('A`)ドクオは棺桶売りのようです

5: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:10:52.54 ID:Tz3rOasn0
('A`) この作品はなんですか?

川 ゚ -゚) 『ドクオは棺桶売りのようです』
     今をときめくスーパーgdgd自称ゴーストアクションだ。

('A`) カマボコの間違いじゃありませんか?

川 ゚ -゚) 断じて違う。カマボコとこの作品、どちらが人の役に立っているか
     よく考えろ。

('A`) カマボコ……かな?

川 ゚ -゚) 百点満点だ。


そして愛が芽生えた……



7: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:11:57.11 ID:Tz3rOasn0
一つの空間がある。人はそれを部屋と呼ぶ。
窓からは一筋の光が差し込む。人はそれを月光と呼ぶ。

闇の中だが、はっきりと分かった。
床、壁、家具等に飛び散った血の色が、あの夜の光景が、網膜に焼き付いて剥がれない。
人はそれを殺人現場と呼ぶ。

肉塊がある。人はそれを死体と呼ぶ。

男が立っている。右手の刃物は月の光を受けているが、反射しているようには見えない。
寧ろ吸収しているような、寂しさを全て刃先に溜めているような、そんな様な、藍の色だ。
男は死体と呼ばれるものを見下ろしていた。返り血を浴びているというのも、分かる。

人はそいつを殺人者と呼ぶ。
“彼”はそいつを――――――

「俺、今まで右手の使い方間違ってた……」

「おい、何を言ってるんだ!?」

男の不可解な言動に、彼が叫んだ。

「粗末な棒を握るより、刃物の方が……
 女が喘ぐ映像より、殺意を目前にした人間の顔の方が……」

「俺の質問に答えろ! なんで……」

「こんな簡単に快楽が!! こんな……こんな近くに!!
 血がこんなにも温かいなんて!! こんなにも美味だなんて!!
 ウヒャハwヒャアハハハャwwwデャアwサwヒャwwwwwゲホゲホ」



9: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:13:00.84 ID:Tz3rOasn0
狂いだしたかと思えば、急に静かになり、徐に語り出した。

「人間ってあるだろ? 俺もそうだし、お前もそうだ。ついでにこいつも」

男は振り返り、自分、彼、死体、の順番で指差す。
手を元の位置に戻す際、口元の何かを拭った。
周りは闇に覆われている。色など見分けがつかないが、彼には分かった。

それは確かに血だ。
血を舐め、啜っていたのだ。

「安物の包丁で人は壊れるんだ。どんだけ出来が悪いんだって話だな。
 神さんも手抜きだよ……夏休みの工作か何かで創造したんだろうけどさ、
 こんな脆くちゃ駄目でしょーよ……」

「お前……一体、どういうつもりだ……」

「どーゆーもこーゆーもねーよ。こいつが邪魔だった。そうさ、それだけだ。
 感謝してくれよ、俺もお前も、これで自由の身だ」

「ふざけんなよ!! テメェ言ってた事が違うじゃねぇかよ!!」

彼は拳を振るった。その右手も声も震えている。
男は死体に重なるように倒れ、「べちゃり」と、粘着質の音を響かせた。

「言ってた事……?」

男の眉間に皺が寄る。
鼻から息を漏らし、ゆっくりと起き上がる。
血が混じった唾を吐き捨て、男は包丁を強く握り直した。



10: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:14:32.15 ID:Tz3rOasn0
「そうだ……お前は意識せずに、口癖のように言ってたからな。急には閃かねぇと思うが、
 俺はその言葉が無かったら……」

言い終わらない内に、刃物が目前に迫った。
男の眼光、人間のそれではない。
右目、左目、それぞれの黒目の位置がバラバラだった。まるで焦点が定まっていない。

「ッ……俺が見えないのかよ!!」

刃は止まらない。


次の瞬間には鮮血が飛び散っていた。



11: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:15:29.82 ID:Tz3rOasn0

























  第
第三話
  話



15: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:16:34.98 ID:Tz3rOasn0
               ⊂('A`⊂⌒`つ

昼真っ盛り、この糞がつく程暑い夏の太陽の下、俺は尻餅をついていた。
誰に押されたわけじゃない。その光景にびっくらこいたのだ。
落とした大納言小豆のアイスは地面に溶け、早速蟻の餌となっている。

売り手も買い手も、家族連れが多い休日のフリーマーケット。
VIP自然公園のシンボルである巨大噴水を取り囲むような形状で、
ブルーシートが敷かれていた。その上には小物や衣類など、雑貨が所狭しと置かれている。

