( ^ω^)ブーンが伝説になるようです

2: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:26:38.67 ID:m+tTxCzN0
第14話 砂上の楼閣


―1―

从´‐ _‐)「……」

夜風が頬を優しくなぜて行く。今夜もここ、砂漠の国イシスは平和だ。
巷では何かと物騒な噂もあるが、そんな気配は微塵も感じさせない。
彼は土を固めて作られた王宮のバルコニーに所在無く立っていた。いや、何もしていないというわけではない。
本来なら女人禁制であるはずのこの城で数少ない男性の彼は、ここの兵士長兼見張り番だった。



3: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:28:12.68 ID:m+tTxCzN0

天を仰いでいた顎を引き、城下を見下ろす。
彼の目は薄く閉じられており、それで物が見えるのか甚だ疑問だった。
褐色の肌は筋骨隆々で、黒い髪は後ろに流れるがままになっている。
そしてその顔は端整かつ精悍であり、しかしその表情は自らの思考を覆い隠そうとしている様に無表情だ。
腕と額にはそれぞれ太さの違う金色の金属でできた輪を嵌め、右手は槍を軽く握り、その先端を天に向けて構える。

服装はほとんど半裸に近かった。上半身などは半袖一枚だ。
そして裾のゆったりとしたズボンを履き、腰の部分には布が巻かれている。ずり落ちるのを防ぐためだろう。

そのとき、右後方から彼を呼ぶ声が聞こえた。
こんな時間に自分を呼ぶのは、女王である彼女しかいない。
聞き覚えのある声からも間違いはないだろう。間違いがあるはずはない。毎日聞いている声だった。

彼は早足でその声の持ち主の元へと向かった。靴底が床を蹴り、小気味よい音を立てる。
夜の廊下は薄暗く、等間隔に設けられた燭台と背後からの月明かりだけが頼りだ。
しかしそんなものは、一年の大半をここで暮らしている彼にとっては何の障害にもならない。



4: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:30:40.66 ID:m+tTxCzN0
幾分もしないうちに声の元へたどり着く。
決して豪華といえない椅子に座っているのは、この国の主(あるじ)、イシス女王だった。
若干二十歳でこの国を治める彼女は、多くの国民に支持されていた。彼女の素直さ故だろうと青年は考えている。

从´‐ _‐)「及びでしょうか。女王陛下」

手に持っていた槍を傍らに置き、跪く。
左足を立て、右拳を床につけた。立膝の格好だ。

男と同じ褐色の肌。髪は黒く、艶かしい。そして髪よりも黒く深い漆黒の双眸。
自分より二つも年下のこの美しい女性に頭を下げることに、彼は何の不満も感じなかった。
それどころか、多くの国民と同様尊敬の念すら覚えている。
この城の、この主の為に働くことに誇りをも感じていた。

そしてその主は

川 ゚ -゚)「私はそろそろ寝るぞ、ハナーム。お前もほどほどな」

睡魔に襲われていた。



6: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:31:31.01 ID:m+tTxCzN0
从´‐ _‐)「はっ。お気遣い感謝の極み」

下げていた頭(こうべ)を更に沈める。
そしてそのまま女王が欠伸混じりに立ち去るのを気配で感じ、侍女が彼女の寝室へと続く扉を開けるのを耳で聞いた。
再び今度は扉の閉まる音を聞き、ようやく彼は顔を上げて立ち上がった。

从´‐ _‐)「さて……」

誰ともなしにつぶやくと、彼、ハナームは歩き出した。その歩みは先程に比べると至極ゆっくりだ。
そして再び定位置であるバルコニーで立ち止まると、夜風を感じるために一人立ち尽くすのだった

彼の夜はまだまだ終わらない。



7: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:32:31.30 ID:m+tTxCzN0
―2―

