( ^ω^)と4色の音色達のようです

61: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/10(木) 23:50:53.28 ID:l/kIZC9i0
  

      《 第二音 鎮魂弦奏 》




僕は…気付けば僕は暗闇の中に居て…そして…



『さあ、ブーン! あたしを弾いて!!』



僕は…この音色を知っている、これは…



(;^ω^)「…君は、君はいったい!? どこに居るんだお!?」

(??)『慌てないで、大丈夫よ』

(;^ω^)「いったいどうなってるんだお!? あのロボットは!?
       僕はどうなって…いやだから君は!?」


(??)『説明はあと! それより…』



62: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/10(木) 23:52:11.91 ID:l/kIZC9i0
  

そこへ、轟き響く突然の爆発音


(;゚ω゚)「おっ!?」
(??)『きゃあ!』


僕の言葉を遮った彼女の声を更に遮るように大地を揺るがす重低音
いやむしろ実際に揺れている、凄まじい震動が僕等を襲った


《敵機多数接近中 外部シェルター破壊 本機損傷はありません》


(;^ω^)「敵機?損傷?」

(??)『もう気付かれたの!? リィン、状況は!?』


《現在戦車部隊に包囲されています 数は5 現在被弾数3》


(??)『それなら…まず緊急起動!!』

《了解》

(;>ω<)「うおっ、まぶし!」

突然、正面に白の縦線が走り、左右に広がっていく



66: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/10(木) 23:55:01.25 ID:l/kIZC9i0
  

その様はまるでカーテンを開いたように、眩む視界の先には広がる世界の姿

(;^ω^)「あ、え?え?」


360℃、全方位に広がる世界は見慣れた景色、違うのはたった一つ
目に映る全てが目下足元にある、つまり自分はかなり高い場所に居るようだ


そして隣には


ξ*゚听)ξ『…な、なによっ!』


ちんまい幼女が居た

いや少し違うな、いやいや、かなり違う
なんというか…8頭身キャラをデフォルメ化したような…

とにかく小さいのだ


(;^ω^)「…はい?」

ξ*゚听)ξ『じろじろ見ないでよっ!』



68: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/10(木) 23:57:13.20 ID:l/kIZC9i0
  

(;^ω^)「…」
ξ*゚听)ξ「…」

しばし見つめ合う、どうしろと?

ξ;゚听)ξ『はっ! そ、そんな事よりほら! 早くあたしを弾くのよ!』

(;^ω^)「弾く?」


そこへ、再び爆音、連続した音と共に視界が半分煙に消える


ξ;><)ξ『きゃ!?』


同時に地震、幼女は更なる震動に耐え切れず体制を崩し
そんな彼女へ向け、僕は咄嗟に手を伸ばし


ξ゚ー゚)ξ


細い腕を掴んだ瞬間 彼女が微笑んだ

(;^ω^)「え?」



69: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/10(木) 23:59:58.73 ID:l/kIZC9i0
  

