( ^ω^)ブーンがゲイバーのスタッフになるようです
- 4:1 :2006/05/16(火) 01:52:40.07 ID:6mYtM7iL0
- ( ^ω^)「それで店長、お話というのは何ですかお?」
―――ブーンが店に入って、今日でもう10数回目になるだろうか。
当時、彼が始めて二丁目に来てから既に2ヶ月・・・季節は足早に過ぎ、気温も釣られてぐんぐんと上昇していく。夜になれば虫の声、昼になれば子供の声。
太陽は高く、夜は短く。世間のオカマ達はこぞって腋毛の処理をし、タンクトップという名の勝負服に身を包む。それは、今年一年の努力(筋トレ)の成果を見せ付けあうため。さながら海辺で戯れる女子達のように、その身も心も、開放的になっていた。
世間も、二丁目も。
決定的に、それは夏だった。
(´・ω・`)「ああ、まあ各自適当に飲み物でも作ってテーブルに座っててくれ」
『七月某日に、全体ミーティングを行うからね。店が始まる2時間前に、店に集合。遅刻したら強制的にアラマッキーとksms予定だから覚悟しててね』
ママからスタッフ全員にそう通達があったのが、今から丁度一週間前。
当然、遅刻する者もなく、全員キッチリ2時間前に店に集合していたりする。
- 5:1 :2006/05/16(火) 01:55:59.61 ID:6mYtM7iL0
- (’A`)「やだわ・・・今日はファンデのノリがあんまり良くないみたい・・・」
/ ,’ 3「・・・・・・ショボン、ちょっと後で話が・・・って何だそのちょっぴり残酷な目は。やっぱりいい、やめておく。だからこっち見るな」
( ゚∀゚)「モララー、相方とはどうなんだ?最近」
( ・∀・)「まあまあだね。結構ラブラブさせてもらってるよ」
(=゚ω゚)ノ「・・・・・・・・・・・・・」
各々ごちゃごちゃと喋りつつ、円を描くように並べたボックス席のソファーに座る。流石に七人も座ると少々肩が狭く感じるが、それに文句を言うものはいなかった。
(´・ω・`)「さて。まあ、今日はこうしてみんなに集まってもらったわけなんだけど、やっぱりアレだね、みんな荒巻とksmsするのは嫌だったんだね」
( ゚∀゚)「あ・・・お、俺はそんなことないですよ!」
( ^ω^)「ぼ、僕もですお!」
/ ,’ 3「・・・・・・・・」
二人がしっかりフォローを入れた(つもりだった)が、当の荒巻は何も言わず、ため息を吐くばかり。どうもショボンのこんな仕打ちには慣れっこのようで、そんな荒巻を無視してショボンは喋りだす。
- 6:1 :2006/05/16(火) 02:00:13.30 ID:6mYtM7iL0
- (´・ω・`)「さてブーン」
( ^ω^)「はいお」
(´・ω・`)「今はどんな時期だ?」
( ^ω^)「夏!summar!」
(´・ω・`)「そうだね。英語のスペル間違ってるけど、まあそんなことはどうだっていい」
冷静にブーンのボケを流すと、ショボンは鞄の中から、なにやら一枚の紙を取り出す。
明朝体ででかでかと書かれた、夏とか男という文字。
( ^ω^)「フライヤー・・・ですかお?」
ブーンが質問を口にした瞬間、周囲の空気が変わった。
荒巻は冷静にショボンを見、いよぅとモナーは面倒そうに眉をひそめ、ジョルジュとドクオは目を輝かせる。
( ゚∀゚)「まさか!」
(’∀`)「浴衣パーティー!」
( ゚∀゚)人(’∀`)『浴衣!それはリリンの生み出した文化の極み!』
(´・ω・`)「そこのホモ共落ち着け。」
- 8:1 :2006/05/16(火) 02:03:58.37 ID:6mYtM7iL0
(´・ω・`)「そういう訳で、今年も毎年恒例、浴衣パーティーを行います」
( ゚∀゚)(’∀`)『イヤッホーイ!』
狂気する二人の影で、
( ・∀・)「・・・正味ダルいっすよね」
