     ある日、水をやりに行ったら土からぬこが顔出してて…」

根っこが猫でした。

……う〜ん、30点。



66:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:28:03.65 ID:o7sIifTt0

(=・ω・)「にゃ〜」
(;・∀・)「この木、皆見えないって言うんだ!!もしかしたらドクオ兄ちゃんならって思って」

すぐにピンと来た。
三人の共通点は、あの女。
おそらくショボンもこの木が見えるだろう。

('A`)「それで、大丈夫なのか」
( ・∀・)「??」

('A`)「何か変わった事はないのか? 願い事を聞いてきたり、事故を予測するとか」
( ・∀・)「え?うん。大丈夫。ってか何ソレ?」

( ゚∀゚)「名前は?このぬこなんていうんだ?」



67:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:28:47.14 ID:o7sIifTt0
猫の名前
>>70

68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:29:47.92 ID:2cQ4Mc2p0 ?
まっしぐら

69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:30:46.47 ID:i6a47olZ0
ミッキー

70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:30:54.62 ID:3SiPKijx0
穢れてないうんこ

71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:30:59.70 ID:aawCU2IC0
ドルフィン刑事

72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:31:02.63 ID:66A1jra20
ワッフルワッフル

73:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:33:36.88 ID:o7sIifTt0
>>70
orz

74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:34:45.58 ID:2cQ4Mc2p0 ?
無理に安価するから・・・

75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/27(土) 15:35:55.73 ID:66A1jra20
いや、愛嬌ある名前だと思うよ・・・うん。



76:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:36:05.20 ID:o7sIifTt0

( ・∀・)「まだ名前つけてないんだ」
( ゚∀゚)「よし!!じゃあ俺が名付け親になってやろう!!」

( ゚∀゚)「『穢れてないうんこ』!!どうだ!?」


( ・∀・)「……再安価していい?」
('A`)「ダメ」



77:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:42:13.76 ID:o7sIifTt0

モララーによくなついてる。
危害を加えるようなもんじゃないのか。

(=・ω・)「ぶにゃ?」
('A`)「……」

(=・ω・)「うな〜」
('A`*)「……」

(;゚∀゚)「(…ドクオ、ぬこ好きなのか…)」
(;・∀・)「(…にやけてるドクオ兄ちゃん気持ち悪い…)」



78:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 15:44:16.82 ID:o7sIifTt0

オチなしEND。
エロいの書けって要望があったからやってみたけどgdgdになった。
反省はしていない。
官能小説書ける人はすごいね!!



3:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:05:48.70 ID:o7sIifTt0

第五話
「悪魔の砂時計」


僕の名前はヒッキー。
最近ひきこもりがちな高校二年生だ。
何か悩みがあってここに来てるわけじゃない。
ただ、なんとなく。

川゚−゚)「ゆっくり、この水晶を見て…」

(-_-)「……」



4:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:09:43.45 ID:o7sIifTt0

昼夜逆転した生活。
夜中の繁華街をふらついてたら、路地裏で占いを見つけた。
僕はこういうの信じない。
お金の無駄かもしれなかったけど、興味がないといえば嘘になる。

川゚−゚)「…何かが見える」

水晶の中には何も見えない。
不釣合いな値段の壷を買わされる前に帰ろうかな……。



5:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:11:38.02 ID:o7sIifTt0

川゚−゚)「…長い病院生活…それに意識がないみたいだ」
(-_-)「へ?」

金運がある、とか水難の相が出てる、とか言われるのかと思った。
随分あからさまだな。やっぱり壷でも買わす気か?

