( ^ω^)ブーンの妄想が現実になってから1年後

176: 名無しさん :2006/12/16(土) 20:33:44
  
時刻は午後10時を回っている。
大きな歓楽街もないこの街ではすでに活気が失せている時間帯。
だというのに、病院はしだいに喧騒を増していっていた。

爪゚ー゚)「なぁ姉上」
爪゚∀゚)「ん?」
爪゚ー゚)「少しけが人が多くないか?」

つーを治療室前に残し外の空気を吸いにきていた双騎士は、何人かの急患とすれ違った。
その全員が物理的な怪我を負い、救急車は休むことなく出入りを繰り返している。
夜風に乗って、街からは嗅ぎなれた匂いが漂ってきた。

爪゚∀゚)「昨日の今日、さっきの今で?…早すぎる」
爪゚ー゚)「だからこそ、かも知れないな。私たちはタイミングが悪かった」
爪゚∀゚)「そして運もか。一仕事の前に良い発破をかけてしまったか」
爪゚ー゚)「どうする?」
爪゚∀゚)「…そうさな……」

(´・ω・`)「おいおい、どうもするなよ」

リーゼとレーゼが声に振り返ると、いつのまにかショボンがたっていた。
開いたままの携帯で肩をたたきながら、心底面倒臭いといった表情で。

(´・ω・`)「用事が出来たんでちょっと出てくる。お前さんらはここにいてくれ」
爪゚ー゚)「物騒なようですが?」
(´・ω・`)「あぁ、そうだな」
爪゚∀゚)「いってらっしゃいませ!」
(´・ω・`)「おま…まぁいいか、いってくる」

二人にヒラヒラと手を振り、ショボンは愛車の方へと歩き出した。
途中で開けっ放しだった携帯に耳をあてる。
どうやら通話の途中だったようだ。

(´・ω・`)「おいギコ、迎えに行ってやるから感謝しろ。で、今どこ?」



177: 名無しさん :2006/12/16(土) 20:34:08
  
最初に目に入ったのは光。
次いで聞こえる爆音に、内藤はその足を止めた。
着地した民家の屋根から前方に数十メートル、やや見上げた先のビルの屋上で、爆発が起こっていた。

その光の中に、ビルから飛び降りていく影が見える。
どう考えても常人では有り得ず、加えてあの爆発。

( ^ω^)「…モニュ?」

呟き、腕に力を込めてみる。
かつてVIPを使えた頃の筋力増幅量は、通常時のおよそ6倍だった。
単純に言えば、普段50キロの物を持ち上げられる人間が300キロまで持ち上げられることになる。

少なくとも今、300キロの物は少々きつい。
おそらく増幅量は4倍程度、ごく平均的な身体強化タイプと同じくらいか。

( ^ω^)「ま、戦わないといけないわけじゃない、かお」

両拳にある手甲。一応は強化服であるための、気休め程度の防御力。
それを加味して考えて尚、1年前の7割程度の戦力だと分析する。

モニュは今内藤が身につけている強化服のことをオリジナルといった。
とすれば、量産品が出回っているということだろう。
都合よく試作品だけ性能が良いということはないはずだ。敵にも同程度の身体能力はあると考えたほうが良い。

( ^ω^)「それプラスあの爆発する煙草はちょっと勘弁だお。逃げるが勝ちだお」

幸い、ツンの家はもうすぐそこだ。
もし途中でモニュと出会ったらすぐ逃げると決めて、内藤は民家の屋根を踏み抜き、跳躍した。



178: 名無しさん :2006/12/16(土) 20:34:23
  
ξ゚听)ξ「…なんか騒がしいわね。工事?かしら?」

ツンは本を読む手をとめ、何気なく窓の外を見た。
見えるのは夜の闇と、隣家の壁。それとベランダくらいのものだ。

ξ゚听)ξ「なんだろ。まぁ、なんでもいいけど」

本気でどうでもいいという顔をして、再び手にした本に視線を落とすと、ツンは雑音を忘れ自分の世界へと入り込んだ。
それから十分も経ったころ、唐突にベランダで音がした。
それは着地音のように聞こえ、さらには聞きなれた声が続く。

( ^ω^)「ツン!」
ξ;゚听)ξ「ビクゥッ!」

完全に気を抜いていた状態で、いきなり大きな音が立つ。しかも夜も良い具合に更けてきた頃合だ。
ツンは、それはもうビビった。ものっそいビビった。
怒りを堪え動悸を抑えながら振り向いた先のベランダには、不本意ながら良い仲である男が、こともあろうに変な全身スーツで佇んでいる。

