( ^ω^)はミュージカルをするようです

5: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:02:41.50 ID:HXhYKscXO
九曲目・しぃ




 私は今でも恋してる。
 空にいるヒロに、恋してる。
 だから私は祈っちゃうV(^-^)V

 この空への恋が、雲にまで届いて行きますようにって。。。

 「死ニナサーイッッッ!!!」

 黒人ピッチャーの豪速球。
 162キロのスライダー。

 私はバットの真芯で、それを捉えた。


     カキーン!!!


              〜fin〜

      ※    ※    ※

しぃは自室で読み終えた本を静かに閉じた。

(*;д;)「うわあああああああっ!!!」



8: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:04:19.10 ID:HXhYKscXO
信じられないほどの感動と息が詰まるぐらいの慟哭。
それらをくれたこの作品は、
なんて純然で深淵なセツナイ愛の物語なのだと彼女はうち奮えたのだった。

(*;‐;)「……うぅ……えぐっ……」

最初は話題の携帯小説が書籍化したというので話の種にしよう、と冷やかしで購入。
だが目を通してすぐに没頭。
気が付いたら、あっという間に読み終えていた。

二時間程しか経っていないが。

(*;‐;)「これだよ!これが文学だよ!!」

これ程までに涙を誘うストーリーを、しぃは生涯で初めて知った。
知り得たことに、感謝した。

しぃには一刻も早くこの心の昂りを付き合っている彼に知らせる必要があった。
だから迷わず携帯を手に取る。

(*゚ー゚)】「……あっ!もしもし、寝てたかな?ごめんね!
     てかさぁ、今すっごい本を読んじゃってね!」



12: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:05:56.55 ID:HXhYKscXO
しぃは感想と感動を、熱弁。
その言葉の一つ一つを丁寧に聞く彼は、相槌を打つ最中に咳をした。

(*゚‐゚)「……えっ……どっ、どうしたの?」

別になんでもない、と答える彼氏。
しぃはそれを自分に心配かけないようにするための嘘ではないか、と勘繰った。

(*゚‐゚)(ま……まさか……)


(;゚‐゚)(癌っ!!!!)


電話を切った。電源も切った。
なんてことだ、小説とまったく同じ展開じゃないかと動揺し、混乱したからだ。

(*;‐;)「……うえぇ……うぐっ……!」

枕に突っ伏して、号泣。
悲しくて悲しくて仕方がなかった。
どうしてこんな悲運が自分達を襲うのかと、運命に涙した。



13: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:07:33.81 ID:HXhYKscXO
やがて朝になり、泣き腫らした顔で立ち上がる。

(*;‐;)「私がなんとかしなくちゃ!!
    悔いを残さないようにしてあげなくちゃ!!!」

悲劇のヒロインが、誕生した。


―――――


しぃは口に運ぼうとしたはずのアイスティーを豪快に頭から掛けてしまった。
原因は緊張から手が震えていたこともあるし、
なによりどう切り出せばいいのか夢中で考えていたからだ。

(;゚‐゚)(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……)



15: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:09:18.04 ID:HXhYKscXO
何事かと心配そうに見る恋人に、流行りの納涼法だ、と手を振って誤魔化すしぃ。
彼を安心させるための微笑みを顔に浮かべ、注文したパフェを素手で食べ始めた。

(;゚‐゚)(やっぱ引いちゃったりするのかな?止めた方がいいのかな?
     でもそんなのダメだよね、薄情者は彼女失格決まりだもん。
     でもなんて言えばいいんだろ?どう言えばベストだろ?
     あーもう、どうしよう、どうしよう……)

いま自分達は、喫茶店にいる。
学校終わりに直接来たので互いに制服のままだ。

目の前には恋人がアイスカフェオレを飲みつつ、
家庭菜園で発芽したばかりのもやしの話をしていた。

彼はニコニコとしていて、とても上機嫌。
しかしこの笑顔もこれから話すことのせいで氷ついてしまうかもしれない。
しぃはそれが、怖かった。

(*゚‐゚)(……もし、それはないわぁ〜って感じで
    どん引きされたりなんかしちゃったりして……
    そんで……別れよう……だなんて……言われたら……)

(*゚q゚)(…………)

(*;‐;)(ひぃぃぃ……ヤダよぉ!そんなの嫌だよぉ!!)



16: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:10:15.45 ID:HXhYKscXO
文字通り、頭を抱えて振り回す。
恋人はしぃのそんな様子にとまどいながらも、自慢の栽培テクニックを解説していた。

(*;‐;)(…………)

(*゚‐゚)(……でも……ひょっとしたら……喜んでくれる、かもよ?)

遠心力のお陰で血の巡りが良くなったせいか、
しぃはさっきより少しだけポジティブに考えられた。

何事もやってみなきゃ分からないじゃないか、と。

(*゚ー゚)(そうだよ……希望は持たなくちゃだよ!!)

自らを鼓舞させるために両手で数度、腿を叩く。
向かうは一か八かの大博打。
奥歯を噛み締め、腹をくくり、大きく一度息を吸う。

(*>ー<)「イェェェイッ!拍手拍手ぅぅぅっ!!」

しぃはパチパチと手を打ち鳴らしながら勢いよく起立した。
椅子が倒れて大きな音を出し、店中の注目が彼女達に集まる。



19: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:12:17.40 ID:HXhYKscXO
(*゚ー゚)「これからとってもハッピーなお知らせがありまーす!」

突然騒ぎ出した彼女を見て、恋人はあんぐりと口を開いて呆気にとられていた。
そんな彼に、しぃはびしっと敬礼してから最高の笑顔を作った。

(*゚ー゚)「実は……なんと!」


(*゚ー^)「今日は二人の子作り記念日に決まりましたぁー☆」


(;゚∀゚)「ぶはぁっ!?」

('A`)「…………」

会話が聞こえていたのだろうか、
後ろの席にいたスーツ姿の男が勢い良くコーヒーを吹き出し、
窓際で座っていた痩せた男も椅子から転げ落ちた。



21: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:13:19.89 ID:HXhYKscXO
(*^ー^)「やったー!やったー!楽しみだね!楽しみだねぇ!!」

その場で跳び跳ね、万歳三唱。
まるで何かの大会で優勝したかのような大はしゃぎ。

(*^ー^)「頑張ろうね!元気な赤ちゃん作ろうね!!」

しぃはピースして、スカートをチラリと捲り上げる。
このパンチラは雰囲気を和ませるためのサービス精神の現れだ。

(;゚‐゚)(どう?……失敗!?)

