( ^ω^)がどこまでも駆けるようです
- 3: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:35:29.77 ID:QMq+1rOh0
登場人物一覧
( ^ω^) 名=ナイトウ 異名=−−− 民=−−−
武器=−−− 階級=−−−
現在地=−−− 状況=死亡
特徴=−−−
ξ゚听)ξ 名=ツン(ツン=デレ) 異名=金獅子王 民=リーマン
武器=禁鞭 階級=アルキュ王
現在地=ギムレット 状況=オリーブ村を人売りから救うため西進中。
特徴=金髪の少女。
ミセ*゚ー゚)リ 名=ミセリ 異名=無し 民=リーマン
武器=無し 階級=尚書門下(行政次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=オリーブ村遠征軍に後詰として参加。
特徴=医学・栄養学などに精通。髪飾りを集めるのが趣味らしい。
- 7: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:38:56.43 ID:QMq+1rOh0
- ( ゚∀゚) 名=ジョルジュ 異名=急先鋒 民=リーマン
武器=大鎌 階級=司書令(司法長官)・万騎将・薔薇の騎士団団長
現在地=ギムレット 状況=オリーブ村遠征軍先鋒として進撃中。
特徴=熊を思わせる大男。愛用の抱き枕が無いと眠れない。
(´・ω・`)名=ショボン 異名=天智星 民=リーマン
武器=鉄弓(轟天) 階級=中書令(立法長官)・千騎将・黄天弓兵団団長
現在地=ギムレット 状況=ツンと共にオリーブ村遠征軍の中軍を指揮。
特徴=白眉の青年。ジョルジュとは義兄弟。馬鹿。
从 ゚∀从 名=ハイン(ハインリッヒ) 異名=天駆ける給士(闇に輝く射手・心無き暗殺人形) 民=???
武器=仕込み箒・飛刀 階級=中書門下(立法次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=黒髪が美しい黒衣の給士。料理以外の仕事は完璧
- 10: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:41:05.13 ID:QMq+1rOh0
- ノパ听) 名=ヒート 異名=燃え叫ぶ猫耳給士(自称) 民=リーマン
武器=鉄弓・格闘 階級=司書門下(司法次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=癖が強い赤髪を持つ赤い給士。料理だけなら完璧。
(*゚ー゚) 名=しぃ 異名=紅飛燕(三華仙) 民=リーマン
武器=細身の剣と外套 階級=司書門下(司法次官)・千騎将
現在地=ギムレット 状況=オリーブ村遠征軍の遊撃部隊としてジョルジュを助ける。
特徴=灰色の髪と神秘的な瞳を持つ、無口な少女。
(‘_L’) 名=フィレンクト 異名=白鷲(七英雄) 民=リーマン
武器=長剣 階級=尚書令(行政長官)・千騎将・青雲騎士団団長
現在地=ギムレット 状況=ツン達が後にしたヴィップ城を護る。
特徴=隻腕の老将。白髪を丁寧に後頭部に流している。ジョルジュとヒートの師にあたる存在。
(,,^Д^) 名=プギャー 異名=??? 民=???
武器=??? 階級=???
現在地=オリーブ村の更に西。キール山脈付近の小さな村 状況=???
特徴=常に自嘲するかのような笑みを浮かべた筋骨隆々たる大男。
- 14: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:43:32.21 ID:QMq+1rOh0
- 〜超手抜き地形説明・更新速度を取るか。ちゃんとした地図を取るか。どっちがいいんだろう編〜
Aギムレット高地
@キール山脈
Bニイト自治区
=====大地の割れ目==========
Cネグローニ地区
Eバーボン地区
Fローハイド草原 Dデメララ地区
Gモスコー地区
Hシーブリーズ地区
※島の高度は、@→A→B→C…と番号が大きくなるにつれて低くなる。
人々の暮らしは温暖なD〜Fに集中している。
また、南から西南に抜ける風の影響でGHは北部とは比較にならないほど気温が高くなっている。
大地の割れ目を流れるのはマティーニ河。
そこから枝分かれしてEとFの境目を流れるのがバーボン河。
バーボン河は更にGとHの境を抜けて海に出る。
@…どこにも支配されていない。
ACDE…リーマン支配下。ただしAは厳しい気候の為か半ば放置されている。
B…ニイトの自治が認められているが、実質的にはリーマンの支配下。
F…中立帯だが、リーマンの力が強い。
G…メンヘル支配下
H…中立帯だが、この地区を占拠する【海の民】とメンヘルが同盟関係にあり、メンヘルの力が強い。
- 20: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:47:51.81 ID:QMq+1rOh0
第14章 白衣白面
村が燃えていた。
いや、正確に表現するならば燃えているのは中央広場に積み上げられた木片や藁の山であって
村自体が燃えているわけではない。
しかし、その木片や藁は元々住民達の住居の一部や寝具であり、
そう言った意味では『村が燃えて』いるも当然だった。
西の山の向こうに陽が沈みかけた頃、賊達は現れた。
投石で抵抗する村人に矢の雨を浴びせ、怯んだ所で大斧を持った男達が柵を破壊する。
そこから騎馬に跨った者どもが雪崩れ込んできたところで村人達は白旗を揚げた。
その判断はおそらく正しかったのだろう。
だからこそ犠牲は最小限に押さえられたのだし、賊達は手馴れすぎていた。
それから賊どもは家捜しと称して家々を破壊して回った。
なんでも、十三年前に王都で貴族を暗殺して回った【闇に輝く射手】がこの村に逃げ込んだらしい。
それを狩り出すのが目的で、決して村荒らしを目的とした賊ではないと言う。
- 23: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:50:13.52 ID:QMq+1rOh0
- やがて、一軒の家から一人の男が引きずり出された。
____
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \
| (__人__) | 『どーも。【天駆ける射手】です。犯罪者の私に村の人はとても親切にしてくれました』
\ ` ⌒´ /
- 26: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:52:49.94 ID:QMq+1rOh0
- それを見て村人達は呆然とする。
このような男など統一王の革命以前から生きている長老ですら見た事はない。
(頭`ハ´)『ほぅ。それでは、この村は揃いも揃って犯罪者を匿っていたと言うアルか?』
____
/ \
