( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:19:41.41 ID:g4LvzyW+0
第五話 「being 〜本当のプロローグ〜」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:23:34.13 ID:g4LvzyW+0
昔々
このたいりくには とても数のおおいみんぞくと
少ない数のみんぞくが住んでいました。
みんぞくたちは、狩りをし、かちくを育て、さくもつを育て、
あらそいも無く、平和にくらしていました。
しかしあるひ 数のおおいみんぞくが、少ない数のみんぞくを おそい始めたのです。
数のおおいみんぞくは じぶんたちの欲を満たすために、少ない数のみんぞくの ざいさんをうばいました。
あっとうてきな数の差に、少ない数のみんぞくは なすすべもありませんでした。
そしてたいりくはあっというまに、数のおおいみんぞくのものとなってしまいました。
そして少ない数のみんぞくは、異民族と呼ばれ、きらわれてしまいました。
そしていまでも数のおおいみんぞくは
異民族をいじめるのでした。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:26:58.11 ID:g4LvzyW+0
ブーンは唾を飲み込んだ。
喉が異常に乾くのに、何故か唾が口のなかに溢れる。
緊張しているのいるのだろう。
そうブーンは、思った。
目の前の敵が、今までの敵とは格が違うことを本能が教えてくれている。
ブーンは右手に握る斧に、より一層力を込めた。
( ^ω^)「ニダーさん……悪く思わないで下さいお」
<ヽ`∀´>「ふん、もう勝ったつもりでいるのかニダ?」
ブーンは斧を構えた。
ニダーも剣を構えた。
観客が沸いた。
女王が笑った。
男が叫んだ。
「始めえええええええ!!!!」
男の大音声が闘技場内を揺るがす。
その波紋が観客に伝わり、観客もまたより一層沸いた。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:28:07.30 ID:g4LvzyW+0
と同時にブーンとニダーが走り出し、あっというまに距離を詰める。
そして両者は同時に武器を振るう。
金属のぶつかり合う音。
その瞬間ブーンが後ろにたじろぐ。
( ^ω^)(お、重い!!)
斧と剣。
その攻撃の重さは、どう考えても斧の方が上なはず。
にもかかわらずブーンは押されてしまった。
<ヽ`∀´>「軽いニダね! あんたにはお似合いだニダ!」
ニダーがすかさず追撃をかける。
ブーンは軽いフットワークを活かし、それを避ける。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:29:44.44 ID:g4LvzyW+0
ニダーの太刀筋は、普通とは違った。
風を切り裂くように唸る刀身に、何故か異常な重量感が見える。
何故なのだろうか。この重量感は。
何故?
重いからだ。
ニダーの剣は、軽さを微塵も感じさせない。
そう、一回振るうごとに迸る負の氣。
氣がニダーの剣を重くする。
(;^ω^)(こ、これは……?)
ブーンはニダーの攻撃を避けることしか出来ない。
<ヽ`∀´>「はん! 逃げ回るだけかニダ!
まったくあんたは何処までも笑わせる奴だニダ!」
ニダーはさらに激しく剣を振るう。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:30:40.53 ID:g4LvzyW+0
- ニダーはさらに激しく剣を振るう。
その重いのに速い。
まるで黒い鉄球を高速で振り回すかの如く。
容赦ない攻撃をブーンに浴びせる。
(;^ω^)「く、くそ! でも!僕は負けられないお!」
ブーンはニダーの一瞬の隙をついて、
斧を真っ直ぐにニダーに振り下ろす。
<ヽ`∀´>「ふん」
ニダーはそれを容易く剣で弾く。
その瞬間、想像を絶する反動がブーンの手を襲う。
斧がブーンの手から弾け飛んだ。
