( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです 特別編

408: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:03 geUxeGy0O

『( ^Д^)と(#゚;;-゚)のハロウィン? のようです』


『始まり』


( ^Д^)「おーっす!」
(#゚;;-゚)「…やあ」

何時ものように付喪神ことタカラと、同じく付喪神ことでぃが魔界にて出会う。
が、タカラは何時もとは少し違う様子。
どこか楽しげな表情である。

(#゚;;-゚)「…どこに行くところなのかな?」
( ^Д^)「済まねえ…実はな、俺が今日お前と出会ったのは偶然じゃねえんだ」
(#゚;;-゚)「何この流れ
     (…ついでに謝る理由が解らない)」



409: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:07 geUxeGy0O

( ^Д^)「今日俺がお前を探したのは他でもない。
     今日は十月三十一日、即ちハロウィンの日だからだ!」
(#゚;;-゚)「(探してたのか…)
     ハロウィン…って何があるの?」

僅かに期待を寄せるでぃに、タカラは得意気な様子で説明する。

( ^Д^)「現世ではな、このハロウィンって時に餓鬼共が幽霊や魔女の格好して
     『Trick or treat!』…つまり『お菓子くれなきゃ悪戯するよ!』とかいうようなことをほざきながら、家を一軒一軒回って菓子をせがむらしい」
(#゚;;-゚)「何じゃそりゃ…」
( ^Д^)「そして今日はそのハロウィン。ついでに俺達は『妖怪』という、霊体と魔物の真ん中ぐらいの好都合なポジションにいる。
     てな訳だから今日は俺も同じようなことをして楽しもう、と。
     で、どうせならお前と一緒の方がいいと思ってな。どうだ?」
(#゚;;-゚)「(てな訳ってどんな訳だか…でも)」



410: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:11 geUxeGy0O

でぃは嬉しそうに頷き

(#゚;;-゚)「何か楽しそう……私は普段苦いコーヒーばかり飲んでるけど、甘いものも結構好きだよ。
     …だからお菓子貰えるんだったらお供するよ」

彼女も、たまには遊んでみたいと思うような性分である。
それに今日は特別な日らしいので少しは羽目を外してもいいだろう、と判断したのだ。

( ^Д^)「よしきた、んじゃ早速標的探して回るか!」
(#゚;;-゚)「…おー(…ってことは私達は子供?)」

かくして、どこかズレているような感じのまま、彼等のハロウィンが始まったようです。



411: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:16 geUxeGy0O

『話の通じる悲惨な奴』



( ^Д^)「因みにハロウィンはカボチャの日とも言うらしい」

※勿論そんなことはないです



( ^Д^)「さて、まずは一番道理が通る奴から攻めるか」
(#゚;;-゚)「…と、いうと?」
( ^Д^)「ハロウィンという単語が通じて、且つ何かと扱いやすい奴だ。もう解るな?」
(#゚;;-゚)「あー…成る程」



412: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:21 geUxeGy0O

そして

( ^Д^)(#゚;;-゚)「Trick or treat!」
(; ´∀`)「ちょ…不意打ちモナ」

城下町のとある一角で、タカラとでぃはモナーを捕まえていた。
彼等からして一番扱いやすい存在はモナーである…というか、モナー以外に扱いやすい相手はいない。

( ^Д^)「五月蝿ぇ、くれって言ってんだからとっとと寄越せ」
(; ´∀`)「こっちに要求する権利はないモナ?」

当然モナーにもその権利はある。
だが、現実とは辛いものだ。

( ^Д^)「ねえよ。早い者勝ちが俺達のルールだ」



413: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:24 geUxeGy0O

この瞬間、モナーの意識内で波瀾が巻き起こる。

(; ´∀`)「(うわぁ…寄越せって言われても、僕はお菓子どころか食べ物すら持ってないモナ…。
       でも相手は妖怪、ないとか言ったら何されるか知れたもんじゃないモナ…どうすんの俺?)」


この間僅か三秒。
タカラとでぃが何か喚いているが、そんなことはモナーの耳に入らない。
彼は考えた挙げ句、苦肉の策に出た。



414: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:26 geUxeGy0O

( ´∀`)「…こ、こんなこともあろうかと、実はちゃんと用意してあるモナ。でも今は持ってないからすぐに取ってくるモナ」
( ^Д^)「よっしゃ、十分で戻ってこい」
( ´∀`)「了解モナー!」

