( ^ω^)ブーンの妄想が現実になってから1年後

93: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:01:20
  

同時刻、ニュー速市港

外からは入れないはずのこの街に、悠々と1隻の船が入港していた。
中型の貨物船。接岸したその船からは、十数人の人影が降りてきている。
その様子を港沿いの街道から見ている者が二人。

爪゚ー゚)「確か、結界のようなものが張られていてこの街には誰もはいれない…という話ではなかったかな?」
爪゚∀゚)「そうだな。ショボン殿が言うからには本当だろうが、そうすると怪しいな、あの連中」

リーゼの家、本来はつーの家だが、それは港の近くにある。
いつものようにゴロゴロしていたら船が見えたのでレーゼと共に様子を見に来ていたのだが、まさか偶然、街を囲む壁に穴が開いていたというわけではないだろう。
これは思ったよりも大事かもしれない。

というのも、船から下りてきた集団。
男女混合、数は十数人か。
いずれも一般人にあらず、という匂いを感じる。そしてその集団に指示を出しているらしい女。

爪゚ー゚)「距離があるせいもあるが…気配を感じさせんな」
爪゚∀゚)「この街を封鎖した上で罷り越した敵の本隊、といったところか」
爪゚ー゚)「早々に知らせるべきだろう。このまま歩いて帰っても気づかれんだろう。ただの人間には興味ないらしいからな」
爪゚∀゚)「……それが出来れば良いだろうが」

そしてなによりも、空の彼方から大事に至る最大の要因が迫ってくる。
船を通すためにあいた穴に向けて、外部から高速で飛来する黒いバイク。
あろうことかそのバイクは港を滑走路に見立て着陸し、船から下りた集団を追い抜きリーゼとレーゼの前で停止した。

('A`)「お?…なんでお二人さんここにいんの?」
(*゚∀゚)「やほ。ただいまー」
爪゚ー゚)「…良かったな姉上。愛しのつー殿が帰ってきたじゃないか」
爪゚∀゚)「むぅ…」

常時なら勢いあまって口づけの一つや二つしても構わないのだが。
それも明らかにこちらに向けて歩き出したほぼ間違いなく敵と思われる集団がいなければの話で。



94: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:01:35
  

爪゚ー゚)「時にドクオ少年。そのバイクは人間を相手にできるのか?あのリリィのように」
('A`)「少年って言われるとさすがにきついんだが…なに、俺もしかしてマズった?」
爪゚∀゚)「大いにな」

リーゼとレーゼが担いでいる剣袋から剣を取り出し、利き手に滑り止めつきのグローブを嵌める。
ロシアでは軽鎧に具足もついた完全装備だったが、私服姿でも騎士然と見えなくもないから大したものだ。
二人に習いつーもドクスペから下り、細剣を構える。

(*゚∀゚)「良くわかんないけどもう敵っぽいのが来てるんだ。あーぁ。こんなとこに降りちゃってドクオ君なにしてんのー?」
('A`)「あ、悪いの俺だけなんだ。……穴開いたから行けっつったのつーさんなんだけど」
(*゚∀゚)「ふふん?」

まぁ、街に帰ろうにも見えない壁があって足止めを食らっていた身としてはどの道突っ込むしかなかったのだが。
微妙な文句を飲み下して前を向く。
こちらに向かってきているのは6人、指示をだしていたらしい女を含む大半は様子を見ている。

('A`)「で、人間相手って言われても轢くくらいしか出来ねぇけどさ、かえって邪魔にならね?」
爪゚∀゚)「…そのサイズで割ってはいられると」
爪゚ー゚)「たしかに邪魔だな」
('A`)「だろ。てわけで俺見てるわ。どうせ負けないだろ?」
(*゚∀゚)「負けそうだったらどうするの?」
('A`)「主砲一発」
(*゚∀゚)「わお。粉微塵」

