( ^ω^)ブーンが高校野球で1番を目指すようです

2: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:01:35.94 ID:Z7bhqt7G0
―――第十話「ブーンはビコーズを殺さないようです」――――


四回の裏、下級生チーム奇跡のツーランホームラン。盛り上がるベンチ、
しかし、数名の者は皆と違う感情を抱いていた―――

(;´・ω・`)(これは・・・最悪のパターンの悪寒・・・オワタかもしらん・・・)

(;'A`) 「ショボン・・・やっちまった・・・」

(;´・ω・`)「・・・過ぎた事は仕方が無い・・・とにかく、次のブーンの打席だ・・・」

あと一点差とせまったこの場面、何を考え込む事があるというのか。
その理由は五番打者、ブーンの打席でわかる事になる―――



3: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:02:25.00 ID:Z7bhqt7G0
 ^ω^) 「お願いしゃーす!!!お」

勢いよく挨拶をして打席に入るブーン、自分もドクオに続くぞと言った所だろうか。
そしてその打席の第一球―――

ボスッ!!

( ;゚ ω゚)「おっ・・・」

デッドボール、よけきれずにわき腹にモロに食らってしまった。



4: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:03:51.78 ID:Z7bhqt7G0
ブーンはしばらく悶絶した後、なんとか立ち上がり一塁に向かった。

(;・∀・)「ブーン!!大丈夫なのか!?」

(;^ω^)「・・・大丈夫だお!!デットボールは事故だから仕方ないお!!」

それを聞いて皆は安心した、

しかしショボンが口にする―――

(´・ω・`)「皆・・・ちょっと思い出して欲しい。僕達が上級生に喧嘩を売る
      形でこの試合が始まった事、忘れてないよね?」



5: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:04:40.95 ID:Z7bhqt7G0
皆忘れていた、ここまであまりにも普通に野球が行われていた。
それは話の筋からしてあまりにも不自然な事であった―――
皆、沈黙―――ショボンは続ける

(´・ω・`)「さっきまでは試合はずっと上級生チームのペースで続いていた、
      でも、さっきのドクオのホームランで試合はわからなくなってきた。
      あの意地の悪い先輩達だ、ドクオが打ったとき、こうなる気はしていた。」


そして試合は現在ワンナウト一塁、打席には六番のいよう。



6: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:05:34.74 ID:Z7bhqt7G0
そして―――

ボスッ!!!

またしてもデッドボールだ。足を押さえてうずくまるいよう。

(#'A`)「このくそ野郎!!!!!!!!!」

二人続けて初球デッドボール、事故と言うには不自然すぎた。
ドクオは勢いよくベンチを飛び出し、ピッチャーのプギャーの元へ
走っていった。



8: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:07:05.93 ID:Z7bhqt7G0
(;^ω^)「ちょwwwwwwドクオだめだお!!短気になるなお!!」

ショートの守備位置からジョルジュも出てきた。

(# ゚∀゚)「お?やんのかクソガキいいいいいいい!!!!!!!!!!!!」

(#'A`)「上等だ!!!やってやろうじゃねーか!!!!」

殴り合いは避けられない―――ー
その時、今までだまっていたモナーが見間違うような大きな声で叫んだ。

(#´∀`)「こらああああああああああ!!!!!!!止めろてめぇら!!!!!!!!!!!!」



9: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:08:10.52 ID:Z7bhqt7G0
今まで聞いた事が無いぐらい大きな声、
一瞬でグラウンドがしん、と静まり返った。そして皆がモナーを見る。

( ´∀`)「・・・今の僕達・・・ビコーズが見たら凄く悲しむモナ・・・」

( ^Д^)「お前・・・何言ってんだ、ビコーズが悲しむわけねぇよ。
      だって俺達は・・・ビコーズと一緒に・・・死んだんだ――――



10: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:09:12.90 ID:Z7bhqt7G0
============================================================
話は丁度一年前、プギャーが二年生だった頃の事―――


サーコーイ!!!!!!!!!!!

バッチコイヤー!!!!!!!!!!!!!!!!

威勢のいい掛け声、今では見る影もないがVIP高野球部の練習風景だ。

( ^Д^)「よっしゃ!!カーブもう一球!!」

( ´∀`)「よっしゃ来い!!モナ!!」

バシィ!!