しかし、そんな事に驚いたのではない。

それにしても、いつ見ても噴水の形は異彩を放っている。
二つの球体の間に挟まれた、太い筒状の物体から水が放物線を描いているのだ。
やめてくれないかなアレ。やめてくれないかな。

しかし、そんな事に驚いたのではない。

一番の問題は、未来人である稚内さんを殺害し、タイムマシンのカードキーを奪った
ヤクザ達が汗水流してフリマやっている事だ。
しかも例のカードキーを売っている。

てっきり捨てるか、既に売り払ったか皆目見当がつかない所だったのに、
これは嬉しいを通り過ぎて、何だかほのかに切ない誤算だ。
それでいいのか日本のヤクザ。

だが、思っても見なかったチャンスであるのは確かだ。
さっさと奪い取って、現世に取り残された稚内の先輩、珍穂に届けてやろう。
そしてどさくさに紛れて俺は未来へ飛び、次の競馬のレース結果を知る必要があるのだ。



18: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:18:16.60 ID:Tz3rOasn0
('A`)「でもさ、奪い取るって難しいよNE!!」

いや、奪取する事自体は別段難しい事ではない。裕が余ると書いて余裕だ。
しかし休日で多人数、これは頂けない。
可能な限り、俺は正体を隠し通して生きたいのだ。

霊のままじゃどうしてもカードキーに触れる事が出来ない。
物体の存在を消すには、俺が身に着け、或いは触れ続けなければならない設定。
少なくとも一度は生身である人間の状態で、掴む事が条件なのだ。

しかし、それを阻むのは謎のヤクザ集団。
噴水に腰掛けている、いい男は恐らく頭であろうか。
この灼熱の正午で青いツナギを纏う忍耐力、ただ者じゃない。汗一つ垂らしていない。

彼の両脇に佇む二人の男も凶悪な面だ。
右の男は骨が脆そうな顔をして、左の男は亀甲縛りが得意そうな顔をしている。
どいつもこいつも、その筋を通した男に違いはないだろう。

真夏なのに、どことなく寒気を感じた。
一歩だけ後退りをする。下方で何かが潰れる音がした。アイス、それと蟻の群れだ。
そう、強大な力の前では、全てが無となる。無とは即ち死を表す。



20: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:20:51.16 ID:Tz3rOasn0
( ><)「あいつら……人一人殺しておいてのうのうとフリマとは……!!」

稚内さんは余程悔しいのだろう。歯と歯の間でギリギリという音が鳴った。
俺この音嫌い。

川 ゚ -゚)「ドクオよ、虎穴に入らずに虎子を得る方法を教えてやるぞ」

それはそれは都合の良い事だ。
隣のクーが珍しく俺にアドバイスしようとしてくれている。
こういった、ふと覗かせる優しさがあるから、自分はこの女の相方でいられると思う。

('A`)「……言ってみてくれ」

川 ゚ -゚)「虎穴を爆破すればいい」

お、女を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。
てか殴った。力一杯殴っちゃった。
二十メートルくらい吹っ飛んだクーは、「また一段と腕を上げたな」と微笑んだ。飛び過ぎ。

そして歩いて戻ってくる。定位置についた所で、また作戦会議を再開した。

川 ゚ -゚)「私は真面目に言ってるんだぞ?
     手榴弾の一つでもブン投げてやれば万事解決、一件落着だぞ。ギギギ」

( ><)「くやしいのうwwwwwwwwwくやしいのうwwwwwwwwwww」

('A`)「ただいま物語の途中で、大変不謹慎な表現がありました。
   心からお詫びを申し上げます」



37: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:44:38.38 ID:Tz3rOasn0
川 ゚ -゚)「一番確実なのは自腹で購入する事だな」

確かに最も正当な取引だ。
しかし、いくらヘンテコな連中とは言え、相手はジャパニーズマフィアだぞ。
ゼロが有り得ない程並んでいるのではないか?
それに、必ずしも金で売買とは限らない。内臓とかだったらどうするんだ。

(;'A`)「だがまず、確かめない事には分かんねぇ……」

恐る恐る近づき、値札を見た。
『五万円』
リアルだった。

(#><)「なめるなああああああああなんです!!
     そのキーの価値は万単位じゃねーんですううううううううう!!」

怒り狂った稚内は、中央のいい男に金玉頭突きを浴びせた。
当然だが接触の出来ない稚内の攻撃は、誰に効く訳でもなくただ通過するだけ。
やるだけ体力の無駄なのに、本人もそんな事理解しているはずなのに、
当たる事の無いパンチやキックをヤクザ相手に繰り出している。

