( ^ω^)ブーンがゲイバーのスタッフになるようです
- 78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/09(火) 22:03:10.65 ID:kchGNE8h0
- 第二話
(´・ω・`)「それじゃ、まずは開店準備からはじめよっか」
18:49分。やや早めに来たつもりだったのだが、ママであるショボンはすでに店内のソファーでくつろいでいた。おずおずとドアを開けた僕を、営業ではない素の反応で迎えるその姿に、どことなく違和感を感じ得ない。
スタスタと歩くその短い距離が、なんだか異次元のように思えた。そりゃそうだ、昨夜はお客さんもいて、スタッフもいて、BGMも流れていて・・・賑やかだったこの店内。だけど、今ここにはブーンとママの二人だけなんだから。
音も無く、照明も完全には点けられず。なんだか夏祭りの後の、あの雰囲気にも似ているな。ブーンはそう感じていた。
祭りの後。兵共が、云々。
ただ違うのは、騒がしくなるのはこれからだ、ということなのだが。
(´・ω・`)「まずは、テーブルを拭く所から始めようか」
ゆっくりと立ち上がると、ショボンはカウンター内へと進んだ。ブーンも一瞬ためらい、それに続く。
カウンター内に入った瞬間、ああ、僕も今日からここで・・・と、実感がふつふつとわきあがってきた。
(´・ω・`)「こっち。流し台の下を見てごらん。」
- 79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/09(火) 22:11:59.28 ID:kchGNE8h0
- ( ^ω^)「これは、おしぼりですお」
(´・ω・`)「そ。いちいち台拭きで拭いてちゃ何枚台拭きが必要かわかんないし、衛生面の問題もあるからね。週に2回、業者に発注しておしぼりは常に清潔なのを使用してる」
( ^ω^)「なるほどお・・・それでは早速」
黄色いケースの中からブーンはお絞りを一つ取り上げると、パリッと袋を破り中身を取り出した。そしてテーブルを拭き始める。
わしわしわし。
わしわしわし。
( ^ω^)(あ・・・ここ、昨日僕が座った席だお)
カウンターの中から見たその席は、思ったよりも小さくて、だけど大きくも感じられて、ブーンはなんだか途方も無い気持ちになった。
ショボンは、そんなブーンの姿を、嬉しそうに見つめている。目の前の青年の眼差しに、彼は満足に似た感覚を得ていた。
彼なら、きっと・・・。そう、思って。
- 81: 1 :2006/05/09(火) 22:18:54.73 ID:kchGNE8h0
- (´・ω・`)「次はチャームの準備」
(´・ω・`)「次は照明の調節とボトル棚のライトアップ」
(´・ω・`)「次はBGMを流すから、コッチに来て。機材の説明をするよ」
(´・ω・`)「ホウキで店内を軽く掃いて」
( ^ω^)「りょ、了解しましたお!」
―――ブーンが全ての作業を終えたのは、それから30分後のこと。
いちいちメモ帳にメモってても見ないだろ、オカマってなそんなもんなんだよ。ショボンは笑うと、作業内容を逐一簡潔に、判りやすく説明した。さすがママだお、とブーンは感心しつつ、作業の内容を必死で頭に叩き込んでいった。
(´・ω・`)「・・・よし、あとは20時までゆっくりしててね」
( ^ω^)「はいですお・・・ふう、疲れた・・・」
- 83: 1 :2006/05/09(火) 22:22:43.71 ID:kchGNE8h0
- ショボンは、ソファーで肩を揉むブーンに向かって、
(´・ω・`)「何か飲みたいのはある?」
あ、んー・・・とブーンが逡巡していると、昨日のようにコーラが目の前に運ばれてきた。
