( ^ω^)がどこまでも駆けるようです

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 00:39:57.06 ID:6cSOB08l0


     第3章 混迷の幕開け


( ;^ω^)『しょ、将軍…? 何を…?』

青年は完全に戸惑っていた。
当然であろう。
あの名高い【急先鋒】ジョルジュが、兵奴である自分に膝をつき頼み事をするなどあってはならない事なのだ。

( ゚∀゚)『頼む…お前等を男として頼んでるんだ…』

悲痛な表情でナイトウに縋りつく千騎将。
その時、一人静観を決め込んでいたドクオが動いた。
狩人の如く俊敏さで手にした短槍を離れた茂みに投げつける。

???『…っ!!』

( ;゚∀゚)『っ!?』

声にならない悲鳴と鈍い音が重なる。
数秒遅れて、一同の前に胸の中央を短槍に貫かれた黒尽くめの男が茂みからよろめきながら姿を現した。
フラフラと2歩3歩足を前に進めてから、膝から前のめりに崩れ落ちる。

( ;゚∀゚)『影!? しまった!! 見られていたか!!』

それでも影は絶命の瞬間、口にした笛を吹き鳴らした。
甲高い笛の音がローハイド草原に鳴り響く。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 00:42:42.44 ID:6cSOB08l0
( ゚∀゚)『…こいつは…引き篭もり野郎が飼ってやがった影だ…!!
      くそっ!! 俺達はずっと監視されて立ってワケか…!!』

ジョルジュは苦々しげに呟く。
元々は王家の忠誠心よりも一人の男として咄嗟に出た言葉だった。
しかし、ここに来て遂にジョルジュは決意を固める。
呆然と立ち尽くすツン達に踵を返すと、愛馬の背に飛び乗った。

( ;^ω^)『あの…僕らは一体どうすれば…』

急激な展開に困惑するナイトウをよそ目に、ドクオはまだ痙攣を続ける死体の頭に足をかけ
自らの武器を引き抜く。

('A`)『…よくわからねーけど、この2人を北のバーボンまで送り届ければ褒美がもらえる。
    この塩と銀は前金って考えればいい。そうだろ?』

( ゚∀゚)『……あぁ。そうだ』

モテナイの民であるドクオは王家に関わる物全てを憎むよう幼少期から教育されている。
出来れば同行させたくなかったが、ドクオの天才的な戦闘技術を彼は高く買っていたし
この2人の兵奴以外に主の身を任せられる者はいなかった。

騎士『将軍!! 今の音は一体!?』

突然の笛の音に驚き、散っていた筈の彼の騎士達が続々と集まってくる。
その問いには答えず、金髪の少女に馬上から一礼すると
ジョルジュは右手の大鎌を天高く掲げ声高に宣言した。

( ゚∀゚)『【急先鋒】ジョルジュ!! 真の忠誠の証として、今【評議会】に背かん!!
     俺様を信じる奴は着いて来い!! あの亀野郎の首を叩き落すぞ!!』



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 00:53:43.25 ID:6cSOB08l0
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(-_-) 『そうか…【急先鋒】が裏切ったか…』

足元に膝まづく影を前にして、ヒッキーはさも残念そうに呟いた。
顔を上げることすら許されていない影からは、その表情を覗き見る事は出来ない。
しかし、時折聞こえてくる不気味な含み笑いがヒッキーの心情を雄弁に物語っていた。

ヒッキーが放った影は、ドクオに殺された一人ではない。
こうなる事を予想して複数の影を監視に放っていたのだ。この狡猾さこそが彼の真骨頂と言える。

(-_-) (…全てが僕の思い通りに進む。順調すぎて怖いくらいだ)

メンヘルの指導者モナーが自らの正当性を天下に主張するのに、
アルキュ最大の【至宝】を血眼になって探していると知った彼は、ある計画を立てた。

それが【沈黙の塔】にあると言う情報を密かにメンヘルに流す。
敢えて塔の警備を手薄にし、その時が来るのをジッと待った。
そして、時期が到来するや否や彼は【至宝】奪回の為にどうしても…と
【評議会勅命】と言う武器を手に入れた。

あとは、猪武者のジョルジュを挑発し叛意を煽り立てるだけ。
王室の守護者を名乗る彼の事だ。
再び【沈黙の塔】に封印すると聞いて黙っていないであろう事は容易に想像できたし、
仮にこの計画が失敗に終わったとしても全責任をジョルジュに押し付ければ中央を追放するくらいの成果は上がるだろう。

