( ^ω^)ブーンがゲイバーのスタッフになるようです

4: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 02:48:04.32 ID:ufJwfin60
  
第五話 mission impossible

 
 ―――ブーンとモナーの邂逅から、一週間が経過していた。

 ( ^ω^)「ここが天国・・・」

 道路のド真ん中に、二人は呆然と立ちすくんでいる。
時刻は20時。人々でごったがえす繁華街は既にネオンの幻灯に包まれて、怪しく光り輝いていた。
 その一角、有名ハッテン場・・・『天国』の前に、二人は立っている。

 ( ^ω^)「すごいプレッシャーを感じるお・・・・」

 今更『やっぱ行くのやめるおwww』とは言えず、怖気づいたように呟くブーン。膝が笑っているのは気のせいではないだろう。
 隣にいるモナーも似たような物で、アゴが震えてカチカチと歯を鳴らしていた。すでに真夏に差し掛かる時期だというのに、なんとも場違いな二人である。

 (;´∀`)「・・・や、やっぱり引き返したくなってきた・・・モナ」

 (;^ω^)「おまwwwwねーよwww・・・と、とりあえずいってみるしかないお・・・」
 
 (;´∀`)「そ、そうモナね・・・」

 これ以上ここで立ち止まっていてもらちがあかない・・・・そう判断し、どちらとも無くゴクリとツバを飲み込むと、二人は同時に歩き出す。
 自動ドアが、無機質な音を立てて二人を飲み込んだ。



6: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 02:49:46.50 ID:ufJwfin60
  

 ヘヴン、1F。
 暗色で統一されたライトに、うさんくさいムスクの芳香が立ち込めている。おそらく、どこかで香でも焚かれているのだろう。

 中に入った二人を迎えたのは、小さなロビーだった。まず一対の大きなソファーが目に入り、間に挟まれてガラステーブル。その隣にゲイ雑誌や新聞の乗った本棚が続く。
それらを横目で見つつ、へっぴり腰で歩く二人。すると、壁際からゴソリと音がした。

 (;^ω^)「す、スネークの気持ちが今なら理解できるお」

 恐る恐る見ると、小さな穴が壁にあいており、その前にお金を置くのであろう小さな皿の乗った台があった。一見、パチ屋の換金所にも見える。上のほうには、個室3000円、一時利用1200円、宿泊1800円と書かれた料金表。なるほど、コレがハッテン場の利用料、という訳か。

 (;^ω^)「お、お金を払うお・・・」

 (;´∀`)「い、一時利用だから1200円だよね」

 別に長時間居座るつもりなど毛頭ない二人。せいぜい小一時間もしない内に帰ろう、と天国に入る前に二人で意見をあわせていたのもあるが、今はそれ以上に、この空間の持つ妙なプレッシャーに圧されていた。
ただの『探険』にしては少々コストがかかるものの、ここは我慢するしかない・・・そう納得し、ごそごそと財布を取りだすと、二人はカウンターのほうへと近づく。



7: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 02:53:17.52 ID:ufJwfin60
  
 「一時利用の方ですか?」

 カウンターにあいた穴の向こうから、男らしい声が聞こえる。思わず股間がジューシーになりそうな程にウホッとするいいボイスだが、今のブーンの麻痺した脳では、それはまるでゴッキーの羽音と同じ部類にしか感じられない。

 (;^ω^)「は、はいですお」

 「1200円になります」

 (;^ω^)「はい、せんにひゃくえん・・・っと」

 すると、窓の向こうからスッとロッカーの鍵が差し出された。それを手に取り、ブーンは冷や汗を垂らしながら奥へと向かう。
 同様にしてモナーも鍵を受け取ると、視線を合わせて二人は意味も無く頷いた。


 ( ^ω^)「さて、ここで着替えるのかお・・・」

 そこは、ロッカールームだった。
 やけに複雑な形で配置されているロッカー群。手元が見える程度にまで落とされた照明。地面は木で出来たスノコで、それの帯びた奇妙な湿り気がどこかアダルトなふいんき(ry)をかもし出していた。そして・・・

