( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:48:32.33 ID:zFuPnpqj0
第六話 「鉄壁ガードのあいつ」
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:49:21.16 ID:zFuPnpqj0
( ^ω^)「おお」
ブーンは思わず声を出してしまった。
久々の外の世界。
そこは牢屋のように、暗くじめじめとしておらず、
とても暖かい、新鮮な空気に溢れていた。
('A`)「……黙ってついてこいよ」
( ^ω^)「すいませんお」
('A`)「……わかればいいんですよ」
(;^ω^)「……」
どうにもこの人とは仲良く出来そうに無いな。
そうブーンは思った。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:50:14.80 ID:zFuPnpqj0
('A`)「……まぁあんたも運が良いですよ」
(;^ω^)「そ、そうですかお?」
('A`)「クヒヒ……えぇ、運のいい方ですよ。あなたは」
(;^ω^)「……」
気味が悪い。
一言でこの男の印象を表すならばならば、これほどにぴったりな言葉は無いだろう。
妙に間をつけた喋り方。
隙間風のような笑い方。
そしてねっとりとした声。
ブーンは正直この男に嫌悪感を抱いた。
そして男はブーンを、一台の馬車まで案内した。
馬車の脇には一人の兵士が立っている。
( ><)「あ、ドクオ様。お疲れ様なんです!」
('A`)「……あぁご苦労」
随分と若そうな兵士だった。
まだ少年といっても差し支えなさそうな顔つきだ。
たんに童顔なだけなのかもしれないが。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:51:38.84 ID:zFuPnpqj0
( ><)「えぇと、こちらがブーンさんなんですか!」
(;^ω^)「お? あ、はい。僕がブーンですお」
( ><)「ブーンさんの雄姿! よく拝見させてもらってたんです!
是非一度会ってみたかったんです! 感動なんです!」
そう言って、兵士はブーンに近寄ると、一方的にブーンと握手をする。
その際に、腕を上下にぶんぶんと振るのも忘れない。
(;^ω^)「あ、ありがとうございますお……」
('A`)「つかいいから早く馬車出せよカス」
( ><)「す、すいませんなんです!」
すると兵士は怯えて逃げ出した小動物のような速さで、馬車の運転席へと座った。
('A`)「……ったく、どんくせぇったらありゃしねぇの」
('A`)「……」
('A`)「あ、お見苦しいところすいませんねwwwどうぞこちらにお掛けください」
(;^ω^)「……」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:52:51.26 ID:zFuPnpqj0
ドクオが両手を座席に差出し、どうぞといわんばかりにブーンに着席を促す。
ブーンは大人しくそれに従い、おずおずと腰を掛けた。
座席が柔らかくブーンの体を受け止めた。
(;^ω^)(こんなふかふかな場所に座ったことないおwwww)
そしてドクオも、ブーンの横に腰掛けた。
('A`)「さっさと走らせろ」
( ><)「ワカッタンデス!」
兵士が鞭を撓らせる。
ピシンと音を鳴らせ、馬がゆっくりと走り出した。
すぐに馬車は加速してゆき、そして一行を乗せ、城へと走り出す。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:54:48.90 ID:zFuPnpqj0
('A`)「見てましたぜ」
出発してから、暫く。
馬車にはガラガラと車輪の鳴る音だけが響き、
それ以外はまったくの沈黙。
誰も喋らなかった。
いや、実際はドクオから出る暗黒な雰囲気によって誰も喋られなかったのだ。
しかしその沈黙を突然、原因であるドクオが破った。
( ^ω^)「なにをですかお?」
('A`)「ははは、あなたの試合ですよ。あの異民族との」
( ^ω^)「あぁ、そうだったんですかお」
('A`)「見事なものでしたよ、あの異民族の剣捌きは相当なものでしたからね。