死に向かう彼のために何をするのが最善か。
それは間違いなく、子種を残すことであろうとしぃは思った。

自分達は交際を始めて一年近くが経過していたが、キスより先に進んではいない。

ならば男の子の本懐を遂げさせ、
彼の遺伝子を現世に残させるのが自分の役目に違いないと痛烈に感じた。



25: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:15:11.14 ID:HXhYKscXO
( ゚∀゚)「あっ……ごめんなさい、おしぼりと追加でコーヒーを」

('A`)「俺には楽に死ねる毒薬を」

(;゚∀゚)「……気持ちは分かりますけど、取り合えず立ちましょうよ」

しぃに課せられた最大の難関は、どうセクロスに持って行くか、だった。

今までは照れや気後れからどちらからとも言い出せず、スルーして来た男女の行為。
しかし、もう避けては通れない。

それならもう、強引にでも言おうじゃないか。
高らかに、性を謳歌しようじゃないか。

しぃはそんな風に開き直っていた。

(*゚‐゚)(……ビー君……!!)

順序にも過程にも、拘ってなどいられない。
一刻も早く性交しなければならない。



26: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:16:56.37 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)(私は貴方の子供と幸せにやるから……!)

涙は見せられない。
彼が病気のことを隠すのなら、それに追従するのが女の器量。
だから、見せる。精一杯で満面の笑みを。

(*゚ー゚)(……安心して逝っていいから……)

そしてしぃはすたすたと歩いて恋人の膝の上に座り、艶かしく彼を見た。

(*゚ー^)「……ラブしちゃってるよ、ダーリン☆」

頬にキスをして、えへっと微笑む。
その瞬間、喫茶店にいた全員が凍りつく。



27: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:18:21.71 ID:HXhYKscXO
(;><)「……わかんないん……です……」

店内に響くは恋人であるビロードの絞り出すような声。
ガラス張りの向こう側では、夏の日差しがアスファルトをじりじりと焼いていた。


―――――


何故か困惑し、躊躇するビロードを、宥めてすかして店を出た。

大汗かいてラブホテル。風呂は交代、順番で。さあさあいよいよ本番よ。
と、いう最高潮に盛り上がったところで、二人の行為は頓挫してしまった。

経験の無さと緊張から、ずっぽりすっぽりとは楽しめなかったのだ。

(*;‐;)「ごめんね……ごめんね……。
    私のが……ちゃんと濡れない……せいで……」

(;><)「だから気にしないでください!
     それに言ったじゃないですか、
     焦ることなんてないんです!二人のペースでやるんですって!」

(*;‐;)「ビー君……」



30: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:20:17.74 ID:HXhYKscXO
つい自己嫌悪に走り勝ちになってしまう彼女を救うのは、彼のこういう優しさだ。
しかしそれは同時にしぃを追い詰めることもあった。

申し訳ない、と感じてしまうのだ。

彼の男の子の部分は、
サガットのタイガーアッパーカットのように天を貫こうと隆起している。
でもビロードの表情からはそんなことを微塵も感じさせない。

堪えているのだろう、と容易に推察出来るのが心苦しかった。

その後も励ましと慰めの言葉を沢山かけてもらい、
ますます彼のことが好きになるしぃだったが、
いまは不甲斐ない自分が許せないので、彼を風呂へと追いやってしまった。

(*;‐;)「……もぉ……私のバカ!!」

顔は涙でびしょびしょなのに、なぜ下はこういかないのか、
としぃは自責の念にかられる。

こういうトラブルの責任は女性側だけにあるとは限らないのだが、
彼女にとってはこの開かない門が最大の戦犯に感じられた。



34: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:21:52.02 ID:HXhYKscXO
(*;‐;)「…………これは……?」

目に止まったのはテーブルの上にあるビニール袋。
ここに来る前にコンビニへ寄り、お菓子やジュースを買った時に貰ったものだ。

(*;‐;)「暴君……ハバネロ……?」

赤と黒に彩飾されたパッケージ。
禍々しく笑うキャラクター。

(*;‐;)(……辛いもの食べると……汗出るよね……)

(*゚‐゚)(なら……その理屈で……!)

そこでしぃは一計を案じた。

それは圧倒的な思い付き。
別次元からの閃き。
頭の中を雷鳴が走り、大地が粉々に砕けた。



36: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:23:57.79 ID:HXhYKscXO
(;゚‐゚)(でも……本当にいいの、しぃ?
    成功しても失敗しても……とてつもないダメージが……)

……ざわ……っ

(*゚‐゚)(……いや、それはただの自己保身……
    体の良い逃げ文句……唾棄すべき己の弱さ……)

ざわ……ざわ……

(*゚‐゚)(詭弁……っ!……まるで負け犬……!
    足をとられたか……恐怖という……泥濘に……っ!)

