( ^ω^)はミュージカルをするようです
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:56:11.17 ID:Aw1pfdHRO
(((ω^ )))「レディース――」
((( )))「アーンド――」
((( ^ω)))「ジェントルメーン!!」
('、`;川「は?」
ノパ听)「ん?」
皆さん「え?」
言葉の意図が分からず、その場にいた全員がきょとん、とした。
すると青年が回り止めると同時に優雅に両手を広げた。
\( ^ω^)/「ようこそ内藤ホライゾンのダーンス・ショーへ!!」
彼がそう宣言したその瞬間、銀行内に非常ベルが鳴り響いた。
しかしその音は、2、3秒で止んだ。
それはまるで開幕ベルのようだった。
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:57:41.70 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ホライゾ〜ン♪僕の名前はホライゾ〜ン♪」
胸を張り、ステップを踏みながら、青年が歌う。
( ^ω^)「やりたい放題やっちゃうもん♪だからあなたもカモンだお♪」
('、`;川「……なに……こいつ……?」
そう呟くペニサスの後方から、ブラインドシャッターが閉じられる音がした。
次にそれが開けられる音がした。
何度か、ジャッジャッジャジャジャッと鳴ると、
出入り口のシャッターが完全に閉まり、電灯が一斉に消えた。
('、`;川「えっ?」
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:58:35.26 ID:Aw1pfdHRO
朝とはいえ外からの光を遮断されて電気が消えると銀行内は真っ暗になる。
ペニサスはその暗闇の中で、困惑した。
('、`;川(なにが起こってるの……?)
その時、明かりが彼女を照らした。
真上の電灯が一つだけ光ったのだ。
('、`;川「うえぇ?」
彼女の姿は、舞台の上でスポットライトを浴びているようだった。
('、`;川「…………」
('、`;川(なんかやらないと……マズイのかな……?)
しんとした静寂さに耐えきれないペニサスは、
顔の横で手拍子しながら、ハイヒールを地面に踏み鳴らした。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 00:59:18.24 ID:Aw1pfdHRO
('、`;川「……わ、私は街の一番コールガール♪小金じゃちょっとも振り向かない♪」
('、`;川(なに言ってんの、私?なんでコールガールなの?)
なまめかしく歩き、カウンターに横になるペニサス。
しかし、本意ではなかった。
苦し紛れにつむいだ歌と踊りだった。
('、`;川「分厚いお金の束が好き♪アバズレそうです何が悪い♪」
( ^ω^)「別にいけなくなんかないんだお♪」
再び電灯が一つだけ、ぱっ、と明かりがつき、青年を照らす。
彼はカウンターの向こうから、片肘をつきながら歌う。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:01:14.99 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「職種に貴賤はないんだお♪胸を張っていいんだお♪」
('、` 川「でもみんなの見る目がやらしいの♪視線で抱かれて腰砕け♪」
ペニサスは仰向けになって腰を揺らす。
柔和な表情の青年は、こいつはたまんねーぜ、といった感じで口笛を吹いた。
('、`*川「ハローハロー名無しのスケベさん♪汚れた私に無茶をして♪」
陰が差した憂鬱気な表情で自分の体を撫でる。
そして青年に手を向け、吐息を吐いた。
すると、銀行内が明るくなった。
いっせいに電灯がついたのだ。
- 90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:02:06.89 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ヤケになるのはいけないお♪それならいっそ踊ろうお♪」
青年はカウンターを飛び越え、広いホールに降り立った。
すると、左右から両手を上げる人達がいっせい膝を滑らせながら、彼に寄った。
( ^ω^)「ホライゾ〜ン♪僕の名前はホライゾ〜ン♪」
( ^ω^)「やりたい放題やっちゃうもん♪だから貴方もカモンだお♪」
柔和に微笑む青年が半回転してこちらを向くと、
周りの人たちも同じタイミングで振り返った。
揃う動きに高揚したペニサスは、カウンターに立ち上がり、歌った。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:03:33.64 ID:Aw1pfdHRO
('、`*川「ありがとサンキュー救われた♪あなたは世界のダーリンよ♪」
飛び上がり、青年の胸に抱き止められる。
彼は優しく地に足を着けさせてくれ、
手を取り、ペニサスをくるりと一回転させた。
('、`*川「だから教えてお願いよ♪凛々しい貴方のお名前を♪」
('、`;川(いやいやいや!さっきから名乗ってるじゃない!!