(=゚ω゚)ノ「・・・ああ」
モララーといよぅは面倒そうに顔を見合わせている。
そんな対照的な二組を見ながら、ブーンは手を上げた。
(´・ω・`)「はいそこ」
( ^ω^)「浴衣パーティーってどんなことをするんですかお?」
(´・ω・`)「そうだね、まあ今回スタッフを招集したのはこのイベントについての説明だったから兼ねちゃうけど・・・要は、その日出席するスタッフは全員浴衣か甚平、もしくは作務衣着用強制」
( ゚∀゚)「男の祭典だぜ!やっぱり夏といえば浴衣だよな!」
(’∀`)「当然男は褌よ!私は紅一点!今のうちにウィッグの準備しておかなきゃ!」
(;^ω^)(ドクオさんは女装する気マンマンだお・・・キメェwww)
(´・ω・`)「その日はお客さんも、浴衣でご来店なさった際にはチャージ料金をフリーにして、ワンドリンクのみ通常の半額で奉仕するからね。後は、オリジナルの団扇なんかも配布するから、みんな各自気合を入れるように」
- 9:1 :2006/05/16(火) 02:07:38.40 ID:6mYtM7iL0
- ( ^ω^)「気合?」
ショボンの言葉の最後のあたりが気になり、ブーンはそう質問した。
ショボンは頷き、
(´・ω・`)「ああ。一度前日に全員浴衣姿でこの店に集まって、写真を撮るからね。それを元にイラストを作成して団扇にするんだ」
( ^ω^)「へー。誰が絵を描くんですかお?」
(´・ω・`)「・・・・・・君は自分がどんな学校に行ってるか理解できてるかい?」
( ^ω^)「・・・・・・」
(´・ω・`)「・・・・・・」
(;^ω^)「・・・・・・・・mjsk」
(´・ω・`)「期待してるよ」
/ ,’ 3「去年までは絵を描いてくれる子がいたんだけど、せっかくブーンがスタッフにはいってくれたことだし、どうせなら芸大のウデを見せてもらおうと思ってね」
荒巻の何気ないその言葉にも、ブーンは動揺した。
別に絵が描けないわけではない。むしろそんじょそこらのイラストレーターよりは上手にこのスタッフの絵を描く自身はある。だが・・・
( ・∀・)(=゚ω゚)ノ『・・・・・・・・』
( ^ω^)「(二人の目線がやたらと怖いお・・・・・・)ま、まあ了解しましたお」
- 11:1 :2006/05/16(火) 02:13:15.86 ID:6mYtM7iL0
(´・ω・`)「まあそういうわけで、各自一週間後にもう一度、気合を入れて準備した浴衣を持って、店に集合してね。今日と同じく、店には開店時間前に集合。遅れたものは(ry」
全員『はーい』
/ ,’ 3「・・・・・・」
(´・ω・`)「それじゃ解散。ブーンとジョルジュとモララーは、開店準備お願いね。」
( ^ω^)「はいだお・・・ところでショボンさん」
(´・ω・`)「何だい?ウルトラマンに殺されたバルタン星人の同胞は20億人以上だよ」
(;^ω^)「(どうでもいい知識を聞いてしまったお・・・)い、いいえ、そのことじゃなくて・・・去年までは誰が絵を書いてたんですお?フライヤーと団扇の」
ブーンが指差した、ショボンの手にあるフライヤー。その中央部分には、丁度大きなイラストを載せるスペースが残されている。プロトタイプ、という奴か。
頷いたショボンは、右手に持っていたグラスの緑茶を飲み干し、言った。
(´・ω・`)「マンコ」
- 12:1 :2006/05/16(火) 02:18:34.48 ID:6mYtM7iL0
- (;^ω^)「ちょwww隠語wwwっていうかあの人、絵を描けたんですかお」
(´・ω・`)「ああ見えてもプロ級さ。今もたまにbadiなんかにイラストを掲載させてもらってるみたいだよ」
( ^ω^)「そうなんですかお・・・」
( ゚∀゚)「ブーン!早く準備しないと客来ちまうぞ!」