それを打ち破ったあなたは、中々の腕前のようですねぇ」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:56:13.39 ID:zFuPnpqj0
( ^ω^)「そうでもないですお。
あれはただ、生きるのに必死で……偶然勝てたようなものですお」
('A`)「偶然……ですか……」
( ^ω^)「そうですお。何か?」
('A`)「いえいえ、なんでもありませんよ…………クヒヒ」
(;^ω^)「?」
('A`)「クヒヒヒヒ……失礼。なんでもございませんよ……」
(;^ω^)「そ……そうですかお……」
ブーンは真剣に願った。
もう降りたいと。
その願いか叶ったのか、兵士が車輪に声がかき消されないように、声を張り上げた。
( ><)「そろそろ着くんです!」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:57:23.47 ID:zFuPnpqj0
( ^ω^)「おお」
ブーンは顔を上げた。
巨大な、侵入者を許さぬ堅固な城門。
そしてそこを潜り抜けた先には、厳しい装飾の施された立派な門。
聳え立つ塔。
純白の城壁。
そして一際高く聳える天守にはためく、帝国の国旗。
('A`)「立派なものでしょう? あなたは今日からここに仕えることができるのですよ
それは大変名誉なことなのですからね……クク」
( ^ω^)「……」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 20:59:21.67 ID:zFuPnpqj0
ブーン達が着くとすぐに女王の間の前へと通された。
女王の間は、最上階の天守に作られており、そこまで行くだけでブーンは大分疲れてしまった。
('A`)「すいませんね。女王様は高いところがお好きなのですよ」
(;^ω^)(だからってこんな糞高い所に部屋を構えなくても良いと思うお……)
そしてブーンは女王の間へと繋がるドアを見上げた。
様々な彫刻が施された、それはそれは立派な門だった。
もっともブーンには、それがどのくらいすごいものなのかはわからなかったが。
とりあえずすごいものはすごい。
ブーンの知識と感性ではこれが限界だ。
('A`)「では、どうぞお通り下さい」
ドクオがさっと脇に退き、ブーンにドアを開けるように促す。
('A`)「ここからはあなた一人でお通り下さい……ククク」
(;^ω^)「一人……ですかお」
正直ブーンとしては、あの鉄面皮の女王には出来るだけ会いたくない。
ましてや一人でなど。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:00:35.09 ID:zFuPnpqj0
しかしここでドクオに逆らっても仕方が無い。
ブーンは意を決して、ドアをゆっくりと押した。
滑るようにドアが開かれた。
(;^ω^)「お邪魔しますお」
赤い、真紅の絨毯。
そしてその道を辿っていった先に。
女王が圧倒的な存在感を纏い、王座に坐っていた。
両脇には、槍を持った護衛の兵士。
この点ではブーンは内心ほっとした。
本当に二人っきりでは、女王の眼差しに殺されかねないと思っていたからだ。
ξ゚ -゚)ξ「戦士ブーンよ……こちらに来るがいい」
凍てつくような冷たい声。
ブーンの背筋に悪寒が走った。
(;^ω^)「はいですお」
ゆっくりとブーンは、女王に歩み寄る。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:02:57.19 ID:zFuPnpqj0
そして丁度上座と下座の境よりも、数メートル手前で止まる。
教養の無いブーンはここでどうしようかと一瞬悩むが、
とりあえず立っているのは不味いと判断し、膝立ちになり、頭を降ろした。
ξ゚ -゚)ξ「頭をあげるが良い」
(;^ω^)「はいですお」
女王は何かを手招きするような仕草をした。
すぐに脇に控えていた兵士が、一枚の紙を持ってきた。
それを女王は、ぞんざいに受け取る。
そして読み上げる。
ξ゚ -゚)ξ「え〜、これよりそなたを帝国軍小隊長に任命する。
これはその件に関する書類だ。受け取れ。無くすでないぞ」
女王が紙を兵士につき返す。
