( ^ω^)ブーンの妄想が現実になってから1年後

578: 名無しさん :2008/04/02(水) 03:06:01
風に乗った爆発の余熱が、モニュの頬を撫でていく。
眼前に広がる光景に満足気に息を吐き、モニュは誰とも無く呟いた。

(=゚ω゚)ノ 「さすがにパーフェクトだぁな…」

車はひしゃげ吹き飛び、それなりに離れた電柱も傾き電線も断線している。
圧縮酸素弾を使った爆轟レベルの爆発は、その衝撃波で建物ごと周囲をなぎ払っていた。
それほどの爆発ならばもちろんモニュ自身も無事ではすまないはずだが、そうはならない。

爆発はモニュ自身には届かない。ここはヒッキーの結界内。
吹き飛んだ車や連鎖的に発生した熱風などは別として、衝撃波そのものはヒッキーの力によって方向を制限されていた。
モニュのいる側には衝撃波は届かず、おかげでモニュ側に位置する病院も市長その他の人間も無事だ。

(´・ω・`)「な、何がどうなった…」
川 ゚ -゚)「圧縮酸素弾を使ったようだな、奴は」

その制限の境界あたりにいたショボンは、吹き飛ばされた車を空中で掴んだクーが、それを盾にすることで難を逃れていた。
助けようとした割には情けない話だと、内心赤面したのは秘密だ。
おかげで左腕に続き右腕もろくに動かなくなったクーが車を取り落とすと、遮られていた視界が拓ける。

(´・ω・`)「おいおい…何だこの有様は」
川 ゚ -゚)「ふっ…私が居てよかったな?」
(´・ω・`)「あー…まぁ、そうね」
川 ゚ -゚)「しかし良くやる。FOXが来る前に終わってしまっても知らんぞ、モニュ…」
(´・ω・`)「ん?そうか、さすがに事情を知ってるんだな。なぁ、今回のこの騒動にゃ実際どういう目的があるんだ?どうもラウンジのすることに一貫性がないような気がするんだが」
川 ゚ -゚)「そりゃあないさ。この街の場合はFOXの好きなように、そして世界はラウンジの好きなように、だからな」
(´・ω・`)「…?FOXはラウンジで一番偉い奴だろう?その言い様じゃラウンジとFOXは関係ないように聞こえるが」
川 ゚ -゚)「ある意味その通りだが…しかしそれも、今の状況ではあの坊や次第で変わってしまう、か」

ため息交じりに言葉を切り、クーは視線を爆発の中心近くに移す。
クーの視線の先、制限を受けなかった衝撃波は三角州のように破壊の跡を残している。
その中心に、うつ伏せに倒れた内藤が居た。



579: 名無しさん :2008/04/02(水) 03:07:14
爆発の瞬間、咄嗟に地面に向けて左腕を突き刺し衝撃波に耐えたのだろう。
踏ん張った足と地面を引っ掻いた右手に轍が残っている。

(;^ω^)「ぐうぅ!…うぅ…!」

内藤の顔はヘルメットで見えないが、声だけで苦悶の程が伝わってくる。
震える脚に力を込め、呻きながら左腕を地面から抜くと、とんでもない痛みが内藤に襲い掛かった。
一度痛みを知覚すると、麻痺していた痛覚も一斉に覚醒する。体中が軋むようだった。

(;^ω^)「ぎっ…っつ!?」
(=゚ω゚)ノ 「にしても…意外としぶといなぁ、お前。素直に飛ばされときゃ良かったのに」
(;^ω^)「い…痛い…痛いお、モニュ…!」

もしも生身だったら突き刺した腕が千切れていても良い程の衝撃波だったのだ。
紅夜叉があるとはいえ、ダメージは深刻だった。
折れた腕は内出血し、膨らんだ腕が紅夜叉の人工筋肉に締め付けられて激痛を生んでいた。

