( ^ω^)はミュージカルをするようです

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:22:44.19 ID:Ya6CFvx3O

一曲目・ドクオ




面接官「特技を聞かせてもらいますか?」

('A`)(…こ、これはアピール・チャンス!!)

('A`)「面接に不合格になることでぶしっ」

しまった、噛んだ。
取り返しのつかないミスにドクオの背筋が凍った。

面接官「………」

だが、相手は自分をじっと見ながら無言だった。
これは笑いを堪えているのだろうか?

('A`)(……よし)

きっとそうに違いない。
就職の面接に来といて不採用になるのが得意と誇る。
これは笑いのツボをダイレクトに押さえたに決まっている。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:25:06.53 ID:Ya6CFvx3O

そう思ったドクオは胸を張り、
更なるユーモアを発揮するために口を開いた。

('A`)「将来の夢はニートです!
    御社でその夢が実現出来ることを確信しております!!」

出た!伝家の宝刀、ジョーク二連発!!
働くための就活で、働きたくないのが夢とはこれ如何に?
この矛盾には笑いで腹がよじ切れるはずだ。

間違いない。

('A`)(……もらった!!)

緊張を強いられる面接会場でこの軽妙なフットワーク。
相手は自分を採用したくて涎が止まらないはずだ。
だが、ここで手を緩めては二流三流の人間だ。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:26:10.36 ID:Ya6CFvx3O

ドクオは駄目押しの一手を放つことにした。

('A`)「いつから来ればいいですか?」

見よ!この現実的な問いを!
先ほどまでの愉快な人物像を裏切るかのような鋭い質問。
俺は……働かせられるのではない、自ら働くのだ!

そんな固い決意をにじませる、実に堂々とした態度だった。

―――――


その発言から14秒後、その場でドクオの不採用が決まった。


―――――


(#'A`)「ぬぉぉぉぉ!!」

納得がいかなかった。
自分は完璧だったはずだ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:27:54.77 ID:Ya6CFvx3O

(#'A`)「ぐわぁぁぁぁ!!」

怒りが治まらなかった。
あの見る目のない面接官に。

(#'A`)「ちくしょぉぉぉぉっ!うわぁぁぁぁぁ!」

(;A;)「……あっ…あああ………あ……」

また駄目だった。
そう気が付いたドクオは涙が止まらなかった。
道の真ん中でヤケクソ気味に暴れていたが、今は地面に倒れ込んで号泣していた。

季節は夏を向かえ、同い年はとっくのとうの数年前に就職している。
それなのに自分は一向に仕事が決まらない。
本当に嫌気が差す。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:29:25.06 ID:Ya6CFvx3O

俺は暗い。俺はつまらない。俺は駄目人間。
俺はゴミだ。俺はクソだ。俺のクソは凄く臭い。

(;A;)「…ちくしょう……ちくしょぉ……」

鼻水と涙で息が出来なかった。
だが、もういい。
このまま窒息して死んでしまおう。
どうせ自分は社会のゴミだ。
最後ぐらい誰にも迷惑をかけないよう、自分でケリをつけよう。

(;A;)「ブゴッ……ブビ……ボゴッ……ブッ……」

次第に辺りが白く光り、お迎えが近いことが分かった。
もう俺は死ぬ。
そう思うと少しだけ怖かった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:30:37.08 ID:Ya6CFvx3O

(;A;)(……でも……いいんだ……きっと空の上は暖かい……)

ふわふわと軽くなる体。
遠くなる意識。
さようなら人生……。

するとそこに人影が現れた。
天使か?
そう思ったドクオは人影に手を伸ばす。

( ^ω^)「どうしたんですかお?」

触れた手に体温を感じると勘違いに気付いた。
残念ながら人間のようだ。

(;A;)「……どうもしない……死なせてくれ……」

ドクオは流れる涙をそのままに、天使と見間違えた青年にそう言った。

( ^ω^)「駄目ですお、死んでは」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:32:34.05 ID:Ya6CFvx3O

微笑みながら自分に語りかける青年を眩しく思い、直視出来なかった。
ドクオは道路に突っ伏しながら泣き叫ぶ。

(;A;)「俺なんていなくて当然の人間なんだぁぁぁぁ!」

(;A;)「死なせてくれぇぇぇぇっ!」

ドクオの悲痛な叫びを聞いた青年は、
ドンッドンッ、とリズミカルに足音を鳴らした。

( ^ω^)「……死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

歌う様にそう言ってから次は、
パンッパンッと手拍子をする。

(;A;)「………?」

ドクオは困惑した。
なぜ、死にそうな男を前にこの人は楽しそうにしてるのだろう、と。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:33:58.78 ID:Ya6CFvx3O

