( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです

44:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:24:24.72 ID:LJMRckPX0

第三話
「喰」

もうだめだ。部屋からは出られない。
お腹が痛い。トイレにも行けない。
なんでこんなことになったの?
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで



45:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:25:00.67 ID:LJMRckPX0

部屋の隅でうずくまる。冷や汗が頬を伝う。
机の上にはあの忌々しい「アレ」がいる。
もうその中身を見る気にはなれない。

扉を叩く音がする。

どこか遠い音に聞こえる。

扉を叩く音がする。

「おいこの馬鹿野郎!!ドア開けろっつってんだろ!!」

―――ドクオだ



47:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:25:30.21 ID:LJMRckPX0

急いで鍵に手をかける。手元が震えてうまくいかない。

「ドアから離れてろよ!!」

???
それじゃ鍵を外せな

頭の中でけたたましい音が響いた。
ドクオがドアを蹴破ったみたいだ。
外れたドアが鼻面に直撃して、頭の上で星が飛ぶ。

('A`)「…足がいてえ。」

ドクオ。それはウチのドアだよ…。

(;^ω^)「ショボン!!大丈夫かお!?」



48:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:28:01.28 ID:LJMRckPX0

ドクオ。

ブーン。

見慣れた顔がそこにある。安心して腰が抜けた。
へにゃへにゃと座り込む。
頬を伝うのは汗だけじゃないみたいだ。

(´;ω;`)「ううっ、ひっぐ…う、ふぅ…。」
( ^ω^)「きめえwwwwwwww」
(´;ω;`)「ひど、いよぅ…っぐ…。」
('A`)「落ち着けショボン。きもいのは仕方ない。」

(´;ω;`)「ふ、二人して、ひどい…。」
('A`)「いいから。…何があったんだ?」

ドクオが僕をなだめて、事情を聞いてくる。
それよりトイレに行きたかった。



49:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:29:09.56 ID:LJMRckPX0

部屋からは出ないと駄々をこねる僕に、簡易トイレが用意された。
皆には外に出てもらう。ペットボトルはあっという間に黄色い液体で満たされた。

( ^ω^)「もう入ってもいいかおー?」

小声で返事をし、二人が部屋に入ってくる。
いつもうんこちんこで騒ぐブーンは、部屋で用を足す僕を笑わなかった。
二人はいつだって僕の味方だ。
中学から三人はずっと一緒。
また僕はしょっぱい海に溺れた。



50:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:34:25.88 ID:LJMRckPX0

(;^ω^)「ちょ、なんで泣くんだお!泣くなお!」
('A`)「おばさんも心配してるぞ。ほら。飯もすっかり冷めちまってる。」

ドクオは部屋の前に置いてあったお盆を持ってきた。
湯気こそたってないが、おいしそうなご飯。
作ってくれたお母さんの顔が頭に浮かぶ。
涙が止まらなかった。



51:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 01:37:16.47 ID:LJMRckPX0

今度は二人とも無言で僕を待つ。
ドクオがポケットからタバコを取り出す。
僕の部屋は禁煙なのに、何故かドクオ専用の灰皿がある。
じっとしてるのが苦手なブーンも、隣にちょこんと座って僕の口が開くのを待ってる。

二人をすぐに呼びたかった。
助けを求めたかった。
お母さんと同じ位信頼してる二人。
大好きな二人だから呼べなかった。

でも…でも二人は扉を蹴破ってまで助けに来てくれた。
全部話さなきゃ。二人なら僕を助けてくれるかもしれない。



54:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:00:44.85 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「古本かぁ。」

あの日僕は近所のフリマ会場に来ていた。
大きな公園で、規模は結構でかい。

(´・ω・`)「お、ジャンプがある。これ何年前のだろ??」
川゚−゚)「立ち読みはやめてくれよ。」

古本バザーを開いていた女の人はどこか神秘的で綺麗な人だった。
これだけ出展してる雑踏の中で、なぜだか僕の足はここで止まったんだ。

「アレ」に呼ばれていたのかもしれない。



56:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:02:00.18 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「なにこれ?表紙になんもないけど。」