(=゚ω゚)ノ 「そりゃそうだ。相手をなめてっからそういう目にあうんだぜ、内藤。油断大敵ってぇ奴だわな」
(;^ω^)「くっ…確かに…舐めてたお。調子に乗っていたって…認めざるを得ないお」
(=゚ω゚)ノ 「……ふん。萎んだな。やっぱりだ内藤よぉ。お前さんさ、例え能力が残ってても、どんなに体調が万全でもよ」

その瞬間僅かにモニュの顔に浮かんだのは、おそらくは落胆に近いものだった。
傍目にもモニュの戦意が一気に薄れたのが分かる。

(=゚ω゚)ノ 「多分、1年前よりずーっと弱いぜ?」
(;^ω^)「…!?どういうことだお。もしV.I.Pが残っていても、あの時より弱い?」
(=゚ω゚)ノ 「お前さんには戦いに一番必要な根っこの部分、まぁ…要するにやる気が感じられねぇ」
(;^ω^)「か…勝手なことを…!そんなことは…」

内藤は痛む体に鞭打って仁王に立った。
自分はツンのために戦う。彼女のために街を守る手伝いをする。
それが出来る力がある。

( ^ω^)「ないお!」

もつれそうな足に力をいれ、駆ける。
痛む左腕に歯を食いしばりながら、がむしゃらに振りぬいた右拳。

(=゚ω゚)ノ 「立ったのはいいが、そいつぁー…」

それはモニュの体にかすりもせず、代わりにあっさり足を払われた内藤は無様に転んだ。
折れた左腕から地面に落ち、内藤は悶絶した。

(;^ω^)「おっ…ぐぉぉ…!」
(=゚ω゚)ノ 「根性でも何でもねぇやな。ヤケはいかんぜ?」



580: 名無しさん :2008/04/02(水) 03:08:06
倒れた内藤を見下しながら、モニュは煙草を取り出し火をつけた。
吐き出される紫煙を見て、内藤の動きが固まる。

(;^ω^)「く…!」
(=゚ω゚)ノ 「へっ。別にトドメってわけじゃねぇよ。良いか内藤、お前さんの言うとおり、俺よりそっちのほうが戦力は上だよ。それでもこのザマなのはな、お前さんの心構えの問題よ」

闘争の理由とはたった一つだと、モニュは言う。
それは己が意を通さんとするため、自らの欲する事を為すためだ。
だからこそ人は迷いなく力を出せる。

だが、今の内藤は自分のためではなくツンのために戦っている。
もちろんそれは内藤がそう望んだからだ。
そこに迷いはなく、ならば自らのために戦うことと同義。
そのはずなのだが。

(=゚ω゚)ノ 「けどよぉ…本当にそうかねぇ?1年前なら話は分かるぜ?大事な彼女を取り戻すってなぁ9割方はテメェの欲だからな。だが今はそこまで必死にならなくても良いよなぁ。なんせツンちゃんにゃ直接的な危険はないもんなぁ?」
( ^ω^)「……」
(=゚ω゚)ノ 「…ところでよぉ。こう言っちゃ何だがお前、あの娘に好かれてんのか?いや、お前がツンちゃん大好きなのは知ってるがよ…実はていの良いパシリ程度に思われてんじゃねぇの?」
( ^ω^)「なっ…!ツンはそんな人間じゃないお!ツンは…!」

モニュの言葉に、弾かれたように内藤の顔があがる。
牽制の煙草も見えない、折れた腕の痛みも感じない。
そう言わんばかりの勢いで立ち上がった内藤を、モニュはたった一言で止めて見せた。

(=゚ω゚)ノ 「ならお前、あの娘に好きっていわれたことあるかよ?」



581: 名無しさん :2008/04/02(水) 03:08:50
-ドクオの場合-

獣の唸り声のような鈍い声。
それに混じる機械の甲高い音。
ドック・オーの独特の鳴動音は、確かな意思を持ってその場に満ちていた。

('A`)「……」
(*゚∀゚)「………」

ドクオもつーも吐息すら漏らさず、ただ待ち構えている。
瓦礫を払いリリィが飛び出す瞬間を。
その一瞬、必ずリリィはドック・オーの斧翼の射程にはいる。

リリィのスピードと機動性は予想を越えているが、その一瞬を捉えることが出来れば。
いや、もしかしたらその一瞬さえ得られぬとしても、仮に。
仮に、その一瞬を無理やり作り出せることができるとしたら。

