( ^ω^)ブーンが伝説になるようです

3: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:05:55.13 ID:ILkHwYpy0
第12話 約束


―1―

(;´・ω・`)「まさか、あなたがエルフの女王様だったなんて…」

(;^ω^)「本当に驚きですお…」

ξ;゚听)ξ「本当よね…」

知って驚く意外な事実。
その事実を知らされた3人が、口々に感想を述べる。
3人が3人とも、語尾に三点リーダーをつけていた。

ξ゚听)ξ「あなたが女王様なら話が早いわ。
     ノアニールについて、詳しく教えてくれるかしら?」

从'ー'从 「わかりました。一飯の恩義もありますしね」

ツンがわけを尋ねた。それにワタナベが答える。
先程までののんびりした口調ではなく、ハキハキとしていた。
これが本来の彼女なのだろうか。



5: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:07:13.94 ID:ILkHwYpy0
从'ー'从 「あれは、私のお母様の代のことでした」



ワタナベには、年の離れたアンという姉がいた。
しかし彼女が赤ん坊のころ、人間の男と恋に落ちて駆け落ちしてしまったという。
エルフの宝、『夢見るルビー』を持ったまま。



从'ー'从 「当然、お母様はお怒りになられました。
     そしてその男の出身地であるノアニールに魔法をかけ、人々を眠らせてしまったのです。
     お母様は常日頃おっしゃっていました。お姉様はその人間の男に騙されたのだと」

(´・ω・`)「そんなことが…」



7: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:09:05.64 ID:ILkHwYpy0
話はわかった。
しかし納得できない。

( ^ω^)「女王様」

ブーンは静かに口を開いた。
ワタナベがかすかに首をかしげる。

他人の家庭の事情に口を出す気は毛頭ないし、先代女王の気持ちもわかる。
しかしその腹いせに村人を眠らせるというのはいかがなものかと思った。

( ^ω^)「その村人、どうにか魔法を解いていただけないものかお?」

巻き添えになった彼らはたまった物ではないだろう。
眠っている間は意識がないのがせめてもの救いか。



8: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:10:11.17 ID:ILkHwYpy0
しかし、彼女は目を瞑ってゆっくりと首を振ると、

从'ー'从 「無理なのです」

きっぱり一言、断言した。

( ^ω^)「なぜですお?」

从'ー'从 「お母様の魔法はとても強力で、かけた本人にしか解くことができません。
     なにせ、10年間その力は弱まっていないのですからね」

(´・ω・`)「10年間…」

ξ;゚听)ξ「それはすごいわね…」

10年、という数字にショボンとツンが思わず声を出した。
特にツンは魔法使いなだけあって、その強さが実感できる。

その強さをツンに問えば、

ξ゚听)ξ「そうねー。メラゾーマとマヒャドをいっぺんに使った、消滅呪文くらいかな」

という答えが返ってくるだろう。

それでも、あきらめるわけには行かない。
ブーンは食い下がった。



10: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:11:59.11 ID:ILkHwYpy0
( ^ω^)「何か手立てはないんですかお?」

それに対してワタナベの口から出たのは、ある意味予想GUYの答えだった。

从'ー'从 「あるにはあります」

( ^ω^)「あるのかお!?
ξ゚听)ξ   あるの!?
(´・ω・`)   あるんですか!?」

興奮した3人が同時に叫ぶ。

その手段とは、先ほど話に出た、『夢見るルビー』だ。
あれには代々の女王の魔力が詰まっている。
それを使えば、ノアニールに掛かっている魔法を、彼女でも解くことが可能だということらしい。

ξ゚听)ξ「なるほど。それなら確かにいけるかもしれないわね」



11: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:13:21.29 ID:ILkHwYpy0
しかし、肝心の場所はわからない。
そのルビーとやらはどこにあるのだろう。
ワタナベに聞いてみる。

从'ー'从 「そうですね。
     夢見るルビーかどうかは分かりませんが、南東にある洞窟から強い波動を感じます。
     もしかしたら、それがそうかもしれません」

( ^ω^)「把握しましたお」

その時、




从  从 「私は…」



12: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:14:56.74 ID:ILkHwYpy0
( ^ω^)「お?」

ワタナベが一瞬顔を伏せ、つぶやく。

从'−'从「私は、人間のことをよく知りません」

顔を上げたワタナベの口に、あの笑みはなかった。
その代わりといっては難だが、どこかさびしそうな、
怒っているような、そんな印象を受ける表情が彼女の顔に張り付いていた。