同時刻。砂漠を行く三つの人影があった。
三人とも動物にまたがっていた。四足歩行の動物だ。
アッサラームで調達してきたものである。

( ^ω^)「月のぉ〜さばっくをぉ〜♪」

ξ゚听)ξ「定番よね」

( ^ω^)「おっおっお。砂漠を歩いたらこの歌を歌わなきゃだお。
     しかも今日は満月。まさにこの歌に相応しい情景だお」

(´・ω・`)「まぁ、僕たちは三人ですけどね」

ショボンが突っ込みを入れるが、二人はそれを華麗にスルー。

( ^ω^)「月のぉ〜さばっくをぉ〜♪」

ξ゚听)ξ「それにしてもアンタ、さっきからその部分しか歌わないわね」

(;^ω^)「おっ……」

ブーンがギクリといった様子で振り返る。
そこには訝しげな表情をした幼馴染の姿があった。



8: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:34:33.45 ID:m+tTxCzN0


ξ゚听)ξ「もしかして、その部分しかしらないとか……」

(;^ω^)「フヒヒwwwwwサーセンwwwwww」

ツンの指摘に、ブーンが笑ってごまかした。
なんともまぁのんびりした砂漠旅行である。

ところで、この動物は乗り心地がすこぶる悪かった。
歩くときに同じ前足と後ろ足を同時に出すので、振動がものすごいのだ。おまけにかなり臭い。
ツンがしょっちゅう気分の悪さを訴えるのも致し方ないと言えるだろう。
しかしそのため、彼らの足は遅々として進まなかった。



10: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:36:40.26 ID:m+tTxCzN0

ξ;゚听)ξ「そろそろ休みましょうよ……」

(;^ω^)「またかお?」

ξ;゚听)ξ「しょうがないじゃない。この動物、すごく揺れるんだもの……」

ツンの言葉にはいつもの覇気がない。
しかたないので、彼らは休憩をすることになった。
もう夜も遅い。今夜はここで野宿せざるを得ないだろう。

ここ、アーリア砂漠は亜熱帯砂漠だ。空気は乾燥している。
加えて昼は暑く、夜は寒かった。そのため、寝袋は必要不可欠だ。
水はツンの出すヒャドでどうにでもなる。

彼らは四足歩行動物――ラクダと言うらしい――から荷物を取り出して寝袋を地面に敷き、その上に座った。
火を燃やす薪がないのでカンテラをつけ、携帯食料を口にて夕食とした。
この携帯食料は量こそ少ないものの、一食に必要なカロリーを十分に満たすという優れものだ。
どれもこれも、この砂漠越えのためにアッサラームで買い求めたものである。



11: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:37:47.01 ID:m+tTxCzN0

食事(と言っても一口で終わってしまったが)の後、これまでの旅を振り返ってみた。
アリアハンの驚くべき事実から始まり、ナジミの塔ではブーンの養父ともいうべき人に出会った。
そして盗賊の鍵を授かり、レーベで彼の弟と言う人から魔法の玉を譲り受けたのだった。
その後玉で壁を爆破し、旅の扉をくぐったときには本当に死ぬかと思った。
そしてロマリアでの盗賊団との戦い。あれで三人の結束がますます強固なものになったのは言うまでもない。
そういえば、ドクオとか言ういけ好かない武闘家にも出会った。今頃どこでどうしているのやら。





                 ※





そこまで省みたときだ。それは本当に突然の出来事だった。
周囲の砂が音を立てて勢いよく舞い上がったのだ。そして地面の下から現れたのは、地獄のハサミ。
姿かたちは軍隊ガニに似ているが彼らの体は緑色で、そのパワーは格段に勝っている。それが四匹。



14: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:39:31.09 ID:m+tTxCzN0
慌てふためきながらも鋼の剣を構え、応戦の体勢に入る。
シンプルで使いやすいこの剣はブーンのお気に入りだ。
それをとっさに振り上げ、地獄のハサミに向かって振り下ろした。
しかしその直後、鋭い音と共に剣は弾かれていた。

(;^ω^)「こいつ、ものすげぇ硬いお……」

舌打ちし、今度は横薙ぎに剣を振るった。
その攻撃もむなしく、鎧のような体に防がれてしまう。
やけになって縦、横、斜めあらゆる方向から斬激を繰り出すが、そのどれもが徒労に終わってしまった。

(;^ω^)「まじぃお。どうするお……」

焦りが出始め、攻撃が雑になってくる。
こうなったときが一番危ない。隙が出やすくなってくるのだ。

ξ;゚听)ξ「ブーンっ!?」

ツンのかな切声が聞こえたかと思ったそのとき、自身の体は横っ飛びに吹っ飛ばされ、砂の上をごろごろと転がっていた。
剣を振り上げることによって出来たわき腹の隙間を、そのハサミによって殴られたのだ。
四つんばいになってわき腹を押さえながら、その痛みと口に入った砂で咳き込む。



