( ^ω^)ブーンの妄想が現実になってから1年後
- 422: 名無しさん :2007/06/04(月) 09:49:52
- 病院の中は安全だが、それでも外から聞こえてくる音は異常だった。
何かが打ち壊される音に切羽詰った怒号。悲鳴にも似た咆哮さえ聞こえてくる。
一般人にも分かる空気の違いに誰もが怯える中、それでも馬鹿は存在した。
DQN「よしゃー!鍵あいたどー!」
硬く鍵のかけられた屋上のドア。
その前に座り込む影三つ。その声は、どこかで聞いたような声。
DQN「早く開けろよwww」
DQN「押すなバカ!アッー!」
屋上のドアが勢いよく開け放たれ、チャラ男3人組が倒れこむ。
罵り合いながら立ち上がるその3人は、1年前、ツンが連れ去られた際に兄者、弟者にフルボッコにされたドクオの不良仲間だった。
すっかり丸くなったドクオと違い、今でも彼らは遊びほうけて暮らしている。
ホルダーでもなく、ホルダーの存在すら知らない彼らがこの病院にいるのは、徹夜で飲んだくれまくった結果逃げ遅れたせいだ。
DQN「あいたた…っておい」
DQN「…なんじゃこりゃ?」
そして彼らは見た。
眼下に広がる蠢きを。その中で月明かりを反射する無機質な人形の眼を。
屋上にむかって飛んでくる銀光、一本の大剣を。
- 423: 名無しさん :2007/06/04(月) 09:50:08
- 大剣は三人の立つ屋上の手すり、その根元の壁に突き刺さった。
DQNの一人が慌ててあげた足が、自分の腹を強打する。
DQN「ぅでゅわっ!?」
DQN「うぉぉアブねー!!」
DQN「ちょっ、変な声吹いたwww」
DQN「つか、なんで剣なんか飛んでくるんだよwww」
恐る恐る、とはいえない様子で剣が飛んできたあたりを見下ろすと、別に誰かが投げたというわけでもなく、人形達が居るだけだった。
少し違うとすればその辺だけ妙に人形が積み重なっているくらいか。
そう思ったが、違う。
積み重なっているのは人形達の残骸で、その中に埋もれて、一人の女が倒れていた。
落ち着いて見渡してみれば何人か人がいる。
病院の入り口では何故か、ポスターでしかみたことのない市長が人形を撃退し、人形の群れの中には飛んできたのと同じ大剣を振るう女と細剣を持った女…見覚えがある。
たしか前、ドクオと一緒にいたいい乳した姉ちゃんだ、とDQN達は思い出した。
DQN3「おいおい…何してんだよあいつら??」
DQN2「わけわかんねー」
DQN1「あれじゃね、あの何か黒いのと戦ってるんじゃね?」
確かに、大剣の女とドクオと一緒にいた姉ちゃんは、何人かの男たちと相対しているようだった。
見るからに思い切り振るわれた大剣を、同じように振りぬいた腕が弾き返す。
その隙に細剣で首元をつかれると、血が噴出したように見えた。
DQN「…あれ、まさか本物かよ」
DQN「マジか。黒いの死んだんじゃね?」
DQN「あ、でっかい剣の姉ちゃん吹っ飛んだ」
DQN「ガチンコなのかよマジで。死ぬだろ…常識的に考えて」
DQN「おい、何か倒れてた姉ちゃん立ったぞ。やばいんじゃね、多分あの人の剣だろこれ」
一瞬だけ足元の壁に突き刺さった剣を見て、視線を戻す。
何となく状況はわかった。
難しいことは良くわからないがとりあえず分かるのは、あの三人の姉ちゃんと病院入り口の市長がやられたら、よくわからん黒いのと人形達が病院の中に押し寄せてくるということだ。
DQN三人は顔を見合わせると、それぞれが同時に壁に突き立った剣の柄に向かって手を伸ばした。
- 424: 名無しさん :2007/06/04(月) 09:50:49
- (*゚∀゚)「リーゼッ!」
爪゚∀゚)「くんぅっ!これしきっ!!」
ジョルジュ量産型の拳を剣の腹で受け止め後方に飛ばされながらも、リーゼは剣を振るって重心移動、人形の群れの中に剣をつきたて着地した。
同時に回転してのなぎ払い。自分の周囲を確保する。
下がってきたつーと並び、ジョルジュ量産型を警戒しつつも人形を駆除する。
(*゚∀゚)「レーゼは!?」
