( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

374: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 20:51 1x+/YrJQO

第十一話 『一時的終戦』


(; ´∀`)从;゚∀从「なんじゃこりゃあぁっ!?」

と、モナーと高岡は同時に叫んだ。

今、二人が目にしている光景は普段以上に荒廃し、血と機械油の匂いが充満している城下町の中央通り。
中には完全に崩壊した建物もあり、あちこちに機械兵の残骸や町の住人と思われる魔物達の死体が散乱している。
現在、魔界各地では激しい戦闘が行われているはずであり、必然的にそのような惨状が出来上がってしまうのかもしれないが―――

問題はそこではない。
ここ一帯は敵も味方も全滅してしまったのだと二人が思った矢先、何かが蠢いているのを確認できたのだ。



375: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 20:56 1x+/YrJQO

地を這い回るものや、朽ちかけた翼で空を徘徊するもの。
さらには機械兵の残骸を何度も何度も引き裂こうとするもの。
それらは鼻を突くような悪臭を放ち、しかしモナーや高岡には全く見向きもしない。
敵意がないことを確信し、落ち着きを取り戻した高岡が再度口を開く。

从 ゚∀从「…なあ、この町っていつも死体ばっかりなのか?」
(; ´∀`)「そんなはずはないモナ!
       何かの陰謀…そうだ、孔明の罠モナ!」
从 ゚∀从「ねーよ」

現在町の至る所をうろついているのは生ける屍―――ゾンビ、或いはアンデッドと呼ばれる存在だった。
意志を持たず、しかし何かを探すように無意味に動き回っている。
何故こんな時に、しかも大量発生しているのか。

从 ゚∀从「どうでもいいけどよ、ゾンビってのは本来腐った死体じゃねえんだよな。
     フグとかの毒を色々混ぜて作った薬物で、生きてる人間を仮死状態にして―――」
(; ´∀`)「…そんなこと語ってる場合じゃないモナ」



376: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:00 1x+/YrJQO

やがて一通り周囲の状況を見回した高岡は、半ばつまらなそうに

从 ゚∀从「…俺達の出番はなし、か」
( ´∀`)「それは一体どういうことモナ?」
从 ゚∀从「多分だが、こいつらがポンコツ共を掃討しちまってるんだ」

そこまで言うと、彼女は先程とは正反対に楽しそうな笑みを浮かべ

从 ゚∀从「…だが、そうとなるとこいつらが出てきた原因を探ってみても面白いな」
( ´∀`)「成る程…僕達には手出しせずロボットだけを襲ってるってことは、つまりこっちの味方と考えていいと僕は思うモナ」
从 ゚∀从「大方正解だ」

けどな、と付け加え

从 ゚∀从「こいつらは自分の意志ってモンを持ってねえ。
     要はどっかの誰かさんが死体共を操ってて、そいつが魔界側の住人、つまり味方って考えが本当の正解ってこった」
( ´∀`)「第三者登場モナ?」
从 ゚∀从「さあな。ま、歩いてりゃその内解る」



