( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

912: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 20:47 SLmS6ngGO

第二十四話 『闇の住人』


そこは暗黒の空間だった。

入ってきた扉を閉ざして外からの弱い光を遮断すると、普通の人間ならば全く視界を確保出来ないであろう程の真っ暗闇。

初めの表現は少し大袈裟かもしれないが、つまりそれだけ暗いのだ。


( ^Д^)「…軍師さん」

そしてようやく視界を確保出来るまでに目が慣れてきたタカラは、ふとじぃに問う。

爪゚ー゚)「何だ」
( ^Д^)「これ、何?」

タカラが指差した先―――部屋の中央辺りに、何故か美しい装飾を施されたガラス板らしきモノが置かれている。
つまり、それは鏡と称すことができるモノだった。



913: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 20:50 SLmS6ngGO

爪゚ー゚)「…お前はよく現世へ行くというのに、鏡を知らないのか」
( ^Д^)「ん、俺は聞いたことある程度だな」
爪゚ー゚)「仕方のない奴だ。いいか、これは鏡というモノであってだな…」

わざわざ鏡についての説明を始めるじぃ。



…そして、それがようやく終わった後。

( ^Д^)「ふーん…そうなんだ。んで、今俺の前にいる変な奴は?」

彼のいう変な奴とは、言うまでもなく鏡に映ったタカラ自身である。

爪;゚ー゚)「…いや、お前だよ」
( ^Д^)「…冗談だ。流石に自分の姿ぐらい、どんなだか解ってるって」



915: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 20:54 SLmS6ngGO

すると、今度はじぃが鏡をしげしげと見つめ始める。
彼女は、とても不思議そうに言う。

爪゚ー゚)「…何だか、妙な感じだな」
( ^Д^)「え、どうして」
爪゚ー゚)「私のような存在でも、鏡に映った姿が見えるとは」

嘗ては人間だったじぃも、今となっては実質上肉体を持たない、所謂幽霊である。
本来ならば、当然鏡になど映らぬ身であると彼女は思っていたのだが。

( ^Д^)「…自分で自分を見てるから映ってるように見えるんじゃね?
     今の軍師さんには幽霊とか見えるけど、普通の人間には見えてないはずだぜ」
爪゚ー゚)「つまり…私は最早、『普通』ではないということか」
( ^Д^)「何を今更」



917: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 20:58 SLmS6ngGO

( ^Д^)「…んで、軍師さん。俺達は一体こんなところでさっきから何やってんだ?」
爪゚ー゚)「…あ」

妙な会話を続けていたじぃだが、ここでようやく本来の最優先目的を思い出したらしい。

( ^Д^)「全く、しっかりしてくれよなー。軍師さん意外に抜けてるとこあるから」
爪゚ー゚)「お前にそう言われては御仕舞だな」

苦笑しつつ進路へと目を移そうとするが、しかし――

爪゚ー゚)「…待て」

途端、彼女の表情から笑いが消えた。

( ^Д^)「…っ、何だよいきなり」
爪゚ー゚)「何故今まで気付かなかったのだ。
     妙な事だがこの鏡の中……いや、鏡そのものから気配のようなモノを感じる」
( ^Д^)「(そう言われても、軍師さんの直感の類って案外アテにならねえからなぁ…何せフサのことフサだって解ってねえくらいだし)」



918: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:03 SLmS6ngGO

( ^Д^)「んで、この鏡とやらが怪しかったらどうしようっていうんだ?」
爪゚ー゚)「…やっぱり、無視するのが賢明かもしれん」
( ^Д^)「それも何かなぁ。どうせなら…そうだな」

考えること五秒。
タカラは出し抜けに鈎爪を装備し

( ^Д^)「やっぱ粉砕か!」
爪゚ー゚)「早まるな、何が起こるか解らn――」

言いかけたその時、問題の鏡に変化が起こる。
今まで何事もないように二人を映していたそれが、突如として何の脈絡もなしに眩い光を放ったのだ。

(;^Д^)「うぉ!?」

暗闇を強制的に照らし出す光源を警戒しつつも、二人は反射的に目を瞑り後退する。
さらに次の瞬間、鏡が爆音らしきものと共にその形状を失ったかと思うと
その際に散らばった破片もまた、床に溶け込むようにして消えていく。

