( ^ω^)ブーンが伝説になるようです
- 3: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:05:19.45 ID:wb/8S4Yv0
- 第9話 VSカンタダ一味
―1―
ξ゚听)ξ「ショボンはピオリムで素早さ上げて!
ブーンはひたすら子分の方を攻撃!」
( ^ω^)「ツンはどうするんだお?」
ξ゚听)ξ「私?スクルトで守備力上げてやるわよ!!」
ツンの指示は的確だった。
相手の方が素早さが高いと見るや否や、迅速な判断で命令を下す。
そんな彼女に男2人は舌を巻いていた。
(´・ω・`)「すごいね、彼女」
(;^ω^)「だおだお」
ξ゚听)ξ「ほらぁ、ぼさっとしてんじゃない!
あたしを怒らせたこと、後悔させてやんだからね!!」
その言葉に、二人が動く。
ブーンが子分Aに向かって走り出した。
- 4: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:06:03.30 ID:wb/8S4Yv0
- 彼は以前も書いたとおり、走るのが得意だった。
それに加えてショボンのピオリムによる加速。
彼の素早さはすでに常人のそれを超えていた。
おまけに、敵はかなり太めの体系だ。
ブーンがやせて見えるほどである。
おまけに顔にはニキビ。
何もかもがブーンにとって有利に働いている。
一瞬で子分Aの懐にもぐりこみ、剣を振るう。
キインッ!
金属音。
子分Aがかろうじて自らの剣を盾にしてブーンの攻撃を防いでいた。
こうしてみると、子分Aの方がブーンより背が高い。
ちょうど彼がブーンを上から押さえ込んでいる状態だ。
( ^ω^)「中々やるおね…」
(∴゚ з゚ )「お前もな」
そのとき、子分Aの唇が邪悪にゆがんだ。
(´・ω・`)「危ない!」
突如、背後からショボンの声。
と同時に先ほどとは違う金属音が聞こえた。
- 6: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:07:58.65 ID:wb/8S4Yv0
- (´・ω・`)「後ろから狙うのはちょっと卑怯なんじゃないの?」
その言葉でブーンは自分が背後から切りかかられていたことを知る。
相手の顔は見えない。ブーンはさっさと子分Aを片付けることにした。
不意に、膝を曲げて腰を落とす。
(;∴゚ з゚ )「何!?」
驚きの声が上がる。
体を支える力がこつ然と消え、子分Aはバランスを崩してしまった。
その隙を逃しはしない。元々、この効果を狙っての行動だった。
ブーンはかがんだまま腰を左にひねると、一気に右腕を振り上げた。
その動きにつられて、折りたたまれていた両の膝も伸びる。
ガィン!!
それを確認できたのは、先ほどよりも重厚な金属音の後。
見れば、彼の剣を持った右腕は見事に振り抜かれていた。
子分Aの腕には半分になった剣の残骸があった。
ブーンの鋼の剣が彼の剣をへし折ったのだ。
- 8: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:09:20.40 ID:wb/8S4Yv0
- (;∴゚ з゚ )「まいった!降参だ!!」
子分Aが慌てて叫ぶ。
尻餅をつき、左腕を突き出していた。
( ^ω^)「本当にいいのかお?」
(;∴゚ з゚ )「ああ。もう剣も折れて戦えない。俺の負けだよ」
( ^ω^)「そうかお。でも」
そう言ってブーンは剣を振り下ろす。
それは、唐竹割りと呼ばれる攻撃。脳天に向けて一直線の軌道だ。
但し、峰打ち。ついでに相手の頭には鉄兜。そこから導かれる答えは、相手の昏倒。
( ^ω^)「気絶は、しててもらうお」
そう言って、ブーンは急いで仲間の元へと駆けて行った。
- 9: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:10:16.15 ID:wb/8S4Yv0
- ―2―
こちらでも睨み合いが始まっていた。
相手はブーンを背後から狙った卑怯者だ。
ショボンが奴の凶剣からブーンを救ってから、すでに1分以上が経過していた。
(´・ω・`)「…………」