377: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:20 1x+/YrJQO

そう言って再び歩きだそうとし、しかしその足を止めた。

( ´∀`)「…どうしたモナ?」
从 ゚∀从「…なーんか五月蝿え音が聞こえるんだよな」

それは何かを破壊するような激音ともとれる。
が、高岡にとってそれは寧ろ興味を一層引き立てるものである。

从 ゚∀从「こいつは面白そうだ…fantasticってやつか?
     よし、行くぞ!」

そう言った時には、彼女は既に走り出していた。
それを慌てて追うモナー。

(; ´∀`)「(…何となくだけど、ある意味嫌な予感がするモナ)」



378: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:24 1x+/YrJQO

そうして向かった先には、実に奇妙な光景があった。
辺りに転がっている機械兵の残骸を、八つ当たりするかの如く蹂躙している何者かがいるのだ。

从 ゚∀从「何だ、あのキチガイは」
(; ´∀`)「あれは隊ちy…アッ、こっち来たモナ!」
(# ФωФ)「やい、モナー!」

二人の存在に気付いたキチガイことロマネスクが、何時もの如く怒鳴る。

(; ´∀`)「隊長さん…こんなところで何やってるんですモナ?」
(# ФωФ)「るせえ、俺は今爆発寸前なんだよ!」

もう既に爆発しているであろうロマネスクは高岡へ目を向けた後、再びモナーを睨みつけ

(# ФωФ)「おい! 何だって女と一緒に居やがるんだこの裏切り者!」
(; ´∀`)「ちょ、それは――」
(# ФωФ)「俺なんて、まだ軍師さんと仲良く話したことさえもねえんだぞ!
       死んでからも童貞のお前を同志と思っていたというのに、お前は今俺に屈辱的光景を見せつけた!
       この狼藉は当然死に値する!」
( ´∀`)「ちょwwwwww」

理屈の欠片もない、一方的な因縁を押しつける。
その内容はモナーにとっては嬉しいやら悲しいやらである。



379: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:28 1x+/YrJQO

从 ゚∀从「おいおい、いい加減にしねえか馬鹿共」

とうとう状況を見かねた高岡が制止をかける。

(# ФωФ)「んだとてめえ、誰に向かって―――」
从 ゚∀从「お前隊長って言ったな? 少しは現状考えろよ」
( ФωФ)「……ちっ。さてはてめえ、城下で暴れてた人間だな。名は何という?」

彼女の一言でようやく冷静になったロマネスクが問う。

从 ゚∀从「俺はハインリッヒ高岡。お前が言う通りの人間だ。
     呼び方は高岡でもハインでも、或いは高岡様でもハインお嬢様でも良いんだぜ?」
( ФωФ)「馬鹿が…後半無視するぞ。
       俺は魔界軍隊長、名はロマネスクだ。よーく覚えとけ」



380: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:38 1x+/YrJQO

互いにぞんざいな自己紹介を交わした後、高岡がやはりぞんざいな口調で

从 ゚∀从「じゃあ隊長さん、一つ聞くがここ一帯はどうなっちまってんだ?」
( ФωФ)「それを聞いて、どうするつもりだ?」
从 ゚∀从「ハロー? 誰か居るか?」

と言いながら、自分よりも背の高いロマネスクの頭を小突く。
どう見ても某映画の不良です。本当に(ry


从 ゚∀从「動く死体沢山
     あからさまにおかしい
     興味津々
     …こういうこった。お分かり?」
(# ФωФ)「解るかボケェ!」

さらに怒鳴る。
彼は頭から蒸気を噴きだしながら

(# ФωФ)「ったく、変な侵略者が攻めてきやがってその幹部には逃げられるし
       住人に嫌がらせをされた上に人間の女にはコケにされるわ…今日は実に不愉快だ!」
从 ゚∀从「あーうぜぇなあ…せめて何か心当たりみたいなのは―――」
(# ФωФ)「知るかボケ! 自分でどうにかしろやぁぁ!」



381: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:42 1x+/YrJQO

最早、手に負えそうにない程に怒り狂ってしまっている。
高岡もそう判断したのか

从 ゚∀从「…おいモナー、行くぞ」
( ´∀`)「え…隊長はいいモナ?」
从 ゚∀从「何も知らねえみたいだしな。それに五月蝿くてたまんねえよ。
     お前は色々使いやすそうだから俺と一緒に来い。二人でさっさとやっちまおうぜ」
(* ´∀`)「ぼ、僕でよければ良いモナよ」

思わず顔を赤らめるモナーに、高岡は変質者を見るような視線をぶつけ

从 ゚∀从「勘違いすんじゃねえぞ。俺はただ単に興味本位でやってるんだからな」
( ´∀`)「ちょ、魔界防衛に貢献するためにやってるんじゃないモナ?」
从 ゚∀从「今興味本位だって言ったが何か? 多分御先祖さんから頂いた血が騒いでるんだろ。
     さて、まずはこの町の住人を探すことからだ…さっさと行くぞ」
(; ´∀`)「(…ハインちゃんの先祖ってどんな人だったんだろう…?)」



382: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:48 1x+/YrJQO

恐らく怪奇現象をひたすらに追い求める学者や、強い野心を秘めた探検家のような、ある意味常人というカテゴリーに当てはまらない人間であったのだろう。
が、モナーは敢えて口に出さない。
そして、今自分の目の前にいる高岡の好奇心に水を差すようなことは色々な意味で出来なかった。