16: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:40:46.17 ID:m+tTxCzN0

そのときだった。
昼の砂漠のような光と熱風が辺りを包み込んだ。ツンの放ったベギラマだ。

ξ#゚听)ξ「よくもブーンをおおおぉぉっ!!!!」

ツンの両手の平から放たれている炎は彼女の怒りが具現化されたかのごとくすさまじい。
あっという間に周囲に燃え広がり、地獄のハサミたちを焼き尽くしてしまった。

ξ;゚听)ξ「ブーン、大丈夫!?」

炎を出し尽くすと彼女はブーンの方へ向き直り、心配そうな顔をして彼の元へ駆け寄ってきた。
そんな彼女を見て、ブーンはギクリと肩を震わす。
だんだんと近づいてくる幼馴染の姿。その背後に蠢く――緑色の、影。



17: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:41:01.69 ID:m+tTxCzN0







( ゚ω゚)「ツウウウウウウウウン!!」







21: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:42:36.81 ID:m+tTxCzN0


―2―

地獄のハサミがまだ残っていた。
体のあちこちから黒い煙を噴き出してはいるが、ツンの首を取るのに支障はないだろう。
思わず大声を上げたブーンはわき腹を手の平で抑えた。まだ痛みが引いていないのだ。
絶体絶命だ。

ξ゚听)ξ「え?」

ブーンの叫び声にツンは振り向く。そして見た。
地獄のハサミがその凶悪な歯の並んだ口から涎を垂らしながら、
その名の通り一番の武器であるハサミの影を彼女に落としているのを。

ξ;゚听)ξ「きゃああああああああっっっ!!!!」

悲鳴を上げる他には何もできないツンに向かって地獄のハサミはニタニタと笑い、そのハサミを振り上げた。



22: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:43:53.35 ID:m+tTxCzN0
そして次の瞬間――その体が一瞬ビクリと振るえたかと思うと、大きく傾いだ。
そしてそのまま地面に向けて倒れていったカニの化け物は、もう二度と起き上がることはなかった。

(;゚ω゚)「お……」

ξ;゚听)ξ「な、何なの……」

唖然とする二人に声がかけられた。ひどく落ち着いた声だった。

(´・ω・`)「僕の事を忘れないでもらいたいですね」

( ゚ω゚)「しょ……」

ショボンだった。
彼が手にしているのは、錫杖に小さな鉄球が鎖でつながれたモーニングスター。
一振りで複数のモンスターに攻撃できるのがその最大の特徴である。近くにあったすごろく場の景品だ。
なるほど。よくよく見れば確かに、今しがた倒されたモンスターの背後にはその鉄球がめり込んでいた。
多少とはいえ、焼けたことで鎧のような体が脆くなっていたのだろう。



23: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:45:50.58 ID:m+tTxCzN0
( ^ω^)「ショbξ;凵G)ξショヴォオオオオオオオン!!」

(;^ω^)「お……」

ブーンを遮って、ツンが泣きながらショボンに抱きついた。
その光景は見ていてあまり気持ちのいいものではないとブーンは思う。
なぜかはわからなかった。

(´・ω・`)「大丈夫ですか。怪我とかは?」

ξ゚听)ξ「うん、平気。ショボンが助けてくれたから」

(´・ω・`)「そうですか……おや、ちょっとここが切れてますね」

そう言ってショボンが指差したのは、ツンの二の腕の裏側だった。
そこには確かに色鉛筆で画いたような、赤い線が引かれていた。

ξ゚听)ξ「あ、ほんとだ。気がつかなかったわ。でもこれくらいなんともないわよ」

(´・ω・`)「駄目です。バイキンが入ったらどうするんですか。
     これくらいならホイミで一発ですし、遠慮しなくていいです」

ξ゚听)ξ「そう?それじゃあ、お願いしようかしら……」

毅然と言い放つショボンに気圧されたのか、しぶしぶと治療を頼むツンであった。



27: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:47:28.15 ID:m+tTxCzN0
(#^ω^)「はいはいはいはいはいはいはいはい!!」