 ( ´∀`)「今日は・・・全裸、デー・・・?」

 後からついてきたモナーが、壁に貼られた張り紙を見て呟いた。
 丁度ズボンを脱いで、パンツ一枚になろうとしていたブーン。


 ( ^ω^)(´∀` )・・・・・・・・・



8: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 02:55:53.75 ID:ufJwfin60
  
 豆知識:
  ハッテン場では、基本的に腰タオル、またはパンツ一枚で歩き回るのがメジャーです。が、店舗によっては、この曜日は全裸デー、この曜日は競パンデー、という風に定められている事もあります。そうする事で、それぞれのニーズに合わせた客を集めるのです。


 (;^ω^)「こ、腰タオルくらいなら大丈夫だおね・・・」

 冷や汗を額にまぶして言うブーン。

 (;´∀`)「い、いや、でも全裸って書かれてるモナ・・・」

 どことなく怖気づいているような期待しているような、複雑な面持ちのモナー。

 (;^ω^)「でも流石に常時股間を開放していたら、きっとパルス信号が逆流して次元測定値が反転、アンチATフィールドが形成されてしまう恐れが・・・」

 (;´∀`)「人類の補完が・・・始まるというのか・・・」

 (;^ω^)「そうならないためにも、せめて拘束具の使用だけは許可して欲しいお」

 (;´∀`)「だ、だけど・・・」



10: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 02:58:02.98 ID:ufJwfin60
  

 ロッカーの前でモジモジする二人。初めてとはいえ、ハッテン場でこんな会話をしている二人は正直場違いな上に見ていても恥ずかしくなってくる。そもそも人類の補完は男同士では不可能なのであるが、それは又別のアニメ板で議論していただきたい。
 
 そしてブーンが腹を括り、おもいっくそパンツを下ろそうとした、その時、だった。

 「ハッテン場は始めてか?」

 (;^ω^)(;´∀`)『!!!!!!!』

 「・・・な、何驚いてるんだゴルァ」

 二人の目の前に現れたのは、引き締まった裸体を隠そうともせず立っている、一人の青年だった。



12: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:00:53.06 ID:ufJwfin60
  
  ( ,,゚Д゚)「・・・とりあえず、脱ぐか脱がないかはっきりして欲しいんだけどなぁ・・・ロッカールームでトロトロされるとイラつくんだよ俺・・・」

 青年は言って、困ったようにため息をついた。その言葉は明確で飾りが無いが、棘も感じられない。怒っている、というよりは呆れているように見え、ブーンは焦った。もともと責められるとすぐにキョドる質である。初対面の人間なら、なおさら。

 (;^ω^)「す、すまんですお・・・ハッテン場が初めてで・・・」

 同年代だろうか、とブーンは瞬間的に察し、謝ると同時に自分達はハッテン場に来ること自体初めてで何をどうすればいいのかまるでわからない、と説明した。そして、やっぱり全裸で動き回らねばならないのかお?と質問。その問いに対し、青年は当たり前のように

  ( ,,゚Д゚)「全裸デーでも、腰タオルはオッケーだぞ。いつでも脱げるし、飛び散ったザーメンやらローションの処理にも一役買うしな」

 (;´∀`)「ちょ、卑猥なワードを躊躇なく言われると恥ずかしいモナ」

  ( ,,゚Д゚)「ホモのくせにブリっ子すんなゴルァ」



14: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:02:32.63 ID:ufJwfin60
  
 苦笑し、青年はブーンの横に並ぶ。そして手首に巻いていたリストバンドを外し、それに付属したロッカーキーをロッカーの鍵口に差し込んだ。
 カチャリと鍵を捻ると、青年はロッカーの中に右手を突っ込み、

