( ^ω^)がどこまでも駆けるようです

4: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:06:28.82 ID:R7gAt/j/0


     第7章 決着。そして…。


( ´_ゝ`)『くらえぃ!! 兄者玉・二式!!』

兄者の左手から小さな玉が放られる。
それをナイトウは戦爪で衝撃を与えぬように受け止めると、
こちらに向けて左手を構えている弟者の足元に投げつけた。

(´<_` )『ちっ!!』

それが着弾する前に飛び退ける【金剛吽】。
枯葉で覆いつくされた地面に着弾した兄者玉は、破裂し四方に鋲を撒き散らす。

同時に右手の短剣を横凪に振った。
当てる必要は無い。
牽制になれば良い。
ナイトウの思惑通り、兄者はバックステップで剣をかわし
僅かの間であるが兄弟の休み無い連携攻撃が中断する。

( ;^ω^)『ふぅ…こりゃ厳しいお』

額を流れる汗を袖で拭き取り、足元を固めて構え直した。
全身はすでに細かい傷で覆われ、所々で出血している。



7: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:08:15.10 ID:R7gAt/j/0
(´<_` )『随分と粘るな。敬意に値すると言っておこうか』

( ´_ゝ`)『しつこい男は嫌われるぞ。…とは言え、お前はここで死ぬのだから関係ないがな』

言動こそ変わらないものの、攻めても攻めても一歩たりとて退こうとしないナイトウの姿に
流石兄弟の顔からはいつしか余裕は消え失せていた。
じりじりと測る様に距離を詰めてくる。

( ;^ω^)『そうはイカの金玉だお。ツンのところには絶対に行かせないお』

血の混ざった唾を飲み込む。
べたついた唾であっても、ほんの僅かだが喉を潤す事は出来た。

ナイトウはすでに兄弟の攻撃パターンを読み取っている。
接近戦と投擲によるコンビネーション。
もしくは、左右から同時に襲いかかる剣戟。
どちらも両腕の武器を守備のみに駆使すれば、捌き切れないまでではない。

問題はその異名のとおり【阿吽】の呼吸で展開される連続攻撃だった。
このままでは、押し切られる前に体力か精神力が尽きるのは目に見えている。

( ;^ω^)『ミセリ…まだほどけないかお?』

足元で芋虫のように転がっている少女に声をかける。
彼女は両足に絡みついた、蜘蛛の糸よりも細い糸で編まれた網を千切る事も解く事も出来ず
四苦八苦していた。

ミセ;゚ー゚)リ『ごめんなさい…全然ダメみたいです…』



10: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:12:21.13 ID:R7gAt/j/0
(´<_` )『当たり前だ。臭水と風から生み出した我が【鋼鐵糸】を女の細腕で切れるものか』

( *´_ゝ`)『……緊縛少女…ハァハァ…』

ミセ#゚ー゚)リ ^ω^)『 … 死 ね ば い い の に 』(´<_`# )

( ;´_ゝ`)『え? 3人がかり!?』

…弟者の持つ【鋼鐵糸】は現在その製造法などは失われてしまった。
だが、『臭水(石油)と風(空気)から生み出した』と言われる事から
おそらくナイロンの原型のような物であったと推測されている。

もし、これが真実であれば我々の生活に欠かせないナイロンを
米国デュポン社が開発する500年以上も前に生産していた事になるのだ。

(´<_` )『…遊んでいる場合ではないぞ、変態。我らは時間をかける訳にはいかないのだからな』

( ´_ゝ`)『…今サラリと罵倒された気がするが、まぁいい。それには同意だ』

( ´_ゝ`)『 そ ろ そ ろ 殺 す か 』(´<_` )

言うや2人は足を速め接近してくる。

( ;^ω^)『…やれるもんならやってみるお』

ナイトウは両足を踏ん張り、襲撃に備えた。



12: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:15:32.72 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『 殺 っ ! ! 』(´<_` )

合わさった掛け声と同時に2本の手斧がナイトウの頭部に振り下ろされる。
それを両腕の武器で受け止めた。
衝撃が脳天から足元まで雷撃のように伝わり、思わず『ぐっ!!』と声が漏れる。

今までのパターンであれば、どちらかが一歩引いて牽制役になるはずだった。

(´<_` )『…と思うだろう? ところが今回は違うのだ』

同一パターンの攻撃を繰り返してから、突然パターンを変更して呆気に取られた隙を撃つ。
親友ドクオの好む戦法だ。
両腕を塞がれたナイトウの目前に弟者の掌が突きつけられる。
ぽっかりと空いた穴の中では、5本の矢が彼を睨みつけていた。

( ;゚ω゚)『!! しまっ…』

(´<_` )『【突】!!!!!』

掛け声と共に発射されたそれを、ナイトウは上半身を瞬時に限界まで反らせる事で回避した。
しかし、伸びきった腹筋を兄弟の前に顕わにする事になる。

( ´_ゝ`)『ふんもっふ!!』

そこに全体重を乗せた兄者の肘打ちが襲った。

( ゚ω゚)『ごひゅっ!!』

内臓が破裂するような一撃は彼の足を宙に浮かせる。
そのまま、枯葉臭い大地に叩きつけられた。



15: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:18:25.90 ID:R7gAt/j/0
( ;゚ω゚)『はひゅ…はひゅっ…』

ナイトウは大地を転がりまわりながら、必死に酸素を求めた。
しかし、急激に潰された肺はそれを許さない。
肋骨が何本か折れたかもしれない。何故か頭はそんな事を考えていた。

( ´_ゝ`)b『GJだ、弟者』

q(´<_` )『兄者こそよく俺の心を読んでくれた。流石だな』

弟者は言いながら、もんどりうって胃液を吐くナイトウに左手を広げ向ける。

(´<_` )『放っておいても問題なさそうだが2人とも死んでもらう。悪く思うなよ』

( ´_ゝ`)『…少女だけでも…いや、俺の嫁だけでも助けてやらんか?』

(´<_`# )『その助平心が王女を失う原因になったのを忘れたか? 死ねばいいn…つか、死ね』

弟者は取り付く島もない。
凍りつくような目で瀕死の獲物を見下す。

(´<_` )『…成仏しろ』

ミセ;゚ー゚)リ『!!!!! ナイトウさん!!!!!』

ミセリは思わず目を逸らした。
避けきれぬ至近距離で矢が放たれ、ナイトウの目に絶望に二文字が浮かび上がる。
その凶器がナイトウの体に突き刺さろうかとしたその瞬間。
それは突如飛来した形ある光によって全て弾き落とされた。



17: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:21:46.31 ID:R7gAt/j/0
ミセ*゚ー゚)リ『!!!!!! ……?』

思いもしなかった金属音と、いつまでも聞こえてこないナイトウの断末魔の声に
ミセリはゆっくりと目を開いた。
その目の前の大地に突き刺さっているのは人差し指ほどの長さの飛刀(手裏剣)。

兄弟はナイトウなど目に入らないかのように、森の奥を睨みつけている。

( ;゚ω゚)『ひゃひゅっ……っはぁ、はぁ…僕は…助かったのかお?』

ようやく心肺機能が回復したのか、ナイトウは全身に行き届かせるかのように大きく息を吸い込んだ。
兄者の股の間から覗く森の深遠に、何者かが立っているのが見える。

???『よぉ。なんとか間に合ったみたいだな』

その聞き覚えのある声に、【金剛阿吽】の兄弟は苦々しげに顔をしかめた。

ゆっくりと近づいてくるその姿ーーーーー。

(´<_` )『…やはり来たか。【心持たぬ暗殺人形】【炎髪の人斬り】』

ーーーーー闇夜に溶けこむ漆黒の給士服。





( ´_ゝ`)『【闇に輝く射手】ハインリッヒ……』



21: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:26:03.63 ID:R7gAt/j/0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドクオの必殺の一撃は頬をかすめ肩の肉をも抉り取った。
吹き飛ぶように地面を転げ、それでもなんとか立ち上がる。

ξ;゚听)ξ『ほ…本気なの…あんた…』

しかし、ドクオがそれに答えることは無い。

('A`)『…まだ覚悟が足りないか』

血が滴る槍先を見つめ、ただそう呟くだけ。

ξ#゚听)ξ『ふざけないで!!!』

ツンは腰から鉄鞭を外し、身構えた。

('A`)『…ふざけてなんかいねぇよ』

ドクオも半身に腰を落とし、身構える。

ξ#゚听)ξ『ナイトウは…あんたが来るのを待ってるのよ!! 信じて戦ってるのよ!!
      それを…それを一族の恨み!? バカみたい!!!』

ツンは言いながらもゆっくりと下がり距離を取った。
鞭とはいざ使うと分かるが、不便な武器である。
打点は小さく、常に一定の距離を保つ事が必要となる。
大きなモーションを必要とする為、連撃にも向かず防御にも使えない。
それにもかかわらず彼女が鉄鞭を武器としているのは、
アルキュにおいて鞭が支配者の象徴であった事に他ならなかった。



