( ^ω^)ブーンが伝説になるようです
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:53:47.86 ID:pQkedz0v0
- 序章
―1―
夢だ。
間違いない。
でなければ、自室の布団に包まっていた自分が気づいたら森の中につっ立っていた、なんてことに説明が付かない。
この妙な現実感のなさも、夢の中だと言うなら納得だ。
森は静かだった。
何の音も聞こえず、何の気配も感じない。
とりあえず歩いてみる。まるで夢遊病者のように。
クスリと笑う。
現実の世界の自分は眠っていると言うのに、夢遊病者なんて表現を使ったのが可笑しかった。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 20:55:41.65 ID:pQkedz0v0
数歩も行かないうちに音が聞こえてきた。
何かを大量に、それも連続で叩き付けるような音だった。
前方に光が見える。森の出口だろうか。
そっちへ向かってみることにした。
どうせ行く当てなんてない。
森を出た先は高台になっており、下には川が流れていた。
流れはかなり速い。
自分から見て、左から右に流れている。
高台の対岸に滝があった。
相当な高さだ。目分量でも20mくらいはあるだろう。
高台の淵に四つんばいになって、下を見下ろす。
ここから飛び降りたら目が覚めるだろうか。
どうせ夢なんだ。死ぬことはないだろう。
最悪、目覚めたときにベッドから転げ落ちて頭を打つくらいだ。
そんな、能天気なことを考える。
その時だ。
『声』が聞こえた。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 21:00:47.42 ID:pQkedz0v0
- 『ブーン……ブーン……
私の声が聞こえますね…』
静かで、優しい声だった。
ブーン。彼の名前だ。
『私は全てをつかさどる者。
あなたはやがて 真の勇者として
私の前に現れることでしょう…』
勇者と来たか。
いいね。男の子なら、一度はあこがれる職業ナンバー1だ。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 21:03:27.73 ID:pQkedz0v0
- 『しかしその前に、この私に教えて欲しいのです。
あなたがどういう人なのかを……』
随分と変な夢だな。ブーンは思った。
でもまぁ、夢とは大概変なものだ。
そんなことは、いくら頭の弱い自分にもわかる。
『さあ 私の質問に 正直に答えるのです。
用意は いいですか?』
まぁいいさ。どうせ夢だ。
質問でも矢でも鉄砲でも、何でも来いだ。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 21:05:09.33 ID:pQkedz0v0
- ―2―
それから、『声』の出す質問になんとなく答えた。
それらの質問に答えると、どこか別の場所に飛ばされた。
突然の場面転換。
これも、夢にはよくあることだ。
飛ばされた先はまた森の中だった。
目の前に老人がいて、向こうにある岩を持ってきて欲しいと頼まれた。
言われた通りにするとお駄賃がもらえた。
始めはお駄賃欲しさに何度も往復したが、夢の中でもらっても意味がなかった。
そのことに気づくときにはもう20近くも往復していたけれど。
森を出ると、元の場所だった。
またあの『声』が聞こえた。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 21:06:42.12 ID:pQkedz0v0
- 『あなたはなかなか苦労人のようですね』
大きなお世話だ。
よく友達にも、「お前は無駄に苦労するよな」って言われている。
『少しくらい辛い事があっても 、なかなかへこたれません。
目標にむかって地道にコツコツと努力してゆくタイプです』
自分のことだ。
改めて言われるまでもない。
『時々そんな自分が歯痒くなるかも知れませんが、今のままでかまいません。
無理をしてちゃらちゃらした自分を作り、みんなの人気者になったとしてもいつかは疲れてしまいます』
だんだん頭がボーっとしてきた。
やっと目が覚めるのだろうか。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/16(水) 21:09:18.93 ID:pQkedz0v0
- 『今のままのあなたの良さを分かってくれる友人が一人でもいれば、あなたは幸せでしょう。
では、目覚めなさい。勇者ブーンよ』
最後の方は、よく聞き取れなかった。
目を覚ましたとき、彼の頭からこの夢に関することはきれいさっぱり、消えていた。
戻る/第1話