……ざわざわ……ざわ……

(*゚‐゚)(……命は粗末に扱うべきよ……大切にするから澱む……腐る……)

ざわ……ざわざわっ……

(*゚‐゚)(そう……ここはHするか……死ぬべきよ……っ!!)



39: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:26:11.09 ID:HXhYKscXO
眠気が吹き飛んだ彼女は決意し、行動に移した。

(*゚‐゚)(……漕ぎ出そう……勝負という……大海へ……っ!)


(;>_<)「……〜〜っ!」


(;>_<)


(;゚_<)


(;゚‐゚)

(*゚‐゚)「なんとも……ない?」

(*゚‐゚)「あてがはずれちゃったなぁ……」



40: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:27:04.42 ID:HXhYKscXO
(*゚ー゚)「……それにしても大したことないね、ハバネロ君は。
    緊張して損しちゃったよ」

( ゚ー゚)フフンッ





Σ(*;゚д゚)





(*; д ) ゚ ゚



43: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:28:52.83 ID:HXhYKscXO
( ><)「ふぅ……さっぱりしたんです」

バスタオルで頭を拭きながらビロードがやって来た。
だがしぃの出迎えは苛烈なものになってしまった。

((((((*;д;))))))「ぎゃああああああああああああああっ!!!!」

(;><)「し、しぃちゃんっ!!どうしたんですかっ!!?」

((((((*;д;))))))「股間が燃えるように熱いぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

(;><)「こ、股間……!?」

((((((*;д;))))))「ぐげぇぇぇぇぇっ!!があああああああっ!!!」

発狂したように床で転がるしぃ。
汗が垂れ、涙が出ていた。

((((((*;д;))))))「あっ……ああぁっ……がっ……あぁっ……!!!」

(;><)「わかんないんです!どうすればいいかわかんないんです!!」



46: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:31:14.11 ID:HXhYKscXO
((((((*;д;))))))「……しょう……か……き」

(;><)「なんですか!?」

((((((*;д;))))))「消火器を突っ込んでっ!!!」

(;><)「っ!!?」

((((((*;д;))))))「早く消火器をぶちこんでぇぇぇぇっ!!!」

しぃの思考はまさに錯乱状態。
自分でも何を言ってるか分からないが、
とにかくこの体内に渦巻く業火を消し止めなければならないと思ったのだ。



48: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:33:56.46 ID:HXhYKscXO
(;><)「し、しぃちゃん……」

((((((*;д;))))))「があああああああっ!!うわああああああああっ!!!」

(;><)「…………」

( ><)「…………」

( ><)「……させないんです」

( ><)「消火器なんかにしぃちゃんは渡さないんです!
     絶対に渡さないんです!!」


( <●><●>)クワッ


( <●><●>)「しぃちゃんの初めての相手は僕だということはわかってます!!!」

((((((*;д;))))))「ビー君……!!」

( <●><●>)「ムードゼロなのはわかってます!!!」



50: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:34:52.60 ID:HXhYKscXO
((((((*;ー;))))))「……うんっ!!来てっ!!」

豹変したビロードをなんて男らしいのだと惚れ惚れするしぃ。

ベットの上で、いま愛の営みが――


(*////)(><* )


(*゚‐゚)(>< )


(*;゚д゚)(><;)


((((((*;д;))))))『ぎゃあああああああああああああ』((((((><;))))))



52: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:35:49.93 ID:HXhYKscXO
朝靄に濡れた百合の花から垂れる水滴が、日差しを浴びて輝いた。
緑と土の匂いが清涼な空気と溶け合い、鼻孔を柔らかく、くすぐった。

((((((*;д;))))))『ぐわあああああああああああああ』((((((><;))))))

遠くから聞こえる鳥の鳴き声が、しんと静まる森の中を優し気に響き、
波紋一つない湖が凛とした美しさを誇っている。

((((((*;д;))))))『あああああああああああああああああ』(((((><;)))))

そんな爽やかな風景を連想させる二人のファック。

一陣の風が、髪を凪いだ気がした。


―――――


(*゚‐゚)「けっきょく先っちょしか入らなかったなぁ……」

身を裂くような激痛と耐えきれない恥ずかしさから、逃げ出してきてしまったしぃ。
服と鞄を持って、風のようにホテルを後にした。



56: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:38:08.10 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)「はぁ……私ってダメなやつ……」

取り残されたビロードの複雑そうな表情を思い出すと、切なくなってきてしまう。
なんとか名誉挽回といきたいところだが、何をすればいいのか見当もつかない。

(*゚‐゚)「……ん?」

歩いていると、若い男からポケットティッシュを渡され、反射的に受け取った。
そのティッシュを見てみると、『テレフォンクラブ・夜王子』と書いてある。

(*゚‐゚)(テレクラ……?)

今にも駅前でストリートベースボールをやりだしそうな店名。
恐らく店長はロボのような声に違いない、と思わせる。

(*゚д゚)「 こ れ だ ! ! 」



58: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:39:59.23 ID:HXhYKscXO
どういうシステムかは、話に聞いていた。
悶々とした世の男性が受話器を握りしめ、
女性との出会いと会話に飢えている場所なのだと。

(*゚ー゚)(きっと性の達人達がひしめいているに違いないよ……
    それならHについてのアドバイスも的確にして簡潔。
    そして機知に富んだビックリ情報たっぷりだろうね……)

緊張しつつ、記載された番号を携帯にプッシュするしぃ。

(*゚ー゚)(教えて!テレクラ先生!!)