(; ω ) ゚ ゚ 「な!?」

影の正体は見慣れた物体

彼女を掴んだ筈の手に握られていたのは、盗まれた筈の僕のヴァイオリンだった


(;゚ω゚)「なんじゃらほいーーーー!?」

ξ゚听)ξ『ほいじゃないわよ!内藤、グズグズしないで弾くの!!』

(;^ω^)「いや、あの、ええええええ!?」

ξ♯゚听)ξ『あーもー!ごちゃごちゃうるさい! 」

(;^ω^)「ごちゃごちゃって」

ξ♯゚听)ξ「いいわ、ならとにかく下を見なさい」

何やら苛立つ幼女の声に言われるままに下を覗く
下に見えたのは廃墟と化した街並みと、こちらへ砲身を向ける戦車の姿

(;゚ω゚)「あれは…っ!」

戦車には大きな旗がついていた
風になびくその絵柄は見覚えがある



71: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:01:21.71 ID:j786yaD10
  

みんな知ってる、僕だって知ってる

忘れよう筈も無い現世界における恐怖の現れ


(;゚ω゚)「て、帝国…グラン……?」


あの旗を掲げるのは、グラン帝国と呼ばれる国
正式名称グラン・コンオー帝連盟国

グランディオーソ、そしてコンフオーコと呼ばれる二つの国からな大国
『壮大な炎』を国言に掲げ、火に異常なまでの信仰心を持ち

強大な国力、戦車と呼ばれる移動式砲台の開発、及び多数保有し
頻繁に他国への侵略を繰り返す危険な国

だが…最近は大人しくなったと聞いていた、はずなのだが


(;゚ω゚)「な、なんで!? どうして帝国の戦車隊がここに!?」

ξ゚听)ξ『詳しい話は後でって言ったでしょ!』

(;゚ω゚)「なんでそんなに冷静なんだお!? あの国が攻めてきてるんだお!?」

ξ゚听)ξ『そう…このままじゃこんな小国はすぐに滅ぼされるでしょうね
     だからあなたは今ここに居る、あなたが今知るべき事はそれだけよ』



72: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:03:35.19 ID:j786yaD10
  

彼女の言っている事が理解できない
正確に言えば分かりたくないのだが…考えうる中で一番嫌な可能性を口にした

(;´ω`)「まさかそれって…僕がこのロボットで戦えって事かお?」

ξ゚ー゚)ξ『そういう事よ、察しがよくて助かるわ』

彼女は嬉々としてそれを肯定した

(;゚ω゚)「バカな事言うんじゃないお! 僕にそんな事できるわけないお!!」

ξ゚听)ξ『いいえ、出来る、ブーンであるあなたになら必ず…さあ』

彼女が僕へ向け一歩踏み出し、真っ直ぐに向けられた視線が僕を射抜く
思わず後退しかけるも、負けじと反撃する

(;゚ω゚)「だ…だいたいブーンってなんだお!?
      僕は内藤ホライゾンだ、何か勘違いしてるんじゃないのかお!」


ξ゚听)ξ『分からないの? このままじゃまた繰り返す事になるわよ』


繰り返す、何を?

この国が滅びる?



74: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:06:38.62 ID:j786yaD10
  

戦火に呑まれ、焼かれ、崩壊し、虐殺、人が死ぬ…国が死ぬ

あの場所のように? あの日のように?