25: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:29:14.59 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…一族の恨み? …違ぇよ』

ドクオもそれを知り、じりじりと距離を狭めていく。

ξ#゚听)ξ『何が違うって言うのよ!! あんたは…王家の血を引くアタシを殺したいだけなんでしょ!?
      アタシだって…アタシだって…好きで王家に生まれたわけじゃないわ!!
      物心ついた時には暗い塔に幽閉されて…来る日も来る日も自分の血を恨んだわ!!』

なおも少女は叫ぶ。

ξ#゚听)ξ『なんで…なんでアタシだけ王家に生まれたってだけでこんな思いをしなくちゃいけないのよ!!
      小さな窓から空を飛ぶ小鳥の姿を見ながらずっと思ってたわ!!
      友達が欲しい。自由が欲しい。青い空の下を駆け回りたい…って!!』

('A`)『…違う』

ξ#゚听)ξ『あんたはアタシが欲しい物を全部持ってるじゃない!!
      それなのに…王女だからってだけでアタシを殺すの!?
      大切な友達を裏切ってまで…一族の誇りがそんなに大切な物なの!?』

(#'A`)『…違うって言ってるだろうがっ!!!!!』

ドクオの叫びは咆哮に近かった。

('A`)『…確かに、お前が王女だって知った時…お前を殺さなきゃいけねぇって思ったさ。
    それは否定しない。
    でも、どうしても俺にはお前が憎っくき仇とは思えなかった』

ξ#゚听)ξ『!! だったらどうして!!!!』



29: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:33:19.84 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…俺の心には竜が住んでいる』

ξ;゚听)ξ『え?』

足元を確かめながらツンは後退する。
それを追い詰めるようにドクオは歩を進めた。

('A`)『…俺がどんなにお前を仲間だと思おうが。
    これからどれ程お前を友情を育もうが。
    俺の心には積み重ねられてきた怨念の竜が住み着いている。
    そして、竜はいつしか俺自身を…お前を食い殺そうとするだろう』

ξ#゚听)ξ『それじゃ…やっぱり恨みの為にアタシを殺そうって言うんじゃない!!』

両者の額から流れた汗が頬をつたい、ぽとりと大地に落ちる。
それはあっという間に吸収され、消えて無くなった。

('A`)『…違う。家族を…恋人を…親友を殺された者。竜は誰の心にも住み着いているんだ。
    この竜がいる限り…戦乱は終わらねぇ。
    誰かが島を一つにしたとしても、またすぐに戦いの日々が始まる』

ξ゚听)ξ『……』

ツンには何となくドクオが続けようとする言葉が分かった気がした。
嫌だ。聞きたくない。
聞いてしまえば、受け入れなければならない予感がするから。

ドクオが一歩前に踏み出せば、ツンは一歩後退する繰り返し。
         とん。
しかし、彼女は遂に森一番の大木に進路を阻まれる。



30 名前: 訂正 ◆.B2lcGiYSA 投稿日: 2007/06/11(月) 21:34:56.42 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…俺の心には竜が住んでいる』

ξ;゚听)ξ『え?』

足元を確かめながらツンは後退する。
それを追い詰めるようにドクオは歩を進めた。

('A`)『…俺がどんなにお前を仲間だと思おうが。
    これからどれ程お前と友情を育もうが。
    俺の心には積み重ねられてきた怨念の竜が住み着いている。
    そして、竜はいつしか俺自身を…お前を食い殺そうとするだろう』

ξ#゚听)ξ『それじゃ…やっぱり恨みの為にアタシを殺そうって言うんじゃない!!』

両者の額から流れた汗が頬をつたい、ぽとりと大地に落ちる。
それはあっという間に吸収され、消えて無くなった。

('A`)『…違う。家族を…恋人を…親友を殺された者。竜は誰の心にも住み着いているんだ。
    この竜がいる限り…戦乱は終わらねぇ。
    誰かが島を一つにしたとしても、またすぐに戦いの日々が始まる』

ξ゚听)ξ『……』

ツンには何となくドクオが続けようとする言葉が分かった気がした。
嫌だ。聞きたくない。
聞いてしまえば、受け入れなければならない予感がするから。

ドクオが一歩前に踏み出せば、ツンは一歩後退する繰り返し。
         とん。
しかし、彼女は遂に森一番の大木に進路を阻まれる。



34: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:38:15.36 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…それなら…俺が終わらせよう。
    己を捨て、友を捨て、何もかもを捨てて…俺は修羅になる。
    この島が…島に住む者達が二度と争わぬ世を作る為。
    修羅として…抗う者全てを滅ぼし…恨みを一身に受け…』

ξ )ξ『……!!』

足の力が抜ける。
ツンは大木に寄りかかるようにへたりこんだ。
肩から流れる血で左腕はべったりとした赤に染まっている。

('A`)『…人の心に竜が住まない世界…新しい世界を築きあげる』

ゆるりと。だが確実に。少女に死神は迫る。
とうとうドクオはツンを自らの射程距離に捕らえた。
なおも自身を説得するかのように言葉を紡ぐ。

('A`)『…モテナイも…リーマンも…メンヘルも…王家も…評議会も無い。
    俺みたいな馬鹿も…こんなにも辛い思いをしなくちゃいけねぇヤツもいない。
    全てを零に戻す為に…。永遠の平和の為に』

半身になり腰を落とす。
左諸手で槍を持った、彼独特の構え。
その目にはすでに迷いは、涙は無い。

('A`)『…死んでくれ』

十歩の距離を一息に飛びかかった。



40: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:42:57.86 ID:R7gAt/j/0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

从 ゚∀从『久しぶり…ってのも変だな。
     最後に会ったのはハインちゃんが【谷】を抜ける前だから8年前になるのか? 流石よぉ?』

枯葉を踏んでも茂みに触れても音一つさせず。
給士は森から姿を現した。

(´<_` )『そういう事になるのかな…【闇に輝く射手】ハインリッヒ』

从 ゚∀从『……』

何の前触れも無く景色が歪む。

从 ゚∀从『その名前で呼ぶんじゃねーよ。とっくに捨てた名前だ』

( ´_ゝ`)『!!!!!!』(´<_` )

( ;゚ω゚)セ;゚ー゚)リ『え?』

瞬間後。
ハインは倒れこんでいるナイトウの横に片膝をついて座っていた。

从 ゚∀从『オレの名前はハイン。【天翔ける給士】ハインちゃんだ。間違えるんじゃねーぜ』

…先程まで彼女が立っていた場所とナイトウとの間には【金剛阿吽】流石兄弟がいたというのに。
彼女は時空すら飛び越えたかのように移動していた。

景色が歪んだように見えたのは、彼女の残像だったのだ。



42: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:46:25.36 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『瞬歩法…腕は衰えていないか。悲しいような嬉しいような複雑な気持ちだな』

兄者の小さな瞳が鈍く輝く。
ハインは震える膝でなお立ち上がろうとするナイトウの腕を掴み引き上げた。

从 ゚∀从『随分ひどくやられたじゃねーか。走れるか?』

( ;^ω^)『…なんとか。でも、助かりましたですお』

ナイトウは短剣を構えた。

(´<_` )『これで2対2か…いや、男の方はすでに戦力外と見るべきだろう』

( ´_ゝ`)『油断するな、弟者。相手はあの【射手】だぞ。
       幼い頃部屋に忍び込もうとして何度殺されかけた事か…』

(´<_`; )『なにやってんだあんた』

( ´_ゝ`)『…誤解が無いように言っておくがな』

兄者は手斧を下段に構え、手首の力だけで細かく上下左右に動かしながらにじり寄る。
その動きに少しでも気をとられれば、一瞬で飛び込んでこられるのは火を見るより明らか。
一瞬の後、宙を舞う自分の首の姿が否応なしに脳裏に浮かび上がる。

( ´_ゝ`)『俺が【射手】の部屋に忍び込んだのは、糞を漏らした際に代えの肌着を頂戴しに行った時だけだ。
       他意はない』

从;゚∀从『は?』



47: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:49:51.73 ID:R7gAt/j/0
そう。
この男は子供とは言え…女性であるハインと下着を共有していたと、はっきり言い切ったのだ。
小さな女性用のそれを、当然のように身に着けた真顔の兄者の姿が否応なしに脳裏に浮かび上がる。

自身の過去の犯罪行為をも利用して心理的動揺を誘う。
この辺りは正に『流石だな』と言えた。

だが。

ミセ;゚ー゚)リ『 そ れ は 無 い わ 』(^ω^; )

从#゚∀从『死ねばいいのに… つ か 、 殺 す 』(´<_`# )