ξ゚听)ξ「あっ…」
( ^ω^)「ツン!今この辺りで」
ξ#゚听)ξ「あんたねぇーっ!!」
(;^ω^)「お!?」
ξ゚听)ξ「通報するわよこの不審者!なにそのカッコ!ていうかなんでベランダにいるのよ!?」



179: 名無しさん :2006/12/16(土) 20:34:38
  
今まで読んでいた本を力強くかつ丁寧にベッドに叩きつけ、ツンは腕まくりをしてベランダに歩いていく。
その間も口は止まらない。
勢いよく窓の鍵をあけ、一気に開ける。

(;^ω^)「いやこれには深いわけがですね。玄関から入るにはこの格好はですね」
ξ゚听)ξ「やかましい!あんたそんな格好で何しにきたのよ?答えいかんによっては…」
( ^ω^)「いわゆるひとつの、夜這い?」
ξ゚听)ξ「      」

口を開けたまま、ツンが固まる。
次に顔色が青くなり、赤くなり、また固まり、やっぱり青くなり。

( ^ω^)「ってのは冗談だお」
ξ゚听)ξ「へっ?あ、あぁ!そうよね!あははは…コロス!」
(;^ω^)「おっおっお!?……ぐえ」

憤怒の形相で首をしめあげられ、内藤はわりと本気で死を垣間見た。



183: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:10:54
  
ξ゚听)ξ「…あ」
( ^ω^)「ぐっ…な、なんだお?」

内藤の首をしめながら、ツンはふと何かを思い出したように内藤の顔を凝視した。
しだいに腕の力が抜け、内藤はようやく息苦しさから解放される。
ため息をつく内藤に対して、ツンは唇に親指をあて、何か考えている様子だ。

( ^ω^)「どしたおツン?」
ξ゚听)ξ「いや…あんたさ」
( ^ω^)「ん?」
ξ゚听)ξ「今まで何処行ってたのよ…」

まだ首に絡められていた手は内藤の背中に回り、内藤の顎の下にツンの頭が納まる。
年に1回見られるかどうかの潮らしい姿を見て、内藤は感慨深いものを感じていた。
一応は心配してくれていたようだ。

( ^ω^)「ツン…心配かけ」

自然に腕が動く。
ツンの体を抱きこむように体全体が撓んだ瞬間、ツンの頭が跳ね上がった。

ξ゚听)ξ「で何しにっ!?」
( ^ω^)「へぶっ!」

結果、ツンの頭が内藤の顎に強烈なアッパーを見舞う。
喋っている途中だったため内藤は思いっきり舌を噛み、ツンはツンで頭頂部を押さえ悶絶した。
ようやく内藤が今までの経緯を説明するのは、これから数分がたってからだった。



184: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:11:22
  
ξ゚听)ξ「で…街で破壊活動?してるから逃げろって?」
( ^ω^)「そうだお、さっきから聞こえる音はその音だお。くる途中で見たけど、大分派手にやってるお」

内藤はツンの部屋で正座させられていた。
対するツンはベッドに腰かけ、話しかけるたびにつま先で内藤のでこをつんつんしている。

ξ゚听)ξ「ふーん…今から私が逃げたとして、あんたどうすんのよ」
( ^ω^)「そりゃぁ…ついていくお?」
ξ゚听)ξ「この辺の人を置いて?」
( ^ω^)「ツン…僕は正義の味方じゃあないんだお」

ツンのつま先に小突かれながら、内藤は顔をあげた。
内藤の浮かべた無駄に良い笑みに、ツンのつま先が止まる。

ξ゚听)ξ「う…な、何よ」
( ^ω^)「僕はツンの味方だお」
ξ゚听)ξ「それがどうしたボユゲ」

会心の微笑みを浮かべ、内藤はツンに近づこうとした。
が、ツンには伝わらなかった。なにか大事なものが色々と。
間髪居れずに動きを再開したツンのつま先が内藤の眼球に突き刺さる。

(;^ω^)「あおっ!ぉお痛っ!」
ξ゚听)ξ「私はこの辺の人を助けないのか、って聞いてるんだけど?」
(;^ω^)「い、いやだから…僕はツンの味方だから、ツンがそれを望むなら喜んで手伝うお、って事をですね」
ξ゚听)ξ「じゃ最初からそう言いなさいよ。かっこつけちゃって」
(;^ω^)「あっ、はい、すいません。だから蹴らないで欲しいお。あっ、痛い」

二人が外に出たとき、すでに住民は避難中だった。



185: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:11:59
  
夜空に上がる火の手を背に、住民たちが逃げていく。
先導する市の職員のおかげでそれほど混乱はなく、スムーズに避難できているようだ。
こういう事態に備えていたであろう市長に軽く感謝する。