今よりも遥かに気迫のこもったカーブがモナーのミットに吸い込まれる。
彼らは投球練習の最中であった。



11: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:10:13.52 ID:Z7bhqt7G0
( ∵) 「・・・・ナイスボール、すごいです」

この男の名前はビコーズ、VIP高野球部の当時の部員の一年生である。

( ^Д^)「当たり前だ!!これが一年間の差・・・」

プギャーがそう言おうとしたとき、隣で投球練習を再開したビコーズの投げたカーブは
明らかにプギャーのそれよりも大きく曲がった、フォームもストレートと全く変わらない。

( ^Д^)「俺プギャーwwwwwwwwwwwwwwww」



12: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:11:17.87 ID:Z7bhqt7G0
( ∵) 「・・・でも僕はカーブだけなんで、総合的にはプギャーさんには敵いません」

とはいうものの、ビコーズは一年生としてはかなりの投手であった。
この先、かなりの投手になるだろう、ゆくゆくはVIP高のエースになるだろう。
皆、そう信じて疑わなかった。



14: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:12:30.17 ID:Z7bhqt7G0
( ^Д^)「でもお前はまだ一年だ、これから頑張れば必ず俺を遥かに凌ぐ
      ピッチャーになる。練習を怠るなよ!!」

( ∵) 「・・・はい、ありがとうございます」

聞き分けも良く、人の話も良く聞く。そして先輩を敬う事を常に忘れない。
プギャーはビコーズを人一倍可愛がっていた。



15: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:13:37.05 ID:Z7bhqt7G0
( ゚∀゚)「ビコーズのピッチングと俺の打撃力、俺達の代はマジで甲子園行けるんじゃねーの?」

( ∵) 「・・・絶対に行ける。ジョルジュが打って、僕が抑える。」

ミ,,・Д・彡「・・・俺・・・の・・・守備・・・は?・・・」

( ゚∀゚)「すまねぇwwwww忘れてた!!お前の守備もスゲーよな!!」

( ∵) 「・・・もし打たれてもフサギコが止める。完璧だ。」

ビコーズの信望は同級生達からも厚かった。
口数こそすくないものの、ここぞという所で皆を盛り上げる発言が出来る。
最高のムードメーカーであった。



16: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:14:40.14 ID:Z7bhqt7G0
当時のVIP高野球部の部員数は総勢40名、校内でも一番の人数の部活であった。
毎年のように期待のプレーヤーが入部し、皆切磋琢磨しながらレベルを上げていく、
高校野球の理想ともいえるような活動内容であった。
そして私立の強豪高とも渡り合えるほどの実力、当時の顧問の監督は
過去、ほかの公立高校の野球部を率いて甲子園まで勝ち進んだほどの名指導者、
当然、学校内外からの期待も高かった。



17: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:15:33.94 ID:Z7bhqt7G0
当然練習は厳しかった、毎年のように現れる脱落者、彼等がそんな練習を耐えられた陰には
やはり励ましあえる仲間の存在があった。
毎晩夜遅くまで練習を行った後、部員達は家路に着く。
モナーやプギャー達二年生とジョルジュ達一年生、現在の野球部にまだ在籍している
10人とそれにビコーズを加えた11人は学年を超えて信頼しあっていた。
一見奇妙にうつるかもしれないこの組み合わせ、普通なら部活の先輩と後輩、
こうは仲良くならないだろう。

しかし、その中心にいた男、ビコーズに皆魅せられていた。

コイツと居れば楽しい、だから一緒にいる。10人全員が当たり前の事をしただけだった。
そうしているうちにこの奇妙なグループが出来上がって行った。



18: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:16:39.06 ID:Z7bhqt7G0
休日だろうが昼休みだろうが部活前だろうが彼らはいつも行動を共にするほど
仲がよかった。そして練習後も皆揃ってロッカーを後にする。
そんないつもの風景、しかしこの日は少しだけ違った―――

( ∵) 「・・・皆、甲子園に行きたい?」

静かにそう言ったビコーズ、いつもはバカ話をする所だが今日は
真剣な会話がなされた。



20: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:18:58.19 ID:Z7bhqt7G0
゚∀゚)「当たり前だ!!だからこうやって毎晩遅くまで練習してるんだぜ?」

( ´∀`)「そうだモナ、来年のボク達の代になったら絶対に行ってやるモナ!!」

皆、当たり前だ、絶対に行ってやると言った。







( ∵) 「・・・ならさ、約束しよう。皆絶対に野球部を辞めない、諦めない。
    嘘をつかない。疑わない。
              ―――そして、この11人で来年、絶対に甲子園に行くって」