爪゚∀゚)「敵の腕を切り落としたまでは…あの後私も殴り飛ばされた故」
ジョルジュ量産型の体は、硬い。渾身の一撃でもせいぜい腕の半分までを斬るくらいだ。
それも放っておけば再生する。断ち切るしかない。
双騎士は、斬りつけた剣をさらに切り込むことで量産型の腕を切り落とすことに成功した。
だがその直後、別の量産型の振るった豪腕に二人して巻き込まれ、レーゼとはぐれてしまったのだ。
その時レーゼがとっさに防御に用いた大剣が弾き飛ばされ、今は屋上の壁に突き刺さっている。
それを知らない二人にとって、量産型に有効な攻撃方法はつーの細剣しか残っていない。
爪゚∀゚)「…何とか隙を作る。つー殿は頭を」
(*゚∀゚)「えぇ?きっついなぁ…」
大剣でも致命傷を与えられない敵に、通常ならば細剣では相手にもならない。
せめてもの救いは、この時つーの持っていた細剣が普通のものではなかったことだ。
改修されるドクスペの付属品のひとつ、ペニサスの開発した高周波振動を発する特殊剣が、つーの手にあった。
(*゚∀゚)「普通に刺さるってだけじゃどうにもなんないけどねぇ…ちなみに、スタミナ的にもそろそろ限界なんだけど」
爪゚∀゚)「ダイエットに良いですぞ」
(*゚∀゚)「今はいいよ。ビリーズブートキャンプ見てるし」
爪゚∀゚)「はぁ…?ともかく…っ!来る!」
- 425: 名無しさん :2007/06/04(月) 09:51:04
- 言うや否や駆け出すリーゼ、飛び掛ってくる人形達は意に介さない。
人形で芳しくない視界の先で、ジョルジュ量産型の腕が引き絞られ、まっすぐに放たれる。
即座に立ち止まると同時に担ぎ構え。
爪゚∀゚)「るぁぁっ!!」
リーゼは背中をつめたい手で撫でられたような悪寒を感じながら、丹田に力を込め歯を食いしばり、渾身の一刀で量産型の拳を撃ち落した。
痺れる腕を無理やり動かす。すでに敵の二撃目が迫っていた。
それには対応しない。どうせ撃ち落すだけの力は残っていないのだ、リーゼは自らの剣で、量産型の視界をさえぎった。
同時に、リーゼの腹に拳がめり込む。
痛みはよくわからなかった。ただ、腹部を守る鎧が砕けた音だけが妙に良く聞こえた。
すれ違いにつーが懐にはいっているのが見える。
(*゚∀゚)「いい加減一人くらいはっ!!」
両腕を振り終えた敵は、視界を遮られていたこともあって僅かに反応が遅れていた。
剣を突き刺すには、それで充分。
つーの繰り出した刺突は、嘘のようにあっさりと、敵の額に吸い込まれた。
たとえ再生能力があろうが、脳をやられては流石にどうしようもない。
いくらか能力の質が落ちるとはいえ、あのジョルジュ長岡と同タイプの化け物を、たった一人のホルダーと人間が倒したというのは素晴らしい奮闘だといっていい。
ただ、その代償も大きいだろう。
倒れこむ量産型。
だが周りにはまだ数人の量産型が居り、それらは皆つーに向けて攻撃を繰り出し、つーの細剣は引き抜かれる最中。
鎧のないつーでは、量産型の攻撃一つが命に関わる。
(*゚∀゚)「くっぅ――!」
爪゚ー゚)「させるか!」
(*゚∀゚)「え!?なっ、バカッ!!」
量産型の鉄の拳が、蹴りがつーに当たる直前、つーの体は横合いから突き飛ばされた。
代わりに何も持たないレーゼが立っている。後ろで束ねた髪は解け見るからに満身創痍だが、それでも両手を交差し、敵の攻撃を受け止めた。
つーの強化された感覚は、その瞬間を鮮明に捉えた。
交差した前の腕が、敵の拳を受け止め変な方向に曲がっていく。踏みしめた足が蹴りによって打ち払われる。
バランスを崩し、レーゼは再び、地を滑りながら人形達の群れに激突した。
- 432: 名無しさん :2007/06/20(水) 21:18:39
- (*゚∀゚)「あちゃー、そこは不味いっしょ」
うめき声を上げるレーゼに人形がたかっていくのを見て、つーは駆け出した。
人形の中には突起のあるもの、中にはナイフや鋏を握った固体もいる。
それらが鎧のない顔面めがけて凶器を振り下ろそうとしていた。
(*゚∀゚)「女の子の顔傷つけちゃダメでしょーに!」
人形達をなぎ払う。