空気を唸らし、人間の頭蓋をいとも容易く砕く斧が宙を舞う。
斧は回転し、弧を描きながら遥か後方の地面に突き刺さる。
(;^ω^)「え」
ブーンは握るものが何も無くなった右手を見詰める。
右手はビリビリと震えていた。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:31:50.46 ID:g4LvzyW+0
<ヽ`∀´>「残念ニダ。ウリも負けられないんだニダ」
ニダーはそう言い放ち、剣をブーンの喉元に突きつける。
(;^ω^)「う……」
<ヽ`∀´>「死ね」
ニダーがブーンの喉を突く。
ブーンはそれを上半身の仰け反らせ、かわす。
ニダーがすぐに切っ先を下に振り下ろす。
ブーンは咄嗟に横に転がる。
それでもなおニダーはしつこく食い下がり、ブーンを切り裂こうと、
追撃の手を止めない。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:32:47.94 ID:g4LvzyW+0
逃げ回るブーン。
それを追うニダー。
ブーンが舞い落ちる木の葉ならば、
ニダーはそれを叩き落す凶刃。
ニダーは葉を切り裂くために刃を振り下ろす。
轟音。
疾風。
ニダーの刃に宿る負の氣。
それはまとわりつくように、ブーンを絡め、切り裂こうとする。
ブーンが逃げ続けられるのも、時間の問題だった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:33:47.85 ID:g4LvzyW+0
ξ゚ -゚)ξ「どう思いますか? この勝負」
女王が凍るような声で、側にいた男に尋ねた。
側にいた男が、質問に答える。
('A`)「あの異民族の男――
ニダーとやらの剣捌きには、感嘆しますな。
素晴らしい」
その男は、ねっとりとした低く、尚且つ地の底から響くような声をしていた。
ξ゚ -゚)ξ「ええ、異民族にしてはやるようですね……」
('A`)(あのニダーという男……あの剣捌きは並大抵の人間が出来るものでは無い……)
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:34:52.61 ID:g4LvzyW+0
('A`)「ククククク……」
ξ゚ -゚)ξ「どうしましたか? ドクオ」
('A`)「失礼。女王陛下殿としては異民族には勝ってもらいたくないのでは?と思いまして」
ξ゚ -゚)ξ「……私としては強い者が軍に入ればそれでいいのです」
('A`)「ハハハハ、そうですか……」
ドクオは気味の悪い声で笑った。
歯と歯の間かこぼれる、隙間風のような笑い声。
ツンは顔をしかめた。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:35:57.28 ID:g4LvzyW+0
<ヽ`∀´>「本当に逃げ回るだけかニダ!?
どこまでも流されてばかりのヘタレ野郎ニダね! あんたは!」
ニダーの剣が振り下ろされる。
先程までブーンが立っていた地面が抉られ、陥没する。
塵が舞う。
ブーンは逃げる。
(;^ω^)「どういう意味だお!」
<ヽ`∀´>「そのまんまの意味だニダ」
剣が煌く。
否、煌くという表現は適切ではない。
ニダーの剣は暗い、暗い。
黒い輝きで煌いていた。
その刃には負の感情を乗せて、
ひたすらに獲物を切り裂こうと、追い、縋る。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:37:28.05 ID:g4LvzyW+0
- <ヽ`∀´>「あんたの攻撃には迷いがあるニダ。
理由は知らないニダが、あんたに迷いがある限り――」
剣がブーンを一閃する。
ブーンの頬に紅い戦慄が走る。
血が散った。
<ヽ`∀´>「一点の曇りもない、ウリの剣の前には斬られるのを待つことしか出来ないニダ!」
(;^ω^)「……っ!」
図星だった。
たしかにブーンはこの期に及んでもなお、迷っていた。
自分が生きるためには、目の前の敵、
ニダーを殺さなければならない。
しかしニダーを殺せばどうなる?