くすんだ緑色の本が目に留まった。
百科事典みたいなぶ厚さ。
紐で何十に縛られた本。
それは厳重に封印されているかのように見えた。

(´・ω・`)「…へんなの。あの、コレとコレください。」
川゚ー゚)「毎度あり。」

ジャンプと「本」と、あと何点かの収穫を手に、僕は家に帰った。



58:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:02:54.64 ID:LJMRckPX0

ベッドの上でジャンプを読みながらくつろいでた。

(´・ω・`)「すごいな〜この時代のジャンプは正に黄金時代だよな〜。」
(´・ω・`)「るろ剣ナツカシスwwwww」

あっという間に読み終えたジャンプを放り投げた僕は、急にあの「本」が気になってきた。
少しの期待と、少しの不安と。
生唾を飲み込み、「封印」を解く。

(´・ω・`)「…!!」



59:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:03:17.65 ID:LJMRckPX0

○月×日

フリマデ、ヘンナホンヲカウ。



60:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:04:49.19 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「…やられた。」

バーボンか。
食らってる人はいつもこんな気分なのか。
100円のときめき。
100円分の価値はあったよね。
良しとしよう。

そうだ、ブーン達にこのジャンプ見せてあげよう。
机に置いてある携帯を取りに、ベッドから起き上がった。
おろろ?
足がしびれてる。力が入らない。

僕は無様にベッドから転げ落ちた。



66:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:32:01.16 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「いたたた…ん?」

転んだ拍子で開かれたページが目に入る。

○月×日

ベッドカラコロゲオチル

一目見たとき、意味がわからなかった。
いや転げ落ちるって言われても…先に言ってよ。
僕の突っ込みも意味がわからない。



69:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:41:44.54 ID:LJMRckPX0

急に背筋が冷たくなった。
なんで!?さっきまでは…!!
慌てて周りを見渡す。
誰もいない。
この部屋には僕しかいない。

(´・ω・`)「こここれ、今の僕の事…!?」

金縛りにあったように動けなかった。
変な体勢で「本」をにらみ続ける。
首が痛い。何も起こらない。寒気は止まらない…。



70:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/24(水) 02:42:55.01 ID:LJMRckPX0

(´・ω・`)「ド、ドクオ…!!」

友人の顔が思い浮かぶ。
いつもけだるそうな顔。
怖いものなんて何もないと語る口。
世の中に対して何か悟りでも開いてるような目。
だからこそ、頼りになる。



18:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:09:14.65 ID:o7sIifTt0

恐る恐る本を手に取り、机の上の携帯と交換する。
開いたページはそのまま。

(´・ω・`)「ドクオ…!!早く出て…!!」

呼び出し音がやけにでかく聞こえる。


('A`)『あいよ』
(´・ω・`)「ドク…っつ!?」

突然足の裏に激痛が走った。びっくりして携帯を落とす。

(´・ω・`)「痛いっ!?ななななに!?」

足の裏にはぞっとするほど大量の画鋲。
歩いていない。立っていただけなのに。
思わず机上の本に目を落とす。



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:09:40.26 ID:o7sIifTt0

○月×日

ヘヤデガビョウヲフム



20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:10:09.49 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「も、もういやだ…」

捨てなきゃ。この「本」にはきっとお化けが取り付いてる。
もうコレと一緒にいたくない。
早く捨ててしまいたい。



21:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:11:12.59 ID:o7sIifTt0

○月×日

ホンヲナゲステヨウト、マドヲアケ

アヤマッテテンラクスル

(´・ω・`)「……!!」

さっきまでと、違う……!?



22:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:11:59.27 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクト


僕の体は凍りついた。



23:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:12:14.50 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクトチュウ

クルマニハネラ


目の前で、少しずつ文字が浮かび上がっていく。



24:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:12:29.04 ID:o7sIifTt0

○月×日

ドクオノイエニイクトチュウ

クルマニハネラレテ

クビガトブ


(´・ω・`)「…ああ…ああああ…!!」



25:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:13:36.29 ID:o7sIifTt0

僕は夢中で部屋を飛び出した。恐怖で頭がいっぱいだった。
どこをどう走ったか分からない。
気づいたらドクオの家に向かう道にいた。
ドクオの部屋に駆け込みたかったけど、
あの「本」に書いてある事が現実になったら……。

