( ^ω^)ブーンが伝説になるようです
- 4: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:02:35.94 ID:gQTeR8Bj0
- 第16話 渦中にて
―1―
阿鼻叫喚が夜のイシス城を覆っていた。
城に住まう侍女達が逃げ惑う中を、逆走する三つの人影があった。
ξ゚听)ξ「じゃあ、ハナームさんは今でも一人で扉を守ってるのね!?」
( ^ω^)「そうだお!でも、早く行かないと持たないかもしれないお!
何せ、敵は五十人以上いたお!」
(´・ω・`)「それは危険ですね。早く助けないと」
あの後、二人を起こしたブーンは説明する間もなく駆け出した。
急いで跡を追った二人がブーンに何事が起こったのかを問いただし、
ようやく自体を把握できたのだった。
慣れない暗闇の中を走り回るのは難儀なことだったが、
それでも彼らは悲鳴がより大きく聞こえるほうを選んで駆けていた。
悲鳴が大きいということは、より被害が大きいということだ。
それすなわち出入り口に近いということでもある。
かくして彼らは、狙い通り玄関口までやってくることが出来た。
- 5: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:04:09.28 ID:gQTeR8Bj0
- そこはまさに地獄絵図であった。
十数名の男女が立ち回り、床にはその数倍もの人間が伏していた。
辺りには血の臭いがむせ返るほど充満している。
床に倒れているのはほとんどが女性だった。
以前にも説明したが、この城は本来男子禁制である。
城内に入ることが許されているのはハナームのみなのだ。
この城の守りを預かるのも、彼を除いて女性しかいない。
ここまでくれば、伏している女性達がどのような立場の人間なのかすぐにわかるだろう。
彼女らこそがこの城の主兵なのだ。その女性達がほとんど全滅。
それだけで、敵がたとえ相手が女性であろうとも容赦などしないということが伺える。
が、ホールにたどり着いた彼らの目を真っ先に引いたのは、
中央で女兵士数名を背後に庇ったまま奮闘するハナームの姿だった。
(;^ω^)「ハナームさん!!」
その姿を見つけたブーンが彼の名を呼んだ。
声が届いたのか、彼はこちらに視線をやると、大声を張り上げて怒鳴った。
- 6: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:06:48.75 ID:gQTeR8Bj0
- 从;´‐ _‐)「ブーンか!すまない、城門を突破されてしまった!!」
(;^ω^)「すぐそっちに行きますお!」
从;´‐ _‐)「こっちくんな!!」
怒鳴り返して駆け出すブーンだが、ハナームの怒声によってその一歩は阻まれてしまった。
ブーンは慌ててたたらを踏み、体制を立て直した。
(;^ω^)「なんでだお!」
从;´‐ _‐)「敵の首領と思しき人物が女王の部屋へ向かった!」
(;´・ω・`)「なんですって!?だったら早く助けに行かなきゃ!」
(;^ω^)「だお!その部屋はどこだお!?」
从;´‐ _‐)「中央の階段を上って、北西の奥の部屋だ!」
- 9: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:08:24.12 ID:gQTeR8Bj0
- そのときだった。
上の方から女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
その場にいた全員がその声を聞き、身を強張らせる。
ξ゚听)ξ「ッ! 行くわよ、あんたたち!!」
(;^ω^) (;´・ω・`)「「あ、アイマム!」」
その悲鳴を聞いた瞬間にツンが叫び、駆け出した。
慌てて二人が後を追う。
それにしてもこの三人、ノリノリである。
※
ホールから階段へ向かう間にも賊の一味が大挙して襲い掛かってきた。
しかし、結果から言えばそれも何とかなってしまったのである。
―――主に、ツンのおかげで。
ξ#゚听)ξ「ベギラマ! ベギラマ! ヒャド! ベギラマ!