( ;´_ゝ`)『え? 俺フルボッコ?』

黒衣の給士は溜息を一つつくと
竹箒を両手に構える。

从 ゚∀从『まぁ、いい。とにかくナイトウ、お前は姫さんの所に急げ』

( ;^ω^)『へ?』

从 ゚∀从『…姫さんがお前の相棒に襲われてる。早く行って助けてやってくれ』

( ;^ω^)『!!!!!』

そのハインの一言は、今日身に受けたどんな傷よりも深くナイトウに衝撃を与えた。



51: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:54:29.34 ID:R7gAt/j/0
( ;^ω^)『そ、そんなバナナだお!! ドクオがツンを襲うなんてありえないお!!
       だってドクオは真性のロリコn』

( ´_ゝ`)『そいつとは旨い酒が飲めそうだ』

(´<_` )『死ね』

相変わらず手斧で細やかなフェイントを繰り出しつつ軽口を叩く兄者。
その横で弟者は手斧を杖代わりにもたれかかるようにしている。
そして、残念だが…と続けた。

(´<_` )『【射手】が言うからにはその情報は間違いないだろう。
       さて。この展開は予想GAYな訳だが…我らはどうするのだ、変態?』

( ´_ゝ`)『…その呼称はいまいち納得できんのだが』

血を分けた弟に変態扱いされた男は、意味も無く鼻毛を思い切り引き抜き
涙目で答える。

( ´_ゝ`)『王都に鎮座しておられた王女が暗殺された。
       リーマンを叩く大義名分としては上出来。モナーが喜びそうな茶番ではないか。
       ならば放置しておけばよいだろう』

パンが無いならケーキを食べればいいじゃない。
かのマリー・アントワネットの名台詞はこの様な口調で言われたのではないだろうか?

兄者の冷徹な一言にナイトウの銀髪が怒りに逆立つ。



54: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:56:51.22 ID:R7gAt/j/0
( ゚ω゚)『…上出来とか茶番とか…その言い方はなんだお?』

何故かは分からないが、ナイトウは『女性が襲われる』事に異常なまでの拒否反応を示した。
過去、戦のドサクサに紛れて女性を襲った兵士を見つけるや敵味方関係なしに惨殺した事は一度や二度ではない。
そんな時。彼は周囲が止められないほどの凶暴な戦士に豹変したと言う。

彼ら一行はヒートがヒッキーに一騎打ちを挑む直前に、城壁の守備を離脱している。
もし彼がヒートを暴行する【鉄壁】を目にしていたら、ショボンの作戦などお構いなしに単身敵陣に乗り込んでいた事だろう。

脳裏に浮かぶは複数の兵士に押さえ込まれ泣き叫ぶ長髪の少女。
その身に覆い被さる男の体ごしに叫ぶ。

     嫌!! やめて!! お願い!! ホラ…ゾ…見ちゃ駄目!! お願いだから見ないで…!!

フラッシュバックするその悲しい姿と声が彼を変えていく。
溢れる脳内麻薬が血流に乗って全身に行き渡り、痛みを打ち消す。

     ……ね……んを離…。く………んを……。離せ…離せ…離さないと…

口から自然に漏れた声と共にそれは治まった。
しかし、そこにいるのはナイトウではない。
一つの殺意の塊。

从( ゚ω゚)『お前ら…殺してやる』

怒りの炎を全身から立ち昇らせ、ゆっくりと歩を進め…

从 ゚∀从『落ち着け』

背後から頭頂部を竹箒で殴られた。



56: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 21:59:58.20 ID:R7gAt/j/0
首筋に氷を押し当てられたように興奮が冷めていく。

( ;^ω^)『ハ、ハインさん。いきなり何を…?』

从 ゚∀从『何を?じゃねーよ。単純な心理陽動戦術だろうが。
     ハインちゃんは姫さんの所に急げって言ったはずだぜ。ここは任せて早く行きな』

( ;^ω^)『いや、でも…』

从 ゚∀从『行け!!!!!』

あの2人に1人で勝てるのか?
そんな疑問を口にしようとしたナイトウをハインが一喝する。

( ;^ω^)『……』

両足を開き踵を軽く浮かせ構えるハインの姿は
立ち上る戦気も含めて(手にした竹箒を除けばだが…)一流の戦士の姿。

( ;^ω^)『…任せましたお』

その姿に小さく告げると、ナイトウはツンとドクオが消えた森の奥へ駆け出した。



60: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:04:19.73 ID:R7gAt/j/0
(´<_` )『…コントは終わりか?』

内藤の背が見えなくなったのを見計らって弟者が口を開いた。

从 ゚∀从『あぁ。悪ぃな、待たせちまって』

(´<_` )『ナイトウだったか…? まさかあそこまで激昂するとはな』

( ´_ゝ`)『正直計算外だった。だが、いいのか?
       あの状態の銀髪君とだったら我らに勝てたかも知れんぞ』

余裕を表面に見せ付けた心理誘導を仕掛ける兄者。
しかし、ハインはそれに掛かる事もなしに軽く笑い飛ばす。

从 ゚∀从『昔はともかく、今のハインちゃんには負けない…てか?
     いいぜ。試してみろよ』

(´<_` )      貴様とやりあうのは気が進まんのだが…』
      『試すか…。
( ´_ゝ`)      貴様は知りすぎていて萌えないのだが…』

ガンッ!!

(メ)_ゝ`)『 行 く ぞ ! ! 』(´<_`# )

兄弟は左右からハインに襲いかかる。

新たな森の戦いがここに開始された。



66: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:06:24.43 ID:R7gAt/j/0
ミセ;゚ー゚)リ『何…これ?』

ミセリは両足に絡みついた鋼鐵糸を解く事も忘れて、その戦いに見入る。
バーボン城でハインはヒートを『化け物www』と評した。
しかし、彼女は…【闇に輝く射手】と言われた元・暗殺者はミセリから見れば更なる『化け物』だった。

( ´_ゝ`)『十五式っ!!!!!』

ハインの頭上に跳躍した兄者が、複数の火炎玉を撒き散らす。

从 ゚∀从『へっ』

それはハインが竹箒を振るうと、生じた風圧によって針路を変更された。
地に落ちた兄者玉が破裂し、爆音と共に森を明るく照らす。

(´<_` )『後ろだ!! 【突】!!!!』

弟者の左手から矢が放たれた。

从 ゚∀从『わお♪』

後ろ回し蹴りの要領で身を翻す。矢は給士服のスカートに弾かれ、バラバラと散っていった。
そのまま勢いを殺さず、宙を3回後回してハインは距離を開ける。

(´<_` )『!! 鉄糸を織り込んでいるとでもいうのか!?』

从 ゚∀从『違ぇよ』

右手に持った箒の柄を地に立てるように持ち、ハインはスカートの裾を摘みあげた。
その裏地には…【射手】の代名詞たる飛刀がびっしりと縫い付けられている。



70: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:09:04.16 ID:R7gAt/j/0
(´<_` )『…なるほど。その飛刀で俺の矢を弾いた訳だな』

从 ゚∀从『御名答。ハインちゃんにお前らの攻撃は通用しないぜ』

ハインは一層高くそれを持ち上げる。
そして、彼女の背後で座り込み持ち上げられたスカートの中を覗き込む男が1人。

( ´_ゝ`)『おぉ、ブーム君パンツ。昔と同じではないか』

从 ゚∀从『……』

(´<_` )『……』

ミセ*゚ー゚)リ『……』

………。

( ´_ゝ`)『一つ忠告してやる。好きなのは構わないと思うのだが…似合わn』

从#゚∀从『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!』

この男は一体何を考えているのだろうか?

( ´_ゝ`)『 すごく いたい です 』

ヒートばりの叫びと共に放たれた渾身の爪先蹴りを顎に受け、兄者は地を転がった。



74: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:11:24.63 ID:R7gAt/j/0
从#゚∀从『ハインが…ハインちゃんがブーム君好きで文句あるかぁっ!!!! 
     しょーがねーだろ!! 可愛いんだからよ!!!』

微妙に顔を赤らめ、顎を押さえて座り込んでいる兄者に手にした箒を左袈裟に振り上げる。
その彼女に飛びかかる影が一つ。

(´<_` )『 すきあり です 』

从 ゚∀从『!!!』

ハインから見て右手側、つまり無防備な角度に回り込んだのは弟者だ。
駆けつつ狙うは、最も的が大きい胴体部分。
必殺の一撃は必要ない。
ハインの動きを鈍らせるだけでも十分勝機に繋がる。

                             キン。

弟者の手斧は給士のがら空きの脇腹を抉り取る…はずだった。
味方ながら鬱陶しい程に繰り返された兄者得意の性的陽動作戦。
それが遂に効果を発揮して、戦いの波をこちらに傾ける事が出来る…はずだった。

しかし。
その綿密かつ巧妙な作戦は突如ハインの右手に現れた刃によって阻まれる。

(´<_` )『なっ!!』

慣性に支配された体は簡単には止まらない。
弟者は身近にあった手ごろな大きさの兄者の頭を踏み台にして跳躍。
追撃に備えて距離を取る事に成功した。
給士も当然の様に兄者の顔面を蹴り飛ばし、体勢を整える。