軽口を最後につーが駆け出し、双騎士がそれに続く。
対して散開し身構える敵。



95: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:01:48
  

爪゚∀゚)「はっ!」
爪゚ー゚)「一人!」
(*゚∀゚)「おなじく!」

それぞれの初撃で敵三人が地に伏せる。
次いで薙ぐ刃二つが一人斬り、三段の突きが一人を無力化した。
この時点で6人いた敵は1人を残すのみ。
だが、最後の一人は笑っていた。

「ニヤニヤ(・∀・)」
爪゚ー゚)「…ずいぶんと余裕があるな?」
爪゚∀゚)「残るは一人。残りの連中が来る前に…」
(*゚∀゚)「!?避けて!」

つーの声に反応し、リーゼが横に飛ぶ。
同じようにつーとレーゼも回避行動。三人は自然と背中合わせに集まっていた。
三人を取り囲むのは、倒したはずの敵5人。

傷口から血を滲ませながら、平然と立っている。
全員が、薄ら笑いを浮かべていた。

(*゚∀゚)「んん…」
爪゚ー゚)「全員が再生タイプ…なのか?」
爪゚∀゚)「ふん…ならば少々手荒くしても良いな!」

最近家でゴロゴロしていた反動か、覇気余るリーゼが吶喊する。
おかげで場の流れが崩れ、リーゼの向かった方向以外の敵が一斉につーとレーゼに襲い掛かった。

(*゚∀゚)「あっバカ!」
爪゚ー゚)「…ちぃ!」



96: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:02:03
  

爪゚∀゚)「今度は致命の一刀!参る!」

数メートルを二足で駆け、高速で流れる視界に敵を捕らえる。
数は二人、左右に展開。近いのは左。
左の敵に肉薄、ブレーキの勢いをそのままに回転し、両断せんと横に薙ぐ。
その一刀は敵の鼻先をかすめ空を切った。

爪゚∀゚)「かわすか!」

バックステップで距離をとった敵から、右の敵に気を移す。
地を滑るように間合いを詰める右の敵。
右の敵は堅実な動作で、リーゼの水月目掛けて拳を突き出す。

予想よりも動きが良い。
久しぶりの運動にしては少しばかり血の気が多いが、これこそ本分だと皮膚で感じる。
その闘争の歓喜を噛み締めながら、リーゼは迫る拳を切り落とすつもりで剣を振るった。

爪゚∀゚)「…!?」

肉を切る手ごたえは訪れず、代わりに鉄を打ったような音が聞こえた。
振るった剣に敵の拳は跳ね飛ばされはしたものの、切り落とされてはいない。
そればかりか、その手についた傷は見る見るうちに治っている。

爪゚∀゚)「な、なんだと…硬質化?それに再生、か?」

リーゼの狼狽に、右の敵が頬を歪ませる。
もう手首の傷は治っていた。良く見ればその皮膚はわずかに光沢を発する鉛色をしている。
背後には左の敵がつき、同じように鉛色をした拳を構えていた。



97: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:02:17
  

爪゚ー゚)「…こいつら!」

背中越しにつーを感じながら、レーゼは3人を相手にしていた。
敵は3人ともが鉛色に変色した四肢を繰り出してくる。
3方向から絶え間なく続く攻撃をはじきながら、レーゼは姉のほうを見た。

爪゚ー゚)「あちらもか…!ホルダーの能力は一人1つのはず…だが!」

目の前に迫った蹴りを弾く。
拳ならず足も金属的な音を立て、たいしたダメージは与えられない。
むしろ、剣が刃こぼれするほどの硬度。

(*゚∀゚)「んーん…後ろもヤバ気だねぇ…」

背後でレーゼがパリングの嵐を演じているのと対照的に、つー側はひどく静かだった。
つーが相手にしているのは最初に倒れなかった最後の一人。
その敵はつーの突きを素手で掴み取っていた。

細剣を握り折られる前に腕の仕込み警棒で目を狙う。
不意をついたその一撃を野生動物のような俊敏さで避け、敵はつーと間合いを広げた。
強化された感覚に、どこかで感じたような違和感がある。