( ^ω^)「あ、ごめんなさい!すぐ行きますお!」
慌ててブーンはカウンターの中へと走る。素早く冷蔵庫内を点検。
まだボトルの補充が完全に終わっていないことを把握し、すぐにバックルームへと走った。
時刻は19:49分。もうすぐ二丁目に息を吹き込む時間だ。
ショボンと荒巻、いよぅが店を出た後、ブーンはグラスを並べながら大きく深呼吸をした。
何だか今日は、特別な日になる予感がするお。
そんな予感を胸にして。
- 13:1 :2006/05/16(火) 02:22:23.78 ID:6mYtM7iL0
- ・・・それにしても、とブーンは思う。
モララーとは面白い人だな、と。
<丶`∀´>「ウェーハハハ、お前はいっつもそうニダ。ウィー、謝罪と、賠償を、請求・・・ヒック、するニダ」
( ・∀・)「ニダーさん、そんな事言っても出るのは精子だけですよw」
時刻が終電間際になると、少なからず泥酔する客も出てくるものである。モララーには、そんな酔いどれのどんな言葉にも、素早く対応する頭の回転の早さがあった。
もう一つ、そう口には出しておきながらも、素早く冷たいお絞りとチェイサー(冷水)のグラスを差し出す気遣い。
そして何より、ゲイにはとても見えない、綺麗に整った顔。シャギーの効いた黒髪に、切れ長の目。耳にはハイブランドのピアス。俗に言うオニイ系に近い感じだが、彼らの持つ独特の毒気もない。ただ純粋に、作業としての気配りに特化したその性格。
そして何より彼がおもしろいと感じられるは、彼が『ノンケ(ヘテロ、ストレート。正常な性癖を持つ人間)』であり、なおかつホスト上がりの人物である、という事だ。
( ^ω^)「ノンケさんにはゲイにあげる精子はあるんですかお?」
( ・∀・)「忘れてたwww俺ノンケだwww」
ブーンの突っ込みに沸く3人。
ウェーハハハ、と笑うニダーの顔は、すこぶる上機嫌だ。それは、ニダーがノンケ好きで毎週モララー目当てに店に来ているからだとブーンは知っている。そして、モララーは他にも、数人の客を掴んでいるという事も。
( ・∀・)『ゲイバーもホストクラブも一緒さ。客を掴んだもの勝ちだよ』
そう言って笑うモララーの顔は、いつもどこか冷たく、鼻白んで見えた。
- 14:1 :2006/05/16(火) 02:25:38.56 ID:6mYtM7iL0
-
・・・それは、終電の時刻も終わった頃の事だった。
ニダーは酔いつぶれ、他の客もちらほらと帰り始め、店の中に空席が目立ち始め、スタッフ全体にどことなくけだるい倦怠感の流れ出す、そんな時。
「・・・え、えっと・・・」
ブーン達に聞こえるか聞こえまいか、という微かな声と共に、店のドアが軋んだ。
反射的にいらっしゃいませ、と言いながら素早くチャームとお絞りの準備をするブーン。
そして振り返ったそこに、初見の青年の姿があった。
( ^ω^)「あ、お席にどうぞ、だお」
ブーンが気を利かせて手で指したテーブル。そこに、青年はおずおずと座る。
キョロキョロと所在無さそうに辺りを見回すが、ブーンがメニュー表を差し出すと、それを食い入るようにじっと見つめ始めた。
( ^ω^)「(初めてのお客様だお・・・まだ若いみたいだけど・・・)御注文はお決まりですか?」
「あ、ちょ、ちょっと!もうちょっと待ってください・・・」
その反応に、ブーンははっとした。
まるで、かつての自分を見ている気がした。
- 16:1 :2006/05/16(火) 02:30:23.68 ID:6mYtM7iL0
( ^ω^)「・・・カクテルとかがよくわからなかったら、こちらからおいしそうなのをチョイスしますお?」
既視感に押されるままにそう口走るブーン。それに反応し、青年が顔を上げた。
朴訥そうな風貌。タンクトップから伸びる腕は日焼けして真っ黒だ。