川゚−゚)「……未来を変えたいか?」
(-_-)「…うん。そりゃ、まぁ……」

川゚−゚)「これをあげよう」

女は奇妙なデザインの砂時計を取り出した。
悪魔のモチーフ。
……趣味が悪い。
ちょっと帰りたくなった。

女の話によるとどうやらこれで未来に飛べるらしい。
いますぐこの場を立ち去りたかった。



7:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:20:12.21 ID:o7sIifTt0

川゚−゚)「満月の晩に逆さまにしろ。場所はキミの部屋でいい。電気は点けちゃダメだ」

川゚−゚)「それともう一つ。砂を完璧に落としきってはいけない」

川゚−゚)「必ず全て落ちきる前にひっくり返せ」

必ずだ、と念を押された。
あまり食いつくのもアレだったので、
砂を落としきるとどうなるかは聞かなかった。

ベッドの上の僕に会っても、別に未来変わらなくない??
まぁただで譲ってくれるみたいだし、試してあげようかな……。



8:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:23:30.47 ID:o7sIifTt0

満月の夜。
真っ暗な部屋で一人たたずむ。
手には悪魔の砂時計。

(-_-)「なんか緊張するな…」

緊張で口がかわく。
オイオイ、僕は何を期待している?
オカルトな趣味でもあったか?

(-_-)「えいっ」

高まる鼓動を抑え、砂時計を逆さまにする。
サラサラと、静かに砂が落ち始めた。



9:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:30:51.69 ID:o7sIifTt0

(-_-)「……」

静まり返った部屋で、僕の苦笑いだけが響く。

(-_-)「なんだよ…ちょっと期待してたのに…」

がっかりしてうなだれたその時、
急に目の前の景色が反転した。

ちゃんと立ってられなくなって床に手をつく。
めまいが止まらない。
気持ち…わ……る………………



11:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:36:31.05 ID:o7sIifTt0

気づけば僕は小さな公園にいた。
夕日が西に落ちかかってる。

(-_-)「え? ここは…あれ?部屋は?」

状況がつかめない。
まさか本当にタイムスリップ……?
砂場で遊んでいた子供達が手を振って公園から出て行く。

公園を見回すと呆然と立ちすくむ僕以外に、ベンチに座っている男が一人。
僕を驚いた顔で見つめている。

そりゃそうだ。きっと僕は急にここに現れたんだろう。
目の前に突然人がわいたら誰だって…。



12:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:39:20.33 ID:o7sIifTt0

男「キミは…まさか…ヒッキーかい?」
(-_-)「え?」

男「やっと会えた…!!ヒッキー…!!ああ、15年前のままだ…!!」
(-_-)「な、なに? おじさん誰?」

大きな眼鏡に無精ひげ。
でも僕はあの目を知っている気がする……。

男「いいかい、よく聞いてくれ。あまり時間がない」

男「君は5年後、旅先で事故に合う。それを避けるんだ。5年後の旅行はキャンセルしろ」

(-_-)「なにを言って…!!」



13:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:40:21.68 ID:o7sIifTt0

男「君は事故の後遺症でベッドで寝たきりになる。僕は君の伝言で、15年前の君を待っていたんだ」

信じられない。この男は基地外か?あまり関わりたくないタイプだ。
でも、確かに僕はさっきまで部屋にいた。まさかここは本当に未来なのか……?

男「この公園は君が今住んでる家が取り壊されてその後作られたんだよ」

男「信じてくれ。証明する時間も惜しい」

ここは未来。男の言うことが本当なら15年後。
5年後の事故?旅行に行かなければいいのか?



14:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:44:31.91 ID:o7sIifTt0

(-_-)「お、おかしいよ。未来の僕が事故に合ってるんなら、僕も避けようがないじゃないか!!」

男「きっとコレはパラレルワールドなんだろう。こっちの世界の君は、15年前砂時計を使わなかったらしい」

男は大粒の涙を流していた。

男「君は僕をかばって身代わりになったんだ。頼む。君は無事でいてくれ。ひっくんは幸せになってくれ…!!」

ひっくん?なんでそのあだ名を…

(-_-)「小次郎?小次郎なの!?」

男「そうだよ…ひっくん…」

男「ごめんよ…あのとき、僕のせいで…」

男も気が動転しているらしい。
過去の僕に謝っても仕方ないのに。



15:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:45:10.88 ID:o7sIifTt0

(-_-)「僕が旅行に行かなければ、小次郎もそっちの僕も幸せになれる?」

男「いや、言ったろう。きっとこの世界はパラレルワールドなんだ。未来は直結していないんだよ」

男「ああ、もう時間がない。砂が落ちきってしまう…!!」

僕を「15年前のきみ」と言った。
じゃあ目の前の小次郎は15年後の姿なのか。

32歳の小次郎。
年のわりに白髪が多い。

きっと小次郎は10年間、僕の許しを待っていたんだ。

(-_-)「…ありがとう。小次郎も10年間悩んできたんでしょ?もういいんじゃないかな」

(-_-)「小次郎も、幸せになって」

男「……!!」



16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:45:36.18 ID:o7sIifTt0

小次郎が僕の手を握り、無理やり砂時計をひっくり返す。

歪む意識の中で

「ありがとう」

と聞こえた気がした。



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:51:18.01 ID:o7sIifTt0

(-_-)「…戻ってきた…」

翌晩、また繁華街に繰り出してみたけど、
あの占いの女は見つけられなかった。


パラレルワールドの僕は小次郎をかばって事故にあった。
ベッドで寝たきりになるのはいやだけど、ちょっと自分を誇らしげに思う。

きっとひきこもりの僕を見たら情けないって言うだろうな。

明日は、ちゃんと学校に行こう。

そして小次郎に言うんだ。
目を白黒させるかもしれない。

「5年後の旅行はキャンセルしよう」



20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:51:44.93 ID:o7sIifTt0

川゚−゚)「もしかしたらパラレルワールドのあなたはもっと悲惨な人生を送っているかもしれない」

川゚ー゚)「興味がある方は是非この砂時計を使ってみたらいかがだろうか」

川゚ー゚)「ただし砂が落ちきる前に必ずひっくり返すように」



16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:28:49.67 ID:k5Iz217w0

第六話
「メイン義足」

(#゚д゚)「はぁっ!!はぁっ!!」

73対71。

2点ビハインド。

残り時間は……12秒。

異様な熱気につつまれる体育館でも、俺の頭は常に冷静。

相手のベンチも応援に力が入ってる。
そりゃそうだ。ここまで競りに競った試合なら、2点差じゃ安心できないだろ。

それとももう勝ったつもりのお祭り騒ぎか?
……なめんなよ。



17:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:30:56.29 ID:k5Iz217w0

(#゚д゚)「いくぞオラ……っ!!」

俺にタイトに当たってたディフェンスを一歩で置き去り。
すぐにヘルプが入るが構わず突っ込む。

フリースローレーンに進入し、センターまでもがカバーに出てくる。

一瞬だけ、外にパスを出すフリをする。
逆転スリーを警戒してたんだろう。
案の定、ディフェンスの意識が外に向く。

はっ、こんなフェイクに引っ掛かっちゃって…!!



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:31:39.67 ID:k5Iz217w0

フェイクで作られた空間に、ボールを持って体ごと割り込む。

一歩。

二歩。

この瞬間、雑多な音が聞こえなくなる。

俺に反応して飛んだディフェンスは……3枚か。

ほら、お前らの欲しいボールはここだ―――!!



20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:32:15.51 ID:k5Iz217w0
ピーーーーーーーーーーッ!!

