( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです

6:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:00:45.62 ID:jpLkzkQK0

第十一話
「ギコとしぃ そのA」

(*-_-)「……ん……」
(,,゚Д゚)「お……目ぇ覚めたか?」

(*゚−゚)「!!」

しぃはギコの姿を確認した途端、ベッドから飛び起きて身構えた。
ギコとしては予想外だった。
自分の顔を見た途端、また胸に飛び込んでくると思っていたからだ。
がっかりしてる自分にもまた思考が混乱した。

(*゚−゚)「あなた……誰!?」
(,,゚Д゚)「……」
(*゚−゚)「お兄ちゃんじゃない……!!」

(,,゚Д゚)「あ〜、その、なんだ」
(*゚−゚)「誰なのよ……ねぇアンタ誰よ!!なんでお兄ちゃんの格好してるの!?」

(,,゚Д゚)「……その通りだゴルァ。俺はお前のお兄ちゃんじゃない」



7:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:12:22.14 ID:jpLkzkQK0

胸の奥が痛む。自分は何を期待していたというんだ。
このままコイツの「お兄ちゃん」としてやっていくつもりだってのか?
冗談じゃない。クソッたれ。

(*゚−゚)「説明しなさいよ!それにさっきの怪物はなに!?」
(,,゚Д゚)「お前は知らなくていいことだ……悪かったなゴルァ。すぐにでもこの家から出てくさ」
(*゚−゚)「ちょ、待ちなさいよ!!そのナイフもなんなの!?それさっきお兄ちゃんの机から出てきたわ」
(,,゚Д゚)「……」

そうだ。すっかり忘れてた。この短剣はこの家にあったモノだ。
今の発言からするとコイツも知らないみたいだな。
……もう少し詳しく調べてみたいが……。

(,,゚Д゚)「……お前のお兄ちゃんのコトは忘れるんだな」
(*゚−゚)「ちょっと!!」

振り返らずに玄関をあとにする。
後ろで何か罵声のようなものが聞こえたが、足を止めずに家の前に出た。

(,,゚Д゚)「……だからガラじゃねぇって言ってんだろクソッたれ」

家を振り返り、一人呟く。
俺にはやることがある。
あんな女には構ってられないんだ……。



8:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:17:39.48 ID:jpLkzkQK0

(*゚−゚)「なんなのよ……本当に出て行っちゃった……」

生き返ったお兄ちゃんはまるで別人だった。
いや、普通のお兄ちゃんは生き返らない。
そんなのは世界中探してもどこにもいないだろう。

ソレはもう人間とは呼べないもの。
私の兄は人間をやめちゃったのか。
いや、あれはお兄ちゃんじゃない。
お兄ちゃんの格好をしたお兄ちゃんじゃないなにか。

(*゚−゚)「……」

ごちゃごちゃになった思考をかなぐり捨て、ひとつだけ確かな記憶が浮かび上がる。

お兄ちゃんの、匂いがした。



11:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:33:54.69 ID:KwTsr4/t0

体はお兄ちゃんのままなんだ。違うのは、中身。
きっとお化けかなにかが乗り移ってるんだ。
さっきの、怪物のような何か。

……馬鹿馬鹿しい。
しかし現にお兄ちゃんは……

(#゚−゚)「ああもうめんどくさい!!」

……あいつに、お兄ちゃんの格好のままうろつかせるわけにはいかない。
それにあのナイフのコトも気になる。

捕まえて、全部話してもらわなきゃ。



12:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:40:33.42 ID:KwTsr4/t0

(,,゚Д゚)「……」

ギコはまだしぃの家の前にいた。
うろうろと、行ったり来たりを繰り替えす。
近所の住民が見たら通報されていたかもしれない。

(,,゚Д゚)「……うう」

こんなにあの女が気になるのは、この体の持ち主だった男の記憶か。
それとも自分でも気づかない内にあの女に惚れてしまったのか。

馬鹿馬鹿しい、と一人吐き捨てまた家から離れようとしたそのとき

(*゚−゚)「馬鹿!!」
(,,゚Д゚)「!!」

しぃが家から出てきた。
慌てて塀の影に身を隠す。

(*゚−゚)「もう……なんなのよアイツ…!!」

気づかれてはいないようだ。

(*゚−゚)「どこ行ったのかしら?駅の方かな」

と、ボヤキながらギコの傍を通り抜けて、鼻息荒く駅の方へと歩いていった。

(,,゚Д゚)「……チャンスだ」



13:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 10:52:39.37 ID:KwTsr4/t0