途中で道を引き返した。ドクオに会ったら
「阿保らしい。そういうのは絶対仕掛けがあんだよ」
と言って、笑い飛ばしてくれるだろう。
でも、もし…。

すぐ後ろで甲高い音が聞こえた。ドラマとかで主役が事故に遭う時に聞くあの音。

さっきまで僕がいた場所に、車が突っ込んでいた。
運転席には誰も乗っていなかった。



27:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:16:48.92 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「それから部屋に戻ってきたんだ」
(;^ω^)「こ、この本かお?」

○月×日

ゲンカンデゴウトウニメダマヲクリヌカレル

○月×日

カイダンヲフミハズシテアタマガワレル

○月×日

ヘヤノマエノユカガヌケテリョウアシヲモガレル

(lli^ω^)「……」



28:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:18:21.35 ID:o7sIifTt0

(´・ω・`)「もう、もう部屋からも出られなくなったんだよ」
('A`)「……」

ドクオは何か考え込むように腕を組んで壁に寄りかかっている。
灰皿のタバコは気づけばいっぱいになっていた。

(;^ω^)「!! 消しゴム!!こんなの消しゴムで消しちゃえば…!!」
(´・ω・`)「消えないんだ。燃やそうとしてもダメだった」



29:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:18:55.09 ID:o7sIifTt0

(´;ω;`)「僕は、僕の人生はその「本」に食べられちゃったんだよ!!
(´;ω;`)「ねぇどうしようドクオ!!もうダメなの!?この部屋でずっと過ごすしか…」

('A`)「あれ?ないな…どこだ?」
(´;ω;`)「ド、ドクオ…聞いてるの??」

(;^ω^)「…ショ、ショボン…」
(´;ω;`)「うう…いやだよこんなの…ずっと…部屋から出られないなんて…」

(;^ω^)「ショボン!!」
(´;ω;`)「……?」



30:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:19:24.08 ID:o7sIifTt0

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



31:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:20:56.82 ID:o7sIifTt0

(´;ω;`)「うそ…うそだ…」
(;^ω^)「うう…!!」

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



33:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:21:26.66 ID:o7sIifTt0

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ

○月×日

シンゾウホッサデ

シヌ



34:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:22:04.99 ID:o7sIifTt0

あっという間にページが埋め尽くされる。
勝手にページがめくれ、次々と死の宣告が羅列されていく。

(´;ω;`)「あああ…あああああああああああ!!!!」
(;^ω^)「ショボン!!おち、おちつくくお!!」

('A`)「あった」
(;^ω^)「ドクオなにしてるお!!ショボンが…!!」
('A`)「ブーン!!最後のページを開け!!」
(;^ω^)「!?」



35:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:22:24.33 ID:o7sIifTt0

血が抜けていく感覚。
視界が白いカーテンがかかる。
頭が重い。
こんな簡単に幕が下りるのか。
もうだめ
なにも考えら

('A`)「ページに書いてあることは実行してもらわないとな」

(´;ω;`)「……あれ??」

目の前に広がる景色は花畑でもなく川でもなく、見慣れたドクオとブーンの顔。
口の端を吊り上げたニヒルな笑み。
心配そうに覗き込む優しい眼差し。



36:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:23:02.89 ID:o7sIifTt0

('A`)「ちゃんとカタカナで書いたぜ?」

ドクオは太い油性マジックを放り投げる。
それを合図に「本」から火が立ち上る。


('A`)「ショボンハ、ホンヲカウマエノジョウタイデ、イキカエル」

('A`)「コレイコウ、ナニモカキコメズニ、ホンハショウメツスルってか」

(;^ω^)「ドクオ!!コレ……!!」

('A`)「ああ、その前にもう一つ。ショボンなりに怖い目に合わされたみたいだからな。慰謝料くらいバチはあたらんだろ」

燃え尽きた本の灰の中から、分厚い紙の束が顔を出した。



37:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 14:23:19.27 ID:o7sIifTt0

川゚−゚)「確定している不幸は避けようがなく、理不尽なもの」

川゚−゚)「皆さんの家には怪しい骨董品が埃を被っていたりしないだろうか?」

川゚−゚)「もしかしたらそこには、アウターブーンの品物が混じっているかもしれない」



戻る第四話