全てがおかしすぎる、何とも謎めいた現象であった。



919: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:05 SLmS6ngGO

ようやく光が消え、再び暗闇が部屋を訪れる。
だが、そこには少し前とは明らかに異なる点が。

爪゚ー゚)「…あれは?」

二人が目を開けると、先程まで鏡があった地点にそれはなく
代わりに人の姿をした何かが確認出来たのである。

*(‘‘)*「…ふっふっふ!」

シルクハットらしき帽子を被り、両耳にピアスをつけている小柄な少女。
何故か現れて早々無邪気且つ不敵な笑みを浮かべる彼女を見て、二人はただただ唖然とする他なかった。



920: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:13 SLmS6ngGO

恐らくこの時点で、タカラとじぃは何か奇妙なモノを見る目で少女を凝視していたに違いない。

中途半端に妙な服装、登場時の訳の解らない演出、それを行ったのが何故か少女である等々――

彼女自体は子供としか思えぬのだが、それらの要素を含めると確実に色々な意味で子供とはかけ離れた存在であった。

*(‘‘)*「そこの二人…何者?」

そのよく解らない少女が、タカラとじぃに問い掛けてくる。

( ^Д^)「いきなり鏡壊して出てきた、そういうお前こそ何なんだよ」
*(‘‘)*「性格の悪い箱ですね。
     ま、そんなことはとりあえずは良いとして…」

少女は、再び無邪気な笑みを小さく浮かべて言う。

*(‘‘)*「――結論から言うと、今から私を楽しませて下さい」



921: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:15 SLmS6ngGO

爪゚ー゚)「はて…楽しませるとは、一体どういうことだ?」

あまりにも唐突過ぎる宣戦布告だったが、じぃはそれをそれだと理解出来ていないようだ。

*(‘‘)*「あーあ、どうせただの訪問客にゃ私の気持ちなんて解らんのですよ」
( ^Д^)「急にそんなゴチャゴチャ言われたって解るか! さっきからお前は何がしたいんだよ」
*(‘‘)*「そんなことはどうでも良い!
     兎に角、私はこの暗い部屋で百年以上過ごしてきて退屈してますから、私と遊んで頂戴」
( ^Д^)「…とりあえず日本語でおk」



922: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:18 SLmS6ngGO

丁寧なのか喧嘩腰なのか、さらには言動さえもよく解らない妙な奴が現れたものだが
そんな奴の言葉を全く理解出来ない者もまた、珍しいのではないだろうか。

爪゚ー゚)「楽しませろだの遊べだの……奴は我々に何を求めているのだ?」
( ^Д^)「(おい、軍師さんも素で解ってねえのかよ…)
     要するに、あの変な餓鬼がここの門番みてえだぜ」
爪゚ー゚)「…そうなのか」

どうやら戦わなくてはならないらしい。
それをようやく悟ったじぃは、鞘から白銀の刀を抜いて静かに構える。

…因みに、この時点でタカラの中に『賢者≒天然』という図式が成り立つのであった。



923: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:23 SLmS6ngGO

だが

*(‘‘)*「おっと、そっちの女はあいつが相手するです」
爪゚ー゚)「…?」

言われるがままにじぃが示された方を向くと、そこには漆黒の棺桶が立ててある。

部屋の暗闇に溶け込んでしまいそうな程『闇』にマッチしているそれは最初からあったのか、或いはたった今出現したのかは解らぬが――

爪゚ー゚)「…ふむ」

じぃが近寄るのとほぼ同時。
ギィ、という鈍い音と共に棺桶の蓋が半分だけゆっくりと開く。

【+  】ゞ゚)「我が眠りを覚ますのは誰d……って客人か」

半開きの棺桶から半分だけ姿を見せたのは、黒い帽子と黒いコートを纏った男だ。
例によって姿形は人間そのものだが、その不気味且つ怪しげなオーラが人間らしさを殺してしまっている。
というより、実際に人間ではないのだが。

