( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:34:45.23 ID:SNCLgzdh0
第一話「転落」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:35:26.40 ID:SNCLgzdh0

大地を踏みしめる、力強い音が森をこだまする。

一つの黒い影が疾走する。

( ^ω^)「ショボンさん。馬持ってたんですかお」

(´・ω・`)「ははは、僕は大陸中を旅する男さ。
       馬は僕には必要不可欠な、パートナーさ」

( ^ω^)「でも、たしか村のみんなには魔法を使って飛んできたって言ったらしいじゃないですかお」

(´・ω・`)「ブーン君?」

( ^ω^)「なんですかお」

(´・ω・`)「奇術師に必要なもの。それが何かわかるかい?」

( ^ω^)「……技術力ですかお?」

(´・ω・`)「違うね。『なんか神秘的な雰囲気』だよ。
      どんな下手糞でも雰囲気が良ければそれでいいのSA!」

( ^ω^)「……」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:37:05.12 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「あと、僕は”流浪”の奇術師と自己紹介したけど、
      実はちゃんと都に家がある」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「旅といっても、そのへんに旅行に行く感覚さ!」

(;^ω^)「……」

ショボンと旅に出て早三日目。

話せば話すほど、ブーンはショボンが予想以上に変な人であることを確認するのだった。

(´・ω・`)「ふむ、そろそろ腹が減ってきたな」

ショボンはふと空を見上げる。
そこには神様がさも当たり前のように輝いていた。

丁度一番高いところまで昇っているようだ。

(´・ω・`)「神様って人は本当に便利な存在だよ。
      我々に光りを与え、時間の感覚を教えてくださるからね……」

( ^ω^)「……でも時には人の命を平然と要求してくるお」

(´・ω・`)「……いやすまない。君にはあまり神様の話題を振るべきでは無かったね」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:40:52.81 ID:SNCLgzdh0

ブーンは未だに神様に対する自分の気持ちが、上手く整理できていなかった。

神様が憎いか?
と聞かれたら、ブーンははっきりと肯定するだろう。
クーの命を奪ったのは神様以外の何者でも無い。

しかしそれでもブーンは神様のことが嫌いにはなれなかった。
神様はこれまで通り、暖かく自分達のことを見守ってくださっているし、
神様からたくさんの恩恵を得ている。


憎いのに嫌いじゃない。

言葉としては矛盾している。

でもそれがブーンの神様に対する正直な感情だった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:42:28.03 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「煌びやかな舞台に生きる僕は、しめっぽい話は嫌いだ。
       さぁ昼ごはんにでもしようか」

ショボンが手綱を操作し、馬を止める。

(´・ω・`)「じゃあブーン。そこの荷物からパン出してくれ」

( ^ω^)「ないですお」

(´・ω・`)「え……?」

(´・ω・`)

(;´・ω・`)

(;´・ω・`)「ブーン君。現実は厳しいな」

(;^ω^)「……」

ショボンは結構貧乏だった。



食料面ではなかなか苦労が多かったが、それ以外は特に問題は無く、
村を出てから、六回神様が昇り、六回神様が沈んだとき。

ブーン達は都に到着した。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 19:43:45.64 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「ご覧。あれが大陸最大の都市。
      実質この大陸を支配している、帝国の首都。
      ”都”さ」

(;゚ω゚)「おお……」

ブーンは思わず声が漏れてしまった。

森の中を抜け、まず最初に目に入ってきたのは、巨大な美しい城壁だった。

美しく、綺麗に並べられた煉瓦。
そして見た目だけではなく、非常に堅固に作られたとみられ、
いかなる侵入者も許さない、絶対的な存在感を持っていた。

しかも月が薄く照らし出すため、幻想的な雰囲気をも、持っていた。

ブーンはしばらくその城壁に魅入ってしまった。

(´・ω・`)「美しいだろ……初めてみた者は必ず見惚れてしまうと言われているんだ」

(;゚ω゚)「……」

(´・ω・`)「ふふふ、すっかり心を奪われてしまったみたいだ」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:00:07.48 ID:SNCLgzdh0

ショボンはそのまま馬を駆り、どんどん城壁へと近づく。

城壁は周りを水の張られた堀で囲まれていて、
その堀を渡るためには橋を渡る必要があった。

しかし夜間はその橋も吊り上げられてしまっている。
おそらく外敵の侵入を防ぐためだろう。

(´・ω・`)「さて、この時間でも降ろしてくれるかな?」

ショボンは馬から降りると、真っ直ぐにある小屋を目指す。

その小屋は橋の丁度隣に建てられており、橋の上げ下ろしを管理する小屋とみて間違いない。

ブーンもその後に続く。

(´・ω・`)「もしもぉ〜し」

軽くドアをノックする。

しかし返事が無い。

(´・ω・`)「おかしいな。誰もいないなんてことは無いんだけどな」

ショボンは再度、強めにドアを叩く。

返事が無い。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:00:52.80 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「致し方あるまい」