ニダーにもニダーの理由があり、
今を生きようと必死に抗っている。
ブーンがニダーを殺せば、ニダーは不幸になる。
だからといってブーンはニダーに殺される気など、毛頭無い。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:38:55.41 ID:g4LvzyW+0
(;^ω^)「くそっ……!」
疾風。
空気を切り裂き、風を纏った突きがブーンを襲う。
ブーンは横にそれを避ける。
そして刀身を横から、蹴りつける。
<ヽ`∀´>「ぬわっ!」
その衝撃でニダーが、危うく剣を落としそうになる。
ブーンは自ら作ったこの好機を逃さなかった。
すばやく身をひるがえし、地面に深々と刺さった斧を引き抜く。
構える。
と同時に、剣が眼前に迫っていた。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:40:08.58 ID:g4LvzyW+0
斧を振り上げる。
斧で剣を受け止めようとしたのだ。
<ヽ`∀´>「はん! そんなもの、ウリの剣の前にはかまぼこ同然ニダ!」
ニダーはそのまま力を込め、
満身の力。
満身の氣。
すべてのちからで、斧と共にブーンを葬ろうと叩き斬る。
その太刀筋には、迷いなど皆無。
迷いを取り払われた、純粋の真剣。
その切れ味は、流水さえも斬るであろうに……
そして、鉄と鉄が衝突した。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:41:23.22 ID:g4LvzyW+0
<ヽ`∀´>「な、なにぃ!!!!!」
と同時に、ニダーは思わず声を出してしまった。
絶対に防がれるはずが無いと思った攻撃は、ものの見事に防がれてしまっていたのだ。
( ω )「……」
始まる鍔迫り合い。
力の均衡。
絶えかねて、ニダーが剣を弾き、
ブーンとの距離を取る。
ニダーの頬に、一筋の冷たい汗が流れた。
<;ヽ`∀´>「ど、どういうことだニダ……
ウリの技術をもってすれば、鉄を鉄できるなど容易いはずニダ……」
それに対し、ブーンはゆっくと答えた。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:42:47.47 ID:g4LvzyW+0
( ω )「僕には迷いがあったお……
でも……だから!――」
( ゚ω゚)「――あんたの剣を受け止めることが出来たんだお!」
<;ヽ`∀´>「ば、馬鹿な! 戯言ニダ!」
( ゚ω゚)「戯言かどうか……確認してみるがいいお!」
一端離された二者の距離が、ふたたび閉じる。
振るわれる剣。
受け止める斧。
剣は先程と同じ。
負の感情――それは憎しみ。
ブーンには手に取るようにわかった。
ニダーの剣に載せられた思いは、どす黒い憎しみだった。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:43:44.32 ID:g4LvzyW+0
憎しみを纏った、黒く、重い、
一点の迷いも無い、真っ直ぐな剣。
しかしそれを受け止めるなど、ブーンには容易い。
<;ヽ`∀´>「な、何故だニダ! まだウリには迷いが残っているというのかニダ!
まだ迷いを捨てろと言うのか!」
( ゚ω゚)「違うお、たしかにあんたの剣には迷いなんて一欠けらも無いお。
ちょっと掛かっただけで真っ二つにされそうな程、
切れ味が良さそうだお」
<;ヽ`∀´>「なら――」
甲高い異音が響いた。
手には痺れ。
空気が震える。
<;ヽ`∀´>「なんでウリの剣が止められるニダ!?」
( ゚ω゚)「迷いの無い剣の切れ味には、目を見張るものがあるお!
でも! だからといってそれが最強とは限らないお!」
再び甲高い異音。
二人の鼓膜がびりびりと震えた。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:45:03.91 ID:g4LvzyW+0
( ゚ω゚)「迷い、迷い、迷いぬかれた剣は、いかなる攻撃にも耐える!」
螺旋。
いくつもの思いが、何重に、何重にも巻きつき。
一つに収束する。
そうして出来たものは、どんな思いにも決して揺らぐことは無い。
傷を付けられることもない。
新しい思いを、新たな糧、力とし、
さらに強き、思いとなる。
( ゚ω゚)「僕はクーが死んで……たくさん考えたお」
クーは死んだ。
世界を存続させるために、ブーンを生かすために。
( ゚ω゚)「僕は世界を恨んだ!
でもそれは自身の存在を否定することだったお!」
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:46:28.49 ID:g4LvzyW+0
- 多大な犠牲を払わなければ存続できない世界。
しかしそれこそが世界の真理。
犠牲無くして、いかなる存在もそこに存続することなど不可能。
世界の否定は自身の否定。
クーを犠牲にして生き延びた、自分自身――ブーンの否定。
( ゚ω゚)「そう、世界は醜かったお!」
ショボンはブーンを犠牲にして、何を得たのだろうか?
ブーンにはわからない。
でもショボンが、ブーンを犠牲にして何かしらの利益を得たことはわかる。
それが世界というものだから。
モララーはブーンを犠牲にして地位と財産を守った。
当然だ。
犠牲を払わなければ、今頃モララーは没落し、
薄暗い、決して神の恩恵を受けることの無い状況下に置かれていただろう。
そしてブーンは、
闘技場で数々の人間を犠牲に払い、
今日まで生き延びて来た。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:48:56.11 ID:g4LvzyW+0
( ゚ω゚)「正直今も迷っているお!