これぞ、妖怪にパシられる元人間の図である。




そして、十分後

( ´∀`)「お待ちどうモナ!」
(#゚;;-゚)「…ご苦労様」
( ^Д^)「おい見ろよ、すげえぞ!」

モナーがどこからか持ってきたのは複数の飴玉。
割と大きめで、タカラとでぃで山分けしても十分な量だ。



415: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 19:30 geUxeGy0O

( ^Д^)「しっかし、よくこんなモン魔界で手に入ったな。どこから取って(盗って)きた?」
( ´∀`)「それは企業秘密モナ」
( ^Д^)「…? まあいいや。サンキューな、早く彼女作れよ」
(#゚;;-゚)「…良い一日を」
( ´∀`)「彼女…ねえ」

モナーはそう呟いてタカラとでぃを見送った。



( ´∀`)「…………」

( ;∀;)

( ;∀;)「ああああああ! 僕はどうせ死んでからも独りモナよ!
      現世にいた頃も小学中学高校と誰からも見向きされず
      そうこうして魔界に迷い込んで数年後に死に、さらに約百年経った今でも女の子と手を繋いだことさえないモナー!」

愕然として叫ぶモナーを、周囲にいた住人達は変質者を見るような目で眺めている。
とうとうタカラ達にお返しの菓子を要求することさえも忘れましたとさ。



続く



416: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:31 geUxeGy0O

『人間相手なら楽勝…あれ?』



(#゚;;-゚)「飴玉が一つ二つ……ハロウィンって良いね」
( ^Д^)「同感なんだぜ。次もこのくらい貰えるといいな」

最初から結構な物を貰い、二人は満足な様子である。
しかし、まだまだこれから。
どうせなら多くの相手から貰った方がいいではないか。

( ^Д^)「よし、次も話が多分通じる奴を狙う。要はレベル2とかそんなとこだ!」
(#゚;;-゚)「……?」



417: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:38 geUxeGy0O

そして

( ^Д^)(#゚;;-゚)「Trick or treat!」
从;゚∀从「…いきなり何の用だ? 嫌がらせか?」

今度は高岡に突っかかる。
正直扱いにくいが、人間である彼女ならハロウィンを知っているはずなので何とかなるだろう、という考えによって今に至る。

( ^Д^)「言葉通り、菓子寄越せ」
从 ゚∀从「ハァ? 何で俺がてめえらに菓子なんかやらなきゃならねえんだ」
( ^Д^)「今日はハロウィンだから」
从 ゚∀从「あ、そんなのあったな。
 …で何する日だっけ?」
(#゚;;-゚)「!」
(;^Д^)「…えーと、お前は確かに人間で合ってるよな?
     まさかハロウィン知らないってことは―――」
从 ゚∀从「当然俺は人間だが、色々あってハロウィンとは無縁のまま生きてきた人間だ。
     てな訳だからハロウィンっつー言葉は知ってるが結局それだけで、日付内容その他諸々は曖昧だったりするぜ」
( ^Д^)(#゚;;-゚)「(ちょwwwwwねーよwwwwwww)」



418: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:40 geUxeGy0O

ハロウィンを知らない人間がいるとは思ってもみなかった。予想外の事態である。
…が、彼等はそんなことじゃ諦めない。

( ^Д^)「おい、でぃ」
(#゚;;-゚)「…?」

タカラはでぃに小声で耳打ちし、何かを伝える。
その際にでぃは一瞬表情を歪めたが、やがて小さく頷いた。

( ^Д^)「…ハイン、よく聞け。
     『ハロウィン』ってのはな、人間が幽霊や魔女に菓子を寄越さなけりゃならん日だ」
从 ゚∀从「何故に?」
( ^Д^)「俺に聞くな」
从#゚∀从「ふざけんな、理由もねえのにそんなこと―――」
( ^Д^)「俺もよくは知らねえが、残念ながらハロウィンという行事が実在することは確か。
     今のお前には俺達に菓子を渡すか、潔くTrick喰らうかしか選択肢はねえ。
     もう一度言うぞ、Trick or treat!」
(#゚;;-゚)「…Trick or treat」



419: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:43 geUxeGy0O

この瞬間、やはり(ry

从;゚∀从「(やべえ、何か知らねえけどこいつらやべえ! 拒否ったら何されるか解んねえし、でも屈服したら俺の生き様に反する!
     爆発起こして吹っ飛ばしてやるのもいいが今疲れてて乗り気じゃねえし後がめんどくせえ!
     つーか大体くれてやるモンなんかねえ! 畜生、俺はどうすりゃ!)」