( ^ω^)「……ん…」
ξ゚听)ξ「どうかした内藤?」

避難する住民の流れについていく形で屋根の上を進んでいた内藤は、ふと足を止めた。
腕に抱かれたツンをおろし、視線を道路向かいの屋根の上へ向ける。
視線の先にあるのは、とても小さな赤い灯火。

(=゚ω゚)ノ 「いぃーよぉ。なんだってぇんな目立つ所にいるんだお前さんは?」
ξ゚听)ξ「…誰?なんか似たような服着てるけど友達?」
( ^ω^)「…あ゛ー…」

敵。
ではあるが、明確に敵と言うにはいささか抵抗があった。
拉致監禁されたのは事実だし、おかげでツンにはいらぬ心配もかけた。

だが、今再び戦う力、ツンを守る力を手に入れたのも、モニュのおかげではある。
そういった心境、現実的な戦力を考えた上で、敵とは言いたくなかった。
敵といえばつまり、戦いになるからだ。

( ^ω^)「その…知り合い」
ξ゚听)ξ「そう。…服の趣味悪いわね」
(=゚ω゚)ノ 「はは、俺だって好きで着てるわけじゃーねぃやい」

笑いながら、モニュは煙草をぽい捨てる。
風にのったその煙草は民家の庭におち、停められていた軽自動車を吹き飛ばした。
上る火の手に照らされたモニュを見て、ツンが顔色を変える。

ξ゚听)ξ「な、内藤…こいつが…!?」
( ^ω^)「まぁ、うん。下手人っていうか、犯人っていうか…そういうことだお」



186: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:12:23
  
(=゚ω゚)ノ 「そーそー、そゆこと。そいつがツンちゃんかぃ?」
( ^ω^)「そーそー。そゆこと、だお」
(=゚ω゚)ノ 「へーぇ。気の強そうなこって。大変じゃないかお前さん?」
( ^ω^)「さっき首しめられたお」
(=゚ω゚)ノ 「…ご愁傷だなぁおい」

モニュは下方を見ながら、内藤は周囲を気にしながらたわいもない会話をしている。
避難していた住民達はすでに通り過ぎ、今は内藤たち以外には誰もいない。
代わりに内藤が気にしている周囲には、モニュの仲間と思われる強化服つきの人影が集まってきていた。

(=゚ω゚)ノ 「…さて、憂いのタネの一般人はもう行ったしぃ?頃合じゃねぇかなぁ?」
( ^ω^)「どうしてもやる気かお?」
(=゚ω゚)ノ 「何のためにお前さんにその服をよこしたってんだ?少ない楽しみだよ、俺の」
( ^ω^)「え、何、そんな思惑?そりゃないお」

内藤を取り囲むように集まってきた人影はおよそ10人程度だろうか。
逃げられないように布陣してはいるが、どうやら手を出すつもりはないらしい。
さげた右手に、ツンの手が重ねられた。

ξ゚听)ξ「…」
( ^ω^)「…ふぅ。モニュ、ツンには…」
(=゚ω゚)ノ 「手は出さんよ。さっきの奴らに合流すると良い。何なら部下に送らせたって良い」
( ^ω^)「…そうかお、ツン」
ξ゚听)ξ「ここにいるからね、私」
( ^ω^)「…ツン」
ξ゚听)ξ「いるってば」

( ^ω^)「いやだから、危ないお。僕は大丈夫だから」
ξ゚听)ξ「今のあんたが大丈夫なわきゃないでしょ!?なんかあったらどうすんのよ!」
( ^ω^)「いや実はこの服は」
ξ゚听)ξ「うっさい!認めない!ここにいる!」

モニュとその部下が見守る中、その言い争いはしばらく続いた。



187: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:12:42
  
結局、モニュの提案でツンは残ることになった。
その間モニュの部下全員がツンを護衛するという条件つきで。

(=゚ω゚)ノ 「信じろって。悪いようにゃしねーし殺しゃしねぇよ、多分」
( ^ω^)「鵜呑みには出来ないお。…けど、逃げようもないかお」
(=゚ω゚)ノ 「そういうことよ。安心しな、そいつらはラウンジにゃ関係ない俺個人の仲間だ。空気は読めるさ」
戦闘員「イーッ!…はい、大丈夫っすよ、隊長の趣味ですから」

内藤はツンを屋根の上に残し、道路に飛び降りた。
同様にモニュも飛び降りる。

(=゚ω゚)ノ 「へへっ、悪いなぁ。こればっかりはやめらんねぇ」
( ^ω^)「喧嘩好きってことかお?」
(=゚ω゚)ノ 「そうさ。だからこんな仕事してる。人間ってなぁいかに生きいかに死ぬか。それだけだからなぁ」
( ^ω^)「ずいぶん大げさだお」