あんたを殺さなければ生きられない、クーの思いを守れない自分に、
この世界に、どんな呪いの言葉を吐きかけても満足できない程に、
迷っているお!」
<;ヽ`∀´>「くぅ……」
先程から繰り出すニダーの攻撃は、
全てブーンの斧によって防がれている。
ニダーは感じる。
ブーンの思いの強さを、身をもって痛感する。
( ゚ω゚)「でもこれだけははっきりと言える!
僕はクーに再び会う! クーの思いを守りたい!
だから、だから――」
<♯ヽ`∀´>「ウリだって負けられるものかぁぁぁああああぁぁっぁぁぁぁ!!!!!!!」
迸る憎しみ。
ニダーの剣に一層黒い、負の氣が蔓延する。
そして目の前の敵を切り裂こうと、
容赦なく吼え猛る。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:50:19.75 ID:g4LvzyW+0
- <♯ヽ`∀´>「ウリは絶対に負けないニダ!
このチャンスを……今までずっと待っていたニダ!
果てしなく続くと思われた終わりのない旅路!
ようやく、ようやく到着地が見えたとうのに!」
( ゚ω゚)「……」
既にニダーは、ブーンの方など見てもいなかった。
ただ滅茶苦茶に凶刃を振り回すのみ。
そしてその憎しみの炎を宿らせた眼球は、
ひたすらに
ξ゚ -゚)ξ
女王を捕らえていた。
<♯ヽ`∀´>「殺す……殺す……」
<♯ヽ゚∀゚>「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺殺殺殺!殺殺殺!殺殺!殺殺殺!殺殺す殺す殺す!殺す殺す殺す!殺す殺す!!!!!!!
奴に生き地獄を見せてやるニダ!終焉なき牢獄の堂々巡り!死こそが奴に相応しい!生なども
っての他。安らぎなど与えない!いますぐにでもこの手で八つ裂きにしてくれよう!五臓を切
り裂いてくれよう!六腑を磨り潰してくれよう!殺してやる!それこそがウリの幸福。ウリの
生きる理由!無様に殺された我が民族の仇討ち!待っていろ女王!今日が貴様の命日だニダあ
嗚呼あああぁぁぁぁああああっぁぁぁぁぁあぁあっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:52:07.10 ID:g4LvzyW+0
- 狂喜乱舞。
狂っていた。
もはやニダーは人間とも思えぬ形相。
憎しみの眼は赤黒い炎で満たされ、
口の端からは凶暴な犬歯が顔を覗かせ、獲物を喰らおうと軋る。
髪は振り乱れ、てんでばらばらに散る。
まさしく鬼。
復讐鬼。
復讐こそが生き甲斐。
生きる理由。
生涯をもって果たすべき目標。
<♯ヽ゚∀゚>「うが嗚呼嗚呼ああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
( ゚ω゚)「おおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉお!!!!!!!!!!!!」
二人の雄叫びが空に舞った。
それまでも周りのが声が聞こえない程に沸き上がっていた観客達の歓声も、
それに共鳴するかのように、一層熱が入る。
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:53:33.91 ID:g4LvzyW+0
金属の激しくぶつかる響き。
荒々しく踏まれる、闘いのステップ。
風の切り裂かれる音。
観客の歓声。
それも見守る神。
黙って見守り続ける神。
そして、舞台は幕を閉じられる。
ξ゚ -゚)ξ「やかましいわね……」
女王がポツリと呟いた。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:54:52.38 ID:g4LvzyW+0
そして、一際高い歓声。
共に弾ける金属音。
ニダーの剣は、根元から真っ二つに折れていた。
<♯ヽ゚∀゚>「な……ウリの……剣が折れただと……!」
ニダーは両の眼を落としそうになるほどに目を見開いた。
( ゚ω゚)「僕の思いがあんたを上回ったってことだお」
<♯ヽ゚∀゚>「な……馬鹿な! そんな馬鹿な!」