( ФωФ)「…………」
槍の穂先を下に向け、左足を前に出す。
左手は後ろに、右手を前に。いつでも刺突できる姿勢だ。
瞳は油断なくじっと互いを見据える。
先に声を発したのはショボンだった。
- 10: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:11:35.81 ID:wb/8S4Yv0
- (´・ω・`)「一つ、聞いていいですか」
( ФωФ)「何だ」
静かな声だ。ある意味、見た目通りである。
ショボンはそう思いつつ言葉を続ける。
(´・ω・`)「なぜブーンさんを?」
( ФωФ)「愚問だな。
あの瞬間では、あいつがお前らの中で一番隙だらけで殺り安かった。
それだけのこと」
(´・ω・`)「そうですか」
溜息。
鉄の槍を構え直し、握る拳にわずかに力を込める。
(´・ω・`)「あなたはやっぱり、卑怯だ」
( ФωФ)「違うな。こういうのは、『要領がいい』って言うんだよ。
日本語は正しく使わないとな」
弾ける様にショボンが飛び出した。
穂先は下向き。姿勢は低く。狙うは―――急所。
- 12: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:14:00.06 ID:wb/8S4Yv0
- 一般に、槍の方が剣よりも強いされていることは周知の事実だろう。理由はその長さ故の攻撃範囲にある。
リーチを生かし、回転を加えての斬撃はかなりのダメージを与えることができる。
遠心力によって穂先が重く、そして速くなるためだ。
また、突きを繰り出せば相手は鎧兜や盾で防御するか避けるかしかできない。
ショボンの相手も獲物はただの剣だ。
しかも装備は胸当てのみ。行ける。そう、確信した。
ショボンは刺突ではなく斬撃を選んだ。
突きよりも斬撃の方が与えるダメージが大きいからだ。
穂先を右上に向け、フルスィングの要領で左に振りきろうとする。
しかし、できなかった。
- 15: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:16:13.47 ID:wb/8S4Yv0
- ―3―
ξ;゚听)ξ「ハァ、ハァ」
( ゚∀゚)「息が切れてるぜ。さっきの威勢はどうした」
( ・_・)「……」
しまったな。
ツンは口の中でつぶやいた。
怒りに任せて戦いを挑んだはいいものの、完全に2対1の戦いになってしまった。
正直、相手の攻撃を避けるだけで精一杯だ。
時折隙を見てメラやヒャドを唱えるが、大したダメージにはならない。
( ・_・)「……」
カンタダの側に控えるように立つ男が無言で刀を振るう。
こいつはさっきから一言もしゃべらない。
無表情なのも相まって、不気味なことこの上なかった。
男が剣を振るう。
避けた先にカンタダが斧を振り下ろす。
敵ながら天晴れなコンビネーションと言わざるを得ない。
ξ゚听)ξ(悔しいから声には出さないけどね!)
- 16: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:17:58.64 ID:wb/8S4Yv0
- などと思っている場合ではない。
どうにかしてこの状況を打開しないと本当にヤバイ。
そうこうしているうちに無言男の剣が再び迫ってきた。
ξ#゚听)ξ「ちっとはしゃべりなさいって言うの、よ!!」
剣を避けつつブーメランを投げる。
しかしそれも、無言男の剣によって弾かれてしまった。
ξ;゚听)ξ「あっ!」
それと同時にツンがこけた。
ブーメランが弾かれたショックと疲労とが、両足をもつれさせたのだ。
( ・_・)「トドメだ」
ようやく聞けた彼の声。
低くて高い。子供のようで大人のよう。
男性とも女性とも付かない。
そんな中性さが、そこにあった。
- 18: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:19:50.63 ID:wb/8S4Yv0
- 剣がツンに向けて振り下ろされる。
言葉通り、確実に止めをさしに来ている。
彼女が女性だからと言って一切容赦のない一撃。
ξ>凵)ξ(!!)