(*゚ー゚)「いないなぁ……もう」

駅の方は散々探し回った。しかし男の姿は見つからなかった。
手に晩御飯の材料が入った袋を下げて、駅ビルの中をブラブラ歩いていた。

(*゚ー゚)「二人分買っちゃった……」

いつもと同じ重さになったビニール袋を憎憎しげに見つめ、一人ため息をつく。
休日だからだろうか、周りには若い人たちが多い。

(*゚ー゚)「あの子達、仲良しさんだなぁ……」

中学生位の男の子に腕を絡める小学生位の女の子。
過去に置き忘れた自分の姿を重ねて、目に涙を浮かべる。



15:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 11:20:21.74 ID:KwTsr4/t0

(*゚ー゚)「あ〜ダメっ!!辛気くさいぞ、しぃ!!」

もう、帰ろう。
きっとここには私の居場所はないんだ。

家に帰って、ご飯を作って、大学のレポートをやって、家事をこなして。

そしてまた大学に行って、単位とって、就活して、中堅どこの企業に就職して。

当たり前だと思っていた未来予想図。

でも、そこからはお兄ちゃんの姿は消え去ってしまった。

(*;_;)「ううっ……」

エスカレーターで通り過ぎる人たちは、皆ぎょっとした顔で私の顔を見つめる。
涙は拭かずに一階へと向かう。

(*;_;)「寂しいよ……お兄ちゃん……」



16:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/05(月) 11:26:35.11 ID:KwTsr4/t0

降りていく私の反対側。
交差になった上りのエスカレーター。
私に背を向けて上っていく人たちの中に、違和感を感じて顔をあげた。

普通のスーツの後ろ姿。
それなのになんだろうこの違和感は。
目が離せない。

その男は、あり得ない角度まで、ゆっくりと首を曲げた。

曲げた先の私を見つめ、爬虫類を連想させる笑みを浮かべ

「ミツケタ」

と呟いた。



13:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:16:59.01 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「(ヤバイ!!)」

直感的に、本能がヤバイと告げている。
昨日感じた恐怖と同じモノ。
昨日見た、怪物。

しぃはエスカレーターを駆け下りた。
後ろは振り向かない。
前で二列になっていちゃついているカップルを吹き飛ばした。
後ろから罵声が聞こえる。

後ろに、何かが落ちてきたような大きな音が聞こえたと思ったら、次の瞬間。
罵声が悲鳴でかき消された。

「ギコハドコダ」

スーツを纏った怪物が、倒れたカップルに爪を立てている。
顔が醜く歪んでいく。
背中からはスーツを突き破る昆虫のようなハネ。
ハエ男を連想させるその怪物は、今、兄の名前を口にした。



14:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:17:32.04 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「なんなの!?あんたら一体なんなのよ!!」

「ギコヲダセ!!」

ハエ男のハネが震えだし、足が宙に浮いた。
醜い音を撒き散らして空中から襲い掛かってきた。

慌てて身を屈める。
ハエ男は勢いあまって後ろに居た男にぶつかる。
そのままもつれ合って転倒した。

「ぎゃあああああああああっ!!」

男から悲鳴があがる。
ハエ男の口から放出された粘液で、顔が溶けかかっていた。

「キャアアアアアアアア!!!!」
「いやあああああああ!!」

それを見た一般客が悲鳴を上げる。
駅ビル内はパニックに包まれた。



15:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:17:51.30 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「に、逃げなきゃ!!」

ここはだめだ。
周りに人が多すぎる。
私のせいで関係ない人まで……。

ハエ男はもう動かなくなった男にのしかかり、溶けた顔を貪っている。

逃げなきゃ。
でも足が動かない。

「ちょ、なんだあんたは!!」

二人の警備員が駆けつけた。
私には分かる。
何も持たずにアレに立ち向かったって、死体がまた一つ増えるだけだ。



16:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:18:07.76 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「ダメ!!逃げて!!」

「あんた関係者?イベントなんて聞いてな……ぎっ!ああ!!」

警備員はハエ男が飛ばした液を頭から被った。
みるみる溶け出し、辺りに刺激臭が立ち込める。

「こ、こいつ!!」

もう一人の警備員が警棒で殴りかかる。
それを合図に私は入り口に向かって駆け出した。

「う、あっ!!ああああああ!!」

後ろで断末魔がこだまする。
しぃは恐怖で振り返った。

警備員が頭から咀嚼されているところだった。



18:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:20:16.58 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「いやあああああああああ!!」