/ ─ ─ \
/ (●) (●) \
| (__人__) | 『その通りです。言うなれば村全体が犯罪集団と言っても過言ではありません』
\ ` ⌒´ /
賢明なる諸兄らであれば、この時点で賊どもの目論見など看破している事であろう。
そう。
この下衆どもはありもしない罪をでっちあげ、村人達に濡れ衣を着せようと言うのだ。
あまりにも見え透いた自作自演の小芝居を目の当たりにして声も出ない村人達を前に賊の頭と思しき男が宣言する。
- 27: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:54:56.61 ID:QMq+1rOh0
- (頭`ハ´)『そうかそうか。ならば我らは王家の忠臣として、このような村を許すわけにはいかんアルな』
呵呵大笑しながら言った無精髭の男の口中には嫌らしく涎が糸を引いていた。
その愉快そうな表情を、村人達が生涯忘れることはないだろう。
(頭`ハ´)『全員ひっとらえるアルヨロシ!!!!!!』
頭の合図と共に、待ってましたと賊どもは村人に襲いかかった。
水で薄めた安物とは言え、日々の労働の疲れを癒してくれる酒を浴びるように飲まれた。
共に冬を乗り越え、これから田畑を耕す手助けをしてくれる家畜は切り殺され、火にくべられた。
器量の良い娘は『武器を隠し持っていないか』確認する為に屋内に連れ込まれ、
抵抗の意思を見せる者。抵抗できるだけの腕力を持つ者。抵抗しそうな者は集団で気絶するまで殴られた。
その光景をニヤケ笑いを浮かべながら眺めている頭に近づく者がある。
- 29: ◆COOK.INu.. :2008/02/14(木) 23:58:08.98 ID:QMq+1rOh0
- (賊`ハ´)『お頭。稼ぐのも大切だけど、とっととずらからないとヤバイアルよ』
(頭`ハ´)『? どうしてアルか?』
(A`ハ´)『…金髪の小娘の事を忘れてるアルか?』
金髪の小娘。
統一王の後継者を名乗り、民草からは【黄金の獅子】【金獅子王】と敬われる生意気な女。
その小娘の下には【天智星】【急先鋒】などの英傑が揃い、
キュラソー解放戦線と共に【暴君】エクストすらも討ち破ったことは記憶に新しい。
エクストはその異名からも分かるように、その恐怖政治でギムレット周辺を牛耳ってきた男だ。
が、彼は頭が切れる男でもあった。
叛乱の芽を摘み、ニイトの闇市とも手を組んだ。
ニイトの【無限陣】がアルキュ全体に闇市のネットワークを築きあげられたのも、
彼が持つ賊同士の裏の繋がりがあったからである。
同時に彼は民衆を最後まで追い詰める真似だけはしなかった。
『窮鼠猫を噛む』の言葉どおり、窮極まった民が【キュラソー解放戦線】と手を組む事を怖れたのである。
プー゚)フ『民とは生かさず殺さず。生きながらにして死んでいる状態が最も管理しやすい』
とは今もなお残るエクストの理念であり、それを証明するように(彼以外の者が)必要以上に搾取しすぎる事を嫌った。
時には彼の意にそぐわぬ者を【征伐】して見せたほどである。
そして、その暴君の死後。
残念ながら、民が望んだような平和は訪れなかった。
何故なら。
エクストと言う屋根が無くなってからという物、雨後の筍が如く小規模な賊達が好き放題に暴れ出したからである。
そして、それを狩っているのが彼らの宿敵。金髪の小娘こと【金獅子王】ツン=デレであった。
- 31: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:00:24.76 ID:z4R3VNPc0
- (B`ハ´)『それだけじゃないアル』
そう言って話しかけてきたのはまた別の男だ。
年明け以来待ちに待った初仕事だと言うのに、その顔はどこか青ざめている。
(B`ハ´)『お頭は…クリテロの亡霊の噂を……白い【猟犬】の噂を聞いた事が無いアルか?』
(A`ハ´)『【白衣白面】!! そうアル!! 朕もそれを言いたかったアル!!』
統一王の【猟犬】クリテロ。
死すら怖れぬ最強の突撃部隊【白衣白面】を率いた彼を知らぬ者など、このアルキュには一人としていないだろう。
そのクリテロが地獄の底から甦り、王家に仇なす者を狩っていると言う噂は耳にしていた。
だが。
(頭`ハ´)『お前らそんなくだらない噂話を本気で信じてるアルか?』
この男は露ほどもそれを信じていなかった。
見た事もない幽霊など信じていたら無法者集団の頭など務まらないのだろう。
(頭`ハ´)『【白衣白面】は三民族のキュラソー包囲戦で全滅したアル。女子供の噂話に耳を傾けている暇があったら仕事に戻るアルよ』
(A`ハ´)『し、しかしアル…』
それでも何かを言いたそうにしている配下を、犬猫でも追い払うかのように手を振って遠ざける。
実在するかも分からない『猟犬』よりも、実在する『獅子』の方が問題である。
天才【天智星】を擁するツン=デレの事だ。すでに討伐隊はこちらに向かっているはず。
『商品』を連れて北の砦に戻る途中で彼らと遭遇するのは避けたい。
最も戦いやすいのは人質をとった状態で砦に籠もる事だ。
塒(ねぐら)とする廃砦までは約一刻(二時間)。そうなると『仕事』に精を出せるのもあと一刻と言った所だろう。
それまでにやるべき事は終わらせておきたかった。
- 34: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:03:07.05 ID:z4R3VNPc0
- ・ ※ ※ ※
人の出入りが限られている大地には、まだ雪が一面に残っていた。
獣の足跡すら残っていない、まさに純白の絨毯とも言える代物である。
水分を地に吸い取られたそれは、のっぺりと平面状に広がっていたが
月明かりを受けて輝く砂のようで、自身の存在と神秘性を色濃く主張していた。
そして、その余命幾ばくも無い雪の絨毯を蹂躙して駆ける騎馬の群れがある。
先頭を行くは熊の如く巨漢の騎士と、子供のように小柄な騎士だ。
一人目は太い眉と逆立った黒髪の持ち主。
手にする死神の大鎌。
白銀の甲冑は月光に煌々と輝き、
その背に【無敵・急先鋒】【金獅子王忠臣・司書令万騎将】と書かれた二本の旗を差している。
二人目は灰色の髪の少女だ。
その瞳は吸い込まれるように深く。
腰には細身の長剣。赤い外套を風に靡かせている。
ツンの命を受けた先発部隊、【急先鋒】ジョルジュと【紅飛燕】しぃであった。
足の速い馬を駆る者を選抜した彼らは、人売りに襲われた村を救うため西に向かっている最中である。
惜しみも無く白銀を撥ね散らしながら馬を勝っていた彼らであったが、
やがて
( ゚∀゚)『一同!! 行軍停止!!』
総大将ジョルジュの掛け声と同時に速度を落とし、やがて停止した。
- 36: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:05:11.55 ID:z4R3VNPc0
- (*゚ー゚)『……』
どうしたの?