そして…計画はうまく進み、ジョルジュは勅命の使者に切りかかるという暴挙に出た。
それだけでも【急先鋒】を追い込むには十分な材料ではあったが、
反逆ともなれば目障りな【薔薇の騎士団】全てを無き者としても十分お釣りが来る。
この叛乱を鎮圧し、ついでにジョルジュが見つけ出した【至宝】を手に凱旋すれば更なる栄光が手に入る事であろう。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 00:56:22.47 ID:6cSOB08l0

(-_-) 『この計画がうまく行けば万騎将…いや【常勝将】と並ぶ元帥の座も夢じゃないな。
    そうすれば…いや、ダメだ。もっと…もっと登りつめないと…』

軍部最高権力者たる元帥の地位にある者の身に許された
竜の刺繍された外套を身に纏う己の姿を思い浮かべて、
それでもなお彼は満足しなかった。

(-_-) 『いずれは僕が天下に号令をかける身になる…ならなくてはダメなんだ』

そう一人語ちて、身を引き締める。
戦う事に理由が必要ならば、彼には確かにその【理由】があった。
権勢欲。
一言で言ってしまえば簡単だが、それを求める【理由】もある。

重騎士『しょ…将軍!! 【急先鋒】ジョルジュが戦陣を組みこちらに向かっております!!』

そこへ見張りに立っていた一人の重騎士が鎧を鳴らしながら飛び込んできた。

つまらなそうに『フン』と鼻で笑うとヒッキーは総大将の座を立つ。

己の武器である鉄鎚を手に幕舎を出ると、色めきだつ部下に向けて言い放った。

(-_-) 『【急先鋒】ジョルジュは勅命を裏切った!!
     我らは忠臣として逆賊を討つ!!
     出陣の銅鑼を鳴らせ!! 【鉄柱騎士団】出陣する!!』



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 00:58:47.08 ID:6cSOB08l0
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穏やかな風が吹くローハイド草原。
普段であれば子供達の笑い声が響きわたるこの草原を挟んで、2つの騎士団がにらみ合っていた。
その先頭に立つ、一際煌びやかな鎧で身を飾った騎士が前に出る。
【鉄柱騎士団】団長ヒッキーと、【薔薇の騎士団】団長ジョルジュであった。

彼らは戦場の『 形 式 』として、声高に己の正当性を叫び敵対する者の非を暴く。

(-_-) 『逆臣ジョルジュ!!
    法の番人たる【評議会】の勅命に背き、弓引くとは何事か!!
    即刻下馬し縄につけ!!
    本来であれば九族にまで罪が及ぶ所だが、
    過去のよしみを持って今なら貴様一人の首で勘弁してやる!!』

( ゚∀゚)『黙れ!! 逆臣は貴様だ!!
     王家を蔑ろにする権力の犬め!!
     その首切り落としてクソ擦り込んでやる!!』

(-_-) 『言いおったな!! 地獄で後悔しても知らんぞ!!』

         (#-_-)   『 全 軍 出 撃 ! ! 』   (゚∀゚# )

これ以上は時間の無駄。堪えきれないとばかりに両将が同時に叫ぶ。

今ここに歴史上初の同一民族による殺し合いが始まった。

…歴史家達は声をそろえて言う。
アルキュ暦488年。
まさにこの時、真の混迷は始まったのだと。



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:01:37.48 ID:6cSOB08l0
( ゚∀゚)『手前ら!! 【刺突の陣】だ!!』

騎馬を走らせつつ、ジョルジュは全隊に命を下す。
【薔薇の騎士団】が最も得意とする陣形。
隊はジョルジュを先頭とした楔型に隊列を組み突進する。
やがてそれは敵陣を両断し、蹂躙するのだ。

(-_-) 『馬鹿の一つ覚えめ!! 【岩鶴の陣】!!』

対するヒッキーは自身のいる本隊を中心に、左右に広く兵を展開する。
彼自身が敵軍を受け止め、両翼が左右から敵軍を言葉どおり『押し潰す』。
これもまた、守備には絶対の自信を持つ彼がもっとも得意とする陣形であり
左右からの攻撃に脆い【刺突の陣】に対してヒッキーが訓練を重ねてきた戦術であった。

騎士『将軍!! やはりヒッキーは【岩鶴の陣】を取ってきましたぞ!!』

( ゚∀゚)『それがどうした!!』

些細な問題とばかりにジョルジュは騎士の進言を退け、先頭を駆ける。
そして遂に両軍が接触した。

( ><)『控えよ!! 我こそは【鉄柱騎士団】百人長ワカンナイd』

( ゚∀゚)『うるせぇっ!!』

銀光一閃。

重騎士の首が宙に舞う。
早くも血に濡れた大鎌を手にしたジョルジュを先頭に騎士達は鉄の壁に突進して行った。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:04:41.20 ID:6cSOB08l0
戦場において、騎馬と歩兵では高さという意味で前者に圧倒的な分がある。
その差を埋める為、ヒッキーは本陣の騎士団に長槍を装備させていた。