とそこへブーンが手を揚げて割って入った。
なぜか不機嫌そうだ。

(#^ω^)「僕が治してあげるお!」

ξ゚听)ξ「いいわよ。ショボンにやってもらうから」

(#^ω^)「よくないお!ショボンは戦闘で疲れてるだろうから僕がやるんだお!」

(´・ω・`)「いや、僕は別に……」

(#^ω^)「僕だってホイミくらい使えるようになったんだお!いいから僕に任せるお!!」

ξ;゚听)ξ「何怒ってんのよ……」

(#^ω^)「別に怒ってなんかないお!!」

そう。別に怒ってなどいない。
ただ、ツンとショボンが仲良くしてるのを見ているうちになぜか胸がむかむかしてきたのだ。
その感情の正体にブーンが気づくのはもう少し後のことになるのだが……。

(´・ω・`)「やれやれ。それじゃあブーンさん、頼みましたよ」

ξ゚听)ξ「しょうがないわね。傷、残したら承知しないわよ」

(#^ω^)「まかせろお。ホイミ!」



28: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:48:58.32 ID:m+tTxCzN0
ブーンが手の平をツンの傷口にかざして呪文を唱えると、その傷を中心に黄色の丸い光が発生した。
その光はツンの傷をやさしく包み込み、たちまちのうちに傷が塞がっていく。
光がやんだころには、傷は跡形もなく消えていた。

ξ゚听)ξ「ん、上出来」

ツンが腕を振り上げ、自ら傷のあった場所を確認して言う。
どうやら傷は残らなかったようだ。内心でため息をつき、言葉を続けた。

ξ゚听)ξ「それじゃあ今夜はもう寝ましょうか。今日はいろいろあって疲れちゃったわ……」

(´・ω・`)「待ってください。そういえば、ブーンさんも怪我されてましたよね」

Σ(;^ω^)「おっ。ぼ、僕は大丈夫だお!」

ショボンのまるで今気づいたと言うような質問を、ブーンはあわてて否定した。
なんとなく、今はショボンの世話になりたくなかったのだ。



30: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:50:16.80 ID:m+tTxCzN0
(´・ω・`)「そんなこと言ったって……」

(;^ω^)「いっ!」

そういいながらショボンがわき腹を触る。
とたんに鈍い痛みがブーンを襲い、声を漏らしてしまった。

(´・ω・`)「ほらぁ。さぁ、鎧と服を脱いでください」

(;^ω^)「アッー!」

(´・ω・`)「……怒りますよ?」

(;^ω^)「すまんこ」

ξ゚听)ξ「いいからさっさと治してもらいなさいよ。こっちは早く寝たいんだから」

( ^ω^)「しょうがないおね……。じゃあ、お願いするお」

そう言ってブーンが上着を脱ぐと、ハサミに殴られた部分は赤黒く変色していた。
どうやら内出血しているようだ。

(;^ω^)「おー……」

それを見てブーンは思わず引いてしまった。
まさかそんなに腫れているとは思わなかった。



31: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:51:52.74 ID:m+tTxCzN0
(´・ω・`)「ほら、こんなに腫れてる」

(;^ω^)「だお、ね」

(´・ω・`)「ちゃっちゃとやっちゃいますね。ベホイミ!」

ショボンが呪文を唱えると、先程よりも若干大きく淡い黄色の光がブーンの傷を覆った。

見る見るうちに痛みが引いていく。
不気味な赤黒い肌も徐々に薄くなり、最後にはあの、紫と黄色が混じった独特の色になっていた。

(´・ω・`)「これでよし、と。あとは放っておけば時期によくなりますからね」

( ^ω^)「大分楽になったお。ありがとうだお」

ブーンが礼を言った。文句は言っていても、根は素直なのだ。
ところが、ここに素直でない少女が約一名。



33: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:53:11.56 ID:m+tTxCzN0
ξ゚听)ξ「終わった?じゃあさっさと寝るわよ。寝ないと健康によくないんだからね。
      べ、別にアンタの傷のことを言ってるんじゃry」

( ^ω^)「寝るのはちょっと待って欲しいお」

ξ゚听)ξ「何よ。まだなんかあんの?」

(;^ω^)「お腹すいたんだお。あんなちょぴっとじゃあ全然足りないお……」

ξ;゚听)ξ「あのねぇ……」

呆れたようにため息をつくツンを尻目に、ブーンは地獄のハサミを見つめていた。
未だにブスブスと音を立て、香ばしい香りが漂ってくる。

( ^ω^)「これ、喰えないかお……」

それらをじっと見ながら、ブーンが誰ともなしにつぶやいた。

ξ;゚听)ξ「はぁ!?ちょっ、やめなさい!!」

( ^ω^)「そうは言ってもお」

ξ゚听)ξ「やめなさいってば!ショボン、アンタからもなんか言ってよ!!」

(´・ω・`)「すみません。僕もおなかすいちゃってるんで……」

そう言ってショボンも、ブーンのほうへと歩いてゆく。
彼の目の先にいるブーンは、すでにカニの身を切り分けていた。



34: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:55:24.48 ID:m+tTxCzN0
( ^ω^)「いっただっきまーすお!!」

