( ^ω^)ブーンがオセロを始めるようです

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 21:10:41.27 ID:rr6PBs2B0
〜6時〜
( ^ω^)「気づいたら5時間経ってたお」
('A`)「さすがだな俺ら」
( ^ω^)「ぬぅ……夕飯は家で食べるからそろそろ帰らなくてはいけないお」
('A`)「結局そんなにオセロやらなかった気がするな」
( ^ω^)「まぁ、帰ってからハンゲで修業しておくお。ウイングもビシビシ責めてやるんだからねっ!」
('A`)「ツンデレ乙。じゃ、また明日な」

ブーンはドクオの家を出ると家路についた。

(*^ω^)「…」

帰りの電車の中、彼は鞄を見てはニヤニヤしていた。
その中にあるのは一枚のDVD−R。

(*^ω^)(ドクオのマイドキュメントから、フォルダというフォルダを片っ端からコピーしたお……早く見たいお!)

自宅で夕食を食べた後、ブーンは期待を胸にPCに向かった。
しかし――

( ^ω^)「……どのファイルにも、パスかかってるお」

悪事はそう上手くはいかないのだった。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:49:50.94 ID:3VoI5RcR0
翌朝、大学、廊下にて。

( ^ω^)「おっはー!」
('A`)「テンション高い上にネタが古いな」
( ^ω^)「昨日ドクオんち行ったお?あの時、ドクオのマイドキュメントをごっそりコピーしたんだお」
('A`)「よし死ね」
( ^ω^)「ノン!」

お茶のペットボトルを振りかざすドクオに対し、ブーンは堂々と一歩前に出る。

( ^ω^)「話は最後まで聞くお。ドクオはほとんどのファイルにパスをつけてたお?」
('A`)「…まぁ、そうだが」
( ^ω^)「もちろん、ブーンには開けなかったお。ただ一つのファイル……『長門画像詰め合わせ』を除いては」
('A`)「なんだと!?」

最もお気に入りのフォルダ名を挙げられ、ドクオが一歩下がる。
ブーンはその分、一歩前に出る。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:51:08.60 ID:3VoI5RcR0
( ^ω^)「パスは『orenoyome』。俺の嫁、だったお」
('A`)「ばかな……他人がつけたパスを勘で解けるはずが…」
( ^ω^)「勘ではないお。ドクオの長門への愛が本物だから分かったんだお」
('A`)「っ!」
( ^ω^)「こうして自分から白状するのも、あの長門たちが素晴らしかったからだお」

ドクオと同じく二次元を愛するブーンには、こだわりがよく分かった。

( ^ω^)「全く、反則だお……あんなの見せられたら感動を伝えずにはいられないお」
('A`)「ブーン…」

ブーンは鞄から一枚のDVD−Rを取り出し、ドクオへと差し出した。

( ^ω^)「ブーンのお気に入りハルヒ画像集、受け取ってもらえるかお?」
('A`)「あぁ。当然だ!」

二人はガッチリと握手を交わした。
友情が深まった瞬間である。

('A`)「時にブーン、二限の授業始まっちまってるな」
( ^ω^)「あ、チャイム鳴ったの全然気付かなかったお。となれば…」
( ^ω^)('A`)「「ゲーセンだ!」」

二人は開店直後のアミューズメント施設に走った。
この日、彼らの協力プレイは輝いていたそうな。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:54:28.09 ID:3VoI5RcR0
2時間後、所は変わって大学近くのさくら水産。

( ^ω^)「今日はプレイのノリがいいから、午後も自主休講決定だお!」
('A`)「となればがっつり食べないとな。ここさくら水産は、500円のランチでご飯味噌汁お代わり自由」
( ^ω^)「おまけに卵使い放題。正に神環境だお」

二人は雑談しながら昼食をとっていた。
比較的長く居座れることもあり、彼らは好んでここを利用している。

( ^ω^)「ドクオの選んだ長門はどれもハイレベルだったお。
       もりもりご飯食べてるやつとか、変化球ながら素晴らしい!」
('A`)「お前のハルヒ画像集にも期待してるぜ……っと。そうだ、俺も渡すものがあるんだった」

ドクオは鞄から一冊の本を取り出し、テーブルに置いた。
表紙には『図解 早分かりオセロ』と書いてある。

( ^ω^)「これは…オセロの攻略本かお?」
('A`)「基本的には入門書だが、一番評判のいいオセロ攻略本だ。千円しないというのも長所だ」
( ^ω^)「ほほう。ありがたく借りてくお」

(作者注:お買い求めは全国の書店で。そう大きな店でなくとも囲碁・将棋コーナーを探せば大抵あります)



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 20:58:16.36 ID:3VoI5RcR0
ブーンの腹は、二度のご飯おかわりによって充分に満たされている。
本を手に取り、パラパラとめくってみた。

( ^ω^)「ドクオに教わったような事と、練習問題と……定石」

最後に定石と言いながら、ブーンは本をテーブルに戻す。

('A`)「どうした?」

ドクオは二人分のお茶を注ぎながら尋ねる。
( ^ω^)「うーん…」

お茶を啜りながら、歯切れ悪く話を続けるブーン。

( ^ω^)「定石ってのが載ってるサイトも見かけたんだけども……ぶっちゃけ、ブーンはあんなん覚えらんないお」

ブーンは記憶力には自信がない。
というか、そもそも暗記という作業が好きでないのだ。
それ故に、定石の存在を知りつつも避けていた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:00:15.51 ID:3VoI5RcR0
( ^ω^)「それに、知らなくても結構打てるようになってきたお?」
('A`)「いやいや、ある程度の腕になったからこそ勧めてるのさ」

