( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです
- 3:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:05:48.70 ID:o7sIifTt0
第五話
「悪魔の砂時計」
僕の名前はヒッキー。
最近ひきこもりがちな高校二年生だ。
何か悩みがあってここに来てるわけじゃない。
ただ、なんとなく。
川゚−゚)「ゆっくり、この水晶を見て…」
(-_-)「……」
- 4:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:09:43.45 ID:o7sIifTt0
昼夜逆転した生活。
夜中の繁華街をふらついてたら、路地裏で占いを見つけた。
僕はこういうの信じない。
お金の無駄かもしれなかったけど、興味がないといえば嘘になる。
川゚−゚)「…何かが見える」
水晶の中には何も見えない。
不釣合いな値段の壷を買わされる前に帰ろうかな……。
- 5:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:11:38.02 ID:o7sIifTt0
川゚−゚)「…長い病院生活…それに意識がないみたいだ」
(-_-)「へ?」
金運がある、とか水難の相が出てる、とか言われるのかと思った。
随分あからさまだな。やっぱり壷でも買わす気か?
川゚−゚)「……未来を変えたいか?」
(-_-)「…うん。そりゃ、まぁ……」
川゚−゚)「これをあげよう」
女は奇妙なデザインの砂時計を取り出した。
悪魔のモチーフ。
……趣味が悪い。
ちょっと帰りたくなった。
女の話によるとどうやらこれで未来に飛べるらしい。
いますぐこの場を立ち去りたかった。
- 7:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:20:12.21 ID:o7sIifTt0
川゚−゚)「満月の晩に逆さまにしろ。場所はキミの部屋でいい。電気は点けちゃダメだ」
川゚−゚)「それともう一つ。砂を完璧に落としきってはいけない」
川゚−゚)「必ず全て落ちきる前にひっくり返せ」
必ずだ、と念を押された。
あまり食いつくのもアレだったので、
砂を落としきるとどうなるかは聞かなかった。
ベッドの上の僕に会っても、別に未来変わらなくない??
まぁただで譲ってくれるみたいだし、試してあげようかな……。
- 8:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:23:30.47 ID:o7sIifTt0
満月の夜。
真っ暗な部屋で一人たたずむ。
手には悪魔の砂時計。
(-_-)「なんか緊張するな…」
緊張で口がかわく。
オイオイ、僕は何を期待している?
オカルトな趣味でもあったか?
(-_-)「えいっ」
高まる鼓動を抑え、砂時計を逆さまにする。
サラサラと、静かに砂が落ち始めた。
- 9:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:30:51.69 ID:o7sIifTt0
(-_-)「……」
静まり返った部屋で、僕の苦笑いだけが響く。
(-_-)「なんだよ…ちょっと期待してたのに…」
がっかりしてうなだれたその時、
急に目の前の景色が反転した。
ちゃんと立ってられなくなって床に手をつく。
めまいが止まらない。
気持ち…わ……る………………
- 11:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:36:31.05 ID:o7sIifTt0
気づけば僕は小さな公園にいた。
夕日が西に落ちかかってる。
(-_-)「え? ここは…あれ?部屋は?」
状況がつかめない。
まさか本当にタイムスリップ……?
砂場で遊んでいた子供達が手を振って公園から出て行く。
公園を見回すと呆然と立ちすくむ僕以外に、ベンチに座っている男が一人。
僕を驚いた顔で見つめている。
そりゃそうだ。きっと僕は急にここに現れたんだろう。
目の前に突然人がわいたら誰だって…。
- 12:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:39:20.33 ID:o7sIifTt0
男「キミは…まさか…ヒッキーかい?」
(-_-)「え?」
男「やっと会えた…!!ヒッキー…!!ああ、15年前のままだ…!!」
(-_-)「な、なに? おじさん誰?」
大きな眼鏡に無精ひげ。
でも僕はあの目を知っている気がする……。
男「いいかい、よく聞いてくれ。あまり時間がない」
男「君は5年後、旅先で事故に合う。それを避けるんだ。5年後の旅行はキャンセルしろ」
(-_-)「なにを言って…!!」
- 13:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:40:21.68 ID:o7sIifTt0
男「君は事故の後遺症でベッドで寝たきりになる。僕は君の伝言で、15年前の君を待っていたんだ」
信じられない。この男は基地外か?あまり関わりたくないタイプだ。
でも、確かに僕はさっきまで部屋にいた。まさかここは本当に未来なのか……?
男「この公園は君が今住んでる家が取り壊されてその後作られたんだよ」
男「信じてくれ。証明する時間も惜しい」
ここは未来。男の言うことが本当なら15年後。
5年後の事故?旅行に行かなければいいのか?
- 14:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:44:31.91 ID:o7sIifTt0
(-_-)「お、おかしいよ。未来の僕が事故に合ってるんなら、僕も避けようがないじゃないか!!」
男「きっとコレはパラレルワールドなんだろう。こっちの世界の君は、15年前砂時計を使わなかったらしい」
男は大粒の涙を流していた。
男「君は僕をかばって身代わりになったんだ。頼む。君は無事でいてくれ。ひっくんは幸せになってくれ…!!」
ひっくん?なんでそのあだ名を…
(-_-)「小次郎?小次郎なの!?」
男「そうだよ…ひっくん…」
男「ごめんよ…あのとき、僕のせいで…」
男も気が動転しているらしい。
過去の僕に謝っても仕方ないのに。
- 15:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:45:10.88 ID:o7sIifTt0
(-_-)「僕が旅行に行かなければ、小次郎もそっちの僕も幸せになれる?」
男「いや、言ったろう。きっとこの世界はパラレルワールドなんだ。未来は直結していないんだよ」
男「ああ、もう時間がない。砂が落ちきってしまう…!!」
僕を「15年前のきみ」と言った。
じゃあ目の前の小次郎は15年後の姿なのか。
32歳の小次郎。
年のわりに白髪が多い。
きっと小次郎は10年間、僕の許しを待っていたんだ。
(-_-)「…ありがとう。小次郎も10年間悩んできたんでしょ?もういいんじゃないかな」
(-_-)「小次郎も、幸せになって」
男「……!!」
- 16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:45:36.18 ID:o7sIifTt0
小次郎が僕の手を握り、無理やり砂時計をひっくり返す。
歪む意識の中で
「ありがとう」
と聞こえた気がした。
- 19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:51:18.01 ID:o7sIifTt0
(-_-)「…戻ってきた…」
翌晩、また繁華街に繰り出してみたけど、
あの占いの女は見つけられなかった。
パラレルワールドの僕は小次郎をかばって事故にあった。
ベッドで寝たきりになるのはいやだけど、ちょっと自分を誇らしげに思う。
きっとひきこもりの僕を見たら情けないって言うだろうな。
明日は、ちゃんと学校に行こう。
そして小次郎に言うんだ。
目を白黒させるかもしれない。
「5年後の旅行はキャンセルしよう」
- 20:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/27(土) 22:51:44.93 ID:o7sIifTt0
川゚−゚)「もしかしたらパラレルワールドのあなたはもっと悲惨な人生を送っているかもしれない」
川゚ー゚)「興味がある方は是非この砂時計を使ってみたらいかがだろうか」
川゚ー゚)「ただし砂が落ちきる前に必ずひっくり返すように」
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