( ^ω^)ブーンが伝説になるようです

4: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:07:17.67 ID:wuC9zfuB0




                   第三章 王宮に吹く風





5: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:08:14.98 ID:wuC9zfuB0
第13話 商業都市アッサラーム


―1―

太陽が高い。
まるで真夏日のように暑い日だった。歩いていると次から次へと汗が吹き出してくる。
その汗をぬぐいつつ、カノール山脈手前の森を抜けて東へ進んだ。
その後フェイタル平原を南東へ約180km。
商業都市アッサラームが見えてきた頃には、日はかなり傾いていた。

この街は、昼と夜とで二つの顔を持つ。
昼間は閑散としていて、店は数える程しかない。
しかし夜になるとどこからとも無く行商人達がやってきて、一代センセーションが巻き起こるのだ。

中でもこの街の目玉は、ジプシーの踊り子達による『ベリーダンス』。
いわゆるキワドイ服装をした美女達がラインダンスを踊る姿は、年頃の男性客に絶大な人気を誇っていた。



6: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:09:33.70 ID:wuC9zfuB0



この街が商業都市として発展したのには、理由がある。
それは、ここが陸路でアーリア砂漠に入る唯一の経路であり、最後の拠点ということだ。
ここから先はオアシスの国、イシスまで延々と砂漠が続く。
十分な蓄えをしておかなければ砂漠を越えることは難しいだろう。

そこに目をつけた悪徳商人ももちろんいる。
とんでもない値段で道具や装備を吹っかけてくるのだ。

そして日もすっかり暮れ、雑踏と喧騒が街を包み始める。
その様子はまるで、街が生き返るようだ。
そのとき、そんな雰囲気に全く似合わないのんきな声が街の入り口からあがった。



7: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:12:08.42 ID:wuC9zfuB0
( ^ω^)「ここがアッサラームかおー」

ξ゚听)ξ「随分と賑やかね」

(´・ω・`)「そうですね。これ以降イシスまで街はありませんから」

( ^ω^)「イシス?」

(´・ω・`)「ええ。オアシスの城、と呼ばれているようです。
      先ほど街の人が噂してるのが聞こえました」

ξ゚听)ξ「ふーん。ということは、ここで砂漠超えの準備をするってわけね」

(´・ω・`)「そうですね」

完全におのぼりさん状態である。
あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロしながら街中を練り歩く。

なんとも賑やかな街だった。
食べ物屋、道具屋、武器・防具屋など、何でもござれだ。



9: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:13:29.46 ID:wuC9zfuB0

その中でも、一際目を引く人だかりがあった。
そばに近づいて精一杯背伸びをし、黒山の上からその中心を伺う。どうやら野外ステージのようだ。
綺麗な踊り子が直線状に並び、同じ振り付けで踊っている。所謂ラインダンスというやつらしい。
その中の一人―― ブーンは立ち並ぶ女性達の中でも、彼女が特別可愛いと思った ―― と目が合った。
彼女もこちらに気づいたらしく、こちらにウインクをして来た。

(*^ー゚)

(*^ω^)「…………」

ξ゚听)ξ「どしたの?」

(;^ω^)「な、なんでもないお!」

突然振って沸いたツンの言葉に慌てて取り繕って、女性から視線を引き剥がす。
そして踵を返すと、足早にその場を通り過ぎた。



10: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:15:10.27 ID:wuC9zfuB0
ところで、このような連中が先ほど述べた悪徳商人に一番引っかかりやすい。
その証拠をしめすかのように、一人の男が声を掛けてきた。

( `ハ´)「おお!私の友だ…あれ?」

(´・ω・`)「あ」

ξ゚听)ξ「ん?」

( ^ω^)「お?」

どこかで見たことある顔だ。
よくよく思い出してみるとそれは、ロマリアのすごろく場で出会った商人だった。

(´・ω・`)「その節はどうもすみませんでした…」

ショボンが頭を下げる。
すると彼は両手と頭を振ると、

( `ハ´)「別にいいアルね。おいちゃん、気にしてないね。
      それより、何か買っていかないアルか?砂漠を越えるには色々と必要アルよ」

と申し出て来た。
流石にあんなことをして何も買わないのも気が引ける。
そう思ったブーンは彼の店で薬草を買うことに決めた。



11: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:18:23.64 ID:wuC9zfuB0
( ^ω^)「そうだおね。それじゃあ、薬草10束くれお」