屋根の上を見上げると、ツンと目が合った。
ツンはいわば人質だ。守ってくれるとはいえ、モニュと戦うのは避けられない。
モニュの部下は隊長の趣味といった。
おそらく毎度、世界各地で似たようなことをしているのだろう。

(=゚ω゚)ノ 「よーし行くぞぉ!オリジナルとやらの性能見せてみな!」
( ^ω^)「まだ慣れてないっての知ってるお?」

モニュの喜気を含んだ掛け声に反応し、内藤が構える。
全盛期の7割程度の戦力。だが今身に纏うのは、想いを継いだ紅夜叉ホライゾンの強化服。
身に着けたのはホライゾンの武術。そう簡単には負けられない。

内心でそう気合をいれる内藤に、モニュは2本の煙草を引き抜いた。
電光石火の早業で火をつけ、深く一吸い。
先手はモニュが取った。



188: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:13:00
  
それは矢だった。
二本の煙草を右手の指にもち、その右手が背に隠れるほどに身を絞る。
弓のように引き絞られた腕から放たれた煙草は、まさに番えられた矢だった。

(=゚ω゚)ノ 「っせぃあ!」

空を切る音と共に、二点の火種が飛来する。
考えるよりも早く、内藤の体が反応する。それに従い人口筋肉がたわみ、常人では考えられない速度で内藤は横に飛んだ。
刹那の差で飛び過ぎた煙草が背後で着弾し、小規模の爆発を起こす。

( ^ω^)「あっぶねぇお!」

内藤のターン。煙草の爆風に乗るように飛んだ先の壁をけり、モニュに迫る。
人口筋肉により強化されたその速度は野生の豹を思わせた。

(=゚ω゚)ノ 「あらよっとぉ!」

だが、同様にモニュも強化服を着込んでいる。
紙一重で内藤の拳をかわしたその様は、まるで闘牛を相手取るマタドール。
翻ったコートに拳をつきたてながら、内藤はモニュから距離をとらなかった。

( ^ω^)「その危ない煙草の弱点は近くじゃ自分も巻き込むところだお!もう離れないお!」
(=゚ω゚)ノ 「おぉ、照れるねぇ」

横から首を刈り取るように放たれた内藤の右フックを、かろうじて受け止める。
すでに新しい煙草を吸っているため、片手はふさがっていた。
なんとか内藤の攻勢をしのいでいるが、状況は不利に見える。

ξ゚听)ξ「やっちゃえ内藤!そこよそこ!」
戦闘員「…元気な娘っすねぇ」



189: 名無しさん :2006/12/21(木) 00:13:23
  
(=゚ω゚)ノ 「ひとつ説明するがよぉ」
( ^ω^)「?」
(=゚ω゚)ノ 「俺の煙草は吸えば吸うほど威力があがる。んでもって煙草が濃いほど威力があがる」
( ^ω^)「それがどうしたお!」

モニュが強化服の上に着ているコートを掴んで、内藤は自分のほうへモニュを引き寄せた。
片手のふさがったモニュ、引き寄せられるその体。
内藤の右手は深く溜められている。
その狙いは腹部に、1年前に初めてはなった武なる一撃が、モニュの腹部をえぐった。

( ^ω^)「馬蹄、崩拳!」
(=゚ω゚)ノ 「っぐぅっ!」

咄嗟に固めた腹筋に、信じられないほどの衝撃が奔る。
顔を歪め吹っ飛ぶモニュは、だがしかし次の瞬間笑みをうかべた。

(=゚ω゚)ノ 「っつ〜…そんでな、このコートは耐火仕様だ」
( ^ω^)「…!?」

してやったり。という顔のモニュに、内藤は怪訝な表情を向けた。
その表情はすぐに驚愕に変わる。
まだモニュの体は爆発の射程距離内だというのに、内藤の目前に、中空に舞う煙草が一本。

その煙草は濃さ14mgのセブンスター。すでに根元近くまで燃え尽きたそれは、モニュの能力説明からすれば相当な爆発力をもっている。
内藤がそれに気づいたときには、モニュはコートを翻し自分の身を守っていた。

(;^ω^)「やっべ!」

内藤は咄嗟に両腕で顔面をガードする。
ほぼ同時に、煙草は閃光を放った。
耳をつんざく爆音に、肌に感じる熱風。体を吹き飛ばす爆炎。

内藤は再び、モニュにしてやられた。



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