兵士はうやうやしくそれを受け取り、ブーンの方へと歩み寄り、紙を差し出す。
ブーンはそれを受け取ろうとした。
その時。
兵士が囁く。
「罪人の癖に小隊長か。いい御身分だな」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:04:48.13 ID:zFuPnpqj0
(;^ω^)「お?」
いきなり罵倒された。
しかしブーンにはそのこと事態はあまり気にしなかった。
それよりも気になったこと。
( ^ω^)(そういえば僕って一応殺人犯っていう設定だったお)
闘技場でたくさん殺したためか、すっかりそのことを忘れていた。
もっともあの貴族を殺したのは、ブーンではなくモララーだが。
( ^ω^)(そういえばモララーさんはどうしているのだろうお)
復讐する気は毛頭無い。
ただ純粋に、モララーの安否が気になった。
ξ゚ -゚)ξ「さてと、では将軍殿。入ってくるがよい」
( ^ω^)「お?」
女王の声が掛かるのを待っていたかのように(事実待っていたのだろう)
ドアを押し開け、一人の兵士が入ってきた。
( ゚ ゚)「……失礼」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:05:55.70 ID:zFuPnpqj0
その将軍と呼ばれた者は、かなり異様な格好をしていた。
全身を漆黒の鎧で包み込み、素肌を一切見せていない。
顔面までもだ。
その顔面は、これまた黒い仮面に覆われていた。
目の部分に細い亀裂が走っただけの、文字通り完璧に顔面を隠す仮面。
しかも兜をすっぽりとかぶっているため、毛髪すら露出していない。
さらにはその声も、顔面全体を覆う仮面のせいなのか妙にくぐもっていて、
かなり聞き取りづらい。
これでは中にいるものが、万が一子供だとしても、判断することは難しいだろう。
将軍は、カチャリ。カチャリと歩くたびに鎧を打ち鳴らせながら、
ブーンの元へと歩み寄ってきた。
( ゚ ゚)「……」
(;^ω^)「こ、こんにちはですお」
( ゚ ゚)「……」
女王とはまた違った存在感があった。
女王がいるだけで周りを凍て尽くすならば、
この者は、いるだけで周りを押し潰すような、そんな存在感。
ξ゚ -゚)ξ「将軍殿。新入りのブーン小隊長です」
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:06:44.97 ID:zFuPnpqj0
( ゚ ゚)「……」
( ゚ ゚)「そこのお前……」
「な、なんでありましょうか!」
脇に立つ兵士が、やたらと力の篭った声で答えた。
( ゚ ゚)「新入りを宿舎に案内しろ……」
「は! 了解しましたあ!!」
これまたやたらと気合の篭った敬礼。
そしてブーンの肩を掴み、少々強引に立ち上がらせる。
(;^ω^)「あ、ちょwwww痛いおwwww」
そのままブーンは、引きずられるように、兵士と共に部屋を出た。
「さぁ、来い。”小隊長殿”」
(;^ω^)「う……」
兵士はやたらと皮肉をこめて、ブーンをそう称した。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:07:48.00 ID:zFuPnpqj0
ξ゚ -゚)ξ「さてと、じゃぁお前らも下がれ。将軍殿と重要な話がある」
「はっ!」
思わずビシリという擬音が聞こえてしまいそうなほどに、兵士は力をこめて敬礼し、
次々と女王の部屋から出て行く。
そして最後の兵士が、部屋を出て、扉を閉めたのを確認してから、女王は口を開いた。
ξ゚ -゚)ξ「……で、各軍の動きはどうなっている?」
( ゚ ゚)「連合軍、革命軍共に不穏な動き有り、と。 クク」
ξ゚ -゚)ξ「”将軍”殿?」
女王はやたらと将軍を強調して言った。
将軍はそれを聞いて、しまったと小さく呟き、
( ゚ ゚)「失礼」
ξ゚ -゚)ξ「いつどこで聞かれているかわからん。その辺をよぉく気をつけておけ」
( ゚ ゚)「以後気をつける」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:09:37.61 ID:zFuPnpqj0
ξ゚ -゚)ξ「にしても……奴等はどうにかならんのか?
