都市に潜む百夜談
- 33: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 03:19 r2WWPOF/O
『くねくねの正体』
皆さんは『くねくね』というお化けの話を知ってるだろうか?
掲示板上に書き込まれた一つの怪談話。
ある兄弟が家族と共に田舎の実家に帰省し、そこの田んぼで白いくねくねとした物体を目撃する。
弟はよく見えなかったが兄はその物体が何なのか気づいてしまい、その後自らも白い物体のようにくねくねと踊り出す廃人となってしまった…という話だ。
その書き込みの後、同じ様な体験談が続出する。
どれも共通するのは『白あるいは黒い人型の物体がくねくねと踊る』『それを可視した者は知的障害が起き、自らもくねくねと踊り出す』『くねくねがなんなのかがわからなければ助かる』などだ。
そして目撃場所が田んぼに集中している事。
しかし常識で考えればそんなものが存在するはずはない。
しかし探してみたくなるのが人間の性。
前置きは長くなったが、これはくねくねを探しに行ったそんな大学生の話。
- 35: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 03:35 r2WWPOF/O
仙台にある大学にはオカルト研究会というサークルがある。
今回くねくねを探索に行くことになったサークルのメンバーは新入生のN藤、I森、E藤、そして彼らより2年先輩のO野。
一年生グループは高校時代の同級生同士でそれなりに仲も良く、入学したばかりで友達もできなかった為、3人で同じサークルに入ろうという事に決めた。
高校時代にはなかったような面白いサークルの目白押しの中、一際彼らの目を惹いたのが『オカルト研究会』だった。
- 37: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 03:52 r2WWPOF/O
オカルト研究会というだけあり、電波な感じの『痛い』を通り越し『怖い』人が多かった。
その中でも異色を放つ2年生のO野。
彼は心霊ものに精通し、実際に霊体験も何度かした程の筋金入りのオカルトマニアだ。
そのオカルト研究会には新入生のメンバーを先輩の一人が心霊スポットに連れて行くという洗礼のようなものがあった。
その為N藤、I森、E藤の3人は半ば強制的にくねくね探しに赴く羽目になる。
くねくね対策として、直接見ないようにデジタルカメラを持っていくことにした。
しかし怖いもの知らずのO野は双眼鏡を持参する事にした。
直接見たらどうなるか判らないというのに…
- 38: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 04:09 r2WWPOF/O
8月某日―
東北でありながら8月の宮城は暑い。(冬も寒い)
仙台には田んぼと呼べる土地は殆ど無いが、少し離れた町にに行けば腐るほどある。
そこで一行はK沼というちょっとした心霊スポットでもある場所の付近の田んぼを探索してみる事にした。
くねくねの目撃例は昼間が多い。
ジリジリと唸るような暑さの中、彼らは田んぼ道を歩き続けた。
この季節の田んぼはかなり殺風景なものだ。
歩けど歩けど同じ景色ばかり。
勿論くねくねらしきものは見当たらない。
それにつけて40度近い暑さが彼らを襲い、苛立ちも募る。
しかし先輩であるO野だけは違った。
天性のオカルトマニアのアンテナに何か反応があったのか、急に進路を変えて草むらの方へ歩き出した。
- 41: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 04:24 r2WWPOF/O
草むらをかき分け林の方へと進む一行。
林を抜けた所もどうやら田んぼのようだった。
内心こんな事に時間を裂くのが馬鹿らしくなってきた新入生メンバーだったが、そんな思いは先輩O野の大声にかき消された。
いよいよくねくねかと思いO野がゆび指す方角に目を向ける。
目の前には一本の案山子があった。
「なんだ案山子じゃないっすか。驚かさないでくださいよ。」
笑いながらO野に話しかけるN藤。
するとO野も笑いながら言った。
>「知らない方がいい。」
- 45: ◆OZummJyEIo :08/11(金) 06:03 r2WWPOF/O
!?
人間とは思えないような尋常じゃない動きで満面の笑みを浮かべながらくねくねと踊り出すO野。
まずい。O野は見てしまったようだ。
あまりの異常な光景に、I森は口を押さえてえずきだした。
「にげるぞ…」
E野がそう言うと、狂ったO野を置いていき全速力で来た道を引き返した。
くねくねは本当にいたんだ…
走って走って、逃げて逃げて、ようやく田んぼから逃れる事ができた。
息を整え冷静さを取り戻した頃、E藤が置いていってしまったO野の事をどうするか話した。
「O野先輩、やっぱ連れ戻した方がいいよな…だって俺ワモUダメA\J$※らMW{あPみ#?A」
N藤とI森は振り返った。
3人は今、隔離施設で生活をしている。
くねくねの素顔を識る者はもう誰もいない。
戻る