21: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:20:07.22 ID:Z7bhqt7G0
その言葉は重かった、そんな事軽はずみに約束出来なかった。
この11人で甲子園に行く、強いとはいってもVIP高は所詮公立高校、
そんな夢みたいな事――――

しかし、その場にいた全員が感じたであろう胸のドキドキ―――

その約束を交わす理由はそれだけで十分だった―――



23: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:21:44.84 ID:Z7bhqt7G0




その後、11人は人一倍熱心に練習に取り組んだ。
11人で来年甲子園に行く事、そして嘘をつかないこと、諦めない事、約束したんだ。

人一倍しんどい想いをしていた、しかし彼等の顔は充実感に満ちていた。
このまま頑張れば本当に甲子園に行ける、そう皆が思い出した頃―――

事件が起こった。



24: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:22:45.70 ID:Z7bhqt7G0
( ゚∀゚)「サーコーイ!!!!」

いつも通りの練習風景―――

( ∵) 「・・・2球目行きまーす」

三年生相手に打撃投手を務めるビコーズ―――

カキーン!!

打球は打撃投手を務めるビコーズに一直線―――

避けきれずに―――

ビコーズの側頭部に直撃した―――



25: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:23:51.32 ID:Z7bhqt7G0
(;´_ゝ`)「ビコーズ!!だいじょ・・・」

二面打撃練習、隣のゲージで打撃投手を務めていた兄者が駆け寄る―――

(;´∀`)「ビコーズ!!!!」

キャッチャーを務めていたモナーもマウンドに向かって走った―――

その時の打者の三年生は足がすくんで動けない―――

ミ;,・Д・彡「・・・救急車!!・・・」

マウンド上のビコーズは頭部から血を流し―――

ピクリとも動かず横たわっていた―――



26: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:24:48.70 ID:Z7bhqt7G0





その後、練習は中止になりビコーズは救急車で病院に搬送された。
救急車には当時の監督と当時のキャプテンが付き添った。
部員達は一度自宅に帰されたが仲間達10人はその足ですぐ病院へ向かった。




27: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:26:11.38 ID:Z7bhqt7G0


―――現在、時刻は夜の11時、
ドロドロのユニフォームを着たままの10人はもう明かりも消された
待合室の椅子に腰掛けていた。顧問は10人のために飲み物を買いに行ってる。
これまでにビコーズの家族からもジュースをいただいていたので本当はもうジュースなんていらなかった。
でも、それで顧問の気持ちの紛らわしになるのなら、と思い「ありがとうございます」と言っておいた。

キャプテンには僕達が付いてますと言って帰ってもらった。静かだった。



29: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:29:04.16 ID:Z7bhqt7G0
(;´_ゝ`)「・・・遅いな・・・もう5時間は経ってる。」

ミ;,・Д・彡「・・・すごく・・・いっぱい・・・血・・・出てた・・・」

(;´∀`)「・・・」

たまにこうして誰かが口を開くものの、ほとんどの時間彼らは沈黙していた。



30: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:30:06.32 ID:Z7bhqt7G0
こんな雰囲気の時、いつもはビコーズが喋る事で皆の表情は和らいでいた。
しかし、今ビコーズはここにはいない。
一人で、あの壁の向こうで闘っている―――

(;^Д^)「まさか・・・このまま・・・」

(#゚∀゚)「バカ!!!!!!!!!!」

何かを言おうとしたプギャーをジョルジュが遮った。

プギャーは三年生でジョルジュは二年生、バカなんていったら普通はタダじゃすまない。
しかし、彼等はグラウンドでこそ敬語を使うものの外では友達のようにタメ口で話し合っていた。

そんな関係を作ってくれたのも、ビコーズだった。



31: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:32:03.45 ID:Z7bhqt7G0
(;´∀`)「・・・絶対戻ってくるモナ!!信じるモナ!!」

そうモナーが力強く言った、しかし言葉を続けるものはいなかった。

ふたたびの沈黙―――

顧問がジュースを持ってこっちに向かってくる、その時、手術室の扉が開いた。
慌てて駆け寄る10人、扉から出てきた白衣の男が重く口を開いた―――

医者「申し訳ありません・・・力が・・・及びませんでした・・・」



32: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:33:05.73 ID:Z7bhqt7G0
(;´_ゝ`)「・・・何いってんだこのハゲ・・・」