80: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:14:04.86 ID:R7gAt/j/0
(メ)_ゝ )『…流石にこの扱いはどうかと思うのだが、如何だろうか?』

(´<_` )『仕込み杖…いや、仕込み箒という訳か』

鼻血を垂れ流しながら抗議する兄者を無視して
弟者はハインを睨みつけた。
その左手には若干柄が短くなった竹箒。
右手には鈍色に光る小太刀が握られている。

从 ゚∀从『まぁな。昔っから言うだろ? 【給士と箒は切っても切り離せない関係にある】ってよ。
     そこでハインちゃん特製仕込み箒ってワケだ』

言いながら彼女は箒を投げ捨て、二度三度軽い屈伸運動を始めた。

(メ)_ゝ )『…どうかと思うのだが、如何だろうか?』

双子の弟に比べ僅かに低い鼻から滴る血を袖で拭き取りながら兄者が立ち上がる。

从 ゚∀从『そろそろ体も温まった事だしよ。本気で行くぜ』

(メ)_ゝ )『…如何だろうか?』

(´<_` )『兄者!! 来るぞ!!』

兄弟は襲撃に備え腰を落とす。

瞬間。
【天翔ける給士】の姿が歪んだ。



85: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:16:41.07 ID:R7gAt/j/0
(´<_`; )『う…わぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

突如目の前に現れたハインに、弟者は思わず悲鳴をあげる。

( ´_ゝ`)『弟者!!』

兄の声だと脳が判断すると同時に、右腕から骨が砕ける音が全身に響き渡る。
逆手に構えた小太刀の棟が彼の腕に喰いこんでいた。

正に一瞬の出来事。
何が起きたのか全く理解できず、頭が混乱する。
倒れこんでから初めて激痛が弟者の右腕を襲った。
視界の先にはすでに加害者の姿は無い。

( ´_ゝ`)『上だっ!!』

声に自然に体が反応した。
見上げればそこには小太刀の刃を口に咥え、両手の指に複数の飛刀を挟み持った【射手】の姿。

从 ゚∀从『ふぁかおかりゅうふぃひょうじゅひゅ・ふゃんびゅ!!!!!』

高岡流飛刀術・乱舞。
叫びと共に、八本の飛刀が緩急をつけて弟者に降り注ぐ。

( ´_ゝ`)『十九式っ!!!!!』

それを兄者が咄嗟に投げつけた鳥粥玉が撃墜する。
しかし、その兄者も直後背後に出現したハインの蹴りを受け顔面から地に倒れこんだ。



88: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:19:05.82 ID:R7gAt/j/0
(´<_`; )『…あ……あにzy』

( ´_ゝ`)『落ち着け弟者!! 冷静になりさえすれば捕らえきれぬ速度ではない!!
       敵は【射手】だぞ!! この程度想定の範囲内だろうが!!』

兄者は即座に立ち上がり、手斧を振り下ろす。
金属音と火花が飛び散った。
兄者の一撃を受け止めているのは、逆手に持ったハインの小太刀。

その姿を弟者が目で捕らえた瞬間
再び空間が歪み、支える力を失った兄者の上半身は体勢を崩す。
が。

( ´_ゝ`)『十五式っ!!』

兄者が咄嗟に投げつけた火炎玉は空中でいきなり破裂した。

(´<_` )『見えたぞ、【射手】っ!!』

今度ははっきりと目視した。
バックステップで距離を空けようとしたハインを兄者玉が追撃。
それを彼女は飛刀で撃ち落したのだ。

更に兄者は何も無い空間に上段蹴りを放つ。

ゴスッ。

人体と人体がぶつかり合う鈍い音がして、兄者と蹴りを交差させるハインが姿を現した。



91: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:21:09.02 ID:R7gAt/j/0
力と力の勝負になれば、体格差で勝る兄者に軍杯が上がる。
きりもみ状に吹き飛んだハインは、それでも頭から地面に衝突する寸前に体を捻り滑り込むように着地。
土煙が彼女を包み込んだ。

从 ゚∀从『へぇ。やるじゃん』

スカートを叩いて土埃を落としつつ言う。
弟者は立ち上がるや、給士と向かい合う兄と背中合わせになるよう構えた。
この体勢ではハインの表情は見えないが、兄者の盾…もしくは囮になる事は出来る。

『…腕は大丈夫か?』

背中越しに兄者が問いかけてきた。

(´<_` )『うむ。折れてはいるが…俺にはこの義手がある。問題はない』

弟者は思う。
この負傷は戦場で平常心を欠いた自身への戒めだ、と。
何年も耳にしていなかった兄の本当に真剣になった声が、彼の心を落ち着かせた。

(´<_` )。oO(兄者があんなに真剣になったのは…五年ぶりか)

…あの時は、メンヘル十二神将が一人【不敗の魔術師】のサイドポニーに萌えたとかで
夜這いをかけて殺されかけたんだよなぁ。
そんな事が頭に浮かび、弟者は頭を強く左右に振った。

(´<_` )『いかん。集中しろ!! 集中だ!!』



93: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:23:20.79 ID:R7gAt/j/0
弟者は痛む右腕を歯を喰いしばって動かし、義手の肘部分にある操作スイッチを操作する。
シャキッ!! と言う音を立てながら義手の甲から鋭い刃が飛び出した。

(´<_` )『…慣れん武器だが…無いよりはマシだろう』

自身の不始末で戦況を不利にしてしまった。
戦線離脱は許されない。

比類なき変態であり本気で殺してやりたいと思っていると同時に、
誰よりも頼りになる兄に背を預け弟者は五感を集中させる。

( ´_ゝ`)『弟者、安心しろ。如何に【射手】とは言え、捕らえきれぬ相手ではない』

(´<_` )『うむ。すまなかった』

【闇に輝く射手】ハインリッヒが王都デメララを暗躍したのは、すでに8年も前の話だ。
その間、彼女には戦いのブランクがあり
我らには積み重ねた経験がある。
負ける筈が無い、と弟者が溜め込んだ息をゆっくりと吐き出ーーーーー

空気が振動する。そう感じた時には背後にいた筈の黒衣の給士が彼の正面に立っていた。
足を開き、上半身を折り曲げる姿勢で弟者の顔を下から覗き込んでいる。

从 ゚∀从『みなさーん!! 元気ですかー? それでわ予告通り本気モード行ってみよー?』

( ;´_ゝ`)『 は ? 』(´<_`; )

ハインは呆ける弟者の目の前に指を3本。開いて突き立てた。

从 ゚∀从『…3。2。1。ハインちゃん行きまーーーす!!』



96: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:25:27.15 ID:R7gAt/j/0
(´<_`; )『がッ!!!?』

見えなかった。
いや。
かろうじて捉える事が出来たのは、自身の鳩尾に肘を叩き込む【射手】の残像のみ。

思わず体を丸めそうになる弟者の背に、小さな悲鳴と共に仰け反る兄者の体がのしかかる。

ハインは弟者に肘打ちを当てると同時に兄者の正面に回りこみ、
斜め上空に跳躍するついでに兄者の顎を小太刀の棟で切り上げたのだ。

放たれた矢の勢いで宙を飛ぶ彼女は正面の木に衝突寸前、水泳のターンの要領で半回転。
見事に大木の棟に着地(?)する。

从 ゚∀从『高岡流飛刀術奥義。飛刀乱舞ーーーーー』

ーーーーー六連。

計四十八本の飛刀が兄弟に雨霰と降り注いだ。

(´<_`; )『くそっ!!』

横っ飛びに難を逃れるが、その目に映るのは黒いソックスに包まれた女性の細い足の甲。
頬を蹴り飛ばされ、弟者は不本意にも地を転げまわる。



100: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:27:15.77 ID:R7gAt/j/0
( <_メ; )『ガッ!! ギッ!! グッ!! ゲッ!! ゴォッ!!』

正面から。背後から。
右から。左から。
下方から。上空から。
打撃。剣戟。投擲。

それらの攻撃がコンマ0秒の単位で繰り返される。
戦場において戦力の低い者を集中的に狙うのは決して卑怯ではない。
むしろ常套手段ともいえる。
高速の連撃を受け切る事もかわしきる事も出来ず、弟者の体力は徐々に削られていった。

( ´_ゝ`)。oO(…ふむ。なんか違和感があるのだがなぁ)

対して、必然的に攻撃を受ける事が少ないのは兄者だ。
必要以上に血を分けた弟を庇おうとはしない。
その代わり、彼は全力で脳細胞を活動させていた。

当代、天才と謳われた戦略家・戦術家は多い。
統一王七英雄が一人、アルキュ禁軍元帥【常勝将】。
同じく七英雄、メンヘル十二神将筆頭【天使の塵】と彼の右腕と言われる【不敗の魔術師】。
ヒロユキの軍師を務めた【全知全能】と、その弟子…北の三華仙が一角【無限陣】。
バーボンの奇人【天智星】。

そして、ショボン同様珍奇な行動言動の影に隠れているが
この【金剛阿】兄者も後世、天才としての評価が高い人物である。

戦場において戦力の低い者を集中的に狙うのは決して卑怯ではない。
むしろ常套手段ともいえる。
だが、ハインはこの天才に考える暇を与えるべきでは無かった。



103: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:29:36.96 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)。oO(あぁ、そうか!!)