そんなこんなで二人はどこかに避難しているであろう、住人の生き残りをくまなく探し回ったのだが―――

二人はこの異変の原因をすぐに知ることはなく
同時に町をうろついていた時に、暗い上空を何かが横切っていったことにも気付くことはなかった。



383: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:55 1x+/YrJQO

荒野に佇む小屋の中の井戸、さらにその井戸の底の空間にある右に傾いた家。
流石にここは誰にも目をつけられなかったようで、未だその形を保っていた。
現在カウンターに人影はなく、しかしその奥に設けられた個室の内の一つには何者かがいる。

川д川「……」

この家の主であり、つまりこの場にいて当然である女性―――貞子だ。

地上に出ることを好まない彼女は、モナーや高岡が城下町へ向かった後も家に残っていた。
だが、だからといって単に地下に閉じこもっている訳ではない。
彼女は全神経を集中させ、まるで何かに力を吹き込むかのように片手を前に差し出していた。
その先には黒い光を放つ大きく神秘的な球体が浮かんでおり、さらにその下には紫色の怪しい魔方陣が描かれている。
彼女は地上で戦闘が始まってから自身の魔力を球体に流し続けており、それには膨大な精神力を必要としていた。



384: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 21:58 1x+/YrJQO

流石に疲れが出てきたのか、やがて彼女は小さく溜息を吐き

川д川「ジエン…コーヒーお願い」
(・∀・)「リョウカイ!」

注文を受けた使い魔ことジエンは何時ものようにすっ飛んでいく。

川д川「さて、そろそろ片が付いたかな…?」

半ば意識が飛びかけるが、しかし何とか踏みとどまらせる。

川д川「死者達の骸を利用するのは気が引けるけど…魔界守護のためには止むを得ませんね」

死体を蘇らせ、意のままに操作することは並大抵のことではなく
しかもその対象は一つではないのだから大変というレベルではない。



385: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 22:01 1x+/YrJQO

だが、それさえも今目の前にある球体と己の魔力があれば実現可能。
貞子が持つ屍術の力を球体で増幅させ、それを地上に放ち拡散させるという荒技。
これによってその力は魔界の至るところへ飛び散り、それを受けた死体は貞子の「侵略者を根絶やしにせよ」という命令通りに動くのだ。

川д川「……」

正直、心が痛む。
だが自分がやらなければならないのだ。
自分が屍術というものを扱える以上、疲れを知らぬ機械という敵に対して必然的に劣勢となる魔界を守るための手段を選んではいられない。



386: ◆wAHFcbB0FI :10/20(土) 22:02 1x+/YrJQO

(・∀・)「アイヨー!」

ジエンがコーヒーを持ってくる。
相変わらずそそっかしく、しかし早くて頼りになる存在。

川д川「…ありがとう」

空いている方の手でコップを持ち、口元へ持っていく。
でぃもよく飲んでいる、とびきり苦いタイプだ。
休んでいる暇などはないであろうが、せめてこれを飲めば頭も冴える―――

川;д川「…熱っ」
(・∀・)「オチツケ!」

―――はずである。



388: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 19:08 bZ3ngkMDO

城内での戦闘も、とりあえずは一時的に終息している。
だが緊迫した空気は未だ存在し、皆は驚愕を露わにせざるを得なかった。
原因は彼等の前に立つ女性。

爪゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ…どうした、そんなに私が怖いか?」

その長い黒髪は美しく、しかしその顔立ちはつーのそれと瓜二つ。
凛々しさと狂気を兼ね備えたような笑いを浮かべながら、己の敵である魔界の者達を見回している。

(-_-)「…まさかとは思うけど、生き別れの双子みたいな関係だったりする?」
(*゚∀゚)「いやいや、私こいつの素顔初めて見たから!」

投げかけられた疑問を、つーは全面否定。
じぃだけが訝しげにつーを見据えているが、他の者は口々に自分の思いを漏らすばかりだ。



389: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 19:15 bZ3ngkMDO

爪゚∀゚)「…何を馬鹿なことを言っているのかね」

対する女は見るに見かねたのか、サーベルを片手にしたまま

爪゚∀゚)「我が名は『MSP-Z02』こと…『づー』。
    『吸血鬼型霊体人形』にして、MSP軍最強ってことになってるづー様だよ!」
( ^Д^)「(まーた変なこと言う奴が出てきたな)」