なんで改めて聞いてんの!?)
客達が青年の後ろに二列になって立つ。
彼が一歩二歩と下がると、それに倣った。
( ^ω^)「ホライゾーン♪僕の名前はホライゾーン♪」
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:05:02.11 ID:Aw1pfdHRO
踊りながら着ていたTシャツを脱ぎ、
それを投げ捨て上半身を裸にする青年。
( ^ω^)「ナ・イ・ト・ウ・ホライゾーン♪マイ・ネーム・イズ・ホライゾーン♪」
姿を消していたふんどし女が、
両手には抱えきれないほどの一万円札を持ってカウンターの上に立った。
ノパ听)「盛り上がったらこいつの出番♪全部やるからとっときな♪」
そう歌い、ばら蒔く女。
札は紙吹雪のように銀行内を舞った。
ノパ听)「お釣りは結構、持ってきな♪今日は大いに派手にやろ♪」
('、`;川(流石にこれはヤバいっしょ……)
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:06:27.52 ID:Aw1pfdHRO
その格好から(自分もだが)後先考えないであろうことは察しることは出来たが、
いくらなんでもやり過ぎではないか、とペニサスは不安になった。
しかし、それはすぐに杞憂となる。
青年の周りで踊っていた銀行員達が、なんの疑問も持たずに空中を舞うお札を掴み、
次々と青年の体に張り付けたからだ。
( ^ω^)「ホライゾーン♪ホライゾーン♪ゴールドラッシュ、ホライゾーン♪」
('、`*川「…………」
汗で濡れた体に、沢山の札が付いている。
ズボンの中にも一万円が溢れ帰っている。
('、`*川「……ふふっ」
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:07:50.39 ID:Aw1pfdHRO
( ^ω^)「ホライゾーン♪ホライゾーン♪成金紳士ホライゾーン♪」
ペニサスは床に落ちていた一枚を取り、手を後ろに組んで歩き出す。
( ^ω^)「僕の名前はホライゾン♪マイ・ネーム・イズ・ホライゾーン♪」
青年に近付くとその額にぴしゃりとお札を張り付けた。
後ろに下がりながら、はにかむように、彼女は笑った。
―――――
ペニサスは深夜の街で物陰に潜んでいた。
('、`;川「はぁ……はぁ……はぁ……」
('、`;川「……やり過ごした……かな?」
恐る恐る顔を出すと、辺りに人の気配はなかった。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:09:08.60 ID:Aw1pfdHRO
それを確認すると、思わず安堵する。
('、`;川「今度こそ家に帰ろう……」
銀行で踊っていた最中、
ペニサスは銀行強盗に間違えられていたことを思い出してその場から逃げ出した。
急いで帰宅しようと商店街を走っていたら、パトカーに追われた。
捕まるわけにはいかないので、全力で逃げた。
走り、隠れ、また走る。
本当はすぐにでも帰宅したかったが、
家に入るところを警察に見られたら不味いので、逃げ続けた。
そうして逃走劇を繰り広げていると、一度だけ追い詰められてしまった。
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:10:10.65 ID:Aw1pfdHRO
しかし、突如現れた蛇行運転する車にパトカーが激突され、難を逃れた。
その車はまるで片手で操作しているみたいに危なっかしい運転だったが、
自分に取っては救いに船だった。
今思えば、何か女性の名前を叫びながら運転していた気がしたが、
記憶は定かではない。
('、`;川「何の因果でこんなことに……」
見付からないように身を隠し続けていると、深夜になってしまった。
だがそのかいがあってか、
街に溢れかえっていたパトカーは港の方へと消えていった。
('、`;川「……すっかり遅くなっちゃったな……」
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:11:20.41 ID:Aw1pfdHRO
家に到着し、取り合えず着替えた。
そしてご飯を食べてからシャワーを浴びようと、食卓に向かった。
するとそこには、明かりもつけずに旦那が座っていた。
(@_@)「おかえりなさい」
彼女を見て、安心したように微笑む亭主。
('、` 川「……まだ起きてたんだ」
(@_@)「うん、心配だったからね」
優しい目をしてペニサスを見つめて彼は言う。
彼女の肩から、こわばった力が抜けた。
('、` 川「……なんか言わないの?」
(@_@)「なにをだい?」
('、` 川「帰るのが……遅くなったことについてよ」