「バスケットカウント!!ワンスロー!!」

審判が二本の指を作り手のひらを下に向けて上下させる。

瞬間、コート上は、いや体育館中が熱狂に包まれた。



21:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:35:19.81 ID:k5Iz217w0

「カウントワンスローで逆転勝ちとかマジ渋い!!」
「先輩!!マジかっこよかったっすよ!!」
「すごいもん見させてもらいました!!」

(#゚д゚)「あ〜、いいからホラ。撤収撤収。すぐに次の試合の奴らアップにくんぞ」

わらわらとよってくる後輩達に興味はない。
俺が好きなのは、あの時間だけ。
肌がチリチリするような、体育館中の視線を独占してるあの時間。

(#゚д゚)「わざと点差をつけずにギリギリの状況作ったって言ったら怒られんだろうな〜」

別に怒られようが引かれようがかまやしないか。
結果試合には勝ってんだし。



22:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:38:59.00 ID:k5Iz217w0
「お疲れ様っした!!」
「おい、マック寄ってかねえ?」

(#゚д゚)「いや。疲れたし寄り道はパスするわ」

部員と別れ、街道を一人トボトボ歩く。
次の試合はいつだっけ。
練習じゃあいつら手ぇ抜くからつまらん。
疲れんのがいやなら部活やめりゃいいのによ。
ああ、早く試合がし



24:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:42:29.42 ID:k5Iz217w0

俺の意識はここで途絶えた。
気づいたら病院のベッドの上。
お袋が心配そうに俺を覗き込んでくる。

なんだ?どうして俺はこんなとこに……体が動かねえ。
医者とお袋がなんか話してる。なに泣いてんの?
あ〜だめだ…眠い……



27:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:46:50.17 ID:k5Iz217w0

やっとまともに話が出来るようになってから、医者が俺に説明してきた。
あの日、俺は酔っ払いの車に轢かれたこと。
特に脳にはダメージがないので頭のほうは大丈夫らしい。

…いや、脳に障害きたして意識が戻らない方がまだマシだった。



……俺の右足が、ない。



28:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:47:18.29 ID:k5Iz217w0

あれからしばらくたった頃、
俺のところに新しい看護婦がやってきた。

川゚−゚)「クーだ。よろしく」
(#゚д゚)「……」

(#゚д゚)「もう、バスケは出来ないんすかね?」
川゚−゚)「……」

(#゚д゚)「別に俺は貧乏だろうが飯がなかろうがバスケさえやれりゃ充分だったんだ」

川゚−゚)「君はバスケットボールをやっていたのか」

女が適当に相槌を打つ。
それがひどく癇に障った。



29:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:51:09.67 ID:k5Iz217w0

(#゚д゚)「なんでだ?俺は別にそれ以外何も望んでいなかったじゃないか」

急に抑えていた何かが爆発した。
腹の下にたまっていた何か。
俺は、ずっと叫びたかった。

(#゚д゚)「おい!!答えろ!!なんで俺の脚がないんだ!!ふざけんな!!」

(#゚д゚)「なんなんだよ…うう…俺…悪いコトなんてしてないじゃないか…」

この女に答えなんて望んじゃいない。
ただ、目を瞑れば聞こえてくるのは床をバッシュがこする音。
馬鹿みたいに声を張るベンチの応援。
俺を包む大歓声……。



30:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:56:01.53 ID:k5Iz217w0
その日の夜、俺はなかなか眠れなかった。
ないはずの足がうずく。
気になって眠れない。

眠剤でももらえないかとナースコールを押す。

川゚−゚)「眠れないのか」

やってきたのは昼間の時の看護婦。
八つ当たりしてしまったのを思い出してしまって、バツがわるい。

(#゚д゚)「あ、あの、薬かなんか出してもらえませんか?」
川゚−゚)「む。わかった。少し待っていろ」

しばらくすると水と錠剤を持って戻ってきた。

(#゚д゚)「あ、どうも」
川゚−゚)「気にするな」



31:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 00:58:34.02 ID:k5Iz217w0