「ギコハドコダ!!」

出口に向かって駆ける。
羽音がすぐ背後に迫る。

もうだめ
間に合わな



19:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:20:37.86 ID:opliDBHl0

「しゃがめ!!」
(;゚ー゚)「!?」

前方から飛来するモノ。
それは自動ドアのガラスを突き破り、しぃの頭上を通り過ぎて言った。

「ゲフッ!!」

(,,゚Д゚)「ぶっ殺すぞゴルァ!!」

(;゚ー゚)「お兄ちゃん!!」

ギコの飛び蹴りをまともに受け、ハエ男は壁に叩きつけられた。
しかしすぐに立ち上がり、涎を垂らしてギコに飛び掛る。

(,,゚Д゚)「女!!逃げるぞ!!」
(;゚ー゚)「え? う、あ?」

混乱するしぃの頭をよそに、ギコはしぃを後ろから抱えて走り出した。



21:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:27:25.18 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「降ろして!!自分で走れる!!」

駅を出てどれほど走っただろうか?
狭い路地裏まで逃げてきたところでギコは立ち止まった。

(;゚ー゚)「な、なんなのよ、アレ……説明してもらうからね」

(,,゚Д゚)「……それは後回しだゴルァ」

(;゚ー゚)「!!」

「ミツケタ……」

ハエ男が姿を現した途端、ギコは一直線に走り出した。
溶解液で迎え撃つハエ男。
スライディングでソレをかわし、懐から取り出したビンを投げつける。

「ギャッ!!」

(,,゚Д゚)「おらっ!!」

起き上がりざま顎めがけて掌底をかまし、仰け反ったハエ男の胸にナイフを突き立てた。



24:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 18:47:32.59 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「すご……!!」

圧倒的にギコの方が生物として勝っていた。
生存競争に勝利したギコがこちらを振り返る。

(;゚ー゚)「!! 危ない!!」

ギコの後ろでハエ男が立ち上がる。
しぃは咄嗟にギコを突き飛ばした。

(,,゚Д゚)「ぐえ!!」

ハエ男はそのまま崩れ、ナイフが突き刺さった部分から溶け出した。
後に残ったのはスーツとナイフ。



(,,゚Д゚)「……」
(;゚ー゚)「ちょ、あ、あれ??」

……そして隣には、壁に頭を打ちつけて失神してるギコ。



26:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 19:07:22.98 ID:opliDBHl0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(,,゚Д゚)「……う〜ん……」
(*゚ー゚)「あ……」

(,,゚Д゚)「!!」

しぃの膝枕から飛び起きて顔を真っ赤にした後、ギコは背中を向けて歩き出した。

(*゚ー゚)「ちょ、ちょっと!!」

(,,゚Д゚)「?」



27:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 19:07:43.84 ID:opliDBHl0

(*゚ー゚)「……な、名前。聞いてなかったわよね」

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「何よ。名前くらい聞いたって……」

(,,゚Д゚)「……ギコだ」

(*゚ー゚)「え?」

お兄ちゃんと、同じ名前。
私をからかっているんだろうか?
……いや、そんなふいんき(ryじゃない。

(*゚ー゚)「そ、そうなんだ……私の名前はしぃ、よ」

(,,゚Д゚)「別に聞いちゃいねぇぞゴルァ」

(;゚ー゚)「ちょ、待ちなさいってば!!」



28:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 19:08:24.59 ID:opliDBHl0

(;゚ー゚)「色々聞きたいことがあるのよ!!説明しなさいよ!!」

(,,゚Д゚)「こっちはお前に話したいことなんてねぇよ」

(;゚ー゚)「ちょっと!!」

しぃが肩を掴んで言い寄る。
ギコは肩越しに一瞥し、さも面倒くさそうに言い放った。

(,,゚Д゚)「お前には関係ない事だといったろうが……帰って大人し
(#゚ー゚)「また気絶させるわよ」



29:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/07(水) 19:27:08.41 ID:opliDBHl0

(#゚ー゚)「関係ないなんてよく言えるわねぇ……その体はお兄ちゃんのモノなのよ。
     勝手に人の兄の体使って『関係ない』ですって……!?」

(,,゚Д゚)「ちょwwwwお、落ち着

怒りの鉄拳が鼻っ面にめり込み、ギコはまた後頭部を壁にしこたま打ちつけた。

(#゚ー゚)「とにかく!!」

(;゚ー゚)「あんたのせいで晩御飯の材料多めに買っちゃったのよ。責任持って食べていきなさいよ!!」
(,,゚Д゚)「……ツンデレのつもりか?」

(#゚ー゚)「また食らいたいの?」
(,,゚Д゚)「滅相もございません」

(,,゚Д゚)「しゃーねぇなぁ、金もあんまねぇしな。ちゃんと人が食えるモノ出せよ?」

(*゚ー゚)「……お金はちゃんと取るからね」
(,,゚Д゚)「ちょ、マジかよ!!」

ブツブツ言いながら後ろからついていくギコ。
しぃは少し嬉しそうな顔をして、夕暮れ時の商店街を歩いていた。



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