その甲斐あって【薔薇の騎士団】達は仇敵に達する前に愛馬を、
もしくは自身の体を貫かれ落馬していく。

それでも、彼らの先頭を駆ける将は巧みに愛馬を操り長槍の壁を掻い潜る。
そうなれば【鉄柱騎士団】が如何に頑丈な鎧に身を包んでいようと、勝ち目は無い。

( ゚∀゚)『うおりゃぁぁぁぁぁぁっ!!』

ジョルジュが腕を振るう度に、重騎士達の首が。腕が。ある者は上半身が。
血吹雪と共に地に落ちる。
彼らの隊長が開いた血路に【薔薇の騎士団】達は次々と突進した。

総重量500キロを軽々越える騎兵の全体重をかけた突進に鉄の壁は次々と薙ぎ倒されていく。
単騎先頭を駆けるジョルジュはすでにヒッキーの本陣深くに侵入していた。
悲鳴と剣戟が鳴り響く戦場に2人の将が合いまみえる。

( ゚∀゚)『…ご機嫌麗しゅう御座います、泥亀野郎。
     その薄汚い首に別れを告げる準備は出来ておいでかな?』

(-_-) 『…フン』

ヒッキーは鼻を一鳴らしすると、ジョルジュの背後を指差した。

(-_-) 『首に別れを告げるのは貴様だ、猪馬鹿。
    見るがいい。我が鉄の壁はすでに貴様の兵を押し潰す準備は出来ているのだぞ』



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:07:58.24 ID:6cSOB08l0
その言葉にジョルジュは背後を振り返る。
確かに先陣を駆ける一部の騎士達はヒッキー軍本陣に潜入していたが、大半は未だ鉄の壁に苦戦している。
その左右に岩鶴の両翼が迫っていた。

(-_-) 『光栄に思え【急先鋒】。
    我が【岩鶴の陣】は本来貴様の【刺突の陣】を破る為磨き上げられた必殺の陣。
    押し潰され、磨り潰され、練り潰され……泥の中死ぬがいい』

( ゚∀゚)『……』

嘲る様な笑みを浮かべるヒッキーを前に
ジョルジュは静かに今にも鉄の壁に押し潰されようとしている彼の騎士達を見つめている。

(-_-) 『どうした? 何も出来まい?
    貴様に出来る事は死ぬ事だけだ。
    この【鉄壁】に逆らった事を後悔しながら死ね…死ね…死ね!! 死ね!!
    死んで死んで死にまくれ!!』

興奮のあまり、ヒッキーの顔面は真っ赤に染まっていた。
彼は完全に勝利を確信していた。
しかし。

( ゚∀゚)『…黙れよ、亀野郎。下品な素が丸出しだぜ』

(-_-) 『なっ!?』

対する…絶体絶命の筈のジョルジュはあくまで冷静だった。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:11:34.87 ID:6cSOB08l0
( ゚∀゚)『この俺様がこの展開を予想していないとでも思ったか?
      甘いんだよ、引き篭もり野郎』

言いつつ愛馬の踵を返す。

(-_-) 『な、なんだと!! 突進しか能が無い貴様に何が出来ると…』

( ゚∀゚)『てめぇら!! 【荊絡みつく車輪の陣】を取れ!!
     日頃の訓練の成果を見せる時は今ぞ!!』

予想外の言葉に慌てふためくヒッキーを無視。
大鎌を振り上げ叫ぶと、ジョルジュは己が切り開いた血路を逆走しはじめた。
ヒッキー軍本陣で槍を振るっていた騎士達も彼に続く。

(;-_-) 『な、な、な、何をする気だ!!』

ジョルジュは【鉄柱騎士団】本陣前衛と槍を交える騎兵の脇をすり抜け、なおも愛馬を駆けさせる。
やがて、自軍の最後尾と合流。
鉄の壁に挟まれた彼の軍は、縦長の楕円と化した。
その円線上を【薔薇の騎士団】は駆ける。

( ゚∀゚)『【岩鶴の陣】は両翼の兵が足並みを揃え強固な壁となる事で敵兵を押し潰す陣。
     だが…その足並みが揃わず、壁を成せなかったらどうなるかな?』

(;-_-)『し、しまった!! 両翼に進撃中止の合図を!! 急げ!!』

ジョルジュが呟くのと、ヒッキーが【荊絡みつく車輪の陣】の狙いに気付いたのは同時だった。
ヒッキーは急ぎ、進撃停止の銅鑼を鳴らさせる。
しかし、時すでに遅し。
楕円形に運動を続ける【薔薇の騎士団】と、横一線に列を揃えた【鉄柱騎士団】が接触した。