('A`) (…はやく出て来いキザ野郎。カウンターぶちこんでやるぜ……つーさんが)

ドック・オーに搭載されたペニサスの研究成果。
それはSEドライブと同様に、対象からホルダースキルをコピーし発動させることができる。
ペニサスはスキル情報の抽出と放出のメカニズムは解明していた。

ペニサスに不可能だったのは3つ。
コピーしたスキル情報を持ち主から完全に分離させること。
その情報をもとに完全にスキルを組み上げること。
そして、そのスキルを機械に保存すること。

SEドライブを作るという大前提から言えば、その研究は失敗と言わざるを得ない。
しかし、その失敗成果でも出来ることはあるのだ。

(*゚∀゚)「…!くる!」
('A`)「っお――」 

つーの耳が、不自然なほどの静寂が終わりと小さな瓦礫の転がる音を捉えた。
小さな雪球が雪崩を引き起こすように、針ほどの穴が堤を決壊させるように、一気に瓦礫が弾き散る。
駆ける白と迎える黒の刹那は、ドクオの言の葉よりも遥かに短かった。



582: 名無しさん :2008/04/02(水) 03:09:12
パイルバンカーになぎ払われた瓦礫が宙に浮かび、その中をリリィが走る。
その様子がスローモーションに見えて、ドクオはそれが走馬灯だと錯覚した。

('A`) (でぇぇえぃ真っ直ぐ来る!射程内!機体の安定を…!)
(*゚∀゚) (速い!けど…軌道さえ読める今なら!)

はじめて体験する時の引き伸ばされた感覚の中、ドクオの指がパネルを叩く。
地面に突き立てていた斧翼を引き抜く反動を利用し、ドック・オーは残った三つの脚で瞬間的に機体を支えた。
流れるように二対の斧翼は左右からリリィに襲い掛かる。

('A`)「―――おぉらっしゃぁ!!」
(*゚∀゚)「スキルキャンセラー全開っ!!」

本来ならばリリィは斧翼を容易く回避し、すれ違いざまにドック・オーに一撃くれて無傷で背後に回ったろう。
だが、一際大きなドック・オーの唸り声が、それを許さなかった。
ドック・オーの発振器から放たれた不可視の障壁が、リリィの体躯を包む緑の光を剥ぎ落とす。

たしかに、ドック・オーに搭載されたSEドライブの模造品は、発動すべきスキルを構築できない。
しかしスキルに出来なくても、構築に必要なエネルギー自体は抽出できるのだ。
それをそのまま放出してやれば、スキルを構成するエネルギー同士が入り乱れ、相殺作用が起こる。

(*゚∀゚)「捉えた!!」

それが、ペニサスの生み出した模造品の力だった。
本来容易く避けられたであろう斧翼が、スキルの効果を失ったリリィの軌道に重なる。
リリィが次に前脚を着く地点に、あらかじめ決まっていたように、高速振動する刃が吸い込まれていく。

9本のパイルバンカーは既にドック・オーに向けて突き進んでいる。防御には回せない。
後ろ足は地面を踏み抜き、体躯は宙を駆けている。
空中では如何にリリィでも身動きとれまい。

本当に、瞬きひとつで過ぎ去るような時間での攻防。
この斧翼の一撃を持って、リリィの機体は裁断され決着がつくのだ。

('A`)「よっしゃざまぁみやが――!?」

微細振動する刃が鉄を切り裂く高周波。
ドック・オーの機体に振動として伝わる確かな手応えを感じながら、ドクオの目は驚愕に見開かれ、中空に向けられていた。



606: 名無しさん :2008/05/05(月) 21:35:20
('A`)「―――!!」

その姿は、ドクオの心の平衡を奪うには十分すぎた。
リリィは撃ちかけていたパイルバンカーを途中で軌道変更し、それを地面に突き立て、その反動で宙に舞ったのだ。
確かに伝わってきた振動は、支点にした3本のパイルバンカーを斬るに留まっていた。