この後に来るであろう死を伴う痛みを想像し、ツンは思わず目をつぶってしまった。
しかし、いつまでたっても想像した痛みが来ることはなかった。
ξ−凵)ξ(……?)
恐る恐る目を開ける。
そして彼女が見た物は、
(#^ω^)「…………」
静かに怒りを込めて男の腕を締め上げる、ブーンの姿だった。
- 20: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:22:03.00 ID:wb/8S4Yv0
- ―4―
ショボンは攻めあぐねていた。
先程はうまくかわすされてしまった。
前述したとおり、槍の最大の特徴はその長さにある。
それ故に相手は簡単には懐に入ることは出来ないだろう。
しかしながら、一旦懐に入られてしまえば今度はその『特徴』が邪魔をしてしまう。
左右によけるでもなく、後ろに退くでもない。
敵はあえて前に出ることで攻撃のチャンスを得た。
奴は恐ろしいまでの加速で槍をかわすと、右腕をまっすぐ突き出したのだ。
剣先はショボンの喉元。
ショボンのフルスィングを避けると同時に攻撃を繰り出していた。
よもやそんな攻撃をされるとは思いもしなかった。
おかげでこちらも体を止めないわけには行かなかった。否、止まらなければこちらがやられていた。
このことから、相手は相当素早いことが推測できる。
- 21: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:23:36.75 ID:wb/8S4Yv0
- ショボンは僧侶であるが、武器を使った攻撃もそこそこ行える。
実は幼少より彼の養父でもあるアリアハンの神父によって、多少ではあるが鍛えられていたのだ。
余談ではあるが、養父が元戦士だったらしい、と言うのはショボンが幼いころから聞かされていた彼の武勇伝だった。
話を戻そう。
その力は彼の気弱さ故、めったに使われることはない。
しかし今は、『仲間を守りたい』と言う気持ちが性格に勝っている。
そのスイッチは、先程こいつがブーンを背後から襲ったときに入った。
ブーンを守りたい。守らなければならない。
出会ったばかりの自分を仲間と言ってくれたこの人を守り抜くことが僕の義務だ。
ショボンはそう考え、実際今現在そうしようと懸命に戦っている。
しかし、気持ちだけで戦況が変わるほどに実践と言うやつは甘くない。
先程から突きや斬りを繰り返すが、相手の素早さには通用しなかった。
- 23: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:24:55.64 ID:wb/8S4Yv0
- ( ФωФ)「やるな、小僧」
不意に、男が話しかけてきた。
ショボンが返す。
(´・ω・`)「あなたもね。まともに戦っても強いじゃない。
何でさっきはあんなことをしたの?」
( ФωФ)「言っただろう。俺は効率主義なんだよ」
(´・ω・`)「納得」
短く答えて何度目かの突きを繰り出す。
低姿勢での疾駆。最初と同じ格好だ。
( ФωФ)「その手は食わんと―――」
(´・ω・`)「ラリホー」
ショボンの口から催眠呪文の名が紡がれた。
( ФωФ)「ッ!?」
- 24: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:26:29.72 ID:wb/8S4Yv0
- 息を呑む音。声にならない悲鳴。
突きはフェイントだった。
いや、最初の攻撃がかわされた時からずっと、ショボンは呪文を使っていなかった。
相手に呪文の存在を忘れさせるために。いざという時の切り札とするために。
動きの素早い敵を倒すには、動きそのものを封じるのが一番だ。
ショボンはずっとチャンスを伺っていた。呪文を唱える最高のタイミングが訪れるのを。
そのタイミングとは、相手が油断しきった瞬間だ。
斬る、突くなどの単調な攻撃は相手を油断させやすい。
油断とまでは行かずとも、少なくとも『飽き』は出て来る。
そして飽きは少なからず『眠気』を伴う。
その量は夜の睡眠時を100とするならば10にも満たないほどの微量だが、ゼロではない。
眠らない人間、いや、生物など存在しない。魔物でさえも。
ショボンはわざと単調な攻撃を繰り返し、そのわずかな眠気を引き出したのだ。
催眠呪文(ラリホー)を効き易くさせ、その効果を増幅させるために。
- 25: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:27:32.36 ID:wb/8S4Yv0