遂に兄者は結論に辿り着く。

繰り返される小太刀の棟での攻撃。
急所に当たらない必殺の飛刀。
圧倒的に押されながらも致命傷を受けない弟者。

そして、最強の暗殺者ハインリッヒ。

そこから導き出される答えは一つ。

( ´_ゝ`)。oO(こんな簡単な事にも気付かないとはな。真実は常に一つだというのに。俺のバーロー)

兄者は一歩足を踏み出し、静かに口を開く。

( ´_ゝ`)『質問があるのだがいいかな? 【天翔ける給士】ハインよ』

閃光にも似た攻撃が止まった。
弟者の頬に裏拳を叩き込む寸前の姿で黒衣の給士は姿を現す。

( ´_ゝ`)。oO(やはりな)

よろよろとふら付きながら後退する弟者の肩を支える兄者。

从 ゚∀从『質問だ? いいぜ。なんでも言ってきな』



108: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:32:03.29 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)。oO(弟者よ、大丈夫か?)

(´<_`メ)。oO(あまり大丈夫ではないな。それより…ようやく状況を引っ繰り返せる策が出来たのだな?)

小声で弟者の安否を尋ねつつ、兄者は策を完璧にする為の確認作業@に入る。

( ´_ゝ`)『そうだな。まずはお互い成長した事だしスリーサイズでも…』

从#゚∀从『上から7…って言う訳ねーだろ!! 質問はそれだけとか言うんじゃねーだろうな!?』

あくまでエロ紳士の仮面を外さぬように。
あくまで心の深遠を覗かれぬ様に。

( ´_ゝ`)『いや、すまん。つい本音が口から出た。
       それにしても70台とは…見た所もう少しありそうだが詰め物か?
       …っと、言いたい事はこんな事ではなくてだな……綺麗になったな。ハイン』

从;゚∀从『はぁ!? マジキメェwwwwww』

( ´_ゝ`)『何を言うか。俺はずっとお前を見てきたのだぞ。
       本当に美しくなった。特にその黒い髪…よく似合ってる。イメチェンか?』

从;゚∀从『あ…あぁ、一応礼だけは言っとくわ。でもマジ吐き気するから止めろよな!!』

兄者の真意を計り切れず、気を削がれた表情の給士。
これでいい。
蟻地獄のように相手を自身のペースに引きづり込んで行く。



111: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:34:09.47 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『しかし…俺は【炎髪の人斬り】と呼ばれた頃のお前も好きだったのだがな。
       どうだ? 俺と結婚して昔の様な赤い髪に戻さないか?
       つか、給士とセクロスは男の浪漫なのだが… や ら な い か ? 』

その一言で硬直していたハインの表情が一変した。

从#゚∀从『【闇に輝く射手】ハインリッヒは死んだ!! 昔の話をするんじゃねぇ!!!!』

こめかみに青筋が浮かび、肩が激しく上下している。
確認作業@終了。
兄者はガックリと膝から崩れ落ちて見せた。
自然と浮かんでくる笑みを…そしてもう一つの表情を隠す為に。

( ´_ゝ`)『おぉ…。そろそろ嫁さんが欲しくて誰彼構わず口説いて…これで100連敗。
       世の中に救いの神はいないのか』

从#゚∀从『てめぇ!! ふざけんじゃねーぞ!!!』

(´<_` )『…空気が読めない男でスマンな。ハインリッh…いや、今は【天翔ける給士】アイ〜ンだったか?』

从#゚∀从『アイ〜ンじゃねぇっ!! ハインちゃんだ!! ハ・イ・ン・ち・ゃ・ん!!』

兄が何を企んでいるかはまだ分からない。
だが、今の弟者に出来る事と言えば兄を支援する事だけだった。
続いて兄者は確認作業Aに入る。



116: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:36:27.02 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『あぁ…死にたい…まさか幼き日々を共に過ごしたフラグがベッキベキにへし折られるとは…』

(´<_` )『兄者よ。それは妄想という物だ』

傍目から見れば、今にもバーボン河に入水しそうなほどに落ち込む兄者を元気付けようとする弟者。
しかし、その唇は暗い森では確認できない程度に小さく動かされ、会話がなされていた。

( ´_ゝ`)。oO(弟者よ。【縛】はまだ残っているか?)

(´<_` )。oO(一発だけならな。しかし、あの動きに当てる事は不可能だぞ。
        なにせ、どこに動くのかが全く分からん)

( ´_ゝ`)。oO(逆に言えば、どこに動くかさえ分かれば当てる事は出来るのだな?)

(´<_` )。oO(それは可能だが…当ててどうするのだ?)

絡め取ったとしても、ハインが手にする小太刀は
【闇に輝く射手】と共に幾つもの暗殺に関わってきた兇剣だ。
例え弟者の鐵鋼糸と言え一瞬にして断ち切られてしまうだろう。

( ´_ゝ`)『うむ。一瞬でいい』

確認作業A終了。
兄者はゆっくりと立ち上がる。

( ´_ゝ`)『一瞬でいいのだ。一瞬でも動きを封じれば、
       あとは…我が精神破壊的兄者玉がヤツの心を破壊してくれよう』



119: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:38:22.38 ID:R7gAt/j/0
从 ゚∀从『…くだらねぇ作戦会議は終わったか?』

退屈そうに仕込み小太刀の棟で肩を叩きながら言う。

(´<_` )『…!! 気付いていたのか!?』

从 ゚∀从『まぁな。つか、不自然すぎるだろ兄者よぉ』

問われた本人は服の袖で目元を拭った。
その目は兎のように赤い。

从;゚∀从『ちょwww涙目www』(´<_`; )

( ´_ゝ`)『…泣きたくもなるさ』

兄者は涙で充血した眼を隠そうともせずに言う。

( ´_ゝ`)『苦しい修行を共に乗り切った幼馴染を…
       素直に自分の気持ちを表現できない嫁候補を…この手で殺さなければならんのだからな』

言葉を終え、ふぅ…と憂鬱げな溜息を1つ吐いてから襲いかかった。






戦場を少し外れ、未だ地面に座り込んでいるミセリを狙って。



125: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:40:20.31 ID:R7gAt/j/0
从;゚∀从『…なっ!! 兄者!!』

ハインの姿が消えると同時に、強力な蹴り足によって地面に小さなクレーターが生じた。

ミセ;゚ー゚)リ『ひゃっ!!』

自分が標的になるとは露ほども思っていなかったのか、ミセリは振り下ろされる手斧を呆然と見つめている。

しかし、それがミセリの脳天を両断する事はなかった。
疾風と共に飛び込んできた小太刀が、兄者の一撃を喰い止めたのだ。

从#゚∀从『兄者っ!! テメェ血迷いやがっt』

( ´_ゝ`)『……やはり、そう動いたか。ハインリッヒよ』

怒りを顕わにするハインに向けて、兄者は何処となく寂しげに言う。

( ´_ゝ`)『【闇に輝く射手】と呼ばれた頃のお前であれば、
       足手まといにしかならない俺の嫁を庇うような事はしなかったはずだ。
       しかし…今のお前は【心持たぬ暗殺人形】ではない。
       ただの人間だ。恐るるに足りん』

从;゚∀从『!! しまっt』

その言葉でハインは兄者の狙いを察した。
受け止めている手斧を払いあげ、兄者を蹴り飛ばしてこの場を脱けようとする。

(´<_` )『もう遅い!! 弟者砲・二式【縛】!!!!!』

弟者の左腕から放たれた鐵鋼糸の網に両足を絡め取られ、ハインはその場に転倒した。



129: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:42:51.84 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)b『おぉ!! 成功したな、弟者よ』

q(´<_` )『いや、兄者の流石な作戦あっての事さ』

何故か弟者は親指を地面に向けながら、褒め称える。

从#゚∀从『…っ!! 汚ぇ手使いやがって!!』

長い八重歯で唇を噛みしめつつ、ハインは勢いで吹き飛んだ小太刀に手を伸ばす。
それを兄者の無駄に長い足が踏み押さえつけた。

( ´_ゝ`)『これも作戦だ。悪く思うな。
       そもそも昔のお前であれば、もっと卑劣な事も簡単にしてのけた筈ではないか』

懐から小さな玉を取り出す。

从#゚∀从『昔の事はっ…!!』

ーーーーーすまんな。貴様の精神、破壊させてもらうぞ。兄者玉百式。

ハインの抗議などどこ吹く風と言った風に兄者は、卵を片手で割る要領で取り出したそれを二つに割った。
こぼれた中身が、ぽとりとハインの給士服のスカートの上に落ちウネウネともがく様に動き回る。

それは所謂蛾の幼虫。つまる所は…5匹の毛虫。

その光景を見た給士の顔は引き攣り、みるみるうちに青ざめる。

         き ゃ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ ! ! ! ! !