(*゚∀゚)「気配…第六感にぴりぴりくるこの感じ。まるで…」

ひとつの体で複数のスキル。
誰かがスキルを使っているという同類にしかわからない感じが、歪なものとなっていくつも伝わってくる。
そう。まるで1年前に少しだけ見た、ジョルジュ長岡のように。



98: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:02:30
  

('A`)「三人ともどけ!!」

つーとリーゼ、レーゼ。それぞれの考え事をドクオの声が吹き飛ばした。
ドクスペは装甲展開を完了し、砲身をまっすぐ集団にむけている。

爪゚ー゚)「むっ!」
爪゚∀゚)「心得た!」
(*゚∀゚)「きたきたっ」

敵が逃げる前に即座に散開し離脱する。
ドクオの意図に気づいた敵が動き出すのと、ドクスペが徹鋼弾を放つのは同時だった。
狙いはつーとレーゼがいた辺り。
直撃させずとも、至近距離で着弾させれば衝撃その他諸々でどうにかできる。

思惑通り、港の舗装を砕き砂煙をあげて着弾した一撃は、その周辺にいた敵をわずかな間混乱させた。
ほんの数秒程度だが、それだけで十分。

('A`)「乗れ!!」
(*゚∀゚)「…全員のれるの?」
爪゚ー゚)「乗ったぞ!」
爪゚∀゚)「というより掴まったぞ」

つーが後部座席に乗り、リーゼとレーゼは展開した装甲の出っ張りに足を乗せ車体につかまる。
その珍妙な格好のままドクスペは勢い良く走り出した。
砂煙がはれ敵が立つのが見えるが、それも遠ざかり、やがて見えなくなった。



99: 名無しさん :2006/10/13(金) 02:03:09
  

('A`)「…なんだったんだ、ありゃ」
(*゚∀゚)「ロシアの金髪男といい、帰ってそうそうのアレといい…嫌な予感がするね?」

ある程度距離を稼いでから、ドクスペは速度を落とし直線道路にはいった。
リーゼとレーゼが乗っているため、装甲は展開したままだ。

('A`)「あぁ。とにかくバーボンハウス行って先生にくわしい状況聞いてみないとな」
爪゚ー゚)「ふむ?それなら連絡をいれておこうか」
爪゚∀゚)「…携帯電話を使うのか?…そこを押したら話ができるのか?ん、違う?その数字は(ry」

巨大なバイクの上に立ち電話をする若い女。
異常極まりないその様子が心地悪かったのか、ドクオはバイクをとめた。
ついでにつーが近くの自販機で飲み物を買ってくる。

爪゚ー゚)「?……でないな。それほど忙しい時間でもないはずだが」
('A`)「留守ってわけでもないよな」
爪゚∀゚)「でですね、つー殿。最近つー殿は外出が多いわけで、私も携帯電話なるものを持ったほうが連絡もとれて良いかと」
(*゚∀゚)「そんなことしたらすっごい電話かけてきそうだからダメ」
爪゚∀゚)「…むぅぅ!」
('A`)「家の電話でかけりゃ良いんじゃね?」
(*゚∀゚)「ちょっ…」
爪゚∀゚)「なんと?もしや家の電話からも携帯電話につながる?」
(*゚∀゚)「あー…ドクオ君それ秘密にしてたのに」
('A`)「……まさか知らなかったのかよ」

家電の使い方をたずねるリーゼをはぐらかすつー。
その様子を眺めながら、ドクオは煙草を一本取り出した。
空では風が強くて吸えなかったし、地上に降りたときも何かと騒ぎに巻き込まれたせいで、ずいぶん久しぶりに思える。

