( ^ω^)はミュージカルをするようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:36:16.98 ID:59hGjjrfO
六曲目・ペニサス
ペニサスは戸惑っていた。
阿鼻叫喚が銀行内を支配していたからだ。
(▽、▽;川「…………」
「きゃああああああ!!」
「ひぃぃぃぃっ!!命だけはぁぁぁぁぁ!!」
ペニサスは途方に暮れていた。
その場の皆が自分に脅えていたからだ。
(▽、▽;川「…………」
「ひゃああああああ!!」
((( ;ω;)))「……おっおっおっ……」
「お金は差し上げますから!差し上げますから助けてくださぁぁぁぁぁいっ!!」
この目元を覆う仮面を取れば、少しは混乱が治まるだろうか?
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:37:39.19 ID:59hGjjrfO
そう一瞬だけ考えたが、もはや手遅れだろう。
むしろ素顔など見せたら取り返しがつかなくなるに違いない。
(▽、▽;川(やっぱり、この格好はまずかったな……)
右手に持った鞭を見て、ため息をつくペニサス。
しかしその格好からは憂鬱さなど、微塵も感じさせなかった。
―――――
彼女に言わせれば、その全ての原因は夫にあった。
日々感じるストレスや、無機質でつまらない毎日、
顔にしわが増えたのも、お腹に脂肪がついてきたことなど、何もかもがだ。
('、`*川「…………」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:39:17.19 ID:59hGjjrfO
いつのことからか夫の一挙一動が気に触り、
いつの間にやらか存在自体が気に入らなくなっていた。
心の底から、うんざりしていたのだ。
('、`*川「…………」
そんな彼が起床したことにペニサスは気が付く。
物音で分かったのだ。
そして自分のいる食卓にやって来た。
それを見てわざとらしく大袈裟に、舌打ちをした。
('、` 川「……チッ!」
(;@_@)「…………っ!」
夫はその音に、びくりと体を震わせてから、
震える声で彼女に言った。
(;@_@)「お、おはよう……いい天気だね……」
('、`#川「………」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:40:40.60 ID:59hGjjrfO
いつも通り無視するペニサス。
彼女はもくもくと食事を続けた。
(;@_@)「……今日の、朝ご飯は……なんだろなぁー……?」
正におっかなびっくり、といった様子で席に着く夫。
ペニサスは彼をじろりと睨んでから、
茶碗に生米を注いで、それを食卓に叩き付けた。
(;@_@)「………」
('、`#川「…………」
夫は呆然として茶碗を見つめている。
そんな彼を気にも止めず、
焙り焼きにした蟹を口に運ぶペニサス。
(;@_@)「せめて……炊いて欲しい……かなぁ……とか……?」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:42:54.53 ID:59hGjjrfO
ペニサスは再び舌打ちをして、机を蹴った。
すると彼女の旦那は、急いで生米を食べることにした。
('、` 川「…………」
ポリポリと米を噛む夫を、
少量の酢をかけたフカヒレのスープを食べながら見て、ペニサスは思う。
('、`#川(どこまでヘタレなの……ちょっとは反論でもしたらいいのに……)
次に煮込んだアヒルの肉に取り掛かる。
奥歯で噛みしめるたびに、肉汁が溢れ出た。
('、`#川(本当に情けない奴……)
次に串焼きにした鰻をバリバリと食す。
垂れる油を拭って、味を堪能する。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:45:10.30 ID:59hGjjrfO
手をひらひらと振り、挨拶する。
そして彼を席に座らせた。
('、`*川「ほーら!たんとお食べ」
高らかにペニサスはそう言い、
500gの松坂牛のステーキと新鮮な海鮮魚で作ったブイヤベースと
トリュフを合えたクリームパスタを出した。
(;><)「こんなに食べれないんです!」
('、`*川「勿論、残しても良いのよ。食べ過ぎは体に毒だからね」
(@_@)「もし余ったら……僕が食べようかな……」
('、`#川「はあ?なに?」
夫の言葉に、怒気を含ませて答えるペニサス。
青ざめて謝罪する夫。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:46:04.86 ID:59hGjjrfO
(;@_@)「すいません、でした…………」
('、`#川(フヌケの腰抜が!これでもヤクザの息子なの?)