森に悲鳴がこだました。



132: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:45:12.57 ID:R7gAt/j/0
从;゚―从『!!!!!!』

ハインは自分が甲高い悲鳴をあげた事に気付くと、咄嗟に口を閉じた。
ゆるゆると上を見ると、兄者がニヤニヤと笑いながら彼女を見下ろしている。

从#゚∀从『テメェ!! なにしやがる!!』

( ´_ゝ`)『怒ったか? 怖い怖い。
       それにしても…随分と可愛らしい悲鳴でしたなぁ、弟者さん?』

(´<_`; )『それには同意するが…。まさか精神を破壊するというのは…?』

( ´_ゝ`)『【射手】は昔からこの手の類の物が死ぬほど…触っただけで三日三晩寝込むほど苦手だったからな。
       敵の弱点を突く。戦術の基本と言うものだ』

自慢げに言いながら、兄者は更に大量の兄者玉をハインの頭上に放り投げる。
互いにぶつかり、割れて飛び出したのは…。
大量の毛虫。青虫。蛆虫。蜘蛛(くも)。百足(むかで)。
蚯蚓(みみず)。蛞蝓(なめくじ)。長年かけて集めた兄者の子種。その他色々。

 き ゃ あ っ ! !  兄者このやろ… い や っ ! ! 絶対許さね… や だ ぁ っ ! !
ぶっ殺… ダ メ ッ ! !  も う 止 め …玉抉り取って捻り潰してやr…許してぇ…

(´<_`; )。oO(この隙に俺が攻撃しても良いのだが…人としてそれは出来んな)

弟者は何故か痛み出した頭をやれやれと左右に振り、
地に腰を下ろして兄の奇策を観察しはじめた。



136: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:47:53.22 ID:R7gAt/j/0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雄叫びを上げ、大地を振動させて接近する騎馬の群れ。

(-_-) 『そ、そんなバカな!!』

彼らに挟撃されては、自身の兵など簡単に蹂躙されてしまうだろう。
こうなればショボンに構っている暇などない。
如何にして戦場を離脱するか?
それこそが最大の問題と言えた。

(´・ω・`)『言っておくけどね。【射手】が君程度に負けると思うのかい?
      君がいい気になって痛めつけようとしてくれたのは、自称【燃え叫ぶ猫耳給士】ヒートさ。
      まぁ、あの子は精神的にまだまだ甘いから…本領発揮すれば君だって簡単には倒せなかった筈だよ』

(#-_-) 『そんな事はどうでもいい!!
     我が騎士達よ!! 王女など後回しだ!! 戦陣を整えろ…来るぞ!!』

その目は、楔形に隊列を整えて突進する騎士達を捕らえて離さなかった。
先頭を駆ける血まみれの騎士。
手にした死神の大鎌。吊り上った太い眉。背に差した【無敵 急先鋒】の旗の文字。

(´・ω・`)『やれやれ。随分遅かったね。
      おかげでヒートがこの童貞君に犯される所だったよ』

ショボンが遅刻した生徒を咎める教師の口調で言う。

( ゚∀゚)『そう言うな。これでも全力で飛ばしてきたんだぜ。
     さて、引き篭もり野郎。第2回戦と行こうじゃねーか!!!!!』



142: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:52:03.37 ID:R7gAt/j/0
【急先鋒】ジョルジュ率いる【薔薇の騎士団】450名。
怒りに燃える彼らは、ヒッキーを前に馬を止めた隊長を避けるように二手に別れ
宿敵に突進していく。
しかし、ヒッキー率いる【鉄柱騎士団】とて無能の集団ではない。
陣形を厚く整え、それを迎え撃つ構えを取った。
限界まで疲労した両軍が衝突し、阿鼻叫喚の世界が幕を開ける。

( #゚∀゚)『俺様の可愛い妹分を犯そうとはな。
     お前には勿体無いぜ』

(#-_-) 『黙れ…黙れ黙れ黙れ!!!
     僕を…馬鹿にするなぁっ!!!!!』

額に青筋を浮かべた両将が激突する。

どんなにヒッキーの鉄槌が強固であろうと、
隕石をもって鍛え石柱すら切り裂くと言われたジョルジュの大鎌を砕く事は不可能である。

それでもその一撃が直撃すればジョルジュの肉体は吹き飛び破壊されるであろうし、
騎馬の勢いと重ねたジョルジュの大鎌はヒッキーの鎧を通して衝撃を与えるであろう。

十合。二十合。三十合。
必殺の念を込めた両者の武器が交差する。

( ゚∀゚)『よぉ、引き篭もり野郎。カーチャンは元気にしてるか?
     今のお前をカーチャンが見たら何と言う!? カーチャンを泣かすようなマネをするんじゃねーぜ』

(#-_-)『貴様が…貴様がカーチャンを語るなぁっ!!!!!』



146: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:54:27.77 ID:R7gAt/j/0
鉄槌を掲げ、落雷の如く振り下ろす。
騎馬を巧みに操り、それをかわすとジョルジュは隙の出来た両腕に大鎌を振るった。

(-_-) 『フン!!』

読んでいたとばかりに獲物を掬い上げ、受け止める。

そんな2人の激闘に割り込んできた者達があった。

重騎士D『将軍!! ここまでで御座います!!』

彼らの将を庇う様に壁を作る。

(#-_-) 『そこをどけっ!! 巻き添えになってもしらんぞっ!!』

重騎士D『どきませぬ!! 勝敗はすでに決しました!! 
     味方はすでに逃亡し、戦場に残るは我ら十数名ばかりでございます!!』

(-_-) 『……』

ヒッキーは周囲を見渡した。
そこには、勝ち名乗りを上げる騎士の姿があちこちに見られる。

重騎士D『ここはお退き下さい!! 鎧を捨て、馬を奪い逃げるのです!!
     我ら一同、将軍の為に壁となりましょうぞ!!』

白髪の目立つ重騎士は【急先鋒】に槍を振るう。

重騎士D『お願いです、将軍!! 将軍さえ生きていれば汚名を晴らす日は必ず来ます!!
     我らの忠義をお思いなら、ここは恥を偲んでお逃げください!!』



148: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:56:12.16 ID:R7gAt/j/0
(-_-) 『フン…。礼は言わんぞ』

言うやヒッキーは踵を返し、大地を揺らしながら逃亡した。

( #゚∀゚)『逃げるか卑怯者め!!』

その背に襲いかからんとするジョルジュの前に数名の重騎士が立ち塞がる。

( ゚∀゚)『どきやがれ!! 命を粗末にするんじゃねぇ!!』

重騎士D『何を言うか!! この洟垂れが!!』

重騎士が一喝する。

重騎士D『生涯の忠誠を誓った主の為に命を捨てる…それのどこが粗末だというのだ!!
     貴様も騎士ならば覚えておけい!!!!!』

( ゚∀゚)『……』

それを聞いたジョルジュは大鎌を握りなおした。

( ゚∀゚)『あんな馬鹿にもこれ程の忠臣がいるとはな…。
     失礼した。非礼を詫びよう。
     我が名は【急先鋒】ジョルジュ。せめてもの詫びに痛みを感じる前に殺してやるぜ』

重騎士D『名高い【急先鋒】に討たれたとあらば、地獄への土産話にはもってこいじゃ』

笑みすら浮かべる重騎士にジョルジュは大鎌を振り上げる。



149: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 22:58:03.77 ID:R7gAt/j/0
(´・ω・`)『終わったね』

( ゚∀゚)『あぁ』

轡を並べて2人の義兄弟は城門に向けて歩を進めた。
愛馬の足元には、甲冑に身を包んだ騎士達の死体が横たわっている。

( ゚∀゚)『ところでよ、本当に追撃しなくていいのか?
     引き篭もり野郎の事だ。しつこく攻め込んでくるだろうぜ』

(´・ω・`)『うん、だからこそだよ。
      バーボン領外に出られてリーマン正規兵と鉢合わせてごらん。
      それこそ全滅するのはこっちだよ』

言いながらショボンは白眉を撫で付けた。

(´・ω・`)『それに、大事なのは【至宝】…いや、王女の方だからね。
      ヒートの具合も気になるし』

( ゚∀゚)『王女ツン=デレか…』

ジョルジュは城門を見上げる。

( ゚∀゚)『王女が何を思い、何を感じ、何を為すのか。俺にはわからねぇ。
     でも、【王族】だからってんじゃなくてよ。
     一人の人間として…あんなまだまだおっぱいも小さな女の子が生きていくって言うんなら、
     男として助けてやりてえよな』