(´・ω・`)「お子様にはコレでね」
( ^ω^)「はいですお・・・・・・・」
ドサリ、とブーンの向かいに座ると、ショボンは手に持っていた牛乳を飲み始める。
意外ですおね、とブーンが微笑むと、
(´・ω・`)「仕事前は牛乳。仕事が終わったらウコンのサプリ。酒飲みの常識だよ?」
そう言ってショボンは笑った。
その真意はよくわからなかったが、ブーンはとりあえず頷いておいた。
- 85: 1 :2006/05/09(火) 22:29:08.46 ID:kchGNE8h0
- ―――19時50分。
ブーン達が一服していると、店のドアがガチャガチャと音を立てた。続いて、カチャリと鍵の空く音。
/ ,’ 3「あー、おはよう」
挨拶と同時に入ってきたのは、30台半ばほどの、男盛りといった風貌の男性だった。
体型は、ガッチリというよりはややぽっちゃり気味か。けど、タダのデブじゃない、というのはその筋肉のふくらみから判った。何より特徴的なのは、その顔面を覆うフルフェイスの髭。まるで熊だ。
(´・ω・`)「おはよー」
( ^ω^)「お、おはようございますお」
夜なのにおはよう、というのは何か可笑しい気がしたが、ブーンはつとめて冷静に、ショボンに続いて挨拶する。このいつ何時でもおはよう、という挨拶が夜の世界の基礎なのだと知るのは、もう少し後のこと。
/ ,’ 3「君があたらしいスタッフか。よろしく、新巻だ」
そう言って差し出された右手は、ブーンのよりもふた周りほど大きかった。
- 88: 1 :2006/05/09(火) 22:36:06.30 ID:kchGNE8h0
- / ,’ 3「俺は新巻。本名だ。34歳で、本業は介護師」
( ^ω^)「始めまして、内藤ですお。ブーンって呼んでくださいお。本業は、、、学生ですお」
/ ,’ 3「・・・?学生?」
( ^ω^)「え、あ、はあ」
不意に、新巻の目が鋭く光る。その視線は、ブーンからセブンスターを吹かしていたショボンへ。
/ ,’ 3「ショボン、まさか・・・未成年か?」
(´・ω・`)「そうだよ」
ブーンの前で、二人が視線を交じわす。どこか棘の在るその光景から、ブーンは逃げ出したい衝動にかられた。
- 93: 1 :2006/05/09(火) 22:45:01.65 ID:kchGNE8h0
- ( ^ω^)「あ、あの・・・」
(´・ω・`)「ブーン君、大丈夫。」
/ ,’ 3「なーにが大丈夫だ・・・仕方が無い奴だなぁ・・・」
新巻は呆れたように、紫煙をくゆらすショボンを見た。激昂する、という訳でもなさそうだが・・・。
/ ,’ 3「お前、あの事を忘れたのか」
( ^ω^)「お?未成年を働かせてるのが警察にバレでもしたのですかお?」
違うよ、と新巻は言った。そんなことはまずありえない、と。その顔は苦みばしっている。
(´・ω・`)「昔ね、学生の子が・・・」
その時、店のドアがコンコンとノックされた。あわてて新巻は時計を見て、急いでドアへと歩み寄る。
(´・ω・`)「っと、開店の時間だ。いそいでカウンターの中に入って」
・・・結局何が新巻を焦燥させたのかわからぬまま、ブーンは始めての接客につくこととなる。
だがそれも、新鮮な事だらけなブーンにとってはすぐに過去の出来事となり、しばらくの間は忘却の彼方へと忘れ去られてしまうのだが。
- 94: 1 :2006/05/09(火) 22:50:55.19 ID:kchGNE8h0
- ( ^ω^)「ど、どうも始めまして・・・ないt・・・ブーンといいますお、よろしくですお」
ミ,,゚Д゚ミ「始めまして」
(´・ω・`)「この子は今日から入ることになったブーン君っていうんだ。これからもよろしくしてあげてね。」