次の瞬間ショボンは信じられない行動に出た。
懐から細い、針金を出し、それを錠前に突っ込んだ。

(;^ω^)「ちょwwwwwこじ開けるつもりすかおwwwww」

(´・ω・`)「うん。多分管理人は中にいると思うし。
      多分追い返すのが面倒だから、居留守を使ってるんだろう」

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「よし、開いたぞ」

ガチャリと子気味良い音が鳴り、ショボンはドアを開けようと取っ手に手をかけた。
そして開こうと、少し手前に引いた瞬間!

(・∀ ・)「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

乱暴にドアが中から開かれ、ショボンは顔面を強打した。
そこへ短刀を持った男が中から躍り出て、短刀をショボンの顔面にまっすぐに突き刺す。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:03:16.18 ID:SNCLgzdh0

金属の弾ける音が響いた。

(・∀ ・)「な……!」

(´・ω・`)「ふぅ、もし歯で受け止められなかったら死んでいたよ」

ショボンは歯でがっちりと短刀を受け止めていた。

(;^ω^)(んな馬鹿な!)

(´・ω・`)「帝国軍も随分荒っぽくなったね。
      まさか鍵をこじ開けたくらいで襲い掛かってくるとは」

(・∀ ・)「鍵こじ開けた時点でもう十分過ぎるくらい怪しいだろ!」

(;^ω^)(そいつはごもっともですお)

(´・ω・`)「怪しいからといってすぐ殺しにかかるのは良くないな。
      これが敵でもなく、僕のような特技を持たない一般人だったらどうなっていたか」

(・∀ ・)「一般人は鍵をこじ開けねぇよ!」

どうやら激しく言い争っている割に、どこかほのぼのしているのは、
おそらくこの二人は知り合いだからなのだろう。

きっとこの門番は毎回ショボンの身勝手な振る舞いに、手を焼いているに違いなかった。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:05:47.32 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「まぁとりあえずさ、さっさと橋降ろして僕達を中に入れてくれ」

(・∀ ・)「ちっ、これが最後だからな。
     次はぜってー朝になるまで待ってもらうからな」

門番はぶつくさと悪態をつきながら、小屋へと入った。

そして中から特徴的な音が鳴る。

何によって発せられているのかはわからないが、どうやらこの音。
そしてこのリズムによって、城壁の内側の人間に合図を送っているようだ。

暫くして、ガラガラガラガラと鎖が擦れ合う音と共に、橋が降りてきた。

(´・ω・`)「はっはっは、いーつもすまないねぇ」

(・∀ ・)「ほんとだよ!」

(´・ω・`)「ここは『それは言わない約束でしょ』って返すものなんだけどな……」

(・∀ ・)「うっせー! 死ね!」

(;^ω^)(門番の仕事って大変そうだお……)

ショボンは門番の悪態も、どこ吹く風といった様子で、全く気にしたようすも無く、馬に飛び乗る。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:09:48.57 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「ほら、ブーン君。のったのった」

(;^ω^)「はいですお」

そこで門番はようやくブーンの存在に気がついたようだ。
そして何故かブーンの姿をまじまじと見てくる。

そして一言。

(・∀ ・)「ショボン。こいつどうするつもりだ?」

(´・ω・`)「……ん?」

(・∀ ・)「……」

(´・ω・`)「……」

(・∀ ・)「まぁ俺には知ったこっちゃねぇがな」

(´・ω・`)「うん。君には関係の無い話さ」

(・∀ ・)「……そうだな。変なこと聞いてわりぃな。
     あと今度門限破ろうとしたら容赦なくぶち殺す」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:10:28.88 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「なんか今日はいつにも増して厳しいね」

(・∀ ・)「当たり前だ! 最近”連合軍”の動きが活発でな。
     都中がちょっとピリピリしてんだよ!」

(´・ω・`)「さりげない忠告ありがとう。君って意外とツンデレだね」

(・∀ ・)「……お前真剣に死ねよ」

(´・ω・`)「ツンデレ乙」

門番はそれ以上ショボンの相手はしなかった。

おそらく相当怒らせたのだろう。

ショボンの顔などみたくもないといった感じで、小屋に戻っていった。

ブーンはもし転職する機会があっても、門番だけにはなるまいと決めた。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:13:11.64 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「さあて、ここが”都”さ!」

