( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 22:52:14.13 ID:WOeSV0rj0
第七話 「微妙に交錯する運命」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 22:53:09.97 ID:WOeSV0rj0
( ,,゚Д゚)「うぉい、こいつ誰だゴルァ」
(;^ω^)「し、新入りのブーンですお……」
( ,,゚Д゚)「あぁん! 新入りだとぉぁんだゴルァ!」
宿舎に案内される途中。
ブーンは突然ガラの悪い兵士に絡まれた。
強気な相手の態度に、慣れないブーンは冷や汗を垂らし、
なかなか返答の言葉が出ずに、きょどってしまう。
それを見た、傍らに立っていた、案内役の兵士が、
仕方が無いといった感じで、会話に割り込む。
「隊長殿。こちらは今日から入ったブーン”小隊長”殿でございます」
( ,,゚Д゚)「新入りで小隊長だとぉ? こいつがか?」
ガラの悪い兵士は明らかに怪訝そうな顔をしている。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 22:54:25.94 ID:WOeSV0rj0
(;^ω^)「んまぁ一応……そうですお」
( ,,゚Д゚)「……」
( ,,゚Д゚)「人は見かけによらねぇ……ってか」
そしていきなりブーンの腕を掴む。
どうやら握手のようだ。
( ,,゚Д゚)「俺は”百人隊長”のギコ。まぁせいぜい仲良くやろうぜ」
(;^ω^)「よ、よろしくお願いしますお」
ギコはブーンの手を離すと、
乱暴に背中を叩き、笑いながらどこかへと行ってしまった。
「今の方は、帝国軍屈指の勇士。ギコ百人隊長殿だ。
失礼の無いようにな」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 22:56:14.18 ID:WOeSV0rj0
( ^ω^)「というと、強いんですかお? やっぱり」
「ああ、ブーン小隊長殿なら十秒でのされてしまうでしょうな」
(;^ω^)「十秒ですかお」
「ええ、ブーン小隊長殿は逃げ足が早いそうですから、それくらい逃げ延びるのは容易いかと思いまして」
(;^ω^)「……」
ブーンはゆっくりと兵士の言葉を反芻する。
(;^ω^)(あれ? 今のは褒められた? 馬鹿にされた?)
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 22:58:41.12 ID:WOeSV0rj0
( ・∀・)「お〜い、すまんが茶を持ってきてくれないか〜?」
( ・∀・)「……」
返事が無い。
たしかにモララーの住む屋敷は、なかなかの広さを持っているが、
それでも、誰にも声が届かないなんてことはないはずだ。
何十人もの召使いが働いているのだ。
必ず誰かの耳に入るはずなのだ。
( ・∀・)「おい! 誰かいないのか!」
モララーは精一杯の声で叫んだ。
すると、返事は無かったが、
がちゃりとドアが開いた。
すぐにモララーは直感する。
言葉ではなく行動で自らの意思を告げる者。
あいつしかいない。
( <●><●>)「……」
ワカッテマスだ。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:00:33.52 ID:WOeSV0rj0
( ・∀・)「君か。召使い達を知らないか」
( <●><●>)「……」
やはりワカッテマスは無言のまま、行動で問いに答える。
つまりは、腰に差していた一本の刀を引き抜いたのだ。
ギラリと光る、刀身。
そこにはぬらりと光る、赤い液体が大量に付着していた。
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「いずれ密告者が出るであろうのはわかってます」
(;・∀・)「それで殺したのかい?」
( <●><●>)「黙らせるに越したことはないのです」
(;・∀・)「噂には聞いていたが……革命軍とやらは相当過激なんだな」
( <●><●>)「平和的な革命は不可能だということを、我々はわかってます」
(;・∀・)「まぁたしかに無血革命なんか理想論だろうなぁ。いやしかし」
いくらなんでも人の召使いを皆殺しにするなよ。
とモララーは言いたくなったが、あえて言わなかった。
どうせ言って聞くような相手でも無いだろうからだ。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:09:19.87 ID:WOeSV0rj0
( <●><●>)「さてと、それでは折り入ってモララーさんにお願いがあります」
( ・∀・)「!」
ついに来たか。
とモララーは思った。
( <●><●>)「まずはモララーさんの屋敷をこれより、革命軍の活動拠点とさせていただきます」
( ・∀・)「ふむ、ただ無意味に私の召使いを殺したわけでは無いみたいだな」
( <●><●>)「あなたは大変物分りが良いです。やりやすいですよ」
人が増えるとどうなるか?
