( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:46:51.59 ID:SNTcI/+g0


第八話 「報われない」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:48:55.52 ID:SNTcI/+g0

('A`)「フヒヒヒヒ、埃臭いところですいませんねぇ」

爪'ー`)y‐「いやはや、快適ですよ。助かります」

('A`)「ささ、安物ですいませんが、どーぞ」

爪'ー`)y‐「……良い紅茶だ」

('A`)「魔法使い様のお口に合って幸いでございますよ。フヒヒヒ!」



カタン。



男がティーカップを置いた。



爪'ー`)y‐「さて、そこなんですが、私は正確には貴方の言う”魔法使い”ではありません」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:50:10.52 ID:SNTcI/+g0

('A`)「はい?」

爪'ー`)y‐「しかし誤解のなさらぬように。私は正真正銘魔法使いです」

('A`)「……」



('A`)「詳しい話を聞きましょうか」

爪'ー`)y‐「ええ」







6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:51:22.66 ID:SNTcI/+g0







(  ゚ ゚)「……でかい口叩いた割には、あっけなかったな」


(;゚ω゚)


(; ω )


ドサリ。

ブーンが地に倒れた。

砂埃が舞った。



⊂⌒(; ・ω・)

(;´・_ゝ・`)

⌒゜(;・ω・)゜⌒



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:53:01.34 ID:SNTcI/+g0



(  ゚ ゚)「お前らなにぼさっと突っ立っている」

⊂⌒(; ・ω・)「!! す、すいません!」

(;´・_ゝ・`)「すぐに片付けます!」

⌒゜(;・ω・)゜⌒「サァー ハコブゾ ワッショーイ! ……あれ?」

サバスチャンは、ブーンの遺体に触れるがいなや、すぐにあることに気がついた。


これ、死んでない




(  ゚ ゚)「どうした、早くそのへんの木陰にでも放っておけ。
     しばらくすれば起き上がるだろう」

⊂⌒(; ・ω・)(な、なにぃー!)

(;´・_ゝ・`)(あの冷酷な将軍様が!)

⌒゜(;・ω・)゜⌒(み、み、みねうちだとぉぉぉっぉぉ!)


(  ゚ ゚)「なんだお前ら、文句でもあるのか?」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:54:39.11 ID:SNTcI/+g0

⊂⌒(; ・ω・)「いえいえ、滅相もございません!」

(;´・_ゝ・`)「いますぐ介抱しましょう!」

⌒゜(;・ω・)゜⌒「さー、行くぞー!」

三人は残像を残すような俊敏さをもってしてブーンを抱えあげる。

そしてそのままあっというまに、木陰に走っていった。


(  ゚ ゚)「……」

将軍はそれを見届けると、今度は視線を村に移す。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:55:35.92 ID:SNTcI/+g0

既に略奪は始まっているらしく、
村人達の叫び声や、逃げ惑う姿が確認できる。


時折兵士達が略奪品を両手に持って、こちらに引き返し、
そしてまた次なる獲物を求め、村へと戻っていく。


奪う。

全てを奪う。

(  ゚ ゚)「……」

将軍は再び、視線をブーンに戻す。

(  ゚ ゚)「もしかしたらお前みたいな奴は、初めてかもしれないな」

誰に聞かせるわけでも無い、小さな呟き。

それは辺りに響く悲鳴に、すぐに埋もれてしまった。




やがて



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:57:33.12 ID:SNTcI/+g0


先程までは、鳥達のさえずりのように聞こえていた、悲鳴が、
いつのまにか止んだ。

どうやら、奪うものは全て奪ったようだ。

食料も……人も……

(  ゚ ゚)「そろそろ撤退するか」

最後に将軍は、そう呟いた。








11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:58:17.48 ID:SNTcI/+g0








男の詳しい話。

それはドクオを困惑させた。

('A`)「子孫……魔法使いの子孫だと主張するのですか?」

爪'ー`)y‐「えぇ、私は正真正銘魔法使いの子孫……末裔でございます」

('A`)「ふむぅ」

ドクオは考え込む。

目の前の男は魔法使いの末裔だと主張するが、
長く魔法使いについて調べた自分にはわかる。

魔法使いに子供がいたなど、史実には残っていない。

('A`)「それを証明できるのですか?」

とりあえず聞いてみたドクオの質問は、軽く男に一蹴された。

爪'ー`)y‐「愚問ですね。貴方ほどの方なら聞かずともわかっていらっしゃったと思いましたが」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 18:59:21.64 ID:SNTcI/+g0

そして男は、ティーカップを指で弾いた。

キン!