(#><)「畜生……畜生……!!」

川 ゚ -゚)「稚内……」

('A`)「止めるなよクー。好きなだけやらせておけばいいさ」

阿部「好きなだけやらせて……だと?」



40: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:46:03.33 ID:Tz3rOasn0
((((;゚A゚)))「うわあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

突然その男は俺の見ている目の前でツナギのホックをはずしはじめたのだ。

極々自然に口にしていた。
今の俺の声は誰にでも聞こえる。なぜなら僕は人間だから。
稚内さんやクー。奴らと見ている世界は同じでも、生きている世界はまるで違う。

/^o^\「とんだ自殺志願者がやってきましたね……」

(;'A`)「いやっ、そのっ! 俺はそう、それそれ!
    青緑のカーd……じゃなくて! そのペラペラした綺麗なの欲しいなって!
    いくらですか? ああ五万円ですかwwwww五万ね五万wwwwwww」

川 ゚ -゚)「金はあるのか?」

(;'A`)「ねーよバーローwwwwwwwwwwww」

(´・_ゝ・`)「なるほど……身体で払うという事か……」

阿部「それじゃあ、とことんよろこばせてやるからな」

すごくテンポがいい。このスピード感、やばい。
このままでは家族連れやバカップルで賑わう自然公園内で醜態を晒される。
何せ公衆の面前で二人の男が全裸で絡み合うのだ。逮捕される。確実に。
そしてゆくゆくは、この自然公園はハッテン場に……

赤信号、みんなで渡れば怖くないけど、どっちかっつーと『みんな』が怖い。



43: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:47:33.80 ID:Tz3rOasn0
(;'A`)「許してください……カキ氷MAX奢るんで……」

/^o^\「じゃあ僕はめろんちゃん!」

阿部「カキ氷はいいからさ。このままじゃおさまりがつかないんだ」

頭の中で警報というサイレンが鳴り続けている。Y('A`)Y ウ〜ウ〜
どう見ても柳沢慎吾です。本当にありがとうございました。

根本的な所から考えよう。
何故俺はたかが他人……いや他霊の為にここまで奮闘しているんだ?
見捨てる事なんていくらでも出来るのに、どうして俺は必死になっているんだ?

(#><)「お前らが……お前らがあああああああああああああああ!!!」

自分以外の生物には何の感慨も湧かない人生設定の俺がどうして。
お人好しか、単なるツンデレか。
違う。心の何処かで、現世に残された魂を憐れみの対象として見ていたんだ。

(#><)「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」

今回の件はいい例かもしれない。
生まれ持った、この能力が魔法か何かだと錯覚していたんだ。
今までこの仕事を、善人のつもりで安請け合いしていたが、本当は軽々しく扱っては
いけないものだった。

(#><)「くやしいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

俺は人の後悔を利用しようとしていたんだ。
何が競馬だ。身体も心も半人前じゃないか。



45: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:49:51.71 ID:Tz3rOasn0
覚悟を決める事に覚悟を決めろ。
尻でも何でも差し出してみろ。本気になるのは遅すぎたが、俺が後悔するのは早過ぎる。
男だったら、稚内が当てられない分を殴ってやるんだ。そう言い聞かせるんだ。

(#'A`)「喧嘩上等!!」

/#)^o^\「アベンガネ!!」

めろんに思いを寄せていた側近Aを殴り飛ばした。
Aは一度地面にバウンドし、二度目は頭から落ちていった。
一瞬死んだかと思ったが、うつ伏せで「めろん……ぼくのめろん……」と呟いている。
生きているようだ。よかった。

(´・_ゝ・`)「にゃろう!!」

後ろから亀甲縛りにされた。いや、すごいなコイツ。
しかし、それは俺にとって大した問題じゃない。

(;´・_ゝ・`)「んなッ……消え……!! ゴボゴボ……」

お返しだ。チョークスリーパーが綺麗に決まる。
俺を縛りたいなら、両方の世界で縛らなきゃ駄目だ。
一筋縄でいくような人間ばかりだと思うなよ。

('A`)「こんなマジックも出来るんだぜ……?
   痛い目見たくなかったら大人しく青緑のペラペラを……」

川 ゚ -゚)「きゃードックンかっこいー(棒読み)」

その時だった。仲間と思われるヤクザの一員が、後ろから迫ってきたのだ。



48: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:51:27.23 ID:Tz3rOasn0
いち早く気配を感じ取った俺は振り向き、攻撃の態勢に入る。
しかし、男は既にボロボロで内股だった。
顔もボロボロだった。怪我を除いても多分ボロボロだろう。

