( ^ω^)ブーンが残された時間で喧嘩を売るようです

30: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:31:10.70 ID:WLo/6wps0
  
第8話 「黒の壁」


眼鏡の男「ぐわっ!!」
( ゚∀゚)「へいへいへい!手応えねぇぞ雑魚ども!!ちったぁ気合入れてかかってこいや!!」
特徴の無い男「おわっ!!」
( ^ω^)「悪いけど暫く眠っててもらうお。」

ジョルジュと共に襲い掛かるオブサーブの連中を倒していく。
ジョルジュがどういうつもりかは知らないが、僕は誰も殺すつもりはなかった。
今は追われる身とはいえ、僕もオブサーブの一員だったのだ。仲間に死んでもらいたくはない。

( ^ω^)「はっ!!」

思いっきり押し出すように拳を突く。喰らった相手はそれだけでおもしろいように吹っ飛んでいく。
何故かは分からないが、僕の身体能力は著しく成長しているようだった。



31: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:32:19.29 ID:WLo/6wps0
  
( ゚∀゚)「うはははははwwwwwwうはwwうははwwwおっぱいwwおっぱいww」

ジョルジュは本当にやりたい放題だった。気絶した男の足を掴んでそれを上下に振って攻撃したり、
挙句の果てに回転しながら突っ込んでいく。ぜってー楽しんでる…

強面の男「くそっ!!全員奴らから離れろ!銃を持っている者の援護をしろ!」

(;^ω^)「!?」
( ゚∀゚)「うはははははwwwwそんな玩具がオレに効くかーぃ!!」

銃だって!?まずい!そんなの…
ツンが避けられるはずないじゃないか!!

(;^ω^)「ツン!!にげr
強面の男「撃てぇえ!!」

一斉に銃声が轟く。僕は全力で彼女の元まで走る。走る!走れ!間に合え!!



32: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:33:56.01 ID:WLo/6wps0
  
ξ゚ -゚)ξ「………」
ξ゚听)ξ「やっ!」

僕は足を止める。
ツンの掛け声と共に彼女の目の前に黒い霧のようなものが出来る。
霧は徐々に姿を変え、硬質化していき、彼女の前に立ち塞がる黒色の壁になった。
壁は銃弾を弾き飛ばし、役目を終えたのかまた霧状になって霧散していった。

ξ゚ -゚)ξ「………」
強面の男「ば、馬鹿な!!無傷だとぉ!!」
( ゚∀゚)「ざ〜んね〜んでしたwwwてめぇも寝てろww」

骨の折れる音が辺りに響き渡る。指揮していた男がいなくなったことで他のオブサーブの連中が逃げ出す。
そんなことより……



33: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:34:40.89 ID:WLo/6wps0
  
(;^ω^)「ツン!大丈夫かお!?それにさっきのは何だお!?」
ξ゚听)ξ「…あれは…」
( ゚∀゚)「おいおいおい!こんなとこで話し込んでたらまたイッパイ来るぜ?とりあえずセクションから出ようぜ?」
(# ^ω^)「何であんたが仕切ってんだお!大体あんたには関係ないことだお!」
( ゚∀゚)「関係ない事もないんだが…まぁ何だ。ここで話てんのが一番の愚作だと思うぜ?」
(;^ω^)「そら…そうだけど。」
ξ゚听)ξ「ブーン。この人が何者かは分からないけど言ってる事は正しいわ。ここにいるのはやっぱりまずいわよ。ね?」
(;^ω^)「………分かったお。」

ジョルジュの提案に乗るのが何となく気に食わないが、確かに早いとこここから去ったほうがいい。そう思い歩き出した途端。

ぎ……

(;^ω^)「……!?」
ξ゚听)ξ「どうかした?」
(;^ω^)「いや……何でもないお。先を急ぐお。」

…今…僕の体から…心臓から…金属の擦れるような音が聞こえた気が……
気のせい…だよな?