( ゚ω゚)「知っているかお? 純粋な鉄よりも、少量の炭素の混じった鉄の方が丈夫だと」
ニダーの純粋な憎しみのみによって構成された剣。
ブーンの迷いぬかれた、螺旋状の思い。
- 85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:57:53.18 ID:g4LvzyW+0
ニダーは憎み過ぎた。
憎んで、憎んで。
そんな純粋な思いが。
曇り一つない剣。
もしかしたらそれは、
逆なのだ。
全てが曇っていた……それだけなのかもしれない。
血潮が青空に飛んだ。
<♯ヽ゚∀゚>「ぐ……じゅぁら……」
ニダーの胸に、鮮血の一文字が書かれた。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 20:59:06.68 ID:g4LvzyW+0
ニダーは苦しみに呻く。
膝を地に付ける。
しかし
眼は女王を捕らえて離さない。
<♯ヽ゚∀゚>「一族の仇……」
血が地面を赤く染める。
血溜りが徐々にその範囲を拡大させる。
それでもなおニダーは必死に死から抗う。
残り少ない力を振り絞り、身を引きずり。
女王のもとへと這いずる。
しかしその動きはとても遅い。
おそらくあと数歩分も動かぬうちに、ニダーは力尽きるだろう。
とうとう力が入らなくなってきたのか。
ニダーの顔に絶望の表情が浮かび始める。
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:00:36.17 ID:g4LvzyW+0
そして
その顔から……精気が失われる前に。
ブーンはニダーの背中に、とどめの一撃を放った。
ぐちゃりと何かが潰れる音がした。
斧はニダーの背骨と肉と内臓を斬り潰した。
血が噴き出した。
それで、ニダーは、死んだ。
ニダーのからだが崩れ落ちる。
土と埃と血で汚れる。
全身から力が抜けていく。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:06:16.17 ID:g4LvzyW+0
でも
その抗うように伸ばされた右手は
必死に何かを掴もうと蠢く。
しかし結局は何も手にすることは無く。
地に落ちた。
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:08:03.70 ID:g4LvzyW+0
「勝者、ブーーーーーーーン!!!!!!!!」
闘技場が爆発したかのような、歓声に包まれた。
しかし、ブーンはいまいちその歓声を受け入れることが出来ない。
これで良かったのだろうか?
そんな思いがかすめる。
その時。
一人の女性の声がした。
ξ゚ -゚)ξ「見事であったぞ。ブーン」
そこには、純白のドレスを纏う、女王が立っていた。
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:09:42.62 ID:g4LvzyW+0
ブーンは以前に女王を遠くから見たことがあった。
しかし改めて間近で見ると、女王の美しさには息を飲むほどだった。
綺麗な顔立ちをしていた。
優美な曲線美を描く、巻き髪の金髪。
そしてすぅと伸びる鼻。
艶かしい光沢の唇。
天使。
陳腐な表現だが、
ブーンは素直に、女王が天使のように感じられた。
ξ゚ -゚)ξ「そなたを勇猛果敢な戦士として、我が帝国軍に迎い入れる」
女王が静かに。
荒れた水面に広がる、静かな波紋。
静かに言った。
( ω )「……」
ブーンは女王には悟られぬように、右手に携えた斧に力を込めた。
- 106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:11:25.51 ID:g4LvzyW+0
他人の思いを無視して、自分の思いを優先する。
他人を犠牲に、自身の存在を確立させる。
ブーンはニダーの思いをないがしろにし、自分の思いを貫いた。
しかしそれは仕方の無いこと。
もしブーンがニダーの思いを成就させれば、ブーンは死んでいた。
ブーンの思いは砕かれていた。
( ω )「……」
ブーンは生き延びた。
じゃぁ、死んだニダーの思いはどうなる?