('A`) (月面宙返り…!?FOXてめぇ…)

それだけでドクオには充分伝わった。
神業であるとか以前に、インターフェースの限界を超えている。
あれは人間に出来る操作ではない。

('A`)「乗ってねぇなクソ野郎がぁーっ!!」

つまり。
一発ぶん殴ってやらねば気が済まない相手は、とうにここには居ないのだ。
少なくとも、好きで戦っている訳ではない目の前のリリィのコクピットには。

(*゚∀゚)「!?……?」

この瞬間から、ほんのわずかの間ではあるが、つーの意識には靄がかかる。
それは、ある意味ではありきたりで、しかし誰も予想していなかった事例だった。
結果だけ言えば、要するにドクオは怒ったのだ。

純粋な怒りとは意識、思考の及ばない本能。
それはホルダー能力の根幹と近い部分からなる精神的なエネルギーと言える。
そして、ドック・オーに搭載されたスキルキャンセラーは、その怒りを何らかのホルダー能力の発現だと誤認した。

(*゚∀゚) (これは…引っ張られる?ドクオ君に…?)

スキルキャンセラーは既につーによって起動されていた。
ドクオによって多重起動された形になるそれは、意識の混濁を招き、つーの意識は勢いに勝るドクオの意識にシンクロした。

(*゚∀゚) (そう…許せない。人の物をパクっといて喧嘩の最中にトンズラなんて…!)

機体を動かすドクオと、斧翼を動かすつー、その2つはつまりドック・オーという機械そのものに直結していた。



607: 名無しさん :2008/05/05(月) 21:35:36
空気を裂いてパイルバンカーが撃ち出される。
リリィのカメラアイとドクオの視線が交差した、その一瞬。

('A`)「俺がブチのめしたかったのは…!」

ほんの刹那の、人機一体。
ドック・オーを動かしたのは、もはやペダルやハンドルの操作ではなく、あえて言えばドクオの怒りそのものだった。
リリィに即座に反応し、倒れかけるはずだった機体は機敏なステップを踏み、動き終わっていたはずの斧翼が跳ね上がる。

空中から襲い掛かるパイルバンカーは間に合うはずのない斧翼によって断ち切られる。
落下し、着地するだけだったリリィは、同じ高さまでジャンプしたドック・オーの体当たりでバランスを崩した。

空中での攻防の後。
両機が地面に落ちた時、ドック・オーはリリィを踏みつける形で、斧翼を振り上げていた。

('A`)「お前じゃねぇ!」

振り下ろされた斧翼はリリィの胴体ごとエンジンを両断した。
途切れた駆動音が決着を知らせる。

光を失っていないリリィのカメラアイから目を離したドクオは、静かにパネルを叩いた。
ドック・オーの装甲展開を解除し、ドクオは夜空を仰ぐ。

('A`)「リリィじゃねぇんだよ…」

吹き抜けた夜風がドクオの頬を撫でて行く。
勝利したのではない。
この虚しさは紛れもない敗北だ。

(*゚∀゚)「ドクオ君…?」
('A`)「………いや、まだだな」

踏みつけていたリリィから機体を離し、3本脚で立ち上がったドック・オーのバランスが崩れる。
まだ意識が朦朧としていたつーが、とっさに斧翼で機体を支えた。
その振動などなかったように、ドクオはリリィに向かって叫んだ。
 
('A`)「リリィ!まだ脳は生きてるんだろう!負けたんだから俺に手ぇ貸しやがれ!!」

少しの間をおいて、リリィのカメラアイが光った。
月明かりに照らされたドック・オーのモニタに、外部からデータの転送が開始される。
はるか遠く、病院の方角から爆発音が聞こえてきた。