34: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:36:42.81 ID:WLo/6wps0
  
僕はジョルジュにこれまでの経緯をかなり掻い摘んで説明した。
別に説明する必要もなかった気がしたが、一応は助けてもらったし(明らかにこいつのせいだけど)、
今は敵対する様子もない(殺されかけたけど)。
それに、僕には今何をすればいいのか分からない状態に落ちっている。フワフワと漂い、地に足が着いていない。
何でもいいから方向性を決めたかった。そのために流れを変えるきっかけが欲しかった。

( ゚∀゚)「あーー……つまりはそこの嬢ちゃん助けて指名手配されたってわけだな?」
( ^ω^)「まぁそんな所だお。」

僕が何かに変わった事や、ツンがVIPに向かっている事などは伏せておいた。
ツンの事に関しては僕が勝手に言っていいものか分からないし、僕に関しては……正直何て言えばいいのか分からなかった。

( ゚∀゚)「はん。大体分かった。細かい所までは聞く気はねぇよ。それよりだ。」
ξ゚听)ξ「な、何ですか?」



35: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:37:37.87 ID:WLo/6wps0
  
ジョルジュがツンの方を向く。さっきセクハラされたからかツンの方は若干体が下がり気味だ。

( ゚∀゚)「安心しな。もう感触は覚えたから触らねぇよ。そんなことよりもだ。」
( ゚∀゚)「嬢ちゃんあんた……『聖女』だな?」
ξ゚ -゚)ξ「………」

ツンは答えない。

( ゚∀゚)「誘拐しただけでマスター勅令の犯罪者扱い。そんなモン政府関係者…しかもかなりの重要人物じゃない限りありえねぇ。」
( ゚∀゚)「更にさっきの銃弾を防いだアレだ。ありゃ『黒の壁』……だな?」
(;^ω^)「ちょちょちょ!ちょっと待つお!黒の壁って確か。」
( ゚∀゚)「ああ。この2CHを覆ってる馬鹿でけえ壁のことだよ。そして聖女だけがそいつを生み出す事ができる。」
ξ゚ -゚)ξ「………」
(;^ω^)「良く意味が分からないお。ツン、どういう事だお?」
ξ゚ -゚)ξ「………」

ツンはやはり答えてくれない。



36: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:38:47.36 ID:WLo/6wps0
  
( ゚∀゚)「おめぇ…何にも知らねぇのか?聖女ってのはな。」
ξ゚听)ξ「……世界の殻である黒の壁を生み出す……機械よ……」
ξ゚听)ξ「……使い捨ての…ね…」
( ゚∀゚)「…だ、そうだ。」
(; ω )「使い捨てって……どういう意味だお……?」
ξ゚听)ξ「そのままの意味よ……だから…死にに行くってことよ…」

死にに行く……死ぬために……またその言葉……また……死

(; ω )「何で……何のために死ぬんだお!」
ξ゚听)ξ「あの壁は少しづつ、少しづつ狭まっていくの。
      その総面積を増やして、世界の崩壊を防ぐのがアタシの役目。」
ξ゚听)ξ「さっきみたいな小さなものじゃない。もっと大きな物を作らなければならない。そのためには……」
ξ )ξ「命を……消費しなければならない…」
ξ ー )ξ「アタシが死ねば……皆は生きられるんだよ?アタシが死ねば……」



37: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:39:23.70 ID:WLo/6wps0
  
アタシが死ねば……アタシが死ねば……死ねば?死ぬ?死ぬだって?そんなの…

(  ω )「ツンは…ツンは死にたいのかお…?」
ξ - )ξ「………」
(  ω )「死ぬってのが……どんなに辛いか分かってんのかお?どんなに痛いか分かってんのかお?」