義父の顔を頭に思い浮かべてから、
視線を前にいる男にやる。
だが、とても結びつかない。
相手に聞こえるように大きな溜め息を吐くと、
彼は気まずそうにしてそそくさと食卓から消えた。
―――――
昼御飯用にワサビを持たせた夫を蹴り送り、
可愛い息子を笑顔で見送った。
それらが終ると、出勤の準備を始める。
('、`*川「忘れ物は……無いかな?」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:47:26.25 ID:59hGjjrfO
本来なら昼過ぎに着けば良かったのだが、家にいても退屈なので、
ペニサスはいつも早めに向かうことにしている。
化粧をし、バックに荷物を詰め込んで、外へ出るペニサス。
('、`*川「いってきま〜す」
無人の家に声をかけ、鍵を閉めてから意気揚々と歩き出した。
―――――
「ああああああ!!女王さまぁぁぁぁぁぁっ!!」
(▽、▽*川「この豚が!!豚野郎が!!!」
「らめぇぇぇぇぇぇっ!!」
暗い室内に、叫び声が木霊した。
(▽、▽*川「どうしようもないピックだねっ!!このゴミが!この汚物がっ!!」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:49:00.63 ID:59hGjjrfO
鞭が、振り下ろされた。
肉を叩く音が、空気を揺らした。
「あうぅ!あうぅぅっ!!」
背中を赤く腫らした男が恍惚の色を顔に浮かべながら、悶えた。
(▽、▽*川「本当に汚らしい!!吐気がするよ!!」
ここは『SM熟女倶楽部・渚』。
苦痛で癒しを求める男達が集まる場所だ。
そこでペニサスはボンテージに身を包み、
蝶を形どった仮面をつけて鞭を振るっていた。
(▽、▽*川「ほらほらほらぁぁぁっ!!」
「あぐぅぅぅぅ!!」
これが彼女のアルバイトだ。
週に四回は、こうして汗を流して金を貰っていた。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:50:00.63 ID:59hGjjrfO
とはいえ、決して生活に困っているわけではない。
雀の涙とはいえ旦那はきちんと稼いでいるし、
なにより孫に目がない義父が、多額の仕送をくれている。
これは、ストレス発散のためにやっているのだ。
どうしようもない倦怠な日常に花を添える、彼女の息抜きなのだ。
―――――
※以下、プライバシー保護のため、モザイク処理をしてお送りします。
(* ●_ゝ●)】「あっ!もしもし?弟者か!?兄のいやらしい声を聞いてくれないか?」
『死ね』
(;●_ゝ●)】「弟者ぁぁぁぁぁ!!」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:51:20.84 ID:59hGjjrfO
(▽、▽*川「情けない兄貴だね!!踏んでやるよ!!」
(* ●_ゝ●)「あああああ!!流石です、流石女王様ですぅぅぅ!!」
―――――
<ヽ●∀●>「ダッ、ダメニダー!キムチをそんなに塗りたくっちゃダメ――」
(▽、▽*川「ほーら、ロウソクだよ〜☆」
<ヽ●∀●>「あふぅぅぅぅぅん!!ホルホルホォォォォォォンッ!!」
―――――
^^俺には
モザイクなどいらん
^^存分に叩け
(▽、▽*川「ほれほれ!!痛いのが好きなんだろ!?」
^^感じるぞ
たまらんな
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:52:56.34 ID:59hGjjrfO
(▽、▽*川「いい声でお鳴き!ほれお鳴き!!」
^^素晴らしい快楽だ
ここが楽園か
^^ブヒー
―――――
かつてペニサスが最も輝いた時代があった。
それは『殺人娘カルテット』というバンドを組んでいた頃だ。
仲の良い友人達と十代の後半に結成し、
ライブハウスで演奏したのが始まりだった。
曲の内容は物騒なものだったが、
瞬く間に脚光を浴び、成人する前にメジャーデビューを果たした。
あの頃は本当に良かった、とペニサスは改めて思う。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:54:12.29 ID:59hGjjrfO
好きな音楽を気心の知れた仲間達と演奏し、
自分達の奏でるミュージックに世間は歓迎してくれた。
脚光を浴び、注目され、多くの人々に認められた。
それが、気持ち良くて仕方がなかった。
しかし、栄光の日々は短かった。
ボーカルである素直グールが脱退することになり、
夢の様な時間に幕を引くことになったのだ。
川 ゚ -゚)『……なにも解散することないじゃないか』
('、`*川『あんたがいなきゃ、カルテットじゃなくなるから仕方ないよ』
川 ゚ -゚)『だが……』
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:56:47.89 ID:59hGjjrfO
('、`*川『結婚してあいつのそばにいたいんでしょ?
なら、このバンドは解散だよ。
素直グールがいなきゃ、悪魔の宴も機能しないって』
川 ゚ -゚)『……』
('ー`*川『あのド変態と幸せになりな。おめでとう、クー』
笑って言って祝福した。
友人は、嬉しそうに微笑んでくれた。
だが、今となっては、少しだけ後悔していた。
あの頃が、眩しくて仕方なかったからだ。
もう少しだけでも続けていたかった。
続けていれば、今とは違う自分になれたんじゃないか?