ショボンが手を振りかざし叫んだ。

ブーンは顔を上げ、都の風景を目に映した。


闇の中から溶け出すように建つ家々。
窓からは薄く、小さな灯りが漏れ、通りを照らし出し。
月が全体を浮き彫りに照らす。

とても綺麗な街だった。

(´・ω・`)「昼間はもっと活気のある街なんだが、
      夜間は一転、とても落ち着いた町へと様変わりする」

(´・ω・`)「僕のような、赤い夢を生きる住人にはとても住み心地の良い街だよ」

(;^ω^)(”流浪”の奇術師がそんなこと言っていいのだろうかお……)

(´・ω・`)「さて、街に無事着いたことだし、何かご馳走してあげるよ」

ショボンは気前良く言い、馬を一軒の店の前に走らせた。

その店には看板が無く、一見してただの民家のように見えてしまうが、
ドアに「営業中」という札が掲げられているため、辛うじてブーンは店であることを確認できた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:15:44.10 ID:SNCLgzdh0

ショボンはゆっくりとドアを開けた。

からんころんとベルの音が響く。

店内は極力内装をシンプルにつとめているのか、
薄紫のランプと合わさって、かなり落ち着いた感じだった。

すぐにカウンターの奥から、一人の小男が出てきた。

(-_-)「いっらっしゃい……おやぁ? ショボンじゃないか……」

(´・ω・`)「やぁ、ちょいとお酒を飲みにきたよ」

(-_-)「そうか……丁度良い酒が入ったところなんだ。タイミングが良いね……」

(´・ω・`)「ふふふ、どんな酒か楽しみだよ」

ショボンはカウンター席に腰を下ろす。
ブーンもそれに習い、おずおずと席に着いた。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:17:28.54 ID:SNCLgzdh0

そして小男は、ブーンに視線を移す。

(-_-)「……」

(;^ω^)「……」

ブーンはすぐに気がついた。

この小男がブーンを見る目は、
門番がブーンを見たときと同じような目をしていた。

(-_-)「……ショボン……こちらの人は?」

(´・ω・`)「ああ、この子はブーンって言うんだ」

(-_-)「へぇ……ブーン君か……」

(;^ω^)「はい。そうですお」

(-_-)「僕はこの店のマスターのヒッキー。よろしく……」

(;^ω^)「よろしくお願いしますお」

(´・ω・`)「ヒッキー、この子には”いつもの”酒を」

(-_-)「”いつもの”ね。わかった……」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:19:05.97 ID:SNCLgzdh0

そしてヒッキーは、またカウンターの奥にある棚から、
洒落た手つきでお酒のボトルを吟味し始めた。

(;^ω^)「あの……”いつもの”ってなんですかお」

(´・ω・`)「ん?」

ショボンは暫く考えているような素振りを見せたが、結局は意地悪そうに笑い、

(´・ω・`)「夢と現実を与えてくれる、素晴らしいお酒さ!」

ブーンにはショボンの思考回路がよくわからなかった……

(-_-)「はい、これが”いつもの”お酒だよ……」

ヒッキーが小振りの緑色のボトルを取り出し、ブーンの目の前に洒落たデザインのコップを置く。
そしてそのコップに、ゆったりとした手つきでお酒を注いだ。

(´・ω・`)「さぁ、このお酒は僕からのサービスだ。まず飲んで落ち着いて欲しい」

(;^ω^)「そうですかお」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:23:17.13 ID:SNCLgzdh0

実はブーンはお酒というものを飲んだことが無かった。
村ではお酒は、大人だけが飲める、特別な意味合いをもつものだった。

ブーンはコップを手に取る。

しばらく眺めたが、一度でいいから飲んでみたかったという欲求に負け、
一気にぐいと飲み干した。

(´・ω・`)「ははは、なかなか良い飲みっぷりだよ……」


(´・ω・`)「……」


(´・ω・`)「どうやら落ち着いてくれたみたいだ」

( -ω-)...zzZZ

(-_-)「やっぱり……その子もかい?」

(´・ω・`)「ああ、良い路銀の足しになると思ってね」

ヒッキーはふぅとため息をつく。

(-_-)「こういうのは止めといた方がいいと思うんだけどね……」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:24:59.63 ID:SNCLgzdh0