('A`)「ふぅー…今も平和ってわけじゃないけど、なんつーか久々にゆっくり座れたぜ」



102: 名無しさん :2006/10/13(金) 23:37:56
  

ドクオが久しぶりに腰を下ろして、煙草を半ば吸い終わった頃、ようやくレーゼの携帯がつながった。

爪゚ー゚)「ん…もしもし」
(`・ω・´)「もしもし!誰だ!?」

周りにも聞こえるでかい声だった。
緊迫しているように聞こえる。
ドクオやつーが何事かと聞き耳をたてると、電話のむこうで派手な破壊音が聞こえた。

(`・ω・´)「レーゼちゃんか…!なぁ、強いんだろ!?すまんが助けにきてくれんか!」
爪゚ー゚)「…!何事か!?」
(`・ω・´)「こっちが聞きたい!白いバイクが変形して!ウチの愚弟と喧嘩してやがる!」
(*゚∀゚)「!…金髪の」
('A`)「……なんてこった」

まったく考えなかった訳ではない可能性。
ロシアで金髪の男FOXは、次に会うときは敵になるなといった。
次に会うときは。
おそらく最初からもう一度会うとわかっていたのだ。
この街に来ると、ドクオが出てこざるをえないと。

(*゚∀゚)「ドクオ君…」
('A`)「行かねぇ訳にはいかないよなぁ。先生ほっとくと後が怖ぇもん。それにバイクの相手はバイクがしないと、な」
(*゚∀゚)「…」

苦虫を噛み潰すような表情のドクオを見て、つーは口にしかけた言葉を飲み込んだ。
勝てるのか、少なくとも止められるのかという言葉を。



103: 名無しさん :2006/10/13(金) 23:38:14
  

地面が削れる音と、空気を切る鉄の四肢の音。
エンジンの廃棄熱が皮膚を焦がし喉を焼く。
ショボンは、リリィの懐にいた。

(´・ω・`) (機銃の稼動範囲はさほど広くない。問題は速度だな、距離が開けば掃射される…んだが、近いは近いで…)

思考を遮る轟音が頭上やや後方の死角から聞こえる。
同じくリリィの死角を点で結んだ七星の軌道を縫い、その轟音を回避。
舗装道路を砕き抜き、1年前自分の腹を貫いたリリィ必殺のパイルバンカーが突き立った。

(´・ω・`)「う…トラウマかな。腹が痛くなってきた」

こうして攻撃を避け続けてどれくらい立っただろう。
一度撃破を試みて思いっきりぶん殴ってみたが、さすがに普通の人間の強度では破壊は無理だった。
打撃力云々以前に殴ったほうの拳が砕ける。
かといって関節技なんか利くはずもなし、いくら技術があろうと生身ではどうにも攻めあぐねていた。

FOX「…すごいものだ。こうも避け続けられるとは、さすがは彼女と同じ最初の七人だな」
(´・ω・`)「そいつぁどうも」
FOX「どうだ、こっち側にこないか。衣食住つきボーナスあり、長期休暇も2回ある。有給も余分につけよう」
(´・ω・`)「…秘密結社ってのも地味に大変そうだな?」
FOX「おや、わかってくれるかね?どうだ、なんなら改造手術をしてもいい。何かなりたいものはあるか?仮面ライダーか大砲かついだ虎か?」
(´・ω・`)「ないね。俺がこれ以上かっこよくなったら犯罪だよ」

会話で気を散らせ距離をとろうとするFOXに尚も接近する。
押せば引き引けば押し、その様はまるで一緒に踊っているよう。
もちろんそんなくそったれなダンスを続ける気はないし、それはFOXも同じようだ。

FOX「それは残念…!」

リリィは1年前より後部ユニットが大幅に増設されている。
そこはパイルバンカーがある場所。FOXの気配が変わり、その増設されたユニットが展開を始めた。
蛇腹式のアームに先端の削岩針。パイルバンカー。
後部ユニットが展開しおわったとき、それは9本あった。

(´・ω・`)「ふん……九尾か、洒落てるな」
FOX「ふっ…見事避けてみせるかな?」



104: 名無しさん :2006/10/13(金) 23:38:34
  

一本目をかわした先に二本目。
身を捻ってかわした二本目の死角から三本目。
それを蹴って跳躍した中空で交差する4、5本目を、全力の蹴りで軌道をそらす。
次いで着地点を狙う6,7本目を避ける手段を考えるが。