( `ハ´)「薬草10束で500ゴールドね」

( ^ω^)「500G?」

―――作者から―――

この辺りでは、アリアハンやロマリアなどの常識は全く通用しない。
…というのは、値段がすごくいい加減なのだ。
日常の値打ちを知らない初めての外国人はいったいいくらなのか見当も付かず、
すごくカモられてしまう。
しかし、ここの世界ではカモることは悪いことではない。
騙されて買ってしまったヤツがマヌケなのである!



12: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:22:03.30 ID:wuC9zfuB0


ここで買い物の仕方を解説しよう。
例えば―――この場合、僕はお見通しだお!という態度をとり、

( ^ω^)「500G?
      ちょwwwwバカにすんなおwwwww
      たけーってレベルじゃねーおwwwwwww」

と大声で笑おう。すると

( `ハ´)「いくらなら買うね?」

と客に決めさせようと探ってくる。

( ^ω^)「10個で100Gにしろお」

自分でも、こんなに安く言っちゃって悪いなぁ〜〜〜
というくらいの値を言う。

―――すると



13: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:24:50.07 ID:wuC9zfuB0

( `ハ´)「ねーアルよwwwwww」

本気(マジ)〜〜〜?常識あんの〜〜〜と人を小バカにした態度で……

( `ハ´)「お客さんとても買い物上手ね。
     でもそんな値で売ってたら、ワタシの家族全員飢え死にアルね」

と、首をカッ切るマネをしてくる。
しかしここで気負けしてはいけない。

( ^ω^)「じゃあ他の店で買うお」

帰るマネをしてみよう。

( `ハ´)「わかったある!知り合いのよしみで10個300Gにするよ」

といって引き止めてくる。

( ^ω^)「125Gにしてくれお」

値段交渉開始―――ッ。



15: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:26:08.12 ID:wuC9zfuB0
( `ハ´)「275」

( ^ω^)「150」

( `ハ´)「250」

( ^ω^)「175」

( `ハ´)「225」

( ^ω^)「200」

( `ハ´)「200」

( ^ω^)「200!買ったお!」

そのときだった。
背後から、女性の物と思われる可愛らしい声が聞こえた。



16: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:28:42.89 ID:wuC9zfuB0


―2―

ビビアンは踊り子だ。
彼女は孤独だった。聞けば、生まれてすぐ親に捨てられたらしい。
もの心ついたとき、彼女はすでにジプシーの一員として暮らしていた。
その手ほどき、つまり彼女をジプシーに入れたのは中年の男性だと彼女は聞いている。
ジプシーは砂漠を旅する放浪者の集まりだ。最近はロマとも言うらしいが。

狩猟と流浪の日々。
時には生計を立てるため、立ち寄った街で大道芸などをやるときもあった。

そのうちの一つ。
毎年この季節に立ち寄るアッサラームでの大道芸は、彼女達の生活の要だった。
一年の稼ぎの半分はこの街で稼いでいた。

組み立て式の野外ステージを組み立て、サーカスさながらの見せ物を出す。
ジャグリングや玉乗り、某雑技団も真っ青な曲芸の数々など。



18: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:32:08.83 ID:wuC9zfuB0

その中でも、場が一際沸き立つ見せ物がある。
大道芸の締めに行う、『ベリーダンス』という踊りだ。
このダンスでビビアンは主役を張っていた。


                  ※


しばらく踊っていると、三人組の旅人の一人と目が合った。
いたずら心でウィンクをしてみる。

(*゚ー゚)「…………」

(*^ω^)「…………」

まるで、時が止まったかのような感覚がビビアンを襲った。
それほどまでに長く、それほどまでに短い時。
しかし次の瞬間には彼は連れらしい女の子に呼ばれ、慌てて向こうへ行ってしまった。