どんな授業より真剣に、彼女は勉強しようと気合いを入れた。


―――――


日が暮れそうになった。
長過ぎる話しにずっと付き合っていたからだ。



61: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:41:32.99 ID:HXhYKscXO
相手は息遣いの荒い中年男性で、
コウノトリの話を信じる純粋な女の子なら
ショック死するぐらいの卑猥な質問攻めをしぃに延々とし、
その上自分のことを「豚」と呼べと懇願してきた。

(*゚‐゚)】(私の話したいことと違う……)

どちらかと言われれば社交的なしぃだが、こういう状況のお喋りはいささか緊張する。
だから会話をリードしてくれることは有り難い。
だが、こんなことを話すために電話したわけじゃないのに、としぃはがっかりだった。

『だ……大事なことを聞き忘れ……ハァ……たぞ……』

(*゚ー゚)】「なにが知りたいの、豚さん?」

問いに彼女は愛想良くそう言う。
不満もあるし、辟易していたが、
なんだか親しみのある声にリラックスしながら話していたのだ。

『おま……ハァ……お前の……歳は……』

(*゚ー゚)】「私は十七。女子高生なんだよ」

『……ハァ……ハァ……お、俺の娘と同い年だな……』

(*゚ー゚)】「豚さんにも家庭があるだね」



62: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:42:41.85 ID:HXhYKscXO
『……名前……ハァッ……お前の……名前は……何て……ハァハァ……』

(*゚ー゚)】「名前?しぃって言うんだよ、お父さん」

その瞬間、しまったと思った。
豚と呼べとの約束を反故してしまったからだ。

学校で先生を呼ぶ時に言い間違える失敗を、
相手が年上の男性というだけでやってしまった。

赤面しながら慌てて取り繕うとしたが、電話は切れていた。
どうやら、今のセリフは気に入らなかったらしい。

仕方ない、言われたことを守らない自分が悪いのだ。

(*゚‐゚)「……どうしよう」

携帯をしまう。
途方に暮れる。

そこで突然、横合いから抱き締められる。



65: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:43:58.46 ID:HXhYKscXO
(;゚‐゚)「きゃっ!」

从'ー'从「捕まえたよ〜」

変態に絡まれた、と一瞬襲われる恐怖。

(;゚‐゚)「な、なんですか……!?」

从;'ー'从「うんしょっ、うんしょっ」

しぃの疑問に答えず、女性はがっしりと掴んだまま、彼女を持ち上げようとしていた。

从;'ー'从「重たいよ〜重たいよ〜」

(;゚ー゚)「っ!!?」

(*゚‐゚)「お、重くないもん……普通だもん!」

最近少し気にしていたことを指摘され、相手の無礼さに声を荒げるしぃ。

(*゚ー゚)「ほらっ!!」

一泡吹かせるため、ジャンプすることにした。



66: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:45:57.83 ID:HXhYKscXO
从*'ー'从「わっ!軽いよ〜」

(*゚ー゚)「でしょ?」

ひょいっと持ち上がるしぃに嬉しそうな微笑みを見せる女性。
着地して、しぃも得意そうに笑う。

从'‐'从「ふぇぇ……また重くなっちゃった……」

(;゚ー゚)「そ、そんなことないよ!」

ムキになって跳び跳ねる。
再び、ひょひょいっと持ち上げられるしぃ。

从*'ー'从「わわっ!凄い軽いよ〜」

(*゚ー゚)「でしょでしょ!?」

やや垂直気味なスキップ、といえばいいのだろうか。
そんなやり取りをしながら、二人は路地裏へと進んだ。

从'ー'从「到着しました〜」

(;゚ー゚)「え?」

立ち止まる女性。彼女はふぃー、と息をつき、袖で額を拭っていた。
視線の先には見知らぬ男が二人いる。



68: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:47:10.65 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)(だ、誰この人達……?)

从'ー'从「連れて来たよ〜」

(;゚‐゚)(仲間なの!!?)

みすぼらしい格好をした男達だった。
その内の片方が、怒鳴り声を自分にあげる。

(;゚ー゚)「は?」

わけがわからない。
だから聞いてみることにした。

(*゚‐゚)「あの……なにか?」

何故か押し黙る三人。
しぃは遅れながらも危機感を覚えた。


(;゚‐゚)(まさか……レイプッ!!?)


さっと顔色を青ざめる。
叫び声が出そうになるが、寸前で噛み殺す。

刺激したら、まずいからだ。



70: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:49:13.86 ID:HXhYKscXO
(;゚‐゚)(どっ……どうしよう……)

自分の軽率さを呪いたかった。
しかしそんな暇はない。

(;゚‐゚)(きっとこの後……)

(*ムーラ)(ぐへへ……モデルみてぇにいい女だ……)

(*゚↓゚)(おで、こんな美人は見たことねぇだ!)

(*ムーラ)(ああ、可愛いよな!スタイルも抜群だ!!)

(*゚↓゚)(ヤバい、おで、本気で惚れたかもしれねぇだよ……)

(*;‐;)(とか言い出すに違いないって!!どうしよう!ヤバ過ぎだよ!!)



72: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:50:37.71 ID:HXhYKscXO
裏目。
まさか自分の可憐さがこんなことで仇になるとは思わなかった。

美しさには価値がある。
そしてその魅力を強引に奪おうとする輩も少なからず存在する。
例えば、美術館から絵画を盗むような審美眼のある悪党だ。

だがそんな連中が自分の前に現れるとは予想だにしなかった。

(;゚‐゚)(ダメ!絶対ダメ!!この体はビー君だけのもんだもん!!)

助けを呼びたかった。
しかしここは人気のない路地裏だ。

なんとか撃退したかった。
だが徒手空拳では無茶だろう。

(*゚ー゚)(……それなら……可愛くなければいいんだ!!)

しぃは白目を剥き、鼻の穴を全開に開いて歯茎を露出させた。

(゚ё゚)「おいどんは白米が好きでごわす」

会心のブス顔を披露。
華麗にレイプフラグを回避――

(;゚‐゚)(バカ!絶対まだ可愛いよ!!!)