そう言いながらヒッキーは、ショボンの目の前に一つのボトルを置く。

(´・ω・`)「お、なかなか良さそうなお酒じゃないか」

ショボンはグラスを手に取り、ボトルのお酒を注ぐ。
そして一気に飲み干す。

(´・ω・`)「良い酒だ……」

ヒッキーはそれを聞いて、満足そうに笑った。

(´・ω・`)「そういえば門番が、連合軍の動きが活発化してきたと言っていたが……
      君は何か知っているかい?」

(-_-)「なに、いつものように国境付近でまた小競り合いがあっただけさ。
    僕はそれよりも革命軍の方が怖いね……」

(´・ω・`)「革命か……貴族達は相変わらずかい?」

(-_-)「基本的に自分本位な考えの奴が多いからね。君みたいに」

(´・ω・`)「おっしゃるとおりです」

ショボンはあっけからんと答える。
ヒッキーは少々呆れたが、皮肉の通じる相手では無かったことを思い出し、ため息をついた。

(-_-)「君はまだ”魔法使い”を探しているのかい?」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:29:00.40 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「ああ、魔法使いに会うためならどんな手段だって使うさ」

(-_-)「でももう大陸中を探したんだろ? それに魔法使いが本当に生き返ったのかどうかなんてわからないじゃないか」

(´・ω・`)「もし魔法使いが生き返っていなかったとしても”アトリエ”は現存するはずだ。
      僕は魔法使いの術を知るまでは、旅に出続けるよ」

(-_-)「どこにあるかもわからない伝説上の話とされた場所の存在を信じるのかい?」

(´・ω・`)「ああ」

(-_-)「君はなんでそうも魔法使いに執着するのかな……」

(´・ω・`)「聞きたいかい?」

(-_-)「断っても勝手に喋るんだろ……?」

(´・ω・`)「うん。僕が喋りたいからね」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:34:58.89 ID:SNCLgzdh0

ショボンは空のグラスを置いた。
そしてグラスの上に手をかざし、あおぐような手つきをする。

そして次の瞬間。
パチリと指を打ち鳴らした。

そして

カランという音と共に、突然グラスに銀貨が一枚現れた。

(-_-)「あざやかだね……魔法みたいだよ、君の奇術は」

(´・ω・`)「ふふ、そうだろ? でも――」


その褒め言葉が一番気に食わないんだよ


(-_-)「?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:38:26.53 ID:SNCLgzdh0

(´・ω・`)「僕は自分の奇術に誇りを持っている。そして大陸中で一番上手いと自負している。
      でも所詮。奇術は奇術。奇術でしかないんだ」

(-_-)「まぁそりゃあ奇術は奇術だろうなぁ」

(´・ω・`)「僕の奇術を見ると、みな”魔法のようだ”と褒める。
      それはつまり奇術は魔法の劣化でしかないということだ。
      僕は奇術に限界というものを感じているんだ」

(´・ω・`)「どんなに頑張ったところで奇術によって起こす奇跡には限界がある。
      僕はそれが大変もどかしい。
      僕は誰もが驚くような奇跡を起こしてみたいんだ」

(-_-)「はぁ」

(´・ω・`)「だから僕は奇術を超える。
      そのためには魔法という存在は必要不可欠だ。
      種や仕掛けといった現実に縛られない、まさしく夢のような奇跡。
      僕はそんな奇跡を起こしたい。だから魔法使いに会いたい」

(´・ω・`)「僕は魔術師と昇華し、人々に夢をみせたいのさ」

(-_-)「へぇ」

(´・ω・`)「僕の話、ちゃんと聞いてたかい?」

(-_-)「全然」

(´・ω・`)「ヒドイな……」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:39:51.60 ID:SNCLgzdh0

そしてショボンは立ち上がった。

ヒッキーに銀貨の入ったグラスを差し出す。

(´・ω・`)「今日はこれくらいで帰るよ。後日、この子の代金を貰いに来る」

(-_-)「わかった。なるべく仲介人にはなるべく高く売れるよう頼んでおくよ」

(´・ω・`)「ああ、頼んだよ」



カランコロン


ベルの音が響いた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:44:33.53 ID:SNCLgzdh0