ショボンの優しい介入に、ブーンは幾分か肩の力を落とす。流石はママの名を張るだけあって、その話術は完璧だった。
対するブーンは、というと、
( ^ω^)「ああああのえっと、お、おなまえは・・・」
ミ,,゚Д゚ミ「ん、フサだ。よろしくね。」
(´・ω・`)「フサさんは常連の方よ。フサさん、新人だけどしっかりしごいてあげてねw」
下半身ならいくらでもしごいてやる、とジェスチャーつきで下品に笑うフサ。一緒に笑うショボンを見て、ブーンは焦っていた。もっと上手く喋らなきゃ。自分がこんなんじゃ、お客さんに気を使ってもらってるだけじゃないか。
- 95: 1 :2006/05/09(火) 22:56:35.93 ID:kchGNE8h0
- ( ^ω^)(こんなことじゃだめだお・・・もっと上手く喋らなきゃ)
フサから離れ、コップを洗いながらブーンはため息をついていた。まだお客さんがフサ一人だけだからいいものの、きっとこれからどんどん客は増えていくだろうし、こんなことで大丈夫だろうか・・・やっぱりゲイバーのスタッフって、思ったより大変なんだなあ・・・
/ ,’ 3「・・・内藤君」
そんな時だった。後ろからのっそりと、新巻が囁いてきた。
( ^ω^)「新巻さん・・・」
/ ,’ 3「気持ちはわかる。誰だって初めはそうだ。だから、今日と明日、それに次の機会・・・カウンターに入る3回目までは、会話ではなくお客さんに顔を覚えてもらうことに集中して。いいね」
( ^ω^)「・・・!はいですお」
/ ,’ 3「それと、食器洗いはもっと洗い物が増えてから。接客から逃げて作業してても何の経験にもならないよ」
ハッと顔を上げる。新巻は微笑んでいた。
- 96: 1 :2006/05/09(火) 23:03:51.28 ID:kchGNE8h0
- ( ^ω^)「ただいまですお!」
ミ,,゚Д゚ミ「おう、お帰り坊主」
ブーンは、笑顔だった。
―――昔、カーチャンに言われたことがあったのだ。
J( ‘-`)し『ブーンは、笑顔が一番ね』
( ^ω^)(そうだお・・・笑顔・・・僕は、笑顔でいるのが一番なんだお・・・!)
・・・どうすればいいのかは、わからない。
だけど、笑顔なら簡単に作ることが出来る。そう考えて、ブーンはめいいっぱいの笑顔を浮かべる。
ミ,,゚Д゚ミ「おー、初々しい笑顔が可愛いね。ショボンや新巻みたいな営業スマイルとは全然ちがうや」
いやだなー、と返すショボン。そんなことないですよ、と怒ったフリをする新巻。二人の目は、笑っていた。
- 100: 1 :2006/05/09(火) 23:10:47.97 ID:kchGNE8h0
- (´・ω・`)「それじゃ、フサさんがトイレに行ってる今のうちに、お酒の作り方について説明しておくね」
フサがトイレに行ったのを見計らって、ショボは目の前にあるフサのグラスを手に取った。ちょうど、残りはわずかである。
(´・ω・`)「こっちにある、フサさんのボトル。フタをあけて?」
言われるがままに、ブーンはボトルのフタをあける。すぐさま、ショボンは隣にあるアイスペールを指差した。
(´・ω・`)「このトング・・・そう、そのハサミみたいなやつでグラスに氷を入れるんだ。あんまり多すぎてもいけないから、量は適当でね」
( ^ω^)「はいお」
カラカラ、と涼やかな音が響く。その時、トイレを流す音と共にフサがトイレから出てきた。チッ、とショボンが小さく舌打ち。
(´・ω・`)「ksmsレーダーが反応してたから大の方だと思ってたのに・・・早すぎる。」
( ^ω^)「?」
(´・ω・`)「なんでもないよ。続けて。」
- 101: 1 :2006/05/09(火) 23:16:45.41 ID:kchGNE8h0