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:16:08.05 ID:6cSOB08l0
円と線が接触する時。接点は面ではなく、点になる。
この理屈は諸兄らもご存知であろう。
ジョルジュの狙いは正にここにあった。

【薔薇の騎士団】はひたすら楕円形運動を崩さず、一点のみに集中攻撃を加え続ける。
素早い騎兵と鈍重な重騎士。
前者は全軍がただ一点のみを狙い、駆け寄り、一撃を加え、駆け去る事の繰り返し。
対して後者は攻撃を受ける者、敵に攻撃を仕掛けようとする者、未だ敵と接触していない者に分かれ
当然足並みは乱れ出す。

( ゚∀゚)『車輪と化せ!!』

号令一声、楕円は徐々に広がっていく。
それが完全な円形を描いた時、岩鶴の翼は完全に中心から分断されていた。

( ゚∀゚)『絡めとれ!!』

頃合い良しと見るや、ジョルジュは再び陣を楔とし分断された壁の一つに突進していく。
無敵の筈の【岩鶴の陣】が崩壊した事で混乱している所を個別撃破するのは、
数のアドバンテージもあって彼には赤子の手を捻るより簡単な事である。

(-_-) 『……』

ヒッキーは自身の不敗の陣が崩壊していくのを本陣から呆然と眺めていた。
いや。
呆然と眺めているだけしか出来なかったのだ。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:18:42.13 ID:6cSOB08l0
重騎士A『…う軍!!』

(-_-)『……』

重騎士A『ヒッキー将軍!!』

(-_-) 『…っ!!』

耳元で怒鳴られ、ヒッキーはようやく我に返った。

(-_-)『喧しい!! 何事だ!!』

手にした鉄鎚でその重騎士を殴り倒す。
軽く振るっただけのその一撃で彼の頭部は熟れすぎた果実の様にあっけなく弾け飛んだ。
しかし、それも日常茶飯事なのかヒッキーの側近達は死体に構わず言葉を続ける。

側近A『何事だ、ではありませんぞ!!』

側近B『岩鶴の翼はすでに折られました!! このままでは【急先鋒】がここに迫るのも時間の問題!!』

その進言にヒッキーは必死で脳を回転させた。
こうなれば、陣に逃げ戻り門を堅く閉ざして援軍を待つ。
【鉄柱騎士団】は壊滅的な打撃を受けたが、【鉄壁】の異名を持つ者として防衛線には絶対の自信があった。
ジョルジュが攻め込んでこようとどこかへ逃げようと責任の全てを押し付けてしまえば
処分は軽く済むだろう…。

側近A『…将軍。それは出来ませぬ…』

知らず知らずのうちに考えが声に出ていたのか。側近は泣き出しそうな顔で背後遠方の陣地を指差した。
そこで再度ヒッキーは絶望的な光景を目の当たりにする。



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:21:18.77 ID:6cSOB08l0
……陣が燃えていた。
到る所から火の手が上がり、
更に白地に女性に乳房を模った将旗ーーーーー引き降ろした筈の【急先鋒】ジョルジュの将旗が風にたなびいている。

(;-_-) 『な、何故だ!! 何故この様な事に!?』

側近A『…叛乱でございます』

側近B『陣にて閉じ込めておいた【急先鋒】配下の下級兵どもが脱走いたしました』

側近C『我らが王都より連れてまいりました下級兵は少数…いとも簡単に敗れ去り陣を奪われましてございます…』

そうこうしているうち、楔形に隊列を整えた【薔薇の騎士団】が再びヒッキーの本陣に迫る。
それはすでに先頭を駆ける騎士の背に立てられた【無敵 急先鋒】の文字が
はっきりと読めるまでになっていた。

(;-_-) 『か、壁だ!! 壁を作れ!!
     命に従わぬ者は一族全員の首を刎ねる!!
     そ、そうだ!! ジョルジュの首を取った者には一生喰えるだけの塩を褒美にやるぞ!!』

その言葉を受けた本陣に残された【鉄柱騎士団】は将を守るべく壁を作り上げる。

( ゚∀゚)『…無駄な事を。命を粗末にするんじゃねーよ』

小声でぼそりと呟くと、ジョルジュは愛馬に鞭を入れる。

合図を受けた白馬は大地を蹴りーーーーー翔んだ。



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:24:14.89 ID:6cSOB08l0
(;-_-)『…う…あ…』

