( ^ω^)ブーンがゲイバーのスタッフになるようです

4:1 :2006/05/11(木) 00:39:42.76 ID:NMSfibVw0
  
 第三話  

 ( ^ω^)「おはようございますお」

 ―――PM19:00丁度に、ブーンは店に着いた。
 ドアを開けると、ボトルを整理していたドクオと目が合う。

 ('A`)「あらおはよ。今日はアタシとブーンで店回すのよね」

 ( ^ω^)「あと、いよぅさんっていう人もですお」

 後ろ手でドアを閉めながら、何の気なしにそう返し、ブーンはドクオの表情に気づいた。
 ・・・かすかに、苦みばしっている。

 ( ^ω^)「?どうか、しましたかお?」

 ('A`)「・・・んーん。とりあえず開店準備だけ済ましましょ」

 ・・・とりあえず、とはどういうことか聞こうとしたが、ドクオのどこか突っぱねたような態度に、ブーンは諦めてホウキと塵取りを手にした。



7:1 :2006/05/11(木) 00:44:49.76 ID:NMSfibVw0
  
 ('A`)「・・・いよぅ、ねぇ・・・」

 店を開く準備を終えて、ようやくドクオは口を開いた。

 ('A`)「正直、いよぅは・・・ミセコ二回目のブーンには辛い相手かもね」

 ( ^ω^)「どういう意味ですお?」

 ('A`)「まんまその意味よ」

 バフッとソファーに背を持たれて、ドクオは憂鬱そうに言う。ブーンは上目遣いでコーラをじゅるじゅると飲みながら、次の言葉を待っていた。

 ('A`)「多分、アンタは今日、まともな精神状態で営業できないかもしれない。」



8:1 :2006/05/11(木) 00:50:46.34 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「お・・・?」

 ('A`)「ま、それは実際に彼に会ってから直に感じたほうが・・・っと、」

 ドクオが口を止めるのと、ドアがガチャガチャと鳴るのが同時だった。先日荒巻が登場した時と同じように、鍵を開ける音が続く。
 ブーンは首をもたげると、ドアを凝視した。カチャリ、と鋭い音が響き、やがてゆっくりとドアが開く。

 (=゚ω゚)ノ「・・・おはようございます」
 
 ( ^ω^)「お、おはようございます!」

 ―――現れたのは、年のころは・・・二十歳前後か。ブーンやドクオとそう大差ない年齢に見えるのだが、その面持ちは・・・凄まじいほどに、ダーク。

 ( ^ω^)「始めまして、ブーンと言いますお!今日はどうぞよろしく・・・」

 頭を下げるブーンを無視し、いよぅはバックルームへと荷物を置きに行く。ドクオはえもいわれぬ顔で、あっけにとられるブーンを見ていた。



10:1 :2006/05/11(木) 00:55:35.42 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「(・・・・・・し、シカトこかれましたお)」

 小声で、いよぅに聞こえないようにブーンは言った。ドクオはやれやれ、といった様子で頷き、

 ('A`)「あーいう子なのよ。他人に興味を全く持ってない、根暗な子」

 かわいそう、とでも言いたげに眉根を寄せた。ブーンは何とも言えずに黙っている。
 そんな二人の横を、バックルームから出てきたいよぅが通り過ぎた。淡々とスタッフ用のグラスを手に取ると、躊躇い無くテキーラの瓶を手に取る。そして、勢い良くグラスにそれをそそいだ。

 ( ^ω^)「アッー!お店のお酒は勝手に飲んじゃ・・・」

 ('A`)「無駄よ。あの子はいつもあんな感じ。酒を飲んで・・・」

 どろんと淀んだ目でブーン達を睨むと、いよぅはテキーラをロックで飲み干した。

 (=゚ω゚)ノ「・・・てめえらに何がわかる」

 ('A`)「わかりたくもないわ、アンタの事情なんてね」



11:1 :2006/05/11(木) 00:58:43.52 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「(・・・滅茶苦茶な人ですお!どうしてあんな人がこの店に・・・)」

 いよぅがトイレに入ると、ブーンはすぐさまドクオに向かってまくしたてた。そりゃそうだろう、秩序を護るどころか、ブーンやドクオに敵対心さえ感じさせる振る舞いをするいよぅ。ブーンには、そんな人がこのVIPにいること自体が信じられなかった。