この間やはり約三秒。
彼女の結論は

从 ゚∀从「…仕方ねえ、なら十分寄越せ。その間に何とか探してみるからTrickとやらはゴメンだ」
( ^Д^)「お前もかよ…」



420: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:45 geUxeGy0O

从 ゚∀从「どういうことだ?」
( ^Д^)「いや、さっきモナーに同じ事言ったらどっかに菓子を取りにいって、そいつをくれたからよ」
从 ゚∀从「へぇ、あの豚野郎が……それだ!」
( ^Д^)「…それって何だ?」
从 ゚∀从「いや、何でもねえぞ。何でもねえ…」

そう呟きながら、高岡は何処かへと消えていった。

( ^Д^)「(幽霊や魔女に菓子を寄越す……嘘はついてないもんね)」
(#゚;;-゚)「……」

そうはいってもアンタ、それは仮装した子供の話だから…



422: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:52 geUxeGy0O

十分後


从 ゚∀从「ほらよ、例の物だ。ありがたく思いやがれ」
( ^Д^)「お…やるな」

高岡は何やらお菓子が入ってそうな箱を持ってきた。

从 ゚∀从「言っとくが入手経路とか聞いたら殺すからな」
( ^Д^)「貰うモン貰えりゃ文句は言わねえ。
     ついでに言うと俺は死なねえよ。魂がなくなることはあるだろうが」
从 ゚∀从「何だっていいだろ。それと今日はもうてめえらとは会わねえから」

そう言うと高岡はさっと何処かへ走り去ってしまった。

(#゚;;-゚)「…あの人って変わってるよね」
( ^Д^)「だよな…だが今は貰いモンを見てみようじゃねえか」

タカラは箱を開ける。

( ^Д^)「…おや、貰ったのはチョコレートとやらか」
(#゚;;-゚)「…私チョコレート好きだよ」
( ^Д^)「じゃあ全部お前にやるよ。俺あんまし好きじゃねえ」
(#゚;;-゚)「…ありがとう」

彼女はその場で幾つか食べ、残りは自分の箱の中へ入れた。

そして彼等は次の相手を求めて再び動き出したようです。



423: ◆wAHFcbB0FI :10/31(水) 23:59 geUxeGy0O

『「Rich man」を狙う!』



( ^Д^)「よし、次も大きく稼ぐぞ!」
(#゚;;-゚)「(何かおかしくなってるような…それともこれがハロウィンってものなのかな?)」

モナーと高岡から見事に菓子を巻き上げたタカラとでぃは、次の標的を既に決めていた。
向かった先は、魔王ことヒッキーが暮らす城。
つまり今度の相手は―――言うまでもないだろう。

何時もの如く我が物顔で城に入り、何時もの如く城内にて出会う兵士達と適当に言葉を交わし、そして何時もの如く玉座の間に到達する。



424: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 00:02 avuXyZvqO

(-_-)「…やあ、君達何の用―――」
( ^Д^)(#゚;;-゚)「Trick or treat!」

ヒッキーの最初の言葉さえ最後まで言わせず、出会い頭に要求を突きつける。
先程モナーが言っていたように、確かに不意打ちともいえる態度だが

(-_-)「…成る程ね」
( ^Д^)「おっ……ということは魔王さんはハロウィン知ってるんだな?」
(-_-)「この世界では関係ないことだけど、一応それぐらい知っておかないと情けないからね。
    今年辺り、ハロウィンという理由でそろそろ何かねだりに来る奴が出現してもいい頃だな…って思ってたら、たった今本当に来た訳だよ」

流石は魔王、何から何まで予想済みだったようです。



425: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 00:07 avuXyZvqO

(-_-)「…という訳で、特別にこれを君達にあげよう。二人で楽しく飲みたまえ」

そばにあった箱から瓶を取り出す。

( ^Д^)「こ、こ、こ、これは!」
(#゚;;-゚)「…驚き杉?」

それは、城の地下に保管してある稀少なワインの内の一つだった。
高々ハロウィンでこんな高級品を貰ってしまってよいのだろうか。

( ^Д^)「おい…いいのかこれ。俺こんなワイン飲んだことねえぞ?」
(-_-)「いらないならいいけど」
( ^Д^)「いやいやいやいや、貰うに決まってるだろ!」