とでも言いたげに赤い燕がジョルジュの顔を覗き込む。
( ゚∀゚)『あ、いや。ちょっと考えてたんだけどよ』
言ってから腕を組み、頭の中を整理するかのように目を閉じる。
数秒して考えがまとまったのか、彼は口を開いた。
( ゚∀゚)『よし。兵を分けよう。しぃはここから北西に向かってくれ。
お前なら300の兵で十分ヤツラの塒(ねぐら)を陥とせるだろ?
出来る事ならヤツラが砦に籠もる前に叩いておきたい。
けど、念の為だ。お前は砦を占領して退路を断ってくれ。
俺はこのまま【薔薇】を率いてオリーブへ向かう』
それでしぃはジョルジュの考えを理解した。
賊どもが砦内に籠もる前であればそこを占拠する事には大きな意味がある。
もし、時遅く砦に入られていたとしても防戦準備が整う前に攻撃を仕掛けられれば有利に事を進められるはずだ。
(*゚ー゚)『了解』
それだけ言い残すと、しぃは単騎北西に向かい出した。
それを見た彼女の騎馬隊も、そうするのが当たり前だと言わんばかりにその後を追う。
一糸たりとも乱れのない彼女の用兵術に舌を巻きつつも
( ゚∀゚)『よし!! 俺達はオリーブに向かう!! ヤツラを生かして帰すな!!』
そう号令をかけ、ジョルジュは再び愛馬に鞭を入れた。
- 37: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:08:05.60 ID:z4R3VNPc0
- ※ ※ ※
舞台をオリーブ村に戻そう。
村では『商品』の分別作業が終わろうとしていた。
そして、その頃になってようやく村の長老宅の奥から最高級のお宝が。それも2人も発掘されたのである。
(頭`ハ´)『うはwww』
一人は赤毛の若い女。
その顔つきは絵画の中の女神のように美しく、肌は吸いつきそうなほどにきめ細かい。
癖のある髪質は好みが分かれるだろうが、弾ける寸前の果実のような身体は高く売れる事間違い無しだった。
もう一人は黒い長髪の女。
よほど恐ろしいのか、何故か竹箒を抱え込むようにぎゅうと抱きしめ、俯き震えている。
男からは唇を噛みしめる八重歯しか見る事は出来ないが、彼女も良い値がつくだろう。
先程の女と反するように幼い体の線は、その線の者ならば幾らでも金を出してくれそうだった。
(頭`ハ´)『これはこれはwww長老殿も良い趣味をしてらっしゃるwww』
明るいところでその顔つきを確認しようと火の側に近づける。
赤毛の女『お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 御姉様に触ったら許さないぞぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
姉妹か。
ならば更に値を吊り上げられるやも知れぬ。
それにしても、一見赤毛の女が姉に見えるのだが…それもまた良いだろう。
火の側まで来たところで、黒髪の女が震えながら口を開いた。
黒髪の女『あの…もし。こちらにあの恐ろしい【天駆ける射手】がいると聞いているのですが…』
- 41: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:10:27.76 ID:z4R3VNPc0
- それを聞いた、先程の男がのそりと歩み寄ってくる。
____
/⌒ ⌒\
/( ●) (●)\
/::::::⌒(__人__)⌒::::: \
| |r┬-| | 『はい。私がその【天駆ける射手】です』
\ `ー'´ /
黒髪の女『……』
それを見た彼女の目が点になる。
そして再び震え始めた。
黒髪の女『……本当に貴方があの【天駆ける射手】…?』
____
+ / \ /\ キラリン
. / (ー) (ー)\
/ ⌒(__人__)⌒ \ +
| | 『そうです。王都を恐怖のどん底に突き落とした【射手】とは私の事です』
\ /
幼児体型『……』
何故か胸を張って答える男を前に、女は再び俯いてしまった。
熱風にでも煽られたのか。その黒髪は大きく逆立っている。
その全身は堪えが効かぬとばかりに大きく震え。
見る角度さえ変えれば、そのこめかみに浮かんだ青筋が見て取れただろう。
- 43: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:14:56.18 ID:z4R3VNPc0
- ノハ;゚听)『お、御姉様落ち着いてぇ〜〜〜〜っ!!!』
背後から彼女を必死に羽交い絞めにする赤毛の女を引きずりながら、女はその男の前に立つ。
その異様な光景に人売りどもは声も出ない。
何だこれは。あの胸の無い女は恐怖で震えていたのではなかったか?