 ( ^ω^)「(僕は、このお店のスタッフはみんな素敵な人たちだと思ってましたお!幻滅ですお!)」

 ('A`)「・・・はぁ・・・。ま、文句は店を閉めてから言いましょ。とりあえず、オープンの時間よ」

 鼻息を荒くしていたブーンだったが、その言葉にハッと腕時計を見ると、もう開店時間寸前になっていた。あわてて看板を返しに走る。

 ('A`)「・・・滅茶苦茶な人、か。」

 (=゚ω゚)ノ「悪いな、滅茶苦茶で」

 呟いたドクオに、トイレの影から様子を伺っていたいよぅが返す。ドクオは呆れたように頭を振ると、言った。

 ('A`)「ま、今日もせいぜい仮面を被ってがんばってね。」



15:1 :2006/05/11(木) 01:03:26.24 ID:NMSfibVw0
  
 (゜Д゜)「どうも。」

 ( ^ω^)(’A`)(=゚ω゚)ノ『いらっしゃいませー!』

 20時3分、一人目の客が来た。
 ブーンは素早く、チャームとお絞りの準備をする。だが、それを持っていこうとして振り向いた瞬間、

 (=゚ω゚)ノ「ありがと。」

 そこに立っていたいよぅに、手にしていたチャームとお絞りを取られてしまった。
 ・・・こういう作業は、店でもっとも下の立場の人間がしなきゃいけないはず・・・?ブーンがそう首を捻った瞬間、だった。

 (=゚ω゚)ノ「ねー見た今の!先輩に仕事させたわよあの新人!」

 (゜Д゜)「本当だなw」

 (=゚ω゚)ノ「もー!嫌味な子よねー!w」

 (;^ω^)「!?!?!?!?」

 突然、いよぅはニコニコしながら、お客さんに対してブーンの悪口を連ね始めた。お客さんのほうも、ソレに対してうんうんと頷いている。



16:1 :2006/05/11(木) 01:06:26.07 ID:NMSfibVw0
  
 (;^ω^)「どどどどどういうk」

 (’A`)「ブーン、わかったでしょ」

 語気を荒げかけたブーンの後ろから、ドクオがそっと耳打ちした。

 (’A`)「あの子は、スタッフや客を『落として』笑いを取るのスタイルの子なのよ」

 ( ^ω^)「・・・え?」

 (’A`)「お客さんによってはね、あーやって自分やスタッフを落として笑いを取ったほうがいい人ってのもいるのよ・・・」

 (’A`)「見てなさい」

 (=゚ω゚)ノ「でもね、まあ新人だから仕方ないのよねー、出来なくてもさあ」

 (゜Д゜)「まあそうだよなー。っと、ブーン君、だっけ?可愛いねw」

 ( ^ω^)「え、あ、お、」

 (=゚ω゚)ノ「顔は可愛いけど何か間抜けな顔よねw」

 (#^ω^)「ビキビキ」



17:1 :2006/05/11(木) 01:11:35.43 ID:NMSfibVw0
  
 (’A`)「あーらアンタだって相当間抜けな顔じゃないの〜」

 ブーンをかばうように、ドクオが矢面に立った。いよぅは何かを考えるように一瞬目線を逸らすと、標的を変更する。

 (=゚ω゚)ノ「何よ馬鹿、アンタも大概でしょー。大体そのノンケぶったような服装キモいんですけどー!きーもーいーんーでーすーけーどーwww」

 (’A`)「ムキー!金かかってんだからね!」

 ・・・ブーンは、そんな二人を遠巻きに見ていた。二人の間に入りたくないし、いよぅと喋っているとわけのわからぬ内にバカにされる気がしたのだ。
 だが、そのいよぅとトークするドクオの表情は、まるで演技をしているかのように、『完璧すぎるほどに』感情を映し出していて。
 ふと客の顔を見ると、そんな二人のケンカを、まるで見世物でも見るようにして笑っている・・・。