そう言ってむしったハサミの付け根から飛び出た肉にガブリと噛み付く。
その途端、ブーンが止まった。

( ゚ω゚)「う…う…う……」

ξ゚听)ξ「ブーンっ!?」

(´・ω・`)「ブーンさん!!」

うつむいて震えているブーンの下へ、ツンとショボンが駆けつける。

ξ゚听)ξ「だから言わんこっちゃない!!」

(´・ω・`)「大丈夫ですか!?早く吐いてください!!」

近づいて、口々にブーンに声をかける二人。
そのとき、ブーンが声を張り上げた。



35: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:56:09.39 ID:m+tTxCzN0






( ^ω^)「うーーーまーーーーーいーーーーーおーーーーーーーー!!!!!!!」






37: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:57:53.39 ID:m+tTxCzN0
ξ゚听)ξ「はっ?」

(´・ω・`)「へっ?」

一瞬、何が起こったのか理解できない二人に、ブーンが手足をせわしなく動かしながらまくし立てた。
よほど興奮しているのだろう。


(*^ω^)「これ、すっごくおいしいお!!二人とも食べるべきだお!!」

ξ )ξ「あ…あ…あ…」

( ^ω^)「?どうしたおー?」

ξ#゚听)ξ「アンタってやつはぁーっ!!!!」

( ゚ω゚)「うわらばっ!?」

ツンの攻撃。会心の一撃!ブーンに100のダメージ!

そんなメッセージが見えたようだった。
ツンの顔を覗き込んだブーンの頬に、彼女の拳がクリーンヒットしたのだ。
ブーンの体が仰向けに倒れ、砂漠の砂を舞い上がらせる。

( ゚ω゚)「い、いいパンチだったぜ……だお」

(´・ω・`)「あ〜あ、折角治したのになぁ」

その時のブーンは、とてもいい顔をしていたという。
こうして、三人の砂漠の夜はドタバタと更けていくのであった。



40: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 21:59:22.81 ID:m+tTxCzN0


―3―

深夜のイシス。
ここ、エリョスミーの酒場に二つのの人影が蠢いている。
店内は暗く、彼らの顔はわからない。
そのうちの一人が蝋燭をテーブルの上に置きつつ、声を発した。

(   )「首尾はどうだ?」

(   )「へい、順調に進んでやす。予定通り、明日の夜には実行できそうです」


(   )「そうか、抜かるなよ。『あのお方』には知らせたろうな?」

(   )「もちろんでさ。計画通り、中から扉を開けてくださることになってます」

(   )「よし。お前は部下たちに明日の準備をさせろ。
     日が落ちたらすぐ実行に移す。」

(   )「了解しやした」

そう言って部下の男は駆けていった。



41: ◆PcO9DmzREo :2007/08/30(木) 22:01:01.84 ID:m+tTxCzN0
部下が酒場の扉をくぐったのを音で確認した後、男は両肘をテーブルに着け、手を重ねて口元に持っていった。
顎は両の親指で支えている。

その一連の動作で、彼の姿勢が前かがみになり、蝋燭の光が男の顔に当たってその表情を照らし出した。

(’e’)「ふむ……。これで明日の計画はうまくいく筈だ。絶対にな……」

背もたれに寄りかかり、腕を組む。木製の椅子がきしむ音が静かに店内に響いた。
男の顔が再び闇に包まれる。そして、甲高い音が闇から聞こえてきた。
それは、声だった。喉の奥を震わせているような不気味な笑い声だ。

(’e’)「くっくっくっく……。見ていろ。私が必ず……。くっくっくっく……」

その笑い声は、暗闇の空間に途切れることなくいつまでも響いていた。

それを聞いている者は何もない。
あるのは、砂漠の夜空に煌々とひときわ大きく輝く丸い月と、その周りに散りばめられた、小さな星々のみであった。


                                      ―――続く



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