(#゚∀゚)「でたらめ言ってんじゃねえぞコラ!!!!!!!!!!」

(;´∀`)「ジョルジュ!!止めるモナ!!」

ジョルジュが医者に殴りかかろうとした、それをモナーが制止する。
顧問は手に持っていたジュースを投げ捨てて医者の元に向かった。



33: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:34:19.45 ID:Z7bhqt7G0
医者「ヒソヒソ・・・お顔は綺麗にしておきました・・・」
顧問「ヒソヒソ・・・ありがとうございます・・・」

取り乱す10人に顧問が喋った。

顧問「ビコーズに・・・会いにいこうか・・・」





35: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:37:26.05 ID:Z7bhqt7G0
真っ白な手術室、目をあわさずに看護婦と思われる人がおじぎをして部屋から出て行く。
顔に布をかぶせられた人が手術台の上に横たわっていた。




顔に掛けられた布をビコーズの家族が取り払った




皆の大好きな、ビコーズだった――――



36: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:39:09.62 ID:Z7bhqt7G0
(#゚∀゚)「・・・おい、何寝てんだコラ・・・練習途中で抜けて何やってんだよ・・・
    起きろコラ!!!!!!!!!!!!!」

(;´_ゝ`)「・・・嘘だろ・・・甲子園行くんだろ?嘘つかないっていってただろ?」

ミ;,・Д・彡「・・・ビコーズ・・・冷たい・・・」

(;´∀`)「・・・」

(;^Д^)「プ・・・プギャ・・・」



37: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:40:05.07 ID:Z7bhqt7G0
(#゚∀゚)「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

( ;_ゝ;)「嘘だ!!嘘だ!!嘘だ!!嘘だああああああああああああ!!!!!!」

ミ,;Д;彡「・・・ビコーズ!!・・・ビコーズ!!・・・ビコーズ!!」

( ;∀;)「・・・うっ・・・うっ・・・」

( ;Д;)9m「プギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


―――その日、彼等の叫びは途切れる事が無かった。一晩中無き続けた。
天国に行ってしまった仲間に聞こえる程、大きな声だった―――



38: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:41:16.73 ID:Z7bhqt7G0






その翌日、ビコーズの葬儀が執り行われた。
自分達の知らない多くの人がやってきて皆涙を流していた。
ビコーズの事が好きな人は自分達だけじゃないんだな、沢山居たんだなと知った。






39: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:42:48.24 ID:Z7bhqt7G0
暫くして、野球部の練習は再開される事になった、
僕達は10人でグラウンドに向かった、しかしそこには誰も居なかった。
顧問の先生も辞めてしまってグラウンドには現れなかった。


後で聞くところによると他の一、二年生達は私立の強豪校に転校していったらしい。
一年間、試合に出る事が出来ないにも関わらずだ。
それほど彼等にとってはショッキングな出来事だったのであろう。
それ以外の力の無い部員達と転校しても試合に出る事ができない三年生達は
退部届けを学校に提出したらしい。
それ以来、彼らと廊下ですれ違っても挨拶することは無くなった。



40: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:44:15.28 ID:Z7bhqt7G0
ミ,,・Д・彡「・・・さー来い・・・」

僕達はその後も練習を続けた。

( ´∀`)「ナイスボール・・・モナ。」

しかし、惰性のようなものだ。

( ゚∀゚) 「次・・・ライトノック行くぞ・・・」

皆、目は死んでいた。そうビコーズと共に・・・


       皆、死んだ―――

=============================================



42: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:46:06.68 ID:Z7bhqt7G0
( ^Д^)「死んだんだ・・・俺達は、ビコーズと一緒にな。
      俺達はいつも一緒だ、だからこうして死んで・・・

(  ω ) 「黙れお」

その瞬間、ブーンが強い口調でプギャーの言葉を遮った。
皆、一斉にブーンの方を見る。

(  ω ) 「ビコーズさんが死んだ、だから俺達も死ぬ。
     笑わせんなお、なら今すぐ練炭でも焚けばいいお。」



44: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:47:29.32 ID:Z7bhqt7G0
その鋭い口調に皆息を飲む、誰も言葉を発する事の出来そうに無い重圧感―――

(  ω ) 「ブーンにはかーちゃんがいないお。
     僕が小学生の時、車に轢かれたんだお。」

('A`)「ブーン・・・」

その場にいた全員が驚きを隠せなかった。
あの明るいブーンにそんな暗い過去があったなんて・・・
ドクオはブーンの幼馴染だから知ってはいたが、まさかその話をするなんてと
動揺を隠せなかった。