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 23:58:41.19 ID:59hGjjrfO
そんな風に、ペニサスは思ってしまうのだった。
―――――
(* ●●ω)「ホマァァァァッ!」
(▽、▽*川「…………」
意識せずに思い返した記憶。
それは彼女の感情を掻き乱す。
(* ●●ω)「ホマホマァァァァッ!ホマッ!!」
過去を悔いても仕方がないのは分かっていた。
どうせあのままバンドを続けていても
いずれは世間に飽きられてしまっただろう。
それになにより、ボーカルだった友人は
かなり前に亡くなってしまっているのだ。
(* ●●ω)「ホマー!ホマー!ホッ!ホッ!ホマァァァァッ!!」
- 39 名前: 再開します。保守ありがとうございます。 投稿日: 2007/08/25(土) 00:12:39.57 ID:Aw1pfdHRO
だからもしあの時に引き止めていても、
どのみち『殺人娘カルテット』は解散していたのだ。
だから、仕方がない。
(▽、▽*川「…………」
(((* ●●ω)))「ホマ……ホマッ……」
しかし、今とあの頃の差はどうだろうか?
一方はミュージシャンとして爆発的な人気を得た日々、
そしてもう一方は主婦としての吐気がする程の凡庸な毎日。
ペニサスは刺激が欲しかった。
バンド時代並の、なんて贅沢は言わない。
でもこの退屈過ぎる日常をなんとか変えたかった。
そのために鞭を振るい続けていた。
満足なんか、全然していなかったが。
―――――
あれこれと考えているうちに
すっかり興が削がれてしまったペニサスは、
仕事を早退して酒を飲みに行った。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:14:08.35 ID:Aw1pfdHRO
整理出来ない気持ちを誤魔化したかったのだ。
(▽、▽*川「……ヒック」
着替えるのが億劫だったのでそのままの格好で店に入ると、
奇異な視線を浴びることになった。
でも彼女は気にも止めずに酒をあおった。
早く酔ってしまいたかったからだ。
(▽、▽*川「犬が西向きゃ尾は東〜♪っとくりゃぁ!」
寿司折りを持って、千鳥足で歩くペニサス。
そこに、割れた瓶を持った少女が、駆け寄ってきた。
从#゚∀从「おい!そこの変態ババァ!この辺でオカマ見なかったか!?」
(▽、▽*川「知りましぇーん☆」
从#゚∀从「クソッ!どこに隠れやがったんだよ!!
絶対にぶっ殺してやる!!」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:16:32.09 ID:Aw1pfdHRO
そう言って再び駆け出す少女。
それを黙って見送るペニサス。
(▽、▽*川(私達がバンド組んだのも……ちょうどあれくらいだったかなぁ……)
(▽、▽ 川「…………」
(▽、▽*川「あらよっと〜♪」
若さへの羨望を押し殺し、再び帰路につく。
やがて家につき、扉を開けた。
(▽、▽*川「たっだいま〜☆」
( ><)「おかえりなんです。遅かったんで――」
(;><)「って!なんつー格好してるんですか!?」
(▽、▽*川「およよ〜?」
(;><)「黒い革の……下着なんですか?わかんないです!!」
(▽、▽*川「ママにもよく分かんないなー」
(;><)「恥ずかしいんです!!止めて欲しいんです!!」
(▽、▽*川「へへーん☆」
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:18:19.84 ID:Aw1pfdHRO
抗議する息子を鼻で笑い、寝室へペニサスは向かった。
今日はもう、眠ってしまいたかったのだ。
(▽、▽*川「ふんふ〜ん♪」
化粧も落とさずにベットに横になる。
瞼を閉じると、するすると眠気がやってきた。
|_@)「……おかえりなさい」
襖が開く音と共に、旦那が押し入れから顔を覗かせながら言った。
(▽、▽ 川「…………」
それを狸寝入りでやり過ごす。
話など、したくなかったのだ。
|_@)「……ご飯は、出前ですませたよ。
ビロードと二人でピザを食べたんだ」
彼がなぜ押し入れにいるかというと、
それはペニサスの言いつけを守っていたからだった。
彼女は「あんたがいるとよく寝れない」と言い放ち、
押し入れ生活を強要させたのだ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:19:06.33 ID:Aw1pfdHRO
だから寝室が同じでも、寝る場所は違う。
彼女はベットで、彼は押し入れだ。
|_@)「……今日ね、面白いテレビが――」
(▽、▽#川「疲れてんだから静かにしてよ!!」
|;@_@)「……ご、ごめんなさい」
謝罪して閉める夫。
舌打ちして眠る妻。
我ながら酷い夫婦生活だな、と皮肉気に思った。
―――――
『殺人娘カルテット』を解散したら、
ペニサスはあっという間に世間から見限られてしまった。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:20:04.75 ID:Aw1pfdHRO