( ´∀`)「そ、それじゃ適当に美味しそうなのをお願いしますモナ」
青年はそれだけ言うと、恥ずかしそうに俯いて再び辺りを見渡し始めた。
会話を聞いていたジョルジュが、手早くコーヒーリキュールのボトルを手に取る。当然、こんな注文があったときに出すカクテルは、一つ。
( ^ω^)「カルーアミルクになりますお」
( ´∀`)「あ、コレなら知ってる・・・いただきますモナ」
青年は頭を下げてグラスを受け取ると、そっと口をつけた。
・・・何となく、スタッフの全員が押し黙る。ニダーは夢の中でモララーを追いかけ、残った客はカラオケの電子目録の履歴なんかをずっと見ていて、
( ´∀`)「やっぱりいつ飲んでも落ち着きます、ありがとうございますモナ」
そう、青年が微笑んだのを見て、何となくジョルジュとブーンは目を見合わせて、その頬をほころばせた。
- 17:1 :2006/05/16(火) 02:34:01.52 ID:6mYtM7iL0
モナーと名乗ったその青年、年齢はブーンと同じく18歳だった。
同じなのは年齢だけではない。モナーも、今年沖縄から東京に出てきたばかりの大学一年生だという事。
また、まだ大学に友達が一人もおらず、出会い系なんかも怖くて使えず、寂しくて二丁目へと踏み込んだというモナーに、ブーンは何気なく、大学は何処なんですかお?と問う。
青年は頬を赤らめると、某工業系の大学です、と微笑んだ。流石に大学までは違ったが、それでもやはり、モナーを視ているとかつての自分を思い出して、ブーンは目頭が熱くなるのを感じた。
・・・そうだ。この感覚が、今まで追い求めていた感覚の一つなんだ。
( ´∀`)「どうしたんですか?」
( ^ω^)「あ、何でもないおwただ、昔・・・って言っても今年の春頃なんだけど、その頃の僕を思い出しただけだおw」
ブーンがそう言うと、青年は再び照れくさそうに頭をかいた。
- 18:1 :2006/05/16(火) 02:38:51.63 ID:6mYtM7iL0
( ゚∀゚)「そういえば、モナー君はどんなのがタイプなの?」
ジョルジュの唐突な質問に、ほろ酔いのモナーは笑った。
( ´∀`)「そうですね、なんていうか、頼りがいのあるような人が・・・」
( ・∀・)「となると、年上好きなのかな?」
モララーの突っ込みに、モナーは頷く。
沖縄にいる頃は、ときたま沖縄のゲイバーに足を運んでいて、どうもそこのママに惚れこんでいたらしい。結局恋はかなわず、桜が咲いて気がつけば東京にいたそうだが、やっぱり好みの基本はその人のような、温かくて包容力のある人なんだとか。
( ´∀`)「おつき出しのゴーヤチャンプルーとかクーブイリチーがすごく美味しい店だったモナ・・・」
郷里を懐かしむその目に、ブーンはチクリと胸を刺される。
そういえば、昔はブーンもここではない遠い場所に住んでいたのだ。
九州のとある県のとある田舎町、その田園風景を思い出して、余計に切なくなる。
カーチャンは元気かな、トーチャンはまたバラエティ番組を見てはこのアイドルが可愛いとか何とかぬかして、カーチャンにしばかれてないだろうか。
- 19:1 :2006/05/16(火) 02:45:37.51 ID:6mYtM7iL0
( ゚∀゚)「で、厳密には何歳くらいがタイプなんだい?」
ノスタルジーに浸っていたブーンは、その言葉でふと我に返る。
モナーはうん、と頷くと、
( ´∀`)「40歳くらいの人だモナ」
(;゚∀゚)「え・・・よ、よんじゅっさい・・・」
流石にそう来るとは思っていなかったのだろう、ジョルジュの顔が固まった。
ブーンも驚いていたが、頭の片隅でかつて聞いた話を思い出す。
地方都市のゲイバーのママは、たいてい結構年の行った人が営業していることが多いのだ、と。モナーがそんな人に恋をしたのなら、この展開は当たり前か・・・