雑魚「お頭……道下組の奴らが……」

それだけを言い残し、男は逝った。ナムマイダブ。

('A`)「道下組……? 議員宿舎の入り口にアメリカシロヒトリを放置したり
   皇居のお堀に小便したりする、国家レベルのテロを繰り返す最悪のヤクザ集団か!」

阿部「最近奴ら、うちにちょっかい出しててな……ふっ、さっそくお出ましか。
   ところであの連中を見てくれ。あいつらをどう思う?」

('A`)「すごく……大人数です」

自然とギャラリーが立ち退いていく。
前方から吹いた風は冷たく、痺れを含んでいた。

じりじりと近づいてくる黒服の群れ。
真ん中の少し小柄なのが若頭といったところか。

「う〜〜抗争抗争」

(今 抗争を求めて全力歩行してるしている僕は予備校に通う
 ごく一般的なヤクザの組長。強いて違うところを上げるとすれば阿部組に興味が
 あるってとこかナ―――― 名前は道下正樹。
 そんなわけで帰り道にあるVIP自然公園にやって来たのだ。

ふと見ると噴水に一人の若い男が座っていた。 ウホッ! いい組長)



53: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:53:38.89 ID:Tz3rOasn0
川 ゚ -゚)「なにやら喧嘩のふいんき(そろそろ変換したい)だな。
     チャンスだぞドクオ。どさくさに紛れてカードキー回収して逃げろ」

('A`)「ああ、とっととトンズラしよう」

その時、逞しい手が俺の肩を叩いた。

阿部「応戦しないか」

どうやら先程の戦闘を見て、彼は俺に一目置いたらしい。
遠慮しないで戦ってみろよ、とまで言われた。遠慮させろ。
そして彼は素肌にまとったツナギを脱ぎ捨て、逞しい尻を俺の前に突き出した。何故俺に。

('A`)p「だったらよぉ、手ェ貸してやるから後で五万のアレくれ」

彼は嬉しそうに微笑む。
二人一緒に駆け出した。武器も何も無い、丸裸の状態で突っ込んだ。
うち一人は本当に丸裸であった。ああ明日、俺がニュースに出てたらどうしよう。

下らないニュースの一部になるのは絶対やだ。
せっかくペンギンの双子が産まれたというプラスな明るいニュースもあるのに、
俺と隣のいい男のせいで、またマイナスの原稿が一つ出来上がるわけである。

勝つ事、そして風のように去っていく事。
それらを心掛け、目の前の塵を掃除しようか。マスゴミが来る前に。



55: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:54:55.28 ID:Tz3rOasn0
(#'A`)「どっせえええええええええええい!!」

こんな時に通信空手が役に立つなんて。
『小二の夏休み中盤〜小ニの夏休み中盤の後半』の間、
怪しいビデオを買って鍛えた成果が今、発揮されたのだ。

護身空手講座DVD『ムエタイのが強い』全四十二巻
講師:ビタビタ・アーツ(44)
価格:128400円の一括払い
生徒の声:「すごすぎます! 毎日五時間ミッチリやって、何も変わってない気がします!」
                             大阪府 アパレル店員



56: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 19:56:57.84 ID:Tz3rOasn0
(#'A`)「まっけるかあああああああああああ!!!」

ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、ヤクザ相手に俺は奮闘する。
一方、いい男は相手の若頭と一騎打ちをしていた。
しかし、どう見ても野外ホモセックロスです。お下劣ですいません。
二人が熱く絡まりあってる最中、道下組の雑魚が一人、硫酸のビンを持って走ってきた。

雑魚「うおあああああああああああああ!!!」

('A`)「女帝ktkr」

ビンからは液体が零れる。
落下点は間違いなく、いい男の背中だ。
肌色に溶けていった硫酸は、焼けるような音と共に、白煙を上げていった。

雑魚「組長! すぐに阿部を討ち取っ」

阿部「邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

(;'A`)(えぇ〜お前が言うの……???)

