都市に潜む百夜談

54: ◆OZummJyEIo :08/12(土) 02:18 KWeW+Vu/O

『消えた死体』

テツオンは小中高と学年一位の成績を自負するとても優秀な生徒だった。

勿論大学進学時も推薦入学枠だった。

しかし大学入試前日、テツオンは車にはねられた。

幸いにも外傷はなかったが、脳に絶望的なダメージを受けてしまい、重度の知的障害に陥ってしまった。

かつての知的な姿からは想像できない程の状態になり、家族でさえ目を背けたくなるほどだった。

間もなくテツオンは養護施設で生活する事になった。

しかし同じ施設の障害者に対し暴行を働き、施設側の手に負えなくなりテツオンは追い出されてしまった。



55: ◆OZummJyEIo :08/12(土) 03:07 KWeW+Vu/O

その後テツオンは家族が自宅で介護する事になった。

しかしテツオンは食事の仕方も忘れたのか、母親が口に食べ物を運んでも噛もうとも飲み込もうともしない。
そしてトイレにも自分で行けず、いつも漏らしていた。

それだけではなく、昼夜問わず大声で奇声を発しながら家具や食器を振り回して壊し、大暴れした。

そんな日々が続き、そのお陰で家族は近所付き合いも悪くなり、次第に噂されるようになった。

しかし家族はノイローゼ気味になりながらも、テツオンの介護をした。



ところがある日を境にテツオンの住む家が静かになった。

近所の住人もそれに気付いたが、きっとまた施設に入れたんだろうと思った。




しかしそれは違った。



59: ◆OZummJyEIo :08/16(水) 03:29 FKDaiVQwO

朝テツオンの家の周りには数台のパトカーが止まっていた。
テツオンの家で死亡事故が起こったのだ。

死亡したのはテツオンの両親と弟。

テツオンは容疑者として取り調べられたが、何も話さそうとはしなかった。
テツオンは言語にも障害があり、言葉を使うことが出来なかったからだ。

証拠があればすぐにでも逮捕できるのだが、奇妙なことに脳のものと思われる細胞が含まれた血痕はあるのだが肝心の死体が見つからなかった。

近隣の住民に訊いても、最近テツオンが外出した所を一度も目撃されなかった。
つまり死体はテツオンの家のどこかにあるという事だが、埋められた可能性を考えて庭先の土の中、バラバラにして流された可能性も考えて水道管も探したがとうとう死体はおろか証拠となるものさえも見つからなかった。



65: ◆OZummJyEIo :08/17(木) 00:58 A8c4SgUdO

テツオンから何か証拠となるものが出ないか刑事が尋問するが、相変わらず彼は何もしゃべらなかった。

刑事は苛立ちがつのり、大声を張り上げてテツオンの薄汚れて黄ばんだ穴だらけになるほどボロボロなTシャツの胸ぐらをつかんだ。

ふと刑事がテツオンの異変に気付いた。





















テツオンが着ていた穴だらけの薄汚れた服はよく見ると人間の皮だった。

あっけにとられてその場に立ち尽くす刑事に対してテツオンが初めて口を開いた。








>「おいしかった」









警察官が様子を見る為取調室に入ったが、取り調べをしていた刑事もテツオンも消え、そこにあったのは刑事の物と思われる少量の血痕と体液だけだった。

警察はテツオンを警察関係者間で特例危険人物として指名手配し、あらゆる手を使い探したがついに見つける事はできなかった。

今もテツオンは捕まっていない。



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