608: 名無しさん :2008/05/05(月) 21:35:54
――内藤の右腕は、中途半端な位置で止まっていた。
モニュを殴ろうと振りかぶったは良いが、振りぬけずにいる。
そのまま力なく下ろされた腕を見て、モニュが鼻で笑った。

(=゚ω゚)ノ 「ふん…やっぱ言われたこと無いのかぃ?」
( ^ω^)「…うん。ないお」

存外あっさりと認めた内藤に、モニュは微妙な違和感を感じた。
もう少し足掻くと思っていたのだが素直すぎる。
発破をかけるつもりだったが押しが足らなかったのか。

( ^ω^)「正味な話、内藤好き好き愛してる!なんて言われたことある訳ねーお。そんな事言われたらむしろ怖いお。エロゲーみたいな展開あっても良いと思うのに三次は残酷なんだお…」
(=゚ω゚)ノ 「……はぁ?」

明らかに様子がおかしい。
凄まじくメンタルが弱かったのかと若干引いたモニュだったが、ふと気付いた。
押しが弱かったのではない、やりすぎたのだと。

( ^ω^)「大学のツンの隣の席はなんかイケメンだし…ノートの貸し借りなんてしちゃってるし…映画誘った時なんて、知るか!そんなことより服買いに行くからチャリ出しなさいよ!だお…」
(=゚ω゚)ノ「いや、それはそれで良いんじゃねぇの…ショッピングだしよ」

内藤に合わせながらも、モニュは警戒の色を強くする。
モニュの意識は、内藤の右腕に集中していた。
力なく下がった内藤の右腕が、腕先に向けて一回り大きくなっているのだ。

( ^ω^)「チャリ出せってのは後ろに乗せろって意味じゃなくて、乗っていくからよこせって意味だお…さすがの僕も何がなんだかわからんかったお…わからんかったお…」
(=゚ω゚)ノ「……そうか。何で二回言うんだよ」
( ^ω^)「さぁ…ふふ、くっ…フフ、フフフフ…」

こいつはヤバイ。
もはや誰の目から見ても、内藤は変だった。

鬱屈した気配が、しだいに怒りのそれに変わっていく。
膨張した右腕には赤い筋が幾重に走り、鼓動のように脈打っていた。

( ^ω^)「外見をちょっと小奇麗にしてもどうせ僕は秋葉系なんだお…はいはい秋葉秋葉…」

内藤が顔をあげる。
諦めの笑みから、しだいに表情が変化していく。

(=゚ω゚)ノ「こいつ…!」
(#^ω^)「お前に言われなくても常々気にしてたんだっつーのぉぉお!!」
(=゚ω゚)ノ「情けねぇ理由でキレるんじゃねぇ!」

およそ内藤らしからぬ…といっても、モニュはそこまで内藤の事を知っている訳ではないが。
ともかく、ヤケクソじみた怒りは無意識のうちに内藤の中にあった、戦いたくないという気持ちを綺麗さっぱりかき消した。

内藤は体を大きく捻り、さぁ殴るぞといわんばかりに腕を引き絞る。
予備動作も丸見えの大振りの一撃だが、膨れた腕を警戒したモニュはひとまずバックステップで距離を取った。

それがいけなかった。



609: 名無しさん :2008/05/05(月) 21:36:14
病院の入り口近くで、1台のライトバンが急ブレーキをかけた。
ライトバンから飛び出すように降りたツンとペニサスは、見るも無残に破壊された駐車場に立つ二つの人影を見つける。

ξ゚听)ξ「内藤…!」
('、`*川「FOXじゃないようね、相手は」
ξ゚听)ξ「あれはモニュとか言う…」

遠目からでは良く分からないが、どうやら二人は何かを話しているようだった。
力なく項垂れている内藤は、怪我をしているのだろうか。
前にモニュと内藤が戦った時には内藤が優勢だったが、今はそうは見えない。