という軽い音が、本来ならばするはずだった。

しかし実際に起こったのは、小爆発。

一瞬にしてティーカップが、木っ端微塵に爆散してしまった。

爪'ー`)y‐「通常ではあり得ない超常現象。
      こんなことが起こせるのは、魔法使い以外にありえない」

('A`)「……」

爪'ー`)y‐「たしかに私には、魔法使いの末裔であるはっきりとした証拠を提示することは出来ない。しかし」

爪'ー`)y‐「この能力は、少なからずや私が魔法使いの系譜を持つ者であることを示唆しているとは思うのですが……」


爪'ー`)y‐「どう思いますか?」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:00:28.04 ID:SNTcI/+g0

ドクオは少し考え込んだ。

本当に少しだけ。

その考えは、昔から腹に抱えていた。
いつかは成し遂げたいと思いつつも、その方法が無かった。

いや、有りはしたが、それも現実性はとても薄かった。
そもそもドクオ自身その方法自体信じてなどいなかった。

ただ、命令されたから調べていただけ。
ただ調べる格好をしていただけ。

しかし、今なら。

今ならば。


('A`)「俺がどう思うか? その前に聞かせてくれ」

爪'ー`)y‐「!」

男は、ドクオの変化に気づいた。

目の前にいる、ドクオという男は、数秒前のドクオをとは似て非なる存在。

('A`)「あんたは女王に会って、どうするつもりだった? その目的は?」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:01:12.13 ID:SNTcI/+g0

爪'ー`)y‐「目的……ですか。
      私の目的とは、自身の親ともいうべき魔法使いを探し出すこと。
      そして私は、魔法使いに会う術を知っていた」

('A`)「……」

爪'ー`)y‐「しかしその術はとてもではありませんが、一個人で成すことは難しい。
      そして聞けば、この国の女王は魔法使いを探していると聞きました」

爪'ー`)y‐「利害関係は成り立っています。
      女王は魔法使いを探している。私は魔法使いに会う術を知っている。
      女王には、その術を成す手伝いをすることが出来る」

('A`)「その手伝いとやらは、俺でも代役として成り立つか?」

爪'ー`)y‐「そうですねぇ……貴方は一度に多くの人間の命を絶つことができますか?」

('A`)「軍を動かせば出来る。俺にはそれだけの権力がある」

爪'ー`)y‐「そうですか。で、この質問には何の意味があったのですか?」

('A`)「ククククク、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!」

ドクオは笑った。

隙間風のようにヒューヒューとした、聞く者に鳥肌を立たせる、そんな気味の悪い笑い声。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:02:48.80 ID:SNTcI/+g0

('A`)「ならば話は簡単だ! 俺に協力しろ!
   俺ならばお前の望みを叶えてやれる。だからお前も俺の望みを叶えろ!
   利害関係は成り立っているはずだ!」

爪'ー`)y‐「……いいでしょう。私は魔法使いに会う術を手伝ってくれるならば、
      他には何もいりませんよ」

それを聞いて、ドクオの笑い声は、
叫び声の入り混じった声となった。

('∀`)「フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 来たぞ! 遂に来た!
    クヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!!!!! この日が遂に来たぞ! フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!」

身の毛もよだつような、笑い声が部屋に響く。

しかし、それを聞いても男は微動だにしない。
むしろ、その笑い声を心地よいと感じているようにも見える。

爪'ー`)y‐(面白い男ですね……協力してやるのも悪くないかもしれませんね……)