そこまで考えて、強烈な頭痛が僕を襲った


(; ω )「…いっっっ!?」

ξ;゚听)ξ『え、どうしたのブーン、大丈夫?』

(; ω )「ぅ……っ」


立ち眩み、揺らぐ視界、全てが白く染まる――その過程

白い視界を投影機が映すように、彩る赤

夕焼けのような、禍々しく美しい赤


(; ω )「…?」


鮮明に蘇る夢の記憶



75: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:07:35.87 ID:j786yaD10
  

焼き払われたのは、家族、友人、居場所、そんな地獄絵図


(  ω;)「…ぁ」


自分で何が悲しいのか、それすら分からないまま、頬を一筋の涙が伝う


ξ゚听)ξ『…今、それを止める力があなたにはある』

(  ω )「…っ!」


更に爆音と地鳴り、彼女が微かに悲鳴を上げた
そして響くアラーム音と先の女性の音声


《装甲危険領域へ突入 早急な音源の補給を要請します》


周囲が赤く点滅を繰り返し、赤と煙が視界を奪う

その際、その隙間に僅かに覗いた、燃える家屋


(;゚ω゚)「!?」



76: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:09:57.18 ID:j786yaD10
  

既に見えなくなったその場所を凝視する
そんな僕の意思に応える様に、右下方に四角い板状の光が現れた
光はすぐさま煙の奥を現し、数度の機械音と共に映像の倍率を上げ

凄惨な光景が映し出された


ξ )ξ『ひどい…』

堪らず彼女が悲痛な声を漏らす
逃げ惑う民衆、崩れ煙を上げる家屋
僕の意識の向かう方向へと画面は動き、やがて広がる赤い水溜りを写した


そこには 四肢の潰れた――――


僕の中から何かが湧き上がる
許せない、こんなのは許されない

(  ω )「し…たら……どうすればいいんだお?」

ξ゚听)ξ『…』



78: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:11:57.73 ID:j786yaD10
  

《敵戦車増援 多数出現しました》

そんな僕の言葉に、彼女は静かに答えた

ξ゚ー゚)ξ『あたしを弾いて、そうすれば…』

尚も続く爆発音、景色が揺れ、警報が鳴り響き
レッドランプが現状の危険を知らせる

《装甲―き――け―ん》

意味のよく分からない警告を繰り返す声は続く爆音に掻き消え

(  ω )「…分かったお」

そんな中で、僕はそっと肩に『彼女』を乗せ、顎当てに顎を乗せて挟み込む

ξ*゚听)ξ『んっ…』

人差し指から滑らかに弦に触れ、弓を構えると
第三ポジションからE線を強く擦る

ξ////)ξ『あっ!!』



79: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:12:53.31 ID:j786yaD10
  

《音源確認 収集開始》

高音が響き、心が細く、思考は白に染まる
確かめるように腕を動かし、今度はビブラートを重ね高低音を繰り返す

ξ////)ξ『だめぇ…こんなの、やだ…や、あっ』

演奏とはとても言えないムチャクチャな音
それでも構わず感情のままに擦り続ける

ξ////)ξ『あっ、あっ…んんっ』

《敵戦車 次弾装填》


(  ω )「…!」

また撃つつもりか、人を人で失くす忌むべき魔弾を
思わず力を込めた指先が弦を強く弾いた

響く破裂音


ξ////)ξ「やっ!!!」


《障壁 起動》



80: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:14:10.55 ID:j786yaD10
  

その音に声が応えた、外部から響く強烈な破裂音
視界を覆っていた煙が一揆に晴れ、景色が見通せた

相変わらず眼下には戦車が並び、その砲身を真っ直ぐにこちらへ向けている

音が聴こえる

吹き上がる熱気と排気音、地を抉るキャタピラの回転、軋み上がる砲身
脅えた音、戸惑う音、そして――敵対する意思

「  撃て!!  」

同時に爆発、大きな煙が上がった


響く音は遠く、起こる炎も遠い

(; ω )「…?」

《音障壁 ピチカート 正常に作動しました》

(;^ω^)「しょうへき? ピチカート…!?」

機械的に告げる音声、聞き慣れた単語が耳に届き、ハッと気付く
ピチカートとは指で弾く奏法の事だ、それが何?なんだって?



84: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:19:33.59 ID:j786yaD10
  

ξ////)ξ『はあ…はぁ、ブーン?…もう、おちついた?』

(;^ω^)「どうしたんだお、そんな息を荒げて…」

ξ♯゚听)ξ『う、うるさいっ!! いい、よく聞きなさい…』

(;^ω^)「ら、ラージャ」

ξ゚听)ξ『あなたは今このリィン・フォルツェンドの奏縦者になったのよ』

(;^ω^)「りぃん…なんだって?」

ξ゚听)ξ『リィン・フォルツェンド、このロボットの名前よ』

(;^ω^)「リィン…」

《イエス マイスターブーン》

(;^ω^)「お…」

ξ゚听)ξ『このロボットの動力源は音、私達楽器を鳴らす事で得るの
      つまりあなたの演奏がそのまま力になるってことよ』

(;^ω^)「…えーと、あの…よくわからn」

《障壁レベル低下》

微かな震動、遠くから爆発音が続く



87: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:26:00.50 ID:j786yaD10
  

どうやら相変わらず砲撃は尚続いているらしい

《早急な対応を要請します》

ξ;゚听)ξ『そうね…じゃあ…』

(;^ω^)「あう…?」

ξ゚听)ξ『内藤、攻撃よ!!』

(;^ω^)「攻撃って…ど、どうやって?」

ξ゚听)ξ『そうね…うん、イメージするの、強く、強く、弓を引く自分を』

( ^ω^)「弓お?」

ξ゚听)ξ『そう、そして精一杯引いたら…今のあなたの思いをそのまま曲にして放つのよ!』


( ^ω^)「思い、弓を引く…」


( -ω-)「…」

願うのは、赤を打ち消す、白
炎を消しさる、氷の欠片



89: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:26:45.24 ID:j786yaD10
  

―――――。

一方、戦車で巨大な塊に挑む者達はそれに戦慄した
何発もの砲弾を受けてもびくともしない装甲

そして今では奇妙な音色が響き、砲弾が全て見えない壁に阻まれているのだ

(×゚1゚)「おのれ、なんなのだ、こいつは!!」

(×゚2゚)「Worker, kill without fail!!」

地を揺るがすような低音が幾度と無く響く
だが何発撃った所で何一つ変化は見られない、彼らは皆一様に困惑した
過去一度たりとも止められる事等なかったこの砲撃が通じないのだから当然か


