( ^ω^)ブーンが残された時間で喧嘩を売るようです

20: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:21:17.68 ID:5IFq2ijU0
  
第2話 「深層の邂逅」


世界が音を立てて崩れる。僕の視界がバラバラと崩壊する。
残るは何もない闇。深い黒色に支配された何もない空間。

(  ω )(……真っ暗だお。)

自分は生きているのか?死んでいるのか?それすら解らない異常に継ぐ異常な状態。
体が重たい体が軽い体が熱い体が冷たい体が痛い体が心地いい。
定まった羅針盤の無い中フワフワと意識の底を浮かんでいると
急に地面が出来あがり、蒼い光りが何かを描いた。

(    )「……君…中……今、別の……宿…た…」

目の前に人型のシルエットが浮かぶ。ぼやけていてよく見えない。

(    )「君は…………壊する…を手……収めた。」

音が途切れ途切れに聞こえ、何を言っているのかが分からない。

(    )「シンビ…………ク……ル……リーズ…………エ。」
(    )「か………界を…乱…………力の………るもの。」
(    )「その…志………は継い…………」
(    )「声に………となく壁……壊………れ。」



21: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:21:49.10 ID:5IFq2ijU0
  
相変わらず聞き取りずらいが、少しづつ言葉が明瞭になっていく。
しかし、聞き取れても言っている言葉の意味が分からない。

(    )「……べきその時…で、人……ての生を………てくれ。」
(    )「そして、…の生を……た……先は…」



声が消え、光りが消え、世界が消える。

だが
だが
だが

地の底から
闇の底から
僕の底から

音 なら ざ る振 動が伝 わ る



22: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:22:20.52 ID:5IFq2ijU0
  













           破 壊 せ よ













23: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:22:48.60 ID:5IFq2ijU0
  
(;゚ω゚)「うわぁっ!!!!!」

?????疑問符五つ。………夢?
夢……夢か…。リアルな…夢だった…何か…嫌な夢だった。
少し落ち着いた僕は額が汗でぐっしょり濡れている事に気付く。
拭いながら辺りを見渡す。眼前では赤い川が音を立てて流れている。

(;^ω^)「……ここは?」

えと、何がどうなったんだっけ?確か父さんからGEARに行けって言われて、それから自殺を見て、
あれ?何の任務だったっけ?そうだ。政府要人の警護で名前は……

!?

そうだ!ツン!彼女はどうなったんだ!?彼女もここに落ちたのか!?
もし……もし赤い川の中に落ちたのなら……
僕は嫌な想像を振り払いながら立ち上がり、歩き始めた。
ドクオや先輩は大丈夫だったのだろうか?この任務はこれからどうすればいいのだろうか?
僕は生きて帰れるのだろうか?色々な事が頭の中を交差していく。
不安に傾く心を無理矢理元気付け歩いた先には、
美少女が倒れていた。

(;^ω^)「ツン…かお?」

初めて見る顔だが、着ている服が確かに一緒だった。頭を覆っていた部分が裂けたようだ。
………しばらく見惚れていた。美術品の様な美しさがあった。



24: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:24:47.74 ID:5IFq2ijU0
  
(;^ω^)「……おおう!?」

意識を元に戻す。今はボーっとしてる場合じゃない。
急いで近くによる。

ξ - )ξ「………」
( ^ω^)「息は…あるみたいだお。」

息があるということは生きているという事だろう。少し安心。
けどここからどうすればいいんだ?動かしていいものか…

( ^ω^)「………」
(* ^ω^)「……ちょっと失礼。」

!!!???
や!?やわらけぇ!!今!僕は!!女体の神秘に触れている!!!
ぷるるるるんとした程よい弾力!!!!!ほんのり赤みを帯びたその色が僕の手を止めることを拒否する!!!!!
当初の目的を完全に忘れた!僕は!!完っ全にっ!!!!!暴!!走!!し!!たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!



25: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:25:50.31 ID:5IFq2ijU0
  
(* ^ω^)「おお!!ほっぺたやわらけぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ξ; )ξ「んん……。」
(;^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「………」
(;^ω^)「お…おっはー?」

仰向けに寝ている年頃の女の子。馬乗り状態でほっぺた触ってる男。
うん!これ以上無いくらい言い訳の聞かない状態だね☆

ξ# )ξ「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

悲鳴。打撃音。叫び声。打撃音。水音。打撃音。びちゃり。打撃音。ぐちゃり。打撃音。
………お休みなさい………



26: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:26:31.67 ID:5IFq2ijU0
  
(;^ω(#)「ひ、酷い目にあったお。」
ξ#゚听)ξ「………」

僕はあの後あれは誤解だと(半分以上本当のようなものだけど)弁解したけど、
こっちを見てさえくれなくなってしまった。
うん、僕が全面的に悪かったのは認めるからさ?できればもう少し意思の疎通をはかろうよ?
これ以上無視されたら寂しさで死んじゃうよ?悲しくて死んじゃうよ?