75: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:52:14.73 ID:HXhYKscXO
自分の浅はかさを叱責し、速やかに次のプランへと移行。

(*゚ー゚)「はっ!!!」

特大の放屁。
揺れるスカート。

(*゚ー゚)「くっさー!!!」

へへっと鼻を擦りながら、誇らし気に笑うしぃ。
女の尊厳が失われた気がしたが、背に腹は代えられなかった。

(;゚‐゚)(次は……っ!!)

まだ足りない、まだ襲われるかもしれない、と更に追撃。
近くに置いてあったポリバケツの蓋を開ける。

(*゚ー゚)「ハムッハフハフッハフッ!!」

一寸も迷いを見せずに賞味期限切れの弁当やパンを食べ出すしぃ。
これを見たらどんな男だって興醒めするはずだ。

(*゚ー゚)「ウメェーwwwwwwwwww」



80: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:54:01.75 ID:HXhYKscXO
自棄だった。
ピーナツを味わう時と良く似た表情だったが、内心は違う。
何が悲しくてゴミなど食べなくてはならないのだろう?

(*;‐;)(でも……仕方ないから!仕方ないんだよ!!)

かなり酸っぱい食物をきちんと噛み砕いて飲み込んだ。
ご飯はよく噛んで食べろ、という数少ない母の教えが憎かった。

(;゚‐゚)(止めにアホの振りを……)

両指を鼻の穴に突っ込み、後に下がるしぃ。

(゚*_*゚)「ピーッピーッ、バックします。ピーッピーッ、バックします」



82: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:55:57.96 ID:HXhYKscXO
壁にぶつかり、飛び退く。

(*;д;)「イヤアアアアアア痴漢よおおおおおお!!!
   後生だから触らないでええええええええ!!!」

嫌々と頭を振った後、元気良く尻を叩き出す。

(*゚ー゚)「びっくりするほどソルマック!!
   テレビに出ないボブ・サップ!!!」

パンツに手を突っ込んで、ボリボリと盛大に尻をかく。

(*^ー^)「なんだか痒いぜ!!!!
   ぎゃははははははははぁーっ!!」

(*゚‐゚)「…………」

(゚‐゚*)チラッ

余りにもリアクションがないので逆に不安になり、辺りの様子を伺った。



85: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:57:41.09 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)「……………………」

(*゚‐゚)「…………誰も……いない……」

そこには彼女一人しかいなかった。

(*゚‐゚)「……………………」

(*゚ー゚)「ふふっ……ふふふっ……」

(*;ー;)「あははははははwwwwwwwwww
   助かったwwwww助かったよwwwwwwwwww」

(*;∀;)「良かったねぇwwwwwwwwww良wwかっwwたwwねwww」

しぃは笑い声をあげながら、くるくると回り出す。
そして、その回転を生かして壁を殴った。

(#;ー;)「ちくしょおおおおおおおお!!!
   いっそ最後まで見ていけよおおおおおおおお!!!」

連打で殴る。
殴り続ける。

(#;д;)「ばかぁぁぁぁぁぁ!!みんなばかぁぁぁぁぁぁっ!!!」



86: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:59:23.59 ID:HXhYKscXO
路地裏から飛び出すしぃ。
広い道では、何故か駅に向かって走っている人達が大勢いた。

(*;д;)「誰でもいいから金玉寄越せ!!金玉寄越せ!!!」

しぃの悲痛な叫びが辺りに木霊する。
しかし通行人らは誰一人として止まらない。

(*;д;)「男ならこんな恥かいても平気でしょ!?
    だから私にちょうだいよ!!金玉二つちょうだいよっ!!」

(*;Д;)「うわああああああああああああっ!!!」

お嫁にいけない、という使い古された言葉を肌で実感できていた。
目をつぶるだけで生まれたての黒歴史が痛烈に責め立てる。

(*;д;)「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

突然込み上げた吐き気に負けて、しぃは嘔吐した。
腐敗した食べ物を摂取したせいだろう。

先程の残飯が、道に広がった。



88: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:01:04.84 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)「…………」

(*゚‐゚)「つわり?」

胃の痙攣が、胎動のような気がした。
いや、きっとそうなのだろうと思い込む。

(*゚‐゚)

(*゚ー゚)「テクマクマヤコン・テクマクマヤコン☆妊婦さんになっちゃった〜☆」

(*゚‐゚)

(* ゚_゚)

(* ゚_゚)(妊娠って……こんなに早く分かるんだ……)

携帯を取り出すしぃ。

( ><)】『もしもしなんです!どこ行っちゃって(ry』

(*゚ー゚)】「あんたの子供産んだるわぁ!あんたの子供産んだるわぁ!!」

(;><)】『え?しぃちゃ(ry』

そこで会話を断絶。携帯を電源ごと切る。



91: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:03:11.31 ID:HXhYKscXO
(*゚ー゚)「……御懐妊、かぁ…………」

悲願成就、目的達成。
実に感慨深かった。

(*゚ー゚)「今日から母親なんだね……」

満足気に、嘆息。

(*゚ー゚)「じゃあさっそくビー君に会いに……」

(*゚‐゚)「会い……に」

足が、すくんだ。
会いたいはずなのに、彼の顔を見るのが、怖かった。


―――――


暗く静かな夜の海を見ていると、吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥った。



92: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:05:24.35 ID:HXhYKscXO
引いては戻る波の音、ぼんやりと輝く月明かり、いつ来ても変わらぬ潮の匂い。
それらが作る雰囲気は穏やかでありながら、
どこか不安定な危うさを内包しているような気がする。

(*゚‐゚)(もしかしたら……夜の海に招かれているのかもしれないね)