( ^ω^)「しかし若いのに意外だお」
ブーンがそう呟くと、モナーは急に真摯な面持ちになって言った。
( ´∀`)「若い人はダメですモナ。
みんな浮ついて、セックスだのパパだの言ってまともな恋愛しようとはしないモナ。それに、変にケチケチした人ってのも僕は苦手なんですモナ。
別にあらゆる経費を全て払ってもらうつもりもないけど、たまに僕がお金を出したりしても笑って受け取ってくれるような、そんな大人な人がいいんだモナ」
( ゚∀゚)「そうなんだ・・・しっかりしてるねぇ・・・」
やっべ、何か俺攻められてる?みたいな顔でこっちを見るジョルジュに向かって、知りませんお!と目で訴えるブーン。確かにジョルジュのような浮ついた人間には胸に刺さる言葉だろう。
相変わらずモナーは笑っていたが、その顔は故郷を懐かしんで切なげに輝いていた。
- 20:1 :2006/05/16(火) 02:50:06.88 ID:6mYtM7iL0
- ―――ブーン達と来訪者の青年が語り始めて、数時間が経っていた。
不意の着信に表へ出て行っていたニダーが携帯片手に店に戻り、外はもう明るかったニダ!と悔しそうに地団駄して、それを見て、ああ、もう朝か、とブーンは悟る。
・・・そういえば、僕が始めてこの店に来たときも、気づいたら朝になってたんだお・・・
胸中に、あの日の光景。
忘れられない、自分の人生を変えた日。自分は、モナーにそれだけのサプライズを与えてあげられただろうか。
( ´∀`)「それじゃ、そろそろチェック・・・」
( ・∀・)「そうだね、もうすぐ始発も動き出すし・・・はい」
伝票をさっと渡すモララー。モナーは一瞬目を見開き、
( ´∀`)「や、安いモナね」
( ^ω^)「そうだお!ウチは親切なお値段設定で初心者さんにも安心価格なんだお!」
嬉しそうに言うブーン。あの頃の自分と立場が入れ替わったようで、くすぐったい。
ポケットから財布を取り出すと、モナーは紙幣を数枚差し出す。
それを受け取ったモララーがレジへ。ジョルジュは店じまいの準備を早々に始めている。
その時、だった。
急にモナーは立ち上がり、ブーンへ耳を貸せ、と合図する。
- 21:1 :2006/05/16(火) 02:54:52.94 ID:6mYtM7iL0
前傾姿勢になって耳を差し出すブーン。そこに、モナーが口を近づける。
( ´∀`)「こそこそ・・・(あの、ブーン君・・・)」
( ^ω^)「こそこそ・・・(何だお・・・?)」
( ´∀`)「こそこそ・・・(えっと、その・・・もし良かったら、メアド交換して貰えないかモナ?)」
( ^ω^)「えっ?」
思わずモナーの顔を見る。
・・・・・・あの日のジョルジュのような、妙なギラつきというか、そういう類のモノは感じられない。
そんなブーンを見て、お釣りを持って歩み寄ってきたモララーが首を傾げた。
( ・∀・)「はいおつり・・・何かあったのかい?顔射でも食らったような顔して」
(;´∀`)「あ、その、ブーン君にメアドを聞いてたんです」
カリカリと頬をかきながら、気まずそうにモナーが説明する。
モララーはモナーとブーンをチラチラと見比べた後、
( ・∀・)「どうせモナー君は中年専だしブーンには興味ないんでしょ?別にいいんじゃない?下心さえなきゃね」
文末のほうを強調して、モララーは笑った。
- 22:1 :2006/05/16(火) 03:00:02.56 ID:6mYtM7iL0
-
そんなわけでブーンとメアドを交換したモナーは、ありがとうございます、と頭を下げると、荷物を持って店の外へと出て行った。
携帯と共に残されたブーンは、ガタリと戻るドアと新しく更新されたアドレス帳を交互に見て、へあー、と間抜けな息を吐いた。
( ゚∀゚)「見―たーぞー」