レーゼを助け起こすと、背後に腹を押さえたリーゼが後退してきた。
砕かれた腹甲をはずし、コート状に偽装した鎧すべてを脱ぎ捨てる。
(*゚∀゚)「あ、リーゼ。大丈夫?」
爪゚∀゚)「…おなか痛い」
(*゚∀゚)「そりゃまぁ…そうね。聞くまでもなかったわ」
爪゚ー゚)「痛ぅ…あぁ、脚はまだ大丈夫、か」
(*゚∀゚)「にしてもレーゼ頑丈だねぇ。おかげで助かったけど」
爪゚ー゚)「次はもう出来ませんぞ」
(*゚∀゚)「いやー、大丈夫大丈夫」
何が大丈夫なものか。
ジョルジュ量産型はまだまだ残っているし、病院入り口では市長がバテて転がっている。
残りのものが必死で踏みとどまっているが、突破されるのは時間の問題だ。
それでもつーはどこか勝ち誇ったような、安心した表情を浮かべていた。
その視線は明後日のほうを向き、その耳はまだ聞こえない音を聞いている。
(*゚∀゚)「大丈夫、間に合ったから」
ちょうどそのとき。
病院入り口から、殺到する人形達を押しのけ掻い潜って、人影が3つ飛び出した。
三人一緒に大剣を抱え、一目散に駆け寄ってくる。
DQN達「姉ちゃん、これあんたのだろ!持ってきてやったぜwww感謝しるwww」
爪゚ー゚)「つー殿…間に合ったって、これ?」
(*゚∀゚)「いやそれ違う。それ違うから」
- 433: 名無しさん :2007/06/20(水) 21:18:59
- 無表情のレーゼが剣を受け取る。
憮然とした、ある意味呆然とした表情で一応礼を言われ、DQN達は顔を見合わせた。
DQN「あれ?…ナンカ展開チガクネ?」
DQN「チューでもしてもらいたかったのかよwww」
DQN「つーか人形こえぇwwwチャッキーかよあれwww」
DQN「さっさと帰ぇんべ…ってなんだ?」
来た道を振り返り、駆け出そうとしたDQN達が足を止める。
音を聞かない人形達以外、双騎士もジョルジュ量産型もみな同じように動きを止め、同じ方向に視線を向けた。
何かが近づいてくる。
近づいてくるそれは、音だった。
地上を走る、空の音。
こんな場所で聞こえるはずがないが、この街でだけならたまに耳にすることができる騒音。
DQN「…こりゃアイツのアレじゃね?」
DQN「こんな音たてんのはアイツしかいねーだろwww」
DQN「逃げっかwww轢かれたらたまんねー」
そう、この街でジェットエンジンやらガスタービンエンジンやらを使う魔改造厨は一人しかいない。
彼とその愛機を知るDQN3人組はそそくさと駐車場の外、安全圏へと避難し、つー達もすでに一旦病院の入り口まで後退している。
川 ゚ -゚)「………結局一つ所で、か。まったくどいつもこいつも…」
そんな中、駐車場の端で戦況を眺めていたクーは、敵中でただ一人動じることなくため息をついた。
事態が動く。それぞれ縁を果たすために。
嬉しがっているだろうある男の顔を思い浮かべ、クーは僅かに眉を寄せた。
その視界の端。
駐車場の塀をぶち破り、新たな役者が舞台に登る。
- 434: 名無しさん :2007/06/20(水) 21:19:11
- そう。それは塀を破って現れた。
まるでペンキをぶちまけたような、粗い塗装の漆黒の巨躯。
大型のタイヤを二枚重ね合わせた双輪タイヤを履き、搭乗者の足の代わりに現れた可動式のスタンドが力強く地を踏みしめている。
駐車場に居るすべてのもの、人形達ですらがその威容を見つめる中。
機体の後方、廃棄熱の渦を掻き分けてこれまたメタリックな人影が機体をよじ登ってくる。
わずかに揺らめいた炎が黒色の装甲に映えた。
( ^ω^)「ぬぎぎ…かっこよくバーンとぉ!登場しようと思ったのに危うく転落するとこだったお…ドクオ運転下手すぎワロタwww」
('A`)「うっせーヴォケ!未調整だけあって無駄にピーキーなんだよ!」
ハンドルを握るのはドクオ、指先が走ると側面の装甲がドームの天蓋よろしく展開し、運転席は蛇腹装甲の背中で覆われた。
その上に立つ内藤。今までと違うのは、右手にヘルメットをもっていることか。
言い合いながらもエンジンは回転数をあげ、後輪が凄まじい音をたてて地を削る。