覚悟していたとはいえ、
あまりの接され方の違いから失意と無力感に捕われたペニサスは、
逃げる様に就職し、お見合いで今の旦那と知り合った。
何度かデートしていくうちに、寡黙で優しい彼に少しづつ心が引かれ、
ある告白で結婚を決意した。
(@_@)『実は僕の親……ヤクザなんです。隠していて、すみませんでした』
それを聞いて驚きはしたが、嫌悪感は抱かなかった。
むしろ少し嬉しいぐらいだった。
なぜならヤクザの息子というのは、バンド時代に感じていた刺激を
何らかの形でもたらせてくれるんじゃないかと期待したからだ。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:20:59.63 ID:Aw1pfdHRO
ペニサスは伊藤という名字を荒巻へと変え、蜜月が始まった。
しかし彼女の思惑は功をなさなかった。
放任主義だった義父は、必要以上に自分達に関わろうとしなかったし、
その息子は、本当に血が繋がっているのかと疑問に思うぐらい、
退屈な人間だったのだ。
子供が生まれたのは、嬉しかった。
義父も過剰なほどに可愛がってくれている。
けれども、夫には強烈な不満があった。
毎日、辛くあたってしまうぐらいの重くて深い、不満が。
―――――
翌朝。
ペニサスは二日酔いの頭を抱えながら、
とぼとぼと歩いていた。
(▽、▽ 川「気持ちわるっ……」
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:22:31.28 ID:Aw1pfdHRO
昨日、『SM熟女倶楽部・渚』から、
今度から手渡しではなく銀行振り込みにしたいと言われた。
最初は家族で使っている口座に振り込んでもらおうかと思ったが、
さすがにそれは自重した。
なので、新しく口座を用意するために、銀行へと向かっていた。
(▽、▽ 川「飲み過ぎたかなぁ……それとも歳かな……」
昨晩に会った少女を思い出す。
とても若く、活発そうだった。
自分にも、あんな頃があった。
(▽、▽ 川「あーあ……」
憂鬱さを息に変えて、吐いてみた。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:23:54.02 ID:Aw1pfdHRO
だが、酒臭さが漂うだけで気分はちっとも変わらなかった。
(▽、▽ 川「着いた着いたっと……」
自動ドアを通り、銀行に入った。
手近の行員に、声をかけようとした。
(▽、▽ 川「ちょっとすみません、新規の――」
(;゚ω゚)「きゃあああああああああ!!」
(▽、▽ 川「え?」
(;゚ω゚)「強盗だおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
(▽、▽ 川「はい?」
意味が分からなかった。
なぜこの青年は騒いでいるのかと疑問に思った。
(;゚ω゚)「女王様が、銀行強盗にいらっしゃったおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:25:13.74 ID:Aw1pfdHRO
(▽、▽;川「あっ……」
遅れて、気が付く。
自分の格好に。
手に持つ鞭に。
顔を隠す仮面に。
―――――
「ひゃあああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
騒然として混乱する銀行内。
逃げ惑う客達。
(▽、▽;川「あのー……」
おろおろと困惑するペニサス。
カウンターの向こうからは次々と大量の一万円札が飛び交っていた。
「い、いくら欲しいんですか!?用意しますから!すぐに用意しますから!!」
(▽、▽ 川「誤解ですよー」
((( ;ω;)))「怖いお……おっかないお……」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:26:21.16 ID:Aw1pfdHRO
「ゴルァァァァァ!!一大事だぞゴルァァァァァッ!!」
(▽、▽;川(ヤバい……どうしよう……)
ペニサスはこの混乱をなんとかしたかったが、
どうにもならなかった。
なんせ自分が少しでも手を動かせば、銀行内の人間は走り出し、
ちょっとでも足を動かせば、一斉に伏せるのだ。
(▽、▽;川(取り合えず、武器になりそうなのを離そう……)
なぜか持ってきてしまっていた鞭を地面に捨てるペニサス。
だが間の悪いことに、走っていた人がそれを踏んで転倒した。
(;^ω^)「っ!!?」
- 56 名前: さるでした 投稿日: 2007/08/25(土) 00:39:58.78 ID:Aw1pfdHRO
(;^ω^)「ぼ、僕いま見たお!!
女王様が手にも触れずにあの人を転ばしたおっ!!!」
「エスパーだゴルァァァァァァァ!!!!」
(▽、▽;川「違うよ、全然違うよ」
泣き出す青年。
わめく客達。
事態は更に混乱していった。
(▽、▽;川(どうしたらいいの……?)