彼は敵であるじぃの姿を視界に入れ、続けて口元に小さく笑いを浮かべる。



924: ◆wAHFcbB0FI :07/12(土) 21:29 SLmS6ngGO

爪゚ー゚)「…お前が私の相手とやらか」
【+  】ゞ゚)「ククク…左様。我が名は『棺桶死オサム』、オサムと呼んでくれて構わんぞ。
        そしてようこそ、我々の『住処』へ」
爪゚ー゚)「…私は『魔界軍師』とでも名乗っておこう。初にお目にかかる」
【+  】ゞ゚)「敵に対しても礼儀を弁えるか…似た者同士だな」

あくまで棺桶から半分だけ姿を見せた状態のまま、彼は言葉を続ける。

【+  】ゞ゚)「さて、挨拶してすぐで悪いのだが……そなたに恐怖というモノを見せるとしよう」
爪゚ー゚)「(むぅ…)」

不気味な男を目前にし、並外れの恐怖感で一瞬ゾッとさせられるが
しかし彼女は持ち前の冷静な思考力を用いてそれに対処する。

爪゚ー゚)「(…そもそも、私のような死人が棺を恐れてどうするというのだ)」

…少しズレた形での対処だが。



927: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:31 gEu+adcQO

*(‘‘)*「…そんで、このヘリカル様の相手は薄汚い箱か。なーんかかったるいなぁ」

タカラと対峙するは、シルクハットとピアスを装備した変な少女。
さり気なく自分の名を名乗った彼女は、如何にも面倒臭そうな様子で言葉を口にする。

( ^Д^)「いや待て、お前が戦えって言ってきたんだろーが」
*(‘‘)*「五月蝿い五月蝿い! こちとら百年以上退屈してた訳で――」
(#^Д^)「だあー! それはもういい! かかってくんなら来いや!!」



928: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:33 gEu+adcQO

*(‘‘)*「あ、ホントに良いんだ?」

そう言うと彼女は、いきなり頭に被っていたシルクハットを自分の手に取る。
そのまま被っていた側をタカラに向けたかと思うと

*(‘‘)*「発射!」
( ^Д^)「え」

タカラが驚きの籠もった声を口にする前に、シルクハットの中から炎が放射された。

( ^Д^)「ちっ!」

意表を突いた相手の攻撃手段のせいで一瞬動作が遅れるも、タカラは真っ直ぐ向かってくる炎を間一髪で回避。



929: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:36 gEu+adcQO

(;^Д^)「滅茶苦茶な攻撃だなおい!?」
*(‘‘)*「…ま、今のは簡単な手品です。それから、最初鏡に化けてたのもね」

右手にシルクハットを構えたまま、ヘリカルは平然と答える。
その文字通り手品めいた術の数々から、どうやら奴はマジシャン気取りの戦闘人形らしい。

( ^Д^)「にしても、そんな危ねえ手品があるかっての…餓鬼らしくない餓鬼め!」
*(‘‘)*「危ないですって? 今のが?」

それはあからさまにタカラを嘲笑するような言い様で

*(‘‘)*「そんなこと言ってたら、これなんかはどうなるの?」

今度は青白い電光が、同じくシルクハットから音速超過の速度で飛び出した。



930: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:41 gEu+adcQO

幾ら何でも、電撃から逃れられる程タカラは素早くない。
それを自分で理解しているが故に彼は自らの宝箱に身を隠し、電撃を最小限のダメージで受け止める。

( ^Д^)「今度はこっちからだ!」

すぐに顔を出し、続けてお返しとばかりに火炎球を数発放つが

*(‘‘)*「それがどうしたぁ!」

ヘリカルも、軽やかな身のこなしでそれらをあっさりと避けてみせた。

*(‘‘)*「箱のくせして、生意気にもやってくれますねー」
( ^Д^)「何だ、お前からすれば俺の攻撃も全部『手品』ってことかよ」
*(‘‘)*「あはは…負けないよ?」
( ^Д^)「けっ、勝手に言ってろ。俺はお前の言う『手品』に大して興味なんかねえし」