な、なんか不思議な女の人だな……。
薬を飲み終わっても、部屋から出て行こうとしない。

(#゚д゚)「あの……?」
川゚−゚)「眠れないんだろう? 薬が効いてくるまで少し話でもしようか」

……。

………………。

…………………………………………。

なにこの沈黙。

(#゚д゚)「あの」
川゚−゚)「やりたいか?」



32:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:02:26.40 ID:k5Iz217w0

(#゚д゚)「へ?」
川゚−゚)「バスケットボールだ。もう一度やりたいか?」

ああ、バスケね。びっくりした……。
何考えてんだ俺は。なんか恥ずかしいぞオイ。

(#゚д゚)「そりゃあ…当たり前じゃないすか。俺の人生バスケだけだったんだ」

(#゚д゚)「もうこんなの、死んでるのと変わんねーよ」

川゚−゚)「……」

女が急に立ち上がった。
しまった。怒られる。



33:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:02:42.21 ID:k5Iz217w0

川゚−゚)「なら君にチャンスをあたえてもいい」

はい??
「馬鹿なことを言うんじゃない!!」
なんていってぶたれるかと思ったのに。

それに今なんて言った?

……チャンスだって??



34:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:04:46.60 ID:k5Iz217w0

あ、やばい。薬が効いてきた。

川゚−゚)「答えろ。今の自分の人生を捨ててもいいなら、またバスケットをやらせてやろう」

何言ってんだ。
そんなの。決まってる。

「後悔するなよ」

沈んでいく意識の中で

女の人が笑った気がした



36:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:22:05.24 ID:k5Iz217w0

「パスパスパス!!」

汗とバッシュの匂い。

「リバウンド!!落ちるぞ!!」

飛び交う声と体育館の熱気。

俺はまたここに帰ってきた。



41:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:31:39.17 ID:k5Iz217w0

目を覚ましたら俺は知らない部屋にいた。

机の上に積まれた流行のCD。
壁にはビンスのポスター。

なんとなく、この部屋の主は同世代の男を連想した。

これといった焦りはなく、不思議と落ち着いた気持ちでベッドから降りる。
床に手紙が置いてある。
なんの確信もないけど、俺宛だと思った。



44:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:47:43.42 ID:k5Iz217w0

これといった焦りはなく、不思議と落ち着いた気持ちでベッドから降りる。
床に手紙が置いてある。
なんの確信もないけど、俺宛だと思った。

信じられない話だが、どうやら俺はこの部屋の持ち主になったらしい。
前の持ち主も足を切断する事故に合ったそうだ。
どうやらその男の足を俺に移植した、ということだ。

うっすらと、少しづつ記憶が蘇ってくる。
いや蘇るというのは正しくないな。
この足の持ち主だった男の記憶が頭に流れ込んでくる。

その男はどうなったんだろうか?
俺と人生を交換したなら、今頃はベッドの上か。

なんにせよお前にゃ悪いが、
これでまたバスケが出来る……!!



45:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 01:53:03.37 ID:k5Iz217w0