ともあれ、一番驚いているのはつー。
自身と同じ顔の人物が突然現れたりすれば、誰であっても心が揺らぐのは当然だ。

(*゚∀゚)「どうでもいいけどさー…アンタどう見たって私にそっくりだよな。私に対する嫌がらせか?」
爪゚∀゚)「違うね」

即座に否定。
続いて出た言葉は

爪゚∀゚)「お前が本物だとか私が偽物だとか、そんなことはどうでも良い。
     ただ単に、私はお前を越えた存在なのだよ」
(*゚∀゚)「はぁ…?」



390: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 20:06 bZ3ngkMDO

それはつまり、相手よりも上回るということ。
そして、それは戦闘力、知能、或いは―――

爪゚∀゚)「全てだよ。
     戦いにおいても、物事を弁える判断力においても…全て私の方が上だ」
(*゚∀゚)「よくもまあそんな有り得ないようなことを言えるね…。
     それに私は私だよ。勝手に優劣決められちゃ納得いかんなぁ」
爪゚∀゚)「いいや…私はお前と違い、霊体であって機械でもある…改造手術をちゃんと施されたからな。
     だがお前はただの闘争心の塊。言うなれば、知能に欠陥のある不良品だよ」

破壊音波を放つ銃口に変化する腕。
懐に備えた数々の銃器。
手痛い攻撃を受けた際に、その身の一部から散る火花。
先程自分を『吸血鬼型霊体人形』と称していたが、明らかに吸血鬼の本分を越えているどころではない。



391: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 20:09 bZ3ngkMDO

だが

(*゚∀゚)「私が不良品だって…? それはちょっとばかり不愉快だよ」

つーの目つきが変わる。
それは彼女が真剣な時に見せる目。

(;^Д^)「おいおい、何やらかす気だ?」

タカラが咎めようとするが、つーは無視。
馬鹿にされて何も言い返さないなど、彼女のプライドが許さない。

爪゚∀゚)「そうやってすぐムキになるところが知能の欠如だと思うがな?」

嘲笑するも、つーの鋭い視線はづーを捉えたまま。
だが、彼女が次に口にしたことは――

(*゚∀゚)「…一つ聞くぞ。アンタはそれで満足なのか?」
爪゚∀゚)「…何だと?」



392: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 20:17 bZ3ngkMDO

疑問を覚えるづーに対し、つーはさらに続ける。

(*゚∀゚)「上からの命令に従ってばかりで、それで最終的に利用されるだけされて満足なのかって聞いてるんだよ」
爪゚∀゚)「何を言っている…私はこうして自我を持っているではないか!」
(*゚∀゚)「そういうこと聞いてるんじゃないさ。
     自分のためじゃなく、他人のためだけに存在してて本当に良いのかってことだよ。いい加減理解しろ」

突如として投げられた、予想外の問いかけ。
づーは思わず言葉に詰まり、タカラ達は不思議そうに二人を眺め、しかしつーは諭すように続ける。

(*゚∀゚)「私だったらそれはお断りだけどなー。
     私としては、恩がある訳でもない奴の命に絶対服従とかさせられてる奴は可哀想だと思うし
     それを自分からやるようなプライドのない奴は終わってると思うよ」

づーを指し示し

(*゚∀゚)「そんでもって…それはちょうど、アンタみたいな奴のことを言うのさ!」



393: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 20:22 bZ3ngkMDO

それは格下の者を見下ろすような目。
づーからしてみれば、格上であるはずの自分が、格下に見下ろされているのだ。

爪゚∀゚)「…解らない…何故、私がお前よりも劣っているという…」

途切れ途切れに呟く。
その表情には混乱の色が見え隠れしている。

爪゚∀゚)「…私は、お前を超えるために造られた存在…
     それが何故、お前如きに見下ろされなければならない…!」

いきなりサーベルを振り回す。
つーは出鱈目といえるそれを回避し

(*゚∀゚)「本当にアヒャっちまったか…? なら楽にしてやるよ」

何時ものように笑いを浮かべることはせず。
彼女は手にした大鎌を構え、そのまま動作を遅らせることなく刃をづーの首へ―――



394: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 21:51 bZ3ngkMDO

だが、それは甲高い音と共に阻まれた。

(*゚∀゚)「んー…邪魔だよ?」
(=゚ω゚)ノ「五月蝿いょぅ…」

先程まで壁に身を預けていたはずのぃょぅが、手にした二つの剣をクロスさせて大鎌をガードしていた。
じぃやロマネスクとの戦闘で体力を消耗しているのか、その姿は危なげだ。