 ( ^ω^)「・・・・・・なるほど、お」

 ブーンは悟った。
 ・・・つまり、こういう事、か。



20:1 :2006/05/11(木) 01:15:55.34 ID:NMSfibVw0
  
 いよぅは、他のスタッフをあえて茶化すことで、カウンター内で『演技』をするタイプなのだ。いちいち自分のように言葉にカチンときていては、その演技はうまくできない。それどころか、一方的に言葉のリンチを受けるようなものだ。
 だが、ドクオの用に口の回るスタッフならば、その場を上手くまるめつつ、言葉の応酬を繰り広げることが出来る。そうやって、他のスタッフと渡り合ってこそ、いよぅは客を惹きつけるのだ・・・。

 (;^ω^)(ドクオさんが僕に、今日はまともな精神状態じゃいられないって言ってた意味がわかった気がするお・・)

 ―――つい先日、ミセコデビューを果たしたばかりのブーンには、まだよくゲイの会話、トークという物はうまくつかめていない。いよぅと対当に渡り合うには、ひいては客をそのペースに巻き込んでいくには、それだけの話術を見につけなければならない・・・。

 ブーンは、その困難を極めるであろう道に、愕然とした。
 ・・・っていうか、そもそもあんな常識のない人間とは会話も交わしたくないんだおけどね、と憤慨交じりに胸中で呟く。

 (‘A`) 「大体アンタね、その腐った性根が気に食わないのよ!」

 (=゚ω゚)ノ「オカマよりはマシよ!」

 (゜Д゜)「おまえもなwwwwwwww」



22:1 :2006/05/11(木) 01:22:24.02 ID:NMSfibVw0
  
ブーンが、めくるめく痴話喧嘩大会に入り込めずに、店の端でうにうにと燻っている時だった。

ξ ゚听)ξ「オラーッ!マンコ様の登場じゃ、控えおろう愚民共!」

店のドアが豪快に開き、何故か携帯の着メロで暴れん棒将軍の着メロを流しながらツンが登場した。昨日に続き最低の登場方法だが、今日は昨日と違って荒巻がいないせいか、特にツッコむ人もおらず、ドクオといよぅは未だに痴話喧嘩を繰り広げていて、

 ( ^ω^)「いらっしゃいませー・・・あ、マンコさんだお!」

 ξ ゚听)ξ「あら新人君じゃない!」

 とりあえずブーンは駆け寄ると、安堵したように息を吐いた。

 ( ^ω^)「ささ、お席にどうぞ」

 ξ ゚听)ξ「うむ」

 ( ^ω^)「ご注文は?」

 ξ ゚听)ξ「ボトルを出せい」

 ( ^ω^)「御意に」



25:1 :2006/05/11(木) 01:24:43.85 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「―――そういえば、昨日はどうもありがとう御座いましたお」

 ツンのグラスを作りながら、ブーンは笑って言った。

 ξ ゚听)ξ「え?何が?」

 ( ^ω^)「ショボンさんと荒巻さんに聞きましたお、昨日は僕のためにわざわざ来ていただいたらしいじゃないですかお」

 ξ ゚听)ξ「ああ、アレね」

 つまらなそうにツンは言う。

 ξ ゚听)ξ「気にしないでいいわよ。私だってこの店大好きだし、あれぐらいしなきゃ恩返しできないもんねw」

 ( ^ω^)「恩返し?」

 おうむがえしに聞いたブーンに、ツンは気にしないで、と笑った。答える代わりに、グラスを傾けて唇を湿らせると、

 ξ ゚听)ξ「そんなことより・・・アンタ、今切羽詰ってるでしょ」

 ツンはいよぅとドクオを見ながら、言った。



27:1 :2006/05/11(木) 01:30:50.34 ID:NMSfibVw0
  
 (;^ω^)「お、そ、そんなことないですお!」

 ξ ゚听)ξ「・・・わかってるわよ、それぐらいw」

 手をブンブンを振って否定するブーンを無視し、ツンは再びグラスを傾ける。
 いつもの粗野な口調とは違い、今日はどこか繊細さを感じさせるその口調に、ブーンは少なからず驚いていた。