 (*^ω^)「見るおw一応勝負パンツでTootooのボクサーパンツ穿いてきたお」

 (*´∀`)「僕はカルビンクリャインのボクサーだモナw」
  
 取り出した整汗スプレーを胸元に噴霧しながら、隣でキャッキャとまるで女子高生のようにはしゃぐ二人を見て苦笑した。

  ( ,,゚Д゚)「・・・おいお前ら」

 ( ^ω^)( ´∀`)『Yes.Sir』

  ( ,,゚Д゚)「俺が今からハッテン場の中案内してやろうか?」


 瞬間、ブーンとモナーの動きが止まる。青年は黙って二人を見ていた。

 ( ^ω^)「・・・・・・え、いいんですおか?」

  ( ,,゚Д゚)「ああ。今から個室に戻ろうかな、っと思ってたんだけど、何かお前達を野放しにしてるとアレなことになりそうだからなぁ・・・」



16: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:06:17.27 ID:ufJwfin60
  

 ( ´∀`)「で、でも初対面の人に悪いモナ・・・」

 パンツ一丁で遠慮するモナーと、パンツを脱いでタオルを腰に巻きながら期待するブーン。二人の顔を見比べ、

  ( ,,゚Д゚)「まあ年頃は俺と同じぐらいみたいだし、何か放っておけないからな」

 青年は微笑んだ。

  ( ,,゚Д゚)「俺の名前はギコ。そのままギコって読んでくれ」

 ( ^ω^)「ブーンだお」

 ( ´∀`)「モナーですモナ。適当に読んで欲しいモナ」

  ( ,,゚Д゚)「よし、じゃあブーンにモナー。とりあえずロッカーキーを手首に着けて、あとタオルを腰に巻いて着いて来てくれ」

 ギコはそう言って、スプレーをロッカーの中に戻すとくるりと二人に背中を向ける。腰のタオルを巻きなおすと、後ろの二人が準備を終えたのを確認して言った。

  ( ,,゚Д゚)「・・・・・・ここからは戦場だ、気を抜くんじゃないぞクソ豚共」

 (;^ω^)(;´∀`)『サ、Sir! Yes Sir!』



18: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:08:27.48 ID:ufJwfin60
  
  ( ,,゚Д゚)「・・・ここが、大部屋だ」

 ロッカールームを出て、通路を歩くこと十数秒。ぼんやりとした明かりの漏れるドアを前に、歩いていたギコが歩みを止めた。
 ギコに続き、恐る恐るといった感じで狭い通路の闇を歩いていた二人は、ギコの後ろからそっと前方を見る。

 そこには、幾十もの布団が整然と敷き並べられていた。よくよく見れば、すやすやと寝息を立てている者も。
 そして奥の方に目線を移すと・・・

 ( ´∀`)「・・・・・・う、うわぁ・・・・・・」

 (;^ω^)「ヤってるお・・・ね・・・」

 そこには大きく盛り上がった布団と、そこから突き出された小刻みに揺れる誰かの太股。

  ( ,,゚Д゚)「ん?ksmsがそんなに珍しいか?」

 平気な顔でギコは歩き始めた。

 ( ^ω^)「(ど、どこに行くお?)」

 慌ててその後に着いていきながら、思わず声を潜めてブーンは質問した。
 モナーはと言えば、未だに目の前の光景を直視できず、薄闇の中でもわかるほどに赤面しながらチョコチョコとついてくるだけだ。

  ( ,,゚Д゚)「大部屋を抜ければ次はダークゾーン。迷路、ビデオルームがあって、二階にゃ風呂と休憩ゾーンがある。とりあえず一巡りしていくぞ」
 
 そう言って、 ギコは慣れた調子で布団の波をすり抜け歩く。ブーンとモナーも、必死になってそれについていった。



19: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:11:42.83 ID:ufJwfin60
  
 野郎共の野太いあえぎ声と、肉と肉の触れ合う卑猥な音。妙な酸っぱい匂いに青臭くツーンとする刺激臭。
 そんなねとつく空気をかきわけかきわけ進む三人。ときたま物珍しそうに見る人や、興味があるのだろうか、近づこうとする人の影に怯えるブーン達をなだめながら、 ギコは手慣れた口調で説明していた。