マスクのせいでよく視界が見えなかったのが、ペニサスの困惑を助長させた。
なんとかこの状況を打開したかったが何も思い付かなかった。
その時、凛とした声が響いた。
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!」
(▽、▽;川&全員「っ!!!?」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:41:21.50 ID:Aw1pfdHRO
ノハ#゚听)「強盗めぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
このヒートさんが相手になるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
入り口から勢い良く若い女性が現れた。
――ふんどし姿で。
ノハ#゚听)「どすこーいっ!!」
「「「おっぱいだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
銀行にいる男性陣の声が揃った。
それも無理はない。
なんせその女性は、胸を露出していたからだ。
「巨乳だよ!巨乳!!」
「やったぜ!!生きてて良かったぜっ!!」
「最高だぁぁぁ!!」
(▽、▽;川(何がなんだか良く分からないけど……
逃げるチャンスかな……?)
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:42:57.41 ID:Aw1pfdHRO
注目が逸れたので、そろりそろりと動くペニサス。
しかし、知り合いの顔を見付けて、足が止まった。
(,,゚Д゚)「……」
(▽、▽;川(ギッ、ギコ!!?なんでこんなとこに!?)
何年振りかに見た顔に、嫌な汗が出た。
もっとも、仮面のお陰で向こうは気付いてないようだったが。
(,,゚Д゚)「…………」
(,,*゚Д゚)
「おいっ!!おっさん!!なにやってんだよ!?」
(,,;゚Д゚)「ゴ……ゴルァ?」
「いまズボンのチャック開けただろっ!!何しようとしたんだよ!?」
(,,;゚Д゚)「い、いや……別に……」
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:44:19.99 ID:Aw1pfdHRO
「まさか……」
「おいおい、マジかよ!こんな場所でか!?」
「信じられねぇ……」
(,,;゚Д゚)「……ゴ、ゴルァ……」
「この変態をつまみ出せ!!」
「よっしゃ!!」
(,,;゚Д゚)「二分!!二分ですむからやめてくれ!!」
(,,;Д;)「お願いだゴルァァァァァッ!!」
(▽、▽;川「ふぅ……」
数人の男性に運ばれる中年男性。
それを見て、ペニサスは安堵した。
ノハ#゚听)「そこのへちゃむくれぇぇぇぇぇぇ!!行司をやれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
(;^ω^)「お?僕ですかお?」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:45:23.94 ID:Aw1pfdHRO
ノハ#゚听)「そうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!早くしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
(;^ω^)「えっ……おお……えっーと、見合って見合って……」
(▽、▽;川「ん?」
声のする方へ目をやると、女性が腰を落として睨みつけていた。
そして柔和な顔をした青年が、自分とその女性の中央で右手を差し出していた。
(;^ω^)「あの……見合ってもらえますかお?」
(▽、▽;川「あ、はいっ……」
分けも分からずに、女性と同じ構えを取るペニサス。
(▽、▽;川(私……何やってんのかな……?)
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:46:59.98 ID:Aw1pfdHRO
(;^ω^)「はっけよい、のこった!!」
ノハ#゚听)「むはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
突進してきた女性が自分に激突し、革のパンツを掴んだ。
(▽、▽;川「なになになになに!?」
ぐいっと引き上げられたかと思うと、体が宙を舞った。
(▽、▽;川「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
半回転し、衝撃がきた。
地面に叩き付けられたのだ。
(;^ω^)「お、おっぱい山の勝ち〜」
ノハ*゚听)「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
(;、; 川「な……なんでこんなことに……」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:48:25.79 ID:Aw1pfdHRO
彼女は嬉しそうに、ガッツポーズを取っていた。
(;^ω^)「……」