- ミ,,゚Д゚ミ「初めてのグラス作りかー。がんばって美味い酒作ってくれよーw」
・・・そういわれると緊張するものである。割り物が一緒なんだから味は一緒だよね、とショボンがツッコむが、その程度じゃ緊張はほぐしきれない。
(´・ω・`)「フサさんはお酒の量は普通くらいだからね。大体・・・」
言って、グラスの下のほうに人差し指と中指を添えた。
(´・ω・`)「ま、大体これぐらいの量お酒を入れればいいんだ」
( ^ω^)「把握しました」
そーっと、ブーンはボトルの口をグラスに近づけた。
そーっと、慎重に・・・・・・そーっと・・・
カチカチ、とボトルが揺れる。冷や汗がどっと背筋を伝い・・・
ξ ゚听)ξ「ちわーっ!オカマンコでーっす!!!」
突然開いたドアと豪快な声に、思わずボトルが大きく傾いだ。
- 106: 1 :2006/05/09(火) 23:24:56.00 ID:kchGNE8h0
- ミ;,゚Д゚ミ(;^ω^)/; ,’ 3『おわーっ!?』
どぼどぼどぼ。
重力は無常にも、多量の酒をグラス内へと注がせた。
見守っていたほぼ全員が、大声でそれを見つめる。ブーンはあわててボトルを引いたが、中に入ったお酒は、もうボトルに戻ることは無い・・・。
(;^ω^)「あ・・・し、正直すまんかったですお・・・」
ミ,,゚Д゚ミ「い、いやいいよ…今のは不可抗力だし」
/ ,’ 3「ちょっとオカマこっち来い」
ξ ゚听)ξ「え?何?ファック?じゃあコンドーム用意しなきゃ」
(´・ω・`)「ま、これくらい想定内だけどね」
- 108: 1 :2006/05/09(火) 23:28:25.14 ID:kchGNE8h0
- ミ,,゚Д゚ミ「あーあ、しかしこの濃さじゃ飲めないぞ・・・」
呆れたように言うフサ。その目は、だが怒っているようには見えなかった。
ブーンはひたすら頭を垂れて、反省の意を示し続けている・・・と。
ミ,,゚Д゚ミ「じゃ、初心者の洗礼でもするか。ちょっと早いけど」
( ^ω^)「・・・お?」
言葉の意味が判らず、ブーンは頭を上げた。
そこには、アルコールのたっぷり入ったフサのグラス・・・と、その隣には一回り小さなグラス。
開店準備中にショボンに叩き込まれた知識からすれば、それは・・・
(´・ω・`)「スタッフ用グラスが一つです。はい、これから何が行われるでしょう」
(;^ω^)「・・・・・・ぼ、僕が飲むんですかお?」
それに、オカマ以外の全員が頷いた。
- 111: 1 :2006/05/09(火) 23:34:36.92 ID:kchGNE8h0
- (´・ω・`)「ま、これで痛み分けだよね」
ママの日本語の使い方が間違っているような気がしたが、ブーンにとってはそれどころの事態ではなかった。
フサと自分のグラスに、半分ずつに分けられた酒。それでも、通常グラスに作成する酒の規定量よりはやや多い。
とりあえず割り物の緑茶を注いでみたものの、二つのグラスから放たれる禍々しさを払拭するには至らず。
ミ,,゚Д゚ミ「・・・もしかしてブーン君、お酒飲んだことないのか?」
(´・ω・`)「そのようだね」
ξ ゚听)ξ「じゃあ今度私のおツユも飲んでね!」
/ ,’ 3「そこの腐れマンコもっかいこっち来い」
そんな掛け合いも、最早目に入らない。
お酒が怖いわけではない。ただ、今まで呑んだことが無かったので、自分がどうなってしまうかがわからなかった。
・・・だけど、ここは飲まなきゃ。男が、すたる。
- 116: 1 :2006/05/09(火) 23:42:30.23 ID:kchGNE8h0
- ξ ゚听)ξ「オラ飲め!ライ!ラララライ!」
不意に、オカマ・・・じゃなくてツンがコールをかけた。