  ( ,,゚Д゚)「ここがダークゾーンだ。基本的に若い奴がここに集まってくる。同年代とヤりたいならここに来るといい」

  ( ,,゚Д゚)「ここは迷路。クネクネした通路だろう?死角が多いからよくお触りとかされるぞ。何気に手を出しやすいからここで相手を見つけることも多いなぁ」

 そして、くねくねと複雑に曲がりくねった迷路を抜けると、始めに来たロッカールームへと続く道と、一つのドア。

  ( ,,゚Д゚)「ビデオルームだ。ここではエロビデオが常に流れてるから、オカズにしたり暇つぶしに見るといい」

 ( ^ω^)「ほおほお、ビデオですか・・・」

 ギコの後ろから室内を覗き込むブーン。と、

 (;>ω<)「うおっまぶしっ」

 おんみょうだんをくらえ!という台詞とともに男優が画面に向かって射精した、その巨大モニターの放つ光に目をやかれ、ブーンがよろめいた。



21: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:13:40.66 ID:ufJwfin60
  
  ( ;,,゚Д゚)「い、今まで暗いところにいたんだから急にテレビの画面なんか見るんじゃねえぞゴルァ」

 目がー、目がーと目を瞬かせるブーンと、それを呆れたように見るモナーとギコ。
 その際、不意打ちにフラついていたブーンの腰が、ドアノブにぶつかった。

 ( >ω<) ( ,,゚Д゚)( ´∀`)『あ』

 三人の声が唱和するのと、ブーンの腰に巻いたタオルが落ちたのは同時だった。



  ( ;,,゚Д゚)(・・・・・・・・・・・・デカい)

 ( ´∀`)(・・・・・・言語として例えるならば、ジュラシック・パーク・・・もしくは海原雄山・・・)

 (*^ω^)「は、恥ずかしいおっ!」

 ブーンは慌ててタオルを巻きなおし、二人に向かってはにかんだ笑顔を作る。
 とんだポロリにいろんな意味で気が遠くなるギコだったが、

  ( ,,゚Д゚)「そ、それじゃ気を取り直して次は風呂だゴルァ」

 気を取り直して胸を張り、二回へと続く階段を指差す。
 微妙に腰がひけていたのは気のせいではないだろう。



23: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:16:56.07 ID:ufJwfin60
  
  ( ,,゚Д゚)「さーて、風呂だ」

 カポーン、と誰かが風呂桶を置く音がする。
 ヘヴン自慢の巨大温泉、その入り口に三人は立っている。

 (*^ω^)「ひろいおー!ひろいおー!」

 ( ´∀`)「本当に凄いモナね・・・露天風呂にサウナ・・・岩盤浴なんてのもあるモナねぇ」

 その規模に感心する二人。
 モナーは浴場入り口横に設置された看板を見て、ため息を落としていた。流石、元々ハッテン場ではなく浴場として作られただけの事はある。

  ( ,,゚Д゚)「あ、岩盤浴は死角が多いから気をつけないと後ろからアッーされるぞゴルァ」

 (;´∀`)(;^ω^)『・・・・・・』

  ( ,,゚Д゚)「まあ風呂の中でヤんのも一興だけど・・・っと、せっかくだしひとっ風呂浴びていくか?」

 その提案に、二人はためらい無く頷く。正直、先ほどまでのねっとりとした空気を洗い流してしまいたかった。



24: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:18:59.90 ID:ufJwfin60
  
 ( ^ω^)「いーい湯っだっお、おおおーん♪」
 露天風呂。湯煙のけぶる水面を揺らして、ブーンがごきげんな声を上げる。
 星の降りそうな夜空を天井に自分達の住む町並みを一望できる位置に陣取った三人は、三者三様の面持ちで湯船につかっていた。