憂いを帯びた眼差しで闇の先を見据えるしぃ。
手に持った釣竿が、ぴくぴくと動く。

(#゚ー゚)「またイカじゃん!!この海にはイカしかいないの!?」

引き上げた釣糸の先には、見事なイカが釣れていた。
六杯目になるそれを彼女は投げるようにバケツに入れ、再び釣り針を海に垂らす。

(*゚‐゚)「……あーあ、何にも上手くいかないなぁ……」

ビロードへの報告が終わった後に行った、
妊娠、出産に向けての準備を思い出し、呟く。



94: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:07:13.33 ID:HXhYKscXO
もうこの体は自分一人のものではないのだと危惧した彼女は、
護身用の武器を買い揃えた。
それはスタンガンや催涙スプレー、防犯ベルなど多種多様。

装備して歩いていたら、何故か警察官から職務質問を受けてしまった。

次に念のためにと妊娠検査薬を使い、
反応が出ないのでサインペンで印をつけて産婦人科へ行った。

何故か怒鳴られて追い返されてしまった。

そして出産に耐えられる体を作るため、
バッティングセンターに行って腹でボールを受け止めようとした。

飛んできた店員に叩き出されてしまった。

そんなこんなをやっているうちにすっかり夜もふけてしまい、
しぃは気分転換に夜釣りをしようと、ここに来ていたのだった。

(*゚‐゚)(……ビー君)



95: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:08:45.82 ID:HXhYKscXO
こうしているのが正しいとは、とても思えない。
ビロードの命は風前の灯火のはずなのだ。
それなら傍にいてやる方が良いのだろう。

しかし、会えない。会いたくない。

妊娠と彼の病気のせいで、頭が混乱しているからだ。
いま彼の顔を見ても、上手に笑える気がしぃにはしない。

(*゚‐゚)(小説みたいには……いかないみたいだね……)

昨夜読んだ本の内容と今を取り巻く現状は恐ろしいほど酷似していたが、
ヒロインのようにあっさりと現実を受け入れないし、
自分は彼女みたいに快活な行動などとれそうもなかった。

(*゚‐゚)(……でも、しっかりしなきゃ……赤ちゃんがいるんだもんね……)



97: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:10:17.51 ID:HXhYKscXO
しぃは怖かった。
腹に宿した命の重さと、近い将来彼がいなくなってしまう現実が。

(#゚‐゚)「バカ!私のバカ!!」

竿を離してバケツを蹴り倒す。
海に逃げようとする一杯のイカを捕まえる。

(*゚‐゚)「いま一番怖くて困ってるのは……ビー君じゃない……
    なのに自分のことばっかり考えて……」

イカを抱き締め、ギリギリと締め上げる。

(* ‐ )「……でも……どうしたら……私はどうすれば……」


その時、どこからか、歌が聞こえた。


(*゚‐゚)「……?」

『――♪』

(*゚‐゚)「……なに?」



98: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:11:12.05 ID:HXhYKscXO
「だったら踊りで決めようお♪リズムとダンスでファイトしお♪」

(*゚‐゚)「??」

( ^ω^)「ブンブブーン♪ブンブンブーン♪」

倉庫が立ち並ぶ一角で、柔和な表情の青年が歌いながら踊っていた。

( `ハ※)「ブンブブーン♪ブンブンブーン♪」

あれはカレーだろうか?
茶色の物体を顔面につけた男が大きく一度、足を振り上げてからジャンプする。



100: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:12:41.81 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)(……楽しそうだなぁ……)

(部A`ゝ´)「ブンブブーン♪ブンブンブーン♪」

茶色を付着させた男に対抗するように胸を張り、
手を頭上で交差させて地面を膝で滑る男もいる。

(*゚‐゚)(私も……仲間に……)

胸に抱くイカが、足の先を彼らに向けた。

『行こう、あそこへ』

そう言ってる気がしてならなかった。

(*゚ー゚)「うんっ!!」

イカを振り回し、ダンスホールにヘッドスライディングするしぃ。

(*゚ー゚)「ブンブブーン♪ブンブンブーン♪」

(´・ω・`)「まーた変なの来やがった」

しょぼくれた男がそう言った。
海の沖では鯨がシオを吹く。



103: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:13:27.48 ID:HXhYKscXO
鯨「ブシュー」

( ^ω^)「踊ろうお♪」

(部A`ゝ´)「ブンブブーン♪」

( ^ω^)「歌おうお♪」

[壱・八・]「ブンブブーン♪」

( ^ω^)「笑おうお♪」

(*゚ー゚)「ブンブブーン♪」

( `ハ※)「み・ん・な・で」

全員「仲良くしようよ♪」

歌い合い、踊り合う。
ダンスのステップなんて知らなかったが、手にいるイカが教えてくれる。



105: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:15:08.36 ID:HXhYKscXO
微笑みながら両手を広げて青年が走る。
男達が拳銃を発砲する。

(*゚ー゚)(楽しい……楽しいよ……っ!!)

浮き沈みする鯨、低空飛行するカモメ、水しぶきをあげる鰯達。

(*゚ー゚)(……こんなに楽しいことがあるだなんて!!)