从'−'从「正確には、お母様の話でしか人間をしらないのです」

( ^ω^)「そりゃあ中には悪い人もいるけど、でも」

从'−'从「分かっています」

ブーンの言葉を遮り、ワタナベは言葉を続ける。

从'−'从「今日あなた方に出会って、それが分かりました。
     ですが、悪い人もいるのも事実でしょう?」

(;^ω^)「そ、それは…」



13: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:18:01.01 ID:ILkHwYpy0
从'−'从「ですから、その人間の男性が本当にお母様の言うような悪い人なのか。
     分かる証拠を、夢見るルビーと共に持ってきて下さい。
     それが私が村人を起こす条件です」

( ^ω^)「と言っても、どこを探せばいいのやら…」

ξ゚听)ξ「ま、何とかなるでしょ。そうとわかれば、さっさと行くわよ」

ツンが階段を下りていく。
続いてショボンも階段へと向かった。

ワタナベに手を振り、ブーンもツンの後を追おうと後ろを向く。
数段下りかけ、ブーンは足を止めてワタナベの方に振り向いた。



14: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:20:28.69 ID:ILkHwYpy0
( ^ω^)「そう言えば、昨日はお一人で何をしてたんですかお?」

从'ー'从 「月光浴ですよ。月の光は魔力を蓄えるのに必要不可欠なのです」

( ^ω^)「なるほどだおー」

彼女の顔にはあの笑顔が戻っていた。
安心しつつ、ブーンは納得する。

ξ゚听)ξ「ちょっと、何やってんの!さっさと行くわよ!!」

ブーンがうなずいていると、背後からツンの刺々しい声が聞こえてきた。

Σ(^ω^;)「おっ!今行くから待ってお!!」

( ^ω^)「それじゃあ、行ってきますお!」

ブーンは背後の少女に声を投げかけると、あわてて正面に向き直る。
そしてぺこりとお辞儀をして、彼は足早に幼馴染のあとを追いかけて行った。

その後ろ姿を見て、ワタナベは思う。
ああ、彼らは何と気持ちのいい連中なのだろう――― と。



16: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:21:44.35 ID:ILkHwYpy0
―2―

ワタナベの言った洞窟はすぐに見つかった。
少し逡巡してから中に入る。

予想通り、中は暗くてじめじめしていた。
暗いのはツンが片手に留めたメラの炎でなんとかなったが、
どこかで水の落ちる音が響くのはどうしようも無かった。

それよりもやっかいなのは、地上では見たこともないモンスターたちだ。

ルカナンでこちらの守備力を下げてくるバリィドドッグや、
ヒャドを唱えてくるバンパイアなど、モンスターの種類は多種多様だ。
それらが大挙して押し寄せてきた。

ショボンのホイミでなんとかしのいでいたが、彼のMPも残り少なくなっていく。
17: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:23:14.65 ID:ILkHwYpy0
そんな折、不思議な泉を見つけた。
これを飲むとあら不思議。体力があっという間に回復するのだ。

そういえば、途中で出会った神父が言っていた。
この洞窟に聖なる泉があるらしいと。この泉がそうなのだろうか。

ともあれ、ブーンたちはここで休憩をとることにした。
口元から滴る水を手の甲で拭いつつ、腰を下ろす。

( ^ω^)「やっぱり洞窟はモンスターが多いおね。
      僕、少し眠くなってきたお」

ξ゚听)ξ「私も…」

(´・ω・`)「僕もだよ。魔法の使いすぎかなぁ」



19: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:25:03.51 ID:ILkHwYpy0
洞窟の中だと言うのに、まるで陽だまりの中にいるかの如くのんびりと気持ちいい。
本当にこのまま眠ってしまいそうだった。

何か変だ。どこかおかしい。
頭の中は次第に警告の音を発していた。
しかし、眠気は容赦なくブーンに襲い掛かる。

周りでは水の落ちる音が響いていた。

うるさい。眠れないじゃないか。
ボーっとする頭でそんなことを考えていると、その一滴がブーンの首筋に落ちた。

(;^ω^)「うひゃあおぅ!!」

突然の不意打ちに思わず奇声を上げるブーン。
その水の冷たさと自ら発した声が、彼の意識をはっきりとさせた。
寝ぼけた眼(まなこ)に映ったのは、毒々しい紫色をしたキノコの群れだった。