ええい、邪魔よ!!」
(;´・ω・`)「なんと言う魔力の無駄遣い。間違いなくMPが尽きる」
(;^ω^)「でも、その様子が全くないお」
"ツン最強魔法使い伝説"が強固になった瞬間であった。
- 11: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:11:09.24 ID:gQTeR8Bj0
- ξ゚听)ξ「でも…おかしいわね」
(´・ω・`)「ええ、僕もそう思います」
そのとき、ツンが足を止めてつぶやいた。
あごに親指を当て、何か考え込む素振りをしている。
その声にショボンも同意した。
( ^ω^)「何がおかしいんだお?可笑しいなら笑うお」
ξ゚听)ξ「そっちのおかしいじゃないわよ、バカ。
変だと思わない?走れば走るほど敵が少なくなってくのよ」
(´・ω・`)「それに、盗賊の首領が女王の部屋を知っているというのも変です」
( ^ω^)「おっ。そういえばそうだおね」
ξ゚听)ξ「何か……あるはずよ」
そう、何かがあるはずなのだ。
本来ならば重要な場所ほど守護する人間を多く置かなければならない。
しかし今回のケースはその逆だ。まるで、彼らを誘っているかのように。
ξ゚听)ξ「っていうか、誘ってるんでしょうね。アタシたちが女王様の部屋へたどり着けるように」
( ^ω^)「でも、そんなことをしてあいつらに何か得があるのかお?」
(´・ω・`)「そこなんですよ、問題は」
- 12: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:13:43.35 ID:gQTeR8Bj0
- ショボンが右の人差し指を掲げて答えた。左手は右肘に添えている。
探偵がよくやるポーズみたいだ、とブーンは思った。
廊下に取り付けられた燭台の光が顔に当たって陰影が増し、更に雰囲気が出ていた。
その闇の中、静かにショボンの声が響く。
遠くで聞こえる喧騒がその静けさを一層引き出していた。
(´・ω・`)「次第に少なくなっていく賊、部屋の位置を知っていた首領。
これは絶対に何かウラがあります」
ξ゚听)ξ「そうね。ただ、それが何なのかはまだわからないけど」
( ^ω^)「ってか、こんなこと話してる場合じゃないんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ (´・ω・`)「「……」」
ξ;゚听)ξ (;´゚ω゚`)「「アッー!!」」
- 13: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:16:02.78 ID:gQTeR8Bj0
-
―2―
ξ゚听)ξ「まったく!ブーンのせいよ!!」
( #)ω(#)「何で僕がフルボッコにされなきゃならないのかわからないけど、
とりあえずごめんなさいだお」
(´・ω・`)「いいから早く!!」
薄暗い廊下をひた走り、目的の部屋を目指す。
ここまでくるともう賊は一人もいなかった。しかし今はそんなこと気にしていられない。
今は一刻も早く目的地にたどり着かねばならないのだ。
(´・ω・`)「えーっと、北西の奥……ここだ!」
気づけば目の前には扉があった。
立派な装飾を施し、いかにも「ここに要人がいます」といった趣きだった。
(´・ω・`)「開けますよ」
ショボンが取っ手に手をかけ、後ろを向いて言った。
二人は黙ってうなずくことでその返事とする。
一息つき、取っ手を握る拳に力をこめる。
ドアノブがゆっくりと下がり、ショボンは一気に扉を開け放った。
- 15: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:20:07.55 ID:gQTeR8Bj0
- 爆発するような音とともに扉が開け放たれる。
そして彼らが目にしたのはやたら豪華なベッドと、女王と二人の女官を追い詰める敵の姿だった。
右手には、やけに刃の曲がった剣を持っている。
( ^ω^)「ちょ、何してんだお!!」
その声を聞いた敵がこちらを振り返った。
そいつはまるで、ヒヨコの嘴のような口を持った男だ。
(’e’)「ふん、ようやくおでましか」
*(‘‘)*「あっ、お前ら!やっときやがったですか!?」
その甲高い声に聞き覚えがあった。
昼間、ブーンたちにを邪険にした女性だった。名前はなんと言ったっけ?
⌒*(・∀・)*⌒「そんなこと言ってやんなや。せっかく助けに来てくれたんやし」
そうそう、ヘリカルだった。
このツインテールも昼間に見たことある気がする。
あれ?ということはこの嘴男は……?