- ( うωФ)「卑怯な…」
(´・ω・`)「あなたがそれを言いますか。
それに僕は戦士じゃあない。僧侶なんです」
( うω十)「く…そ…」
男は剣に寄りかかり、そのまま伏してしまった。
高いびきが聞こえる。どうやら完全に眠らせたようだ。
(´・ω・`)「止めをさす必要は、ないよね」
誰ともなしにつぶやくと、槍を体の斜め上で一回転させて背中のホルダーに収める。
そして苦戦しているであろう仲間たちの下に急いで向かって行くのだった。
- 26: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:28:55.66 ID:wb/8S4Yv0
- ―5―
赤い。
夕日が塔を照らし出していた。
ものの数十分もすれば、その夕日も海の向こうに沈みきることだろう。
一日の終わりを告げる太陽が照らすのは、何も塔だけではなかった。
( ^ω^)「……」
男の腕を掴むブーンの顔も、朱く染まっていた。
本来周りを取り囲んでいるはずの壁が、そのフロアにはなかった。
彼の表情はいつも通りだったが、どこか雰囲気が違う。
ちょっと勘のいい者なら、そのオーラを感じ取れたことだろう。
(;´・ω・`)「……」
ショボンが駆けつけると、ブーンは既にそのような様子だった。
(;´・ω・`)(これは…邪魔しない方がいいかも知れないね)
ブーンは明らかに怒っていた。
彼の後方にはツンが座り込んでいる。
ξ;凵G)ξ
遠目ではよく見えないが、彼女は涙ぐんでいるようだった。
ショボンは瞬時に状況を把握するとツンに駆け寄り、彼女の腕を取って立ち上がらせた。
- 29: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:31:29.91 ID:wb/8S4Yv0
- (´・ω・`)「大丈夫ですか?」
ξ;凵G)ξ「え、ええ。ブーンが…」
(´・ω・`)「状況は大体掴んでいます。
あなたがやられそうになった所に、ブーンさんが現れたんですね?」
ショボンが問うとツンは涙を拭って、
ξ;゚听)ξ「そ、そうよ!悪い!?」
どうやらいつもの元気を取り戻したらしい。
そんなツンを見てショボンはクスリと笑う。
ξ;゚听)ξ「な、何よニヤニヤしちゃって。気持ち悪いわね」
(´・ω・`)「いえ、別に。元気になってよかったなぁと」
ショボンはわざと思ったことをそのまま口にした。
「気持ち悪い」と言われたので、ちょっとお返しだ。
- 31: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:33:26.43 ID:wb/8S4Yv0
- ξ////)ξ「う、うるさいわね。いつまで腕掴んでんのよ。
さっさとブーンを助けに行きなさいよ」
頬が赤いのはきっと夕日のせいだけではないだろう。
言われて初めて気づいたようにツンの腕を放して、ショボンは言った。
(´・ω・`)「いえ、ここはブーンさんに任せましょう」
その言葉を聞いたツンが何か問いた気にこちらを見上げる。
そんな彼女を無視してショボンはブーンの方を向いた。
その時である。あの、恐ろしく中性的な声が聞こえたのは。
- 34: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:35:42.21 ID:wb/8S4Yv0
- ―6―
( ・_・)「離せ」
こいつは相変わらずの無表情で同じく頬を朱(あけ)に染めて言った。
かなりの握力で腕を締め上げられているにもかかわらず。
ブーンは更に腕に力を入れた。
ギリギリと音が聞こえる。
その音はブーンと男、どちらの腕からか。
( ω )「お前が…」
突如、声。
その声はかなり小さく、一番近くにいる男でもようやく聞こえるほど。
しかし、その声は怒りにあふれていた。
( ^ω^)「お前が、ツンを泣かせたんだお?」
( ・_・)「ツン?あの女か。そうだ…がッ!!」
言い終わらないうちに、轟音と共に男の体が浮き上がる。
ブーンが男の腕を掴んだまま右腕でボディを放ったのだ。
(#`ω´)「お前がッ、ツンをッ、泣かせたんだッ、おおおおおおおお!!!!」
- 38: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:37:36.32 ID:wb/8S4Yv0
- ラッシュ。激しい拳の連打だ。
左右交互に打ち出されるその拳は、男の体を休むことなく打ち付ける。
ドガン!!