そろそろ自重しよう。
これはその場の人間全員が思った事である。
静まり返った戦場で、一番先に口を開いたのは、いい男の阿部さんだった。

阿部「いいこと思いついた。お前、俺のケツの中に硫酸入れろ」

全然いいことじゃねー。



59: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:00:06.75 ID:Tz3rOasn0
雑魚「それじゃやります……」

やるんだ。












その超人すら超越した彼のパフォーマンスに感動した道下組は、
阿部組に吸収合併される形となった。
わけわからんけど、あまり首は突っ込まないようにした。

阿部「今日は本当に助かったよ」

('A`)「いえいえ、こちらこそ」

オレンジの光が俺と阿部さんを包む。もう夕方だ。
って、何で俺握手してるんだ?
そもそも彼は人一人殺した極悪人じゃないか。

「君のようなガッツのある子が昨日もいてね……」

('A`)「……え?」



61: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:01:49.16 ID:Tz3rOasn0
故意じゃなかったんだ。
稚内には悪いが、俺は阿部さんを咎める事が出来なかった。

「あの若者には本当に悪い事をした」
「殺すつもりは毛頭無かった」
「精力絶倫なんだな」

彼は心の底から稚内を殺めた事を悲しんでいたのだ。
『ヤクザ』『ワル』『ワルっぽい』なんて肩書きや偏見だけじゃ人間は測れない。
彼は少々おかしな部分はあっても、眼は輝いていた。
自分に自信を持ち、正直に生きている人間にしか出来ない眼だ。

('A`)「クーよぉ……」

阿部さんはゴミ拾いをしている。
自分の周りに人間がいない事を確認し、小声で呟いた。

('A`)「俺の眼ってどうかな?」

川 ゚ -゚)「死んだ魚」

グサリときた。
打ち返しようの無いド真ん中剛速球だ。

('A`)「自分がどんな眼をしているかなんて、気にした事も無かった」

苦笑。何に対する笑いなのか、自分でも分からない。
年齢を重ねるごとに、こんなナーバスな発言をしていくのだろうか。
無関心だった物事が気になっていく、それを成長と呼ぶのだろうか。



63: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:03:49.05 ID:Tz3rOasn0
「あの時の青年!」

( ><)「……!!」

突拍子も無く阿部さんは叫んだ。
誰に対しての言葉なのか、『青年』という枠は非常に幅広い。
しかし稚内は自分の事だと直感した。勿論、ドクオも、クーもだ。

阿部「あの時の形相だと……相当我慢してたみたいだな。
   君との思い出がパンパンだぜ」

続けて、彼は頭を下げた。

阿部「もしこの声が聞こえているなら、謝らせて欲しい。
   本当に悪い事をした。すまない」

( ><)「今更……すまないなんて……言うな、なんです……うぅっ!!」

('A`)「死人に声が聞こえるもんか」

俺はわざわざ要らない事を言った。
「それでも、ケジメなんだ」と返された。
稚内さんはどう思っているだろう。俺が詮索する事じゃないけれども。

川 ゚ -゚)「ドクオ、大事なもの忘れてないか?」

('A`)「ハッ、そうそう約束通り五万のアレは頂いていくぜ」

阿部「ああ、そこに置いといたよ」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 20:07:08.11 ID:Tz3rOasn0



護身空手講座DVD『新・ムエタイのが強い 〜やっぱカポエラのが強い〜』全一巻



('A`)「……いやこれじゃなくて……」







70: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:08:36.71 ID:Tz3rOasn0
               【+  】

何故あの時逃げたんだろう。
あんな簡単に。見捨てるように。どうして、どうして。
珍穂は一人、悲しみに更けていた。

裏山のタイムマシンに寄り掛かった
緊急時、何の連絡も取れなくなった時は、タイムマシンを駐屯させた地点が
待ち合わせ場所だと決められている。
ちゃらんぽらんな稚内でも、それくらいは理解している筈だ。

しかし今の珍穂の心境としては、
奴はただ待ち合わせ場所を忘れただけだ。だからいつまで経っても来ないんだ。
そう思うしかない。信じ続けるしかないのだ。

(*:ω;*)「ぐぅぅ……先輩失格だす……」

何度も何度もタイムマシンに拳を打ちつけた。
やがて夕陽が彼女を照らし、太陽は最後まで見守ってくれる事無く沈む。
当然この時代に知り合いなど存在するわけが無い。

本物の孤独がやってくる。

(*:ω;*)「ぐっぐっ……うぐっ……」

そんな彼女に迫る、一つの影があった。
真っ黒なコートに身を包み、サングラスをした、いかにも「通報してくれ」
と、言わんばかりの格好だ。そんな謎の男が珍穂に喋り掛けた。