どうやらこの男もバスケ部員だったらしい。
弱小バスケ部のベンチ。
新しい人生をやり直すのに、この環境は悪くない。

「よう、どしたんだよお前。急にウマくなったな」

当たり前だ。俺を誰だと思ってる。

「なんだ!?秘密特訓でもしてたのか!?」

そんなの必要ない。俺は強豪高校のエースだったんだぞ。



46:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:07:34.66 ID:k5Iz217w0

あ〜疲れた。
思ったより体が動かないな。
しかしあのバスケ部の連中は糞だな。
俺の足を引っ張る存在でしかない。

まぁいい。またバスケが出来るんだ。
明日練習試合に備えて寝るとしよう……。



47:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:10:58.82 ID:k5Iz217w0

最悪だ。
負けてしまった。
あんなカスみたいな連中相手に。
それにチームの奴らもなんなんだ。
まるで役に立たない。
これじゃ試合に勝つことなんて出来ない。

それにこの足、うまく動かない気がする。
前の男はよっぽど運動神経がなかったのか。
この足のせいだ。俺が万全ならあんな連中の力なんて借りずに一人で勝てる。



48:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:11:17.67 ID:k5Iz217w0

ダメだ。
公式戦でも負けてしまった。
おまけに俺をスタートから外すだと?
何考えてるんだあの糞監督。
クソッたれ。

クソックソックソックソックソッ

皆クソだ。
全部この足のせいだ。



49:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:12:35.70 ID:k5Iz217w0

もうだめだ。我慢できない。
あんなクソバスケ部にいても、何も面白くない。
今日退部届けを出してきた。あんなとこに未練はない。

全部この足が悪い。

……そうだ。この足が悪いんだ。



50:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:13:16.18 ID:k5Iz217w0

一応太ももに止血のためにゴムを巻いておく。
手にはキラリと光る包丁。

もうこんな足はいらない。
また足を切断すればあの女が来るはず。
そうだ。またやり直せばいい。

意識して足を見ると、つなぎ目のようなものが見えた。
そこに向かって一気に包丁を振り下ろす。

ズブリ

という感触が手に伝わり、痛みを感じる間もなく俺の意識がとんだ。



54:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:40:01.50 ID:k5Iz217w0

川゚−゚)「やあ」

……

川゚−゚)「意識はあるか?」

……頭がいてえ。体も動かねえ……。

川゚−゚)「頭? それは興味深い」

なに言ってやがる?いいから早く次のところに……

川゚−゚)「まぁ待て。一度、自分の姿を見てみたらいい」

うるせえよ。鏡なんかもってくん……!?



55:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:40:33.80 ID:k5Iz217w0

川゚−゚)「教えてくれ。君の頭はどこにあるんだ?」

……なんだよコレ。なんだよこの足は……

川゚−゚)「見ての通り、君の姿だ。見えてるということは目もついてるのか」

おい待て!!なんで俺が切断したほうの足になってんだよ!!

川゚−゚)「気づかなかったのか。移植したのは切断された君の足だよ。体は君のモノじゃない」

どうなってんだ…マジ勘弁してくれ……!!

川゚−゚)「残念だ。折角いい買い手が見つかったのにな。自分の意思で自分を切り落とすとは」



56:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:40:51.87 ID:k5Iz217w0

聞いてねえよ!!なんだよこれ!!俺の、俺の体はどうなったんだ!!

川゚−゚)「処分した」

ちょ……なんてことするんだ!!返してくれ!!俺の体……!!

川゚−゚)「さぁそろそろ行こうか。ああ、もう痛んできてるな」

行くって……どこに……

川゚−゚)「ウチの店の倉庫だよ。……腐りきってしまう前に早く保存液に漬けないとな」

や、やめて……助けて……



や め て く れ ぇ っ ! !



57:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/28(日) 02:41:17.54 ID:k5Iz217w0