最後にブーンの振り下ろした右拳が男を吹き飛ばし、壁に激突させた。
その壁は赤い扉の部屋の外壁だ。
( ・_・)「図に乗るなよ、小僧」
ゆらり、と立ち上がる。
音の割りに大したダメージは与えていないようだった。
男は剣を抜くと腰溜めに構え、突進。
速い。ブーンといい勝負だった。
慌てて剣を抜いて構える。
男が剣を振り下ろす。
右上からの袈裟切り。
自分の剣を交差させて防御の姿勢をとった。
乾いた金属音がフロアに鳴り響く。
ブーンの剣が相手の攻撃を防いだことを示す音だ。
しかし、衝撃。
その衝撃は背中から。
- 39: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:40:00.87 ID:wb/8S4Yv0
- しかし、衝撃。
その衝撃は背中から。
( ゚∀゚)「おいおい。俺を忘れてもらっちゃあ困るぜ」
見れば、カンタダが手斧でブーンを切りつけていた。
(;゚ω゚)「お…」
ブーンの体がぐらりと傾く。
そして、そのまま倒れこんだ。
それほどの衝撃だった。
ξ;゚听)ξ「「ブーン(さん)!!」」(´・ω・`;)
2人が叫ぶ。
そして同時に駆け出した。
ツンは右へ。ショボンは左から回り込んだ。
- 40: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:41:59.14 ID:wb/8S4Yv0
- ―7―
先にブーンの元へたどり着いたショボンがホイミを掛けていた。
ツンも遅れて到着する。
ξ゚听)ξ「ショボン!ブーンの様子は!?」
(´・ω・`)「大丈夫、傷は浅いです。鉄の鎧が幸いしたようですね」
ξ゚听)ξ「そう、よかったわ」
その時、背後から複数の足音。
見ればカンタダと子分の男がこちらに向かってきていた。
ξ#゚听)ξ「ギラ!」
(;゚∀゚)「うおぉ!?」
突如、声と共にツンの手の平から炎が放たれた。
その炎は、ブーン一向とカンタダ一味とを遮断するように帯状に燃え広がっていく。
燃えるものがないのですぐに消えてしまうだろうが、多少の時間稼ぎにはなるだろう。
ブーンが回復するまでならなんとか持ちこたえられるはずだ。
ちなみにその炎は、腰ぐらいの高さである。
乗り越えられはしないが、相手の顔は見えている。
- 41: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:43:02.65 ID:wb/8S4Yv0
- (;´ω`)「うう…ツン、大丈夫かお?」
下方からブーンのうめき声が聞こえた。
ショボンのおかげでいくらか回復したようだ。
ξ゚听)ξ「ええ、ショボンが助けてくれたから」
(;´ω`)「それはよかったお。ショボン、ありがとうだお」
(´・ω・`)「何を言ってるの。仲間なんだし当然じゃない。
そんなことでありがとうなんて言わないでよ」
その言葉を聞くと、ブーンはにっこりと笑った。
( ^ω^)「よかったお」
(´・ω・`)「え?」
( ^ω^)「旅に出たばかりのショボンは遠慮してたのか知らないけど、妙によそよそしかったお」
(;´・ω・`)「あ…」
言われてショボンは気づく。
今自分はブーンに対してタメ語を使ってしまった。
3歳も年上のブーンに。
- 43: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:45:11.34 ID:wb/8S4Yv0
- ( ^ω^)「でも今、ようやく本当の友達になれた気がするお」
(´・ω・`)「ブーンさん…。じゃなくてブーン君…」
『本当の』の部分を強調するブーン。
そして片膝を付くと、何とか立ち上がろうとする。
(´・ω・`)「だめだよブーン君!