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:03:58.50 ID:SNTcI/+g0

男もまた、笑った。

もっともドクオのとは違い、あくまで口の端を少し吊り上げただけの、
とても小さな笑い。

微笑。

しかしそれが意味するものは、ドクオと同じ。

そして周囲に与える嫌悪感もまた同じだった。







20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:05:40.18 ID:SNTcI/+g0






(; ω )「痛たたた。脳味噌はみ出るかと思ったお」

ブーンは痛む頭をさすりながら、緩慢な動作で起き上がった。

意識がはっきりしない。

しばらくの間ブーンは、ぼぅっと虚空を見つめる。

やがて頭が覚醒してきた。

(; ω )「た、たしか僕は……」

頭に血が昇って、将軍に喧嘩を売ってしまった。
そしてあっさりと敗北をきしてしまったのだ。

そこまで思い出したところで、ふと気がついた。

(;゚ω゚)「そうだお! 村はどうなったんだお!」

急いで周囲を見渡す。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:06:52.95 ID:SNTcI/+g0

辺りにはすっかりお疲れ様ムードの兵士達が、
そそくさと帰り支度を整えていた。

そして村は

廃墟と化していた。

(;゚ω゚)「ひどいお……」

あの村人達が何をしたというのか。
なにもしていないではないか。

なのにこの仕打ち。

食べ物も、財産も、自分達の身も奪われ

おかしい。

こんなことどう考えても間違っている。

(;゚ω゚)「……」

呆然と佇むブーン。

そこへ部下達が駆け寄ってくる。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:07:55.97 ID:SNTcI/+g0

⊂⌒(  ・ω・)「おや、目覚めましたか隊長」

(´・_ゝ・`)「なかなか目を覚まさないので、やっぱり死んだのかと思いましたよ」

⌒゜(・ω・)゜⌒「さぁ、早く仕事にもどりますぜ」

(;゚ω゚)「……」

⊂⌒(  ・ω・)「返事が無いな」

(´・_ゝ・`)「仕方ない引きずろう」

⌒゜(・ω・)゜⌒「また将軍様の逆鱗に触れたら、今度こそ殺されかねん」

⊂⌒(  ・ω・)「そぅれ、運ぶぞワッショイ」

(´・_ゝ・`)「ワッショイ!」

⌒゜(・ω・)゜⌒「ワッショイ、ショイ!」





23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:09:35.65 ID:SNTcI/+g0

その光景を、少し離れたところで見守る者がいた。

(  ゚ ゚)

将軍だ。

その表情は黒い仮面のせいで窺い知ることは出来ない。
しかし、何故かどこか懐かしむような。

そんな雰囲気を感じさせた。

(  ゚ ゚)「世の中思い通りにならないことが多い……」

それは自分自身に聞かせた言葉。

誰に聞かせるわけでもない。
他でもない、自分に聞かせるために発した言葉。

その言葉を将軍は、しっかりと耳に刻み込む。

思えば今まで生きてきて、思い通りに事が運んだことなど一度も無かった。

いつも周囲は、自分の思惑とはずれた方向に流れていった。

(  ゚ ゚)「ブーン。お前はどうなんだろうな」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:10:17.97 ID:SNTcI/+g0

ブーンは今日自分にある可能性を示した。

もしかしたらブーンは、自分の思う方向に流れてくれるかもしれない。
だから殺さずに生かした。

(  ゚ ゚)「……」

これからどう流れるか。

時が経つまでは


わからない。




そして軍は都へと引き返す。

たくさんの略奪品と

多くの新たな奴隷を引き連れて。

黙々と大地を踏みしめる。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/24(火) 19:11:07.22 ID:SNTcI/+g0








(;;´゚ω゚`)「僕としたことが道に迷うとは……不覚!」

(´・ω・`)「でも大丈夫。もう目指す村はすぐそこだから」

(´・ω・`)「三日間飲まず喰わずで、もう限界だ」

(´・ω・`)「さぁ、村人達を上手く騙して、食料を頂戴しようかな!」







(;;´゚ω゚`)「誰もいない。何も無い……」






第八話 「報われない」 おわり



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