全身を使って、踊る。
腹から声を出して、歌う。

( ^ω^)「ブンブンブンブン♪ブブブーン♪」

歌に一区切りつき、全員が思い思いのポーズで静止した。
辺りはしんと静まりかえり、乱れる息だけが微かに聞こえてくる。


そして空からは、しぃにとって信じられないものが降ってきた。



107: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:16:25.86 ID:HXhYKscXO


(*゚‐゚)「――これは……雪っ!!?」

真っ白の粉が、辺りを包んだのだ。
これは粉雪だ、としぃは目を丸くする。

(*゚‐゚)(真夏に……雪が……)

煙霧のような乳白色の粉が、風と共に舞い上がる。
港に備え付けられた灯りに反射して、一粒一粒をきらきらと輝かしながら。

(*;‐;)(ビー君……ほら、凄いよ……夢みたいにな出来事が起きちゃったよ)

光景に、目を奪われた。
両手で掬い、空を仰いだ。

(*;‐;)(綺麗だよ……ビー君にも、見せてあげたいよ……)

この先自分が生きて行く中、これほど美しいものを見れるのは、
決してそう多くはないはずだ。

だからしぃは、見たいと思った。

彼と二人で。
肩を並べて。

その方が、もっと綺麗に思えるだろうから。



108: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:18:59.57 ID:HXhYKscXO
(部B`ゝ´)「大分盛り上がってきやがったな!」

パンッ、と手を叩いて男が言う。

[壱・八・]「でも夜はまだまだこれからOK?」

簡単なステップを踏んでから、中国人らしき男が応える。

( ^ω^)b「おk」

親指を立てる青年。
それに続き、みなが指を立てていく。

( `ハ※)b「おk」

(部A`ゝ´)b「おk」

[弐・八・]b「おk」

(部B`ゝ´)b「おk」

[壱・八・]b「おk」

(*;‐;)「…………」

(*つ‐;)

d(*゚ー゚)b「おkおk」



111: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:20:45.74 ID:HXhYKscXO
( `ハ※)「OK!エブリバディ!」

( ^ω^)「そいじゃ朝までブンブンナァァァァァイトッ!!!」

再び、踊り出した。
しぃも負けずに体を動かした。

いつの間にか、宙を舞う白は、消えていた。

(*゚ー゚)(ねえ、ビー君……私は決めたよ。
   この先なにがあろうと、私はビー君の傍にいるって。
   だってもしまたあんな凄いことが起きた時、君と一緒に見れないのは残念だもん)

(*゚ー゚)(だから、離れないよ……ずっと支えるよ。
    力不足かもしれないけど、精一杯……)

(*^ー^)(そんで三人で……仲良く生きようね)

( `ハ※)「こ・の・ま・ま」

全員『朝まで騒ごう♪』

( ^ω^)「ブンブブーン♪」



112: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:22:28.92 ID:HXhYKscXO
青年が腕を広げ、胸を張った。
そこでバシャリと水の音が背後から聞こえた。

(‘_L’)「トロ蔵さぁぁぁぁぁんっ!
     私も混ぜてくださいよぉぉぉぉぉっ!!」

振り向くとびしょびしょに濡れた老人が、
手を振ってこちらに走り寄る姿が見えた。

その瞬間、どこか遠くからサイレンのような音が鳴り響く。

(;`ハ※)「っ!!!」

(;^ω^)「お?」

(部A;`ゝ´)「サ、サツだ!!サツが来やがった!!
       みんな逃げろおおおおおっ!!!」

(;゚ー゚)「え?ええっ!?」

[壱;・八・]「我逃走決意ッ!!!」

その場にいた全員が半狂乱でぎゃあぎゃあ喚き、右往左往に走り回る。



114: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:24:03.66 ID:HXhYKscXO
(‘_L’)「……あれ?踊らないのですか?」

(;`ハ※)「ヤバいアル!早く逃げるアル!!」

(部B;`ゝ´)「ありゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!!?」

(‘_L’)「皆さん、どうしたのですか?」

(;゚ー゚)「ダメ!前科持ちの妊婦なんて絶対ダメだよぉぉぉぉぉ!!!」

[弐;・八・]「亜婆婆婆婆婆婆婆婆!!!」

(‘_L’)「踊りましょうよー」

慌てて車に乗り込む男達。
次々と海に飛び込む中国人達。

(;^ω^)「おー……僕は別に捕まっても……手間も省けるし……」

(#゚ー゚)「バカ!!!」

(゚ω゚(#)「ぶはぁっ!!」

しぃはぶつぶつ呟く青年を、しぃは平手で叩く。



116: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:24:58.09 ID:HXhYKscXO
(#゚ー゚)「ここに何丁拳銃が転がってると思ってんの!!
    全部あんたのせいにされちゃうよ!?
    それに銃器の所持は一発実刑だから当分檻から出られないんだよ!!?」

(;^ω^)「……おー……お?」

(#゚ー゚)「とにかく走る!!返事はっ!?」

(;^ω^)「は、はいですおっ!!」

青年の手を引いて、全速力でその場から離れるしぃ。

(‘_L’)「ブンブブーン♪」

余韻ではないはっきりとした歌声に目だけをやると、
濡れた老人が片足を天に振り上げているところだった。

しぃはそれを気にも止めずにダッシュする。



118: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:26:25.77 ID:HXhYKscXO
(;^ω^)「ちょっ……早っ……」

(#゚ー゚)「もっと急ぎなって!!捕まりたいの!?」

貧弱なスタミナからか、弱音を吐く青年。そんな彼に激を飛ばすしぃ。
途中、「段ボールに隠れれば大丈夫」と言う彼の意見にも一喝し、二人は夜の街を走り抜ける。

(#゚ー゚)「ほらこっち!!」

(;^ω^)「階段ですかお……」

歩道橋を指差したしぃに、うんざりとした様子で答える青年。

(#゚ー゚)「いいから!!」

(;^ω^)「……はいですお」

相変わらず、手は繋いでいた。
そのまましぃは階段を駆け上がる。

しかし、強い力で引き止められた。



119: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:27:32.27 ID:HXhYKscXO
(;゚д゚)「あぐぅ!?」