ホイミは怪我は治すけど、疲労までは回復させられないんだから!!」
ξ゚听)ξ「そうよ。あとは私たちに任せて、ゆっくり休んでなさいよ」
( ^ω^)「そういうわけにもいかんお。仮にも僕はみんなのリーダーだお。
リーダーがのんびり休んでなんていられないお。
それに、疲れてるのは2人も同じだお?」
顔では平静を装っている。
しかし地に着く両足をみやればそれらはガクガクと震えていた。
そうとう疲労が溜まっている証拠だ。
無理もない。
今まで常に全力で戦っていたのだ。
更にピオリムで強化もしていた。
- 45: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:47:12.56 ID:wb/8S4Yv0
- ピオリムとは、脚部の筋肉を一時的に増強させて素早さを上げる呪文だ。
絶大な効果を得る替わりに反動も大きい。
いざという時以外に使ってはいけなかった。
もしくは、短期戦に持ち込むべきだったのだ。
両脚に渇を入れて立ち上がる。
剣を構え、炎が消えるのを待った。
ξ゚听)ξ「「ブーン!!」」(´・ω・`)
( ^ω^)「2人とも、援護頼むお」
ξ゚听)ξ「無茶よ!そんな体で!!」
(´・ω・`)「そうだよ!あとは任せてゆっくり休んでってば!」
口々にブーンを止めようとする。
だが彼は頑として譲らなかった。
(;^ω^)「炎が消えたらあいつらの注意を引き付けて欲しいお。
その間に僕がトドメを指すから…」
- 46: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:48:29.20 ID:wb/8S4Yv0
- ξ゚听)ξ「ブーン…」
(´・ω・`)「でもブ」
ξ゚听)ξ「分かったわ!!」
Σ(´・ω・`)
ξ゚听)ξ「いいわ。あんたに従う。
悔しいけど、あたしたちのリーダーだもんね」
ショボンの言葉を遮ってツンが言葉を続ける。
それは、絶対の信頼があってこそだった。
ξ゚听)ξ「ショボンもそれでいいわよね?」
(´・ω・`)「うん、ツンさんがいいなら僕も文句はないよ」
ツンに振られてショボンもうなずいた。
( ^ω^)「ありがとうだお」
ξ゚听)ξ「だから、ショボンも言ってたけど水臭いってのよ」
( ^ω^)「おっおっお。すまんこ」
そろそろ炎が消える。
あの炎が完全に消えたときが合図だ。
- 47: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:50:30.17 ID:wb/8S4Yv0
- ( ゚∀゚)「待ちくたびれたぜ」
( ・_・)「……」
カンタダが手斧をもった腕の肩を振り回して言う。
子分の男は相変わらず無言だった。
やがて、炎が消える。
( ^ω^)「行くお!!」
ブーンが短く叫ぶ。
2人は同時に駆け出した。
- 49: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:52:21.01 ID:wb/8S4Yv0
- ―8―
ツンとショボンは左右に展開。
敵を挟み撃ちにする格好だ。
(´・ω・`)「バギ!」
突然の突風がカンタダたちに襲い掛かった。
真空呪文バギはその名の通り、風を操って攻撃する呪文である。
カマイタチで敵を切り裂いたり、暴風で敵の足止めをしたりすることが可能だ。
ショボンが使っているのは後者だった。
(;゚∀゚)「くっ…」
カンタダは腕を顔の前にかざして前進を試みようとするが、
暴風にとらわれて思うように足が進まなかった。
(´・ω・`)「ツンさん!!」
ξ#゚听)ξ「おっけー。さっきはよくもやってくれたわねぇ。ヒャド!!」