マタンゴ。

甘い息でこちらを眠らせてくる、厄介な敵だ。
それらが集団でこちらに迫っていた。

ブーンの声に驚いた様子の彼らは少々まごつくも、いっせいにこちらを取り囲んだ。



21: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:27:00.57 ID:ILkHwYpy0
(;^ω^)「2人とも、起きるお!敵だお!!」

ブーンが剣を抜きながら叫んだ。
その叫び声は洞窟内の壁に反響して木霊し、2人の目を覚まさせた。

ξ;゚听)ξ「ちょっと、何よこれ!私達、いつの間に囲まれてるの!?」

(´・ω・`)「そうか。さっきの異常な眠気はこいつらの…」

ショボンが冷静に分析している間にも、マタンゴの輪はどんどん狭まってくる。



22: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:28:42.77 ID:ILkHwYpy0
刹那。
突風が洞窟内を舞った。ショボンのバギだ。
風はマタンゴらを巻き上げ、キノコの雨を降らせる。

そこにツンのベギラマが追い討ちをかけた。
ベギラマは、ギラの上位呪文である。
まだバギの風が残っているところへの炎系呪文。

もちろん炎は一気に燃え上がり、通常のベギラマよりも威力が格段に上っている。
炎が鎮火した跡には、消し炭となったマタンゴが嫌な臭いを立てているのみであった。

ξ゚听)ξ「何してんの。さっさと行くわよ?」

(;^ω^)「おー…」

ブーンが振り上げた右手をそっと下ろす。
やり場のないやる気が、彼の胸に溜まっていた。



24: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:29:52.37 ID:ILkHwYpy0
―3―

それからまたしばらく進む。
やり場のないやる気は、再び襲い掛かってきたモンスター共で晴らした。

やたらと広いフロアで階段を探すのに手惑い、やっとこさ見つけて降りる。
唐突に、水の流れる音が聞こえてきた。

角を曲がった途端に視界が開け、橋が掛かっているのが見える。
周囲は水で囲まれており、橋の先は島のようになっていた。

その『島』は8本の石柱で囲まれている。
その中心には宝箱がぽつんと置かれていた。

宝箱を開ける。
中には大粒のルビーと、一通の手紙が入っていた。



25: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:31:28.21 ID:ILkHwYpy0



『お母様。先立つ不幸をお許しください。
 私達はエルフと人間。この世で許されぬ愛なら…
 せめて天国で一緒になります……。     アン』



28: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:34:19.54 ID:ILkHwYpy0
アン。女王の姉と同じ名前だ。
そして『エルフと人間』。もう間違いない。
これがワタナベの姉が母親にあてた手紙であることは、確実だ。

ξ゚听)ξ「やっぱり、2人は本当に愛し合っていたのね…」

ツンがしみじみとつぶやいた。

( ^ω^)「それに、この手紙が女王様の言ってた証拠になるお」

(´・ω・`)「そうだね。それじゃ、帰ろうか」

もと来た道を引き返そうと、後ろを振り向いたブーンとショボンをツンが引き止めた。
試したい呪文があるらしい。

ツンがその呪文を唱える。
途端、目の前が真っ白な光で覆われた。

ルーラと似ているけれど、少し感じが違う。
あの時は周りの空気が渦巻いていたが、今度はそんなことはなかった。

代わりに、胃がキュウッ縮むような感覚がする。
暗転する視界。ブーンの意識は、闇へと落ちていった。



29: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:35:59.47 ID:ILkHwYpy0



……
………


どのくらい経ったのだろうか。
気が付くと、ブーンは外にいた。暗闇に慣れた目に太陽の光がまぶしい。
ツンとショボンはすでに起きていて、その辺に倒れていた木の幹に座っていた。

まだ意識がハッキリしていない。
僕は誰だっけ?どうしてこんなところにいるんだ?

ξ゚听)ξ「やっと起きたわね」

ツンの呆れたような声が聞こえる。
その声でブーンは完全に目覚めた。

そうだ。ツンが洞窟脱出の呪文を唱えた途端、意識を失ったんだっけ。
ブーンは体を起こすと、元気よく言った。

( ^ω^)「おっおっお。早く女王様に村の人たちを起こしてもらわなくちゃだお」

(´・ω・`)「じゃあ行きましょうか。あんまりお待たせするのもあれですし」

ツンとショボンが荷物を背負い直しながら立ち上がるのを見て、ブーンも慌てて2人に習う。
そして彼らはエルフの隠れ里へと歩を進めたのであった。



31: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:37:33.41 ID:ILkHwYpy0
―4―