从 ∀从『…テメェが……テメェみたいな豚が【射手】だと……?』
ノハ;゚听)『落ちついてっ!! その名は捨てたって何度も自分で…』
それとこれとは話が。
从#゚∀从『別だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!』
____
/::::::─三三─\
/:::::::: ( ○)三(○)\
|::::::::::::::::::::(__人__) |
\::::::::: |r┬-| / 『はうっ!!!!!!!!!!!!』
ノ:::::::::::: `ー'´ \
怒号と共に男の股間を力任せに蹴り上げる。
その一撃で男は昏倒した。
- 47: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:18:08.02 ID:z4R3VNPc0
- ノハ;゚听)『あ〜ぁ。やっちゃった……』
赤毛の女━━━━━ヒートがボソリと呟く。
从#゚∀从『何だよ。文句あるのか!?』
ノハ;゚听)『い、いや、ありません!! でもどうしよう御姉様!!
ご主人からは援軍が来るまで待機って言われてたけど、これじゃどうしていいか分かんないぞ!!
なにせあたしはトラブルを起こすのは得意だけど解決するのは大の苦手だからなっ!!!!!』
从 ゚∀从『な〜に。そんなの、この天才ハインちゃんに任せれば解決さ』
『姉』の叱責が恐ろしいのか、顔中に冷や汗を浮かべながらとんでもない事を言い出す赤毛と
男を蹴り上げて満足そうな黒髪。
その2人を呆然と眺めていた賊どものうち一人がはっと気付いたかのように叫んだ。
(C;`ハ´)『お、お頭!! こいつら金髪の小娘の【影】アル!!』
(頭`ハ´)『な、何だとっアル!!!!』
从 ゚∀从『援軍が来る前にこいつらを片付ける!!』
ノハ*゚听)『それは名案!! 流石は御姉様っ!! 愛してるぞぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!』
我に返った賊どもがそれぞれの獲物を構えるのと、二人の女が身に纏った粗末な外套を脱ぎ捨てたのは、ほぼ同時。
オリーブ村を巡る戦いの第二幕が切って落とされる。
そして。
この場にいる誰もが北から静かに迫る一団の影に気付かずにいた。
その先頭に立つ者の。首から下げられた鈴がちりんと鳴る。
- 49: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:20:47.33 ID:z4R3VNPc0
- 从 ゚∀从『━━━━━高岡流小太刀一刀術・演舞』
竹箒の柄に仕込んだ小太刀を引き抜いたハインが、賊たちの間を縫うように駆けぬける。
清流が如くその動きは、余分な風一つ起こさぬ程に穏やかだ。
しかし、彼女こそは神速の移動術・瞬歩を極めし者。
【天駆ける給士】である。
その異名が示す通りに黒い給士服に身を包んだ彼女を。
視界の片隅にでも捕らえられる者がいれば、それは驚嘆に値するだろう。
(A`ハ´)『ぎゃっ!!』
今も一人、すれ違いざまに膝を砕かれ倒れ込んだ。
しかし、彼は運が良い。
もし、彼女が手にしているのが逆刃の小太刀でなければ、その足は綺麗に切り落とされていた筈である。
ある者は腕を折られ。
ある者は眉間を撃たれ。
そしてまたある者は鳩尾を突かれて。
彼女が小太刀を振るうたび、確実に賊どもは戦闘不能に陥っていった。
燃えさかる炎に顔を赤く染め上げ、黒髪と外套の下に着込んでいた黒い給士服が風に踊る。
また一人、賊を地に触れ伏せながら彼女は叫んだ。
从 ゚∀从『ヒート!! まずは人質の確保を最優先するぞ!!』
- 50: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:23:11.78 ID:z4R3VNPc0
- ノパ听)『把握したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!』
叫び、迫る槍の穂先を掌底で受け流す。
ノパ听)『どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!』
次の瞬間。彼女の身体は宙を舞っていた。
眼前の二人の賊の顔面目掛けて同時に膝蹴りを喰らわせる。
(K`ハ´)『白っ!!』
(J`ハ´)『水色っ!!』
ノパ听)『残念っ!! 縞々だっ!!』
ワケの分からない事を叫びながら倒れる二人に、これまたワケの分からない事を返しつつ
着地と同時に前転して横薙ぎに振るわれた剣を避わす。
立ち上がった時には、すでにその拳は固く握られており━━━━━。
ノパ听)『せいっ!!!!!!』
渾身のボディブロー。突き出した拳は、赤茶色に錆びた甲冑を穿ち、その下の筋肉を。
内臓をも破壊し、男は血を吐いて倒れ込んだ。
黒髪を闇夜にひらめかせる【天翔ける給士】。
雪のように白い肌を返り血で赤く染め上げた【赤髪鬼】。
この二人の前に300もの賊どもは手も足も出ず、平伏す筈だった。
が。
???『そ、そこまでだ!! 一歩も動くな!!』
- 52: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:25:01.45 ID:z4R3VNPc0
- 从 ゚∀从『…ちっ』
忌々しげに舌打ちをする。
ハインの目に映ったのは一人の村娘の喉元に短刀を押し当てる賊の姿だった。
距離にして約10歩。
彼女であれば刹那の内にその男を切り捨てる事など造作も無い。
が。
同じようにして村人を盾にしようとする男が複数いる事に彼女は躊躇した。
たとえ彼女であろうと、一瞬で彼ら全員を叩き伏せられるか。
確信は持てない。
ノハ;゚听)。oO(ど、どうする御姉様?)