だがな、と彼は付け加え

( ^Д^)「俺達の邪魔するっていうなら……とことんお遊びに付き合ってやるよ」



931: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:47 gEu+adcQO

タカラ達とは少し離れた場所で、じぃは棺桶の男との戦闘を展開している。

爪゚ー゚)「…」

――とはいえ、彼女は若干攻め倦ねていた。
その理由は至って単純でありながらも厄介なことであり―――

【+  】ゞ゚)「ククク…魔界軍師よ、もっと本気になってかかって来たらどうだ?」

あの男―――オサムの防御が、異様なまでに堅いのだ。
その漆黒の棺桶はじぃが繰り出す斬撃や雷を悉く遮断し、当然中の本人まで届くこともない。

【+  】ゞ゚)「――そして、こちらからから攻撃する時は大して邪魔にならんのだよ」

彼は左手だけを棺桶から出し、その先から反撃として黒い波動を放ってくる。



932: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:51 gEu+adcQO

爪゚ー゚)「!」

正体は掴めぬが、当然喰らってはまずいものなのだろう。
咄嗟の判断で彼女は波動攻撃を回避する。

爪゚ー゚)「はっ!」

そして、隙を見て刀を振りかざす動作と共に雷を放つが、やはり相手は素早く棺桶に逃げ込んでしまい攻撃が通らない。
これではまるで、タカラが取り憑き扱っている、あの宝箱と同等のシロモノだ。



933: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 22:57 gEu+adcQO

しかも奴は、戦闘が始まってから一歩も移動していないという始末。
動く必要がないのか、或いは単に嘗められているのか―――

爪゚ー゚)「…いや、違うな」

恐らく、そのどちらでもない。
床に固定されたかのように垂直に立てられている、その棺桶。
そして、それと同化しているようにさえ思えるオサム。

強い衝撃を与えれば(物理的に)倒すことが出来そうなものだが、しかし今のところは斬撃を幾らぶつけても揺らがせることすら可能としていない。

それ程の重量があるモノを扱いつつ素早く動き回り、さらには隙なく攻撃と防御の双方をこなすことは果たして可能なのか。

爪゚ー゚)「(…まず不可能だろうな。
     加えて、あの重い棺桶をわざわざ捨てずに戦うという点も含めると――)」

思考を巡らせた末に、彼女は一つの考えを導き出した。



934: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 23:21 gEu+adcQO

爪゚ー゚)「…では、行くぞッ!」

刀を構え直し、じぃは再びオサムへと向かう。

【+  】ゞ゚)「ほぅ、今度はどう来るのかな?」

オサムもまた、左腕に闇の力を溜めて迎え撃つ態勢に入る。
遠距離からの攻撃であれば先程までのように波動を放ち、接近してこようものならその闇の力を纏ったまま直接攻撃すれば良い。

そう考えている間にも、自分に近付いてきているじぃを見てオサムは左手に力を籠める。
だが

【+  】ゞ゚)「!?」

突如、じぃは進行方向を変更。
正面からの攻撃はフェイクであった。

【+  】ゞ゚)「ちぃ…」

オサムがそれに気付いた時、彼女は既に背後に回っていた。

爪゚ー゚)「さて、どうかな。すぐには此方を向けないだろう」

オサムの背後(といっても棺桶だが)に立ちながら、彼女はそのままの口調で続ける。

爪゚ー゚)「お前の弱点は…簡単にはその場から『動けない』ことではないか?」



935: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 23:29 gEu+adcQO

…こうは言ってみたものの、実のところ彼女自身もそんな策だけで倒せる相手だとは思っていない。
何せ、ここは魔界侵略を目論んでいる連中の本拠地であり
それだけに待ち構える敵も手強いはずなのだ。
はずなのだが―――