連合軍共は昔から性懲りも無く我が帝国に喧嘩を売ってくるわ……」
女王はそこで一端言葉を切った。
そして頭を抑える。
どうやら頭に血が昇って、軽い頭痛を起こしたらしい。
少し顔を顰めながらも、言葉を再開させる。
ξ゚ -゚)ξ「一番気に喰わんのが革命軍共だ。
卑しい賎民が貴族にたてつきおって……
( ゚ ゚)「あともう一つ悪い知らせがあります」
ξ゚ -゚)ξ「なんだ?それは?」
( ゚ ゚)「今年は凶作で、食料が不足しています」
ξ゚ -゚)ξ「……なんだ。そんなことか」
( ゚ ゚)「しかし国民の不満が高まっている今。
食糧不足はなかなかに深刻な死活問題ですが」
ξ゚ -゚)ξ「ふん、そんな問題簡単に解決する」
女王は、静かに言い放った。
ξ゚ -゚)ξ「異民族の集落からかっぱらって来い」
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:10:57.01 ID:zFuPnpqj0
( ゚ ゚)「そう言うと思っていましたよ。”ツン”女王陛下」
ξ゚ -゚)ξ「というと、準備は?」
( ゚ ゚)「いつでも」
ξ゚ -゚)ξ「ふ、手際が良いな」
( ゚ ゚)「それでは、失礼します」
優雅な手つきで、軽く一礼。
そしてさらりと踵を返し、入ってきたときと同じように、
カチャリカチャリと鎧のぶつかり合う音を響かせながら、部屋を出て行った。
ξ゚ -゚)ξ「……」
ξ゚听)ξ「ふぅ……」
ツンは深く息をついた。
そして右手を軽く挙げる。
ξ゚听)ξ「……」
しかし挙げられた右手に、何かが手渡される気配は一向に無い。
当然だ。
兵士も侍女も皆下がらせてしまったのだから。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:13:18.17 ID:zFuPnpqj0
ξ゚听)ξ「まったく、一国の主ってのは面倒くさいわね」
ツンは軽く悪態を付くと、億劫そうに王座から立った。
ξ゚听)ξ「偉い人には偉い人なりの苦労があるとは、よく言ったものね」
ツンは奥から一本の酒の入った、緑色のボトルを持ち出してきた。
そして王座にどかりと座ると、真っ白に輝くグラスを出し、そこに酒を注いだ。
ξ゚听)ξ「……」
ちびりと一口。
アルコールがじわりと喉を暖める。
ξ゚听)ξ「しっかし、この絵を見ながらの酒は本当に不味いわね」
ツンの視線の先。
そこには一枚の絵画が掛かっていた。
暖かい配色で描かれた、一枚の油絵。
そこに描かれているのは、一組の夫婦に幼い女の子。
全員が穏やかな笑みを浮かべて、女の子を中心に立っている。
ξ゚听)ξ「親父も厄介な役目を私に押し付けて死んだものね」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:18:35.56 ID:zFuPnpqj0
ツンはまた一口、酒を含む。
酒をしばらく舌の上で転がして、味を楽しむ。
すぐに飽いた。
ξ゚听)ξ「ふん」
そしてグラスとボトルを適当に放り投げた。
がしゃんと甲高い音が鳴る。
しかしツンはそんなことは気にもしない。
どうせ後で侍女達が掃除するのだ。
別に彼女等の仕事が増えることなど、ツンにとっては知ったことではない。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:19:25.89 ID:zFuPnpqj0
ツンは立ち上がると、真っ直ぐに絵画を見つめる。
その視線はしっかりと、描かれた壮年の男を捕らえていた。
ξ゚听)ξ「安心しなさい、今に帝国は私の手によって大きく成長するわ」
純白のドレスが翻る。
ξ゚听)ξ「あんたの代では考えられなかった程にね」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:20:44.51 ID:zFuPnpqj0
緑滴る森林を、一頭の馬が駆け抜ける。
風のように、早く、美しく走る姿は見る者を魅了する。
しかし馬は立派でも、乗っている人が少々アレだが。
(´・ω・`)「秋風が〜俺の心に響く〜♪ ってかぁ〜」
(´・ω・`)「心が震え〜奮え〜振るえ〜、その手を振るえ〜♪」
(;;´゚ω゚`)「迸れSHOW ME!!!!!」
台無しとはこういうことなのだろう。
馬の姿、足運び、蹄の音。
そしてショボンの容姿。
これらは、思わず見たものは振り返ってしまう程のものなのだが、
いかんせん言動やらなんやらが、逸脱しすぎている。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:23:41.23 ID:zFuPnpqj0
(´・ω・`)「いやぁ久々の乗馬は良いなぁ。 おや?」
ショボンは手綱を思い切り引っ張った。
馬が即座に足を止め、地面を抉り、止まった。
(´・ω・`)「いやはや、どうしましたか? 何かお困りですか?」
颯爽とショボンは、馬から飛び降りる。
そしてポーズを決め、
(´・ω・`)「この魔術師ショボンにお任せあれ。どんな問題も解決してみせますよ」
と、頭からローブを被った、旅人と思われる人物に手を差し伸べた。
「いや、結構ですよ」
(´・ω・`)「いやいや、そう言わずに。
見たところ徒歩で都に向かっているようですが……どうでしょう?