青年は羽織っていた半袖のシャツを脱ぎ、半裸で喜ぶ女性にそれを着させた。
(*;^ω^)「女の子がそんな格好をするのはちょっと……」
ノハ*゚听)「おー、ありがとー」
満面の笑みを浮かべながら、腕をぶんぶんと腕を振る女性。
青年はシャツのボタンを順にとめていっていた。
「なに考えてんだタコ!!」
「せっかくのおっぱいに何しやがる!!」
(;^ω^)「おっ!?」
「ふざけんじゃねーぞ!!」
「ぶちのめされてーのか!!」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:50:20.05 ID:Aw1pfdHRO
沸き上がる怒号。
怒り狂う男性陣。
('、`;川「もう帰りたい……」
だが下手に動けば目立ってしまう。
そこで捕まれば、警察行きは間違いだろう。
('、`;川(なんとか――隙を見付けなきゃ……)
困り果てるペニサス。
そこに柔和な表情の青年が、パンッ、パパンッ、と手拍子をした。
( ^ω^)「ホライゾ〜ン♪僕の名前はホライ――」
「歌ってんじゃねーぞコラッ!!」
「そんなんで誤魔化されるか!!」
(;^ω^)「っ!!?」
「おっぱいはどうした、おっぱいはよ!?」
「頭に虫わいてんのか!?なんとか言えよコラ!」
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:52:06.85 ID:Aw1pfdHRO
(;^ω^)「ゾン……ゾン……♪」
しゃがんで立ち上がり、両手を上に突き出す青年。
「今度は踊り出しやがったぞ!!!」
「オラ!人の話聞いてんのかテメー!!」
( ;ω;)「……ゾン……ゾ……」
青年はぽろぽろと涙を流して泣き出した。
しかし、周囲の男性達は罵倒しながらパンフレットやボールペンを彼に投げていた。
('、`;川(……ちょっと可哀想かも)
そんな青年を見かねてか、フンドシ女が彼に走り寄った。
そして腕を振り被った。
ノハ#゚听)「男が――泣くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:54:15.72 ID:Aw1pfdHRO
( #)ω゜)「ぶはぁぁぁぁっ!!」
平手で叩かれた青年は、そのとてつもない威力でぐるりと回った。
('、`;川(凄いパワーねぇ……)
回る青年の勢いは止まらなかった。
回った。
さらに回った。
どんどん回った。
回って回って回り続けた。
('、`;川(グルグルし過ぎでしょ……バターにならなきゃいいけど)
('、` 川「あれ?」
気が付くと、青年は腕を胸の前で交差させながら片足で回転していた。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:56:11.17 ID:Aw1pfdHRO
(((ω^ )))「レディース――」
((( )))「アーンド――」
((( ^ω)))「ジェントルメーン!!」
('、`;川「は?」
ノパ听)「ん?」
皆さん「え?」
言葉の意図が分からず、その場にいた全員がきょとん、とした。
すると青年が回り止めると同時に優雅に両手を広げた。
\( ^ω^)/「ようこそ内藤ホライゾンのダーンス・ショーへ!!」
彼がそう宣言したその瞬間、銀行内に非常ベルが鳴り響いた。
しかしその音は、2、3秒で止んだ。
それはまるで開幕ベルのようだった。
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:57:41.70 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ホライゾ〜ン♪僕の名前はホライゾ〜ン♪」
胸を張り、ステップを踏みながら、青年が歌う。
( ^ω^)「やりたい放題やっちゃうもん♪だからあなたもカモンだお♪」
('、`;川「……なに……こいつ……?」
そう呟くペニサスの後方から、ブラインドシャッターが閉じられる音がした。
次にそれが開けられる音がした。
何度か、ジャッジャッジャジャジャッと鳴ると、
出入り口のシャッターが完全に閉まり、電灯が一斉に消えた。
('、`;川「えっ?」
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:58:35.26 ID:Aw1pfdHRO
朝とはいえ外からの光を遮断されて電気が消えると銀行内は真っ暗になる。
ペニサスはその暗闇の中で、困惑した。
('、`;川(なにが起こってるの……?)
その時、明かりが彼女を照らした。
真上の電灯が一つだけ光ったのだ。
('、`;川「うえぇ?」
彼女の姿は、舞台の上でスポットライトを浴びているようだった。
('、`;川「…………」
('、`;川(なんかやらないと……マズイのかな……?)
しんとした静寂さに耐えきれないペニサスは、
顔の横で手拍子しながら、ハイヒールを地面に踏み鳴らした。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:59:18.24 ID:Aw1pfdHRO
('、`;川「……わ、私は街の一番コールガール♪小金じゃちょっとも振り向かない♪」
('、`;川(なに言ってんの、私?なんでコールガールなの?)