(=゚ω゚)ノ「お前…それ以上団長殿に手を出すなょぅ」
(*゚∀゚)「何でよ? 敵に対して攻撃仕掛けて何が悪いのさ?」

言われて、全身に傷を負っているぃょぅは睥睨するようにつーを見据えながら

(=゚ω゚)ノ「僕は団長殿の一の配下…だから団長殿の命に従い、万一団長殿が危ない時は護るのが僕の役目だょぅ!」
(*゚∀゚)「…こいつもか…」

可哀想に思え、しかし同時に愚かだとも思う。
或いは、彼等を造り上げたという者によって洗脳でもされているのかもしれぬが―――



395: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:05 bZ3ngkMDO

暫し考えた後、そのままの姿勢で

(*゚∀゚)「…おい、馬鹿」
( ^Д^)「ちょ、俺のことか?」
(*゚∀゚)「そうだよ…このプライドの欠片もない、可哀想で駄目な連中を楽にするのを手伝え」
( ^Д^)「何じゃそりゃ…」

そう言いながらも、タカラは構えをとる。

( ^Д^)「…まあ、魔界侵略しようとしてる奴等だしな。
     もう軍師さんも魔王さんも出る幕ねえだろ。俺とつーでさっさと終わらせてやるよ」
(=゚ω゚)ノ「嘗めた真似を…僕がいることを忘れるなょぅ!」
(*゚∀゚)「いや、アンタ程度じゃ私は倒せないね」

そう言い切れる絶対的な自信が彼女にはあった。
それは自惚れとも言えることだが、自分は相当な力を持していると今更ながら確信できるのだ。

このぃょぅという男、禍々しさというものを持っておらず、感じ取れるものはどういう訳か聖なる力。
その手の力は苦手だが、ついでに造られたような存在などにやられる気は微塵も感じられない。

(=゚ω゚)ノ「僕をただの二刀流だと思うなょぅ…二人だろうが何だろうが、かかって来いょぅ!」
( ^Д^)(*゚∀゚)「ああ、かかってやるよ!」



396: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:07 bZ3ngkMDO

妙な返答と同時に、両者が距離を詰めるべく動作を起こそうとした、その時。


初めに伝わってきたのは地響きのような大きな振動。
続いて辺りに激音が鳴り響き、それは広間にいた者全員の耳に入る。

(*゚∀゚)「!?」

それは何かを破壊するような音で、同時に機械音のようなものも混じって聞こえてくる。
そして

( ^Д^)「…おいおい見ろよ、ありゃ城の壁が紙のようだぜ」

タカラが指差した先の壁に、直径五メートル程の大きな穴が空いていた。



397: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:09 bZ3ngkMDO

(;-_-)「ぼ、僕の城が!」
爪゚ー゚)「魔王殿、落ち着いて!」

さらに見ていると、空いた穴から未だ晴れぬ煙に紛れて何かが侵入してくる。

(;^Д^)「な、何じゃありゃあ…!?」

それは灰色を基調とした、円盤型の飛行物体。
下部には砲台が顔を覗かせており、壁をぶち抜いた原因はこれと思われる。

決して小型ではなく、しかし広間に入りきる程度の大きさであるそれは、皆が唖然とする中で轟音と共にづーとぃょぅの付近に着陸する。

(=゚ω゚)ノ「…団長殿」
爪゚∀゚)「……!」

パニック状態に陥りかけていたづーも我に返っていた。
二人が全く警戒心を見せないことから、彼等の仲間であることは明白である。

そして、飛行物体の最頂部が開き―――



398: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:13 bZ3ngkMDO

[゚д゚]「よー。退陣の御手伝いに来てやりましたよ、なんてね」

気さくな声と共に、男がひょっこりと顔を出した。
上半身だけを露わにしている状態だが、その額には縫ったような跡が見え、こめかみ辺りには大きなネジのような金属が痛々しく刺さっている。
さらに灰色の両腕は、まるで鉄屑を縫い合わせたように継ぎ接ぎになっていた。
現時点で確認出来る姿だけでも、マッドサイエンティストによって造られた人造人間を彷彿とさせる。