(’e’)「俺が砂漠の銀狼と言われたシルバーフォックス団の首領、セントジョーンズだ!」
聞いても無いのに名乗ってくれた。
- 17: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:22:16.56 ID:gQTeR8Bj0
- ξ゚听)ξ「砂漠の銀狼って(笑)。砂漠のヒヨコのくせに。
いいからさっさとその三人を放しなさいよ」
(;^ω^)「うわぁ……」
ブーンが呆れるような口調でつぶやいた。
あいつも気の毒に。ツンの毒舌にかかったらものの数十秒でKOだ。
(’e’)「誰がヒヨコか!!」
ξ゚听)ξ「アンタに決まってんでしょ。何その口。おっかしーwwwww」
(’e’)「もうゆるせん!勝負しろ!」
ξ゚听)ξ「いいわよ。ブーン、やっちゃって!」
そういいつつツンは右手を腰にやり、左腕を突き出した。人差し指はピンと伸ばしている。
その一連の動作でローブがはためき、風も無いのにゆれる。
(;^ω^)「って、僕かお!?」
(’e’)「ほう、貴様が相手をするとな。いいだろうかかってこい」
(;^ω^)「え…。えぇー……?」
(’e’)「こないか。ではこちらからゆくぞ!」
- 18: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:24:44.18 ID:gQTeR8Bj0
- そう言うとセントジョーンズは刀を横に構え、突進してきた。
その勢いに乗せて右手に持った刀を左から横薙ぎに払う。
(;^ω^)「ちょ、まっ!」
腕を突き出し、腹を引っ込めて回避。その刃先がブーンの服の腹を掠めた。
裂かれた布がペラリと垂れ下がり、砂漠の日に焼けた素肌が覗く。
(’e’)「避けるな!」
(;^ω^)「避けるに決まってるお!!」
(’e’)「舐めやがって!!」
今度は大きく振りかぶって脳天に向かって打ち込んできた。
ブーンは慌てて剣を抜き、その刀身を受け止める。
鉄と鉄を打ちつけ合う、鋭い音が宮廷の一室に鳴り響いた。
(;^ω^)「クッ…。ていっ!」
(’e’)「おっと」
ブーンがセントジョーンズの刀を押し返し、左から払う様に剣を降るった。
しかしその攻撃は敵のバックステップによって簡単にかわされてしまう。
- 21: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:26:18.92 ID:gQTeR8Bj0
- (;^ω^)「お前だって避けるんじゃないかお!」
(’e’)「そりゃそうだ」
言い返したブーンに、セントジョーンズが軽く返した。
返しながら今度は刀を持った右腕を左肩から大きく振り回した。
狙いはブーンの首だ。それを彼は、装備していた鉄の盾ではじき返す。
(’e’)「チッ」
男が舌打ちをし、はじかれた衝撃でわずかに痺れた右腕を押さえる。
が、剣を取り落とすまでには至らなかったようだ。
(;^ω^)「い、今のは危なかったお……」
冷や汗をかきつつブーンがつぶやいた。一つ間違えれば首を落とされていた。
今は運よくガードできたが、次もできるとは限らない。
(´・ω・`)「ブーンさん、今行きます!」
戦況不利と見たショボンがブーンに駆け寄ろうとする。
(;^ω^)(ショボンって、さりげに要領いいお)
そんなことをブーンは思うがしかし、彼が戦闘に加わることはできなかった。
なぜならその様子を見たセントジョーンズが左腕を突き出し、
(’e’)「させるかよ!ベギラマ!!」
- 23: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:28:24.22 ID:gQTeR8Bj0
- 「うわっ!」
「きゃあっ!?」
(^ω^;)「ショボン! ツン!?」
背後からショボンとツンの驚いた声が聞こえた。
ブーンが慌てて振り向くと、熱気を帯びる橙色の壁が聳え立っている。
セントジョーンズが呪文を唱えた瞬間、
突如として炎がブーンとショボンの間を遮る様に走ったのだ。
その炎は壁を作り、結果的にショボンの足を止めてしまう。