(;^ω^)「……あのぉ、ツンさ
ξ#゚听)ξ「うるさい変態。」

グサリ!!僕の心臓は貫かれて出血多量で死んだ!!!
父さん……初めて変態って呼ばれちゃったよ……あれ?おかしいな?目から液体がとめどもなく溢れてきたよ?

( ´ω`)「辺りの見回りしてきます…」
ξ#゚听)ξ「………」

とにかくここから戻る算段をつけないと、色々な意味で死んでしまう。
上空を見上げるが、かなりの高さから落下したのが分かる程度の情報しか得られなかった。
ロッククライミングで登る事は出来ないか?……無理だな。命綱も無しでこの高さを登ろうなんて自殺行為もいいとこだ。
しかし、この距離を落下してよく生き延びる事が出来たもんだ。何か運命を感じる。
どちらにしろ登る事が不可能なのだから、上へと続く道を探さなければいけない。あれば、の話だけど…

ξ゚听)ξ「……別に探す必要なんて無いわよ。」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「戻ったって……同じ事だもん。」



27: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:26:56.62 ID:5IFq2ijU0
  
( ^ω^)「同じ事?」
ξ゚ -゚)ξ「………」

ツンは答えない。また僕と視線を合わせようとしない。
同じ事?何が同じ何だ?ここに居たら確実な死が待ってるだけじゃないか。

( ^ω^)「つn
ξ゚听)ξ「黙れ変態。」

人生二度目の変態が炸裂しました。もうこのまま川に飛び込んでしまいたい衝動に駆られましたが、
すんでの所で踏みとどまりました。あの自殺の光景を見ていなかったらきっと飛び込んでいたでしょう。

( ´ω`)「はぁ…ドクオ達はどうなってんのかお……」

もう一度だけ空を見上げ、深く溜息をついた。



28: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:27:25.23 ID:5IFq2ijU0
  
<;`A´>「…報告、しますニダ。目標はブーンと共に……落下。……その生死は依然不明、です…ニダ。」
/ ,' 3 「………」

張り詰めた空気が部屋の中を満たす。
ニダーは恐怖していた。政府直下の任務で最悪の失敗をしてしまったのだ。
運がよくて15年程度の禁固刑か、最悪の場合………



それだけは避けねばならないと考えるが、打開策は何も見つからないまま今に至る。

/ ,' 3 「………」
<;`A´>「……ぅぅ。」

荒巻の沈黙が恐ろしい。これから何が起こるのか考えるだけで恐ろしい。
荒巻の沈黙がありがたい。口を開くその時までは命を保っていられるから。

/ ,' 3 「……ニダー。」
<;`A´>「はひ!!!」

情けなくも声が裏返る。ガタガタと壊れた機械のように全身が震えだす。

/ ,' 3 「ドクオはどうしている?」
<;`A´>「ど、ドクオですニダ?先程目覚めたばかりですニダ。」
/ ,' 3 「……そうか。」



29: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:27:51.39 ID:5IFq2ijU0
  
いきなりの質問に戸惑う。まさかドクオ共々……?
最悪の考えが頭の中を埋め尽くしていく。

/ ,' 3 「ドクオの意識がはっきりしたら数人を連れて探索に行け。そして…」
<;`A´>「………」

/ ,' 3 「『聖女』誘拐を企てた逆賊、ブーンを捕らえよ。抵抗するようなら…」

<;`A´>「………」
/ ,' 3 「解るな?そしてこの任務を失敗した時は……」
<;`A´>「解りましたニダ。今度こそ期待に沿えるよう全力を尽くしますニダ。」

ニダーは荒巻の言葉を遮るように喋った。その先を聞きたくはなかった。
………死にたくはなかった。例え自分以外の誰かが死ぬ事になろうとも………

<;`A´>「…失礼…しますニダ…」



30: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:28:21.05 ID:5IFq2ijU0
  
/ ,' 3 「これで……よろしいのですか?」

ニダーが去った部屋に、荒巻と…もう一人の男がいた。

背中の張った男「ええ、上出来です。」
/ ,' 3 「………」
背中の張った男「あなたには辛い役目でした。申し訳ありません。」

男が腰を90度に曲げ、ピタリと止まる。その行動の端々から几帳面さが窺える。

/ ,' 3 「およし下さい。貴方は私などに頭を下げてはならない方です。それに…」
/ ,' 3 「これは私自身が望んだ事でもあります。息子達には申し訳無いが…」

/ ,' 3 「世界のために犠牲になってもらいます。」

そう言って窓の外を見る。見つめるは、世界か、二人の息子の行く末か……



31: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/24(月) 00:28:47.64 ID:5IFq2ijU0
  
( ^ω^)「お?」

これは…結構深そうだな。もしかしたら地上まで繋がってるかも…
一瞬だけ気遅れして、ツンに呼びかける。

ξ゚ -゚)ξ「………」

ツンは何も喋らなかったが、ついて来てはくれた。
良かった。また無視されたらどうしようかと思った。

( ^ω^)「それじゃあ、行くお?」
ξ゚ -゚)ξ「………」

僕達は、地上を目指して薄暗い洞穴へと入っていった。



第2話 「深層の邂逅」  終



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