 ξ ゚听)ξ「昨日話してわかったわ。アンタの接客は、ジョルジュやモララーに似てる」

 ( ^ω^)「ふ・・・fmfm?」

 似てる、とはどういうことだろうか。
 ネタの振り方?ボケの返し方?
 首を捻るブーンの前で、ツンは続ける。

 ξ ゚听)ξ「ま、普通なのよね。アンタ達は。変に相手を落としたりもしなければ、他のスタッフに絡まなきゃなにも出来ない、ってわけでもない」

 ぎゃーすか騒いでいる二人と客を見るその視線は、どこか遠い。
 ブーンはその横顔に、ツンのお水としての経験の深さを感じていた。

 ξ ゚听)ξ「自己完結してるってこと。あんた等は。お陰でお客さんもとっつきやすいし。ま、オールマイティなトークってとこね」



29:1 :2006/05/11(木) 01:36:45.53 ID:NMSfibVw0
  
 ξ ゚听)ξ「対して、ママやチーママ・・・ショボンや荒巻みたいなのは、どちらかと言うと他を立てるタイプのトークよ。縁の下の力持ち的な、ね。」

 ( ^ω^)「fmfm」

 ξ ゚听)ξ「ま、あの人達は単体でも十分話せるんだけど、他のスタッフやお客さんのトークを上手く盛り上げるのが上手なのよ」

 上司に欲しいタイプよね、とツンは笑った。そして、どうぞ、とブーンにジェスチャーをする。
 小さく頭を下げると、ブーンはスタッフ用のグラスを手に取った。

 ξ ゚听)ξ「そして」

 ブーンがトング(アイスを掴むための器具)やマドラー(グラスの中身をステアする際に使う棒)を準備するのを見ながら、ツンは言った。

 ξ ゚听)ξ「ドクオやいよぅが、一番厄介で、一番破壊力があって・・・一番、稼げるタイプ。」



30:1 :2006/05/11(木) 01:41:46.81 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「破壊力・・・稼げる・・・?」

 ξ ゚听)ξ「そ。古ガマ・・・って言ってもわかんないか。要するに、古い人、長くゲイの世界にいる人ってのは、概してあーいうオカマトークが好きなのよ」

 ( ^ω^)「オカマトーク、ですかお」

 自分のグラスに焼酎を注ぎながら、ブーンは繰り返す。
 オカマトーク、というのは、いよぅのように人を見下したような会話をすることなのだろうか?
 
 ξ ゚听)ξ「そうじゃないわ」

 質問したブーンの前で、ツンは苦笑した。

 ξ ゚听)ξ「説明しづらいけど・・・ま、毒舌家って玄人受けするのよ」

 ( ^ω^)「はぁ・・・」

 ξ ゚听)ξ「ただ、ドクオは若干ショボンや荒巻寄りね。フォローもかかさずできるタイプ。だから、他のスタッフにも、お客さんにも好かれてる。ただ・・・」

 ツンは肩をすくめ、

 ξ ゚听)ξ「いよぅは別ね。切れ味が鋭すぎる・・・。」

 いつの間にか一気飲みゲームへと派生している遠くの3人を見て言う。



31:1 :2006/05/11(木) 01:45:52.69 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「・・・とりあえず、いただきますお」

 ξ ゚听)ξ「あいよ、かんぱーい」

 カツン、とグラスが鳴る音。
 ブーンは一口酒を飲み、ふう、と息を吐いた。そんな青年を見、ツンはクスリと微笑む。

 ξ ゚听)ξ「可愛いw」

 ( ^ω^)「ぶへぇお!」

 蒸せるブーン。ケラケラと笑うと、ツンはグイッとグラスを飲み干した。
 ケホケホと咳をしながら、急いでグラスを作り始めるブーン。
 ツンは、

 ξ ゚听)ξ「・・・私ね、ブーンには、がんばって欲しいの」

 そう呟いた。

 ξ ゚听)ξ「普段、キャバクラで大人しくてツンツンしたキャラ演じてるからかな・・・たまに疲れる。デレッとできる相手が、甘えられる相手が欲しくなるときってある。」

 ( ^ω^)「お?」

 ξ ゚听)ξ「わたしね、ブーンには、そんな人になれる素質があると思うの」



32:1 :2006/05/11(木) 01:50:19.52 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「デレッと・・・ですかお」