答えは単純。
消費する食料が一気に増加する。
ともなれば買出しの量も急激に増加する。
これでは誰かを大量にかくまっているなど、一発でわかってしまう。
( ・∀・)「しかし革命軍の者達はいつ屋敷に入るんだ?
人がたくさん堂々入ってきたら……」
( <●><●>)「モララーさん?」
唐突にワカッテマスが話を変える。
こういうときワカッテマスは、大抵暗示的な答えを言うのだ。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:11:09.08 ID:WOeSV0rj0
( ・∀・)「ん? なんだ?」
( <●><●>)「美術品はお好きですか?」
( ・∀・)「ああ、好きだな。油断するとついつい買い過ぎてしまって……あ!」
( <●><●>)「ふふふ、どうやら今月のモララーさんは少々買い物をたくさんしてしまったみたいですよ」
ワカッテマスはそうキザったく言うと、一枚の領収書をモララーに差し出してきた。
(;・∀・)「む……流石になかなかの大荷物だな」
( <●><●>)「やはり人手はこれくらい欲しかったですからね。
それともう一つ。最も重要なお願いがあります」
(;・∀・)「今度はなんだ?」
( <●><●>)「私をですね――」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:14:01.30 ID:WOeSV0rj0
( ^ω^)「ふぅ。今日からここが僕の部屋かお」
ブーンはぐるりと周囲を見回す。
決して言えず、むしろ狭いくらいだが、
それでも、あの闘技場の牢屋などと比べれば、かなり立派な部屋だった。
( ^ω^)「荷物の整理といっても何にも無いお」
ブーンの手荷物は闘技場で生死を共にした、斧のみ。
他には何の荷物も無い。
( ^ω^)「さてと、これからどうしようかお……」
とりあえず奴隷兵から帝国軍兵士に成れたのは良かった。
命の心配をする必要が、格段に減った。
(;^ω^)(それでもやっぱり戦争とかやる羽目になるんだろうお……)
しかし、それよりも重要なことがある。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:15:15.55 ID:WOeSV0rj0
魔法使いの情報をいかに集めるかだ。
ブーンの魔法使いの知識は、ほとんど伝承の域を出ないレベルのものばかりだ。
おとぎ話のような情報は今は不要なのだ。
現実に魔法使いが存命しているのを確認し、尚且つクーを生き返らせるよう頼まなければならない。
( ^ω^)「そのためにも情報収集開始だお!」
以前モララーの会話を盗み聞きしたとき。
たしかこんなことを話していた。
「……だから魔法使いの力をもってしれば、革命軍どころか連合軍の奴等まで吹き飛ばすことが出来る」
「そうはいうが、これは女王の方針なのだよ」
そう。
女王は魔法使いを探している。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:16:50.53 ID:WOeSV0rj0
( ^ω^)「つまり女王の、魔法使いに関する資料を盗むチャンスってことだお!」
ブーンはすぐに実行に移すため、
勢いよくドアを開こうとした。
( ,,゚Д゚)「おいさー! 邪魔するぜ!」
( ,,゚Д゚)「……」
( ,,゚Д゚)「あれ? どうした? ブーン」
(;^ω^)「い、痛いお……」
( ,,゚Д゚)「すまんすまん。勢いよくドアを開けてしまうのは俺の性分だ! ワハハハハハ!」
(;^ω^)「で、何のようですかお?」
( ,,゚Д゚)「あぁそうだ。今すぐ出撃だ。おもてに出ろ」
(;^ω^)「そい!?」
いきなりの出撃命令。
これには急展開には慣れ気味なブーンも驚いた。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:19:14.83 ID:WOeSV0rj0
(;^ω^)「た、戦いですかお?」
( ,,゚Д゚)「ちげーwwwちげーwwwwただの”調達”さ」
(;^ω^)「ちょ、調達?」
しかしそれ以上の質問に、ギコが答えることは無かった。
そのままなすがままにブーンは、ギコに連れ立たれておもてへと出た。
外には既に続々と兵士が集まり、隊列を組み始めている。
( ,,゚Д゚)「あんたは第08小隊だから……ここだな。じゃ、そゆことで」
(;^ω^)「え? え?」
ギコはキョドるブーンなぞおかまいなしに、