('A`)「まぁいいや。いくぞ内藤!ゴミ掃除は任せる!」
( ^ω^)「応!」
機械で獣。それは咆哮する。
本来は大空を翔る双発形ジェットエンジンは、地上においてまさしく獣の咆哮に相違ない。
地面に突き刺さった可動スタンドの戒めから解き放たれ、それは稲妻の如く駆け出した。
- 435: 名無しさん :2007/06/20(水) 21:22:20
- 威容とは。異容とはまさに今。
光沢のないペンキの黒が夜に溶ける。
その上に速度によってシルエットがぼやけ、まるでタイヤのある闇そのもののようだ。
機影は瞬く間に彼方より此方へ。
迫る。迫る。ジョルジュ量産型達は見た。
迫り来る機獣から発射された弾丸を。
量産型「飛ん…」
否さ、それは弾丸などではない。
威力は砲弾、姿は人。その身を包む強化服に奔る赤光の筋。
空気を裂く顔面が、それを守るヘルメットが、摩擦の火花で朱に染まる。
( ^ω^)「内藤っ!ナッコぉ!!」
量産型「だっ!!?」
機獣の加速に発射の弾速。
その全てをそのままに載せ殴りつけ、地面を滑り停止する。
縁の集まるこの場所に、欠けていた1つめの大役者。
( ^ω^)「本当は殴り合いなんて面倒臭いけど…ツンの命令だお、相手になるお!」
かつてのVIPPER、ただのヒト。
数年前、同じくただのヒトの武器となった強化服に身を包み、内藤は最後のバカ騒ぎに罷り越した。
- 441: 名無しさん :2007/06/22(金) 03:03:43
- ジョルジュ量産型数人の行く手を内藤が阻む。
その間にも病院入り口に殺到し続ける人形達。
一体ずつの力は大したものではないが、入り口を守っている者達はもう疲れ果てている。
だが。
その表情には焦りも恐怖も浮かんでいなかった。
寝転がって息をついている市長は、ついこの間逃げ回ったシルエットと酷似したそれを見て目を丸くする。
病院に迫る人形達の群れ、それを圧倒的に上回る速度でひき潰していく巨大な二輪。
搭乗者の足に連動して動く可動式スタンドが地を穿ち、そこを支点に巨大な体躯が180度回転する。
火花と煙、そしてアスファルトの破片を撒き散らし後輪が静止した後には、人形達の残骸が散らばっていた。
('A`)「つーさん、無事か!?」
(*゚∀゚)「ちょー元気!」
展開を解除した装甲からドクオの顔が覗く。
病院入り口の階段を駆け下りてきたつーが、親指を立てたウインクで返答した。
('A`)「いけるかい?」
(*゚∀゚)「もちろん。その席は私の専用なんだから」
ドクスペを改修したこの機体、つーの特等席となっていた後部座席も健在だ。
違っているといえば、後部座席の前に鍵穴のような台座が設けられたこと。
跳躍し、後部座席に着地したつーは右手に掲げた細剣を逆手に持ち、病院入り口の双騎士に問うた。
(*゚∀゚)「リーゼ!レーゼ!まだ頑張る!?それとも休んでる?」
片腕を粉砕され、膝をついていたレーゼが顔をあげる。
内臓に損傷があるだろうリーゼが、自分の大剣とレーゼの大剣を持ち突き立てる。
二人とも、目にはまだ爛々とした輝きがあった。
爪゚ー゚)「無論…」
爪゚∀゚)「まだまだ健在!」
(*゚∀゚)「よしっ!」
その答えに、つーの逆手に掲げた細剣が振り下ろされた。
- 442: 名無しさん :2007/06/22(金) 03:03:57
- (*゚∀゚)「マスカレイド…」
後部座席に新設された台座に細剣が吸い込まれる。
カチリという小さな機械音に続き、台座が90度回転、僅かにせり出す。
さらに台座からせり出してきた板状の塊、その先には差し込まれた細剣の柄が。
(*゚∀゚)「ウェイクアップ!」
引き抜かれたそれは、もう細剣ではなかった。
紛れもない大剣。かすかに聞こえる鳴動は、刀身に起こる超高速振動の音だ。
改修されたドクスペに打ち込まれた戒めの楔にして、断てぬものなき機振剣。
('A`)「全システムオンライン。駆動制御オールグリーン!」
ウェイクアップ。目覚めの刻。
ドクオスペシャルと名づけられた機体の生まれ変わった姿。