目くばせを送ってくる自称『妹』。
決断は急がねばなるまい。
(頭`ハ´)『武器を捨てるヨロシ!!』
剣戟の音が止んだ戦場に男の声が響く。
ただパチパチと炎が爆ぜる音と、倒れ込んだ男達の呻き声だけが聞こえていて。
从 ゚∀从『…クソが』
ハインは手にした小太刀をポイと足元に放り投げた。
- 55: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:27:29.14 ID:z4R3VNPc0
- その判断は決して自棄によるものではない。
村人の生命を最優先しての事である。
ハイン自身は給士服の裾に自身の得意武器である飛刀を隠し持っていたし、
ヒートは元より武器を所有していない。
時間さえ稼げればヴィップからの援軍は必ず来てくれる。
ならば、その時人質となった村人を守れるのは内部にいる自分達しかいないのだ。
更に、遠巻きに村人達を人質にした賊どもと
ジワジワと獲物を手ににじり寄ってくる男達を見て、ハインは自身の判断が正しかったと確信した。
从 ゚∀从。oO(こいつらハインちゃん達を殺す気はねーな)
もし殺すつもりであれば遠巻きにした状態で雨霰と矢を浴びせれば良い。
それをしないのは生け捕る為。
自分達を『商品』として。もしくは復讐の為『玩具』として扱うつもりであろう。
从 ゚∀从。oO(なんとかヒートだけでも逃がしてやらねぇとなぁ)
ハインがそんな事を考えた、その時である。
━━━━━ちり……ん。
静まり返った戦場に。
小さな鈴の音が鳴り響いたのは。
- 58: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:30:18.87 ID:z4R3VNPc0
- 異常に気付いたのはハインだけではない。
『赤髪鬼』ヒートを含め、数多くの男達がそれに気がついていた。
まず、賊どもが討ち破った村の北門。その周辺に不気味なほど濃い霧が立ち込めている。
(H;`ハ´)『な、何者アルか…?』
その霧が形を為したかのように、複数の影が歩み寄ってくるのだ。
その者ども、全てが雪のように髪が白く。
身に纏うは所々に返り血を浴びた白装束。
両手に獣の爪を思わせる刃を生やした拐(トンファー)を持ち。
顔は無表情な仮面に覆われていた。
(B;`ハ´)『は、は、は……』
そうして彼らは。
まるで地の底から響いてくるような声で悲しい詩を吟じているのである。
???『我は…猟犬なり。
引き千切る爪 貫き穿つ牙なり……』
ギムレットに住む者で、この詩を知らぬ者などいないだろう。
そう。それは【突撃の詩(うた)】。
王家の【猟犬】クリテロと、その配下である最強部隊の代名詞。
ならば、彼らの正体は━━━━━。
(B;`ハ´)『は、白面アルーーーーーーーーーっ!!!!!!!』
男の絶叫が村に響きわたった。
- 63: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:33:40.25 ID:z4R3VNPc0
- (Y;`ハ´)『アイヤーーーーーッ!!』
ノハ;゚听)『ほぇ?』
先頭に立つ【白面】の姿がゆらりと揺れる。
それを脳が認識した次の瞬間。
村娘を人質にしていた男が苦痛の叫びをあげていた。
( ゚ ゚)『……』
何の事は無い。
100歩程離れた場所にいた男が一瞬にしてその距離を縮め、賊の両腕を切断した。
それだけの話である。
ただ、その光景を。目の当たりにした事実を信じられる者などいようものか。
(頭`ハ´)『……』
更に男は村人を盾にする賊どもを次々と切り伏せていく。
その白装束が赤く染まらぬのは、単に返り血を浴びるよりも早く彼が移動しているからに他ならない。
時間にして数秒。
居合わせた全ての者が、それを夢想の出来事のように呆然と眺めていた。
ただ、彼に斬られた者だけが。その痛みから『これは現実だ』と理解する事が出来たのである。
やがて村人を人質にしていた全ての卑劣漢を切り捨てると、男は拐を回転させ刃に付いた血を振り払う。
そして、背後に控える白装束の兵士に向けて言うのだ。
ただ一言。
( ゚ ゚)『喰らい尽くせお』
と。
- 68: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:36:25.85 ID:z4R3VNPc0
- その言葉を合図に、白面の戦士達は賊に襲い掛かった。
ある者は猿(ましら)が如く宙を舞い、
またある者は蛇が如く低い姿勢で地を駆ける。
(頭`ハ´)『ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』
誰よりも早く我に返り戦場を離脱しようとした賊の頭は、
(,,^ ^)『プギャーwwww逃がさねぇよwww』
筋骨隆々たる白面兵士に頭を叩き割られた。
指揮する者も無く混乱する賊どもに白装束の戦士達は容赦なく切りかかる。
バラバラに戦っているようで、彼らの戦いぶりは実に統率の取れた物だ。
陽動する者。背後から確実に仕留める者。周囲に気を配る者。
常に三者一体となった攻撃は、斬り合いの状態になる前に人売りの命を確実に奪い去っていく。
ごく稀に白面兵に傷を負わせる者もいたが、
痛みなど感じぬかのように戦闘を続ける彼らの前に敗北していった。
ノハ;゚听)『な…なんだコレ……』
繰り広げられるは圧倒的な虐殺。
【赤髪鬼】ヒートは、炎に照らし出される異形の兵による殺戮を。
ただ、ただ呆然と眺めているしか出来なかった。
- 71: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:38:33.14 ID:z4R3VNPc0