謎の男「お嬢さん、悲しいけどね、お嬢さんが待っている人は来ないよ。死んだ」



75: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:11:48.67 ID:Tz3rOasn0
(*:ω;*)「死んだ……!? 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ魚だ嘘だ嘘だ!!!!」

謎の男「途中で魚にされたような気がするが……私がこれから語る事には、
    何一つ嘘偽りは無い。全て真実だ。心して聞いてくれ」

わざとらしい咳払いをすると、謎の男は語り出した。
聞く耳を持ってなかった珍穂も、途中からはその言葉を真剣に受け止めていた。

謎の男「……という訳で、稚内君は君を護る為に戦い抜いた。
    どんな惨めな死に方をしようが、関係なかった。
    最後の最後まで君だけを思っていたんだよ」

謎の男はカードキーを手渡しすると、優しい口調で言った。

「人を愛する気持ちだけは、いつの時代も変わらないのさ」

珍穂が「あなたは?」と尋ねる前に、謎の男は黒いコートに身体を隠し、消えた。
正しくは、珍穂の視界から消えただけで、謎の男は草むらへと移動する。
グラサンを取ると、あらびっくり ('A`) 謎の男はドクオさんでした。

(;'A`)「うぎゃあああああああああくせええええええええええええええええ
    『人を愛する気持ちだけは、いつの時代も変わらないのさ』
    なんだこの台詞ううううううううううううううううううううううううう
    俺を殺してくれえええええええええええええええええええええ!!!!」

( ><)b「ナイス演技なんですドクオさん!
       これで自然に珍穂さんにカードキーを渡す事ができ……」

そのカードキーは放り捨てられ、地面に刺さった。



77: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:13:32.44 ID:Tz3rOasn0
(* ω *)「こんな物……どうだっていい……!!」

(;><)「え……?」

(*:ω;*)「稚内いいいいい……! お前が帰ってこないと何の意味もないよぉぉぉ!!
      カードキーなんでどうでもいいから……!!
      お前にここで待ってて欲しかったんだよぉぉぉぉぉ!!!」

川#゚ -゚)「このクソアマめ……それを手に入れるためにどれだけ私が苦労したと!!」

('A`)「ちょっと待て。今回お前は何をした?」

稚内が草むらから飛び出し、珍穂の元に駆け寄った。
無論、それに気付くはずの無い珍穂は稚内の名を呼び続けた。

しかしそれは稚内も同じだった。
届かない「ごめん」を。
見えない土下座を。
何度も何度も、繰り返しては涙を散らした。

(*:ω;*)「うえええええええええええええ!!!
     もう一度声を聞かせてよおおおおおおおおおおおおおお!!!
     もう一度馬鹿面を見せてよおおおおおおおおおおおおお!!!」

(;><)「ここにいるんですうううううううううう!!!
      僕はここにいるんですうううううううううう!!!」

どうして伝わらない。
生きているか死んでいるか、それだけの違いなのに。
有って無いような壁なのに。どうしてこんなにも遠い。



79: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:15:38.59 ID:Tz3rOasn0
('A`)「……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「こういう恋愛劇(?)見て泣けない俺って冷めてると思う?」

川 ゚ -゚)「別に。『事実は小説より奇』とは言うが、あまりにも『奇』過ぎて
     泣くに泣けんよ。安っぽいとは言わんが、流石にプロの脚本家が作った
     物語には勝てないさ」

('A`)「だよね。カーンチ♪ そろそろ強制送還しよ」

クーは鎖を引き、棺桶の用意をした。
ドクオは「早く早く」とクーを急かす。その眼は涙目だ。

川 ゚ -゚)(何が冷めてるだ……これ以上見てられないのが本音なんだろう。
     これ以上時間を費やすと、自分が泣いてしまうんだろう……)

(;A`)「ちゃっちゃと済ませろ! 淫乱ミニスカ巫女!!」

もう手遅れだ。
慌ててドクオは腕で塩水を拭っている。

川 ゚ -゚)「可愛い奴め。おいドクオ」

('A;)「なんだよ!」

川 ゚ -゚)「その眼は悪くない」



82: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:18:38.32 ID:Tz3rOasn0
(;A;)「そりゃどーも!!」

返事に少し時間がかかった。
稚内、珍穂は沈黙している。互いに泣き叫び過ぎた。その反動か。
不意に稚内が口を開け、言葉に出した。

( ><)「生まれ変わっても……きっと珍穂さんを……見つけ出します」

(*:ω;*)「グスッ……お前生まれ変わったら真っ先に私の元に来いっ……うう」

会話が成り立った。

(;A;)「オロローン!! 映画化決定だろ……!!」

川 ゚ -゚)「馬鹿かお前は……ん?」

クーは気付いてしまった。
反対方向の草陰、確かに見えたひとつの笑み。



『○○市の公園で、男子中学生が――――――』



84: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:20:09.30 ID:Tz3rOasn0
『斬り殺されているのが発見され――――――』