ショボンや新巻も、ライ、とそれに続く。
( ^ω^)「う・・・うっす!」
意味の無い掛け声とともに、ブーンはグラスに口をつける。ややきつい芳香。口当たりは・・・さほど悪くない。
同時にグラスを飲み干すフサ。その顔には余裕が浮かんでいた。
( ^ω^)「(もう少しで・・・、うぐ、うぐ・・・、)ップハ、ごちそうさまですお!」
ドン、とテーブルにグラスを置くブーン。フサは、まるで父親のようにそれを見ていた。
ξ ゚听)ξ「ライそれライそれイケイケゴーゴー・・・ってあれ、もう飲み終わったの。早漏ね」
/ ,’ 3「良くやった。」
(///^ω^)「・・・思ったより美味しいおww」
(´・ω・`)「ま、こうやってミセコは強くなっていくんだよね・・・」
- 121: 1 :2006/05/09(火) 23:48:41.37 ID:kchGNE8h0
- ミ,,゚Д゚ミ「がはははは、よしもういっぱい飲め!」
(///^ω^)「いただきまーすですお!」
今度はゆっくり飲めよ、じゃねえと俺の財布が寂しくなるからな、とフサが笑った。
冗談で、
(///^ω^)「じゃあ僕がフサさんの懐を暖めてあげますお」
と言ってみると、フサはそれに予想外にウケて、
ミ,,゚Д゚ミ「よーし、そのうちな!そのうちな!」
と、グラスを大きく傾けた。
ブーンはほろ酔いになりながらも、ああ、こうやってお客さんと打ち解けていくんだなあ、と実感していた。
ショボンはそんなブーンを横目で見ながら、ツンのボトルを探していた。心持、その口には笑顔が浮かんでいた。
新巻とツンは、再びくだらない掛け合いを始めた。
―――ゲイバーの夜は、こうして始まった。
- 125: 1 :2006/05/09(火) 23:55:08.64 ID:kchGNE8h0
- ゲイバーで働き始めて一日目、ゲイバーに来てから二日目にして、ブーンは知ったことがある。
それは、オカマ・・・いや、ゲイにはどうも、ゲイ独特の『流行り』というものがあるらしい、ということだ。
ξ ゚听)ξ『まっさかさーまーにー、おちてデザイアー』
(´・ω・`)『堕ちたらこうなる水商売!』
ξ ゚听)ξ『炎のよーおーにー、もえてデザイアー』
(´・ω・`)『燃えてなくなれこんな店!』
(;^ω^)(カラオケの掛け合いなのにママがあんなこと言ってるお・・・)
ξ --)ξ(´-ω-`)『ゲラッゲラッゲラッゲラッバーニンハァーッ!』
ツンは、その辺りに異様に詳しい。彼女(?)いわく、明名と性子とピンクレディーズは私の魂よ、らしい。若干古いようだが、歌ってて楽しいからいいか・・・。ブーンは笑いながら、そう思っていた。
もう一つ。
- 127: 1 :2006/05/10(水) 00:01:14.06 ID:raTijpLJ0
- ξ ゚听)ξ『こなぁああーゆきぃいいいー、』
/ ,’ 3『ねぇ?』
と、男物のバラードも意外とウケるという事。
基本は、ツンいわく、
ξ ゚听)ξ『アイワナビアビップスター・・・ああ、平井賢はやっぱりいいわぁ・・・』
…らしい。平井賢自身にもゲイ疑惑がかかっているようで・・・迷惑というか、なんというか。
とりあえずその辺りの曲はわかるので、ブーンも一緒に歌ってみた。ツンは上機嫌で、ブーンにお酒を勧めてくれた。
ツンにお酒をもらいながら、「ああ、お酒の頂き方っていろんな方法があるんだなぁ・・・」そう、ブーンは思っていた。
(´・ω・`)『ゲイバーの稼ぎってのは、はっきりいって、ミセコ自身がお客さんからどれだけお酒をいただけるかにかかってるんだよね。』
ショボンは、仕事前にそう言った。
(´・ω・`)『だから、僕達は誠心誠意、接客するんだ。お客様に、気持ちよくおごって頂けるようにね。』