  ( ,,゚Д゚)「ふう・・・疲れが取れるぜぇ・・・」
 
 どうやら、ギコは昼間は肉体労働系の仕事をしているらしい。某引越しセンターでちょっとね、と笑うと、ギコは力こぶを作って見せた。

 (*´∀`)「ギコくんいい体モナねぇ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 そう言いながら、きっちり他の入浴中なオキャマ達の裸体もしっかり視姦するモナー。
 どうやらモナーはムッツリのようです。

 ( ^ω^)「そう言えば、ギコ君は今何歳なんだお?」

 ふーっと湯煙を息で飛ばしながら、ブーンは何の気なしに聞いた。

  ( ,,゚Д゚)「19歳だぞー」

 ( ^ω^)「あ、それならブーン達と同じだおw」

 親近感を感じ、ブーンは嬉しそうに笑った。

  ( ,,゚Д゚)「っていうか今まで歳を聞かれなかったのが不思議なんだけどなあ、しばらくヘヴンを案内させといて」

 (;^ω^)「ま、まあそれは作者も忘れてたことだから聞かないでほしいお・・・」



25: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:21:27.17 ID:ufJwfin60
  
 ( ´∀`)「そういえば、ギコ君は今一人暮らししてるのかモナ?」

 不意に、モナーが口を開いた。
 夜空を眺めてオリオン座を探していたギコは、ああ、と意識を戻す。

  ( ,,゚Д゚)「今はかーちゃんと二人暮らしだけど」

 ( ^ω^)「カーチャンかあ・・・羨ましいお」

  ( ,,゚Д゚)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ブーンが望郷の眼差しでしんみりと呟く。だが、ギコは打って変わって堅い面持ちだ。

  ( ,,゚Д゚)「・・・ウチにはかーちゃんしかいないからさ、俺が護ってやんなきゃなんないんだよ」

 そして、ぽつり、とギコが言った。

 ( ^ω^)「お?」

 ( ,,゚Д゚)「俺が生まれたばっかりの頃な・・・とーちゃんと離婚してんだよ。かーちゃん」

 ( ^ω^)「fmfm」

  ( ,,゚Д゚)「まあ、今まで女手一つで育ててくれたからな。頭が悪いから大学に進めなかったけど、代わりに体だけは丈夫だから・・・」

 言われてブーンは再びギコの肩を見る。その鍛えに鍛えられた筋肉が、彼が昼夜問わず働き続けていることを物語っていた。



28: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:23:59.08 ID:ufJwfin60
  
 ( ,,゚Д゚)「ま、親孝行だと思って、今は必死で働いてるよ。月40は稼いでるし、かーちゃんもパートの仕事してるから生活は困っちゃいないぞ」

 だから変に同情するんじゃねえぞゴルァ、とギコは困ったように笑った。

 ( ´∀`)「だけど、生まれたばかりの子供を連れて離婚だなんて・・・結婚するって大変なんだモナねえ」

 モナーはタオルで顔を拭くと、邪気の無い顔で言う。
 ギコは頷いた。

 ( ,,゚Д゚)「ウチのとーちゃんが何でかーちゃんと別れたかなんだけどな」

 ( ^ω^)「お?初対面の相手にそんな事言っていいのかお?」

 常識的に考えて、少し唐突すぎる、とブーンは首を傾げる。普通、こういう話題はかなり仲が良くないと聞いてはいけない気がするのだ。
ギコは自嘲的に微笑み、

 ( ,,゚Д゚)「なんとなく語りたくなっただけだゴルァ」

 そう前置きして、語り始めた。



33: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:27:14.11 ID:ufJwfin60
  
 ( ,,゚Д゚)「・・・ウチのオヤジ、ゲイだったらしいんだ」

 ( ^ω^)( ´∀`)『はい?』


 いきなりそう来ますか?という風に、二人は声を合わせる。
 
 ( ,,゚Д゚)「ほら、まあ何だ・・・認めたくなかったんだろうなぁ。今じゃハッテン場だとかゲイバーだとかは一般社会にも知られてるけど、20年近く昔なんだしなあ。
きっとゲイっていう存在も、秘匿されてた・・・っつったら難しいけどよ、多分異端、異質なものとしてしか社会に認められていなかったんじゃないか。そう思うんだ」