47: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:48:27.96 ID:Z7bhqt7G0
(  ω ) 「そりゃあしばらくは何もしたくなかったお。人の事いえないお。」

(  ω ) 「でも、ブーンにはこいつがあったんだお。」

そう言って、ブーンは試合が止まった事で動きを止めてしまった白いボールを拾い上げた。



48: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:49:36.73 ID:Z7bhqt7G0
(  ω ) 「ブーンのかーちゃんは野球が大好きだったお。野球をするブーンを見て
     凄く喜んでくれたお。それが嬉しくて子供の頃、ブーンは野球を始めたんだお。
     でも、かーちゃんが居なくなってブーンは野球をやる意味を無くしてしまったんだお。」

(-_-)(どんだけ欝な話なんだ・・・)

(  ω ) 「そんな時、とーちゃんに連れられてキャッチボールをしにいったんだお」



49: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:50:56.22 ID:Z7bhqt7G0
(  ω ) 「最初は行きたくなかったお。なにもしたくなかったんだから当たり前だお。
     でも、キャッチボールをしながらとーちゃんが言ったお。」

手に持ったボールを見つめながらブーンは続けた。


(  ω ) 「かーちゃんは野球が大好きだった、そして野球をしてるブーンが大好きだった。
     だから、ブーンが野球を続ければかーちゃんがいつも見ていてくれる、
     野球をすればかーちゃんはブーンの中に生き続ける、だから、野球辞めるなって言ったお。」



(  ω ) 「そして、二人で泣きながら日が暮れるまでキャッチボールをしたんだお。」



50: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:51:58.87 ID:Z7bhqt7G0

(  ω ) 「ビコーズさんもきっと野球が大好きだったんだお。
                だから―――」

そういってブーンはマウンドのプギャーに向かってボールを投げた。

(  ω ) 「野球を、やるお。ビコーズさんを、殺すなお」

そしてブーンは黙って二塁ベースからリードを取る体制で構えた。



51: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:53:02.77 ID:Z7bhqt7G0
少しの沈黙そして―――

( ゚∀゚)「やるぞ、野球をやるぞ」

ジョルジュもショートの守備位置に戻る。

ミ,,・Д・彡「・・・やる・・・」

それに合わせて皆守備位置に戻っていった。
力の入った声で返事をしながら。



54: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:54:40.78 ID:Z7bhqt7G0
(  ω ) 「それから、バッテリーの二人、もうこれ以上は小細工はするなお。」

;'A`);´・ω・`)「ギクゥ!!」

(  ω ) 「純粋な力だけで勝負するお」

(;´・ω・`)(そっか・・・ばれてたんだね・・・)

ばつが悪そうにしながら二人はベンチに下がって行った。



56: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:55:49.58 ID:Z7bhqt7G0
( ^Д^)(ビコーズ・・・)

プギャーがボールを投げる事で試合が動き出す――――

( ゚∀゚)(ビコーズ・・・すまない・・・)

そして―――

ミ,,・Д・彡(・・・ビコーズ・・・殺してた・・・僕ら・・・)

彼らもまた―――

( ;_ゝ;)「ビコーズ!!!!!!!!!!」

止まってしまったあの日から動き出した―――



57: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:56:50.69 ID:Z7bhqt7G0
その後は試合にならなかった。上級生チームは泣くわ叫ぶわ・・・
しかし、その瞳は命の炎が輝いていた―――

上級生3―2下級生

試合終了:5時12分(4回ノーゲーム)

勝利投手:

敗戦投手:

本塁打:ジョルジュ(2回)ドクオ(4回)



58: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:57:59.84 ID:Z7bhqt7G0
その日の夕方、上級生達はビコーズさんのお墓に行ったらしい。
その次の日、上級生達は一年生全員に頭を下げた、そしてありがとうと言った。


その日の練習は以前とは違い活気に満ちていた。
そして一年生の基礎トレメニューも本来のものに変わった。
そう、VIP高野球部は再び動き始めたのだ―――



59: 作者 ◆9G12fmecqU :2007/05/14(月) 00:58:46.18 ID:Z7bhqt7G0
そして上級生チームだけで臨んだ甲子園予選、県大会一回戦。
一年間惰性で練習してきたチームがちゃんとした練習をしていたチームに勝てるほど
高校野球は甘くはなかった。

しかし、彼等の野球は見る者全ての心に刻まれるほどいきいきとしていたそうだ―――




ブーン、一年目の夏季大会、一回戦敗退。

―――第十話「ブーンはビコーズを殺さないようです」完



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