- 129: 1 :2006/05/10(水) 00:08:52.74 ID:raTijpLJ0
- ξ ゚听)ξ「そんじゃね!」
( ^ω^)(´・ω・`)/ ,’ 3『お気をつけて!ありがとうございました!』
―――やがて、そんなこんなで始発の時間も近づき、用事があるらしきツンは急いで帰って行った。
ツンのグラスとボトルを片付けながら、ブーンはニヤけていた。
(´・ω・`)「やあ、何かいいことでもあったかい?」
(///^ω^)「あ、いえ、ツンさんと仲良くなれてよかったな、って思ってましたお」
(´・ω・`)「・・・ブーンは本当にいい子だね、褒めなきゃいけないよね」
ブーンの頭を、ショボンはグリグリと撫でた。便乗して、新巻もそのグローブの様な手でブーンを撫でた。
ミ,,゚Д゚ミ「俺も俺も!」
そう言われて、ブーンは頭を差し出す。酔っ払っているフサは、大声で笑いながらブーンの頭を撫で倒した。
僕は、いい子なのかな?・・・ブーンは、されるがままになりながら考えていた。
なんにしろ、この人たちを裏切るようなことだけは、したくない。そう、思った。
- 130: 1 :2006/05/10(水) 00:11:55.92 ID:raTijpLJ0
- (´・ω・`)「お疲れ様―。」
/ ,’ 3「お疲れ様。」
( ^ω^)「お疲れ様ですお」
あれから数人の客が来店し、ブーンはその度に上手く客の心を掴んでいった。
それは彼が持った天性の人懐っこさにもあるし、それを助長する笑顔もあっての事。
しかし、それ以上に、彼自身の向上心から来るものだった。その姿に思わず、
(´ ω `)(一日目からこれだけ客の心を掴むなんて・・・ブーン、恐ろしい子・・・!)
とショボンもガラスの仮面ばりに嫉妬したとかしなかったとか。
とにかく、一日目にしては順風満帆の滑り出し。ブーンは店閉めの作業をショボンに教えられながらも、終止笑顔を崩さなかった。
(´・ω・`)「・・・さて、第一回・ブーン俺アラマッキーによる三人祭り、題してオカマミーティングを開催したいと思います。」
( ^ω^)「おーっ!おーっ!」
/ ,’ 3「アラマッキー言うな。ぶちくらわすぞ。」
- 132: 1 :2006/05/10(水) 00:17:36.02 ID:raTijpLJ0
- (´・ω・`)「まずは、今日の主人公であるブーン君。」
( ^ω^)「はいですお」
(´・ω・`)「今日は本当にお疲れ様。まだこの世界に入って二日目なのに、よく仕事を覚えたし、お客さんとも上手に接することができてた。才能があるね。」
/ ,’ 3「そうだな。初めは情けなかったけど、最期のほうはなかなか頼りがいのある接客ができてたな」
(///^ω^)「ありがとうですおwwwテラウレシスwww」
二人の賛辞の言葉に、ブーンは照れながら頭を下げた。
・・・今日は初日なのに、本当によくやれた。自分らしい会話ができた。お客さんにもソレがウケた。
そう、自分を振り返って満足していると・・・
(´・ω・`)「・・・・が。しかしだ。」
/ ,’ 3「ああ。」
( ^ω^)「・・・?」
- 135: 1 :2006/05/10(水) 00:26:51.89 ID:raTijpLJ0
- (´・ω・`)「ブーンは、スタートダッシュが上手く行き過ぎた。これじゃいけない。」
( ^ω^)「ど、どういう事ですかお?」
急に手のひらを返したように、ショボンの目が鋭くなった。そこには、わずかだが冷徹さまでもが垣間見えるようで。
見れば、新巻も苦い顔をしていた。
(´・ω・`)「率直に言おう。」
・・・調子に乗るな。
―――ショボンは、そう言った。
一瞬、ブーンは何を言われたか理解できなかった。