彼はその瞬間、手にした大鎌を陽光に煌かせ
壁を成した重騎士団の頭上を飛び越える宿敵の姿に目を奪われた。

着地と共にジョルジュは大鎌を振るう。
それだけで背を向けて逃げようとしていた側近の首が3つ、同時に宙に舞った。
同時にヒッキーは我に返る。

( ゚∀゚)『御自慢の【鉄壁】が打ち砕かれた感想は如何かな? 引きこもり野郎』

(;-_-) 『ひ……ひぃぃぃ…』

全身を返り血で赤く染め上げたジョルジュの姿にヒッキーは腰を抜かし、
それでも少しでも眼前の死から逃れようと後ずさる。

( ゚∀゚)『往生際が悪いぜ』

ジョルジュは彼同様返り血で赤く染まった白馬の背を降り、ゆっくりと歩を進めた。
その背後では逃げ遅れた重騎士達が【薔薇の騎士団】の手で殲滅されていく。

( ゚∀゚)『…小便済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて許しを請う心の準備はOK?』

遂にジョルジュは、自らが撲殺した重騎士の遺体に進路を阻まれたヒッキーの前に立つ。

( ゚∀゚)『王室を蔑ろにする犬め…あの世で【統一王】に詫びてこい』

ジョルジュは手にした大鎌を大上段に振りかぶる。
その時。
突如、彼らの頭上に矢の雨が降り注いだ。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:27:09.88 ID:6cSOB08l0
( ;゚∀゚)『な、なんだ!?』

思いもしなかった方向からの攻撃に右肩を貫かれ、それでも続く矢を片っ端から叩き落す。
その視界では、同じく彼の騎士達が騎上で必死に矢の雨を払い除けていた。

その遥か背後。ローハイド草原の小高い丘に立つ兵の群れ。
翻るは、黒地に南十字星が輝く戦旗。

ミ,,゚Д゚彡『この【天使の塵】の前で同士討ちとは舐められたものだな!!』

先頭に立つ老将が馬上から叫ぶ。
そのまま【天星十字槍】を頭上に掲げ、全兵挙げて突進してきた。

( ゚∀゚)『…ちっ』

思わず舌打ちする。メンヘル軍の急襲。予想はしていたが早すぎた。
仇敵は厚い鎧に身を守られ矢の雨をかわし逃げたのか、すでにその姿は見えない。
ジョルジュは再び愛馬の背に飛び乗るとあらん限りの声で叫ぶ。

( ゚∀゚)『散れ!! 相手にするんじゃねーぞ!! 逃げるんだ!!』

勇猛果敢な【薔薇の騎士団】でも【鉄柱騎士団】に次いでメンヘル軍と戦うだけの余力は無い。
ジョルジュの判断は正しく、素早かった。
全軍に撤退の指示を出し、自らは大鎌を手に十字星の旗を睨みつける。

そして…。

( ゚∀゚)『【急先鋒】ジョルジュ参る!! 死にたい奴はかかって来い!!』

味方を逃がす時間を稼ぐべく、単騎メンヘル軍に向けて突進していった。



117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/26(土) 01:30:26.54 ID:6cSOB08l0

…こうして【ローハイド草原の戦い】は幕を閉じた。

歴史上では小さな島の小さな戦に過ぎない。
諸兄らの学んだ歴史教科書に措いても、年表に記述があるかないかの小さな戦いである。
『リーマン軍の内紛にメンヘル軍が乗する形で勝利を収めた』
位の表記があれば、教本としては上出来であろう。

だがしかし。
この真実を巡る旅の幕開けにおいては、非常に重要な戦いであった事は皆もお気づきかと思う。

ジョルジュはヒッキーが。
フッサールはモナーと流石兄弟が。
蔭で暗躍している事を知らず、この戦に臨んでいた。

もし知っていたとしたらまた、この戦いの結末も変わっていた事だろう。
歴史に『もしかしたら』は禁物とは言え、そのような空想を思い描く小説家も少なくない。

ツンとミセリ。それに2人の兵奴は北の街道を抜けバーボン領を目指す。

勝者である【天使の塵】フッサールは自国領へ戻り、次なる侵攻に備えた。

紙一重で命拾いした【鉄壁】ヒッキーは汚名を晴らさんと敗残兵をまとめ上げる。

戦いを傍観していた【金剛阿吽】流石兄弟は中央に戻らないヒッキーの行動に不審を覚え、その後を追った。

そして、勇猛なる【急先鋒】ジョルジュは……。


                  ーーーーー人々の思いは錯綜し、物語の舞台は北に移る。



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