そのまま朽ち果てるだけだ。
今ブーンはニダーの思いを引き継ぐことが出来る。
ただ右手に持つ斧を振り上げ、振り下ろせばいいだけ。
おそらくニダーも、ブーンに勝ったとしたら、
今この瞬間に女王を殺そうとしていたのだろう。
今の女王には、付き人が胡散臭い長髪の陰気な男一人だけだ。
脳天をかち割るなど、造作もないだろう。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:14:25.34 ID:g4LvzyW+0
しかし今それを行えば、すぐに援軍がやってきてブーンは問答無用で処刑台行きとなるだろう。
ブーンはブーンの生きる理由がある。
ニダーの思いは尊重できない。
だからニダーを殺した。
( ω )「……」
ξ゚ -゚)ξ「……後で迎えの兵を遣わす、今は存分に休んでおくといい」
押し黙ったままのブーンに、女王は一方的に話したいことだけを告げると、
付き人と共に、また観客席へと戻っていった。
そしてブーンもまた、控え室へと引き返す。
闘技場は未だにブーンの名を呼ぶ声で埋め尽くされていた。
歓声が耳を震わす中、ブーンは一度、闘技場を振り返った。
目に入ったのは、ニダーの無残な骸。
思いを身に貯めた骸。
ニダーは何故女王をあんなに憎んでいたのか。
ちょっとだけ理由が知りたくなった。
それだけだった。
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:15:29.56 ID:g4LvzyW+0
歓声が徐々に小さくなっていく。
ブーンが建物の内部へと入っていくからだ。
そして完全に何も声が聞こえなくなったとき。
ブーンはもう再び入ることは無いだろうという、牢屋に戻ってきた。
(=゚ω゚)ノ「ブーン! 帰ってきたってことは……勝ったってことかょぅ!?」
ぃょぅが、ブーンの姿を確認するや否や真っ先に声をかけて来た。
( ^ω^)「うん。勝ったお」
(=゚ω゚)ノ「そうか! 良かったょぅ! 実を言うとニダーよりもブーンに勝ってもらいたかったんだょぅ
あいつはいちいち偉そうだったからだょぅ」
( ^ω^)「え……?」
ぃょぅから突然出てきた、ニダーの悪口。
正直以外だった。
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:16:43.60 ID:g4LvzyW+0
( ^ω^)「……あ、そうだお。ぃょぅ」
今はニダーの話はしたくなかった。
ましてや悪口など、口が裂けても言いたくは無かった。
だからブーンは話題を変えることにしたのだ。
(=゚ω゚)ノ「? なんだょぅ?」
( ^ω^)「この傷の手当……ぃょぅがしてくれたんだおね? ありがとうだお」
そう言ってブーンは、胸の傷に手を当てた。
それをぃょぅは怪訝そうな顔つきで眺め、そして
(=゚ω゚)ノ「なんの話だょぅ」
(;^ω^)「え……?」
この傷の手当をしてくれたのは……ぃょぅでは無い。
すると誰なのか?
といってもこの牢屋を自由に出入り出来るのは、試合時間の時だけだ。
傷の消毒は、ブーンが寝入っているときに行われた。
とうぜん牢屋には堅固な鍵が掛けられ、如何なる侵入者も脱走者も許さない。
となれば自然に人数は絞られる……
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:20:52.98 ID:g4LvzyW+0
そして消毒の酒。
いくら消毒用とはいえ、この牢屋に囚われている限り調達は困難。
兵士との繋がりを持つ者にしか出来ない。
となると、その人物はかなりの古参であり、かなり名が通っていてなおかつ信用のあるもの。
それこそ女王から声がかかるほどの……
となると該当するのは……
(;^ω^)「ニ……ニダー?」
そのときだ、突然聞き覚えのあまり無い声が聞こえた。
この声を聞いたのは一回だけ。
そう、傷にうなされ、夢を見たあの晩に、一回だけ。
/ ,' 3「彼は復讐という狂気に取り憑かれておった。
しかし、復讐とは誰かのために為すこと。
彼は他人のために何かが出来る……そういう人間じゃったよ」
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:21:50.52 ID:g4LvzyW+0
スカルチノフ。
夢ではない。
目の前の、実体を持つ、スカルチノフが喋っている。
(=゚ω゚)ノ「……!!!!」
驚きのあまりぃょぅは声を失っていた。
きっとブーンが来る以前もスカルチノフは、声を出したことがなかったのだろう。
/ ,' 3「彼は心優しい異民族の戦士じゃった。
しかし家族を殺され、同胞達を殺され、
仲間達のために一人走り続けた男じゃった」
( ω )「じゃぁ……僕は……そんな優しい男を殺したのかお」
ブーンは今更スカルチノフが喋ろうが、何も驚かない。
しかし、初めて聞く、ニダーという男の顔に驚きを隠すことはできなかった。
( ω )「それじゃぁ……こういうのかお!」
( ゚ω゚)「そんな心優しい彼を殺した僕が間違っていると!
僕が悪であいつが正義だって!
そういうのかお!!!!!」
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:25:51.40 ID:g4LvzyW+0
/ ,' 3「……そうはいわんよ」
( ゚ω゚)「……」
/ ,' 3「お互いがそれぞれの思いの為に殺し合い、そして結果的にお前さんが勝った。
どちらが悪でどちらが正義など、わしがどうこう言うつもりも無いし、
そもそも言えんよ」
/ ,' 3「ただ、お前さんには真実を知ってもらいたかったそれだけじゃ」
そしてスカルチノフはそのまま、
元と同じように、再び眠りにつこうとした。
しかしブーンはそれを遮る。
この老人には聞きたいことがある。
長い時間を生き、この世を知った、この老人に聞きたい真実がある。
(;゚ω゚)「一つ聞かせてくれお!」
/ ,' 3「……」
(;゚ω゚)「この世界は……犠牲が無いと成り立たない。それは真実なのかお!