- ※ ※ ※
(;゚∀゚)『はぁ…そんな事がなぁ』
【急先鋒】ジョルジュがオリーブ村に到着した時。
戦いは既に終わり、白面の兵士達の姿はどこにも無かった。
現れた時と同様。霧に溶け込むようにして姿を消したのである。
ノハ;゚听)『ほ、本当なんだぁっ!! 信じてくれぇっ!!!!!』
( ゚∀゚)『分かってるよ。疑ってる訳じゃねぇ。ただ…な』
あちこちに転がっている賊どもの死体に付いた傷を見れば、
それがハインとヒートによる物ではないことくらい一目で分かった。
ただ、彼とてヴィップ全軍を預かる軍部の最高責任者である。
ノハ;゚听)『突然現れた全身真っ白の兵士が10倍以上いる賊をあっという間に皆殺しにしたんだっ!!』
などと言う話を簡単に信じる訳にはいかぬ立場なのだ。
( ゚∀゚)『【白衣白面】ねぇ…』
地に下ろした鞍に腰を下ろした彼は、不愉快そうにボリボリと後頭部を掻く。
ヴィップ同様、各地の賊を狩りまくっている【白衣白面】の噂はジョルジュも耳にした事がある。
ただ、どの話でもその強さがあまりに人間離れしすぎているのだ。
- 73: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:41:11.19 ID:z4R3VNPc0
- ギムレットの地と【クリテロの悲劇】。
引いては【白衣白面】の伝説は切っても切り離せぬ物だ。
家々では彼らの姿絵を守り神として奉り、彼らが全滅した日は地をあげて喪に服す。
だからこそジョルジュは彼らを
( ゚∀゚)。oO(救国の英雄を待望する人々の心が作りあげた偶像)
もしくは
( ゚∀゚)。oO(仮に存在しているとしても、その強さは誇大されている)
としか思っていなかったのである。
が、ここに来て状況が変わった。
彼の直属の部下であるヒートがその姿を見たという以上、
どんなに信じがたい事でも信じなければならぬだろう。
( ゚∀゚)。oO(こりゃ認識を改めねぇといけねぇかな)
彼らの目的は分からぬが、その実力は疑う余地を持たない。
そして、彼の主がこの島を統一するという理想の下に生きるなら。
自分達と彼らの運命は必ずや何処かで重なる日が来るだろう。
( ゚∀゚)『その時…敵同士じゃなきゃ良いけどな』
呟いてからジョルジュは思わず身震いをする。
武者震いではない。単に汗に濡れた服が冷えたのだ。
外套の襟を立てて夜風を防ごうとしながら、彼はすぐ側に立つ兵に熱い酒を持ってくるよう命じた。
- 77: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:44:20.57 ID:z4R3VNPc0
- 少ししてから、その兵が碗に注いだ酒を持ってやって来た。
アルコールが蒸発する心地よい刺激が鼻をくすぐる。
素手では持てないほどに熱い碗を外套の裾でくるみ、両手で包み込むようにして持った。
ふぅふぅと冷ましながらチビリチビリ口に含む。酒とは不思議な物で、それだけで身体の芯が温まる気がした。
と、そこへ。
(*゚ー゚)『……』
ひょっこりやって来たのは赤い外套の騎士である。しかし、彼女は今頃北の砦を攻めている筈であって…。
( ゚∀゚)『お? どうした? 随分早かったじゃねぇか』
(*゚ー゚)『……』
返事は無い。
それはいつもの事なのだが、心なしか頬を膨らませているようにも見える。
諸兄らも経験があるであろうが、このような時の沈黙ほどやり辛い物は無いものだ。
(;゚∀゚)『あの…理由は存じ上げませんが…ひょっとして怒ってらっしゃる?』
首が縦に振られた。
(;゚∀゚)つ旦『あの…よろしければお飲みになりますか?』
宝物のように抱えていた酒を差し出すと、まだ熱い筈のそれをしぃは一息に飲み干した。
口の端から零れたそれを袖で拭き取ると、一言北の状況を報告する。
(*゚ー゚)『無駄足。全滅してた』
(;゚∀゚)『は?』
- 82: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:46:38.41 ID:z4R3VNPc0
- ※ ※ ※
ξ゚听)ξ『分かりました。他に報告はありませんね』
それから半刻程して。
ツン率いる中隊が到着した。
先程まで戦場であった広場に車座になって、そこで戦の報告を聞き終えた所である。
( ゚∀゚)『しぃの報告もあわせると、30程度の歩兵で北の廃砦を攻め落とし
そのまま南下してオリーブの人売りどもを一網打尽にしたらしいな。
しかも、自分達は一人の戦死者も出してねぇ。
信じられねぇ強さだ。生き返った死者で結成された部隊ってのも頷けるぜ』
ハインやヒートだけでなく、白面兵士の狂気染みた戦いぶりは多くの村人が目にしていた。
人の話に尾ひれがつく場合。
伝言ゲームのように徐々に話の内容が変化していくのがほとんどと言って良い。
だが、今回彼らの話はあわせたかのように合致しており、噂が誇大化されたものとは思えなかった。
しかし、だ。
実際に目の辺りにした者達でさえ夢現(ゆめうつつ)のような出来事だった、と言うのである。
それを耳にしただけの者がいきなり信じられぬのも無理は無い話だった。
ξ゚听)ξ『…白衣…白面……』
戦いに先じて、人質となった村人を一人で救出した男。
ショボンと共に村の被害を調べて回っているハインの話によれば、
彼が使ったのは間違いなく神速の移動術・瞬歩法だ。
- 85: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:49:11.95 ID:z4R3VNPc0
- ツンは無意識のうちに首から下げられた金色の鈴をぎゅうと握り締めた。