引ったくるように受け取る。
貰う側として無礼極まりない。

( ^Д^)「…にしても、こんなモン貰っちまったら前の二人から巻き上げた菓子が安っぽく思えてくるな」

この呟きが先程の二人に知れた日には、モナーは兎も角高岡から爆発の集中豪雨をプレゼントされかねない。
…が、問題ないだろう。



426: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 00:15 avuXyZvqO

(#゚;;-゚)「…で、それどこで飲むの?」

でぃに問われて、タカラは考えるような素振りをみせる。
そして

( ^Д^)「現世のいつものとこ…ってのも悪くはねえが、こいつは現世にはないワインだ。
     だったらこの魔界で一杯やるってのがお約束ってもんだろ」

そういうものなのか?


( ^Д^)「となると、やっぱりこの城のあそこかな…でぃ、行こうや」
(#゚;;-゚)「うん…魔王様、ありがとうございますです」

頭を下げて礼の言葉を述べるでぃ。
誰かさんとはえらい違いだ。

(-_-)「ああ、楽しんでおいで」

ほのぼのとした様子で、ヒッキーは二人を送り出した。
アレは魔界でも滅多に手に入らない貴重なワインだが、まあこんな日があってもいいだろうと不思議に思ってしまうのである。



―――が、それから数分後にヒッキーは何かに気付く。

(-_-)「…あれ、そういえば確かハロウィンって……まあいいか」



427: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 15:50 avuXyZvqO

『五月蝿い上官を撃退せよ』



(# ФωФ)「てめえら…何でここに来やがった」
( ^Д^)「ここに用があるから来たんだがね?」
(# ФωФ)「冗談じゃねえぞこの身の程知らずが! この場所を使うことを許されるのは俺と軍師さんと魔王さんだけ!
       兵士でもない城下のごろつき同然のてめえらなんて問題外なんだよ!」
爪゚ー゚)「まあ、そう怒るな」

タカラとでぃは城のバルコニーを訪れ、偶然そこでじぃとロマネスクに出会っていた。
じぃは兎も角、ロマネスクに出会ったことは少々厄介だと二人は思う。



428: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 15:52 avuXyZvqO

( ФωФ)「し、しかし…」
爪゚ー゚)「用があると言っているではないか。
     どうせ今は我々もすることがない。それが重要なことであろうとなかろうと、一応は耳を傾けてみようではないか」
( ^Д^)「流石は軍師さん」
(#゚;;-゚)「…話が解りますね」

偶然会っただけなのにね。



( ФωФ)「しゃあねえ…なら用件だけ済ませてとっとと消えちまいな」
( ^Д^)「解ったよ。んじゃ早速…」

せーの

( ^Д^)(#゚;;-゚)「Trick or treat!」
爪゚ー゚)「…ああ、そうか」
(; ФωФ)「…は?」



429: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 15:56 avuXyZvqO

ハロウィンを知らぬロマネスクは戸惑いながらも、現状の把握を試みる。

( ФωФ)「…こいつらは何が言いたいんですかね?」
爪゚ー゚)「ハロウィンとかいう行事だ。我々は今、お菓子を渡すか悪戯されるかの二者択一を迫られているらしい」
( ФωФ)「ちょ、何でまたそんな訳のわからんことを…」
( ^Д^)「そういう決まりなんだよ」
(# ФωФ)「ふざけんな、何時誰がそんなこと決めた!?」
( ^Д^)「知らねえ」
(# ФωФ)「知らねえ…っておい! 俺に喧嘩売ってんのか!
       てめえにくれてやるモンなんざ――」
( ^Д^)「Trick!」