僕はそれが知りたい。
もう誰かを犠牲にしたくは無いんだお!!!」
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:31:21.74 ID:g4LvzyW+0
/ ,' 3「……真実だ」
スカルチノフの答えは、あまりにも無慈悲だった。
(;゚ω゚)「じゃあ! この世界に生きる限り!
みんなが! 笑顔で、幸せに暮らす。
そんなことは出来ないのかお!」
犠牲を払う必要が無ければ、クーは笑顔だった。
笑顔で今も村で、ブーンと一緒に暮らしていた。
ニダーだってきっと故郷で、幸せに暮らしていたのではないのだろうか?
/ ,' 3「……世界の真理……それに当て嵌まらない人物を一人。
わしは知っておる」
(;゚ω゚)「そ、それは……!?」
/ ,' 3「お主も知っておるだろう?」
- 125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:32:04.94 ID:g4LvzyW+0
魔法使い。
神をも超越した力の持ち主。
その昔、その名を各地に残した伝説の魔法使い
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:38:21.20 ID:g4LvzyW+0
/ ,' 3「彼ならば……世界を変えられるだろうな……」
(;゚ω゚)「……」
(=゚ω゚)ノ「ちょ……話についていけないょぅ……」
そのときだ。
ブーンの背後から声が聞こえた。
('A`)「ブーン。そなたを帝国軍兵士としてむかい入れるべくお迎えにあがった。
王宮にて式を挙げる。迷わず私の後についてくるように」
(;^ω^)「わ、わかったお」
女王の付き人の、陰気な男だった。
ブーンはいわれるがままに、男の後ろについた。
そして歩き始める。
(=゚ω゚)ノ「ブーン! 頑張れょぅ!」
ぃょぅの声が聞こえた。
ブーンは振り返り、手を振った。
- 131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:40:00.69 ID:g4LvzyW+0
ぃょぅは本当に嬉しそうな目でブーンを見送っていた。
スカルチノフは、以前のように、すこやかな眠りについていた。
ブーンは決意する。
クーが死んでから何度目の決意になるかはわからない。
しかし、それでも決意する。
必ず。
みんなを笑顔にする。
そしてその決意と共に手を下ろすと、再び歩き始めた。
次の舞台へと移るために……
- 132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:44:27.61 ID:g4LvzyW+0
――この世界には様々な思惑が存在する――
- 134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:48:07.74 ID:g4LvzyW+0
蝋燭のみが光る、薄暗い部屋。
そこに一人の男が立っていた。
( ・∀・)「……」
モララー。
彼は手に、一つの勲章を持っていた。
彼の地位を表す、家紋が彫りこまれた勲章。
貴族を貴族にたらしめるもの。
( ・∀・)「……」
そのとき、がちゃりとドアの開く音がした。
木が擦れ、嫌な音を出しながら、扉が開かれた。
そして足音と共に、何者かが部屋の中へと踏み入れる。
( ・∀・)「……誰だ?」
モララーはゆっくりと振り返り、その人物を見た。
まったく知らない者だった。
( <●><●>)「……ワカッテマス……それが私の名」
- 135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:49:48.99 ID:g4LvzyW+0
( ・∀・)「部外者は締め出されるはずだが……」
その問いに、ワカッテマスは行動で答えた。
ワカッテマスが何か大きな塊をモララーに放る。
( ・∀・)「……!」
( 、 *川
それは、ペニサスだった。
しかも胸にはナイフが深々と刺さっている。
既に死んでいる。
( ・∀・)「成程。で? 要求は何だ?
