('A`)ドクオは方舟に乗るようです

3: ◆ph2O.JlUMw :2007/08/11(土) 21:20:25.19 ID:zUOw04I8O
丘の上から小さな村を見下ろす二人の男がいる。

一人は顔に笑みを浮かべている。
体型はよく肥えていて、白いスーツを暑苦しそうに来ている男。

もう一人は鬱蒼とした表情で、赤い蝶ネクタイを首にしめ高そうな黒いスーツを来ている。


(´・ω・`)「どうですか……あの村は?」


( ^ω^)「うん。気候もいいし、中々生きのいい若者がいそうだお。ブヒヒ」


外界から遮断されたように周りを山に囲まれ、ひっそりと太陽に照らされているその村をみながら肥えた男は満足そうに笑う。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:21:25.26 ID:zUOw04I8O
(´・ω・`)「…………」


( ^ω^)「ブヒヒヒ……」

( ^ω^)「ここに決まりだお」


(´・ω・`)「……では、早速宿の手配をしましょう」


蝶ネクタイの男はポケットから携帯を取り出しどこかへ電話をかける。




( ^ω^)「さて……アダムとイブは誰になるのかお……」




───('A`)は方舟に乗るようです────



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:30:51.04 ID:zUOw04I8O



『第一話 アダムとイブ』






5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:22:25.26 ID:zUOw04I8O
川 ゚ -゚)「ドクオー!」


煉瓦造りの家の二階に向けて、少女が呼び掛ける。
少女は端正な顔立ちでその表情に抑揚はない。


川 ゚ -゚)「ドクオー!!」


彼女の視線の先にはカーテンを閉めきった窓にある。


('A`)「なんだ……クーか……」


少年はおそるおそるカーテンの隙間から声の主を見下ろし溜め息をつく。
そして窓を開けて「待ってろ」と一言いい放ち、玄関まで降りていく。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:23:32.90 ID:zUOw04I8O
('A`)「なんのようだよ……」


川 ゚ -゚)「料理を持ってきたぞ」


('A`)「またかよ……いらないって言ってるだろ」


川 ゚ -゚)「そんな事言わずに食え。私の手料理だぞ」


少女は無理矢理少年の手に風呂敷で包んだ箱を握らす。
少年はそれを渋々受取り、また家の中へ入っていこうとする。


川 ゚ -゚)「………」

(;'A`)「………お前も中で一緒に食べるか?」


川 ゚ -゚)「……うむ」

彼女の顔はほんの少しの変化だがほころんだように見えた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:24:47.94 ID:zUOw04I8O
少年には家族はいない。
父親は物心つく前に出稼ぎに行ったきり帰ってこず、三年前に母親が亡くなったことにより元々内気だった少年はほとんど家に閉じ籠っている。

村の学校もやめ自宅の畑で食糧となる農作物を育て、週に四度この少女の父親の仕事の手伝いをして日銭を稼いでいる。

そこで知り合ったこの少女が時々こうして様子を見にくるのである。


川 ゚ -゚)「うまいか?」

('A`)「うめぇ」

川 ゚ -゚)「ほら、口についてるぞ」


少女は少年の口についたご飯粒をつまんで自分の口に入れる。


(*'A`)「な、なにしてるんだよ!」


川 ゚ -゚)「?」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:29:01.38 ID:zUOw04I8O
川 ゚ -゚)「ところでちゃんとご飯は食べているのか?」

('A`)「まぁな……疲れてる時はめんどくさくて食わない時もあるけど」


川 ゚ -゚)「なんなわら毎日私が作ってやろうか?」


(;'A`)「!!!ゲホッゲホッ!」

川 ゚ -゚)「大丈夫か?」


('A`)「そんな無表情で冗談は不意打ちだぞ!」

川 ゚ -゚)「…………」

食事を終えて少年はコップの一杯の水を飲み干し、何かを思い出したかのように立ち上がる。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:31:39.12 ID:zUOw04I8O
('A`)「そうだ…畑に水やらなきゃ」

川 ゚ -゚)「私も手伝おう」


少年はばつの悪そうな顔をするが少女はそんなことを意に介す様子はなく、勝手知ったように畑に続く裏口の戸を開ける。


(*'A`)「……しょうがないやつだな……」


本心では彼は喜んでいたが、いつしか表面上では嫌がる少年にかまうことなくお節介を焼く少女というのが彼らの決まった図式のようになっていた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:32:56.88 ID:zUOw04I8O
畑を見れば少年が如何に一生懸命に手入れしている姿が容易く想像できる程作物は健やかに育っている。


川 ゚ -゚)「相変わらずドクオは農家が天職だと思うよ」


('A`)「そうか……?」

彼は間の抜けた返事をして、桶にたまっている水を畑に振り撒く。
少女はその桶の水が無くなる前にせっせと井戸から水を汲みあげて代え置きをこしらえていく。


この村には水も電気もガスも通っていない。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:34:36.21 ID:zUOw04I8O
文明においてけぼりされたような所だが、この村に住む者は誰一人としてこの環境に不満をもらす者はいない。

それもそのはず、彼等はこの村以外の世界を知らないからである。
遠く離れた太陽がこの村を見守るかのように日を照らしつける。

風が吹けば草木はざわめき、雨が降れば大地は静かにそれを吸い込む。

小鳥が数羽ドクオの周りをはしゃぐように飛び回る。
クーは小川のせせらぎを聞きながらそれを見てクスリと笑う。


それが彼等の日常。彼らの世界だった。



第一話 終



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