 ( ,,゚Д゚)「だからかどうか知らないけど、とーちゃんはそうして、自分を偽ってかーちゃんと結婚した。だけど・・子供は作れても、やっぱり本当の愛情は抱けなかったんだろうなぁ」

 ( ,,゚Д゚)「俺が生まれてからすぐに離婚・・・。それからは消息が途絶えてな。連絡も取れないし、かーちゃんが全部捨てたから写真も無い。おかげで顔も知らない、声も知らない。何だか他人みたいで、ちょっと寂しいんだゴルァ」

 叔母から聞いた噂では、日本のどっかでゲイバーを開いてたとも聞いたけど、とギコは言う。
 ブーンとモナーは、神妙な面持ちでその話を聞いていた。

 ( ,,゚Д゚)「ま、そんなわけでよ。俺は・・・・・・残念ながら、ゲイだわなぁ」

 ( ,, Д )「・・・・・・だから・・・」

 一瞬だけ俯くと、すぐに顔を上げる。

 ( ,,゚Д゚)「かーちゃんを裏切ることは出来ない。俺は一生、自分がゲイであることを隠し続けなきゃいけないんだ・・・かーちゃんの前じゃ。じゃないと、かーちゃんが悲しむ」



35: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:31:56.30 ID:ufJwfin60
  
 ( ,,゚Д゚)「ゲイである事は、俺は罪じゃないと思ってる」

 それを隠してノンケとして生きるのも、悪くないだろう。
 だけど、それで結婚したなら・・・せめて、責任くらいは取れよ。

 じゃないと、かわいそうすぎるだろう。

 ( ,,゚Д゚)「・・・残された奴がさぁ・・・」


 ( ^ω^)「ギコ君・・・」

 ( ´∀`)「・・・・・・悲しいモナね・・・なんか・・・。」

 しーん、と空気が張り詰める。
 ギコはやりきれない顔で遠くを見つめ、ブーンとモナーはその横顔を見ていた。

 ( ,,゚Д゚)「・・・・・・まぁ、こんな事を言える義理じゃないけど、さ。」



 ( ,,゚Д゚)「せめて俺達は・・・自分には、正直に生きようぜ、って事だゴルァ。せっかくゲイに生まれて、なおかつゲイに優しい社会にいるんだから、さ」



37: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:34:30.56 ID:ufJwfin60
  

 ( ,,゚Д゚)「だけど、何でだろうなぁ・・・ブーンの顔見てると、何かこう、むしょうにいろいろ喋りたくなるんだよなぁ」

 ( ^ω^)「お?」

 話を中断すると、ギコはそう言ってブーンの顔をまじまじと見つめた。

 ( ,,゚Д゚)「いや、なんか・・・なんなんだろうなぁ・・・よくわかんねーけどなぁ・・・初対面の相手にココまで心を開いたのは、正直初めてだゴルァ」

 不思議そうに首を捻るギコ。すると、モナーが笑って言った。

 ( ´∀`)「ブーン君がミセコだからなじゃないかモナ?」

 (;^ω^)「そ、そんなもんなのかお?」

 こじつけにも程があるその言葉に、汗を垂らすブーン。すると、

 ( ,,゚Д゚)「お?お前ミセコなの?」

 ギコが興味深そうに顔を上げた。



39: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:36:28.07 ID:ufJwfin60
  
 ( ^ω^)「一応、『VIP』っていうお店のミセコやってますお」

 ( ,,゚Д゚)「VIP・・・ああ、ショボンさんとこか」

 ( ^ω^)「知ってるのかお?」

 ( ,,゚Д゚)「・・・っていうか、あの人のことを知らない人は、多分二丁目にゃそうそういないんじゃないかなぁ・・・」

 いろいろと有名な人だからな、とギコは言う。
 何がどう有名なのか聞こうとしたが、ブーンが口を開く前にギコが先制した。