言葉と同時にタカラは素早く瓶を取り出して縦によく振り、そして瓶口をロマネスクへ向け栓を抜いた。

(; ФωФ)「ぬおっ!?」

ブシュッという音と共に瓶口から勢いよく酒が噴射され、ロマネスクを襲う。
要は何かを祝うときにやるアレだ。

(; ФωФ)「目が、目がぁぁぁぁ!!」

言葉通り目をやられたらしく、その後隊長は御退場されました。

( ^Д^)「よっしゃ、俺の勝ち!」
爪゚ー゚)(#゚;;-゚)「勝ってどうする」
( ^Д^)「いや、冗談だよ冗談!」

冗談ってアンタ…



430: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 16:00 avuXyZvqO

爪゚ー゚)「しかし、あげるモノなど何もないぞ」
(#゚;;-゚)「…でも、そこにワインとワイングラスが置いてありますね」

恐らく先程ロマネスクと飲もうとしていたのだろう。
タカラにとってはいい気味である。

( ^Д^)「じゃあそれでもいいや。くれ!」
爪゚ー゚)「む…いいだろう」
( ^Д^)「わー即答だ! サンキューな軍師さん!」
爪゚ー゚)「(…『たまにはワインも飲みたいと思って城の台所からこっそり持ち出してきた』なんて言えないしな…)」

決して口にはしないであろうことを思いながら、じぃはタカラがここに来る前から持っていた瓶に目を遣る。

爪゚ー゚)「そういえば、お前達もワイン瓶を持っているな…今ここで飲むのか?」
( ^Д^)「そうだけど」
爪゚ー゚)「はは、そうかそうか」



431: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 16:06 avuXyZvqO

そう言った後、彼女は笑顔で

爪゚ー゚)「ならば私からも言おう…Trick or treat」
( ^Д^)(#゚;;-゚)「あ」
爪゚ー゚)「どうした? 今度は私がお前達に要求している訳だが。
     早い者勝ちがお前達のルールなのだろうが、私はワインを渡すという行為によってそれを果たした。よって次はお前達の番だ」
( ^Д^)「…それはつまり俺達が持ってるワインを寄越せと?」

言われて、じぃは何かを考えた後

爪゚ー゚)「そう思ったんだがな。我々は現在三人いて、ワインは異なったものが二本。
     ならばいっそどれが誰のモノとかいうのは無しにして、今ここで二本とも三人で飲んでしまわないか?」
( ^Д^)「おっ」
(#゚;;-゚)「…いいですね」




そして

( ^Д^)(#゚;;-゚)爪゚ー゚)「三人で楽しく過ごしました」



432: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 16:11 avuXyZvqO

『ナンテコッタイ!』



( ^Д^)「さて、次はどこから巻き上げるか」
(#゚;;-゚)「(…何かがおかしくなっているー)」

もうそろそろ引き上げて良いであろう頃合いだというのに、二人のハロウィンという名の略奪行為はまだまだ続く。

(#゚;;-゚)「大体…他に誰かいる?」
( ^Д^)「…うーん、言われてみれば……」

悩むこと三秒。
タカラはポン、と手を叩き

( ^Д^)「…いやいやいやいや、いるじゃねえか。
     お人好しで、簡単に何かくれそうな奴が!」



433: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:13 avuXyZvqO

…………………


(*゚A゚)「…それで自分のとこに来たと」
( ^Д^)「まあ、そういうことになるな」
(#゚;;-゚)「…私は興味があったから御一緒してる」
(*゚A゚)「(バカにされとんのかなぁ…)」

魔界に唯一存在する森の奥地の小屋内にて、タカラとのーは向かい合わせに座っている。
無論、タカラの横にはでぃも一緒だ。

(*゚A゚)「でも、ここには木の実とかキノコしかあらへんよ?」
( ^Д^)「じゃあそれでいい、くれ!」
(*゚A゚)「うーん…今日は…」
( ^Д^)「おっ、解ってるな。
     その通り今日はハロウィンだ!」
(*゚A゚)「いや、だからt――」
( ^Д^)「最初から俺達にくれるつもりでいてくれたんだよな? 流石、のーは気が利いてるぜ!」
(*゚A゚)「…………そ、そう。最初からそのつもりやったよ」
( ^Д^)「よしよし!」

タカラは歓喜し、でぃは気まずそうに目を逸らす。



434: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:17 avuXyZvqO

(*゚A゚)「…この小屋の周辺で食べれる木の実とキノコが穫れまっせ。
    ま、穫りすぎない程度に持ってってや」
( ^Д^)「サンキューな!」
(#゚;;-゚)「…いいの? さっきまで躊躇ってたけど」
(*゚A゚)「ええよ…………多分」
(#゚;;-゚)「…多分? まあいいか。
     では、御言葉に甘えて」