19: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:34:54.69 ID:wuC9zfuB0

自然と溜息が漏れる。

溜息?なぜ。
あの人とは、ただ目があっただけ。
それ以上でもそれ以下でもないはずだ。
そう。ただ、緊張が解けただけなんだ。

ビビアンはそう思って自分を納得させた。
しかしその心には、いつまでももやもやした何かが残っていた。

サーカスが終わって、自由時間が与えられた。
夜風に当たろうと、出店などを物色しつつ、適当にぶらつく。
その時、声が聞こえた。なにやら数字を連呼しているようだ。

「275」

「150」

「250」

「175」

大方、値段の交渉でもしているのだろう。
ビビアンの足は自然とそちらへと近づいていった。



20: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:37:30.82 ID:wuC9zfuB0
やがて、声の持ち主らしき姿が見えてきた。
彼らの顔は暗闇に隠れていて見えなかったが、声からして若い男と中年の男性といった所だろう。
その間にも数字はどんどん引き下げられていく。

(    )「225」

(    )「200」

(    )「200」

(    )「200!買ったお!」

交渉が成立したようだった。
何を買ったのだろうと、興味本位で遠めに除きこむ。

客が商品を受け取ろうと一歩前に出る。
その時、カウンターに載せていたカンテラの明かりが客の顔を照らし出した。

その瞬間、彼女は息を呑んだ。
彼女の目に飛び込んできたのは、昼間ウィンクをした男性だった。
彼の手には金。そして店主の手には10束の薬草が握られている。

それを見た瞬間、彼女は右手人差し指をビシ、と突きつけて声を出していた。



21: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:40:21.74 ID:wuC9zfuB0


―3―

(*゚ー゚)「異議あり!!」

( `ハ´)「ん?何アルか?」

( ^ω^)「お、君は確か……」

ブーンが振り向くと、そこには夕方ウィンクされた女性が立っていた。
よく見ると、彼よりも年上のお姉さんという感じだ。

服装はと言うと、これがかなり露出度が高い。
一見すると水着と見紛うが、腰についている腰みのが
ダンサーの衣装であることをかろうじて匂わせている。
足にはサンダルを履いていた。

そんな女性が指を突き出して仁王立ちしていた。
何だろう?とブーンが訝しんでいると、いきなり甲高い声が聞こえてきた。

ξ゚听)ξ「何っ?アンタ、この娘のこと知ってんの!?」

ツンだった。
ブーンの呟きにツンが敏感に反応したのだ。



22: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:44:01.66 ID:wuC9zfuB0

(;^ω^)「い、いやその…」

ツンに詰め寄られているブーンに苦笑しながら、女性は彼らに近づく。
そして、一言言い放った。

(*゚ー゚)「その値段設定は間違っているわね」

(;`ハ´)「ど、どこが間違っているアルか!?」

(*゚ー゚)「一般に出回っている薬草の値段は人束8G。
    10束でも100Gにも満たないわ」

どこから出したのか資料らしきものを右手で持ちつつ、
左手の甲で叩きながらビビアンは解説を始めた。

(*゚ー゚)「それに対して、あなたの値段設定はそれを倍も上回る。
    これはぼったくり以外の何物でもないじゃない!!」

ずっぎゃあああん!!という効果音がどこからともなく聞こえたような気がした。
商人がうろたえているのが手に取るようにわかる。



23: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:48:12.11 ID:wuC9zfuB0

(*゚ー゚)「と言うわけで、その120ドルはボッシュートです」

(;`ハ´)「ちょ、待」

(*゚ー゚)「だが断る」

彼女がそう言ったと思った次の瞬間、
気づけば金の入った小袋は女性の右手に移っていた。

(;`ハ´)「あ、あれ?」

ξ;゚听)ξ「早!」

(;´・ω・`)「何者ですかこの人!?」

三人が口々に驚きの声を上げる。目にも留まらぬ早業だった。
この人、盗賊としてもやってけるんじゃないか?ブーンはそう思った。



24: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:52:40.98 ID:wuC9zfuB0
気づくと、彼女が目の前にいた。
そして小袋をブーンに手渡しながら、こう告げた。


