( ^ω^)ブーンが伝説になるようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:32:22.32 ID:pQkedz0v0
〜プロローグ〜



……
………


『勇者』め…。

我をこのような目に会わせおって…。

絶対に許さんぞ…。

何年かけても必ずや常世(とこよ)に舞い戻って見せるわ…。

そのためにももっと人間の恐怖・絶望・苦しみを…。

そのためにはまず…。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:33:44.14 ID:pQkedz0v0


―1―

数ヵ月後。
とある海上。

(   )「カーチャンのためならえーんやこーら」


とある村の近くで男が漁をしていた。
傍らにある魚篭(びく)には大量の魚が白い腹を見せている。
そして今男が引いている網の中にも、これまた魚が大量に跳ねていた。

(   )「いやぁ、今日も大量だ。息子も生まれたし最近はいいことづくめだ」

男が独り言にしては大きな声で言う。
彼の妻は昨晩彼らの初の子供を生んだばかりである。
玉のような男の子で、彼は幸せの絶頂にあった。

(   )「さて、この辺で戻るか。早くあいつに食わせてやらなきゃな」

そう言って彼は自分の村へ戻ろうと、体を岸のほうへ向けた。
そして、見てしまった。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:35:25.18 ID:pQkedz0v0

(   )「ん?あれは…」

山の向こうからなにやら黒い雲が現れたのだ。
その雲はものすごいスピードでこちらに向かってくる。

Σ(;  )「ま、まさか…!」

男の勘は正しかった。それは雲ではなかったのだ。
雲は近づくにつれ、小さな点となってその正体を明かす。

それらは無数の魔物たちだった。全員翼を持っている。
その魔物たちが固まっていたので雲に見えたのだ。

(   )「まずい!!」

男は小舟を漕ぎ、川伝いに自分の村へと急いだ。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:38:14.95 ID:pQkedz0v0


―2―

男が村にたどり着いたときはすでに阿鼻叫喚の渦だった。

モンスター共は殺戮の限りを尽くしていた。
剣や自らの爪と牙を以って村人を切り裂き、炎で焼き尽くす。
かと思えば氷のブレスで逃げようとする主婦を凍らせている魔物もいた。

逃げ惑う人々の声と肉の焼け爛れた臭いに男は吐き気を催した。
彼は小舟を下りると一目散に自分の家へと向かった。

妻は無事だろうか。生まれたばかりの幼いわが子は―――?
男は家の扉を開けて愛する妻の元に駆け寄った。

(   )「おい!無事か!?」

(  妻)「あ、あなた。何が…?」

よかった。どうやら無事らしい。
男はほっと安堵の溜息をつくと、妻の手をとって状況の説明をしてやる。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:40:14.63 ID:pQkedz0v0

(   )「モンスター共が村を襲っているんだ!魔王のやつが目を覚ましたらしい!!」

(  妻)「なんですって!?それでみんなは…」

(   )「もう、ほとんど駄目だ。この村はおしまいだよ…」

(  妻)「そ、そんな…」

男がそういうと妻は糸が切れたように頭を枕に沈めた。
そんな妻の様子を見ていた彼は決意して妻に語りかけた。

(   )「なぁ、この村を出よう。今ならまだ間に合う」

男の言葉に妻はゆっくりと首を横に振って答える。

(  妻)「無理よ。
     私は産後の疲れがまだ残ってるし、皆を残して私たちだけ逃げ延びるなんてことはできないわ」

(   )「そんな…」

がくりと肩を落とす男。
しかし妻は言葉を続けた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:44:13.91 ID:pQkedz0v0

(  妻)「だけど、この子は別。この子はまだ生まれたばかりだもの。死んでいいはずがない。
     この子にはもっともっと世界を見せてあげたい。だから―――」

(   )「わかった。この子の命は俺が死んでも守る。だから、安心しろ」

(  妻)「あ、その子の名前ね、あなたが漁に出てる間に考えたの。この紙に書いておいたわ」

そう言って彼女は微笑むとそのまま眠ってしまった。

(   )「ああ、任せろ。この子は、俺が必ず守ってやる」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:45:46.40 ID:pQkedz0v0


―3―

男は妻の寝顔に声をかけると、幼いわが子をと紙切れ抱いて飛び出した。
目指すは先ほどまで男が乗っていた小舟だ。あれにこの子を乗せて川に流せば、やがて海に出る。
そこまで行けばあとは潮が勝手にどこか他の海岸まで運んでくれるだろう。
男が舟に向かう途中でもモンスターが人々を襲っていたが、彼はわき目も振らずに駆ける。

早く、早くこの子を!

男の胸はそれで一杯だった。
息もつかずに走り抜けて、ようやく小舟のある川岸にたどり着く。

彼は息を整えるのもそこそこに、釣った魚を舟から取り出すと空いたスペースにわが子を寝かせた。
最後に持っていた紙切れに目をやり、にやりと笑う。

(  ー )



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:49:02.10 ID:pQkedz0v0


その紙を赤子を包む毛布の隙間に押し込むと、急いでもやい綱をはずして舟を押し出した。
舟は川の流れに乗って下流へと進んでいく。

(   )「じゃあな、坊主。達者で暮らせ」

どんどん小さくなって行く舟につぶやくと、元来た道を戻っていく。
愛する妻を守るため。そして愛する息子を守るため、彼は地獄へと身を投じるのであった。






                     ――――――そして、十余年の歳月が流れた。






20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:50:11.42 ID:pQkedz0v0






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