それは、彼女を守ると誓いながらもこの世を去った青年。
ナイトウが持っていた物とそっくり同じに作らせた物だ。
心が折れそうになる時。
この鈴が━━━━━いや。これと同じ鈴を持っていた青年の思い出が彼女を支えてくれる。
ξ゚听)ξ『…そんな筈ないわよね』
そう。
青年は死んだ。
今はヴィップと改名されたキュラソーを解放する戦いで傷を負い、呆気なく死んでしまったのだ。
剣の墓標の下。眠る彼の体を抱きしめたくて、その前で何日も何日も泣き続けた。
その時の雪の冷たさを今も覚えている。
しかし。
全ての白面兵に共通するとは言え、銀色に輝く髪。
首から下げた鈴。
隠密独特の秘術である筈の瞬歩法。
あまりに彼との思い出と一致する部分が多すぎるのである。
村人達は言った。
(村゚ー゚)『きっとクリテロ様が陛下の挙兵を知ってあの世から舞い戻られたのです』
と。
ならば。そうならば。
ξ゚听)ξ。oO(死人でもいい。もう一度ナイトウに会いたい…)
ツンはそう思うのだ。
- 87: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:51:42.90 ID:z4R3VNPc0
- (;゚∀゚)『いや、だからよ。二人の話を信じねぇワケじゃないんだがよ…。
白装束の兵団? ってのはやっぱ変じゃないかなぁなんて…』
(*゚ー゚)『嘘』
ノハ#゚听)『いやっ!! その顔は信じてない顔だっ!! 目を見れば分かるっ!!!!!』
騒がしい声でツンは現実に引き戻された。
見れば大将軍たるジョルジュを前に、その部下が何やら捲くし立てている。
ξ゚听)ξ。oO(全く。ジョルジュさんも上官なら上官らしく振舞えばいいのに)
そう思い、小さく息を吐き出した。
権力で部下を押し付けるのは性にあわない。
それがジョルジュの性格であり、そのおかげで厳しい軍規の割には一般の兵に到るまで
どこかのんびりしているのだが、あまり度を過ぎるのも困り物であろう。
ツンがそろそろ口を挟もうかとした時。
ヒートが村の北門を指差しながら叫んだ。
ノハ#゚听)『良いかっ!? 信じないのは勝手だけどなっ!! 確かにあたしは見たんだっ!!!!!
あそこに立ってる奴みたいな格好の兵士達が賊を切り伏せていくのをっ!!!!!!』
ξ゚ー゚)ξ『……』
ξ;゚听)ξ『━━━━━え?』
- 92: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:55:09.49 ID:z4R3VNPc0
- その言葉に一同の視線が一斉に北門に向けられた。
( ゚ ゚)『……』
そこに一人立つは━━━━━最初に村に切り込んだあの兵士である。
(;*゚ー゚)『あれが…』
(;゚∀゚)『白衣白面…か? いや、その前に奴はいつからあそこにいやがった!?』
吐くべき言葉も見つからず呆然とする一同。
その中で一人、いち早く我に返った者がいた。
ノパ听)『貴様!! 何者だ!? 敵か味方か!?』
今夜二度目の対面となる【赤髪鬼】ヒートだ。
窮地を救われておいて敵も味方も無いのだから、彼女の言い草は無茶苦茶である。
しかし、彼らの目的が分からぬ以上それもやむなしか。
( ゚ ゚)『…敵ではないお』
白面の兵士は呟くように答えた。
( ゚ ゚)『我らは【白衣白面】。王家の敵を狩る猟犬だお』
敵ではない。
その言葉に彼らはひとまずホッと胸を撫で下ろす。
が。
その王家の唯一の生き残りであるツンだけはその言葉に。
正確にはその声に衝撃を覚えていた。
- 95: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 00:57:12.99 ID:z4R3VNPc0
- (;゚∀゚)『陛下!?』
ジョルジュの咄嗟にかけた静止など耳に入らない。
ツンは夢遊病患者を思わせる足つきでフラフラとよろめきながら
その白面兵に向けて歩を進めた。
ずっと聴きたかった声。
夢の中でしか聴けなかった独特の語尾。
聴き間違えるはずが無い。
違えるはずなど無いのだ。
ξ )ξ『…ナイ・・・トウ?』
( ゚ ゚)『……』
白面は答えない。
ツンは自らの頬に暖かい液体が流れているのを覚えた。
体裁など気にもせず叫ぶ。
ξ;凵G)ξ『ナイトウ!! ナイトウだよね!? 生きて…生きててくれて…
アタシ…ナイト……褒めてもら…た……こ…なに…頑張…て……』
その叫びは後半既に言葉になっていなかった。
しかし、白面の兵士は静かに。悲しそうに首を横に降る。
( ゚ ゚)『…違うお』
ξ;凵G)ξ『!?』
- 101: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 01:02:02.40 ID:z4R3VNPc0
- ( ゚ ゚)『僕はブーン。王家の猟犬。【白衣白面】のブーンだお』
ξ;凵G)ξ『……ブーン?』
その言葉と同時に、彼の身を包み隠すように突如その足元から濃い霧が湧き出す。
( ゚∀゚)『おい!! テメェ待ちやがれ!!』
ξ;凵G)ξ『待って!! まだ話が……』
しかし次の瞬間。
その青年の姿は、まるで霧と散ったかのように消えていた。
ノハ;゚听)『消えた……も、もしかして幽霊?』
ヒートの言葉に答えるかのように、誰もいない北門に声が響いた。
そうだお。
僕らは【持たざる者】。名前も。魂も。生きる意味も全てを亡くした者。
けど。
僕らは王家の猟犬。黄金獅子の剣にして盾。
どんなに離れていても僕は君の為。
掲げる理想の為に戦い、道を照らす事を誓うお。
ξ;凵G)ξ『……』
それから訪れるは完全なる静寂。
4人の歴戦の強者は。