その言葉を聞いた【天智星】は大きく頷いた。



153: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:00:14.22 ID:R7gAt/j/0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

从*;∀从『殺s…や、やだぁっ!! 絶対に殺s…ひっ!! 十回殺s…止めてよぉ!!』

脅迫めいた言葉と、嘆願交じりの悲鳴を繰り返すハイン。
髪にしがみついた蜘蛛を必死に振り落とし、給士服にへばりつく毛虫を払う。
それでも後から後から彼女の頭上からは幾多の虫達が降り注いでいた。

傍目から見れば冗談の様な攻撃である。
しかし、加害者も被害者もこれ以上は無いまでに真剣であった。

ミセ#゚ー゚)リ『アンタねぇ!! 女の子になんて事すんのよ!!』

どこか的外れな批難をするのはミセリだ。

(´<_`; )『俺も流石にどうかと思うぞ。
       動きを止めるにはもう十分なのだから…そろそろ殺してしまえばいいではないか』

( ´_ゝ`)『……』

それには答えず、虫の雨を降らせる兄者。

(´<_`;)『なぁ、兄者よ』

( ´_ゝ`)『弟者よ。少し黙ってくれないか』

表情は変わりない。だが、心の中で彼は激昂していた。



156: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:02:02.23 ID:R7gAt/j/0
兄者は思う。

【闇に輝く射手】と言えば、隠密ならば誰もが憧れる最高位の実力者の筈だ。

あの日。
養父に心を砕かれたハインリッヒは、【心持たぬ人形】と言われるほどに……
感情を現さず幾つもの暗殺に関わってきた。

そして。
自我が崩壊し狂った彼女が封印されたのが9年前。
狂ったまま【里】を出たのが8年前。

自分は彼女の分まで。
何よりも大切な弟の為。
自我を隠し、仮面を被って生きてきた。
いや。
生きていかなければならなかった。

ただの牽制のつもりだった。
しかし、今のハインリッヒは……。

怒り。泣き。笑い。うら若き乙女のような悲鳴をあげている。

その姿は【人形】と言われた頃の彼女ではない。
その姿は仮面を被って生きている自分と同じではない。

その姿は…ただの一人の人間。



161: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:04:21.80 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)。oO(【射手】よ!! この8年で貴様に何があった!! なぜ貴様は…そんなにも人間なのだ!!)

心が濁る。
この感情は…嫉妬?
何をバカな!! 
哀れみこそすれ、嫉妬などする必要などない!!

その思いが更に心を濁らせる。

(´<_`# )『兄者!! いい加減にしろ!!女の悲鳴に喜ぶのは勝手だが、これ以上は時間の無駄だ!!』

背後から肩を掴まれ、兄者は我に返った。

どれ程兄者玉を浪費したのか、目の前でへたり込む元【射手】は全身を虫にまとわりつかれている。
両手で顔を覆い隠し、肩を震わせ、すでに悲鳴も無くしゃっくりあげていた。

ミセ#゚ー゚)リ『このっ!! 最低男!! 死ね!! 氏ねじゃなくて死ね!!』

ミセリの批難を右耳から左耳にスルーさせ、兄者は再び懐から拳大の玉を取り出す。

( ´_ゝ`)『あぁ、すまんな弟者。すっかり自分の世界に入ってしまったようだ』

まだ混乱の残る頭で大きく振りかぶった。

( ´_ゝ`)『【射手】よ!! これが最後だ!! 兄者玉・十五式!!!!!!!』

(´<_`; )『あ!! 馬鹿!!』

弟者の小さな悲鳴と共に、ハインの足元にそれは叩きつけられる。
そして彼女は炎に包まれた。



168: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:07:45.92 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『勝ったっ!! 第7章 完っ!!!!!!』

兄者は勝利のポーズを決めて見せる。

(´<_`; )『何が「勝ったっ!!」だ!! 自分がなにをやったか分かっているのか!?』

( ´_ゝ`)b『分かっているさ。あの【闇に輝く射手】を。ハインリッヒを我ら兄弟が殺したのだ。
       モナーも喜ぶだろうよ』

(´<_`; )『こ、この馬鹿兄者っ!!』

兄者は分かっていなかった。
兄者はまだ混乱していた。
だから、この様な愚行を犯した。

臭水(石油)と風から作られた鐵鋼糸。
もし、ナイロンに火を近づけたらどうなるか。
飛んで火にいる夏の虫、と言う言葉がある。
もし、ハインの全身を覆う虫に火を近づけたらどうなるか。

考えなくても分かる筈だった。

そして。

ーーーーーゆらり。

炎の中から……彼らの死神が立ち上がる。



175: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:10:20.88 ID:R7gAt/j/0
( ;´_ゝ`)『あ』

(´<_`; )『あ。ではないだろうが!!!! 死ねばいいのに…つか今すぐ吊って来い!!』

炎に包まれた給士服はあちこちが焦げており、あちこちから煙が昇っている。
それでも彼女は、それを意にも介さず歩を進めると、片膝をつく姿勢で座り込んだ。

从 ;∀从『…ひっく…ぐすっ…よくも…よくもやりやがったな…』

その両手には何本もの飛刀が握られている。

(´<_`; )『あの構えは!! く…来るぞ、変態大馬鹿兄者!!』

( ;´_ゝ`)『分かっている、弟者!! 守りに集中しろ!! あと、さり気なく変態とか言うな!!』

高岡流飛刀術奥義。飛刀乱舞六連。
いや、今の怒りに身を任せきったハインであれば八連か、十連か、十二連か。

从 ;∀从『…ぐすっ…えぐっ…高…岡流飛刀…っ…術究極奥義…飛刀乱舞ーーーーー』

しかし、これを防ぎきれば…まだ兄者の精神破壊系兄者玉は残っている。
まだ勝機は十分にある。兄弟は足元を固め身構えた。

( ´_ゝ`)『…来い、【闇に輝く射手】ハインリッヒよ!! それが貴様の最後の攻撃だ!!』(´<_` )





从 ;∀从『ーーーーー108連』



188: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:15:35.84 ID:R7gAt/j/0
( ´_ゝ`)『………………………………』(´<_` )

                   静寂。

( ;´_ゝ`)『……………………mjd?』

首が縦に振られる。

(´<_`; )『………………………俺も?』

再度首が縦に振られた。

( ;´_ゝ`)『………………………………』(´<_`; )

从 ;∀从『…ぐすっ…ぐすっ…あるある…』

( ;_ゝ;)『…………ねーよ……………』(;<_; )

この兄弟すでに涙目である。
口を合わせて突っ込んだ瞬間。








兄弟の体にハリネズミの如く飛刀が突き刺さった。



192: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:19:09.59 ID:R7gAt/j/0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドクオォォォォォォォォォォッ!!!!!!!

聞きなれた声にドクオの心が乱れる。
心臓を狙った筈の一撃は、ツンの脇を掠め背後の大木に突き刺さった。

ξ )ξ『……ナ…イトウ?』

('A`)『…ちっ』

力任せに短槍を引き抜き振り返る。

( ;^ω^)『お前…何してるんだお?』

そこにあるのは親友。いや、親友だった少年の姿。
ナイトウは大きく肩で呼吸しながらゆっくりとドクオに近づく。

( ;^ω^)『ドクオ…何の冗談だお』

('A`)『…冗談なんかじゃねぇよ』

( ;^ω^)『悪い冗談だお。だって…ドクオは…』

約束したのだ。

         ('A`)『…いきなりじゃ難しいけど、努力してみるつもりだ』

と。



197: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:21:36.74 ID:R7gAt/j/0
;^ω^)『やめるお!! そんな事して何の意味があるんだお!!
       僕にはモテナイの恨みとか…難しい事は分からないけど、ツンは何も悪くない!!
       みんなで努力すれば分かりあえるはずだお!!』

('A`)『…』

ドクオは思う。
そうだな。
その真っ直ぐな気持ちが羨ましい。

('A`)『…残念だけどよ。努力してもわからねぇヤツもいれば、
    努力すら出来ねぇヤツもいるって事だ』

( ;^ω^)『そんな…』

('A`)『…だからよ、ナイトウ。俺はこの島を新しく作り変える。
    王族とか貴族とか民族とか…そんなもんが無い世界を作り上げる。
    その為には、クソ女…いや。王女なんてもんが生きててもらったら困るんだ』

言ってドクオはツンの頬を殴り飛ばした。
王女はそのまま地に倒れこむ。

( ゚ω゚)『!! 誰かの犠牲の上に成り立つ世界に…なんの意味があるんだお?』

ナイトウの髪が逆立つ。



199: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:23:31.08 ID:R7gAt/j/0
('A`)『……』