タカラとでぃは略奪の品(?)を回収するべく、小屋から出ていった。
それを見届けたのーは、小さく悪戯っぽい笑みを浮かべながら呟く。

(*゚A゚)「……別に嵌める気はあらへんけど、この際今のが自分からの『trick』でええよな?
    自分だって偶には嵌めますよ、っちゅうことで堪忍してや」



435: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:20 avuXyZvqO

数十分後

( ^Д^)「ふぅ、こんなもんかな」
(#゚;;-゚)「…結構穫ったね」

二人は現世では見つからない奇妙な形状の木の実やキノコを両手で抱え、互いに顔を見合わせて笑う。

( ^Д^)「じゃ、そろそろ行くか」
(#゚;;-゚)「…次で最後ね。私は結構満足したよ」
( ^Д^)「そうだな。よし、じゃあ次に出会った奴から頂戴するとしよう」
(#゚;;-゚)「…うん」

そして二人が森の出口へと向かおうとしたとき、前方に人影が見えた。

( ^Д^)「おっ…飛んで火に入る何とかかんとかってやつだな!」

タカラはすっ飛ぶように向かっていき、でぃも少し遅れて後を追う。

が、相手が悪かった。



436: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:26 avuXyZvqO

(*゚∀゚)ノ「やぁ、バカップルじゃないか!」
(;^Д^)「ちょwwwwwqあwせdrftgyふじこlp」

タカラにとって、今最も起こってほしくないことが起きた。
それはつまり、つーに出会ってしまったということ。
何か食べ物などを持っている時に彼女に出会うと、大抵横取りされてしまうのだが―――

(*゚∀゚)「…で、その美味しそうなモノの数々は何だ?」

…やっぱりこうなったか、とタカラは思う。
飲まず食わずでもやっていけるというのに、どうしてこの女は他人から物を奪うことを快感とするのだろう。



437: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:27 avuXyZvqO

( ^Д^)「…何だっていいだろ」
(*゚∀゚)「言わなくったって私にはお見通しさ。
     大方のーから貰ってきたんだろうね…寄越しな!」
( ^Д^)「なーんで俺がお前なんぞにやらなきゃなんねえんだよ」
(*゚∀゚)「アンタの物は私の物、私の物は私の物だからねぇ。
     そして何より、今日はハロウィンだからさ。それだって本来、私がのーから貰うはずのモノなんだからね」
(#゚;;-゚)「(…何というジャイアニズム)」

こうなると、もはや外見と行動が全く一致していないドSなつー御姉様の最終形態である。
…いや、それはないか。

(*゚∀゚)「…ま、正確に言っちゃうともうハロウィンは過ぎてる訳だけど。
     作者も作者で矛盾発生させるとかほんと馬鹿だよねー」

ほんとごめんなさい。



438: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:29 avuXyZvqO

( ^Д^)「(…しっかしまあ、何か嵌められた気がするのは俺だけ?)」

いずれにせよ、こうなったつーを止める術はない。
ついでに普段からカツアゲされているであろうモナーが、毎度の事ながら惨めに思えてくるのだが気のせいだろうか。

( ^Д^)「わかったわかった、半分やるから大人しくしろ」
(*゚∀゚)「半分とか言わずに全部寄越せ。
     それから、何か美味しそうな血を持ってこい」
Σ(;^Д^)「ハア!? 何でそんなことしなきゃいけねえんだよ。
     いい加減にしろやカス!」
(*゚∀゚)「だってハロウィンだからな。
     そして私は何時ものルールに乗っ取った上でこう言うよ」

タカラが言い返す隙さえ与えずに

(*゚∀゚)「kill or blood♪」

恐らく「血をくれなきゃ殺すよ!」とい
う意味であろうが深く考えないことにする。
ハロウィンはもう過ぎたとか、そんな過去の言葉は彼女にとっては一切関係なしである。



439: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 17:35 avuXyZvqO

( ^Д^)「…ああわかったよ。
     早い者勝ちが俺達のルールだよな!」

先程まで散々自分で言っていたことが、今ここで仇となった。
だが、さらなる追い討ちがかかるということも十分に有り得るものである。

(*゚∀゚)「よーし良い子だ。
     じゃあ今から十分で戻って来い。でないと…」




…その続きを聞いたタカラは、してやったりといった様子のつーを涙目で睨みつけた後、やむを得ずある場所へと向かうことになった。



440: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 19:42 avuXyZvqO

『衝撃的な事実?』



川д川「うーん…今日は実に変な日ね…」

荒野の地下にある右に傾いた家にて、家主である貞子は不思議そうに呟く。
というのも、先程まで数少ない来客が妙な目的で出入りしていたからだ。
今は貞子と使い魔のジエンしかいないために再び静まってはいるが、それにしても変だ。