(=゚ω゚)ノ「…デフラグかょぅ」
[゚д゚]「ああそうとも。今更何言ってんだ。
    んでさ、師匠が『もう馬鹿馬鹿しくて見てられないから一旦戻ってこい』だとよ」

デフラグと呼ばれた男は下半身を機体から出さぬまま用件を口にする。

爪゚∀゚)「ドクターか…あいつがそう言ったと?」
[゚д゚]「団長さんには癪に障ることかもしれんが、大人しく従ってくれよ。でないとわざわざ俺が来た意味が―――」



399: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:17 bZ3ngkMDO

そこまで言った時、デフラグは突如上半身を引っ込めた。
直後、デフラグの顔があった位置を火炎球が通過。
そして再び顔を出し

[゚д゚]「――ねえからよ」
( ^Д^)「あーくそっ、外した!」

悔しげに言葉を吐くタカラをヒッキーが半目で睨む。
そのまま小声で

(-_-)「相手のレベルとこっちの状況を考えてよ…ここで下手に挑発して戦闘が勃発したら、この城は吹っ飛んで城下は消滅、森も焼かれて一大事になるかもしれない」
( ^Д^)「…わかったよ」



400: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:22 bZ3ngkMDO

そうしてヒッキーは再度デフラグ達へ向き直る。

(-_-)「初めまして…いきなり手荒な真似をして悪かったね」
[゚д゚]「初めまして、と…お前さんが魔王ってモンか。
    …あ、さっきのことは別に何とも思ってねえよ」

呆気なく言い放つデフラグ。
相当のんきな性格なのか、或いはタカラの攻撃などどうってことないとでも思っているのか。

(-_-)「…しかし、君は敵と判断させてもらうよ。
    前の二人を助けようと現れた訳だし、さらには―――」
[゚д゚]「そんなに警戒すんなって。俺はただ団長さんと同僚を迎えに来ただけなんだぜ?」
(-_-)「なら、何故に城に穴を開けるというテロ行為をする」
[゚д゚]「邪魔だったから」
(;-_-)「……」

罪悪感の欠片もない、やはり気さくな口調で躊躇いもなく返される。



401: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:30 bZ3ngkMDO

どうやら何を言っても無駄らしい。
ある意味、最高に厄介な相手だ。
あのづーという指揮官クラスの女性を捕らえ、奥に潜むさらなる敵についての情報を彼女から聞き出すということを先程までは考えていたのだが―――

(-_-)「仕方のない奴だ…ならばその二人を連れてさっさと帰りたまえ」

次に出た言葉は、相手側の行動を許すものだった。
何故ここで一網打尽にしない、と周囲の者達に咎められるが、ヒッキーはそれを否定する。
敵が退散しようとしている今、最も無難に済ます対処法は下手に手出ししないことだ。

[゚д゚]「おっ、話がわかる。そういう奴、俺は嫌いじゃねえぞ。
    お前さんとは出来れば仲良くしてえなぁ」
(;-_-)「(侵略者にそんなこと言われても…)」

…このデフラグとかいう、敵に対して妙にフレンドリーな男にも早く退場してもらいたいのだ。



402: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:32 bZ3ngkMDO

それからの成り行きは真っ直ぐなものだった。
魔界側の者達は最早誰も彼等に手出ししようとはせず、敵が悠々と退散準備を整えるのを眺めるばかり。

づーとぃょぅが飛行物体に乗り込み、それを確認したデフラグも機体内に潜る。
そして同時に最上部が閉じられ、轟音と共に再び浮上したかと思うと、奇妙な円盤は強い光と共に消え去ったのである。

この瞬間、侵略者達の襲撃に対する二度目の大戦は予想外に早く終息したのだが―――



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