とりあえず私の命では無いようだな。
でなければとっくに私は殺されている」
しかしワカッテマスは、その問いに直接答えようとはしなかった。
( <●><●>)「あなたが女王に……貴族に嫌気がさしているのはワカッテマス」
( ・∀・)「お前……革命軍の者か!?」
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 21:53:56.84 ID:g4LvzyW+0
( <●><●>)「……」
( ・∀・)「……」
( <●><●>)「……」
( ・∀・)「良いさ、協力しよう。どうせ断ったら殺されるんだろう?」
( <●><●>)「……あなたはご自分の立場がよくワカッテマス」
- 138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:01:01.07 ID:g4LvzyW+0
――様々な思いは複雑に絡み合う――
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:01:44.42 ID:g4LvzyW+0
(´・ω・`)「じゃぁ、僕は行くよ」
(-_-)「ああ、行ってらっしゃい」
煌びやかな都に立つ、一軒のバー。
そこはかとなくもの哀しい雰囲気を漂わす店内。
(-_-)「君はまだ魔法使いを探すのかい?
どこにそんな人がいるというのさ?」
(´・ω・`)「ははは、風に訊いてみるとするよ!」
(-_-)「……」
ヒッキーは、ワイングラスを拭きながら深いため息をついた。
拭き終わったグラスを、ことりとカウンターに置く。
この男。
ショボンはいつもこうなのだ。
こちらがどれだけ真剣に心配しても、そんなものどこ吹く風といった様子で、
ひたすらに自分のペースを貫いてしまうのだ。
- 141 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 22:04:26.96 ID:g4LvzyW+0
(-_-)「まったく。そうやって私利私欲のために何人もの若者を売っ払ったのはどこのどいつだか……」
(´・ω・`)「ふふふ、それはこの――」
(´・ω・`)「ショボン様s……」
(-_-)「はいはい」
(;´・ω・`)「……」
(-_-)「……」
ヒッキーは次のワイングラスを手に取った。
(´・ω・`)「まぁいいさ! そうやって僕を軽くあしらえるのもいまのうちさ。
なんせ僕は魔法使いを超える男なのだからね!」
(-_-)「ああ、がんばってくれ」
(;´・ω・`)「……」
- 142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:05:11.27 ID:g4LvzyW+0
――思いはやがて一つの終着点へと向かう――
- 144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:06:07.24 ID:g4LvzyW+0
「ブーン。一体何処へ行ってしまったんだ?」
中年の男が、丘に腰掛け、神を拝みながら呟いた。
側には、男と同じくらいの歳の女が座っている。
おそらくこの二人は夫婦なのだろう。
「クーちゃんが生贄になって……それでブーンは……
はは、馬鹿ね私は。息子の気持ちを気遣う。
そんな初歩的なことができなかったなんて」
「それならば俺の責任でもある」
風がそよいだ。
この風はどこから吹いてきたのだろうか。
ブーンの元から吹いてきたのだろうか。
風に訊けば……わかるのだろうか……
从 ゚∀从「なかなか詩的な言葉を使うな……」
「ハ、ハインリッヒ様!」
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:07:08.02 ID:g4LvzyW+0
突然のハインリッヒの闖入に、夫婦は揃って声をあげた。
从 ゚∀从「ブーンがいなくなって哀しいのは私もだ……」
「……」
从 ゚∀从「しかしな、きっとブーンは帰ってくる」
「え!?」
夫婦は揃ってハインリッヒの顔を見た。
ハインリッヒの表情に、別段変わったところはない。
しかしそこには、たしかな確信。
そして
何かを見つめていた。
- 146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:07:51.00 ID:g4LvzyW+0
ハインリッヒには何が見えるのか。
夫婦にはわからない。
夫婦は願わずにはいられない。
おお、風よ。
教えてくれ。ブーンは今何処にいる?
ハインリッヒには何が見えるのか……
風よ。教えてくれ……
- 148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:08:38.53 ID:g4LvzyW+0
――紡がれし様々な思い――
- 149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:09:55.20 ID:g4LvzyW+0
一人の女がいた。
綺麗な黒い長髪がなびく。
その女性は、とてもクーに似ていた。
女は機を織る。
糸を紡ぎ。
そして糸が絡み合い、一つの形を成す。
紡がれるは思い。
そして絡み合うはそれぞれの思惑。
女性は機を織る。
織られるは……一つの物語。
それぞれの思いが、一つの終着点へと導かれる。
女性は機を織る。
様々な人間達が、魔法使いを巡り、絡み合う。
- 150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/21(木) 22:10:42.75 ID:g4LvzyW+0
そしてすべての思いは……
魔法使いへと収束する……
( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです
第五話 「being 〜本当のプロローグ〜」 終わり
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