もちろんその更に後方にいたツンも、炎の壁の向こう側だ。
「な、何とか大丈夫です! でも、そちら側にいけません!!」
ショボンの落ち着いた声が帰って来た。
よかった。どうやら無事なようだ。
彼らの助けは期待できないが、大事が無くてほっとした。
ブーンが安堵の溜息を吐いた、その時だった。
川 ;゚ -゚)「な、何をする!」
背後から狼狽したイシスの声が飛んできた。
- 25: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:30:44.07 ID:gQTeR8Bj0
- そういえばいたな。あまりに空気だったからすっかり忘れていた。
ブーンがそう思いながら振り向くと、セントジョーンズが背後で彼女の腕を拘束し、
あの大きく刃の曲がった刀をその細い首に突きつけていた。
(’e’)「こいつを傷つけられたくなかったら、おとなしく下がれ!お前らもだ!」
川 ;゚ -゚)「くっ……」
左右を向いて言うセントジョーンズの命令に従い、従者がこちらに進み出る。
ブーンの両隣をすれ違い、炎の壁の前に来て女王の方へと向き直る。
背後から呪文を叫ぶ声とともに、ジュウッという蒸発するような音が聞こえた。
ツンが冷凍呪文で炎を消したのだ。直後、二人が息を呑む気配も感じられた。
額に汗が浮かぶ。
言うことを聞かずとも、おそらくは女王が傷つけられる心配は無い。
人質に傷一つつけない内にこそ、交渉の余地があるからだ。
逆に言えば、一つでも傷をつけてしまったらその時点でその人質に、人質たる価値は無くなる。
- 26: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:33:34.49 ID:gQTeR8Bj0
- しかし、だ。
彼女はこの国の女王であり、もし間違って殺されてしまっては国の一大事だ。
それだけは避けなければならない。
(;^ω^)「……」
自分の中に葛藤が生まれる。
危険を犯してでも敵の懐に飛び込んで女王を助けるべきか、おとなしく下がるべきか。
常識的に考えれば後者だろう。しかし、自分はこれまでにも何度か危険な目に遭って来た。
今回も何とかなるのではないか。そう思えてしまうのだ。
ξ;゚听)ξ「ブーン!何やってるのよ!」
(;´・ω・`)「早くこっち来て!!」
仲間たちが呼ぶ声が聞こえる。
でも、僕は……。
- 28: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:35:37.85 ID:gQTeR8Bj0
-
―3―
それは、突然に起こった。
背後の開きっぱなしの扉から、人影が一つ、飛び込んできたのだ。
長身かつ屈強。浅黒い肌は、ハナームのものだった。
从´‐ _‐)「女王様!」
彼は前方に立っていた二人を突き飛ばし、ブーンの前に躍り出た。
他の兵達はいない。おそらく皆、やられてしまったのだろう。
イシスが彼の名前を呼んで駆け寄ろうとするが、セントジョーンズの腕によって阻まれてしまった。
从#´‐ _‐)「貴様ァ!その薄汚い手を離せ!!」
ハナームが怒声を浴びせるが、セントジョーンズはその口角を不気味に吊り上げるのみだ。
その時、何かが切れる音がした。
そう、まるでちょうど張り詰めた輪ゴムが耐え切れなくなって上げる、
最後の断末魔のような、そんな音だった。
- 30: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:38:29.67 ID:gQTeR8Bj0
- 从#´‐ _‐)「うっおぉぉぉぉおぉぉぉッ!!!!」
出し抜けに、ハナームが槍を構えてセントジョーンズへと突進し始めた。
長槍を両手で持ち、大きく振りかぶる。
まるで野球のスウィングのような構えだ。
いけない。今のハナームは激情で我を忘れている。
普段の彼(と言ってもまだ知り合ってから一日も経っていないが)なら、
あんな隙だらけな攻撃はしない、と思う。
(;^ω^)「は、ハナームさん!!」
呼びかけるも、止まる筈がない。
セントジョーンズへと向かっていったハナームはヤツの大きい拳骨で殴り飛ばされ、