( ゚ω゚)『答えるお!! ドクオ!!』

('A`)『…これから千年の平和の為だ。誰かがやらなきゃならねぇんだよ』

( ゚ω゚)『違う!! 誰かがやるんじゃない!! みんなで努力するんだお!!』

('A`)『…その【みんなが努力】するのは何時になってからだ?
    10年後か? 100年後か? 
    【みんなが努力】していたら今この島がこんな状態にはなっていないんじゃないか?』

ドクオは話は終わりとばかりに唾を吐き捨て、短槍を構えた。

( ;゚ω゚)『…ドクオ…頼むから止めるお』

('A`)『…ナイトウ。ここまでだ。どんなに話したって俺達は分かりあえねぇよ』

銀髪の青年も震える手で両手の武器を構える。

('A`)『…お前を殺して、ツン=デレを殺す。
    そして俺は修羅としてこの島を導いてみせる。
    ナイトウ。さよならだ』

言葉を終えると、獲物を狙う狼の鋭さでドクオは襲いかかった。



203: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:25:34.18 ID:R7gAt/j/0
( ゚ω゚)『くそっ!!』

左手の戦爪で槍を払い身をかわす。

('A`)『…やっぱりそうするよなぁ』

(メ)゚ω゚)『がっ!!』

右頬を熱い衝撃が襲い、ナイトウはよろめいた。
ドクオは槍を払われた勢いを利用して体を回転させ、石突でナイトウの頬に一撃を加えたのだ。

そのまま槍を半回転させ、ナイトウの腹を串刺しにせんとする。
しかし。

('A`)『…グッ!!』

予想だにしなかったタックルを受けて、ドクオは後退した。

ナイトウは唾を吐き捨てる。
砕かれた奥歯が血に混ざって大地に転がった。



206: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:27:32.32 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…やるじゃねーか』

( ;゚ω゚)『ドクオ…止めるお…僕はドクオと戦いたくなんかないお』

('A`)『…そんな甘い事言ってられねぇんだ…よっ!!!』

光速の三段突きが襲いかかる。
初撃をかわし、二撃三撃を両手の武器で防いだナイトウだったが
続いての足払いに呆気なく足をすくわれ転倒する。
その太股を鋭い槍先が貫いた。

( ゚ω゚)『!!!』

流石兄弟との死闘で体力を失っているとはいえ、本来二人の力量はほぼ互角である。
更に言えば、互いの手の内を知り合う仲でもある。
しかし、殺す決意を持つ者と持たない者の差は大きい。
いや。大きすぎた。

( ;゚ω゚)『あうっ!!!!』

ドクオがその凶器を引き抜くと同時にナイトウの足から噴水の如く血が噴出す。

('A`)『…その傷じゃもう立てねぇだろ。終わりだ』

倒れる友に背を向け、王女に向けて歩を進める。
しかし。

( ゚ω゚)『そうは…させないお』

その足にナイトウはしがみついた。



210: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:29:50.64 ID:R7gAt/j/0
('A`)『…しつこいぜ、ナイトウ』

石突でその背を力任せに何度も何度も突く。
それでもナイトウの力は緩まなかった。

( ゚ω゚)『僕!! が!! 離し!! たら…ドク!! オは…どうす!! るつもりなんだお』

('A`)『…王女ツン=デレを殺す』

( ゚ω゚)『なん!! で…ど!! うして…』

('A`)『…王女の死はこの狂った秩序を壊す引き金になる。
    可哀相だが…王家に生まれた者の義務だと思って諦めてくれ』

ぷちん。
その言葉を聞いたナイトウの頭の奥で何かが弾けた。

目の奥に【あの】映像が浮かび上がる。

黒髪の少女に覆い被さる兵士。
兵士は欲望を口から滴らせ、悪魔の笑みを浮かべながら言うのだ。

         反逆者の家に生まれた者の義務だと思って諦めるんだな…。

( ゚ω゚)『あ…あぁ……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!』

叫び、ドクオの足を引き倒す。
噴出す血には目もくれず立ち上がるその姿はすでにナイトウではない。
ーーーーーそれは…一人の狂戦士。



216: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:32:17.78 ID:R7gAt/j/0
( #゚ω゚)『…言ったな…僕の前で女の子を殺すって言ったな』

('A`)『…それがどうしたよ』

( #゚ω゚)『殺す…殺してやる…もう誰も………さんの様にはさせない!!』

('A`)『…ようやく本気ってワケか』

飛び起き距離を空けると、半身に槍を構えなおす。
対してナイトウは…。
腰も落とさず、羽ばたく鳥の様に両手を大きく開いた。

( #゚ω゚)『……さん見てて…僕も…飛んでみせるお』

その目はドクオだけを捕らえているわけではない。
癇癪玉のようにフラッシュバックする、両手を広げて草原を駆ける少女の長い黒髪。
その手には小さな竹とんぼが握られていて、少女はどうやらそれを模して走っているようだった。

( #゚ω゚)『僕は飛ぶ…空よりも高く…誰よりも早く…そして…護ってみせる!!』

('A`)『…何をワケのわからねぇ事言ってやがr!?』

ドクオが言葉を終えようかとした瞬間。

ナイトウの姿が消えた。



220: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:34:52.43 ID:R7gAt/j/0
(;'A`)『…う…うおぉぉぉぉっ!!』

一瞬目の前にナイトウの姿を捕らえた気がして、ドクオは必死に槍を振るった。
しかし、それは空振りに終わる。
代わりに彼の鎧が引き裂かれ、血が噴出した。

(;'A`)『…くっ!?』

この傷は? 妙に冷静な頭で観察する。
3本に渡ってつけられたその傷は、ナイトウの左手の戦爪によってつけられた物のようだった。
それを証明するかのように、何時の間にかツンを背に庇うようにして立つナイトウの左手からは血が滴り落ちている。

(;'A`)『…なるほどな。俺もまだまだ覚悟しきれていなかったって事か』

ドクオは再び半身に槍を構えた。
先程とは比較にならないような暗い戦気が燃え上がる。

('A`)『…我は魔犬の末裔。この目は全てを捕らえ、牙は全てを貫く。
    礼を言うぜ、ナイトウ。俺はこれから全力でお前を殺す。そして…俺は真の修羅になる』

( #゚ω゚)『僕は…僕は…これ以上…傷つかせない!!』

( 'A`)『…何もかも破壊してやる。永劫の平和の為に!!』

( #゚ω゚)『それなら…僕は護ってみせる!! 偽りじゃない…本当の平和の為に!!』

二人の動きが止まった。
音一つ無い。二人だけの空間で一定の距離を保ち、円を描くように隙を窺う。
やがて。
頭上から舞い落ちた一枚の木の葉が地に落ちたのを合図に、二人は…二人の親友は動いた。



223: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:37:34.98 ID:R7gAt/j/0
大地を蹴り。
飛びかかり。
擦れ違い。
武器を振るい。
慣性に身を任せ。
足を止める。

まさしく閃光。
全ての動作は一瞬で終わった。
十数歩の距離を空け、互いに背を向けたまま2人は動かない。
そして。

ξ;゚听)ξ『ナイトウッ!!』

( ゚ω゚)『…くはっ』

左脇腹から弾ける様に血を吹き出させ、ナイトウが膝をついた。
倒れこむ体を、駆け寄ってきた少女が支える。

('A`)『……俺の勝ちだ』

ドクオはゆっくりと振り返り、とどめをさす為に足を踏み出す。
そして小さく呟いた。

('A`)『…いや。同時だったか』

袈裟に着られた傷から鮮血が舞い散る。
ドクオはよろめき、崩れ落ちる体を短槍で支えた。
明らかに戦闘を続行できる傷ではない。
それでも彼は歩を止めようとはしなかった。



228: ◆.B2lcGiYSA :2007/06/11(月) 23:40:04.38 ID:R7gAt/j/0
( ゚ω゚)『まだ…やるのかお?』

それを見てナイトウも震える足で立ち上がる。

('A`)『…あたりめーだろ…こんな傷であっさり死ねるような決意じゃねぇんだよ』

押し止めようとするツンの手をナイトウが振り払い、2人が再び刃を交えようかとした時。
森に響く声があった。

     ぐすっ…おーい!! ひっく…ナイトウ!! 姫さん!! えぐっ…どこだ!!

( ゚ω゚)『あの声は…!?』

('A`)『…クソ給士』

ドクオはハインの実力を知らない。
だが、ツンを探しているのはハインだけでない可能性を彼は考慮した。
この傷では、複数を相手にするのは不可能…と、ドクオは判断する。
短槍を杖代わりに、よろめきながら森の奥に歩を進めた。

( ;゚ω゚)『ド…ク…オ……待つお…』

('A`)『…ツン=デレ。今はその命預けておいてやる。だが…次に会った時が…貴様が死ぬ時だ』

ξ )ξ『……』

('A`)『…ナイトウ。すまねぇな…俺は俺の道を行く。今日から……俺とお前は敵同士だ』

その言葉を最後に、ドクオの姿は静かに森の深遠へと消えた。
二人の心と体に深い深い傷を残して。



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