ただ呆然とその場に立ち尽くすしか出来ずにいた
- 105: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 01:05:14.39 ID:z4R3VNPc0
- そして、その光景を家屋の影から見守る一組の男女の姿があった。
???『【白面】は去ったか…』
???『あぁ。若干日は早まったが全部ご主人の計画通りだな』
最初に口を開いた男は白い眉を普段以上に垂れ下げて。
彼の背後に控える女は黒い給士服を風にたなびかせて。
【天智星】ショボンと【天駆ける給士】ハインである。
(´・ω・`)『もし…この戦いに勝利したとしても。僕は後世の歴史家から愚か者の誹りを免れないだろうね』
『あ? なんでだよ?』とでも言いたそうな表情の給士に、ショボンは苦笑いを浮かべながら答えた。
(´・ω・`)『彼に対する陛下の。陛下に対する彼の気持ちを知りながら、彼にあのような責務を押しつけてしまった。
もし陛下が事の全てを知ったら…ごめんなさいじゃ済まないよね』
从 ゚∀从『でも…必要なんだろ?』
(´・ω・`)『うん。リーマンの禁軍。メンヘルの十二神将。彼らと戦うにはヴィップの力はあまりにも微弱だ。
更に言えば、【王家の威光】に頼るには前王の統治は短すぎる。
僕らの背を後押ししてくれる【伝説】の存在が…必ず必要になる日が来るんだよ』
そして彼らには為さねばならぬ事がある。
ハインの心を壊し踏みにじった男と。この島を再び混乱に陥れるという、許されざる大罪を犯した父を。
(´・ω・`)『……殺す。その為ならこの掌がどれほど血に濡れようとも覚悟は出来ているつもりさ』
その顔に普段の漂々とした表情は見られない。
ただ、固い決意の炎だけが瞳に宿っていた。
- 106: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 01:08:45.17 ID:z4R3VNPc0
- ※ ※ ※
やがて朝日が昇り、空に半円を描くようにして移動した太陽は西に沈んでいく。
引き伸ばしたかのように長い影が闇に飲まれる頃。
その村では、村をあげての大宴会が行なわれていた。
貴重な豚を二頭も潰し、串刺しにして遠火で炙る。
滴り落ちた脂が真っ赤に熱された炭に垂れ、食欲を刺激する香りと音が鳴る。
豚は脂身が命だ。
分厚い皮ごと旨味の詰まった脂身をナイフで直に切り取って口に放り込むと、
火傷しそうなほどに熱い自然のスープが口いっぱいに広がる。
それを壺ごと雪に埋めて冷やした酒で喉の奥に流し込むのは、どのような貴族にすら味わえない贅沢であると言えた。
しかし、だ。
二頭の豚とは言え、200人の舌にかかれば他愛も無い物だ。
半刻もしないうちにそれは哀れ骨だけの姿になり。
( ゚ ゚)『いやwwwwスマンコスマンコwwww寝過ごした……お?』
その青年が姿を見せたのは人々が満足げに膨れ上がった腹を撫で回している時だった。
- 108: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 01:10:41.46 ID:z4R3VNPc0
- (,,^Д^)9m『プギャーwww今頃起きて来たって遅いんだよwww豚は全部喰っちまったぜwww』
( ゚ ゚)『そ、そんな…ありえないお』
大袈裟に倒れ込んだ青年の姿が、程よく酔いの回った人々の笑いを誘った。
その青年の脇を。骨を籠に放り込んだ女達が通り過ぎていく。
捨てるのではない。
香味野菜と釜で煮込んで上質のスープを取るのだ。
(,,^Д^)『いつまでも寝てるお前さんが悪いんだよwwwサーセンwww』
( ゚ ゚)『そんな事言ったって、挨拶して来いって言ったのはプギャーだお!!
僕は帰って来たのも遅かったし、寝るのも遅かったんだからせめて一欠けくらい残しておいて欲しかったお!!』
抗議したとて腹が膨れる訳ではない。
それでも青年は言わずにいられなかった。
食べ物の恨みは恐ろしいのである。
(,,^Д^)『おう、それだ、それ。何年かぶりに会うお姫様はどうだったよ?』
大の字で愚痴を垂れる仮面の男のすぐ脇で。
胡坐をかき、爪楊枝で歯をほじりながら筋骨隆々たる男は言った。
それを聞いて、倒れ込んだままでは会話の対象に礼を欠くとでも思ったのか
青年は跳ね起き胡坐をかく。
( ゚ ゚)『凄く…綺麗になってたお』
(,,^Д^)『おう、そうか。そりゃ良かったぜwww』
- 110: ◆COOK.INu.. :2008/02/15(金) 01:13:25.79 ID:z4R3VNPc0
- 仮面の青年は思う。
命を受け彼女の側を離れて早5年。
この日、遂に仮面ごしの再会を果たした。
彼女の理想を実現させる為とは言え。
自分は大切な人を裏切った。
自分が死んだ時。約束を破った時。
彼女は泣いただろうか。怒っただろうか。
出来るなら、あの場で抱きしめたかった。
美しい髪に触れたかった。
しかし、今はそれが許されぬ身だ。
いつか再び運命が交差する日。
彼女は許してくれるだろうか。
しかし、そんな彼の自問自答は目の前にずいと出された山盛りの碗によって呆気なく中止させられる。
(,,^Д^)『ご苦労さん。これはご褒美ってヤツだ』
その中身は言うまでも無く。先程まで炙られていた豚である。
(,,^Д^)『つか、お前さん何時まで仮面被ってんだwww寝る時と飯喰う時くらい外せってんだwww』
その言葉で青年は自分がどのような姿をしていたか気付いたらしい。
慌てて白塗りの仮面を外すと、いそいそと箸を手に取る。
( ^ω^)『それじゃ、いただきますですお』
その下から現れたのは。
死んだ筈の青年の満面の笑顔だった。
戻る/第15章