( ゜ω゜)「アッー!」
そういえば、と振り向くと、そこにニヤニヤ笑うジョルジュの顔。
たらりと脂汗が額を伝う感覚。時間の流れが奇妙にねじくれるような緊張感。
( ゚∀゚)「・・・ちょっとジェラシー」
( ^ω^)「す・・・すみませんお」
( ゚∀゚)「なんて嘘だよw」
ジョルジュは空き瓶の山を籠の中に整理しながら笑った。
( ゚∀゚)「多分友達になりたかっただけだろwお前とも話があってたみたいだしな、あの子」
( ^ω^)「まあそうですお」
( ゚∀゚)「いいんじゃないか?友達は多い方が強いぞ〜」
笑うジョルジュ。その目はブーンを見ていなかった。
- 23:1 :2006/05/16(火) 03:05:53.24 ID:6mYtM7iL0
- その日の三人祭り改めオカマミーティングが終わって。
ジョルジュと一緒に駅へと向かうブーン。隣で歩くジョルジュ。
いつもなら会話が弾むものだが、あんなことがあっては何となくぎこちない気持ちになる。
( ^ω^)「あ、あの」
( ゚∀゚)「?何だ?」
がんばって空気を代えようと口を開いたブーンだが、続く言葉が見つからない。お、お、と少しうろたえて、
( ^ω^)「う、ウルトラマンに殺されたバルタン星人の同胞の数は20億人以上、らしいですお・・・」
( ゚∀゚)「・・・・・・へ?」
( ^ω^)「・・・・・・・とショボンさんが言ってました」
( ゚∀゚)「へー。ウルトラマンも残虐なことするもんだなー」
―――そして再び、二人の足音だけが通りに響く。
珍しく他のオカマ達が見当たらない中、ブーン達の間には気まずさだけが漂っていた。
- 24:1 :2006/05/16(火) 03:09:43.65 ID:6mYtM7iL0
『I wanna be a Vip star〜♪君をもっと〜♪』
唐突に、空隙を割る着信音。
鳴動しているのは・・・ブーンの携帯電話だ。
( ^ω^)「誰からだお・・・?」
取り出して液晶画面を覗き、ハッとする。
・・・モナー君。
( ゚∀゚)「お、モナー君じゃないか。どうしたんだろうな」
笑ってください、ジョルジュさん・・・そう心の中で念じながら、ブーンはメールを開いた。
『今暇してるモナ?もし良かったら相談したことがあるから、一緒にご飯でも食べないモナ?』
( ゚∀゚)「・・・なーんだ、やっぱり色恋沙汰じゃなさそうだな」
( ^ω^)「あ、当たり前ですお!僕はジョルジュさんの事が・・・」
と、そこまで言ってブーンは慌てて口をつぐんだ。
そう、ここから先は・・・言ってはいけない約束だ。だが、ジョルジュはその言葉に、ただ嬉しそうにガハハと笑った。
- 25:1 :2006/05/16(火) 03:12:46.25 ID:6mYtM7iL0
十分後。
ブーンとモナーは、駅前のマックの入り口にいた。
( ^ω^)「遅くなってスマンコだおw」
( ´∀`)「いえいえ、こちらこそこんな時間に誘っちゃって・・・疲れてない?体は大丈夫モナ?」
年齢が同じだという事もあり、自然と会話はタメ口になる。だが、今までずっと敬語しか喋っていなかったブーンにとっては、それもくすぐったいながら、喜ばしい事に過ぎない。
( ^ω^)「それで、相談って?」
( ´∀`)「えっと・・・その前に注文だけしちゃおうか」
それもそうだお、とブーン達はレジの前に立つ。僕は海老原友李ちゃん!とおどけながらブーンは海老フィレオを頼み、モナーは無難にダブルバーガー。お互いセットを頼む辺り、まだ若さが感じられる。
少しだけ待ってからセットを受け取り、二人は壁際の席へと座った。
- 26:1 :2006/05/16(火) 03:14:20.51 ID:6mYtM7iL0
- ( ´∀`)「唐突だけどブーン君!もしよければ、僕と一緒に今度、『ヘヴン』に行ってくれない!?」