(´・ω・`) (あ、やべぇ)

どうにもならない。
死を覚悟、なんてのにはまだ早すぎるが、怪我の覚悟はしておこう。
ショボンがそう思うと同時に、意識の隅でこの九尾に飛び込んでくる気配を感じた。
一瞬後に響く鋼を弾きうける鉄の怪音。

爪゚∀゚)「守り太刀!」
爪゚ー゚)「仕る!」

6と7本目は、飛び込んできた二人に防がれた。
予想外の相手に8本目が軌道を乱し地面に突き刺さる。
そして最後の9本目が、その先端に徹鋼弾をうけて制御を失う。

FOX「おや」
(´・ω・`)「おや」
爪゚∀゚)「間に合ったな」
爪゚ー゚)「無事か、宿主殿」
(´・ω・`)「良いところに来るじゃないか。あれか、さては俺がピンチになるのを待ってたな?」

双騎士は剣を正眼に構え、次の一撃に備える。
FOXは九尾を打ち下ろしたまま、明後日の方向を向いていた。
その方向は9本目のパイルバンカーを弾いた弾丸の来た方向。

FOX「…やぁ?」
('A`)「なれなれしいぜ?」

鈍く光る砲身に隠しようのない敵意をのせ、ドクスペを駆るドクオがいた。
いつのまにか胸ポケットに刺していたサングラスをかけ、俯き加減にそう言い放つドクオは、見ようによっては表情を隠そうとしているように見える。
さらにドクオ自身を隠すように、展開装甲が完全に座席を包み込む。

('A`)「どいてな先生…!」

半円錐のような装甲形態。
その身中に少ない勝算を覆い隠し、ドクスペが駆ける。



124: 名無しさん :2006/10/25(水) 06:32:05
  

リリィは改修されている。
後部に追加されたパイルバンカーは、もともとあったものを含めて4本。
ロシアでの追いかけっこを考えると他にも内部を色々といじっているのだろうが、見た感じ変わっていないものがある。

脚部。9本のパイルバンカーだけでも、その重量はそれはもうえらいことになっているだろう。
だがそれを支える脚部は以前と同じように見える。
その脚部に体当たりすればどうなるだろう。

('A`) (折れなくても良い。曲がれば自重を支えきれずに)

向き直るリリィに尚も迫りながら、ドクオはコンソールを操作する。
応え展開する翼はピンセットのように変形し、前輪部と接合。
巨大な角錐となる。

FOX「…?馬鹿らしい。体当たりか?」

脚さえ壊せば、おそらくリリィは自重を支えきれずに、潰れる。
パイルバンカーや火器は健在だがその時点で移動は不可能となり、そうなればこの場にいる面子でどうにでもなる。
脚を潰すだけで。

('A`)「…そうだ、油断しろ」

閉ざされた運転席で呟き、ドクオはハンドル横にあるスイッチのカバーを開けた。
言うは易しというが、実際脚を潰すにしても素直に体当たりを食らってくれるわけでもない。

機動力で勝るリリィに当てるには目をくらまし、虚を突く必要がある。
ドクオはスイッチに指をかけ、コンソールに最後の指示を打ち込んだ。

(´・ω・`)「…なんか危なそうだな、かやの外だしちょっと下がってよう」
爪゚∀゚)「……張り切ったばかりなのだが…」
爪゚ー゚)「それより当たるのかあれは?」



125: 名無しさん :2006/10/25(水) 06:32:25
  

FOX「よく出来ている機械を壊すのは忍びないんだがね」

重心を落とし、リリィが迎撃体制をとった。
9本のパイルバンカーが滑らかに動き、その切っ先がドクスペに向けられる。

('A`) (やっぱりな。ちょっとばかし脚の動きが重い。間接にかかる負荷が増えてるんだ)