ブーンの肩をバンと叩くと、そのままさっさと何処かへと走り去ってしまった。
(;^ω^)「最近こういうのばっかだお……」
「へぇ〜、あんたが俺達の隊長様か」
(;^ω^)「ん? 誰だお?」
ブーンは声がした方を振り返る。
そこには三人の、鎧を身につけた兵士が立っていた。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:20:59.55 ID:WOeSV0rj0
⊂⌒( ・ω・)「僕の名前はカラマロス。フリーの兵士さ」
(´・_ゝ・`)「僕の名前はデミタス。しがない帝国軍兵士さ」
⌒゜(・ω・)゜⌒「俺の名前はサバスチャン。一介の兵士に過ぎない男さ」
(;^ω^)「……」
⊂⌒( ・ω・)「新しい隊長様は君か」
(´・_ゝ・`)「僕らは第08小隊の隊員。つまり君の部下だ」
⌒゜(・ω・)゜⌒「よろしく頼んだぜ、隊長」
(;^ω^)「……」
(;^ω^)「……」
(;^ω^)(なにこいつら?)
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:24:02.39 ID:WOeSV0rj0
(´・ω・`)「あ〜腹が減ったなぁ〜!」
周囲には誰もいないにも関わらず、おもむろに叫ぶショボン。
どうやらこの男。
常に何かを喋っていないと気が済まないようである。
(´・ω・`)「畜生。道中で追い剥ぎするつもりだったから、あんまり食料持ってきてないや」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「そういやこの近くに村なかったっけ?」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「あったな。たしか。引き返す必要があるけど」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「よし、そこの住民上手く騙して食い物貰うか」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:25:06.67 ID:WOeSV0rj0
そしてショボンは懐から、一つのコンパスを出す。
それによってまず方角を確認する。
その後には、空を見上げ、神様の高度を見る。
(´・ω・`)「今は昼ぐらい……か……」
(´・ω・`)「明日の昼には着くかな?」
(´・ω・`)「いや、着いてくれないと困る。
多分今日の夕飯で、食料が底をつく」
(´・ω・`)「たくさん食べないと、健康に悪いしね♪」
(´・ω・`)「しかし明日は朝食を抜く羽目になるな……」
(´・ω・`)「致し方あるまい」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:26:31.12 ID:WOeSV0rj0
( ^ω^)「うへ、明日の昼まで歩き続けるのかお!?」
⊂⌒( ・ω・)「当たり前だよ、むしろこれでも少ないくらいさ」
(´・_ゝ・`)「村があってね、そこで食料を分けてもらうのさ」
⌒゜(・ω・)゜⌒「そうそう、”分けてもらう”のさ」
(;^ω^)「へぇ……」
(;^ω^)「……」
(;^ω^)(こいつらって僕の部下のはずなのになんでこんなに偉そうなんだろうお……)
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:27:49.32 ID:WOeSV0rj0
(;・∀・)「なかなか大胆な作戦だな……」
( <●><●>)「既に工作員を一人潜入させているのですが、やはり一般兵の身分ですと、
中々仕入れられる情報にも限りがありましてね……」
( ・∀・)「それで私の権力を使いたいわけか……」
モララーが手で弄んでいたものを、ワカッテマスに掲げる。
それは家紋が彫りこまれた紋章。
貴族を貴族にたらしめるもの。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/12(木) 23:29:05.50 ID:WOeSV0rj0
( ・∀・)「皮肉だな。貴族を討つために貴族に助けを乞うとは」
( <●><●>)「私たちは、貴族を討つことが出来れば過程などどうでもいいのですよ」
そう言って、ワカッテマスは不敵に笑った。
第七話 「微妙に交錯する運命」 おわり
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