迫る足音はカウントダウン。
獲物を見つけた、獣の牙が光る。

『胴を真っ二つにするという残忍な手口が――――――』

姿を表した、灰色のパーカー。

『“チョップマン”と酷似している事から、犯行を再開したと見て―――――』

ここでドクオも気付く。クーは既に身体を前に出している。

しかし遠い。遠過ぎて、遅過ぎた。

(    )「――――――――――――」

珍穂は何も気付いていない。
“そいつ”を前にして初めて危険を感じた稚内は立ち上がる。

(;><)「ちん―――――――――」

護れ。頭にはそれしか無い。
勝手に身体が押し出された。

幽霊の自分は人間に触れる事は出来ない。
イコール彼女を護れない。
そんな公式など稚内はブラジル辺りまで蹴り飛ばした。

ただ、ただ彼女を傷付けまいと手を伸ばした。



87: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:22:41.16 ID:Tz3rOasn0
血液が跳ねる。
何処から跳ねたか、
目の前の男からじゃないか。

(;><)「うああああああああああああああ!!!」

胴を真っ二つにされた稚内。
下半身どころか、どこの感覚も掴めないでいる。
どこから来るのかも分からない、痛みだけが駆け巡る。

(;'A`)「……どういう……」

川 ゚ -゚)「どういう事だ?」

灰色パーカーの男はフードを深く被っており、その表情は全く――――――見える。
口元だけで分かる。つり上がった口角と滲み出る涎は、至福そのものと言っても良い。
右手に持つ斧からは鮮血が垂れている。

クーが日本刀を振るう。が、容易く斧でガードされた。
重厚感の漂う鋼鉄の斧だが、男は軽々しく片手で操る。
明らかに機動力で勝るクー相手に互角の戦いを展開していた。

(;'A`)「何故だ、“チョップマン”はヒトの世界で殺しをする殺人鬼だろ!!?
    何で幽霊の稚内さんが斬られるんだよ!! おかしいじゃねぇか!!」

川 ゚ -゚)「素性など後でいくらでも訊ける!! 今はこいつを捕まえるのが先決だ!!」

『キィン』と高い音が鳴った。
刃物が擦れる音、戦いの音だ。血で血を洗う、死合いの音色だ。



90: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:26:26.81 ID:Tz3rOasn0
川;゚ -゚)(少々まずいか……)

力負けしているのが、斧の重圧から伝わってくる。
このまま防ぎきれる保証は無い。攻めたいが奴は隙を与えてくれない。

川;゚ -゚)「久々に優しくない奴が来たな……!!」

(    )「……」

気に食わない顔だ。
下半分しか見ていないのに、クーは好みじゃないと、心の中で切り捨てた。

川;゚ -゚)「見なくても分かる……お前の目は腐ってる……」

刀と斧、力と力の押し合い。
互いの顔の距離も縮まる。更にクーは顔面を近づけ、男に言った。

川;゚ -゚)「眼科行くのは金が掛かるだろうから……」

(    )「……?」

川 ゚ 3゚)「私が浄化してやる」

素直二百十三式「桃の舞」
唾を飛ばして敵の目を晦まし、隙が出来たら斬るというヒロインらしからぬ最低の戦法。

丁度隙間から目に直撃したようで、「ぐっ」と男は声を漏らし、ふらついた。

川 ゚ -゚)「もらったあああああああ!! イヤッホォォォォウ!!」



95: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:28:34.26 ID:Tz3rOasn0
胸元を横一線に斬りつけた。灰色が紅色に染まっていく。
だが、男は踏ん張り、再び斧を構えた。

川;゚ -゚)(浅かったか……!?)