なまめかしく歩き、カウンターに横になるペニサス。
しかし、本意ではなかった。
苦し紛れにつむいだ歌と踊りだった。
('、`;川「分厚いお金の束が好き♪アバズレそうです何が悪い♪」
( ^ω^)「別にいけなくなんかないんだお♪」
再び電灯が一つだけ、ぱっ、と明かりがつき、青年を照らす。
彼はカウンターの向こうから、片肘をつきながら歌う。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:01:14.99 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「職種に貴賤はないんだお♪胸を張っていいんだお♪」
('、` 川「でもみんなの見る目がやらしいの♪視線で抱かれて腰砕け♪」
ペニサスは仰向けになって腰を揺らす。
柔和な表情の青年は、こいつはたまんねーぜ、といった感じで口笛を吹いた。
('、`*川「ハローハロー名無しのスケベさん♪汚れた私に無茶をして♪」
陰が差した憂鬱気な表情で自分の体を撫でる。
そして青年に手を向け、吐息を吐いた。
すると、銀行内が明るくなった。
いっせいに電灯がついたのだ。
- 90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:02:06.89 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ヤケになるのはいけないお♪それならいっそ踊ろうお♪」
青年はカウンターを飛び越え、広いホールに降り立った。
すると、左右から両手を上げる人達がいっせい膝を滑らせながら、彼に寄った。
( ^ω^)「ホライゾ〜ン♪僕の名前はホライゾ〜ン♪」
( ^ω^)「やりたい放題やっちゃうもん♪だから貴方もカモンだお♪」
柔和に微笑む青年が半回転してこちらを向くと、
周りの人たちも同じタイミングで振り返った。
揃う動きに高揚したペニサスは、カウンターに立ち上がり、歌った。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:03:33.64 ID:Aw1pfdHRO
('、`*川「ありがとサンキュー救われた♪あなたは世界のダーリンよ♪」
飛び上がり、青年の胸に抱き止められる。
彼は優しく地に足を着けさせてくれ、
手を取り、ペニサスをくるりと一回転させた。
('、`*川「だから教えてお願いよ♪凛々しい貴方のお名前を♪」
('、`;川(いやいやいや!さっきから名乗ってるじゃない!!
なんで改めて聞いてんの!?)
客達が青年の後ろに二列になって立つ。
彼が一歩二歩と下がると、それに倣った。
( ^ω^)「ホライゾーン♪僕の名前はホライゾーン♪」
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:05:02.11 ID:Aw1pfdHRO
踊りながら着ていたTシャツを脱ぎ、
それを投げ捨て上半身を裸にする青年。
( ^ω^)「ナ・イ・ト・ウ・ホライゾーン♪マイ・ネーム・イズ・ホライゾーン♪」
姿を消していたふんどし女が、
両手には抱えきれないほどの一万円札を持ってカウンターの上に立った。
ノパ听)「盛り上がったらこいつの出番♪全部やるからとっときな♪」
そう歌い、ばら蒔く女。
札は紙吹雪のように銀行内を舞った。
ノパ听)「お釣りは結構、持ってきな♪今日は大いに派手にやろ♪」
('、`;川(流石にこれはヤバいっしょ……)
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:06:27.52 ID:Aw1pfdHRO
その格好から(自分もだが)後先考えないであろうことは察しることは出来たが、
いくらなんでもやり過ぎではないか、とペニサスは不安になった。
しかし、それはすぐに杞憂となる。
青年の周りで踊っていた銀行員達が、なんの疑問も持たずに空中を舞うお札を掴み、
次々と青年の体に張り付けたからだ。
( ^ω^)「ホライゾーン♪ホライゾーン♪ゴールドラッシュ、ホライゾーン♪」
('、`*川「…………」
汗で濡れた体に、沢山の札が付いている。
ズボンの中にも一万円が溢れ帰っている。
('、`*川「……ふふっ」
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:07:50.39 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ホライゾーン♪ホライゾーン♪成金紳士ホライゾーン♪」
ペニサスは床に落ちていた一枚を取り、手を後ろに組んで歩き出す。
( ^ω^)「僕の名前はホライゾン♪マイ・ネーム・イズ・ホライゾーン♪」
青年に近付くとその額にぴしゃりとお札を張り付けた。
後ろに下がりながら、はにかむように、彼女は笑った。
―――――
ペニサスは深夜の街で物陰に潜んでいた。
('、`;川「はぁ……はぁ……はぁ……」
('、`;川「……やり過ごした……かな?」
恐る恐る顔を出すと、辺りに人の気配はなかった。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:09:08.60 ID:Aw1pfdHRO
それを確認すると、思わず安堵する。
('、`;川「今度こそ家に帰ろう……」
銀行で踊っていた最中、
ペニサスは銀行強盗に間違えられていたことを思い出してその場から逃げ出した。
急いで帰宅しようと商店街を走っていたら、パトカーに追われた。
捕まるわけにはいかないので、全力で逃げた。
走り、隠れ、また走る。
本当はすぐにでも帰宅したかったが、
家に入るところを警察に見られたら不味いので、逃げ続けた。
そうして逃走劇を繰り広げていると、一度だけ追い詰められてしまった。
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:10:10.65 ID:Aw1pfdHRO