( ^ω^)「君が死んだら悲しいお♪きっと寂しい♪泣いちゃうお♪」

青年は歌を続け、足を踏み鳴らし、手拍子を続ける。

( ^ω^)「だ・か・ら♪死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

踊る様に尻を振り、手拍子、足拍子をリズムに乗せ、彼は歌っていた。

( ^ω^)「君が死んだら悲しいお♪きっと寂しい♪泣いちゃうお♪」

( ^ω^)「だからダメお♪ダメダメお♪」

( ^ω^)「死んじゃダメお♪ダメダメお♪」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:34:53.94 ID:Ya6CFvx3O

脳天気に歌う青年を見て、ドクオは怒りがこみあげた。
ふざけるな……俺が絶望に抱かれ、死を覚悟したこの時に……
貴様の様なふざけた奴が邪魔するなんて………ふざけるな、ふざけるんじゃ……

(;A;)「ふざけんな♪お前に何が分かるんだ♪死にたい俺は放っといて♪」

怒鳴りつけようと心に決めたドクオは、何故か歌いながら立ち上がってしまった。
なんだこれは……どうしたんだ俺は……?

尻を振っている青年は、ドクオの歌声に呼応するように、歌い続けた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:35:46.43 ID:Ya6CFvx3O

( ^ω^)「ほっとけないお心配だ♪だって僕らは皆兄弟♪」

ドクオは無意識に、そして強制的に歌ってしまう。

(;A;)「そんなの嘘に決まってる♪燃えるゴミとは俺のこと♪」

( ^ω^)「全然ないお♪そんなのないお♪皆が君を見ているお♪」

(;A;)「ライアーライアーもう止めて♪ダメだーダメだーもう死のう♪」

泣きながら踊り、歌っているドクオ。

そこに、スライディングしながら八百屋の主人が歌に参加してきた。

(,,゚Д゚)「俺が見てるよ♪そう、見てる♪」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:37:13.51 ID:Ya6CFvx3O

歩道に乗り上げた原付からジャンプしてきたスーツの男も歌に参加した。

( ゚∀゚)「私も見てる♪いつだって♪」

すると辺りにいた、
郵便局員、大工さん、主婦、学生、幼稚園児達が次々と声を揃えて歌い出した。

『みんな君を見ているよ♪君のために歌いたい♪』

(;A;)「エブリバディ・サンキュー♪ピープル・サンキュー♪」

(;A;)「アイ・アイ・アイ・アイ・アイラブユー♪」

近所にいた犬達も、リズムに合わせてワンワンワンと鳴き出した。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:38:33.86 ID:Ya6CFvx3O

( ^ω^)「だ・か・ら♪」

( ^ω^)「死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

(,,゚Д゚)「君が死んだら悲しいお♪」

皆さん『きっと寂しい♪泣いちゃうお♪』

( ^ω^)「だからダメお♪ダメダメお♪」

犬「ワン!」

( ^ω^)「死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

( ゚∀゚)「君が死んだら悲しいお♪」

皆さん『きっと寂しい♪泣いちゃうお♪』

( ^ω^)「だからダメお♪ダメダメお♪」

('A`)「ワン!」

尻を振り続ける青年を先頭に、大勢の人が歌い、踊っていた。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:40:07.55 ID:Ya6CFvx3O

後ろからは歌いながら歩く自分達に続き、
楽器を持った人達がメロディーを奏でながらついてきている。

楽器を持たない通行人達もそれぞれ工夫をしながら音を出していた。
バケツを叩いたり、シェイカーを振ったり、
生きの良い魚を叩いたり、銃を発砲したりしている。

( ^ω^)「死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

(,,゚Д゚)「君が死んだら悲しいお♪」(゚∀゚ )

皆さん『きっと寂しい♪泣いちゃうお♪』

( ^ω^)「だからダメお♪ダメダメお♪」

犬「ワン!」('A`)



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/25(月) 23:43:24.92 ID:Ya6CFvx3O
ドクオの顔を濡らしていた涙はとっくに渇き、代わりに汗が流れていた。
踊り、歩き、歌いながら彼は思った。

('A`)(死んじゃダメお♪)

( ^ω^)「ダメダメお♪」

―――――

後日。

面接官「……つまり、歌って踊れるというのが特技ということですか?」

('A`)「はいっ!」

面接官「……」

('A`)「……」

面接官「……」

('A`)「……なんなら、実演しましょうか?」

面接官は机を、ドンッドンッと二回叩き、立ち上がりながら手拍子を一度した。

面接官「是非♪」



一曲目・完



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