(*^ー゚)b「気をつけてね。この辺はこういった輩が多いんだから」

ウィンクをし、人差し指を唇の前に置いて「シー」のポーズをとる。
そんな彼女はとても魅力的だった。

(*^ω^)「ありがとうだお!気をつけるお!」

とそこに、甲高い怒鳴り声が割り込んできた。
ツンだ。額のこめかみに青筋をたて、それがピクピクと動いている。

ξ#゚听)ξ「ちょっと!さっきからなんなのよアンタ!!」

(*゚ー゚)「私?私はビビアン。ただの踊り子よ」

ξ#゚听)ξ「そういうことを聞いてるんじゃない!
       アンタ、ブーンとどういう関係なの!?」

(*゚ー゚)(ああ、そういうこと)



29: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:00:22.12 ID:wuC9zfuB0
彼女は勘がいいらしい。
たちどころに、ツンのブーンに対する思いに気付いたようだ。

(;`ハ´)「あ、あのー…」

完全に置いてけぼりを喰った商人がおずおずと声をかける。が、

ξ#゚听)ξ「うっさい!!!」

(;`ハ´)「ひいいっ」

ツンが一蹴すると彼は慌ててどこかへ逃げていってしまった。
そんな彼を哀れみの眼差しで見つめるブーンとショボンの姿がそこにあった。

ξ゚听)ξ「で、どうなのよ?」

なおも食い下がるツンに、ビビアンはあっさりととんでもないことを言い放った。

(*゚ー゚)「私ね、彼のことが好きになっちゃったみたい」

ξ;゚听)ξ「え!?」

(;^ω^)「ちょwwwww」

それは、決して言ってはいけない禁句。
それは、彼女のトリガーを引く言葉だった。



26: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:55:35.89 ID:wuC9zfuB0

ξ  )ξ「…………」

うつむいた顔の表情はわからない。
しかしその肩はぶるぶると振るえ、まっすぐ地に向かって降ろされた両の拳は硬く握り締められていた。

(*゚ー゚)「う、そ」

不意に女性は意地悪く微笑み、真実を口にする。

(*゚ー゚)「彼のことは、さっき偶然目が合って覚えてただけよ」

ξ# )ξ

そのとき、何かが切れた音がした。
そしてその直後。

ξ#゚听)ξ「ぬぁんですってぇ!!!!」

砂漠の夜空を貫かんとばかりに発せられた大音声は、ツンのものだった。
周囲の人間が何事かと振り返る。



28: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 22:58:14.93 ID:wuC9zfuB0

彼女は先程とは違い、握りこぶしを振り上げていた。
今にも女性に掴み掛らん勢いだ。

(;^ω^)「ちょ、ま、待てお!」

(;´>ω<`)「そうですよ!落ち着いてください!!」

慌ててブーンとショボンが彼女を止めに入る。
ブーンは前から彼女の腕を押さえ、ショボンは羽交い絞めをするという格好だ。
その二人を振りほどこうと、ツンは手足を振り回して暴れている。

(*゚ー゚)「あらあら。そんなに暴れてみっともないわよ、お嬢ちゃん」

女性が『お嬢ちゃん』の部分を意識して声色を変える。
完全にツンを挑発していた。

ξ#゚皿゚)ξ「キィーッ!!もう許せない!!ちょっとあんたたち、離しなさいよ!!」

ツンが歯を食いしばって怒鳴るが、そうは問屋が卸さない。
今ここで彼女を離しせば何をするかわかったもんじゃない。



30: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:03:01.95 ID:wuC9zfuB0

彼女は先程とは違い、握りこぶしを振り上げていた。
今にも女性に掴み掛らん勢いだ。

(;^ω^)「ちょ、ま、待てお!」

(;´>ω<`)「そうですよ!落ち着いてください!!」

慌ててブーンとショボンが彼女を止めに入る。
ブーンは前から彼女の腕を押さえ、ショボンは羽交い絞めをするという格好だ。
その二人を振りほどこうと、ツンは手足を振り回して暴れている。