体を突き破る剣の感触を思い出す。熱いのに…冷たくて…暗くて……自分が消えることだけが嫌にはっきりしてて……

ξ - )ξ「………」
(# ゚ω゚)「答えるお!!お前死にたいのかって聞いてんだお!!」
ξ )ξ「……何よ…」
ξ )ξ「アタシだって…アタシだって……」
ξ#゚听)ξ「何よ!何にも知らないくせに!!アタシだって死にたくなんてないわよ!!」
ξ#゚听)ξ「アタシだって普通の女の子として生きたかったわよ!!けどダメなんだもん!!もう変わらないの!!」
ξ;;)ξ「どうしたってアタシの運命は変わらないんだもん!!何したって同じなんだからぁ!!」
ξ;;)ξ「同じだったら……人のために死んだほうが……いいに決まってるじゃない…いいに決まってるでしょ!!!」



38: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:40:16.62 ID:WLo/6wps0
  
( ゚∀゚)「あ〜〜〜〜!!まぁ何だ!!ここで議論してたって何にも解決しねぇぞ?違うか?」
(# ゚ω゚)「うっさいお!!今はあんたなんかと話してる場合じゃないんだお!!」
(# ゚ω゚)「大体あんた何々だお!何でまだここにいんだお!!さっさとどっか行けお!!」

!?

( ゚∀゚)「ちったぁ頭冷やせこの馬鹿。みっともねぇ。」
(;゚ω゚)「つう……」

頬に突き刺すような痛みを感じる。視界がグワリと揺れる。知らぬ間に尻餅をつく。

( ゚∀゚)「オレに噛み付いてどうすんだよ、このどあほ。」
( ゚∀゚)「いいかよく聞け?てめぇの境遇には若干の同情はしてやる。不安になって誰かにあたりたくなる気持ちもわからんじゃねぇ。」
( ゚∀゚)「けどな?こんなとこでグチグチやってたって何も変わんねぇぞ?」
(;^ω^)「………」
( ゚∀゚)「彼女助けたいから危険な思いしてまで一緒にいんだろ?だったらそれを彼女に押し付けるんじゃねぇよ。
     んなの親切の押し売りだぞ。自分でも分かってんだろ?」

今度は頬じゃなく心に突き刺すような痛みを感じる。本当に…暴力的な男だ。

( ゚∀゚)「嬢ちゃんもいい加減泣き止めや。な?」
ξ;;)ξ「…ン……ひ……」
(;゚∀゚)「……ああったく!苦手なんだよこういうのは!」
( ゚∀゚)「……あ〜っと何つったかお前?」
(;^ω^)「……ブーン。」
( ゚∀゚)「ああそうブーンな!いい名前じゃねぇか!それでだブーン!おめぇこれから何処か行くあてとかあんのか?」
(;^ω^)「いや……」

行くあても何も……これから何をすれば……どうすればいいのかさっぱり分からない。



39: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:40:58.67 ID:WLo/6wps0
  
( ゚∀゚)「どうせ何も考えてねぇんだろ?オレが道を示してやるよ。」
( ^ω^)「道?」
( ゚∀゚)「ああ道だ。もしかすっと嬢ちゃんもどうにかなるかも分かんねぇ。」
ξ゚听)ξ「……アタシ?」

目の周りを真っ赤に晴らしてツンが聞く。どうにかなるかも…とは?

( ゚∀゚)「あんまり期待はさせられねぇけどな。今までの話、聖女くんだりの所だ。
     あれな、オレの知り合いから聞いたんだわ。」
( ゚∀゚)「こんな仕事してっと色んな知り合いがいてな、何でもかんでも知ろうとする、
     それが意味があっても無くてもお構いなしで知りたがる変人がいんだよ。」
( ゚∀゚)「もしかしたら…そいつならおめぇらに対しても何か教えてやれるかもしれねぇ。」
( ゚∀゚)「勘違いすんなよ?これは絶対じゃねぇ。もしかしたら、だ。むしろ徒労に終わる可能性のほうが高ぇ。」
( ^ω^)「…その人は…どこにいるんだお?」
( ゚∀゚)「第6セクションW。普段ならそうでもないが、追われる身のおめぇらにはかなりキツイ旅路になると思うぜ?
正直このまま隠れ続けてたほうが安全かも分からん。」
( ゚∀゚)「随分と細い道で、途中で途切れてるかも知れねぇ。どうする?決断はおめぇに任せんよ。」
( ^ω^)「………」