驚いて、青年を見る。
彼は自分より吃驚した顔だった。

( ゚ω゚)「だっ、大丈夫ですかお!?」

(;゚ー゚)「……ん?なにが?」

( ゚ω゚)「血ですお!!血が出てるんですお!!」

しぃには青年の言葉の意味が分からない。
なので彼の視線を追って、自分の腿を見た。

(*゚‐゚)「…………」

(;゚д゚)「あぁぁぁっ!!?」

( ゚ω゚)「この血の量は重傷だお……」

(*////)「あやややや……こここ、これは……」



122: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:29:37.97 ID:HXhYKscXO
( ゚ω゚)「逃げてる場合じゃないですお!!
      どうして黙ってたんですかお!?」

(*////)「ちゃうちゃうやがなぁ……これは……あのぅ……」

( ゚ω゚)「手当てしなきゃダメですお!!
       すぐに見せてくださいおっ!!」

(*////)「み……見せ……うぇ?」

( ゚ω゚)「傷口ですお!!!早く見せ(ry」

高速で取り出したはスタンガン。
迷わず青年に押し付け、スイッチオン。

(((((( ゜゜ω゜゜))))))「あんぎゃああああああああああああああっ!!!」

店員曰く、食らったら半日は目を醒まさない電気ショック。
青年は悶絶しながら階段から転げ落ちていった。



124: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:31:34.08 ID:HXhYKscXO
(*////)「…………えっち」

睨み付け、舌を出す。
この威力なら、彼は昼頃まで気を失ったままだろう、と溜飲を下げるしぃ。

そして彼女は急にきたあれのため、コンビニに向かった。


―――――


日が出る前の早朝は、もっとも涼しい時間帯。
その爽やかとも言える空気の中、しぃは帰路についていた。

(*゚ー゚)(なんとかパクられることはなさそうだね……)



129: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:33:27.99 ID:HXhYKscXO
買い物をすませて吉野家で牛丼をかっ食らい、野良猫と遊んで時間を潰したしぃ。
今は静まり返った住宅街を、少しだけ警戒しながら歩いていた。

空は闇から徐々に薄い青へと変わってきている。

昨日と合わせて徹夜を二回。
しぃはもう、くたくただった。

(*゚ー゚)(……疲れると、なんとなく声が聞きたくなっちゃうなぁ)

携帯電話を取り出して、見慣れた番号に電話を掛ける。

しばし聞くコール音。
流石に寝てるか、と諦めて切ろうとした瞬間、彼は出た。



130: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:34:45.05 ID:HXhYKscXO
( ><)】『もしもしなんです!』

(*゚ー゚)】「……起こしちゃったかな?」

( ><)】『いえ、起きてたんです。
      それよりどうしてずっと電波が無かったんですか?』

(*゚ー゚)】「心配しちゃった?」

( ><)】『当たり前なんです!』

(*゚ー゚)】「ごめんね。でも、そう言ってくれて嬉しいよ」

( ><)】『怒ってるんですよ!喜んじゃダメなんです!』

(*゚ー゚)】「……うん、そうだね。本当にごめんなさい」

( ><)】『……そう素直になられると、困るんです』

そう言う彼が可愛いらしくて、笑い声をあげそうになるのを、しぃは堪えた。
ビロードには謝罪しなくてはならないことがあるからだ。



131: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:35:45.50 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)】「……あのね、子供のことなんだけど」

( ><)】『……はいなんです』

感じる、不安。
これを聞いたら本当に怒るんじゃないかな、と。

でも、しぃは言う。
それを話さなくては、さっき起きた出来事を説明出来ないからだ。

あの美しい光景を、どうしても知ってもらいたかったのだ。

(* ‐ )】「あれ、私の勘違いだったよ。変なこと言って、ごめん」

( ><)】『……謝らなくてもいいんです!
      早とちりなんて、誰にでもあることなんです。それに……』

(*゚‐゚)】「……それに?」

(* ><)】『し、しぃちゃんのそういうとこは、
      ぼ、僕が誰よりも知ってるんです!』

(*゚‐゚)】「ビー君……」



134: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:37:22.31 ID:HXhYKscXO
( ><)】『だから、気にしちゃダメなんです!』

(* ‐ )】「…………」

改めて、思った。
ずっと彼の傍に居ようと。

そして強く決意した。

この先もし短い時間しかないとしても、
あの港で踊るような笑い合える日々をビロードと共に送ろうと。

(*゚ー゚)(……よし!)

しぃは口を開いた。
言うのだ。彼の病気のことを。

しかしすぐに笑われた。
それも度の過ぎた勘違いなのだと。

自分の馬鹿さ加減と思い違い、それに安堵からしぃも笑った。



135: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:38:18.00 ID:HXhYKscXO
( ><)】『おかしなしぃちゃんなんです!』

彼の声に、胸が弾んだ。
ああ、やっぱり好きなんだな、と再確認。

(*゚ー゚)】「なんかあったのかな?今日は凄く機嫌が良いみたいだけど?」

( ><)】『そうなんです!友達が増えたんです!凄く楽しかったんです!』

(*゚ー゚)】「ふーん。でも、楽しかったことなら私も負けないよ?」

( ><)】『そうなんですか?』

(*^ー^)】「そうなんですよ」



140: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 01:47:37.83 ID:HXhYKscXO
足を止めるしぃ。
彼女は微笑みながら、悪戯っぽく彼に言う。

(*゚ー゚)】「ねえ、窓から顔出してみてよ」

そう伝え、電話を切った。
携帯をしまって、出窓を見上げた。

もう少し待てば、彼の出てくるところが見えるはず。
どんな表情かな、なんて想像してみたりする。

地平の先から日差しが滲み、緩やかに強さを増してった。
夜明けの光に照らされながら、彼女は笑顔で出迎えた。


眩しそうに、目を細めて。
嬉しそうにも見える顔で。




九曲目・完



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