(    )「――――――――ヴヴ……」

悲しい事に、男の怒りを高ぶらせたようだ。
斧を持つ右手からは、青い血管が浮き出ている。

(    )「コロ……」

( ´∀`)「なーっはっはっは!! 棺桶売りの女!!
     今日こそは決着を……ん?? お取り込み中……??」

テレポーテーションで出現した突然の来訪者、エスパーでボディビルダーのモナーだ。
究極的に空気が読めていない。

(    )「……援軍か」

男は一度だけ大きく斧を振り、怯ませた隙に逃げ出した。
クーは何とか追いかけようとしたが、細い脚が動いてくれようとしなかった。運動不足だ。

川;゚ -゚)「何やらお前が助っ人だと勘違いしたようだ。
     とりあえず難を逃れた……と言うべきか。きもいけど感謝する」

( ´∀`)「あははははっwwwwwwもっと褒めてwwwwwwwwww
     自分褒められて伸びるタイプなんでwwwwwwwwwwwww」



99: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:32:03.13 ID:Tz3rOasn0
(;'A`)「稚内さん!! しっかりしてください!!」

励ますだけじゃ血は止まらない。
祈るだけじゃ傷は塞がらない。
直面している。ドクオはその現実に。

(;'A`)「クー! 早く棺桶出せぇ!!」

川;゚ -゚)「……悪い、もうこの状態は……」

(;´∀`)「霊界死。身体が粉状になりつつある。来世への手続きも不可能なんで
     この人の次の人生は永久に来ないっつー事っすね。
     死ぬのが一度だけとは限らん。こっちの世界でも致死量の傷を負ったら……」

( ><)「う……あ……」

筋肉の言う通り、稚内の身体が白い粉、寧ろ灰のような物質に変わりつつあった。
それはやがて身体全体を包み、最後は塵になって消える。
本当の死が訪れる瞬間だ。彼の未来は永遠に閉ざされた。

(;'A`)「そんな……そんな事あってたまるか!!
    稚内さん! 喋れるでしょう!? 立てるでしょう!?」

応答は無い。
サラサラと砂と化していき、稚内はやがて消えていく。

(;'A`)「来世で先輩見つけるんだろうが!!
    こんな所で消えるんじゃねーよ! おい! 聞こえてるんだろ!!?」

( >゚・*:.。..。.:*



103: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:35:31.16 ID:Tz3rOasn0
ドクオは目を瞑り、唇を噛み締める。
緊迫した空気の中で口を開いたのは他でもない珍穂、彼女だった。

(*:ω;*)「稚内。もし、聞こえているなら……聞け。
      先輩の話だからな……ちゃんと脳味噌に叩き込め……」

(;'A`)「……!!」

( ゚・*:.。..。.:*


(*:ω;*)「ありがとう」



゚・*:.。..。.:*




(*:ω;*)「また会おう」



104: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:36:27.52 ID:Tz3rOasn0
               ⊂('A`⊂⌒`つ

川 ゚ -゚)「反省会だ」

例の如く俺の部屋で、例の如くヒッキーがいたから、例の如く〆ておいた。
さて、どうしたものか。この空気をどうしてくれよう。
これは任務の失敗なのだ。もっと重く受け止めるべきなのだ。

しかし、今の俺に重く圧し掛かってくるのは、仕事の失敗ではなく――――

('A`)「見てたか?」

川 ゚ -゚)「何をだ?」

('A`)「稚内さん、最後笑ったんだ」

川 ゚ -゚)「全然見えなかったが」

('A`)「俺も見えなかった」

川 ゚ -゚)「…………はっ倒すぞ」

('∀`)「ははっ、見えなかった」

最期の最期で、見えた気がしただけの、あの笑顔。
俺は今まで色んな事から目を逸らしすぎた。
もう何も見落としたくない。眼に映る全ての物を、俺は記憶に刻んでいこう。

記憶の中でしか生きられない人もいるのだから。



109: ◆R38CE/IWYU :2007/08/12(日) 20:38:39.93 ID:Tz3rOasn0


(*゚ー゚) 〜♪


( ,,゚Д゚)「見えねぇ、クッソ……ここからのアングルじゃ……見えねぇなぁ!」

( ,,゚Д゚)「でも見えそうで見えないってのも悪くねぇよなー……きっと白だろうな」

( ,,゚Д゚)「しかしかわええなぁ……ケーキ屋のしぃちゃん……
     どんなシャンプー使ってんだろ……てか入浴シーンなんて夢だな……」

( ,,゚Д゚)「ああああああ……想像しただけで悶えるうううううう」

( ,,゚Д゚)「てか写真いつ渡してくれるんだろうな……まさか俺騙された?」


壁│A`)


前言撤回、見ない方が良い物事もあるようだ。

               【+  】

(´・ω・`)「棺桶売りを逃がした? ぶち殺すぞ」

(#´∀`)「逃がしたんじゃなくて戦わなかったの!!
     流石にあのシーンで決闘を申し込めるほど、図太い神経してないモナ!」

意外とモナー君は良識を持っていた。



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