(;^ω^)「な、なんだってー(AAry」
海老フィレオに食いついたとたんにそう言われ、ブーンは危うく海老を鼻から噴出させてしまうところだった。
それはその言葉の意味がわかってのことであって、とどのつまり、そのヘヴンとやらがまともでない場所である、という事である。
ヘヴン・・・通称、『天国』。
そこは、多くのオカマが集い、毎夜宴に明け暮れる聖なる区域。
もともとは大衆用のサウナで、しかし二丁目に建ったのが運の尽き。多くのオカマ達により、そこはサウナ兼、お触りやらksmsやらあんなことやこんなことをする場所・・・
通称『ハッテン場』にされてしまったのだ。
(;^ω^)「け、けど何で僕が・・・」
( ´∀`)「あ、いや、同年代だから相談しやすかったし・・・ブーン君なら真面目に聞いてくれるかな、と思って」
(;^ω^)「へ、ヘヴン・・・行った事はないけど・・・その・・・あの・・・」
( ´∀`)「じゃ、じゃあ是非!ずっと興味はあったんだけど、勇気が無くて行けずじまいだったモナ!」
- 27:1 :2006/05/16(火) 03:18:20.42 ID:6mYtM7iL0
( ^ω^)「うーん・・・」
ジュージューとメロンソーダを飲みながら唸るブーン。
正直行きたいとも思わないし、別に自分にはジョルジュという最高のズリネタがあるから・・・っと、こちらはあくまで別の話、として・・・
とにかく、ブーンには行くメリットは正直全くと言っていいほど無かった。
だが・・・
( ^ω^)「・・・わかったお、一緒に行くだけだお?ブーンは寝てるから、その間にksmsなり何なりしてくるおw」
目の前の少年の眼差しに、ブーンは耐えられなかった。
それは、かつての自分と同じ。あらゆるベクトルに、興味の対象が向いてしまっている状態だ。ゲイバーとハッテン場と、場所の違いこそあれど。
( ´∀`)「ありがとう!別にksmsはしようと思わないけど、一度行ってみたいなと思ってたモナ!見るだけでもいいから・・・本当にありがたいモナ!」
ブーンの手を取ると、それを上下に勢い良くシェイクするモナー。ブーンは相変わらず複雑な面持ちで、その心中はジョルジュに何と説明しよう、それだけで頭が一杯だった。
- 28:1 :2006/05/16(火) 03:21:10.07 ID:6mYtM7iL0
・・・ふう・・・
ブランケットを胸までズリ上げて、ブーンはため息をついた。
窓から細く流れた朝の日差しが、鏡に反射して壁に白い影を投影している。
カーテンに外界と遮断された薄暗がりの中、カーテンの隙間から漏れ来る日光をまじまじと見るブーンの目。
それは、まるで悩める乙女の目。
帰宅したブーンは、着の身着のまま、とにかく眠ってしまいたい一心で布団にもぐりこんだ。そしてそのまま、思考のパズルへとその手を伸ばしてしまっていた。
(;´ω`)(どうするお・・・ジョルジュさんにはこのことは言うべきか・・・お・・・?)
ブーンにとって、正直言ってハッテン場とは決してプラスになる場所ではない。
もしかすると、知らない人に手を出されて、そのまま無理矢理犯されてしまいかねない。
瞼の裏に、かつて旧友と見たレイプ系のAVの情景がフラッシュバックする。
あの女性。演技だろうが、その泣き叫ぶ姿にブーンは戦慄した。その感覚をまざまざと思い出す。
もぞりとブランケットに鼻先を埋め、少年は一人孤独に息を吐いた。
切ないのは、眠れないからか。それとも・・・。
真夏の早朝はスッキリと涼しく、しかし日光はこれから世界を灼熱に変えようと、ただただ燦々と笑っていた。
(第四話 ノスタルジック 了)
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