細い道…途中で途切れているかもしれない…先が暗闇に覆われている道……だが。

( ^ω^)「そんなの…決まってるお。」
( ゚∀゚)「はっw」

僕は座ったままの姿勢でジョルジュに向かって手を差し出す。
確かに道は細くて暗い。だけど…道が無いより断然マシだ。
もし途中で道が途切れたら…僕がこじ開けてやる!破壊してでも作り出す!
ジョルジュは僕の手を掴んでくれた。



40: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:41:37.04 ID:WLo/6wps0
  
( ^ω^)「ツン。」
ξ゚ -゚)ξ「………」

僕は歩きながらツンに話しかける。無論話題はさっきの事。

( ^ω^)「さっきは…八つ当たりしちゃってゴメンだお。」
( ^ω^)「もうあんな事は絶対にしないお。」
( ^ω^)「だから…死んでもいいなんて言わないで欲しいお。」
ξ゚ -゚)ξ「………」
ξ゚听)ξ「アタシこそ…御免なさい。感情的になりすぎて。」

ツンは歩みを止め、体全体をこちらに向けて話す。
僕もツンの方を向く。必然的に向かい合う形になる。

ξ゚听)ξ「何時か…気持ちの整理がついたら全部話すから…その時まで待ってて欲しいの。」
( ^ω^)「分かったお。その時までは何も聞かないことにするお。」
ξ゚听)ξ「ありがとう…」

ジョルジュが先を促し、僕らはまた歩き出す。僕は歩き続ける。細い道をたぐる様に一歩一歩踏みしめて。
歩いて歩いて歩いて…その先に進むために!



41: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:42:54.09 ID:WLo/6wps0
  
/ ,' 3 「そうですか…ブーンが。」
背中の張った男「ええ。彼の中で悪魔が目覚めました。」

二人の男が話をしている。一人はこの部屋の主、荒巻スカルチノフ。
彼は難しい顔をしてもう一人の男を見つめる。

背中の張った男「貴方には他セクションのオブサーブの支援をしてもらいます。」
/ ,' 3 「支援…ですか?」
背中の張った男「当分はそれで良いそうです。」
/ ,' 3 「当分とはどれ位の期間の事を指すのでしょうか。」
背中の張った男「細かい時期は私には分かりません。その時が来れば私の方から伝えます。」

荒巻が渋い顔をする。彫りの深い顔がより歪められる。

背中の張った男「……貴方が辛いのは分かってます。長い付き合いですから。」
/ ,' 3 「…いえ、任務には支障はきたしません。私個人の感情などこの際無視して構いません。」

背中の張った男が先程より少しだけ体の張りを緩める。



42: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/26(水) 18:43:47.36 ID:WLo/6wps0
  
背中の張った男「……いつからでしたか…貴方が私に敬語を使い出したのは。」
/ ,' 3 「それが今回の任務と何か関係が?」
背中の張った男「いえ、ただの私的な話です。何だかむず痒いんですよ、貴方に敬語を使われるのは。」
/ ,' 3 「順列と規律は守らねばなりません。貴方の方こそ敬語はおよしになってください。」
背中の張った男「私のこれは生来の物ですから。全く頑固な方だww」
/ ,' 3 「貴方こそ食えない方だww」

少しの間二人は笑いあう。大きな声で笑うのではなく、あくまで抑えた笑い。

背中の張った男「話は変わりますが、ドクオ君は今どうしていますか?」
/ ,' 3 「自室にて待機させております。他の者の手前謹慎ということになっておりますが。」
背中の張った男「彼は私が借り受けます。少し試しておきたい事があるのです。」
/ ,' 3 「………御意に。」



第8話 「黒の壁」  終



戻る第9話