ショボンは、続ける。
(´・ω・`)「天狗になっちゃいけない、って事だ。」
/ ,’ 3「今日は、俺とショボンがブーンをサポートする形に回った。」
(´・ω・`)「ママとチーママがいれば、店が上手く回転しないわけはないって事さ」
- 134: 1 :2006/05/10(水) 00:25:09.50 ID:raTijpLJ0
- ( ^ω^)「あ・・・」
/ ,’ 3「もう一つ付け加えるなら・・・今日の客は、俺達が前もって呼んでおいた。」
(´・ω・`)「初めて働くミセコが気楽に接することが出来る常連達だ。ツンなんかは特にそう。アレでもキャバで一番人気の子なんだ。逆に接客されてたんだよ、ブーンは。」
・・・ガツン、と脳天を揺さぶられたような気がした。
そうだ。僕は・・・全部、相手に会話の主権を握られたまま、会話していた・・・気がする。
ショックを受けたブーンに、ショボンは、
(´・ω・`)「ちなみにフサは元ゲイバーのママだよ。」
そう、追い討ちをかけた。
そうなのだ。それだけのことなのだ。
店のママとチーママが、夜のプロを呼び寄せて、ブーンに夜の世界の基本を学ばせた。
・・・全てが、己らの手のひらの上で、だ。
自分は・・・驕っていた。
( ^ω^)「・・・・・・」
/ ,’ 3「肩を落とすなよ」
しかし、新巻はそこでフォローを入れる。
/ ,’ 3「夜の世界は、正直言って厳しい。お前みたいに若い奴にはなおさらだ。だから、俺達オヤジが、お前達をしっかり育てなきゃならねえ」
- 139: 1 :2006/05/10(水) 00:32:36.99 ID:raTijpLJ0
- (´・ω・`)「今日は、みんなの胸を借りたと思って。」
/ ,’ 3「そうだ。初めはよちよちから。夜の世界は険しいからなw」
そして、新巻が珍しくにっこりと微笑んだ。それはショボンやジョルジュにはない優しさがあって、
( ;ω;)「・・・・ううっ、」
ブーンの涙腺が、危ういところで決壊しかけた。
(´・ω・`)「・・・明日は、いよぅとドクオに入ってもらうよ。スタッフにも顔を知ってもらわなきゃだしね」
/ ,’ 3「あの二人なら、ちゃんとブーンを立ててくれるとは思う。だが、あの二人のスタイルは俺達とは違うからな。」
(´・ω・`)「そのあたりも、しっかり目と耳で盗んでね。」
スタイルの違いとやらがピンとこなかったが、ブーンはただ、黙って頷いた。
―――こうして、三人祭り改めオカマミーティングは、ブーンの涙と共に終わった。
- 141: 1 :2006/05/10(水) 00:35:52.65 ID:raTijpLJ0
- (´・ω・`)「お疲れ様!」
/ ,’ 3「しっかり寝るんだぞ!」
( ^ω^)「はいですお!」
どうも、ショボンは今夜、他店のパーティーにいかなきゃいけないらしい。またモエピンか、と財布を見ながらため息をつくショボンと、ドンペリじゃないだけマシじゃないかと肩を叩く新巻。
ブーンにはその辺りのことは良くわからないのでスルーしたが、どうも上には上の苦労、という物があるようだ。
一人、駅へと向かいながら。
ブーンは、硬く握っていた手を、そっと開いた。
そこには、ジョルジュにもらったあの紙片。
( ^ω^)「・・・メール・・・」
しようか、とも思ったが、今日はやめておくことにした。
なんだか、頼ってしまいそうでくやしかった。
・・・明日は、今日よりもいい仕事をできるようにがんばろう。
今日より成長できるように、がんばろう・・・。
ブーンは、浅黄色の空を見上げた。
涙は、朝の風に溶けて、やがて消えた。
(第三話に続く
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