(*゚ー゚)「あらあら。そんなに暴れてみっともないわよ、お嬢ちゃん」

女性が『お嬢ちゃん』の部分を意識して声色を変える。
完全にツンを挑発していた。

ξ#゚皿゚)ξ「キィーッ!!もう許せない!!ちょっとあんたたち、離しなさいよ!!」

ツンが歯を食いしばって怒鳴るが、そうは問屋が卸さない。
今ここで彼女を離しせば何をするかわかったもんじゃない。



31: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:06:21.98 ID:wuC9zfuB0

(;^ω^)「いいかげん暴れるの止めてくれお!」

(;´>ω<`)「あなたもこれ以上、ツンさんを挑発しないでください!!」

(*゚ー゚)「あはは、ごめんごめん。そこの彼女があまりにも可愛くてつい、ね」

目を弓なりに細め、口元にはニヤリと笑みを浮かべる。
そして腰に手を当て、羽交い絞めにされているツンの顔に自らの顔を近づけた。
そして、ツンの顔をなめるように見つめる。

(*゚ー゚)「ふぅーん」

ξ;゚听)ξ「な、何よ」

(*゚ー゚)「あなた、ツンさんって言うんだ」

ξ゚听)ξ「だったらどうだって言うのよ」

(*゚ー゚)「私はビビアン。よろしくね」

そう言うと彼女、ビビアンはにっこりと笑って右手を差し伸べて来た。
握手しようとでも言うのか。



32: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:09:11.57 ID:wuC9zfuB0

ツンは一瞬あっけにとられたような表情を作ると、すぐにむっとした顔に戻した。
そして手を握り返そうとし ―― ブーンとショボンが未だに自分を抑えているのに気がつく。

ξ゚听)ξ「離してよ。もう大丈夫だから」

二人が戸惑いがちに彼女を開放すると、差し出された手を握り返そうと
自らも同じ方の手をビビアンに向ける。

そうして今にも二人の手が触れ合いそうになった瞬間だ。
ツンの腕が、いきなりぐいと引き寄せられた。
そして引き寄せた張本人のビビアンは口をツンの耳元に近づけると、こうささやいた。



(*゚ー゚)(あの男の子のこと、ブーンって言ったっけ。好きなんでしょ?
    早く告白しないと、すぐ他の女に取られちゃうわよ?)


ξ゚听)ξ(なっ…)

瞬時にツンの顔が真っ赤になる。
それをみてビビアンはほくそ笑むような笑みを浮かべた。



33: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:11:15.35 ID:wuC9zfuB0

ξ////)ξ
(う、うるさい!!別にそんなんじゃないわよ!!)

相手が小声だったからか、思わず自分でも小声でそう返すツン。
しかし赤面しているので、そのセリフに説得力はあまりなかった。

ξ゚听)ξ「もういい!」

そう言ってツンは腕を振りほどき、ブーンたちの方に向き直ると二人に声をかけた。

ξ゚听)ξ「行くわよ、あんた達!」

そう言って彼女はずんずんと前へと進んでいく。
その様子を見て、ブーンたちは慌てて彼女の後を追いかけた。

去り際に、ブーンが振り向いてビビアンに言った。

( ^ω^)「お金、ありがとうございましたお!!」

(´・ω・`)「ブーンさん、早く!」

(^ω^ )「おっ、待ってくれお!」



34: ◆PcO9DmzREo :2007/08/07(火) 23:13:00.17 ID:wuC9zfuB0

だんだんと小さくなってゆく三つの人影を見ながら、ビビアンはつぶやいた。

(*゚ー゚)「あーあ、私も恋したくなっちゃったなぁ。
    きっとどこかには、私の運命の人がいるはずよね。
    ……よし、決めた!!」




その夜、アッサラームから一つの大きな光が消えた。
机に彼女の置手紙を見た団長が涙を流しのは、言うまでもない。
そう、言うまでもないのだ―――。


旅に出た彼女が「運命の人」と出会うかどうかは、また別のお話。


                                      ―――続く



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