彼女が抱えていた緊迫感は、見事良い意味(?)で裏切られることとなる。

【+  】ゞ゚)「くそっ、これはもうどうにもならん!」
爪゚ー゚)「…え?」

じぃが背後に回った途端、オサムはその場から動こうと試みることさえなく戦闘を投げてしまったのだ。



936: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 23:35 gEu+adcQO

爪;゚ー゚)「…えーと、その、一つ聞いて良いか?」
【+  】ゞ゚)「クッ、何だ…?」
爪;゚ー゚)「お前…今、本当にその場から棺桶を全く動かせないのか?」

一瞬の沈黙の後

【+  】ゞ゚)「…じ、実はそうなんだ。全く情けない話だろう?」
爪゚ー゚)「そ、そうか…ならば仕方がないな」

直後、じぃは素早くオサムの前に立つと抵抗する隙さえ与えずに棺桶の蓋を隙間からこじ開け
中にいるオサムに斬撃を放ち気絶させてしまった。

爪゚ー゚)「安心しろ、今のはみねうちだからな…」

静かにそう告げるじぃ。
流石の彼女も、呆気なく幕を閉じたこの戦闘には拍子抜けせざるを得なかった。



937: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 23:38 gEu+adcQO

( ^Д^)「おらおら!」
*(‘‘)*「こいつ…出来るッ!」

魔力を用いた銃撃戦、とでもいえる戦闘が繰り広げられていた。

タカラは魔力で生成される火炎球を撃ち出しては自らの宝箱を用いてガードし
対するヘリカルはシルクハットから様々な『手品』という攻撃を繰り出しては、飛んでくる火炎球を確実に避けていた。

*(‘‘)*「お前ってなーんかオサムに似てますね。ひょっとして同類だったり?」
( ^Д^)「あんなのと一緒にされてたまるか! 俺は――」

これ以上続けても無意味と判断したタカラは鈎爪を装備し、ヘリカル目掛けて突撃を開始する。

( ^Д^)「――『魔界破落戸連合』トップのタカラ様だ!」
*(‘‘)*「何じゃそりゃー、です!」

妙な宣言とそれに対する反応の後、今度は接近戦となる。



938: ◆wAHFcbB0FI :07/15(火) 23:48 gEu+adcQO

しかしタカラの武器が鋭利な鈎爪であるのに対し、ヘリカルの武器は摩訶不思議なシルクハットのみ。
当然、彼女は圧倒的に不利と考えたらしく――

*(‘‘)*「えーい、こうなりゃアレしかないです!」

バックステップで距離をとりつつシルクハットを逆さまに構え

*(#‘‘)*「いっけー、スーパーミラクルウェポン!」

如何にも厨臭い台詞を口にすると同時、シルクハットから無数の光弾がロケット花火の如く飛び出してきた。

(;^Д^)「え、何このドSっぽい攻撃!?」
*(‘‘)*「あはは、消し飛んでしまいなさい!」

その豪快さは勿論、意外に狙いも正確である。
一斉に放出されたそれらは、同じように一斉にタカラへと牙を剥いた。

続いて引き起こるのは爆発の連続であり、タカラはみるみるうちにそれに飲み込まれていった。



939: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:00 o74MrvVHO

だが、そんなヘリカルの余裕もすぐに消えることとなる。

( ^Д^)「――なんてな!」
*(;‘‘)*「…え?」

ヘリカルが驚くのも無理はなかった。
爆発を一斉に受けたはずのタカラが、自分の目の前まで迫ってきているのだ。

( ^Д^)「何、簡単な理由だよ。お前が起こした爆発利用してここま飛ばさせてもらった。
     因みに宝箱に潜ってたから、潜る前に喰らった最初の一発以外は全部シャットアウトしちまったぜ」
*(‘‘)*「そんな、滅茶苦茶な…」



940: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:10 o74MrvVHO

( ^Д^)「んで、今度は俺がお前に対して一方的なお仕置きタイムといくが別に文句ねえな?」
*(;‘‘)*「!?」

気が付くと、ヘリカルは既に炎に囲まれていた。
先程までの短い時間で、タカラが酒を用いて火を噴いたのだ。
彼女は慌てて周囲を見回すが、逃げ場など見つからない上に炎は徐々に強くなっていた。