- 50: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:53:16.09 ID:wb/8S4Yv0
- ツンから放たれる氷の飛礫。
それらはショボンの起こすバギによる暴風に乗り、威力を増してカンタダたちにぶつかっていく。
(;゚∀゚)「あて!あてててて!!」
(;・_・)「―――ッ!!」
言うまでもなく、風は体感温度を下げる。
更にヒャドによる相乗効果も加わって、彼らの周囲の温度は10℃以上も下がっていた。
白い息を吐きながら震えるカンタダ。
そこへ。
( `ω´)「おおおおおお!!」
ブーンの剣がカンタダの脇腹に直撃した。
あまりの衝撃にブーンの手がしびれる。
しかし、剣は離さなかった。離してはいけなかった。
(;゚∀゚)「がはぁっ!!」
脇腹を押さえ、カンタダがうずくまる。
(#`ω´)「とどめッ!!」
- 51: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:55:37.02 ID:wb/8S4Yv0
- ブーンがとどめをさそうと、剣を振り上げる。
しかしカンタダが突然左腕を上げて叫んだ。
(;゚∀゚)「参った!金の冠を返すから許してくれよ!な!な!」
( ^ω^)「お?」
剣がピタリと止まる。
カンタダの頭上数センチ。ギリギリだった。
そんな彼の様子を見て、ツンが言った。
ξ゚听)ξ「何言ってんのよ。そんなこと許すわけないじゃない」
当然だ。自分は先ほどあんな目に合わされたのだから。
しかし、ブーンは違った。
( ^ω^)「いいお」
( ゚∀゚)「ホントか!?」
Σξ(゚Δ゚ξ「ってちょっと!何考えてんのよ!!」
ツンが慌てて抗議した。
でも、とブーンは彼女を無視して付け足す。
- 54: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 21:57:47.97 ID:wb/8S4Yv0
- ( ^ω^)「次悪いことやったら、承知しないお?」
(;゚∀゚)「も、モチのロンだぜ!」
(´・ω・`)「古いよ…」
ショボンが溜息を付きつつツッコんだ。
そしてここに違った意味で溜息を付く人物がもう一人。
ξ゚听)ξ「ハァ…ったく、しょうがないわね。
いいわ。ブーンの言うことだし、許して上げる」
( ゚∀゚)「ありがてえ!あんたらのことは忘れないよ。じゃあな!
おら、行くぞお前たち!!」
ツンが額に手を当てつつそういうと、カンタダは子分たちを叩き起こした。
そして、彼らをつれて塔から飛び降りて行ったのだった。
あとに残されたのは、
( ^ω^)「あ!王冠見っけだお!!」
なんと!金の冠を見つけた!
( ^ω^)「さっそく王様に返しに行くお!!」
- 56: ◆PcO9DmzREo :2007/07/03(火) 22:00:21.33 ID:wb/8S4Yv0
- その時、ブーンの膝がガクンと頽れた。
安心して力が抜けたのだろうか。
ξ;゚听)ξ「「ブーン!?」」(´・ω・`;)
(;^ω^)「あれ、あれれ?」
気づいたときはもう遅かった。
いや、気づいたからこそであろう。
(;゚ω゚)「いいいいいでえええええええ!!!!」
彼の両脚を恐ろしいまでの痛みが走った。
ブーンの脚は疲労を通り越して、極度の筋肉痛に襲われていたのだ。
辺りはすっかり暮れていた。
暗い海を見下ろす塔の上方では、一人の男の悲鳴がいつまでも響いていたと言う。
こうして、ブーン達は金の冠を手に入れたのであった。
―――続く
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