 ( ,,゚Д゚)「・・・・・・あのさ、もし良かったら、今度店に行っていいか?」

 ( ^ω^)「お?全然大丈夫だお!ギコ君なら大歓迎だお!」

 客に友達が出来ることに喜びを隠さないブーン。モナーもそんなブーンを見て頬をほころばせていた。

 ( ,,゚Д゚)「ちょっと、聞きたいことがあってさぁ・・・」

 ( ^ω^)「ショボンさんはいろいろ耳が広いし、きっとギコ君の聞きたいことも知ってると思うおw」

 ( ,,゚Д゚)「・・・・・・だといいんだけど・・・」

 ギコは聞こえないほどの小声で呟き、深い吐息を吐いた。
 湯気を纏ったそれはふわりと舞って、夜風に消えた。



40: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:38:31.18 ID:ufJwfin60
  
 ( ^ω^)「・・・・・・というお話だったのさ」

 (´・ω・`)「へぇー・・・そして結局セクロスもしないまま別れて発展場探険は終わったわけだね」

 某日。VIP内にて。
 開店前の準備中なので、店の音響も極端に下げてある。二人の会話が、やけに大きく空間に響いていた。

 (´・ω・`)「まあ、ハッテン場に行って友達を作る人もたまにいるみたいだし、本末転倒とも言えなくもないけど・・・まあ、ブーンも新しい友達が出来て良かったじゃないか」

 グラスを拭きながらショボンが言う。
 ブーンはホウキで床を掃きながら、

 ( ^ω^)「でも、ショボンさんに聞きたいことって一体何なんでしょうかお?」

 (´・ω・`)「そうだなぁ・・・一応僕は二丁目歴がそこそこ長いおかげでそれなりに人脈なんかもあるけど・・・」

 ( ^ω^)「人脈?」

 (´・ω・`)「まあ、某議員だとか某会社社長だとか某アイドルだとか」

 (;^ω^)「ちょw某大杉w」



41: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:41:07.31 ID:ufJwfin60
  
 (´・ω・`)「いや、本名を出すといろいろヤバいから・・・その人たちの立場がさ」

 カチャカチャとグラスを整理すると、今度はお絞りでカウンターを拭きながら、

 (´・ω・`)「まあ、何を聞かれるかはわかんないけど、判る範囲内でなら何でも答えるよ。ブーンの友達だっていうなら尚更ねw」

 言って、ショボンはブーンに笑いかけた。柔和な面持ちがより強調されて、ブーンは少しどぎまぎしてしまう。

 ( ^ω^)「助かりますお」

 急いでバックルームに塵取りを取りにいくと、ブーンは集めた塵をホウキで塵取りに入れ始めた。

 (´・ω・`)「ところで、こないだ頼んだ、夏祭りのフライヤー用のイラストはまだかい?」

 ( ^ω^)「あ」

 塵取りでゴミを取るブーンの手が、ピタリと止まる。


 (´・ω・`)「・・・・・・」

 ( ^ω^)「・・・・・・」

 ベジータ「・・・・・・」



42: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/26(佐賀県教育委員会) 03:44:56.37 ID:ufJwfin60
  


 ひぎぃいいいい、裂けちゃうううううう!

 あっ、あっ、アッーーーーッ!

 ら、らめぇええええっ・・・・・・!




 ―――その日の夕刻。
二丁目の道路を歩く人々は、とあるビルの地下から聞こえる奇妙な声を、聞いたとか聞いてないとか・・・・。



               (第五話 mission impossible 了)



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