( ^Д^)「さて、どうすんだ? このままいったらお前は焼き焦げる訳だが。それともお前の『手品』で切り抜けてみるか?」

するとヘリカルは――

*(‘‘)*「…全く、仕方ないですね。こーさんですよ」
(;^Д^)「は、はぁぁ!?」

――こんな感じで、こちらもあっさりと負けを認め降伏してしまうのであった。


こうして、あまりにも呆気なく幕を閉じた二つの戦闘。

タカラとじぃがその張り合いのない理由を知ることになるのは、これより少し後のことである。



941: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:12 o74MrvVHO

つー達が既に番人を倒したため、倉庫での戦闘は終結していた。

(*゚∀゚)「…とりあえず、ここはもうクリアってことよね」
(*゚A゚)「後は、あいつをどうするかやなぁ…」

短い休憩をとりながら、三人が目を向ける先には

[゚д゚]「……」

既に戦意喪失しているデフラグの姿が。
専用のマシンを失ったからには、彼の武器は大型のハンマーただ一つのみ。
どう足掻いても、つー達三人を倒す手段も力も残っていなかった。



942: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:18 o74MrvVHO

[゚д゚]「…姉ちゃん方。煮るなり焼くなり、好きにしてくれや」
(*゚∀゚)「おや、随分と往生際が良いねぇ」
[゚д゚]「どんだけ酷い最期を迎えても当然のことをしてきた訳だしな。
    幾多の命を奪った機械兵達を造ったのも結局は俺だし、今更命乞いなんかしねえさ」

何の後悔や恐怖も感じていない辺り、本気で覚悟は出来ているのだろう。
だが、その表情にはどこか寂しげな何かを感じられたような気もした。

(*゚A゚)「…どないしますか、先輩?」
ミ,,゚Д゚彡「どうする?」
(*゚∀゚)「んー、そうだね…」

つーは暫し考えた後、再び口を開く。

(*゚∀゚)「…本来なら瞬殺しちゃってるよ、うん。何しろ敵だしね」

でも、と続け

(*゚∀゚)「今の状況を考えると、このデフラグってのは貴重な情報源だと思うのさ」

(*゚∀゚)「…ってことで、一つ聞きたいことがあるんだけどそれについて答えてもらうよ?」



943: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:21 o74MrvVHO

[゚д゚]「…して、それは?」

意外、というような表情で彼はつーを見る。

(*゚∀゚)「少し前にさ、『プロトタイプ』とやらが存在してたって言ってたよね」
[゚д゚]「…まあな」
(*゚∀゚)「アンタ達のボスが、そいつを造った目的は一体何なの?」
[゚д゚]「……」

答える声はない。
が、やがて話す気になったのか――

[゚д゚]「…正直、そんなことは俺にも解らねえ。『プロトタイプ』が造られた時にゃ、まだ俺達の誰も造られてなかったし」

けどな、とデフラグは付け加え

[゚д゚]「これだけは確実に言える。俺達を造り上げたボス…つまり総帥殿は――」



944: ◆wAHFcbB0FI :07/16(水) 00:28 o74MrvVHO

デフラグの言葉が半ばで切れたのはその時。
そして直後、彼は力無く崩れ落ちた。

(*゚A゚)「ちょっ、こんなことって…」
(*゚∀゚)「……」

全ては一瞬の事であった。
その一瞬を以て、デフラグは二度と言葉を口にしなくなったのである。

『最期』を迎える心構えが既に出来ていたからか、デフラグは自らの消滅を受け入れたらしく
床に倒れるとすぐに灰色の光と化していき、そのまま空気に溶け込むように消えていった。


そしてその後ろに、デフラグを躊躇いなく『始末』した者の姿が。
のーとフッサールが怒りと恐怖で動揺を見せる中、つーだけが静かに二人へ言い放つ。

(*゚∀゚)「そいつは私の獲物だよ。手を出すな」
爪゚∀゚)「……」

――獲物と称したその本人にも伝わるよう、強く威圧を籠めた口調で。



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