そのまま床へと叩きつけられてしまった。
从メ´‐ _‐)「うッ、く……」
- 32: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:40:52.87 ID:gQTeR8Bj0
- 苦しそうにハナームがうめく。
しかし、彼を助けようと駆け寄るものは誰もいなかった。
駆け寄れるはずが無い。女王は依然、人質としてとらわれたままなのだ。
つまり男は、
女王の首を抱えたまま、
刀を持った腕でハナームを殴り飛ばしたのだ。
从メ´‐ _‐)「くっ……」
ハナームが四つん這いになり、身を起こそうと必死にもがく。
しかし拳骨のダメージは思ったよりも深いらしく、起き上がるのは辛そうに見えた。
( ^ω^)「今行きますお!!」
ブーンが言い、駆け出そうとするが。
从´ _ )「くっ……っくっくっく……」
从´`∀´)「ヒャッハッハッハ!!」
- 34: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:42:36.85 ID:gQTeR8Bj0
- 唐突に、ハナームの身にまとう空気が変わった。
顔は、今までの端正な雰囲気はそのままに醜くゆがみ、
その口から飛び出す笑いは邪悪に満ちている。
その場にいる誰もがその変貌にあっけに取られ、
足に根が生えたように動こくことができなかった。
ただ、一人を除いて。
(’e’)「お、もういいんですかぃ?従順な飼い犬のフリは」
从´ ゚ー゚)「ああ。それにしても、長かった。ほんっとうに、長かった……。
しかし、ようやくこれで目的を果たせる」
(’e’)「さっきはすいやせんでしたね。思いっきり殴っちまって」
セントジョーンズが、頭を掻きながら謝った。
从´ ゚ー゚)「ああ、あれは痛かったよ。
でも、まぁ。ああまでしないとお前の近くに寄れなかっただろうな」
(’e’)「ヘッヘッヘ。しかし頑丈なお人だ」
从´ ゚ー゚)「伊達に鍛えとらんさ」
- 37: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:43:26.95 ID:gQTeR8Bj0
- わからない。
二人が何を話しているのか、理解がまるで追いつかない。
わかるのは、ただ、とても不愉快な話をしていると言うことだけ。
(;゚ω゚)「は」
川 ;゚ -゚)「ハナーム! これはどういうことだ!?」
ブーンが言おうとしたまったく同じことを、イシスが叫んだ。
その声にハナームは向き直ると、セントジョーンズに抱えられたままの彼女のアゴを
親指と人差し指で以って持ち上げる。
从´ ゚ー゚)「まだわからないのですか?女王様」
「女王様」の部分にたっぷりと嫌味を込めてハナームは言った。
从´ ゚ー゚)「私はね、この者と手を組んだのですよ。ある『目的』のためにね」
川 ;゚ -゚)「目的……だと……?」
ξ;゚听)ξ「何なのよ、その目的って!?」
ツンが女王の言葉に繋げて叫ぶ。
怒りよりも、途惑いの方が大きいと言った表情だった。
从´ ゚ー゚)「ふん。知っているでしょう?
この王家の、王位継承の証を」
川 ;゚ -゚)「ま、まさか」
- 38: ◆PcO9DmzREo :2008/02/26(火) 22:45:15.36 ID:gQTeR8Bj0
- 从´ ゚ー゚)「そう、『星降る腕輪』ですよ。
装備した者は素早さが二倍になるという、伝説の装備です。
更にそれは今言った通り、王位継承の証でもある。クックック……」
ハナームが喉の奥から搾り出すような笑いを漏らす。
その音は、これから訪れる破滅を予感させた。
从´゚∀゚)「アーッハッハッハッハ!!」
我慢しきれなくなった感情を爆発させるように、ハナームが大声で笑い出した。
砂上の宮殿に彼の狂笑が響く。
その声は、永遠に続くだろうと思えるほどに永い。
――夜空では昨夜よりも少々歪になった月が、
それでもその笑い声に負けまいと、青白い光を営々と放っていた。
―――続く
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