…やがて風に乗って微かな音色が響き始めた

(×゚3゚)「…ん?」


     《コード 震動破滅弦奏曲》


外部に大きく響く、女性の無機質な声
一定のテンポで鳴らされる演奏、徐々に激しく成り響く弦曲



90: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:27:31.72 ID:j786yaD10
  


     《 アレグロ・ノン・モルト 》




その声で、音が弾けた

外部に激しく聴こえてくる演奏

騒がしい大音量とは違う、まるで世界中を包むような不思議な音色


(×゚1゚)「なんだ…?」

(×゚2゚)「誰だ、どこから聞こえてくるんだこれは!?」

大気が震えている

戦車に搭乗する彼等はそんな錯覚を感じると同様に全身にも震えを感じた
音色に包まれた世界が、まるで感動に打ち震える様に揺らめく

そこで不意に大きく何かが軋む音が響くと、大きな破裂音が轟いた

戦車の内一つが大きな音を立てひび割れと同時に砕け散る



93: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:28:28.04 ID:j786yaD10
  


「う、うおおあああああ…!!!??」


破片の隙間を縫うように内部に居た筈の人間が地に落ちた
彼が座っていたシートも、目の前にあったコンソールも全てが震動の中砕け散り


その場で、目撃した者は誰もがその破戒の旋律に戦慄を覚えた
人に一切の危害を与えぬまま、戦車と、周辺の建築物全てを滅していくその異行



その奇跡を



美しき演奏は加速する、心を奪う弦想曲に混ざり合う様々な音色




ξ )ξ『〜〜♪』



どこからか重なる歌声、次々に砕かれゆく兵器群、崩れた家屋
規則正しく鳴り続く演奏と破裂音が重なる



94: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:29:06.01 ID:j786yaD10
  


砕けた破片は更に灰塵と成り、風に煽られ空へ昇った


脅える人々は絶望を見た、この世の終焉を知らせるような音色に
全ての攻撃を無に帰し、眼前に聳え立つ白き巨人
気付けば数十と居た筈の戦車隊は一機残らず跡形も無く粉砕した


救いを求める人々は希望を見た、生まれ出ずる勇気を与えるような音色に
崩れた家屋の下敷きとなった人は突然差し込んだ光に目を細め
分かたれた家族は再会に涙した


そんな様子を呆然と眺める人々の中、広がる無空間を舞い上がった塵が宙を舞った

全ての音は吸い込まれるように消え去り、誰一人として言葉を発する事無く
静止する時の中で人々はその光景に見惚れ…またあるいは恐れ


(  ω )《四季、冬》



95: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:30:29.75 ID:j786yaD10
  

そんな中、どこからか聴こえた、穏やかな青年の声


深々と舞う塵が降り注ぎ、一面を白く染めていく


雪は積もる、人々に、街に、彼が乗るその巨躯にと


そして――


全ての音が途絶えたその場にはただ、それを見上げる人々と


巨人が静かに立ちすくんでいた


                          二音 終




次回 二節 《ブーンと呼ばれし者》 つづく



104: ◆6Ugj38o7Xg :2007/05/11(金) 00:46:10.20 ID:j786yaD10
  
次回予告!

ξ゚听)ξ「ああ、一度具現化されたらもうずっとこのままよ」
    「バーローwwww」(^ω^ )

失ってしまった愛する我が楽器

( ・∀・)「やあ、締め切りは守れてるかなー?」
(;'A`)「あ、…モナーさん…!?」

そしてそれはまた、違うお話

そして現れる第二の音色!その名はクー!!

∧,,∧
川 ゚ -゚)   ねこみみとかって…どう思う?

(^ω^)「うめえwwwwwww」

それでいいのか?これでいいのか!?

風雲今日を告げる次回、見逃す確率は高い!
何故なら落ちるのが早い、早すぎる!やめてくれストレイトクーガー

続きは…WEBで!!



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