从'ー'从 「確かに、受け取りました」

里に着いたブーンたちは早速女王に謁見し、夢見るルビーを彼女に手渡した。
ブーンが一歩進み出て、アンの手紙を差し出す。

( ^ω^)「それと、これがルビーと一緒に入ってましたお。お姉さんの手紙ですお」

从'ー'从 「お姉様の…」

ワタナベはその手紙を読むと、溜息をついた。

从'ー'从 「やはり2人は愛し合っていたのですね。
     分かりました。では…」

ワタナベはルビーを両手で持つと目をつぶり、なにやらつぶやいた。
すると、ルビーが激しく輝きだす。

目もくらむようなピンク色。
思わず目を瞑り、光が収まるのを待つ。
そして恐る恐る目を開くと、光の粒子が宙を舞っていた。

その色は光と同じ、鮮やかなピンク色だ。
先ほどとはうって変わって穏やかな光だった。
優しい光だな、とブーンは思った。

やがてその粒子も収まり、ワタナベは目を開ける。



33: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:39:24.88 ID:ILkHwYpy0
从'ー'从 「これで大丈夫。村人達は目を覚ましているはずです」

( ^ω^)「ありがとう…ございましたお…」

まだ、どこかボーっとしているブーンであった。

从'ー'从 「さぁ、行きなさい。あなたたちにはまだすることがあるんでしょう?」

( ^ω^)「分かりましたお。本当にありがとうございましたお」

ブーン達は深々とお辞儀をすると、城を後にした。
彼らを見つめ、女王はつぶやく。



35: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:41:10.21 ID:ILkHwYpy0
从'ー'从 「本当にがんばって…ね。あなた達はこれから、数多くの困難に立ち向かうのだから…」

視線を落とした。
手の中にあるはずのエルフの宝。
しかしそこには、彼女の手のひらが見えるばかりであった。
村人を目覚めさせるために魔力を使い切ったルビーは、音も無く消え去っていたのである。

直後、彼女の悲鳴が城内に響き渡った。

从;'ー'从 「あれれー?ルビーがないよぉ〜?」



36: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:42:28.10 ID:ILkHwYpy0
―5―

エーファンの森を抜け、街道に入る。
このまま道に沿って行けばノアニールはもうすぐそこだ。

ところで、このように世界に数多くある街道だが、一体誰が整備しているのだろうか。
ブーンはいつもそれが気になっていた。

ほどなくして、ノアニールの村が見えてきた。
そこは数日前とは比べ物にならないほど、活気に満ちていた。
更に、ほとんどの村人が長いこと眠っていたような気持ちになっていた。
実際その通りなのだが。

中には、道の真ん中で眠っていたことを不思議に思っている人物もいた。

目覚めた村人からは、色々な話を聞けた。
南西にあるアッサラームという町で噂されている魔法の鍵のこと。
ブーンの父、オルテガがこの村に立ち寄り、村人達が眠らされる前に立ち去ったこと。
中でも、ワタナベの姉であったアンと駆け落ちした、男の母親を見つけたときには絶句した。



38: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:43:34.30 ID:ILkHwYpy0
(;^ω^)「言った方がいいのかお…?」

ξ゚听)ξ「やめときなさい。
     彼女は、あの人が死んだことを知らないみたいだし」

(´・ω・`)「ですね。わざわざ悲しませることはありません」

と、このように口々に止められ、結局ブーンは2人の意見に従った。



39: ◆PcO9DmzREo :2007/07/27(金) 23:44:20.84 ID:ILkHwYpy0

老人の家に行くと、いたく歓迎された。

いつ終わるともわからない村人の眠り。
それが10年間経った今、ようやく開放されたのだ。
喜ばないわけが無かった。抱きしめられ、頬ずりされたのにはさすがに閉口したが。

彼はブーンたちに、ぜひ家に泊まって行って欲しいと懇願した。
歓迎会を開きたいと言うのだ。

初めは3人も遠慮していたのだが、老人の根気に負けて、遂には泊まって行くことになってしまった。
その歓迎の宴は、イマイチ状況を把握できていない村人全体を巻き込むほど、賑やかになったそうな。

翌朝。
いつまでも礼を言い続ける老人にさよならを言って、3人は村を出た。
とりあえずの目標である魔法の鍵。目指すのは、その噂が流されていると言う、アッサラームだ。



                                            第二章 終
                                  TO BE CONTINUED…



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