重心を落としたあの体制では、とっさの回避行動はできまい。
そもそも回避せずともパイルバンカーでうけとめるようになっているのだろう。
そこが唯一の勝算だった。

ドクスペはリリィをかく乱するように蛇行する。
その際に主砲を展開、1発だけ装備している煙幕弾を発射した。

FOX「そんな物もついているのか!」

煙幕がFOXの視界をさえぎる。
ドクオの視界も同様に煙に遮られるが、ドクオには音でリリィの位置がわかった。
リリィの間接の駆動音が聞こえるが、やはりわずかな隙が出来ている。

その隙を見逃さずに、ドクスペはリリィの側面にドリフト移動。
侵入角を変え、ドクスペの嘴はリリィの横腹を捉えた。

('A`)「勝った!油断しやがってこのキザ野郎が!」

そして、ドクオは最後にハンドル横のスイッチを押した。
それは離陸時の加速に使うニトロの点火スイッチ。
爆音と高熱がマフラーから溢れ、ドリフトで失った加速分をそれ以上の急加速が補う。

('A`)「魁男塾!!」

ドクオの意味不明な叫びとともに、ドクスペは煙の中へ突っ込んだ。



126: 名無しさん :2006/10/25(水) 06:32:42
  

爪゚∀゚)「おお!やったか!?」
爪゚ー゚)「…む、う?」

破砕音はしなかった。
かわりに聞こえるドクスペの急ブレーキの音。
ドクスペはリリィを捉えることなく、煙の反対側へ突き抜けていた。

('A`)「そっ…」
FOX「んー…油断と余裕は違うんだよ、ドクオ君」

ドクスペの突進にかき消され、煙が晴れる。
FOXはドクオを見下していた。文字通り、頭上から。

地面に打ち込まれた6本のパイルバンカーによって、リリィは中空にあった。
脚よりはるかに長いパイルバンカーで体を支えているため、リリィのいた場所は空洞になっている。
ドクスペはそこを通り抜けたのだ。

('A`)「そうくるかっ…!」
FOX「まぁ、そうだな。惜しかったと思うよ」

宙にあるリリィから、残る三本のパイルバンカーが奔る。
とっさに防御に回した翼を砕き尚も止まらず、一本は前輪を、もう一本は運転席の展開装甲を削り取る。

('A`)「く、くっそ…」
FOX「遺憾だ。実に遺憾だ!とても遺憾だ!」

そして最後の一本、オリジナルのパイルバンカーが、削り取られた装甲の隙間からドクオを狙う。
その一撃は、ドクオの脇腹をえぐりドクスペを貫通した。



127: 名無しさん :2006/10/25(水) 06:33:04
  

('A`)「かっ…っ…!」
(´・ω・`)「あの馬鹿やられやがった!」
爪゚∀゚)「いくぞ!」
爪゚ー゚)「うむ」

リリィがパイルバンカーを引き抜くと同時に、三人が駆け出す。
血とオイルの滴るパイルバンカーを収納し、リリィは緩慢に地に降りた。
一仕事を終えたような顔つきでFOXが振り返る。

FOX「…三十秒規制」

ため息を漏らすようなその一言で、三人の動きは止まった。
慣性など無視したかのように、反動もなしに完璧に動きが止まる。
その様子はまるで、時を止めたよう。

(´・ω・`)「っ!この…!これは」
爪゚∀゚)「ふっ…ぬぅぅ!」
爪゚ー゚)「いくら力をいれてもダメか…!」
FOX「ふふ。なに、すぐに動けるようになる。その前にドクオ君にとどめを刺させてもらうがね」

余裕の表情で腕時計を見て、FOXはショボンを一瞥する。
だが、ショボンは笑った。

(´・ω・`)「あぁ…そりゃ無理だ」
FOX「ん?」

FOXはドクスペに視線を戻す。
動く力などないはずのドクオの姿はそこにはなかった。
変わりに点々と続く血の跡。

FOX「あぁ…そういえば、居たね。君」
(*゚∀゚)「……」

少しだけ機嫌を損ねたようにも、ただ気だるそうにも取れる声色で、FOXが漏らす。
言葉の先には、血に濡れることも構わずにドクオを背負い、FOXを睨むつーが居た。



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