川゚−゚)「人生を変えてしまうような事故はいつだって誰にだって起こりうる」

川゚−゚)「もし人生に耐えられなくなったらいつでも呼んでほしい」

川゚ー゚)「アウターブーンならきっと君の要望に答えられるだろう」



8:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:09.00 ID:0IuLjyk60

第七話
「ギコとしぃ」

「クソッたれ!あの野郎、裏切りやがって。絶対許さねえ……!!」

ブルータス、お前もか。はっ、違うな。
俺はあんなクソ野郎のコトなんざこれっぽっちも信用していなかった。
あのクソもハナっから俺を始末する気だったんだろう。

うう……さ、さみぃ……俺はここで死ぬのか……

川゚−゚)「……」
「クー!!」

川゚−゚)「どうやらヤツにはめられたらしいな」
「……ああ。俺もヤキがまわったぜ。まさかこんな最後とはな…・・・」

川゚−゚)「すまない……今回のコトは私にも責任がある」
「……らしくねえな。よせよ。あんたは俺に仕事を回しただけだろうがゴルァ」

川゚−゚)「……」

川゚−゚)「……一つだけヤツに復讐するチャンスがある」

「なに……?」



9:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:25.43 ID:0IuLjyk60

(*;_;)「うう……お兄ちゃん……」

兄が、死んだ。

私を車で迎えに来る途中で交通事故にあった。
相手はシャブ中のイカレた野郎。

私のコトを可愛がってくれたとてもいい兄だった。
そんな兄に、私は人に言えない想いを胸に秘めていた。
一人の男として、兄のことを愛していた。

禁断の兄妹愛。
もちろん兄とそうゆう関係にはなっていなかったし、気づかれてもいなかった。

しかしもうそんな葛藤をするコトもない。
胸中の相手は冷たい棺の中。

私の19年間の恋は、何も変化することなく突然の終わりを告げた。

「可哀想にねぇ……しぃちゃん、身寄りないんでしょ?」
「たった一人の家族だったのに……」
「これからどうするのかしら……」



10:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:55.00 ID:0IuLjyk60

目を開けても広がるのは変わらない闇。
手足を伸ばそうとするが、すぐに障害にぶつかって動けない。
狭い空間にいるコトがわかる。

「クーのヤツ、ちったあ説明くらいしていけよ……」

ぼやいてみるが、闇は答えない。

闇。
俺が生息する場所。
俺の唯一の安息の地。

だが周りの状況がさっぱり掴めないとなっちゃ、多少居心地が悪かった。
それになんだ。だんだん蒸し暑くなってきたような……?



11:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:04:12.20 ID:0IuLjyk60

「うわ!!あっつ、あちゃちゃちゃ!!」

(*゚−゚)「……!?」

鈍い音を立てて鉄の扉が私の横を飛んでいく。
中から見えるのは足が一本。
その場にいる皆の空気が凍りついた。

(,,゚Д゚)「あちぃぞゴルァ!!!!」
(*゚−゚)「!!!?!??!???」

お兄ちゃんが、生き返った!?



12:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:04:57.65 ID:0IuLjyk60

気絶するヤツ。
悲鳴を上げるヤツ。
お経?みたいのをぶつぶつ言い出すヤツ
そして俺に抱きついてるこの女。

クソッたれ。正直、ものすごくめんどくさい。

いっそのことこのままばっくれちまうかと考えてたそのとき、
周りが急に静かになり、そそくさと部屋から出て行っちまった。

なるほど。クーのヤツ、今回はアフターケアも万全らしいな。

(,,゚Д゚)「……おい女。そろそろ離れろゴルァ」
(*;_;)「うう……お兄ちゃぁん……」

……前言撤回。なんでこの女だけ記憶をすり替えねぇんだ……。



13:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:05:12.01 ID:0IuLjyk60

どうやら俺は焼かれる寸前だったらしい。
この女は妹かなんかか?
クソッたれ。めんどくせえ。
とりあえずひっぺがさねえと……。

(,,゚Д゚)「お、おい。俺はもう大丈夫だから」
(*-_-)「……」

……すー……すー……

(,,゚Д゚)「……おい」

寝るか!?普通この状況で寝るか!?



14:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:08:41.16 ID:0IuLjyk60

免許証に記載されている住所を頼りにこの女の家までやってきた。
背中から静かな寝息が聞こえる。

(,,゚Д゚)「ったくどうしたモンかねぇ……」

とりあえず色々と調べるモンがある。
まずはこのニンゲン、つまり俺のデータを揃えないと。
ヤツへの復讐はその後だ……。

(,,゚Д゚)「……ん?」

空気に伝わる微かな気配。
肌を打つ殺気。

クソッたれ、もう嗅ぎ付けやがったか……!!