近くまで駆け寄ろうとツンが脚を出したその時、ペニサスはツンの腕を掴んだ。
いきなり静止を受け急停止したツンが激しく振り返る。
ペニサスは半ば呆然とした表情で、ある一点を見つめていた。

ξ゚听)ξ「ちょっ…何を!」
('、`*川「あれはまさか…AKB…」
ξ゚听)ξ「こんな時に秋葉がどうしたって!?」
('、`*川「秋葉じゃないわよアホ娘!日頃どんな会話をしてんの貴方は!」
ξ゚听)ξ「じゃあアイドルグループのほうですね!」
('、`*川「違う!あれはアクティブコードAKB、アーミット・ケルベルス・ブレイク…!」
ξ゚听)ξ「…何いってんですか?」

ツンがペニサスから目を離し、再び内藤を見る。
内藤が体を捻るのと同時だった。
誰でも避けられそうな超大振りのパンチ。

だが、モニュは下がった。
撃ち出される拳は、真紅に萌えていた。
膨張した腕、赤い幾重もの筋が、同時に光を放つ。

ξ゚听)ξ「へっ?」

間抜けな声を上げたツンの目に、赤光が踊った。
ツンにだって分かった。あれはパンチではない。
そう、あれは多分、いわゆる必殺技だ。

('、`*川「廃熱のための空気をあえて溜め込んで腕に集中させ、爆発と共に熱を乗せたカマイタチを放出する…それがアーミット・ケルベルス・ブレイク」
ξ゚听)ξ「…ちなみに、そのネーミングは誰が?」
('、`*川「私だけど?」
ξ゚听)ξ「………」

吹っ飛んでいくモニュを目で追いながら、ツンは何とも言えない徒労感を感じていた。



610: 名無しさん :2008/05/05(月) 21:36:31
前に出れば良かった。
不覚にも気圧された自分を恨みながら、モニュはコートで身を覆う。
自分の煙草の爆発にも耐える耐火仕様のコートが、意味を成さなかった。

(=゚ω゚)ノ「…爆発じゃねぇだと!?」

いや、爆発そのものは防げたはずだった。
だが同時に発生した熱風の刃が、コートを切り裂いた。
さらに拳圧で志向性を持たされた爆風が、容赦なくモニュの体を宙に持ち上げる。

(=゚ω゚)ノ「ぐぅっ、うっ!」

無数のカマイタチが強化服ごとモニュの体を切り裂いた。
隙間から入り込んだ熱風が肌を焼く。
流れた血が、瞬く間に蒸発した。

( ^ω^)「…あ、あれ?」

受身も取れずに転がっていったモニュに、一番驚いたのは内藤だった。
情けない怒りに身を任せた攻撃は、なぜ当たったのか分からない。
というより、今の謎のエフェクトは何なのだ。

( ^ω^)「まさか僕はこの場面で必殺技を編み出したのかお…!?」

折れた左腕の痛みも忘れるような興奮だった。
まるでかつて憧れたアニメや漫画の主人公のようだ。
きっかけとなる怒りは少しばかりかっこ悪かったが。

(=゚ω゚)ノ「ね、狙ってやったんじゃ…ねぇのかよ…」

何とか上体だけを起こしたモニュが問いかける。
相当なダメージを受けているのは、見ただけで分かった。

( ^ω^)「いや、モニュがあんまり心にくる事言うもんだからついカっとなって」
(=゚ω゚)ノ「い、怒りで本気出すってなぁ旦那の好みだろうが…り、理由がちぃとばっかし…」
( ^ω^)「…好み?」
(=゚ω゚)ノ「かっこ悪ぃ…」

それは自分も同じか。
モニュは力の入らない上体を再び地面に預けながら、そう思った。
大きく息を吐いて目を閉じる。

(=゚ω゚)ノ「まぁいいかぁー……俺ぁ仕事終わったぜ、旦那よー…」

静かになった駐車場の真ん中で、大の字に倒れたモニュ。
だが、終わりではない。
その場の誰も彼もが満身創痍の病院に、新しい足音が到着したのだから。



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