(-_-)「さてと……」

ヒッキーはカウンターから出て、席に座り寝たままのブーンに歩み寄る。

(-_-)「ショボンもなかなか酷いことをするな。まだあどけなさの残る青年じゃないか」

( -ω-)...zzZZ

ブーンの寝顔はとても幸せそうだ。
きっと良い夢をみているのだろう。

(-_-)「じゃぁ、話は聞いていたよな」

突然ヒッキーは、誰もいないはずの背後に話しかけた。

そこにはいつの間にか、一人の異国の男が立っていた。

( `ハ´)「聞いていたアル。この子がそうアルネ?」

(-_-)「そうだよ……」

ヒッキーははっきりと、そう言った……






33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:46:16.81 ID:SNCLgzdh0






真っ白い世界。

ブーンはこの世界に来るのは二度目だった。

「やっぱりここは居心地が良いお」

すると、ブーンは真っ白な世界に、もう一人の人影をみた。

その人は、とても綺麗で長く美しい髪をもっていた。

クーだ。

ブーンにはすぐにわかった。
後姿だが、あれは絶対にクーだ。

ブーンは両手を力いっぱい広げ、クーの元へと走った。

「クー! 僕だお! ブーンだお!」

ブーンは走った。
久々にクーに会えると思うと、嬉しくてたまらない。

ブーンはひたすら走った。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:47:57.51 ID:SNCLgzdh0

「はぁはぁ……」

とうとうブーンは、走るのを止めその場に座り込んでしまった。

「なんで……」

すると、クーはゆっくりとこちらを振り返った。
クーは、とても哀しそうな表情を浮かべていた。

「クー? なんでそんなに哀しそうな顔をしているんだお?」

するとクーは、ゆっくりと口を開き

川 ゚ -゚)「    」





35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:49:14.12 ID:SNCLgzdh0





( `ハ´)「おらぁ! 起きるアルヨ!」

(;゚ω゚)「うぁたぁああああああ!」

ブーンは突然の罵声と痛みにより、飛び起きた。

(;゚ω゚)「いたたたたた、何するんだお!」

( `ハ´)「はぁ? 奴隷の分際で五月蝿いアルヨ!」

(♯^ω^)(いきなり叩き起こしておいて、人を奴隷呼ばわりとは失礼な男だお)

ブーンはぐるりと周囲を見回す。
なんだかずいぶんと小汚い小部屋らしい。

それしかわからなかった。
なんせ起きたばかりで情報が少なすぎる。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:50:26.90 ID:SNCLgzdh0

そもそも自分は、ショボンに連れられて入ったお店にいたはずだ。

そのことを思い出したとき、
ブーンは、どうやら酒を飲んで酔いつぶれてしまい、店の小部屋にでも寝かしてもらったのかと思い

(;^ω^)「いやぁ介抱してくださってありがとうございますお」

とりあえず男にお礼を言った。

親切にされたらお礼を言うのが、当然のマナーかと思ったのだ。

しかし男はそれを聞いて

( `ハ´)「?」

なんだか不思議がっていた。
しかしすぐに、

( `ハ´)「どうでもいいから早く付いて来るアルヨ!」

男はブーンを強引に引っ張り、小部屋から出た。

(;^ω^)「あwwwwちょwwwww痛いんすけどwwwww」

男はブーンの言葉に貸す耳を持っていない様子だった。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:53:02.01 ID:SNCLgzdh0
そしてブーンは、男に舞台のようなところまで引っ張り出された。

( `ハ´)「あんたはここで適当に立っているアルヨ!」

男は乱暴に言い捨てると、舞台の端のところに行ってしまった。

一人舞台の中央に残されたブーン。

(;^ω^)(はて……さっきから話の筋がさっぱり読めないお)

仕方なくブーンは、客席と思われる方を見下ろした。

そこにはやはり舞台を見に来る人たちはお金持ちが多いのか、
ブーンにはよくわからないが、とにかくみんな高そうな装飾品やらなんやらを付けて着飾っていた。

( ^ω^)(お、あれは僕のとこが作った織物。やっぱり都でも評判が高いってのは本当だったお)

そのとき、舞台の脇に立った、先程の男が声を張り上げた。

( `ハ´)「さぁて、お集まりの皆さん、この商品はどうアルカ?
       少々値段の方は張るアルが、若くて働き者アルヨ。
       そしてなによりも、こいつは異民族じゃないアルヨ!」

( ^ω^)(商品どこにあるのかお?)

ブーンはきょろきょろとあたりを見回す。

どこにも商品と呼べそうなものは、舞台の上に存在しなかった。

そしてブーンは、どうやら客席の人たちの注目が自分に集まっていることに気づいた。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/27(日) 20:57:40.96 ID:SNCLgzdh0

客席の人たちは、ブーンを指差し何やら話しあっているようだ。

「ほぅ、なかなか若くて良さそうじゃないか……」
「でもちょっとひ弱そうだな……」
「しかし異民族じゃないところは、なかなか清潔感があって良さそうだな……」

(;^ω^)(あれ……? もしかして……)

( `ハ´)「さぁ、どうアル? こちらの商品。
       まずは金貨百枚からどうアル!?」

客席からざっと手が挙がった。


第一話 「転落」 終わり



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