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:12:30.39 ID:Aw1pfdHRO
(@_@)「心配だったって言ったじゃないか」
('、` 川「そうじゃなくて……怒ったりとか……」
(@_@)「帰りが遅くなるぐらいじゃ怒らないよ。
君は大人だから、僕があれこれ言うことじゃないしね」
(@_@)「それに今日は、ビロードも帰っていないんだ。
なんでも、友達の家に泊まるらしいよ」
('、` 川「…………」
(@_@)「……今日の君は、疲れてそうだね。
ゆっくり休んだ方が良い」
('、` 川「え……?」
(@_@)「昨日はただ単にお酒の飲みすぎだったみたいだけど、いまは違う。
顔を見れば分かるよ。それになんだか、機嫌が良さそうだ」
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:13:16.82 ID:Aw1pfdHRO
('、` 川「……それも、顔に出てる?」
(@_@)「いや、僕がお喋りでも、今日の君は怒らないじゃないか」
('、` 川(そういえば……そうね……)
今日は本当に朝から大変な一日だった。
でもなぜか彼が言うように、心のどこかで弾む気持ちがペニサスにあった。
('、` 川(銀行に行って……強盗に間違えられて……警察から逃げて……)
まるで映画みたいな日だったな、とペニサスは苦笑する。
そして、この映画のジャンルを思い出す。
そうだ、あれは楽しかったな。
- 125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:14:31.77 ID:Aw1pfdHRO
凄く大変な日だったけど、あれはもう一度体験したいな、と思った。
('、` 川「……ねえ」
(@_@)「なんだい?」
('、`*川「踊ろっか?」
―――――
ターンテーブルに乗ったレコードに針が落ちた。
そして少しだけノイズが走ったあと、音楽が流れ出す。
(;@_@)「や、やっぱ……踊りなんて僕には出来ないよ……」
('、`*川「だから適当にやりなさいって。私だって知らないんだから。
まっ、そういう気分なんだから付き合いなさいってことよ」
手を握り合い、彼は腰を抱き、ペニサスは肩に手を置いた。
- 129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:16:12.63 ID:Aw1pfdHRO
(;@_@)「こ、これでいいのかな……?」
ぎこちなく、体を揺らす。
不安気に自分を見る。
('、`*川「いいのよ、なんでも。気分が大事なんだから」
ずっと昔、彼のことを愛していた気がする。
でもそれは若い時の話だ。
いまは、少なくともあの頃よりは、愛情が冷めていた。
しかし、くたくたになって家に帰ってきた時、孤独を感じなかったのは彼のお陰だった。
存在に、安心したのだ。
('、`*川(クーにはとても及ばないだろうけど……
少しは、側にいてやろうかな……)
刺激を求める自分の性分は恐らく変わらないだろう。
- 134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:17:37.78 ID:Aw1pfdHRO
しかしこれからは、
安寧さを彼に求めてみるのはどうだろうか、とペニサスは考えた。
('、`*川(探せば、いいとこもあるかもだし……)
しかしそこで、そんな自分の思考に違和感が生まれた。
こんなのらしくないんじゃないか、と変に感じたのだ。
('、` 川(…………)
しかし、柔和に微笑む青年と銀行で踊ったことを思い出す。
あれに比べれば、全然変じゃない。
あっちの方が今よりよっぽどおかしいことだった。
だから、いいじゃないか。
ちょっとぐらい似合わない優しさを、彼にしてやっても。
('、`*川(米を炊いてやるぐらいの優しさは、ね)
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 01:18:48.29 ID:Aw1pfdHRO
ペニサスは苦笑しながら、その考えを採用することにした。
やがて音楽が鳴り止み、レコードから針が上がった。
だけどそれでも彼女は、彼から離れようとはしなかった。
仲の良い夫婦になるにはまだまだ時間がかかるだろう。
でも少しずつ、本当にちょっとずつぐらいは、歩み寄ってやろう。
彼女は彼の肩から手を離す。
なんだか今夜はこいつの隣でも眠れるかもな、なんて思いながら。
六曲目・完
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