しかし、突如現れた蛇行運転する車にパトカーが激突され、難を逃れた。
その車はまるで片手で操作しているみたいに危なっかしい運転だったが、
自分に取っては救いに船だった。
今思えば、何か女性の名前を叫びながら運転していた気がしたが、
記憶は定かではない。
('、`;川「何の因果でこんなことに……」
見付からないように身を隠し続けていると、深夜になってしまった。
だがそのかいがあってか、
街に溢れかえっていたパトカーは港の方へと消えていった。
('、`;川「……すっかり遅くなっちゃったな……」
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:11:20.41 ID:Aw1pfdHRO
家に到着し、取り合えず着替えた。
そしてご飯を食べてからシャワーを浴びようと、食卓に向かった。
するとそこには、明かりもつけずに旦那が座っていた。
(@_@)「おかえりなさい」
彼女を見て、安心したように微笑む亭主。
('、` 川「……まだ起きてたんだ」
(@_@)「うん、心配だったからね」
優しい目をしてペニサスを見つめて彼は言う。
彼女の肩から、こわばった力が抜けた。
('、` 川「……なんか言わないの?」
(@_@)「なにをだい?」
('、` 川「帰るのが……遅くなったことについてよ」
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:12:30.39 ID:Aw1pfdHRO
(@_@)「心配だったって言ったじゃないか」
('、` 川「そうじゃなくて……怒ったりとか……」
(@_@)「帰りが遅くなるぐらいじゃ怒らないよ。
君は大人だから、僕があれこれ言うことじゃないしね」
(@_@)「それに今日は、ビロードも帰っていないんだ。
なんでも、友達の家に泊まるらしいよ」
('、` 川「…………」
(@_@)「……今日の君は、疲れてそうだね。
ゆっくり休んだ方が良い」
('、` 川「え……?」
(@_@)「昨日はただ単にお酒の飲みすぎだったみたいだけど、いまは違う。
顔を見れば分かるよ。それになんだか、機嫌が良さそうだ」
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:13:16.82 ID:Aw1pfdHRO
('、` 川「……それも、顔に出てる?」
(@_@)「いや、僕がお喋りでも、今日の君は怒らないじゃないか」
('、` 川(そういえば……そうね……)
今日は本当に朝から大変な一日だった。
でもなぜか彼が言うように、心のどこかで弾む気持ちがペニサスにあった。
('、` 川(銀行に行って……強盗に間違えられて……警察から逃げて……)
まるで映画みたいな日だったな、とペニサスは苦笑する。
そして、この映画のジャンルを思い出す。
そうだ、あれは楽しかったな。
- 125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:14:31.77 ID:Aw1pfdHRO
凄く大変な日だったけど、あれはもう一度体験したいな、と思った。
('、` 川「……ねえ」
(@_@)「なんだい?」
('、`*川「踊ろっか?」
―――――
ターンテーブルに乗ったレコードに針が落ちた。
そして少しだけノイズが走ったあと、音楽が流れ出す。
(;@_@)「や、やっぱ……踊りなんて僕には出来ないよ……」
('、`*川「だから適当にやりなさいって。私だって知らないんだから。
まっ、そういう気分なんだから付き合いなさいってことよ」
手を握り合い、彼は腰を抱き、ペニサスは肩に手を置いた。
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:16:12.63 ID:Aw1pfdHRO
(;@_@)「こ、これでいいのかな……?」
ぎこちなく、体を揺らす。
不安気に自分を見る。
('、`*川「いいのよ、なんでも。気分が大事なんだから」
ずっと昔、彼のことを愛していた気がする。
でもそれは若い時の話だ。
いまは、少なくともあの頃よりは、愛情が冷めていた。
しかし、くたくたになって家に帰ってきた時、孤独を感じなかったのは彼のお陰だった。
存在に、安心したのだ。
('、`*川(クーにはとても及ばないだろうけど……
少しは、側にいてやろうかな……)
刺激を求める自分の性分は恐らく変わらないだろう。
- 134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:17:37.78 ID:Aw1pfdHRO
しかしこれからは、
安寧さを彼に求めてみるのはどうだろうか、とペニサスは考えた。
('、`*川(探せば、いいとこもあるかもだし……)
しかしそこで、そんな自分の思考に違和感が生まれた。
こんなのらしくないんじゃないか、と変に感じたのだ。
('、` 川(…………)
しかし、柔和に微笑む青年と銀行で踊ったことを思い出す。
あれに比べれば、全然変じゃない。
あっちの方が今よりよっぽどおかしいことだった。
だから、いいじゃないか。
ちょっとぐらい似合わない優しさを、彼にしてやっても。
('、`*川(米を炊いてやるぐらいの優しさは、ね)
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:18:48.29 ID:Aw1pfdHRO
ペニサスは苦笑しながら、その考えを採用することにした。
やがて音楽が鳴り止み、レコードから針が上がった。
だけどそれでも彼女は、彼から離れようとはしなかった。
仲の良い夫婦になるにはまだまだ時間がかかるだろう。
でも少しずつ、本当にちょっとずつぐらいは、歩み寄ってやろう。
彼女は彼の肩から手を離す。
なんだか今夜はこいつの隣でも眠れるかもな、なんて思いながら。
六曲目・完
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