急ごしらえの変形システム。その要のバイパスは、差し込まれた剣の振動とそれに共振した磁気シールドで遮断されていた。
その楔が引き抜かれた時、全ての回路と機構が接続される。
つーが引き抜いた剣をレーゼに投げ渡す。
装甲は全て展開。機首から漏れ出すライトの光が双眸をかたどった。
ペニサスという博士が、そしてドクオが、DATの知識を抜きにして作った完全なオリジナル。
”Doctor”とドクオの”Original”
ドクオとつー、二人の声が重なった。
('A`)&(*゚∀゚)「ドック・オー――――」
両輪をかきわけ現れた四肢が、大地を打ち据える。
かつてドクスペにあった翼はアームを介し、まるで盾のように機体側面に鎮座した。
機首に現れたのはまさに獣の顎。
('A`)&(*゚∀゚)「―――アクションッ!!」
両側面の盾は、折りたたんだ猛禽の翼のようで。
鈍く光を放つカメラアイをたたえた獣の頭は、気高い狼のようで。
なによりもそれは、あのリリィに酷似していた。
- 460: 名無しさん :2007/07/29(日) 07:16:21
- (*゚∀゚)「これを!」
爪゚ー゚)「!」
つーが、引き抜いた大剣をレーゼに投げ渡す。
手に取ってみるとそれは意外なほど軽かった。
重みで斬るのではなく振動で斬るためか、刀身が薄い。
(*゚∀゚)「それならあいつらに刃が立つわ、そっちは任せたから!」
爪゚ー゚)「そちらは!?」
('A`)「頭狙いさ!!」
間髪要れずに答えたドクオがスロットルを回す。
巻き上がる土埃。四足四輪のローラーが火花を散らして滑っていく。
進路に塞がる小型の人形をひき潰し、ヒトガタを跳ね飛ばし、ドクスペ改めドックオーが向かうのは、外れで事を静観するクーの元だ。
川 ゚ -゚)「…ちぃ。まだか?なにを見ている?」
組んでいた腕を解きながら、クーは誰ともなく呟いた。
自らに向かって走る機械の獣は自分の相手ではない。
その役どころは同種が担ってしかるべきだ。
('A`)「轢いちまうぜ!避けねぇのかい!?」
だというのに相応しい相手は姿を現さず、黒い鉄の塊は四足を用いて迫ってくる。
距離はあと僅か。
クーの両手が小気味良い機械音をたてた。
川 ゚ -゚)「私に相手をしろという冗談は勘弁してほしいな…!」
- 461: 名無しさん :2007/07/29(日) 07:16:40
- 病院の駐車場のはずれ、ドックオーとクーが対峙したあたりで、大きな音がした。
台風の中で樹木がなぎ倒されるような暴風音。
音に続いてきた風が、足元にあった人形の残骸をさらっていく。
( ^ω^)「…ドクオ?相手はあの女の人かお」
量産型「余所見だと!?舐めやがって…!」
内藤はジョルジュ量産型の一人と対峙していた。
すでに最初に殴り飛ばした量産型の一人はフルボッコを完了している。
双騎士が相手をしている2人とあと一人、それで目ぼしい敵は最後だ。
そも量産型の持つスキルは、ツンのスキルを除いてかつてのジョルジュ長岡と同じ優れたものが揃っている。
オーガ、再生、感覚強化、そのどれもが一級品のスキルだ。
本来なら。ジョルジュ長岡なら。マトモに戦えばV.I.Pを使えない内藤ごときに苦戦はしないはず。
( ^ω^)「舐めてはいないお。それでも身体強化最強のオーガのつもりかお?」
量産型「ほかに何だと言うっ!!」
叫び放たれる量産型の拳は、当たれば大岩を砕き鉄を拉げさせるだろう。
つまりはそういうこと。その程度にしか究められていないのだ。
いくら同じスキルといえど、その効果は熟練によって左右される。
現に見よ。その背中には現れぬ。
象徴たる鬼の貌が。
( ^ω^)「人の範疇をかろうじて越えたその程度の力!」
量産型「うっ!?」
1秒に満たぬ刹那、伸びきる前の拳を内藤の肘が防ぐ。
拳の砕ける痛みに眉を下げる時もなく、内藤のカウンターが量産型の顔面に突き刺さった。
( ^ω^)「鬼を名乗るには役不足だお」
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