 ツンのグラスを作り終え、ツンの前にグラスを置くとブーンは首をかしげた。

 ξ ゚听)ξ「そ。鳥のさえずる止まり木のような。あなたには、そうなれる才能がある。ママ・・・ショボンとは別の意味でね。だから、・・・」

 そこで、ツンは言葉を溜めるように、ん、と息を止めた。

 ( ^ω^)「だから?」

 ξ ゚听)ξ「・・・いよぅのようには、絶対にならないで。いいわね。」

 ( ^ω^)「・・・・お?」

 命令よ、とツンは冗談めかして言った。
 その目が笑っていたら、少しは笑えたのかもしれないが。



33:1 :2006/05/11(木) 01:54:17.06 ID:NMSfibVw0
  
 ξ ゚听)ξ「見て。」

 言われて、ブーンは後ろを振り向いた。
 お客さん・・・(゜Д゜)のボトルの隣に、いつの間にか、空のボトルが1本。

 (;^ω^)「お、おお!いつの間に!?」

 ξ ゚听)ξ「アレが玄人の飲み方。覚えときなさい。」

 ガンガン使ってガンガンミセコに飲ませる。ミセコは毒舌で上手く場をかき回し、とにかく客を笑わせ、満足させる。それが。そう、ツンはグラスを傾けながら言う。
 
 ξ ゚听)ξ「初め、アンタあの客につこうとした?」

 ( ^ω^)「はいお。でも、すぐいよぅさんにチャームとお絞りもってかれちゃいましたお・・・」

 ξ ゚听)ξ「そう。良かったわね」

 ( ^ω^)「・・・良かった?」

 ξ ゚听)ξ「アンタ、助けてもらったのよ。いよぅに。」



37:1 :2006/05/11(木) 02:02:08.19 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「助けて・・・もらった?」

 ξ ゚听)ξ「あの客についてたら、アンタ今頃ベロベロよ?w」

 ―――言われて、ブーンの背筋に冷たいものが流れた。
 確かに・・・あのペースで飲まされると、きっとブーンは、あっという間に潰れてしまうだろう・・・。

 ξ ゚听)ξ「別に、ミセコに潰れるな、とは言わない。むしろ、そんだけ飲んだって事で私は褒め称えるわよ」

 ξ ゚听)ξ「でも、今日はまだ、店に入って二回目でしょ?そんな新参が、いきなりベロベロになってゲロでも吐いてみなさい。この仕事、ヤにならない自信がある?」

 ( ^ω^)「う・・・!」

 ・・・そう言われてみると、確かに・・・。
 ブーンは、ちらりといよぅとドクオを見た。
 ドクオも同時にブーンを振り返り、ツンを見て、にっこりと柔らかく微笑んだ。きっと、全てを見通してるんだお。ブーンはそう思った。



39:1 :2006/05/11(木) 02:07:49.36 ID:NMSfibVw0
  
 ξ ゚听)ξ「ま、話はわき道に逸れたけど・・・いよぅは、不器用だけど、それなりに優しい子なの」

 玄人トークしかしないし、とっつきにくいとは思うけどさ。ツンは笑う。

 ξ ゚听)ξ「ただ、ブーンはあんな接客はできないだろうし、さっきも言ったように、あーいう風にはなってほしくない。どう考えても和み系なんかじゃないしね」

 ( ^ω^)「はいお」

 ξ ゚听)ξ「アンタは、ショボンや荒巻、ジョルジュなんかを見て育ってね。そして、いつか私をデレッとさせて」

 ( ^ω^)「・・・了解、ですお」

 ξ ゚听)ξ「御意に、だろ?」

 ( ^ω^)「(タテジワネズミかおwww)御意に、ですおw」

 ふふ、とツンは笑う。
 うふふ、とブーンも笑った。

 多分、ショボンさんや荒巻さんが、あえて今日のようなスタッフ編成にしたのには、きっとこういう意味があったのだろう。
 ―――いろんなスタッフがいて、いろんな個性がある、だから、このVIPは、綺麗に回転しているんだ、って。
そして、そういう人たちのいろんな技を盗みながらも、決して悪い方向へは転がらずに、新しい個性を生み出せ、と。



41:1 :2006/05/11(木) 02:13:46.35 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「お疲れ様ですお!」