この僕が都までこの駿馬で送り届けてあげましょうか?」
「いや、遠慮しておきますよ。それに私は謝礼のほうは奮発できませんしね」
(´・ω・`)「いえいえ、勿論善意から来る無償の行いですので、お礼などあ痛っ!」
ショボンが痛みで声をあげた。
旅人が差し出されたショボンの右手を、捻り挙げたのだ。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:24:58.37 ID:zFuPnpqj0
(´・ω・`)「な、なにを……私はただ本当に困っている人を助けたくて……」
「ほう、そうですか」
旅人はそのまま、ショボンの右手を叩きつけるように投げた。
そしてその拍子に、服の裾の中から、何かが飛び出した。
(;´・ω・`)「あ、やべ……」
飛び出したのは、
銀色に輝く短刀。
「油断した隙にこれで脅して、身ぐるみ剥いでぽいっ ですか?」
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:30:03.58 ID:zFuPnpqj0
旅人が頭のローブを取る。
爪'ー`)y‐「外道ですね……失せなさい」
(;´・ω・`)「……ちっ!」
ショボンは悪態をつくと、馬にまたがった。
(;´・ω・`)「覚えてろよ!」
そう捨て台詞を吐いて、手綱を引いた。
馬が一声、鳴き。
そしてまた颯爽と駆けて行った。
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:32:23.12 ID:zFuPnpqj0
(´・ω・`)「くそ、あんな貧相な旅人に不覚をとるとは……」
(´・ω・`)「つかあいつに掴まれた右手首がまだ痛い……」
(´・ω・`)「ん?」
ショボンは右手首を凝視した。
痛みがまだ残るので、てっきり痣になってるかと思ったが、違う。
痣ならばこんなじくじくと痛まない。
(´・ω・`)「水膨れになってらぁ」
(´・ω・`)「……」
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:33:49.44 ID:zFuPnpqj0
(´・ω・`)「そういやあいつ煙草もってたな……でも……」
右手首に出来た水膨れ。
それはくっきりと掴んだ手の形になっている。
煙草を押し当てたならば、円形になっているはずだ。
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「妙な奴だったな……」
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:34:55.53 ID:zFuPnpqj0
爪'ー`)y‐「……」
旅人は歩く。
ただひたすら、都を目指し、歩く。
爪'ー`)y‐「よく考えたら、あの男に騙されたふりして都まで連れて行って貰えばよかったかもしれませんね」
ここから都までは、あと三日三晩はかかりそうだ。
しかしあの駿馬ならば半日か一日で着いただろう。
爪'ー`)y‐「惜しいことをしましたね……」
そのとき。
旅人の耳に、ある不愉快な音の響きが聞こえた。
爪'ー`)y‐「……蚊か……」
何故だろうか。
蚊という奴は、何故か人間に羽音を聞かせたいらしい。
一度聞こえ始めたと思ったら、ずっと耳の辺りを飛び回り続ける。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/06(金) 21:36:22.26 ID:zFuPnpqj0
爪'ー`)y‐「不愉快ですね」
爪'ー`)y‐「失せなさい」
突然。
何も無いところで。
炎が燃え上がった。
でもその炎はすぐに、霞がかかったように消えてしまった。
あっという間の出来事だった。
爪'ー`)y‐「これで静かになりましたね」
そして旅人は、ひたすらに都を目指し。
歩き続ける。
第六話 「鉄壁ガードのあいつ」 おわり
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