女をソファーに寝かせ、周りを見渡し武器になりそうなものを探す。

周りを警戒するが、ソレは姿を現さない。
女の方をちらりと見る。
この部屋を離れるわけにはいかない。
それとも潜んでるヤツを誘導してこの部屋から離れるか……。



15:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:09:03.54 ID:0IuLjyk60

……待て待て。俺は今何を考えてる?
こんな女知ったこっちゃないだろうが。

(,,゚Д゚)「情でも移ったか?馬鹿な……」

ソファーの女を見て、八つ裂きにされる姿を連想する。
すると腹の奥底からある感情が浮上してきた。

それは身を焦がすような怒り。
頭を掻き毟りたくなるほどの焦燥感。

怒りなんて感情は自分の日常的によく知っているものだったが、こんな気分は初めてだ。

女がうっすらと目を開けた。



16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:22:20.27 ID:0IuLjyk60

(;゚ー゚)「!! お兄ちゃん!!後ろ!!」

とっさに身を屈める。頭上をかすめる風切音。
振り向いて相手を確認することなく、後ろに蹴りを放つ。

「ウグッ!!」

確かな手ごたえ。くぐもった声をもらし、相手は壁に吹き飛んだ。
体勢を整え、女を後ろにして相手を睨み付ける。

「クソォ、ナンでキサマイキテルンダ……」

(;゚ー゚)「な、何アレ……!!」
(,,゚Д゚)「女。怪我したくなかったら俺の後ろに隠れてろ」

立ち上がったソレの姿は、まるで漫画や映画の中から出てきたような悪魔。
頭に二本の角を生やし、背中には蝙蝠のような羽。全身に硬そうな皮膚を持ち、めん玉までどす黒い。



17:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:23:05.78 ID:0IuLjyk60

(,,゚Д゚)「下級悪魔が……!!」

悪魔は咆哮をあげて突進してきた。
馬鹿め、低脳の分際で俺に勝てると思ってんのか。

(,,゚Д゚)「食らえっ!!」

悪魔に向けて手をかざす。
すると手のひらから悪魔を粉々にする俺の必殺ビームが……

(,,゚Д゚)「?」

出なかった。
悪魔も女も口をポカンと開けている。
……視線が痛い。

しまった。
俺は一度死んで転生したんじゃないか。
今の俺はなんの力もない、無力なニンゲンだ――――

(,,゚Д゚)「でぶっ!!」
(;゚ー゚)「お兄ちゃん!!」

「オドロカセンナヨ、ギコ!!」

悪魔のコブシが顔に直撃して、派手にぶっとんだ。
ぶつかった机から書類やらコップやらが散らばる。
反撃に立ち上がろうと着いた手に、硬い感触の何かが当たった。



18:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:24:18.02 ID:0IuLjyk60

刃渡り10センチほどの短剣。それの威力は教会で祝福を受けたとかチャチなモンじゃない。
精錬金属の段階から特殊な過程で鍛え上げられてきた対悪魔用兵器。小型だけど。

問題は、何故こんな極上のアイテムが一般人の家庭にあるかってコト。

(;゚ー゚)「ちょ、来ないで!!」

女に迫りよる悪魔の歯牙。

――――させるかよ。

気づいたら俺は馬乗りになって悪魔の首元に短剣をぶっさしていた。
叫び声までもかき消され、あっという間に灰と化した。



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:24:41.07 ID:0IuLjyk60

(,,゚Д゚)「つ、疲れたぞ、クソッたれ」
(*;_;)「うう……ひっく」

女はまた涙を浮かべて俺にしがみついている。
泣き止むまで硬直したまま動けない。

なんだ?俺こんな情けないキャラだったか?
泣き止んだと思ったら、また寝息が聞こえ始めた。

(,,゚Д゚)「……ちっ」

ガラじゃねえ。わかっちゃいるけど、嫌な気分じゃない。
今度はちゃんとベッドに寝かせた。

「お兄……ちゃん」

足音を立てないように部屋から出て行く。

(,,゚Д゚)「……とりあえず一服だな」

……灰皿が見当たらない。
とりあえず買いだしに行くか。
なるべく大きめのヤツを買おう。

この家とも長い付き合いになるかもしれないしな――――



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