 (’A`)「おっつー。」

 (=゚ω゚)ノ「・・・・・・。」

 その日の営業後。
 三人祭り改めオカマミーティングの時間がやって来た。

 (’A`)「えー、まずブーン。今日は、終止あのマンコの世話をさせて悪かった」

 ドクオは大してすまなくなさそうにそう言った。ブーンは頷いて笑う。
 いよぅは何も言わず、黙って麦茶をすすっていた。

 (’A`)「あー、いよぅ」

 (=゚ω゚)ノ「ん?」

 (’A`)「お前と俺でついたあの客、あそこだけで3万強落としたぞ」
 
 (=゚ω゚)ノ「そっか」

 ( ^ω^)「さささんまん!?」



42:1 :2006/05/11(木) 02:17:36.18 ID:NMSfibVw0
  
 ・・・あの客が店にいたのは、なんだかんだで3時間前後のはずだ。終電で帰宅したハズだから・・・
 そんな短時間でそこまでお金を使わせるとは、

 ( ^ω^)(玄人ノリ・・・恐るべし・・・)

 ブーンは改めて、目の前の二人を心の中で尊敬した。
 やはりツンの言っていた通り・・・この二人のトーク、うまくハマれば、破壊力は絶大なようだ。

 (’A`)「・・・その顔だと、ママとチーママが今日みたいなシフトを組んだ意図が、何となくわかったみたいだな」

 ( ^ω^)「・・・はいお」

 ブーンは力強く頷く。
 いよぅはソレをチラリと見て、すぐに目を逸らした。
 
 ( ^ω^)「・・・あ、い、いよぅさん」

 (=゚ω゚)ノ「何だ?」

 面倒くさそうに、いよぅが首をコキリと鳴らす。ブーンは脂汗を拭って、言った。



43:1 :2006/05/11(木) 02:22:38.22 ID:NMSfibVw0
  
 ( ^ω^)「そ、その、ぼ、僕、いよぅさんの事、始め誤解してましたお」

 (=゚ω゚)ノ「あ?」

( ^ω^)「人の話聞かないわシカトこくわトークは最低だわ僕のことksmsに言うわ、もう最悪な気分でしたお」

 (=゚ω゚)ノ「・・・・」

 ( A )「(ブーン・・・怖い子・・・!)」

 ( ^ω^)「でも・・・全部、僕の勘違いでしたお」

 ブーンは、そっと右手を差し出した。
 
 ( ^ω^)「これからも・・・よろしくお願いしますお」

 (=゚ω゚)ノ「・・・」

 ガタリ、と立ち上がると、いよぅはバックルームへと姿を消した。きっと、荷物を整理して帰る準備でもするんだろう。
 ブーンは差し出した右手をわきわきと動かし、ニヤリと笑った。
 ドクオも、そんなブーンを見て満足げに微笑んでいた。



46:1 :2006/05/11(木) 02:28:30.51 ID:NMSfibVw0
  
 ――― 一人、駅へ向かう。
 
 昨日と同じ道を歩んでいるブーンだったが、その気持ちは打って変わって晴れていた。頭上に広がる蒼穹が、彼方に輝く白日が、本当に心地よい。
 
 ( ^ω^)「あるっはれったひーのことーwまほーいじょーのゆっかいなーw」

 鼻歌交じりに軽快な足取りで歩くブーンを、すれ違ったオカマやゲイやホモが物珍しそうに見ていた。ブーンは動じず、むしろ胸を張って歩いていた。

 明日は学校。次に店に来るのは、水曜日の夜だ。
 今日は明けて日曜日だから、3日ほど二丁目には来なくなる事になる。

 ( ^ω^)「・・・・・」

 交差点。赤信号なのを確認すると、ブーンはくるりと方向転換した。遠くまで続く二丁目の軒並みを、瞼に焼き付けるようにじっと見つめる。
 そして、また水曜日に来るお、と呟き再び振り向いて、急いで青信号を渡って行った。

 ・・・後で、ジョルジュさんにメールでもしてみるかおw

 そんなことを考えたり、考えていなかったり。兎角、その顔は、見ているこちらが恥ずかしいほどに、幸福満面であった。


 (第三話  ハレ晴れ愉快  了



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