ドクオは本を手にとり、説明を始める。
('A`)「見てみろ。定石のページはせいぜいこんなもんだぜ?」
(;^ω^)「結構多いお」
('A`)「なら、この半分ならどうだ?」
( ^ω^)「半分?それならまぁ、なんとか…」

ドクオはニヤリと笑う。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:01:39.19 ID:3VoI5RcR0
('A`)「いきなり全部覚える必要は無いんだよ。まず、定石は大きく分けて三種類ある」
( ^ω^)「もう少しくやしく」
(*'A`)「い、いきなり全部なんて覚えられないっ…くやしい、でも……ビクビクッ…」
( ^ω^)「間違えた、もう少し詳しく」
('A`)「並び取り系、縦取り系、斜め取り系に大別できるんだ。図にしてやろう」
( ^ω^)「お前マジ切り替え早いな」

並び取り

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○○☆++
5+++●●●++
6++++++++
7++++++++
8++++++++



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:03:08.95 ID:3VoI5RcR0
縦取り

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○●+++
5+++○●●++
6+++☆++++
7++++++++
8++++++++

斜め取り

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○●+++
5+++●○●++
6+++++☆++
7++++++++
8++++++++



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:06:28.28 ID:3VoI5RcR0
('A`)「黒の一手目はどこに打っても関係ない。盤を回転させれば同じ形だからな」

ちなみに、一般的には右側―f5に打たれる。

( ^ω^)「二手目の白から分岐が始まると」
('A`)「あぁ。しかし、初心者はまず並び取りを消去していい」
( ^ω^)「なんでだお?」

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++★+++
4+++○●○++
5+++●●●++
6++++++++
7++++++++
8++++++++ 

('A`)「次にこうして黒がe3に打つと、白としてはだいぶやりづらいんだ。
   打っちゃいけない訳じゃないがお勧めはしないな」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:07:19.71 ID:3VoI5RcR0
( ^ω^)「となると選択肢は二つ」
('A`)「そういうことだ。白が選べるんだから、好きな方だけ選んで覚えればいい」
( ^ω^)「なんと!」

かなりの量を覚えなくてはならないと思い込んでいたブーンにとっては嬉しい驚きだった。

('A`)「黒に関しても、とりあえず縦取りと斜め取りに対して一つずつ定石を覚えればいい」

( ^ω^)「なるほど。で……どんな定石があって、どれがお勧めなんだお?」
('A`)「色々あるが、有名どころはどれも分かりやすいぜ。紹介してやろう」

☆縦取りからの定石
虎定石

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++★+++++
4+++●●+++
5+++○●●++
6+++○++++
7++++++++
8++++++++



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:09:53.72 ID:3VoI5RcR0
兎定石

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○●+++
5++★●●●++
6+++○++++
7++++++++
8++++++++

('A`)「縦取りから説明するぞ。三手目に黒がc3に打つと虎定石、c5に打つと兎定石に続く展開だ」
(;^ω^)「どう選んでいいか分からんお」
('A`)「兎は初心者向きだが理論値では黒が僅かに不利になるから、どっちかってと虎の方が人気かな。
   気にする程の差じゃあないと思うが」
( ^ω^)「ドクオはどっちなのかお?」
('A`)「自分が黒で相手が縦取りできたら、虎だな。
   自分が白だったら黒が虎系なり兎系なり選んでくるわけだから、そんときゃ相手次第になる」
( ^ω^)「ふむふむ。それじゃ、とりあえずはブーンも黒だったら虎にするお」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:11:43.43 ID:3VoI5RcR0
☆斜め取りからの定石

牛定石

 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○●+++
5+++●●●++
6++++★○++
7++++++++
8++++++++

     ↓
   
 A B C D E F G H   
1++++++++
2++++++++
3++++++++
4+++○●+++
5+++○●●++
6+++☆○○++
7++++++++
8++++++++



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:16:32.61 ID:3VoI5RcR0
('A`)「斜め取りからは、黒e6から白c6(f4でも同じ)ときて牛定石だ」
( ^ω^)「一種類なのかお?」
('A`)「次に黒が打つ場所によって色々変化していくんだ。
   例えばe7に打てばバッファロー、f7に打てば蛇だ」
( ^ω^)「牛系のくせに蛇なのかお?面白いからそれにしたいお!」
('A`)「んー。蛇は双方危険定石とも言われてて、お互いに序盤の1ミスで負けが決まったりする。
   とりあえずは牛の王道のc5がいいと思うぞ」
( ^ω^)「ん、じゃあそっちで」

ブーンはこうして、白では虎定石、牛本定石を覚えることにした。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/18(金) 21:17:32.47 ID:3VoI5RcR0
('A`)「最初は暗記しようとしなくていいぞ。一手ずつ追いながら、『何故ここなのか?』と考えるのが大事だ」

定石は先人達の戦いの中で洗練されてきた道だ。
考えながら並べれば、自然と手筋が身についていく。

( ^ω^)「ちなみに、何手くらい覚えれば…?」
('A`)「まずは5手ぐらいで充分だな。どうせ、ずっと定石通りに進むわけじゃないし」
( ^ω^)「よーし、まずは5手目までしっかり覚えるお!」

ブーンがウキウキと本を鞄にしまっていると、申し訳なさそうな顔をした店員が近付いてきた。

(店 員)「ランチタイムは2時までですので…」
('A`)「あ、サーセン」
( ^ω^)「もう出ますお」

相変わらず、話に夢中になると時間を忘れる二人である。



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