(・∀・)「コウイウヘンナヒハモウ、オフデオk!」
川д川「…そうしようかな」


と、そのとき突如としてドアを叩く音。
その叩きようからして相当慌てているようだ。

川д川「また…」

呆然として入り口に目を遣っているうちに、ドアを開けて家に飛び込んできたのは

( ;Д;)「マスターッ!!」

涙目のタカラだった。



441: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 19:45 avuXyZvqO

川;д川「…ちょ、急にどうしたんですか!
     ついでに言うと今日は何時もと呼び方違いますよ?」
( ;Д;)「そんなことどうでもいい、頼むから今すぐ店で一番美味い血をワイングラス一杯分くれ!」
川;д川「いつも血を毒薬みたいな見方してる貴方が…自棄起こしたんですか? 早まらないで下さいよ」
( ;Д;)「そうじゃねえんだよ! 持ってこいって脅迫されてんだよ!」
川;д川「…とりあえず状況をkwsk」
( ;Д;)「斯く斯くしかじか」
川д川「…把握しました。しかし貴方らしくありませんね」
( ;Д;)「だってあいつ、十分で持ってこないと俺がよく忍び込んでる現世のバーの連中に、俺がしょっちゅう酒やワイン盗んでることを言いふらすって突きつけてきやがった!
     現世の人間全てを俺の敵に回すつもりなんだ!」
川;д川「……」

幾ら何でもそれは考え過ぎだろう、と貞子は思う。
何時の間にか店内にいたでぃも、タカラに悟られぬようにくすくすと笑っているのがわかる。



442: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 19:48 avuXyZvqO

川д川「…しかし貴方までこんな形でいらっしゃるとはね…やっぱり不思議ですよ」
( ^Д^)「…え?」
川д川「貴方達が来る前にモナーさんと高岡さんが来て、何か御菓子をくれるよう頼んできたんですよ。
    まあ私も一応現世の飴やチョコレートを幾らか貯め込んでいたんで、それらを差し上げた訳ですが」
( ^Д^)「そ、そうだったのか…!
     ってことはつまり、これとかは貞子ちゃんからの頂き物か」

宝箱に入れていた飴玉を取り出して見せる。
でぃもまた、自らが入った箱からチョコレートを取り出してみせた。

川д川「(呼び方戻った…)そういうことになりますね」

大方予想はできているので、貞子は敢えて入手した経緯を聞かなかった。
そして今度はタカラがモナーや高岡と同じ状況に立たされていることも同時に察知できた。



443: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 19:55 avuXyZvqO

が、タカラからしてみればいつものように話している場合ではない。
ある意味己の未来がかかっているのだから。
そう思い出したとき

川д川「…まあ、ハロウィンですからね。貴方にも助け舟を出すとしますよ」
( ^Д^)「あ、ありがとう」

思わずストレートにお礼の言葉を述べる。
が、それを見て貞子は小さく笑い

川д川「でも、何というか…貴方達が面白いです」
( ^Д^)「ちょ、何をいきなり」
川д川「だって……元々ハロウィンというのは、厄払いみたいな行事なんですよ…?」
( ^Д^)「…え?」



444: ◆wAHFcbB0FI :11/01(木) 20:01 avuXyZvqO

川д川「…ですから、現世では人間の子供達が『厄払い』みたいな形で幽霊や魔女の仮装をして家を一軒一軒廻るんです」
( ^Д^)「………そうなの?」
川д川「はい…作者の脳内情報が正しければ。
    …それで、要は存在自体が人間の厄になりかねないあなた方が、先程まで厄払いの行事をしていたということになるんですが」
( ^Д^)「……」

( ゚Д゚)

(゚Д゚)




…その後、貞子が無言で差し出した血入りのグラスを受け取り、さらにそれをつーへと届け、再びこの場に戻ってくるまでタカラは無表情のまま何一つ口にしなかったという。




(#゚;;-゚)「…次からは止めとくべきだね…私達妖怪なんだし」
( ^Д^)「……じゃあクリスマs」
川д川「それはキリストが産まれた日です」
( ^Д^)「…俺達って、結構不遇な立場なんだな」
(#゚;;-゚)川д川「…ドンマイ」


終わり



戻る